Part 01: 詩音(私服): はろろーん。お姉、いるー?ちょっと頼みたいことがあるんだけど。 魅音(私服): ……詩音、あんたねぇ。レディの部屋に夜中、ノックもなく入るなって何度言ったらわかるのさ? 詩音(私服): いいじゃない、勝手知ったるなんとやら。別に見られて恥ずかしいものなんて……へっ? 詩音(私服): ちょっ……これって、銃火器?しかもこんなにたくさんの数を揃えて、どこかにカチコミでもする気なの? 魅音(私服): はぁ? 何をバカなことを言っているのさ。手に取ってみれば、モノホンじゃないってすぐにわかるでしょ? 詩音(私服): あ……本当だ。重さはともかく、マガジンの質感と銃口の形状が全然違う。 詩音(私服): つまり、これはエアガンか。はぁ……たかが玩具にここまでこだわるなんて、つくづくお姉の趣味は普通じゃないよねー。 魅音(私服): いや……だからって、一瞬でそれとわかるあんたも十分に非常識人だと思うけど。 詩音(私服): わかるのは当然でしょ?昔は2人で海外に行って、軍事演習とかをみっちり受けてきたんだから。 魅音(私服): あー……そんなこともあったかな。あの時は私たちも、大人に混ざってよくやったもんだよ。 詩音(私服): くすくす……懐かしいね。お姉と組んで双子の外見を活かした幻惑作戦、地元の教官にも褒めてもらったっけ。 魅音(私服): そうそう。あんたが陽動役になって敵を引きつけて、私がその隙に背後へと回る……。 魅音(私服): ……いや、私が囮だったかな?うーん、訓練内容をこなすだけで必死だったから、その辺りのことはよく覚えていないよ。 詩音(私服): まぁ、お姉はすぐにへばっていたからね。同じ見かけの双子なのにこうも違うのか、って教官も呆れていたくらいだしさ。 魅音(私服): いやいや! あんたこそ訓練が厳しくて毎日半泣きになっていたじゃんか!過去をねつ造するんじゃないっての! 詩音(私服): はいはい。……で、話を戻すけどこのエアガンをいったい何に使うつもりなの? 魅音(私服): 最近の『ツクヤミ』、やたらと強くなってきているでしょ?図体もでかくなって、動きも速いし。 魅音(私服): だから、今週末に裏山を使ってみんなと一緒に訓練を兼ねたサバゲーをやろうと考えたんだよ。 魅音(私服): それで善朗おじさんにちょっと無理を言って、問屋にあるだけを集めてもらったってわけさ。 詩音(私服): サバゲーで、対『ツクヤミ』の訓練……?なんか努力の仕方が間違っているような……。 詩音(私服): はっ……? まさかそれを名目に沙都子たちをテロリスト集団にでも育成して、また世情不安を引き起こすつもりだとか? 魅音(私服): するかっ!……っていうか「また」ってなんだよ!私がそんな過激な武闘派団体を作ったことなんて、後にも先にもないっての! 詩音(私服): もう、冗談に決まっているでしょう?ホントお姉はすぐムキになるんだから……くっくっくっ! 詩音(私服): ……けど、お姉。銃火器寄りのサバゲーと「カード」前提の対『ツクヤミ』訓練は、やっぱり方向性とかが違うんじゃない? 魅音(私服): まぁ……その通りだよ。実のところこの訓練の本当の目的は、別にあったりするからね。 詩音(私服): ほうほう。して、その真意は……? 魅音(私服): なんで時代劇調なんだよ。……まぁいいや。このサバゲーをきっかけに、「あの子」への対応を将来的に変えていきたいと思ったのさ。 詩音(私服): 「あの子」……とは、いったい誰のことを指しているの? 魅音(私服): そんなの、私たちの中で1人だけじゃんか。……あんたも前々から気づいていたでしょ?とぼけたって無駄だよ。 詩音(私服): …………。 魅音(私服): あんたの持つ記憶と照らし合わせても、明らかに異質な存在が確実に「い」る。……そうだよね、詩音? 詩音(私服): ……驚いた。まさかお姉までもが、記憶を保持したまま「世界」を移動していたなんてね。 詩音(私服): で、その力は誰からもらったの?私と同じ存在か、あるいは……。 魅音(私服): 力……存在……?いや、それが何を指しているのかについては私にはまだ理解できないけど……。 魅音(私服): 記憶が戻ったのは……そうだね……。「あの子」がいなくなって、それと入れ違いに「あの子」が出現した……ほんの数日前だよ。 詩音(私服): いるはずの人間がいなくて、いないはずの人間がいる……まさに『オヤシロさまの#p祟#sたた#rり』と呼ぶのにふさわしい怪奇現象ってやつだね。 魅音(私服): 祟りっていうより、むしろ呪いに近いんじゃない?二重の記憶を持つってのがこんなにも気持ち悪くて面倒なものだなんて、思いもしなかったよ。 詩音(私服): くっくっくっ……私の味わってきた苦痛を、あんたにも多少は理解してもらえたってわけか。 詩音(私服): とはいえ私の場合、「世界」を移動し続けて二重や三重どころの話ではなかったんだけどね……。 魅音(私服): ……大変だったってことだけは、理解できるよ。まだ、同情や共感を持てるほどじゃないけどさ。 詩音(私服): お気遣いなく。そんなもの、私にとっては慰めどころかむしろ侮辱でしかない。 詩音(私服): 私が選んで、自分の意思で決めた道。だからそういうお情けはノーサンキューだよ。 魅音(私服): …………。 詩音(私服): で……お姉。あんたは「あの子」のこと、どうするつもりなの? 魅音(私服): ……。私たちも含めて#p雛見沢#sひなみざわ#rの連中はずいぶんと酷い仕打ちをしてきたから、今さら遅いかもしれないけど……。 魅音(私服): あの子のこと……知りたくなったんだよ。御三家の頭首としてではなく、年の近いひとりの女の子としてさ……。 Part 02: 絢花(私服): ……なるほど。私のところにあなた方が揃って来られたのは、そういう事情があってのことなのですね。 魅音(私服): 絢花……ひとまず、こう呼ばせてもらうよ。こっちの「世界」だと私は、あんたの本名を知らない前提でいたからさ。 魅音(私服): それとも、本名の方がいいかい?だったら周りに人の目がない時だけでも、そっちを使わせてもらうよ。 絢花(私服): その点については、どうぞご随意に。過去の名前は#p雛見沢#sひなみざわ#rに来ることが決まって以来、私にとってはどうでもいい無価値のものです。 魅音(私服): …………。 絢花(私服): それで……魅音さんに、詩音さん。あなた方は、ここではない「世界」の記憶をお持ちということでしたが……。 絢花(私服): それを打ち明けることで、私から何を聞き出したいとお考えですか? 詩音(私服): まずは……絢花さん。あんたも同じ「記憶持ち」なのか、それだけでも確かめておきたいと思いましてね。 詩音(私服): まぁ、素直に答えていただけるとはこちらも思っていませんが、返答次第では……。 絢花(私服): この先において私のことを敵と見なすか、あるいはそうではないものとして扱うか……つまり、そういうことですね? 魅音(私服): 話が早くて助かるよ。……で、どうなの? 絢花(私服): …………。 絢花(私服): 申し訳ありません。私はその質問に対して、肯定も否定もできる立場にないということを……どうかご理解ください。 詩音(私服): ……否定、しないんですね。てっきり嘘をつくか、とぼけられるものだと思っていたんですが。 詩音(私服): こう言ってはなんですが、ある意味で意外な反応をいただいた気分ですよ。 絢花(私服): 信じていただく必要はありませんが……私は、嘘が嫌いなのです。ですから答えたくない時は、沈黙で応じます。 絢花(私服): そして、これでも私はかなり踏み込んだ上であなた方に答えている。……それが、あなた方への礼儀のつもりです。 詩音(私服): ……。では、その言葉の通りに受け取らせてもらいます。 詩音(私服): 私たちも正直、疑心暗鬼になって腹の探り合いをしたくないんですよ。ストレスが溜まるだけですからね。 魅音(私服): それで……絢花。単刀直入に聞くけど梨花ちゃんは無事なのか、今どこにいるのか……あんたは何か知っていたりするのかい? 絢花(私服): 知りません。もし知っていたとしても、あなた方にお教えすることもできません。ただ……。 絢花(私服): もし、完全に存在がなくなっているのであれば……この「世界」はもっと早期に崩壊しているはずです。 絢花(私服): 彼女の存在があってこそ、雛見沢の均衡と安定が達成されているのです。……まがい物で代替などは、できません。 詩音(私服): だとしたら、少なくとも梨花ちゃまは死んではいない……と? 絢花(私服): ……私が申し上げられるのは、ここまでです。あとはあなた方のご想像と、独自の調査によって下されたご判断にお任せします。 魅音(私服): わかった。んじゃ、この件についての質問はここまでにしておこう。 魅音(私服): で……絢花。話は変わるけど、あんたは私たちの部活に参加してみる気があったりするかい? 絢花(私服): 部活……ですか……? 詩音(私服): えぇ、そうです。通常のクラブ活動などと違って、罰ゲーム付きのかなりエゲツない内容なんですけどね。 絢花(私服): ……いったいどういうつもりなのか、あなた方の意図がわかりかねます。 絢花(私服): あるいは、味方に引き入れることで意のままに操ろうという邪な#p思惑#sおもわく#rがあるのであれば、私は断固として……! 魅音(私服): いやいや、さっきも言ったでしょ?記憶だの「世界」だのの話については、もうおしまいだって。 魅音(私服): 私たちとしては純粋に、あんたを部活に誘うのも面白いかな、って思っただけさ。 絢花(私服): …………。 魅音(私服): あんたの存在を、これまで私たちはないがしろにしてきた。……それに対しての申し訳なさもあるし、反省もしたい。 魅音(私服): その上で、1から……いや、0から古手絢花というクラスメイトとの関係を構築していきたいと思っているんだ。 魅音(私服): ……虫が良すぎる、という自覚はあるよ。でも、このまま何も変わらずに無為な時間を過ごしていても仕方がない。だったら……。 絢花(私服): ……。園崎、魅音さん。 絢花(私服): あなたは、この「世界」における古手家頭首の立ち位置を理解した上で……そう仰っているのですか? 絢花(私服): もし、私と仲良くしているところを村の人たちが見たら、どう思うか……あなた方がよくご存じのはずです。 魅音(私服): 確かに私と詩音は、あんたのことをよそ者……お飾りの頭首だと思って、積極的に関わりを持とうとはしてこなかったね。 詩音(私服): それに……絢花さん。これまでのあんたに対する冷遇の数々についても、ここで謝ったところで簡単に許されるものではないと理解しています。 詩音(私服): ですが、少し弁明をさせてもらいますと……村の人たちはお偉方の指示で生まれ故郷を離れ、新しい人生への転換を強制されています。 詩音(私服): そんな中で希望を失わせず、挫けそうになる彼らの心を守るためには……敵の存在が必要だったんですよ。 絢花(私服): つまり……罪と非難を押しつける対象、そのために私が必要だったのですね。 絢花(私服): 自分たちのやってきたことが間違いではなく、負けたわけではないという言い訳の代わりに……。 魅音(私服): ある意味で、あんたは人柱だった。……その強制された宿命とやらを、変えたい。 魅音(私服): あんたのことを、ひとりの人間として……そしてまだ間に合うんだったら、仲間として。付き合い方を変えていきたいんだよ。 絢花(私服): ……魅音さん。 Part 03: 魅音(サバゲー): よーし……行くよ圭ちゃん、悟史!レナは物陰に隠れてバックアップ、よろしく! レナ(サバゲー): はぅ~、了解! 圭一(私服): へへっ、腕が鳴るぜ!ちなみに確認しておくが、あの小屋の中にいるのは絢花ちゃんひとりだけ……なんだよな? 詩音(私服): えぇ、そうですよ。来るべき本番に向けて彼女の防衛能力がいかほどのものか……まずはお手並み拝見というわけです。 圭一(私服): で、このテストを無事にクリアしたら次回の部活……サバゲーに参加させるってわけか。わかりやすくて、燃えてくるぜ! 魅音(サバゲー): だからって圭ちゃん、手心を加えるのは無しだよ?絢花の実力を見極めることも大事だからね。 圭一(私服): あぁ、わかっているって!俺の時もそうだったから、絢花ちゃんを信じて正々堂々とぶつかってやるぜ! 悟史: あ、でも……確か絢花ちゃんって、サバゲーの銃火器とかを持っていなかったよね? 詩音(私服): はい。扱い慣れていない武器はかえって動きの邪魔になる……と。 圭一(私服): ……銃を持っていない、だと?んじゃ、絢花ちゃんは何をもって戦うつもりなんだ……? 魅音(サバゲー): それを見てもらうためにも、まずは攻撃を仕掛けてみてよ。圭ちゃんと悟史、2人がかりでさ! 悟史: わ、わかったよ……それじゃ行こう、圭一! 圭一(私服): よしきたっ! いっくぜぇぇぇええぇぇっっ! 圭一(私服): よし、内部に入ったぜ!……っておい、これはどういうことだ? 悟史: むぅ、誰もいない……。絢花ちゃんはいったい、どこに……? 悟史: って、うわぁぁあああぁぁっっ?! 圭一(私服): どうした、悟史っ?何かいたのか……んなっ?! 絢花(私服): …………。 絢花(私服): 真正面から突っ込んでくるとは……油断しましたね、お二人とも。 圭一(私服): んぎゃあああぁぁぁぁああっっ?! レナ(サバゲー): は、はぅぅっ……?小屋の中から圭一くんたちの悲鳴が聞こえるけど、だ、大丈夫かな……かなっ? 絢花(私服): ……問題ありません。お二人とも、気を失っているだけですので。 詩音(私服): んなっ? い、いつの間に移動を……?! 絢花(私服): 小屋の出口はひとつだけですが、床板を外せばこっそり抜け出すこともできますので……。 絢花(私服): では……参りますッ! 詩音(私服): ちょっ……お姉、銃撃を!接近させたら、こちらが不利です! 魅音(サバゲー): んなこと、わかっているって!おりゃぁぁあああっ!! レナ(サバゲー): はぅっ……は、速い?!絢花ちゃんって、こんなに動きが俊敏だったの?! 絢花(私服): ……「世界」を渡り歩いてきたことで、長らく身体にとりついていた病魔の影響が弱くなってきたようですね。 絢花(私服): その点だけは、「あの方」に感謝しています。……がッ!! 詩音(私服): ぐっ……こ、これは予想外……いえっ……! レナ(サバゲー): は、はぅっ……?もしかして、絢花ちゃんって……武道の経験者なのかな、かなっ? 絢花(私服): 長期の入院などがあったので、昇段の試験は受けておりませんが……。 絢花(私服): 一応多少の心得はあるものと、自負だけはしております。 詩音(私服): 多少の心得どころじゃありませんよっ?男子2人を一瞬で叩き伏せて、私たち3人がかりでも全く刃が立たないってどんなインチキですか?! 魅音(サバゲー): ひょっとして、私たち……とんでもない怪物を目覚めさせちゃった……? 絢花(私服): ようやく身体も温まってきました。次はもう一段ギアを上げて……行きますッッ!! レナ・魅音・詩音: ひっ、ひえええぇぇぇぇええぇっっ?!