今更だが、話をしたいと思う。
果たして、小田桐勤の一生とは何だったのか。
と、いう内容の、十三巻です。遂に、『B.A.D.』も最終巻を迎えました。
思い返せば、長かったような、短かったような、不思議な気持ちになります。時の流れとは複雑なのである。デビュー作から四年間、こうして頑張ってこられたのも、偏に、応援して下さった読者の皆様のおかげです。本当に、ありがとうございました!
こうして一つの話を、最初から最後まで書き切ることができたことは、作家として、これ以上ない幸福だったと思います。十三巻、外伝三巻と、この数年に渡り、お付き合い頂けたことは、作者である自分から見れば、まるで奇跡のことのように思えます。何と感謝を申し上げればいいのか、わかりません。本当にありがとうございましたっ!
そして、以下は脈絡なく、ネタバレな語ってみたよコーナーになります。まだ読んでないよな人は、本文にお戻りください。買ってすらいないよという人は、そのまま本を抱えて、レジへとレットイットゴーすればいいと思います。『B.A.D.』最終巻は、夏風邪予防に効果があると巷で専らの噂です。具体的な効用については謎でしかありません。早く、迷わずに行くんだッ! 間に合わなくなっても知らんぞーッ!
------------------------------最後かもしれないキリトリ線------------------------------------------
はい、『B.A.D.』はこうして、二人の別れで、終わりを迎えました。
思えば、陰惨なことも、残酷なことも、色々と書いてきましたが。自分にとって、『B.A.D.』は最初から最後まで、女の子と出会った男の子が、命を救われ、そして、最後には彼女の運命を変える。そんな、一風変わったボーイミーツガールのつもりでした。
始まりがあれば、終わりは必然。出会いがあれば、別れも必須。『B.A.D.』は繭墨あざかと小田桐勤の物語でした。この二人の出会いと別れまでを、全て書ききることができて、本当によかったと思います。基本的に、自分は話を少年と少女の出会いや関係性から作るので、互いにとって互いは何だったのか、その関係性と結末までを、全て書き切ることができ、安堵しました。
そして、たまには、主要キャラクターについて、述べていこうかと思います。普段は滅多に語らないのですが、最後ですしっ! ここを除けば、機会がないのでっ!
小田桐勤・もっと頑張りましょう、そして、よく頑張りました。
主人公でありながら、最も書きにくいキャラクターでした。どれほど書きにくいかというと、書いている最中、「小田桐校正」として、最初から最後まで小田桐の言動を見直し、ブチ切れ度をあげたり、下げたり、悩みを軽くしたり、重くしたりする工程を自分で挟むくらいでした。ですが、その分、愛着もあります。また、誰か他のキャラクターが主人公だった場合、作中被害者は減っていた可能性もありますが、繭墨あざかや他数名は間違いなく死んでいたので、『B.A.D.』はやはり、彼以外では贈れない物語でした。事務所を出た後の話は、また少し、チョコレートデイズで書くかもしれません。
繭墨あざか・ヒロインというよりも、小田桐とのダブル主人公くらいの気持ちで書いていました。ブレぬ、退かぬ、媚びぬ、省みぬ。その性質故に、作中、最も書きやすいキャラクターでもありました。『B.A.D.』は最終巻までは、彼女と小田桐勤の物語です。小田桐勤を拾ったことが自身の運命を変えるとは、考えもしなかったことが、彼女の唯一の誤算であり、幸運だったと思います。ちなみに、彼女の外見年齢は鬼の血のせいで止まるので、今後とも、殆ど変化はしません。色々なところも育ちませんが、繭墨は気にも留めないのであった。
水無瀬白雪・今作のヒロインです。一度思ったらどこまでも真っ直ぐ、猪突猛進な女性でした。綾里的、戦う美少女、嫁、夫婦萌えが大量に詰まっています。白雪と小田桐の二人は、一度くっつくと、それはもう恐ろしくも鬱陶しいことになるので、その辺りのことも、少し、チョコレートデイズで書けたらいいなと思っています。
嵯峨雄介・雄介編で、全てを書き切りました。唐繰舞姫、久々津についても同様です。
雄介編は、書いていて一番胃が痛い展開でした。特に8巻は、最後の一文を書き切る時が、最も瀕死の状態でした。全体の流れと、〇〇編ごとの展開は、大まかに決めてから書き出すものの、作品には水物な一面があります。そのため、この展開では、気を抜けば全員が死ぬことになるなと、慎重をきして、書いた思い出があります。彼も小田桐勤が主人公でなければ、間違いなく、なんらかの形で死んでいた一人です。これからも悩みつつ、生き残った限りは、笑って、泣いて、生きて行くものと思います。
繭墨あさと・書いていて、二番目に苦労をしたキャラクターでした。台詞自体は楽なのですが、何せ建前と本音がバラバラだったり、自身の噓に自分で気づいていなかったりするので、彼が話し出すと、堂々巡りで話が進まなくなるのです。最後のあの展開になるまでに、実に十三巻かかりました。彼も繭墨あざかと同様に、小田桐勤の運命を変え、変えられた人間です。ですが、小田桐も彼もそこにはあまり注目していません。作品最後、彼は旅に出たままですが、多分いつかまた、七海にこんにゃくで殴られます。
七瀬七海、綾、幸仁・書いていて、気持ちのいい三人でした。特に七海は、最初から最後まで、日常と異常のバランスを取る上で、いい役割を果たしてくれたと思います。作中、最もメンタルが強いキャラクターでもありました。綾は再登場から、あの最後は決まっていましたが、彼女なりに短い人生を生き抜いたと思います。幸仁の今後のラスボスっぷりについても、またチョコレートデイズで触れられたらと思います。
久々津、舞姫、神宮ゆうり・全員、ほぼ敵として出て来て、味方に回るキャラクターでした。歪んでいる中でも、自身の信念は持っているキャラクターが好きなので、綾里のそういった点が、顕著に出ている三人だと思います。彼らも小田桐勤がいなければ、色々ともっと悲惨なことになっていたメンバーです。三人とも、今後も歪んだところはあるままですが、それぞれがそれぞれの道を、生きていくものと思います。
雨香・ある意味、一番大事な子です。小田桐と雨香の結末についても、小田桐と繭墨の結末と同様に、初期段階から決めていました。ですが、もしも最後まで行きつかなかった時の、バッドエンドの一つとして、雨香が鬼として、次代の繭墨あざかを継ぎ、その後見人に小田桐がなるという、ぼんやりした内容を考えたこともありました。
ちなみに、『B.A.D.』最終章を書きながら、『「僕の腹の中で、彼女が蠢いた」……ううっ、この一文ももう書くことはな……あっ、凄い、本気でこれ二度とないッ!』と自分で驚いたので、我ながら、変わった設定を書いたなと思います。ですが、人と化け物の異種同士の交流が好きなので、この二人の親子の絆を書けて、よかったとも思います。
とりあえず、以上になります。物語はキャラクターの変化や成長の歴史でもあります。
それは、読者の方がいなければ、止まったままになってしまうものでもあるので、こうして全て書き切れたことには、感謝するしかありません。これから先、雨香についての話は、実は少しだけ考えてあるのですが、それは小田桐勤の話では、もうなくなってしまうので、お見せする機会があるかどうかはわかりません。こうして、小田桐勤と繭墨あざかの話を最後まで見て頂けて、嬉しく思います。一つのシリーズを、書き切る機会を頂けて、作家としての綾里は、確かに揺るぎなく幸福だったと思います。
本当に、ありがとうございました。
------------------------------最後じゃない気もするキリトリ線再び----------------------------------
それでは、最後の御礼&宣伝コーナーに入ります。
担当の儀部さん、一巻から今まで、本当にありがとうございました。儀部さんの御助力あってこそ、『B.A.D.』を書き切ることができたと思います。途中まで、儀部さんと一緒にご担当頂きました笠原さんも、ありがとうございました。絵師のkonaさん、konaさんが命を吹き込んでくれたからこその『B.A.D.』であり、繭墨あざかでした。konaさんに絵師をご担当頂けて、私はこの上なく幸運で、幸せでした。『B.A.D.』は私だけでなく、konaさんとの作品だと思っています。デザイナー様、シリーズ全部に渡って、素晴らしいデザインをありがとうございました。毎回毎回、表紙を拝見する度に、作家冥利に尽きると、しみじみ感動していました。いつも表紙を心の支えにさせて頂きました。そして、販売やメディアミックスに携わってくださいました多くの方々、大好きな親友、友人達。大切な家族と、ずっと助けてくれた姉へ。本当にありがとう。
そして、読者の皆様へ、重ね重ねありがとうございましたッ!
そしてお知らせなのですが、『アリストクライシ』一、二巻共に発売中です。こちらも力の限り書きましたので、『B.A.D.』全部読み終わったぜ! という方には、手に取って頂けると、とても嬉しく思います。後はチョコレートデイズがもう一冊ありますが。
繭墨あざか、小田桐勤。二人の話は終わりました。
これから先は、見ることのない、それぞれの物語。
めでたし、めでたし。
作中、次の著書を引用、または作品に合わせて一部表記を変更して
使用させていただきました。
『ドグラ・マグラ 上』夢野久作著(角川書店)
『詩集 月に吠える・青猫・純情小曲集』萩原朔太郎著(講談社)