おけを持った少女が呆然と僕達を見る。彼女の背は伸びていた。記憶より、その顔は随分と大人びている。特徴的なふわふわのツインテールは、背中をおおう長さになっていた。


 彼女の隣に並んだ少年が、口を丸く開く。せた金髪に染められていた髪は、黒色に戻っていた。ずいぶんと印象が違って見えるが、体つきは変わらない。元気そうで安心する。


 彼の後ろに立っていた青年が、前に出ると顔をこおらせた。彼は伸びた白髪を後ろでくくっている。ぐに忘れるのではなかったのかと、僕は思わず心の中で突っ込みを入れた。


 彼はその腕の中に黒猫を抱えていた。確かに、繭墨あさとの異能と異界で得た肉があれば、外の世界でも生きていけるだろう。猫もまた、驚いたように僕達を見つめている。


 その更に後ろに立つ、白いドレスを着た女性だけは、驚く様子もなく微笑んだ。だが、隣に並んだ執事服の男性は、目を見開いている。相変わらず、仲がいいようで何よりだ。


 彼の後ろで、果物を持った少年がおろおろと辺りを見回した。彼もまた背が伸びている。随分と成長した気がした。彼は隣に立つ白い着物姿の女性の腕を何度も引っ張った。


 そして、僕はゆっくりと、彼女の顔を見た。


 彼女はその腕に、花束を抱えていた。皆が皆、まるではかまいりをするかのような格好だ。

 そこで僕は気がついた。そう言えば、ここは僕が奈落に落ち、異界に消えた場所なのだ。今日がいつなのかは知らないが、もしかして、僕の命日なのかもしれない。そんな日に戻って来るとは、タイミングがいいのか悪いのか、わからなかった。僕はぎこちなく顔を動かす。そして、彼女に笑いかけた。迷った末に、最初に思ったことを口にする。



「髪が、伸びたんですね?」



 彼女は走り出した。全員が口々に何かを言いながら駆けて来る。

 僕達はもみくちゃにされた。温かな体温が、声が、僕達を包む。




 こうして小田桐勤と繭墨あざかは。

 異界から、現実世界へと帰還した。