そう、一年前、俺がこの手で封印をくまでは。

 だがそれ以前のこと、つまり海賊時代の話はまるで知らない。

 この青蘭という海賊は、魎呼とどんな関係があったのだろう。

「魎呼は、俺の家にいる。いや……」

 青蘭の顔色が変わったのを見、天地は言い出しをあやまったことをさとった。

「そういう意味じゃなくって、もう家族の一員なんだ。いや、俺にとっては、っていうことで、ほらその、なんと言うか……」

 いきなりむなぐらをつかまれ、天地は息をまらせた。

さま!!

 目付きだけで殺されかねないふんである。

「どういう意味だ! はっきり言え! 魎呼とどういう関係なんだ!?

「天地殿!」

 ガーデイアンたちがすっ飛んで来た。

「海賊め、天地殿から手を離せ!」

「天地殿、こいつをたたき出してしまいましょう!」

 ガーディアンが青蘭のりようわきはさむようにぴたりと横についた。

「いいんだ。だけ

 天地はあわててガーディアンたちを制した。

 今までの短いつきあいから察するに、こいつはかなりあぶないやつだ。

 なるべくおだやかに話し合いたい。

「俺の言い方が悪かったんだ。俺もこの人にはさっきの借りがある」

 天地はあやうく童貞を失うところだった、ほんの10分かそこら前の出来事を思い出した。

かいしないでくれ。魎呼はいろいろあって俺の家にいるが、本当に何でもない。だけどこんなふうにされてちゃ、何にもしやべれないよ」

 青蘭の目にしゆんじゆんの色が見えた。

 と、すっと手が離れた。

「いいだろう。話が終わるまでは待ってやる」

 その時だった。

「てんちぃぃぃぃ!!

 いきなり、何者かが宙に現れた。と、同時にそれは天地にぶつかってきた。

「わッ……」

 けるひまもなかった。

 やわらかい、だが弾力のある二つのふくらみ。

 ここが地球を遥か離れた宇宙空間であろうとも、この声、この感触だけは間違えようがない。

「魎呼!?

「天地様!」

 魎呼と折り重なるようにして倒れ込んだ天地の上に、もう一人、よく知っている姿が倒れ込んだ。

「天地さん!」

 さらに、その上にギャラクシーポリスの制服を着た二人の女がのしかかった。

「ぐげえ……」

 さん、と言ったつもりだが、実際にはかえるつぶれたような声にしかならなかった。

「天地!! 無事だったか!?

「天地様、よくぞご無事で」

「天地さん、おは?」

 三人、いや四人の女が同時にしやべり出した。

「うう……」

 女たちの足元、いや体の下で押し殺したようなうめき声がした。

「ど……どけ……」

 きよが、ほしが、そして阿重霞と魎呼がはっと飛びのいたそこには、黒ずくめの見知らぬ男がのびていた。

「まさか……」

 魎呼が息をんだ。

 その声に男ははっと起き上がった。

「魎呼!?

「青蘭……」

 その瞬間、青蘭ののうから七百年の歳月も、怒りも悲しみも消え去った。

 心から愛した、ただ一人の女。

 共に星をめぐり、け、永遠をちかった女。

 そして俺を裏切り、去って行った女。

「魎呼ぉぉぉ!!

 動かぬ左腕のことも忘れ、青蘭は魎呼を抱きめようとした。

 そのせつ

 オーラ・ブレードが青蘭ののどもとに突きつけられた。

「動くな!」

 魎呼が、天地を守るように立ちふさがっていた。

 その目も、その姿も、青蘭の覚えているあの日の魎呼とすんぶん違わない。

 冷たく、だが火傷やけどしそうに熱い女海賊の目が青蘭を見返している。

「魎呼……!?

 青蘭の唇からあえぐようなつぶやきがれた。

「俺を忘れたのか!?

 オーラ・ブレードがわずかにふるえた。

「あたしはもう海賊じゃない。お前のことなど、忘れたぜ」

 その場に重いちんもくが降りた。

 その沈黙を破るものがあるとすれば、それは最後の審判のトランペットだけだったろう。

「みゃあああん!」

 実際に鳴り響いたそれは、もうちょっと現実的で、もうちょっときんな事態をじゆんしていた。

 魎皇鬼がけいこくを発したのである。

「なに、追っ手が?」

 魎呼はオーラ・ブレードを引っ込めた。

「青蘭。話は後だ。生きて話の続きがしたければな」

 その一言でかなしばりのじゆばくけたように、こおりついていた天地たちもスクリーンを見上げた。

 巨大なの内部から1ダースのアダムスキー・タイプの円盤が打ち出され、魎皇鬼に迫りつつある。

「魎皇鬼、スクランブル・ワープ」

 魎呼は一声かん高く叫ぶと、加速した。

 星々がゆがみ、放射状に流れた瞬間、魎皇鬼の機体はこのちゆういきからかき消えた。


 夜の女王は、[見守るもの]からその報告を受けた。

「スクランブル・ワープされました。ワープ・アウトを待ってひようを特定します」

 天地たちが聞いたアナウンスと同じ、ものやわらかな声だった。

「良いのじゃ、アインよ。急ぐことはない。思ったより多くの運命が交わることになりそうじゃ。それまで、わらわは待つとしよう」

つくよみ様」

 アインと呼ばれた声はささやいた。

「何故、お見逃しになったのです。貴女あなた様のお力をもってすれば、あの皇子を意のままにすることなど、たやすいはず」

「さあ、何故かな」

 女王はゆったりとクッションに身をあずけたまま微笑ほほえんだ。

 天地が見た黄金の玉座は消え、ごうしやな小部屋の中に女王は居た。

 二人の女……眠りと死の使い手はちようぞうのように女王のりようわきたたずんでいる。

「あの海賊……青蘭とか言ったな。わらわを突き飛ばしたのはあいつが初めてじゃ。たわけた男よ」

 女王はさもかいそうにほおゆるめ、かたわらの黒衣の女に問いかけた。

「そうは思わぬか、

 黒衣の女は重々しくうなずいた。

ものを逃がして不服か。まあ、良い。あの左腕はもう使いものにはならぬだろう。そう、命の水でもない限りな」

 女王がてのひらを差し出すと、き通った液体で満たされたグラスが現れた。

「時はいつかじゆくす。永遠を生きるわらわには、待つのも良いひまつぶしじゃ」

 女王は光の皇子のまだ幼い顔を思い浮かべ、満足げに舌で唇を湿しめした。


 何秒か何分か後、実際スクランブル・ワープ中の時間を問うても何の意味もないのだが、再びスクリーンに通常の宇宙空間がもどってきた。

「魎皇鬼!」

 魎呼がするどく叫ぶ。

「みゃん!」

 かんはつを入れず、魎皇鬼が答える。

 魎呼が振り向いた。

「大丈夫だ。ここは通常航路の近くで、ほんの3パーセクほど飛んだだけだ。追っ手の姿はない。危険はない」

 魎呼はそれだけ言うと、またくるりと前を向いてしまった。

 天地は我に返ったように息をいた。

 ちらり、と青蘭をぬすみ見る。

 青蘭は身じろぎもせず魎呼をぎようしていた。

 ぐんじよう色のひとみは照明を反射してこおりつくような光をたたえている。

 何を思っているのか、その唇は真一文字に引き結ばれたままだ。

 阿重霞と清音、美星たちは互いに顔を見合わせ、とまどっているようだった。

 無理もない。

 天地はジエット・コースターに乗っかったような一連の経過を思った。

 あの時魎呼が、阿重霞さんたちが現れなかったら、俺と青蘭はもっとめんどうなことになっていたかもしれない。

 魎呼が現れたので、青蘭が俺に聞きたかったことの一つは解決した。

 だが、さっきの魎呼と青蘭のやり取りは、何にも事情を知らない者が聞いても、おおよそのけんとうはつく。

 青蘭と魎呼はごくプライヴェートな関係にあった。

 間違いない。

 二人は俺の生まれるはるか昔、そういう関係にあった。

 天地は、自分がこんなふうに頭をめぐらしていることに気づき、何とも言えぬみじめな気分になった。

 関係ないじゃないか。

 頭の一部で冷静な声がする。

 しよせん、魎呼のことなど何も知らないのだ。

 昔の男が追いかけて来て、目の前でしゆを演じようと、そんなことは俺の知ったこっちゃない。

 俺は、魎呼とキスひとつしてないんだ。

 門答無用に問いめられたり、きようはくされるいわれはない。

 天地は思ったが、惨めないらちは一向に収まらなかった。

 何なんだ、こいつは!!

 天地は黒ずくめの海賊を再びぬすみ見た。

 まゆを寄せ、暗黒の宇宙をバックに立つ姿は文句のつけようがないほど絵になっていた。

 そう、七百年前も、このブリッジでこうして宇宙を見ていたに違いない。

 チクショウ、かっこいいじゃん!

 こいつが魎呼の恋人だったんだ。

 何で今まで言わなかったんだよ!?

 天地は心の中で毒づいた。

 ……って、言うわけないか。

 俺だって聞いたわけじゃないもんな。

 魎呼いったい何があったんだ!?

 だれにも言えないようなことなのか?

 何でだまってるんだよ!?

「宇宙海賊、青蘭!」

 もんもんと考えている間に、先を越されてしまった。

「魎皇鬼を……一般人の乗った船をこうげきしたわね。記録があるわ。殺人すいの容疑でたいします」

 清音が銃をかまえていた。

「俺は知らなかった。海賊が海賊の船をおそって、どこが悪い?」

 青蘭は平然と答えた。

「悪いが、刑事さん。そんなばなしをしているひまはない。それより俺の話を聞きたくはないか」

 ようやく清音の方に顔を向けると、青蘭はニヤリと笑った。

 自分の言葉の効果を知っている者の笑いだった。

「聞かせてもらうわ。留置場の中で、ゆっくりとね」

 清音がじようを取り出した。

「待てよ!」

 天地は思わず叫んだ。

「聞かせてくれ。いや、聞く権利があると思うんだ。襲われた本人が言ってるんだから、いいだろ?」

 ちくしよう、これじゃ俺はけの見本みたいじゃないか、と心の中で思いながら、天地は清音と青蘭の間に割り込んだ。

 清音は肩をすくめ、銃を下ろした。

「天地さん。この男は海賊よ。この七百年間ギャラクシーポリスのお世話にならなかったからといって、本性が変わったとは思えないわ。たたけばケチなほこりがわんさと出てくる、そういう男よ。話は聞かない方がいいわ」

「俺は、この人に借りがあるんだ」

 天地はのろのろと言った。

「それに、たいしなくても、阿座化と火美猛がこの人を外に放り出せば話は終わりだ。そうじゃないか?」

 青蘭の唇が笑いを含んでわずかにり上がった。

「天地。いや、皇子と呼ぶべきかな。君は思ったよりきようがありそうだ。魎呼はそういうところが気に入ったのかな」

 青蘭はそっぽを向いている魎呼に向かってあごをしゃくった。

「魎呼! そんなところでねていないでこっちに来い」

 ごく当然といった調子だった。


「俺と魎呼はコンビを組んでいた。……七百年ちょっと前のことだ」

 青蘭はクリスタルのひとつに寄りかかって話し出した。

「出会いは、そう……よくある話のひとつだったよ」


 ラメドのバーは海賊どもや無法者たちでごった返していた。

 フリー・ポートに近くて、適当な料金で、いざとなれば裏口から抜けられる、そんな店のひとつだった。

 生きてりゃまた店に来る、というのがマスターの言い草だった。

 死体になったやつは運がない、というわけだ。

 実際、生きてる海賊は酒を飲むか、さわぎを起こすか、女をくのに忙しく、だからそうぞうしかったし、死体になってころがってる奴はもう何にもやりようがないので静かだった。

 俺はあいぼうを無くしたばっかりで、騒ぐ気にはなれなかった。

 かといって、女のいるような店に行く気もなかったので、奥のカウンターにじんってトパーズをなめていた。

 そこに魎呼が入って来た。

 ほんの一瞬だったが、店が静まり返った。

 魎呼は俺のとなりに腰を下ろし、同じものを注文した。

 その時すでに、俺は魎呼から目が離せなくなっていた。

「一人か」

 俺は聞いた。

「どこから来た」

 魎呼は丸腰だった。得物も持たずにこの店に来る奴は旅行者か、間抜けかどちらかだった。

 魎呼の手にオーラ・ブレードが現れた。

「消えな」

 というのが最初のあいさつだった。

「そうだったな、魎呼?」

「フン」

 魎呼はまたそっぽを向いてしまった。

「そんなこと、もうどうでもいいじゃんか」

「いいや、良くない。思い出して欲しいからな。皇子、君も聞きたいだろ?」

 聞きたくないとは言えなかった。

 阿重霞たちは興味しんしんで続きを待ち受けている。

 青蘭はゆうの笑みを浮かべた。


 それから三日後、俺と魎呼は宇宙にいた。

 三年と三か月の間、俺たちはコンビを組んで宇宙を荒らし回った。すじこおる思いもしたし、バカなこともした。

 俺たちは古典的な海賊行為からトレジャーハンターまがいのことまで、なんでもやった。

 金はうなるほどあったから、ごうゆうもした。

 宇宙船一台分のドレスに身を包んだ魎呼は美しかった。

 クラブ・シャミールを借り切って遊んだエメラルドの海は、死の恐怖を洗い流してくれた。

 だが、魎呼に一番似合ったのは、暗黒の宇宙とバトル・スーツだった。

 このブリッジで見る星々の海はただだったが、結局それが何にもまして美しいのだということを、ほどなく俺は知った。

 魎呼は相棒としても、女としても、申し分なかった。

 だが、決して言わなかったセリフがあった。

 俺が同じセリフを何万回り返そうとも、魎呼は答えずに笑っていた。

 笑いながら、まばたき一つせずに俺を殺すことも出来る、そんな笑顔だった。

 俺は、そのセリフを言わせてみたくなった。

「ネプチューンの涙を取って来たら、望む言葉を言ってくれるか」

 魎呼は笑った。

「青蘭、お前に出来たらな」

「その腕の宝玉にけてちかえ」

「やなこった」

 魎呼は、それだけは決して外そうとしなかった、発光体の入ったリングを外し、俺の前に置いた。

 光輪教のお守りだった。

「こいつにけて誓うよ。これはな、あたしが生まれて初めてもらったプレゼントなんだ。その女はな、名前も分からない。生まれた時から海賊だったあたしは、この宇宙にあるもの全てはうばい取るもんだと思ってた。そりゃ、命のかわりにモノを差し出す奴はいっぱいいたさ。だけど、その女は命のかわりにリングをくれたんじゃないんだ」

 魎呼の顔がふっと陰った。

「そいつは、あたしのぶっ壊した船の下敷きになって死にかけていた。ホームレスだって着ないようなボロを着て、たった一つのそうしよく品がそのリングだった。生き残りがいようとは思わなかったから、あたしはとどめを刺そうとした。すぐ手を引っ込めたけどね。女はあたしを呼んで、こう言ったんだ。光輪様があなたを導いてくださいますようにってね。リングをくれて一分とたないうちに、女は死んだ。あたしは魎皇鬼の中で、それを思い出し、しばらく考えた。意味が分からなかった。リングにはこう書いてあったんだ。愛ハくうヲ照ラス光ナリ。光スナワチめつノ真理ナリ」

「そいつは俺が何万回となえたか分からないじゆもんと同じだぜ。魎呼、俺はいつも言ってるじゃないか。愛している、と」

 魎呼の目が冷たい光を帯びた。

 情け知らずの女海賊の目だった。

「違うな、青蘭。でも、ネプチューンの涙を取って来たら、同じ呪文を唱えてやってもいいよ。お前の目と同じ色だ。お前の目はきれいだけど、ほじくり出すわけにいかないもんな」

 そして俺は、なんこうらくうたわれたさいおうしのび込んだ。

 俺がネプチューンの涙を手に入れた時、魎呼、お前は消えていたんだ。


 青蘭はそこで言葉を切り、しばしめいもくした。

「魎呼。俺はあの時の誓いを果たすために来た」

 青蘭は立ち上がり、魎呼の手にちょうど宝玉と同じ大きさの、ぐんじよういろの宝石をせた。

 魎呼の手の上で青いほのおが燃え上がり、幾千万の星を集めたようなかがやきがくだけた。

「ネプチューンの涙……!」

 魎呼は目を見張った。

「まさか! 記録にはぬすまれたのはレプリカだったと……」

 清音が思わず声を上げた。

 青蘭は魎呼を見下ろしたまま、答えた。

「どちらを信じる? 俺か、斎王家か」

 魎呼がはっと顔を上げた。

 青蘭はぞうに宝石を取り上げると、左手首のそでに隠れて見えなかったリングを引き抜いた。

「その目を見れば分かる。お前はもう、海賊じゃない。だが、このリングに誓った約束は果たしてもらおう。そのために俺は生きびて来たんだからな。右手を出せ」

 青蘭は、凍りついたように立ち尽くしている魎呼を満足げにながめ、不意にきびすを返すと、天地のわきに立った。

 どうやったのか、誰にも分からなかった。

 青蘭が離れた時には、天地の左手首にリング……誓いのリングがめられていた。

「え!?

 予想もしていなかった出来事だった。

 天地は、ぼーっと光るリングを外そうとして引っ張ったり、手首をねじったりしてみたが、リングはぴたりと手首に嵌まっていた。

「皇子よ。さわらない方がいいぞ」

 青蘭は静かに言った。

「そのリングにはさいがしてある。無理に外そうとしたり、きずをつけたりすれば爆発する。大した爆発ではないが、嵌めた人間をちりに変えて吹き飛ばすぐらいのりよくはある」

 流れ星が消える程の間があった。

 次の瞬間、清音と美星が銃を構え、魎呼がはじき飛ばされたような勢いで青蘭ののどもとにオーラ・ブレードをきつけた。

「俺を殺せば、そのリングは即座に反応する。かいじよするキーワードは俺しか知らない。それでも良ければ、さあ、引き金を引け」

 青蘭の唇に満足そうな笑みがのぼった。

「青蘭!!

 オーラ・ブレードの切っ先が青蘭の喉元に食い込んだ。

「魎呼。お前は変わったな。以前のお前だったら、ネプチューンの涙を手に入れた瞬間に、俺を切り捨てていただろう。お前はそういう女だった。覚えているか? 俺の腕の中にいる時でさえ、お前の目は冷えびえとえていた。いつからそんなに心優しい女になったんだ!? おう様に会って生まれ変わったってわけか? そんなことは信じないよ、魎呼」

 青蘭はオーラ・ブレードを押しやり、魎呼に近づいた。

「さあ、約束の呪文を唱えてもらおうか。皇子を死なせたくなければな」

「魎呼!」

 天地は反射的に動いた。

 額のもんしようかがやき出す。

 天地の右手に光が集まり、こうよう真剣が現れる。

「天地……!!

 魎呼の叫びに振り上げた剣が止まった。

「来るな! こいつは本気だ!」

「魎呼!?

 額の紋章から光が消えた。

 光鷹真剣が薄れていく。

すさまじいエネルギーだ」

 青蘭がかんたんしたようにつぶやいた。

「君には何かがあると思っていたよ。魎呼が興味を持つような何かがね。だが、皇子よ。君は少しばかり経験が足りないようだ。俺のような海賊を出し抜くには、な」

 青蘭は右手で魎呼を抱き寄せ、一同を見回した。