女王が青蘭の手をぴしゃりと払った。
「魎呼などという者はここには居らぬ。どうやってガードシステムを通り抜けて来た? 心に殺意を抱く者は何者も通れぬはず」
「殺意!?」
青蘭は胸倉をつかんだ手を離し顔を上げた。
「俺は命を
天地は夜の女王と海賊とに
かっこいい……。
正にヒーロー、
喜んでこの場を
天地は魎呼のように空間移動できればよかった、と思いながら、そろそろと
「待て!」
青蘭の手がぐっと天地の
その首筋に冷たいものが押しつけられる。
「お前にはまだ聞きたいことがある。来い!」
青蘭は天地を引きずり起こし、銃を突きつけたままぐいと背を押した。
「わらわの客をどうするつもりじゃ!?」
女王が二人の前に立ち
「青蘭とやら。ここに来て以来、わらわの力の及ばぬ男を見たのは初めてじゃ。だが、横取りさせるわけにはいかぬ。
女王は影のように
女は
「その手が
天地は、青蘭の体が本能的な恐怖に引き
と、黒衣がふわりと宙を
「走れ!!」
青蘭は
「あ、阿座化! 火美猛!!」
天地が
「うあああっ」
青蘭の
「青蘭!?」
「飛べ、早く!」
青蘭は苦痛に顔を
一瞬後、二人の体は光の
「近いぜ。あとワン・ドライブの
シャトルのコクピットでスクリーンを見つめていた魎呼が
狭いコクピットに全員が集まって、同じようにスクリーンを見上げている。
スクリーン上に表示されているのはただの宙域データで、この付近は特に何もない……
「天地様はどこですの?」
阿重霞が
「うるさいな、
魎呼は
「おかしいな……ニンジンが見えるぜ」
阿重霞がもう待ち切れない、と思った時、魎呼がぽつりと呟いた。
「並の量じゃない。ニンジンの山、いや海だ。あのヤロウ、頭までニンジンに
「ニンジン?」
「
「違う」
魎呼が眉を寄せたまま答えた。
「魎皇鬼だけだ。天地はそばにはいない。ガーディアンも」
魎呼の言葉が何を意味しているのか誰にも分からなかったが、阿重霞は
「わたくし……小さい頃にお父様から聞いた話がありますの」
阿重霞は
「広い宇宙には船乗りの夢を
「止めてよ!」
「天地兄ちゃん、食べられちゃったの?」
「そんなこと言ってないでしょ!」
阿重霞は自分の話に
「天地様は
「アルコールは積み込んでいない。ニンジンからニンジン酒でも造らない限りね」
鷲羽が誰に言うでもなく、
「鷲羽殿、
「そうよ。魎呼さん、早く行きましょう」
「方向は?」
魎呼は無言でディスプレイの一点を指さした。
「雪之丞、ショート・ドライブ、スタンバイ。清音、データ・セットお願いね」
清音は余計なことは言わなかった。
「データ・セット完了。行こう、雪之丞」
シャトルは再びドライブ・スペースに突入した。
「だ、大丈夫ですか?」
天地は長身の
青蘭の左腕は
「余計なことを言うな。魎皇鬼はどこだ!?」
光の柱から出たそこは、確かに見覚えのある
「
青蘭は銃を突き付けた。
「魎皇鬼を呼べ。
と、フロアーにいくつもの光の柱が現れた。
わらわらと警備員、いや、警備ロボットが実体化する。
言い争っている暇はなさそうだった。
「魎皇鬼!」
天地は声を限りに叫んだ。
俺は魎呼じゃない。
どこにいるのか分からない魎皇鬼が呼べるものなのか、確信はなかったが、この状況ではそうするしかなかった。
「天地殿!」
予想に反して別の声が答えた。
ガーディアンたちが天地の両脇に実体化する。
「申し訳ありません」
「魎皇鬼の居場所が分からないのです」
驚備ロボットは、いやロボットと呼ぶのが正しいのかどうか分からなかったが、人型の
攻撃してこないところをみると恐らく、
「呼び続けるんだ」
青蘭は銃を
天地は観念して目を閉じた。
心の中で魎皇鬼に呼びかける。
ニンジンの山にかぶりついている魎皇鬼の姿が見えたような気がした。
「魎皇鬼! 助けてくれ」
みゃああああん、という声が天地の
円形に並んだ人型棺桶の間に光が走る。
「天地殿、
阿座化が
天地は答えなかった。
その間に棺桶たちの光の輪は完成し、ゆっくりと
「みゃああああん!」
上方から声が聞こえた、と思った瞬間、天井に
「魎皇鬼!」
天地たちの体がふわっと浮き上がり、空間転移した。
一同を収納した魎皇鬼はそのまま
「あっ!」
ドライブ・アウトしたシャトルの中で、コクピットにいる全員が、それを見た。
宇宙空間に咲く、一輪の巨大な
その花弁を突き破るように飛び出して来る魎皇鬼。
「魎皇鬼!!」
魎呼が叫んだ。
「待ってろ、今行く!」
空間転移しようとした魎呼の腕に阿重霞がしがみついた。
「わたくしも参ります!」
「阿重霞さん!」
清音が
「待って!」
美星が消えかけようとしている清音の腰に抱き付いた。
「おね……えさま!?」