ダンスレッスン終わり、その日集まったメンバーで飲みに行こうって話になったのが最初だった。 私は焼肉を希望したけど多数決で居酒屋に決まってちょっと不服な表情を見せていた。当たり前のように隣にいるビジネスフレンドのみこちはそれに気づいたようで「どんまい」と小さく声をかけてくる。 もし焼肉屋に行ってたら未来は変わっていたのだろうか。後になってそう考える事になるとは。 私は飲まないと先に言ってたので誰もお酒を勧めてくる事はなかった。が、隣に座るみこちは違う。 普通に飲んでる。お勧めされたやつ、全部。 お酒に詳しくないから分からないけど度数とか大丈夫なのかと心配になる。 私よりは飲み慣れてるから大丈夫でしょ。 そう思ってたのに。 「何、これ………」 問題が起きたのは私がお手洗いに向かう為、席を立っていた数分の間だった。 「あっ、すいちゃんだぁ!おかえり〜」 「これ、どういう事?」 席に戻った途端、私の腰に腕を回し肩に顔を擦り付けてくるみこち。それを引き剥がしながら他のホロメンに尋ねる。 他のメンバーも酔ってるのか快活に笑って「酔ったみたい」と無難な答えてきた。 この酔っぱらい集団め。 「みこち、暑いからくっ付かないで」 「すいちゃん、ひどい!減るものじゃないでしょ!」 完全に酔っているみこち。ここに居させるのは色々な意味で危険だと踏んだ。 「みこちは先に連れて帰るよ」 「よっ!ビジネスフレンド!」 誰かが言った言葉に揃って「あはは!」と笑い出すホロメンたち。こっちもちゃんと帰れるのか心配だな。 後で帰れたか連絡しておこうと思いながらみこちの手を引っ張る。立ち上がってはくれたけど酔って眠くなってきたのかふらふらの足取りで歩く彼女に肩を貸す。 近くでタクシーを拾って二人で乗り込むと行き先はみこちの部屋にした。 まだ行った事はないけど住所だけは教えてもらっといて正解だ。 「みこち、着いたから鍵出して」 マンションに到着すると声をかける。 相変わらず私の肩に掴まっていないと立っていられない様子でこれは部屋まで送り届けないといけないらしい。 のろのろ鞄の中から鍵を取り出し、私に渡してくる。 「全く世話がかかるんだから」 今度焼肉を奢ってもらうと思いながらみこちの部屋まで向かう。 到着して鍵を開けて中に入る。 「汚い………」 汚いからいきなり人に来られたら困る。 そう言ってたけど本当に汚い。 掃除したくなる気持ちを抑えながら寝室を探す。 ここは配信部屋みたいだし、こっちか。 開くと思ったより落ち着いた雰囲気の寝室が広がっていた。 「みこち、着いたよ」 彼女をベッドに座らせる。水でも持って来ようと思ったのに引き止めたのは酔っぱらい。 みこちは私の腕を掴み、頭を擦り付けてくる。 今度は何だと振り返る。 「すいちゃん………」 いつも以上に舌足らずな甘い声と上目遣いにどきりと心臓が跳ねる。 みこちはビジネスフレンドなのに。ドキドキしちゃダメでしょ。でも、これは誰だってこうなるって。 それくらい破壊力のあるものだった。 「みこち、水取りに行くから離して………」 ここに居るのは危険だと離れようとするのに掴む力が強まる。といっても彼女は非力だから振り解けない事もない。 そう思った瞬間、思い切り引っ張られた。 いきなりの事で抵抗出来ずに彼女に覆い被さってしまう。側から見たら私がみこちを押し倒してるような状況だ。 この酔っ払いめ。 「すいちゃん………」 お酒のせいか熱を纏った色っぽい声が響く。 下から伸びてきた手は私の頰を撫でて唇まで移動する。ふにふにと指先で押し潰された。 酔いすぎでしょ。 「ちゅーしてもいい?」 「は………?」 急に何を言ってるんだという気持ちを込めた。 分かっていたけどかなり酔っているらしい。 早く寝かしつけないと。 「ちゅーするにぇ」 「駄目に決まってるでしょ」 私の答えを聞かないみこちは頰を両手で掴み近づいてくる。そのままぴったりとくっ付けられた。 これ、夢じゃないよね? 短い舌が唇を舐めてきて思考の邪魔をする。 「んぅ、っ、んっ………、まっ………」 呼吸をしようと少し開いた隙を見逃してくれなかった。抵抗する暇もなく舌が滑り込んできて、中を荒らされる。 お酒くさい。彼女の舌に残った微かな酒の味にこちらまで酔いそうだ。 一体どこで学んだのか角度を変えながら深いキスをするみこち。舌を吸われて、上顎をなぞられて頭がぼんやりする。 「………っ、ぁ………」 これファーストキスなんだけど。 最初がこれとか普通だったらトラウマものだ。 そう思うのに気持ちが良い。 みこちは初めてじゃないのかな。 もし初めてじゃなかったらと思うと途端に嫌になって逃げたくなった。 「ん、ぁ………」 体を引こうとすれば舌を吸い上げられ解放される。 息を整える私の唇を指の腹でなぞるみこちも息が乱れてる様子。お互いの荒い息だけが部屋に響いてる。 「すいちゃん、しよ?」 何を?と聞く必要はなかった。 引き返さないといけない。一線を飛び越えればもうビジネスフレンドに戻れなくなる。 それなのに私は肯定も否定も出来なかった。それを肯定と受け取ったのかみこちは嬉しそうにキスをしてくる。ぐるんっと体の位置が入れ替わった。 意外と器用な事をする。 「ま、って………みこちがするの?」 尋ねれば笑顔で「そうだよ。すいちゃんやり方知らないでしょ」って答えと共にまたキスをされる。 唇が離れたかと思ったら着ていたカーディガンを脱がされてしまう。みこちも暑いのか自分の上着を脱いでまた覆い被さってきた。 「すいちゃん………」 熱っぽい声で名前を呼んで、キスをしながらワンピースの上から胸に触れてくる。ちょうど先端を押し潰されて反射的に腰が跳ねた。 「たっちゃったね」 「言わなくて………ぁ、いいっ………」 「ん?気持ちいいの?」 「ちがっ………」 意地悪をしたいのか耳元で囁いてくるみこちを睨み付けるけど、こちらを見ていないのだから気付くはずもない。耳たぶを甘噛みされて、吸うように舐められる。 「そこ、ぁ………やだっ………」 首を振って嫌がってみる。みこちは「すいちゃん、可愛い」と笑って、再び唇にキスを送ってくる。 「ぁ、っ………やぁ………ま、って………!」 キスをされながら胸の先端を触られて、頭の中がぐちゃぐちゃになりそう。 ぐちゅりと生々しい水音を鳴らし私から離れたみこち。見上げると自身の服をゆっくりと脱いでいた。 まるで私に見せつけるかのように。 「みこ、すいちゃんとえっちなことがしたいなぁ」 私、酔ってるのかな。 断らないといけないって分かってるのに。どうして自分からみこちにキスしてるんだろう。 彼女の口の中はまだお酒の味がした。 「初めてなんだけど」 「やさしくするにぇ」 嬉しそうに笑ってキスをしてきた。受け入れるって決めたからかさっきよりも気持ち良く感じる。 着ていたワンピースも、下着も、全部脱がされて裸にさせられた。流石に全裸は恥ずかしくて身を隠そうとするけど「隠しちゃだめ………」と甘えた声を出されてしまう。 「脱がないの?」 「脱がして?」 脱がすって言っても………。 それくらいなら出来るかと彼女の服に手をかける。 ゆっくりと全てを剥ぎ取っていく。 めっちゃ気まずい。 下着を床に投げ捨てたところで「ありがとう」とキスを受けた。 みこちキスするの好きだね。 そう思ってると彼女の唇はゆっくり下に向かっていく。首筋を舐められ鎖骨を甘噛みされる。 「んぅっ!」 噛まれたところを吸い上げられる。 少し痛みが走ったかと思ったら満足そうに笑うみこちが居た。 「これ見られたらまずいにぇ」 最悪だ。痕付けるとか馬鹿でしょ。 そう言ってやりたかったのに胸の先端を口に含まれ、舌で転がされたら漏れ出る声は文句にならない。 「あっ………んっ、やぁ………!」 「気持ちいいの?」 「そこで、喋ら、ぁ………ない、でよっ…」 「気持ちいいんだぁ」 人の話を聞かずに嬉しそうにするみこちはまた先端を口の中に含む。舌で転がされて吸い上げられる。感じやすい体質なのか私の体はびくりと反応をしてしまう。 胸を攻めながら手を下の方に持っていく。 「そっちはだめっ!」 足を閉じようとしてもみこちの体が邪魔されてしまう。あっさりと中心を触られて、粘り気のある水音が部屋に響く。 どれだけ濡れているのか分かる。自分でする時は全然なのに。何が違うというのだ。 「もう、いれてもいい?」 急かすように聞かれる。早く触りたくてたまらないって感じ。 初めてなのだ。ゆっくり慣らしてほしいところだけど体はそう言ってない。すぐにでも中に欲しいって告げている。 「ん」 小さく頷けば粘着質な水音を鳴らしながらみこちの指が入ってくる。 「ぁ、あっ………うぁ………」 「痛かったら言ってにぇ」 「ぁ、んっ、やっ………はっ………ぁっ………」 奥まで入ったかと思えば、ゆっくり引き抜かれてしまう。寂しさに襲われているとまた奥まで貫かれる。 初めてのはずなのに気持ち良すぎて、目の前のみこちにしがみ付く。 ゆっくりと指のスピードが上がっていく。 変になりそうだから駄目なのに、気持ち良いからもっと触ってほしい。 矛盾した考えが脳に浮かび上がる。 「ぁっ、あぁ………んっ、そこっ………気持ちっ………」 「ここが気持ちいいの?」 「みみ、あっ、ぁ………ぁっ、しゃべらな、やぁ……」 ぎゅうぎゅうにみこちの指を締め付け、もうすぐだって伝えてくる。浮き上がる腰を体で押さえつけられて。口パクをする。 『イッちゃえ!』 声は聞こえなかったけど確かにそう言われた。 「やっ、ぁっ………イッ、ちゃ……イクッ………」 つま先がぴんっと張る。 身体を反らし蓄積されたものが一気に身体から抜けていく。浮き上がってた身体が布団に戻ってからみこちを見上げる。 満足してくれたでしょ? 肩を押しのけようとするけど私の考えはあっさりと打ち砕かれてしまう。 「もういっかい、ううん、もっとたくさんしたい…」 一回じゃ全然足りない。 エメラルドの瞳が言ってくる。 お酒か、みこちか。 どっちに酔ったのか分からないけど私は笑って答えた。 「良いよ」