エピローグ
「大体おめえは、普段はお嬢様づらしているのに、イジきたねえな」
「何ですって! お父様が広島の出張で、せっかく買ってきてくださったモミジ
「おやおや、またお父様か。気安く呼ぶんじゃねえよ。
「まあー、いつ迷惑だっておっしゃったの。それに、大切な方に親愛の情を込めてお呼びするのが、どうしていけないの?」
「
あいかわらずのレベルの低い会話が聞こえている。
裏返すと、この手のやり取りがある時は、平和な
1996年、春真っ盛り。
やわらかな春の光に
天地は、茶の間の
人込みでごったがえす東京駅の、修学旅行帰りの一群の中に、ひときわ輝いて見えた母の姿。
東京タワーで、気絶している間に会わずに別れたのは、
それに、母の強い意志の表れだったのかもしれない。
だが天地は、どうしようもない
会って
どうしても現代に
(あんなに生き生きしてたのに……。あんなに輝いていたのに……)
どうして今、母はここにいないのだろうか。
そして、あの不吉な鷲羽の言葉が
「よう、天地。どうしたんだ、こんなところに一人で……」
天地は、庭の
「……なあ、親父は母さんが幸せだったと思うかい?」
いきなりの天地の問いかけに
いつもの調子で、信幸は答えた。
「ああ。もちろん、幸せだったさ」
「どうして?」
「そりゃもちろん、
明るくVサインしながら言う信幸に、天地は
「もういいよっ!」
と言うと、縁側から飛び降りた。
「うーん。思春期の少年の心は
天地の後ろ姿を見送りながらそう言った信幸は、自分も縁側から庭に下り、柾木家を
『……幸せだったさ。わずかの間だったが、この夢の家で
信幸は26年前、修学旅行の帰りに阿知花が言った言葉を思い出していた。
〝信幸君、いつかあんな家に一緒に住めたらいいわね〟
家の上に、白い雲がひとつポッカリ浮かんでいた。
縁側を飛び出して、天地は母の眠る丘まで一気に
今日のように晴れわたった日は、遠くを見渡すことができる。
見ると、
「……親父!?」
お袋の命日には必ず、
『おまえの母さんは、この白い百合の花が大好きだったんだぞ』
時々親父は、一人でここに来ているのだろう。本当の親父の心が、少し見えるようだった。
『親父があんな明るい性格になったのは、お袋のお
さっきの親父を思い出して、あんな態度をした自分にテレた。
だが、天地の心を、ずっといら立たせている言葉が気になった。
それは、鷲羽の言ったさりげないひと言だった。
〝
『まさか、母さんもあの戦いが元で、若くして死んでしまったんだとしたら? だったら、
天地の
ガサガサッ。
小
「天地殿!」
草を
「一人で、どうしたの? ははあー、何考えてたか、当ててみようか。母上のことでしょ?」