「準備OKよ! 急いで!!」
清音が叫んだ。
その美星と清音に、襲いかかろうとする禍因の前に回り込んだ天地は、天地剣を
「早く、母さんを!」
叫んだ天地の耳に鷲羽の言葉が残る。
『いいかい、
「さあ、早く!」
ぽっかりと口を開いた空間の裂け目から、まず信幸を抱きかかえて、阿重霞が脱出する。
清音が、
「エネルギーレベル・マクシマム! カウントダウン・スタート!」
次元
「行くわよ、美星!」
「は~い!」
美星と清音も、空間の裂け目へ向かって走り出す。
空間が、
禍因の周囲に、プラズマの
「うわあっ」
その
その手から、天地剣が転がり落ちる。
阿知花を助けて、脱出しようとしていた魎呼は、天地の危機に気づき、瞬間移動しようとした。
「うわあっ!?」
だが
「早く! 時間がありませんわよ!」
空間の向こうから、阿重霞の
次元振動弾のカウンターが、目まぐるしい勢いでカウントダウンを続けている。
「天地様!」
阿重霞が叫んだ。
天地は、気を失っていた。
「もう時間がない!」
清音も必死だ。
阿知花は、天地の取り落とした天地剣が、自分の足元にあることに気づいた。
急いでそれを
天地剣を
「すげえ! さすがは天地のおっかさん……だが相手が悪すぎるぜ。阿知花っ、ひきあげるんだ!」
魎呼がそう叫んだ時には
「魎呼さん、天地を……は、早く連れて行って……お願い」
と、言うが早いか、
これが禍因の恐れていた力なのだろう。
「ギャアアアアアアーッ」
なんと見事に剣先が、一撃で禍因の能面を打ち
絶叫し、
「早くっ!!」
天地を
「グ、グオオオオーッ」
苦しみながらも禍因が迫った。その黒い影が追いつく寸前、阿知花は裂け目に飛び込んだ。と同時に裂け目はその口を閉じた。
一瞬の後、次元振動弾のカウンターがゼロを示した。
空間全体に
東京タワー前のバスターミナルは、
修学旅行最後の見学を終えた生徒たちが、ガヤガヤとバスに
「あの子は?」
心配そうに
「応急手当をして、休ませています。
「そう。ありがとう」
「阿知花殿。禍因が消滅した今、すべての
「ええ……私は信幸くんと
「そうね」
鷲羽は「ふっ」と
「もう、行ってしまうの?」
魎呼の、阿重霞の、美星の、清音の、そして砂沙美と魎皇鬼の顔を見渡しながら、阿知花が言った。
皆も
「
魎呼がいつもの調子で言った。
「ええっ……さようなら。あなたたちが来てくれて楽しかったわ。でも、もう二度と会えないのね……。天地を……あの子をよろしくね」
阿知花は、そこで言葉を切ると、思いきったようにつけ加えた。
「私は、あの子が一番大変な時に、
「阿知花殿!」
鷲羽がとがめるように、でも小さく叫んだ。
皆はただじっと、阿知花の形のいい
阿知花は、少し
「
「天地殿に会わせてあげたいけど、タイムパラドクスが生じる危険があるの」
鷲羽が冷静に言った。
「ええ、分かっています」
「阿知花ちゃーん!」
バスの中から、阿知花を呼ぶ信幸の声が聞こえた。
「私たちももう行かなくっちゃ」
鷲羽は、寂しそうな、しかし
「あばよ」
「お元気で」
「さよなら」
「サヨウナラー、グスッ」
それぞれが、阿知花に別れの言葉を告げた。
東京タワーを後にしたすずめ観光バスは、たくさんのすずめたちと思い出を乗せ、東京駅へと着いた。
予定通りの新幹線ひかり号に乗車した一行は、
「あー、疲れたあ」
「ねえ、ねえ、お
「もう帰るのかー。なんか寂しいなあ」
ワイワイガヤガヤと相変わらずうるさいクラスメイトたちの中で、阿知花は、ぼんやりと窓の外を
「阿知花ちゃん、疲れたのかい?」
「なんだか
「ええ。ねえ、信幸君、いつか見せてくれた、家の絵があったでしょう?」
「ああ」
「ほんとにいつか、
「え? あっ……うん」
うろたえて、真っ赤になりながらも、信幸は大きく
この時、信幸の夢の家に、もうひとつ大きな夢が加わった。
今、隣にいる阿知花を、家の住人にすることだ。
二人は、過ぎていく東京の
まだまだ二人はこれから、進学や
暮れなずんでいた大都会にも、人々の
やがて西へ向かうひかり号のテールランプが、すうっと