何もかもを吸いくし、おとろえさせるエネルギー。

 樹雷のが持つ〝育て、はぐくむエネルギー〟とはまつたく別の物だ。

 宇宙船にきざまれた記憶が、ゆっくりと動き出した。

 わくせいかいテロ、大量殺人、宇宙船破壊……。

 数々のべつテロをり返す能面のかいじんは、全宇宙の人々を恐怖におとしいれていた。

 時は、宇宙暦507410……年。

 ギャラクシーポリスは、その怪人を全宇宙に指名手配し、全力をあげてついせきしていたが、全く歯が立たなかった。

 ギャラクシーポリスは、時の樹雷おうに協力をあおいだが、樹雷の人々は皆、そのようせいを拒否するよう、おうに進言した。

「皇、危険です。これまでに分かっているところでは、アイツのエネルギーはマイナス因子なのです。皇の持つプラス因子が、アイツの前でどうなるかお分かりでしょう?」

 皇は静かに言った。

「アイツの前では、私の力はことごとく吸い取られてしまうだろう。だが、アイツの力もまた、私のエネルギーによって弱まってゆくはずだ」

「皇! とんでもございません。そのようなお考えはお捨てください。幸い、プラスの因子がひしめいている樹雷には、さすがのアイツも手が出せません。樹雷のたみは、樹雷にいる限り安全なのですから……」

 樹雷皇は、悩んだ。

 悩んで、悩んで、悩み抜いた。

 このおんな時代に、自分が樹雷を旅立てば、樹雷の民は不安がるだろう。

 しかし、仮にも全宇宙の中でも最も強大な樹雷星の皇が、宇宙の一大事をこのまま手をこまねいて見ているだけでいいのだろうか、と。

 もちろん、そんなきれいごとばかりではない。

 自分には愛する妻もいれば、かわいいおうも姫もいる。

 もし私が戦いにおもむやぶれたら、あの者たちの運命はどうなるのだろうか……。

 しかし、皇は決意した。

 たとえ、生命を捨てようとも、あのさつりくを止めさせることができるのなら……。

 そうして皇は旅立った。

 自分の宇宙船とともに、あの、怪人の元へと……。

 旅立って1週間の後、怪人は待ちかまえていたように皇の元へ姿を現した。

 聞きしにまさる、あの能面のようなな顔が、宇宙船のスクリーンいつぱいうつし出された。

「よく来たな、樹雷の皇よ。お前があの星を離れてくれてうれしいよ。さしもの私も、あの星全体のパワーには負けてしまう。だが、お前と星が別々になった今は別だ。行くぞっ!」

 バシッ! バシッ! バシッ……!

 怪人の、広げた両の手から、激しいプラズマがはなたれた。

 瞬間、宇宙船はバランスを失った。

 光の奥から声が聞こえる。

「出てこい、樹雷皇。そして、私と戦え!」

 バシッ、バシッ、バシッ!

 またしても激しいプラズマが宇宙船を直撃する。

 このままでは宇宙船が持たない。

 樹雷皇は、戦闘服を身につけ、剣を手に、宇宙空間へとおどり出た。

 たんに、激しいプラズマが身体にしようげきを与える。

 それは、これまでにない打撃だった。

 痛みでも、苦しみでもなく、自分の中から何かが消えせるような感覚……。

 だが、樹雷皇は体勢を整え、強く光る剣をもって怪人にいどんだ。

 まさに、生死をけた戦いだった。

 自分の力を、運命を信じるしかない。

「ヤアッ」

「グォーー」

 確かな手ごたえを感じた。

 怪人が叫ぶ。

 地を引きくような響きだった。

 とどめとばかりにりかかったが、剣を振りかぶったところを、またプラズマにおそわれた。

 バシッ、バシッ、バシッ!

「ウグッ」

 簡単に決着は着かなかった。

 これまでのどんな戦いよりも、長く、苦しい時間が過ぎた。

 何よりも、時間がつにつれて、自分の中のそうしつかんが高まるのがつらかった。

 しかし、「自分がこれだけエネルギーを失っているのだから、相手も同じに違いない」

 そう言い聞かせた。

 が、り返される攻防に、もう力が尽き果て死をかくし始めた。

 その時だった。激しい警報が樹雷皇の耳をつらぬいた。

 ウ~ウ~ウ~

「全宇宙指名手配、とくしゆエネルギー体N.O.V.分類。コードネーム『KAIN』ただいま発見! 亜空間ネットによりかくします!」

「グワ~」

 樹雷皇との長い戦いでしようもうしていたカインは、亜空間ネットにあえなく捕獲された。

 樹雷皇に向かって、こう叫びながら……。

「覚えていろ。樹雷皇。これから先、お前へのにくしみだけが私のかてだ。私はお前をうらむ! お前の星を恨む!! お前の子孫を恨んで、恨んで、恨み尽くしてやる、何億光年経とうとも!!


 気がつくと、私は宇宙船の記憶の前で泣いていた。

 カインの地の底をうような叫びがあまりに恐ろしかったのだ……。

だいじようか、皇子よ?」

 父上の優しい手が肩に置かれ、私はますます泣きじゃくった。

「お前が泣くことはない。ずっと昔の話なのだから……」

「この後、どうなったの?」

「樹雷皇はに国へ帰ったが、この戦いのせいか、ずいぶん短命だったということだ」

「カインは?」

「カインは、ギャラクシーポリスの亜空間ルームにふういんされている」

「今も?」

「そう、今も」

 父上のその言葉に、身の毛もよだつ思いがした……。


「カイン……か」

 夜空を見上げながら、そう一人つぶやくと勝仁はめずらしく、ぶるっとぶるいした。

 空は相変わらず美しく、星はやみにまたたいていた──。