あとがき
偶然にもこの外伝は、ヤマモト家の人々が主役あるいはバイプレイヤーとして重要な役割を果たす物語が三本収められることとなりました。別に狙ってそうなった訳ではありませんが作者自身、企図しなかったところで見事な流れと整合性とが浮かび上がってきます。しっかし、こうして続けて読んでみると、シゲチヨくんとヤマモトくんって、つくづく親子だなあと思いません? 品行方正、四角四面で杓子定規なところなんか、見事に遺伝しているではありませんか。
この辺を、タイラー家の人間に突っ込まれるところが、ヤマモト家の宿命であり、持ち味なんでしょうねえ。まあ、シリーズ全体の成功は、ヤマモト家の人々の『見当違いな健気さ』の賜物ではありますが、それにしても、彼らはこれで幸せなんでしょうかねえ?
それでは、個々の作品の解説を──。
『我が名はヤマモト』
このアウトサイドストーリーは、タイラー自身が登場する物語の中では年代的に最も古い物であると同時に、現在執筆中の新シリーズ『無責任カルテット』の伏線にもなっています。この物語で爽やか好青年だったカヤマくんは、その後ストレートに爽やかおじいちゃんとはならず、紆余曲折を経てとんでもない老人になってしまうのです。そして、タイラーを軍人に、ひいては大統領にまでした直接の原因であるところのノリコ・バッハ嬢とはその後──これ以上は『無責任カルテット』の①『君の名はマチコ』をお読みください。タイラーとカヤマとの生涯は、まさに好一対であったとだけ、ここでは述べておきましょう。
それにしてもヤマモトくんは、当時からガチガチの軍人で、しかも涙脆かったのです。この性格は、『無責任カルテット』でも変わっていません。そのヤマモトの性格と、タイラーの性格を半分ずつ受け継いだ新主人公エドは……どうなんでしょう?
『ミッシングリンク』
シリーズとシリーズとを繫ぐ外伝を、そう言えばこの『ミッシングリンク』まで書いていなかった。題名の直訳は『失われた繫がり』。確かにそこにあるはずなんだけど、まだ発見されていなかったり、確証がない存在……というくらいの意味です。主として考古学や古生物学用語です。いい例が、恐竜に羽の生えたような始祖鳥と、今の鳥類を結ぶ中間生物は確かに存在していたはずなのに、まだ化石として発見されていない。その場合、その存在するであろう未発見の生物のことを始祖鳥と鳥とを結ぶミッシングリンク……という風な言い方をします(もっとも、始祖鳥と鳥は直接の系統ではなく生物学的には無関係という説が、現在では有力なようですが……)。
我々人類の場合でも、類人猿の先祖であるプロコンスルと最初の人であるアウストラロピテクスとを繫ぐ化石が現在ミッシングリンクです。同様に、縄紋人と弥生人(両者は全く別系統らしいが)とを結ぶ中間的な存在があるとすれば、それもミッシングリンクということになりますね。
従って『宇宙一の無責任男』と『無責任キッズ』とを繫ぐ『ミッシングリンク』が、この物語なのです。
『キッズ』と『無責任カルテット』とを結ぶミッシングリンクも、いずれ……。
『パーフェクト・アドバイザー』
『完全なる助言者』(なんでも直訳、おまえは王様か!?・笑)。よくある異生物コンタクトものを書こうとして、妙な作品になってしまいました。シゲチヨくんの青春のひとコマ……と言うには、あまりにも異色か? でも、作者本人としては、割と気に入っているんですけどね。これも見方によってはミッシングリンクものだけど、むしろ純粋に『キッズ』の初めての外伝として楽しんでいただければよいと考えています。
ちなみに、某超人気バスケットボールコミックに触発されたことは素直に潔く認めますが(認めるなよ。笑)、それよりも某人気サッカーコミックの『ボールは友だちだよ!』の台詞が、直接の執筆動機です。あとは、『人間・失格』が入ってます(笑)。ちなみに、主人公のツヨシ・ドルトムントくんには二人の息子(孫?)がいて、『カルテット』にチョイ役で出て来ます。参考までに……。
しかし、ドリフトボール、本当にプレイできたら白熱するだろうなあ……。誰か、重力緩和装置を発見してくれんか(無理か?)。審判は判定で大変だろうなあ……。
ちなみに、ズーキーは、アザリン様の初代ペットであったパカパカことムバップ(毛玉獣)と近縁です。性格はあれより数段ヒネているようですが……。大きさに対する脳の容積を最大にするには、やはり球形が理想なのです。知的生命体としての理想的な大きさも、バスケットボールくらいが妥当と考えます。まさに『ボールは友だち』なのです(笑)。
おそらく、さほど間を開けずに『無責任カルテット』の②『天使・失格』が出ます。皆様にはそれまでに、シリーズをより楽しむための予備知識として、この『我が名はヤマモト』に収録の諸作品を読んでいただければ幸いです。カヤマって、実はシリーズの最初から登場していながら光の当たることのなかった数少ない(ひょっとすると最後の大物?)キャラクターです。タイラーとは、少なくともこれくらい理解し合っていた……ということを、念頭に置いておいてください。そうすれば『カルテット』をより一層面白く読んでいただけるのではないでしょうか。