Part 01: #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: よーし、放課後だー!今日は部活をやるから、みんな集まって~! 美雪(冬服): んー、そうだね。昨日、一昨日と週末のイベントの準備があってできなかったから、久しぶりにいいかも。 一穂(冬服): うんうん、もちろん大賛成だよ~……あれ? 圭一(冬服): たのもーぅっ!レナと菜央ちゃんは、まだ残っているかー?! レナ(冬服): えっ……圭一くん?レナたちに何のご用かな、かな? 圭一(冬服): 決まっているだろ、リベンジマッチだ!先週の探偵ゲームの対決、忘れたなんて言わせねぇぞ! 圭一(冬服): よくも俺をひでぇ目に遭わせてくれたな!あの時受けた罰ゲームの屈辱を晴らすべく……お前らに勝負を、ここに申し込ーむっ! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: くっくっくっ……飛んで火に入る夏の虫、いやカモがネギを背負ってやってきたね……! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: というわけで……他の子たちも大歓迎!自由参加の部活を始めるよ~! ことさらに明るく大声を張り上げ、まだ教室内に残っている生徒たちにも呼びかける。 すると、全員がその宣言を待ちかねていたのか一斉に「わあぁぁあぁっ!」と歓声を上げながら、我先にと元気よく集まってきた。 レナ(冬服): はぅ~、魅ぃちゃん!今日の部活は何をして遊ぶのかな、かなっ? #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: そうだねぇ……天気もいいし、みんなで外に出てゾンビ鬼ってのはどう? ちなみに「ゾンビ鬼」は、鬼ごっこの一種だ。通常と違う点はタッチされて鬼が交代ではなく、そのまま鬼が残り続けるところにある。 つまり、終盤になれば鬼だらけになるので……制限時間内を逃げ切れば勝ちというルールだった。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: リクエストを聞く前に決めちゃったけど、どう?圭ちゃんもそれでいい? 圭一(冬服): へへっ、望むところだ!前回レナと菜央ちゃんにまんまとだまされちまった分、ゾンビ鬼で復讐してやる! 圭一(冬服): どうだ、美雪ちゃん?同じ屈辱を味わったもの同士、共闘といこうぜ! 美雪(冬服): んー、2人にお返ししてやりたい気持ちは山々なんだけど……前原くんって考えてることがもろに顔に出ちゃうからねぇ。 美雪(冬服): だまし合いのバトルだと、どうも期待より不安の要素の方が多いように思えるから……今回はお互いに頑張るってことでよろしく! 圭一(冬服): って、まさかの戦力外扱いかよっ?くっそー……こうなったら一穂ちゃん、一緒に組んであいつらに一泡吹かせてやろうぜ! 一穂(冬服): ご、ごめんなさい前原くん……。私も今度こそ最後まで生き残りたいから、美雪ちゃんと同じってことで……。 圭一(冬服): 一穂ちゃんまでっ?俺がいったい、何をしたってんだよぉぉ?! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: いや……もう忘れたの、圭ちゃん?探偵ゲームであんたが怪しいって決めつけていた子は、全部殺人犯じゃなかったじゃんか。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: そのくせ、「この2人は大丈夫だ!」って自信満々に太鼓判を押していたレナと菜央ちゃんに、土壇場で勝負をひっくり返されちゃって……。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: まぁ私たちは、圭ちゃんの罰ゲーム衣装が眼福だったから、結構楽しませてもらったけどねー! 圭一(冬服): うぐっ? あ、あの罰ゲームの話は止めろ……!今朝も夢に出てきて、うなされて起きたのに……! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: おや、それはお気の毒に。……んじゃ、今回は挑戦者ってことで圭ちゃんが最初のゾンビで決定ー! 圭一(冬服): なっ……なにぃいいいいぃぃっ?どういう理屈で、いきなり俺がゾンビなんだっ?普通はじゃんけんで決めるもんだろうが?! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: 挑戦者は、基本的に不利な立場から始まるもんだよ。まぁ乗り込んできた以上、こっちから提示した条件は甘んじて受けてもらわないとねー。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: ちなみに全員捕まえないと罰ゲームだから、死ぬ気で頑張ってよ? くっくっくっ! 圭一(冬服): ぜ、全員って……無茶言うな!魅音たちだけでも十分手に余りまくりだってのに、そっちには千雨ちゃんがいるじゃねぇか?! 美雪(冬服): あー……確かに。私の知る限り千雨って、鬼ごっことかのたぐいだと正攻法で捕まったことがほとんどないんだよねぇ。 美雪(冬服): 近づいたら野生動物並みの俊敏さですり抜けるし、持久力がありまくりで追いかけても振り切られてめちゃくちゃ厄介だから、頑張ってねー。 圭一(冬服): うぉぉぉおぉっ?そ、そんな絶望的な情報は聞きたくなかったぜ……! 圭一(冬服): 頼む、魅音!せめて千雨ちゃんには、何かハンデをつけてくれ!俺に救いの手をぉぉぉおぉっ?! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: 委員長権限で、却下します!そもそも、か弱い女の子にハンデをつけろだなんて男の風上にも置けない発言だよ~? 圭一(冬服): あの霊長類最強クラスの、どこがか弱いんだっ?ゴリラを相手にするほうがマシなレベルだぞ?! 千雨(冬服): 誰がゴリラだ。そんな不本意なレッテルを貼ってくるんだったら、こっちも全力でいくぞ。……覚悟しておけ。 圭一(冬服): ぐ、ぐおおおぉおぉおっ?雉も鳴かずば撃たれまいに、また余計なことを言っちまったあぁぁぁあっっ?! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: くっくっくっ……とりあえず圭ちゃん、罰ゲームの内容はゲーム終了時点までに考えておいてあげるから、楽しみにね~? 圭一(冬服): もはや俺の負け確定でゲームが進むことになっているじゃねぇかああぁぁ?うおおおぉぉおぉぉっ!! そう叫びながら圭ちゃんは頭を抱え、大げさなくらいに感情を露わにしながら悔しがっている。 彼が道化役を引き受けてくれるおかげで、事情を知らない下級生たちも楽しげな雰囲気だ。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: (私たちの力不足のせいで、圭ちゃんは一家で#p雛見沢#sひなみざわ#rから出て行かざるを得なくなったのに……) 変わらぬ態度でいてくれることが、ありがたくて……それ以上に申し訳なく、後ろめたい。 そして、ここにはいない「あの子」のことを同時に思って……胸の内に刺すような痛みを覚えずにはいられなかった。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: (梨花ちゃまがいなくなったことで、沙都子の運命までもが一変するなんて……完全に予想外だった) 数年のうちに家族を次々に喪い、村人たちからも白眼視されて窮屈な生活を余儀なくされている女の子……北条沙都子。 一応登校はしてきているものの……顔を合わせると、すぐに目をそらされてしまう。話しかけても無視だ。 今日も放課後になると、すぐに帰ってしまった。……部活に参加してもらおうと思っていたのに、とりつく島もない。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: (まぁ、私たち園崎家は彼女にとって恨んで憎むべき象徴のようなものだから……そういう態度に出るのも仕方ないのだけど) ただ、圭ちゃんは「あんなこと」があった後でも何も変わることなく……時々分校に来てはこうして部活に参加し、場を盛り上げてくれる。 そんな献身的な彼の優しさを知るからこそ、事態を打開すべく彼女自身にも動いてもらいたいと考えてしまうのは、私の身勝手な考えだろうか……。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r: ……「魅音」。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: あれっ、お姉……じゃなかった、「詩音」。あんたも来ていたんですか? 園崎詩音(魅音): いや、まぁ……あんたが部活をちゃんと仕切っているか、ちょっと様子見にね。 そう言って「詩音」……いや、お姉は大騒ぎしている圭ちゃんたちにそっと目を向ける。 最近、私は無理を言って「魅音」の姿になり、こうして分校に通う機会をもらっていた。 理由は、委員長として沙都子との関係をどうにか改善したい、という#p思惑#sおもわく#rがあってのことだが……今のところは空振り続きで、成果はゼロだった。 園崎魅音(詩音): とりあえず、お姉も参加していって。レナさんたちにばれると面倒だから、「私」のつもりで振る舞ってね。 園崎詩音(魅音): ……わかった。 そう頷き合ってから私たちはみんなを促し、グラウンドへと出ていった……。 Part 02: 詩音(私服): いやー、今日の圭ちゃんは凄かったよねー。孤立無援状態からレナさんと菜央さんを捕まえ、千雨さんをあと一歩まで追い詰めるなんて。 詩音(私服): まぁ最後は全員捕まえる前に制限時間になって、やっぱり罰ゲームが決定になっちゃったけど。……くっくっくっ! 魅音(私服): ……。そうだね。 詩音(私服): ? どうしたの、お姉。今日の部活、楽しくなかった? 魅音(私服): もちろん、楽しかったよ。圭ちゃんが加わると、いつも盛り上がってみんなが笑顔になるからさ……でも……。 魅音(私服): 圭ちゃんが以前と変わらない態度で接してくれるから、私も……同じように振る舞おうとした。 魅音(私服): だけど、やっぱり……辛くてさ。ふっと気を抜いた時に、圭ちゃんを酷い目に遭わせてしまったって罪悪感が……その……。 詩音(私服): …………。 魅音(私服): 詩音……あんたも、大丈夫なの?園崎の身内とはいえ、圭ちゃんに肩入れしすぎると村の連中が黙っていないと思うんだけど。 詩音(私服): 問題ないよ。だって圭ちゃんは別に悪いことをしていないし、嫌われる理由なんてないんだから。 魅音(私服): それは、そうだけど……婆っちゃにあんな啖呵を切って怒らせたんだから、ひょっとすると周りの連中が……。 詩音(私服): 勝手に鬼婆の意向を深読みでもして、忖度を働かせるかもしれない……ってこと? 詩音(私服): そうなったら、まぁそうなった時だよ。私は私なりに、馬鹿な考えを起こした連中に報復を加えてやるだけだから。 詩音(私服): まぁ、それはさて置いて……魅音。 そう言って私は居住まいを正し、表情を改めてから魅音に向き直る。 わざわざ居心地の悪い本家に留まって「話がある」と彼女に時間をもらったのは、ひとつの理由があってのことだった。 詩音(私服): そろそろ、行動に移したほうがいいと思う。叔父の鉄平に金を握らせて、村を出ていっても構わない……って言質を取ったんだよね? 魅音(私服): ……うん。婆っちゃの了解を得て、園崎家の隠し口座からかなりの額を提示してやったよ。 詩音(私服): だったらもう、立ち退きを進めるべきだよ。このまま沙都子を#p雛見沢#sひなみざわ#rにいさせても、何もいいことはないし……解決の道はない。 詩音(私服): 頑固な村の連中や鬼婆を説得するのは無理だって、例の話し合いの場でよくわかったでしょ?……私たちが打てる手は、それしかないって。 魅音(私服): 沙都子を、雛見沢の外に追い出す……ね。最悪中の最悪な手段だって思っていたけど、それを選ばなきゃいけないなんてさ……。 己の力に対する失望、落胆を苦くかみしめて……魅音は大きく、ため息をつく。 私も、これまでに色々と対策を講じてみた。村の連中への説得に、沙都子の心のケア……それこそ、あらゆる可能性を探り続けた。 だけど……もはや雛見沢が北条家を受け入れる余地は、全く見当たらない。……いや、存在しない。 そうなると、彼女を救う唯一の手段は……雛見沢との関係を絶つ、それだけだった。 魅音(私服): ……圭ちゃんは、きっと怒るだろうね。沙都子のために村人を説得する、ってあれだけ頑張ってくれたのに……。 詩音(私服): けど、実際に説得を試みても鬼婆は激怒するわ、それどころか年寄り連中は前原一家をガン無視して追い出すわで……最悪の結果にしかならなかった。 詩音(私服): もし本当に、圭ちゃんを呼び戻す気だったら……沙都子はこの村にいちゃいけないんだよ。 魅音(私服): ……っ……。 そう……沙都子には申し訳ないが、あの子が村人たちから冷遇され続けている限り圭ちゃんは必ず彼女を救おうと奔走するだろう。 その結果、村が再び真っ二つになって新たな対立構図が生じるかもしれない……。 魅音(私服): わかった。……週末のイベントが片づき次第、具体的に動くことにするよ。 詩音(私服): ……お願いね、お姉。 釈然としない思いを抱きつつも、私は自身を鼓舞するように魅音への念押しをする。 ここ数年の間、資料を揃えたり小規模な企画立案で実績を示したりして……地道に年寄りたちに根回しと、説得を続けてきた。 そのおかげで連中は、少しずつだけど……新しいものを取り入れることに、前向きになりつつある。その最たる例が、#p興宮#sおきのみや#rに建てたゲストハウスだ。 イベントが行われることを目的にしたその施設を造りたい、と計画を持ち込んだだけで当初はずいぶん反発されて……本当に大変だった。 経営状況は今回の件でも起きたように、赤字と黒字を行ったり来たりしているので気を抜くとすぐに傾く脆弱なものだが……。 部活メンバーが力を貸してくれたおかげで一定の集客数と経済効果も得ることができ、周囲の認識も好意的に変わりつつある。 その、未来に向けて変わりつつある結束を……新たなわだかまりで崩すわけにはいかないのだ。 魅音(私服): けどさ……詩音。あんたこそ、沙都子に肩入れをしなくてもいいの? 魅音(私服): こんなことは言いたくないけど、あの子は……。 詩音(私服): 余計な気遣いだよ。私はあんたをサポートして、盛り立てていくって決めたんだから……今さら方針を変えたりしない。 詩音(私服): それにこの「世界」だと、私は……「任せる」とは聞いていないから……ね。 魅音(私服): あんたがそういうつもりだったら、私は何も言うつもりはないよ。ただ……。 詩音(私服): ……魅音。 それ以上は言うな、という思いを込めて私は魅音を見つめ返す。 私とて、納得しているわけではない。ただ、他に手がない以上こうするしかない。 そう自分に言い聞かせている心の弱さを、魅音にだけは見抜かれたくなかった……。 Part 03: 圭一(後宮): よぉ、詩音!へへっ、なかなか似合っているじゃねぇか! 詩音(旧正月): くっくっくっ……圭ちゃんこそ!いかにも傾国の美女に騙されて、国をおかしくしちゃうボンボン皇帝の雰囲気がよく出ていますよ。 圭一(後宮): おいおい……それは絶対褒めていないだろっ?会って早々にひでぇ言われようだぜ……。 詩音(旧正月): くすくす、すみません、言い過ぎました。確かにわざわざ手伝ってもらっておいて、この言い方はありませんよね。 圭一(後宮): へっ……別にいいさ、気にするなって。何でも気安く言い合えるお前らとの関係を、俺はすっげぇありがたいと思っているんだからさ。 詩音(旧正月): 何でも言い合える関係……ですか……。 そんな圭ちゃんの優しさに満ちた言葉に、また胸がずきり……と刺されたように痛くなる。 ……本当に、彼は心の底から嘘偽りなくそう思ってくれているのだろうか。 だとしたら私は、そこまで信頼してくれる人を裏切ろうとしていることになるのだけど……。 詩音(旧正月): ……。あの、圭ちゃん。 圭一(後宮): なんだ、詩音? 詩音(旧正月): その……うまい具合に二人っきりですから、この際言わせてもらいますが……。 詩音(旧正月): 私と、お姉のこと……実はまだ恨んだりしていますか? 圭一(後宮): 恨む……? 俺がなんで、お前らに対してそんなふうに思っているってんだ? 詩音(旧正月): 決まっているじゃないですか。沙都子の件で、その……結局圭ちゃんに全部、責任を押しつけることになりましたし……。 詩音(旧正月): 圭ちゃんが悪いわけじゃないのに、鬼婆を怒らせたせいであんたたちを#p雛見沢#sひなみざわ#rから出ていかせちゃって……その……。 圭一(後宮): なんだ、そんなことか。別に怒っちゃいないから、気にするなって。 圭一(後宮): あっ……? もしかして最近魅音と何度か入れ替わったりしているのは、それと関係があったりするのか? 詩音(旧正月): っ……?気づいていたんですか、圭ちゃん?! 圭一(後宮): はははっ、やっぱり!詩音と魅音って見かけこそそっくりだけど、微妙な違いがあるからなー! 圭一(後宮): あっ……ちなみにレナも気づいていると思うぜ?あとは美雪ちゃんと、千雨ちゃんもな。 圭一(後宮): 菜央ちゃんは……態度にこそ出していないが、勘の鋭い子だからなー。だまされているのはたぶん一穂ちゃんくらいじゃないか? 詩音(旧正月): ……ほぼ全員じゃないですか……!はぁ、だまされて罰ゲームを食らった圭ちゃんのことを笑えませんよ……。 圭一(後宮): ははっ、そいつはいいな。この前やられた分のお返しだ!……まぁ、それはともかくとして。 圭一(後宮): あの時は、俺の勇み足だったと思う。あんな喧嘩腰で臨んだら、誰だって耳を傾けるわけがねぇ。 圭一(後宮): むしろ必死すぎて、周りが見えなくなって……詩音のところのお婆さんに無礼な口を利いて、怒らせちまったのは確かだ。 詩音(旧正月): ……お姉が言っていましたが、鬼婆も少し言い過ぎたって悔やんでいたそうです。メンツを守るためでも、大人げなかったって。 詩音(旧正月): それに、沙都子の件はみんな気にしていたのに、色々としがらみを気にして……手を出しませんでした。あれだけ責められても、当然だって思います。 詩音(旧正月): ですが、私は……私たちは……。 圭一(後宮): 全員が一丸で村を盛り上げていこうって時に、先導役の魅音と詩音を悪者にするわけにはいかねぇ。……そんなことは俺だって、わかっているさ。 圭一(後宮): だから、親父とお袋に無理を言って雛見沢を出ることにしたんだ。そうしなきゃ、お前たちが困るって思ったからな。 詩音(旧正月): えっ……そ、そうだったんですか?てっきり私は、村の連中の誰かが圭ちゃんたちに出ていかせるような、酷いことをしたと……。 圭一(後宮): そういう流れにしておけば、みんなもさすがにやりすぎたって考えるようになるかもしれないだろ? 圭一(後宮): で、沙都子に対しても当たりが強すぎた、って反省してくれる人が出てくるかもしれねぇ……。 圭一(後宮): そういう効果を、期待していたんだ。だから今の状況は、俺にとっては望んだ形になってると思っているぜ。 詩音(旧正月): 圭ちゃん……なんで……? 圭一(後宮): ん? 詩音(旧正月): なんであんたは、そこまで沙都子のためにしてくれるのですか……? 詩音(旧正月): こういう言い方は変かもですが、あの子とはそこまで関わりがなかったはずですよね?教室で数回、顔を合わせたくらいで……。 詩音(旧正月): なのに……なんで圭ちゃんは、そんなに自分を犠牲にしてまで……あの子のために……? 圭一(後宮): さぁな。……ただ、以前の俺は自分しか見えていなくて周りの連中にいろんな迷惑をかけちまっていた。 圭一(後宮): そのために大事なものを失ったし、しなくてもいい後悔を山ほど重ねてきて……何度も落ち込んで、自分を責め続けた。 圭一(後宮): だからもう、そういうことはしたくない。自分にできることを精一杯、全力全開でぶつけていくって決めたんだよ。 詩音(旧正月): 圭ちゃん……。 圭一(後宮): おっと、そろそろ時間だ。それじゃ今日も張り切って頑張ろうぜ、詩音!この村を少しずつでも変えていくためになっ! …………。 詩音(旧正月): ……ごめんなさい、圭ちゃん……。ありがとう、本当に……。 ……数十分後、私たちが企画した旧正月のイベントが開催された。 そして屋台スペースでは、紅色の衣装を身にまとった私が売り子として中華風のお菓子を紹介することになっていた。 詩音(旧正月): どうぞ皆さん、試しに召し上がってください。焼きたての蒸したてで、とってもおいしいですよ~♪ お客A: おぉ、いい匂いだな……どれ、ひとつ。んぐっ、……うまい! お客B: 私にも頂戴。……あら、本当に! 蒸し器を置いているおかげか、かぐわしい匂いが通りがかる人たちの足を止めて屋台のお菓子が次々に売れていく。 今回のイベントも、出だしから上々の盛り上がりだ。この調子なら明日以降もかなり期待できるだろう。 詩音(旧正月): (……そして、私たちの発言力が強くなる。そうなればいつか、沙都子への対応の改善を村人連中に訴えることも……あるいは……!) 時間も、手間もかかるかもしれない。……だけど、やれるだけのことをやってみよう。諦めることは、いつだってできるのだから。 詩音(旧正月): (……圭ちゃん。あんたがその覚悟なら、私たちも頑張ってみます) 詩音(旧正月): (たとえ、この「世界」が私の望んだものとは違って、いずれ消える運命にあるとしても……)