言葉の内容とは裏腹に彼女は笑顔だった。そこには何故か、失敗したのにもかかわらず、自信のようなものがあった。

「だから、まずはズルしないで、自分がどうしたいのかをしっかり考えてみるよ」

 なんだか、斜はいっきに追い越されてしまった気がした。別に競争をしていたわけでもないし、同じ方向に進んでいたわけでもないのだが。

 雫は人生の目標が分からないと言ったが、斜には、分からないということが分かった時点で、すでに半分は正解に到達できているような気がした。

 斜は、雫に人生の目標を聞いた彼女の同級生の気持ちが分かる気がした。自分は分からないということすら、まだ分かっていないのだ。そんなとき、人生の目標を教えてくれる人がいたら、間違いなく頼ってしまうだろう。

(まぁ、どうでもいいか)

 考えてもどうしようもないことに悩まない。春に教えられたことだ。

 斜はなんとなく、歩くスピードを上げて、雫を追い越してみた。