「……あっそう。じゃあ、帰ろうか。この子を親御おやごさんの元に送り届けないとね。あと、さっき聞かれた今日の夕飯のリクエスト、とんかつがいいな」

 斜はそう言うと、エレベーターの降りるのボタンを押した。

「斜はいつもとんかつだね。でも、今日は私が焼き肉を食べたいから却下」

「じゃあ、リクエスト聞かないでよ。っていうか、春はいつも焼き肉だね」

「うっさい」

 エレベーターが到着したので、斜と春は女子高生を中に入れつつ、ケージに乗る。

「……あんたたち、本当、一体なんなのよ……」

 ドアが閉まったところで、女子高生が目を腫らしながら、恨めしそうに聞いた。

「〝誘拐屋〟だ。攫ってきてほしいやつがいたら、攫ってきてやるよ。有料だけどね」

 春が女子高生の頭に手を乗せ、わしわしと乱暴に揺らしながら上機嫌に答えた。

 こうして〝誘拐屋〟──斜と春の六月の初仕事は、さっくりと、特に何事もなく終わった。