Part 01: 巴: 大きめの車で来てよかったわ……さすがに1人増えるのは想定外だったけど。 千雨: おまけの1人は、トランクの中にしまってやればよかったんだ。もしくは屋根にくくりつけるとかな。 灯: はははっ、ナイスジョーク! 千雨: …………。 灯: えっと……ジョーク、だよね? 菜央(私服(二部)): というか、えっと……灯さん、はここまでどうやって来たんです? 灯: 空港から一度都内の自宅に帰って着替えて「ヘイ、タクシー!」で、サクッと。 魅音(25歳): 空港って、どっかに行ってたの? 灯: ちょっと海外に……えっ、と。詩音先輩のお姉さんの……。 魅音(25歳): ……魅音だよ。園崎魅音。詩音の双子の姉。 灯: じゃあ魅音先輩……うん?同じ学校にいなかったなら、先輩と呼ぶのは違うだろうか? 美雪(私服): あの、なんで私を見ながら言うんです……? 灯: 君なら真っ当な答えが期待できそうだと思って。どうだろうか、その辺りは。 美雪(私服): ど、どうと言われましても……。 魅音(25歳): 魅音先輩でいいよ。 灯: では魅音先輩、さっきの話の続きをいいですか? 美雪(私服): 続き? 灯: ……あの日、詩音先輩をルチーアから逃がしたのは私です。 魅音(25歳): うん、聞いたよ……ありがとう。 灯: ……っ……。 魅音(25歳): ん? どうしたんだよ、その顔は。なんで目を丸くして固まっているのさ? 灯: いや、礼を言われるとは思っていなかったので……。 灯: あの日、私が詩音先輩を逃がさなければ……あの人が大災害に巻き込まれて死ぬことはなかったかも知れません。 灯: ですから間接的とはいえ、私はあの人の死に関わっています。……恨まれても、当然です。 魅音(25歳): 違うよ。だってあんたは、詩音が逃げたいって言ったから手伝っただけなんでしょ? 灯: ……詩音先輩が、そう言っていたんですか? 魅音(25歳): ルチーアから逃げるのが難しいことは知っている。たとえあんたがどんなに完璧な脱出計画を立てても、本人にその気がなければ逃げられない。 魅音(25歳): だから、秋武……あんたを責める気なんてないよ。 灯: …………。 魅音(25歳): むしろ詩音の話を聞いてくれたこと……あの子の力になってくれたこと、感謝している。 魅音(25歳): あの時の私には、できなかったことだからさ。 灯: 魅音先輩……。 魅音(25歳): あっはっはっ!やっぱ、名前に先輩付けされるとくすぐったいね!こういうふうに呼ばれたことってないからさー。 灯: ……ありがとうございます。 魅音(25歳): いや、お礼を言うのはこっちだよ。 魅音(25歳): 詩音のこと……忘れないでいてくれて、ありがとう。 灯: ……忘れませんよ。 魅音(25歳): そうだ、忘れないと言えばあんたは私のこと……。 巴: あー……ごめん、いい話してるところ悪いけどスピード上げたいからちょっと口閉じてくれる? 菜央(私服(二部)): ほわっ? 巴: 私は秋武みたいに運転上手くないから……ちょっと荒れるわよ。 美雪(私服): え、ちょっ……! 巴: 舌噛みたくなかったら、どこかに捕まってなさいっ! みんな: わあああああぁあああああっ!!! Part 02: 魅音(25歳): で? 何が聞きたいの? 千雨: あ……? 魅音(25歳): 何か私に聞きたいことがあるから、それとなく美雪と菜央を追い出したんでしょ? 魅音(25歳): 私と2人きりじゃないと、聞けないこと……いや。美雪や菜央には聞かせられないことがあるんじゃないかなぁ、ってさ。 千雨: ……不自然過ぎたか? 魅音(25歳): いや、美雪も菜央も気づいてないと思うよ。2人とも目ぇショボショボさせて疲れ切ってたし。あんたは元気そうだけどねー。 千雨: 基礎体力が違うからな。 魅音(25歳): 確かに素人の動きじゃないよね。何をやっているのか、今度詳しく聞かせてよ。 魅音(25歳): ……で、私に何が聞きたいの? 千雨: いくつかあるが、そうだな。まずは……。 千雨: 恨み言があるなら、私が聞く。 魅音(25歳): へっ……? 千雨: ……とっくに気づいてるんだろ。 千雨: あんたが妹に閉じ込められた原因は、私と美雪があんたの妹を助けて#p雛見沢#sひなみざわ#rに連れていったからだ。 魅音(25歳): 秋武にも同じようなことを言ったけどさ……それについて恨み言なんて、詩音に怒られるよ。 千雨: 灯さんはただ逃がしただけだ。でも、私は違う。 千雨: 村に着いてからの詩音の行動には、不可解な点が多かった。 千雨: 美雪は何か理由があると信じていたみたいだが、私は違う……やぶ蛇になるのを警戒して、故意に見逃した。 千雨: だから……その、なんだ。恨みごとがあるなら、聞く。 魅音(25歳): あっはっはっ! 聞くと言われても、そもそも聞かせる恨み言がないって! 魅音(25歳): あんたたちが詩音が襲われた場に居合わせなかったら、私は閉じ込められることもなかっただろうけど……10年前のあの日、確実に死んでいた。 魅音(25歳): 詩音が三船一派に連れ去られていたらその後どうなっていたのか……なーんて、想像したくもないね。 千雨: 詩音はルチーアの外で待ち構えてた連中は姉の手下だと思っていたみたいだけどな。 魅音(25歳): だとしたら、ある程度で観念して連れて行かれたかもしれない。 魅音(25歳): 詩音脱出の現場を押さえられかけたのは、私が詩音の現状を把握しようと聞き回っていたのが仇になったせいだと思う……。 魅音(25歳): 当時の私も……多分詩音も、園崎が乗っ取られる準備が進んでいたなんて思ってもみなかった。 魅音(25歳): いや、私が知らないだけでそれっぽい情報を掴んでいた人間は身内にいたみたいだけど……さすがにそこまでやるとは想像していなかったと思う。 魅音(25歳): つまりね、あんたのことも美雪も恨んじゃいない。 魅音(25歳): そんな状況でやぶ蛇を恐れず、手を突っ込めって方が無理あるってのはさすがにわかっているからさ。 千雨: ……そうか。なら助かる。 魅音(25歳): むしろ、私の方が責められるべきじゃない?美雪たちと合流するかしないかでウダウダ悩んじゃったしさー。 魅音(25歳): おかげでギリギリになったけど、間に合って本当によかった。 千雨: …………。 魅音(25歳): 南井さんから聞いたけど、あんたって美雪と同い年なんだよね? 千雨: ? あぁ。 魅音(25歳): そっか……。 千雨: 言いたいことがあるなら、聞くが。 魅音(25歳): ……じゃあ、聞いて貰っちゃおうかな。 魅音(25歳): 私さ、あの病院の廊下で襲われている美雪と菜央を見た時、最初にね……。 魅音(25歳): 幼いなぁ……って、思ったんだ。 千雨: …………。 魅音(25歳): ずーっと思っていたんだよ。10年前、私がもっと上手くやれたら惨劇は防げたんじゃないかって。 魅音(25歳): 10年前の私は、今の美雪と同い年でね。園崎の次期頭首として必死で頑張っていたし、周りからもしっかり者だって評価も貰っていた。 魅音(25歳): だけどさ……美雪を幼いって思ったってことは同い年だった私も、幼かったんだよなぁって……そう感じちゃったんだ。 千雨: …………。 魅音(25歳): たぶん、自分の全部を許せる時は来ないと思う。でも……当時の自分のことを、ほんのちょっとなら許してあげてもいいんじゃないかって……。 魅音(25歳): なんか、そんなこと思っちゃったんだよ。 千雨: ……そうか。 魅音(25歳): あ、もちろん2人に再会できたのも助けられたのも、嬉しかったけどね。なかなか無茶したなーとは思ったけど。 魅音(25歳): ……この話、あの2人には内緒にしてくれる? 千雨: あ……? 魅音(25歳): 私は今も、あの2人の仲間でいるつもりだから。 千雨: 2人を見て、幼いと思ったことを知られたら……対等な関係じゃなくなりそうだから、か? 魅音(25歳): ……うん。 千雨: 欺瞞だな。あんたが美雪たちを子どもだと思ったことは事実だろ? 千雨: あんたは、10年前とは変わったんだ。そこは足掻いてもどうしようもないだろうが。 魅音(25歳): あたたっ! 痛いところ突いてくるね。耳が痛いわ。 千雨: ……けど……。 千雨: 自分が変わったことを知られたら、相手がこっちを見る目を変わるかもって。それが嫌だって思う気持ちは……わかる。 千雨: だから、黙ってる。安心しろ。 魅音(25歳): ……ありがと。あんた、いい子だね。 魅音(25歳): そうだ、そろそろ名前で呼んでいい?なんて呼べばいい? 千雨: 千雨でいい。あんたのことは……えっと。 魅音(25歳): 美雪と同じ、魅音でいいよ。菜央ちゃんは他の年上もさんづけだったし。 千雨: そういや、菜央ちゃんって最初は私のこともさんづけしてたけど、美雪は呼び捨てだったな。……あと、一穂ってヤツも。 魅音(25歳): あの2人は、菜央ちゃんにとって特別なんだよ。 千雨: ……もうひとつ聞きたいんだが。魅音から見た公由一穂ってのは、どんなヤツだった? 魅音(25歳): え? どんなヤツって言われたら……普段は気弱でおどおどしているけど、腹くくると強い子……かな? 魅音(25歳): 正直10年前の記憶だからぼんやりしているけど、いざって時に頼りになるのは喜一郎おじいちゃん……。 魅音(25歳): 孫と祖父で似てるなー、って思ったのは覚えているよ。 千雨: そうか……。 千雨: (美雪が言ってた公由一穂の像とも一致する) 千雨: (……だとしたら、私が見た公由一穂ってのは……なんだったんだ?) Part 03: 灯: マスター、ありがとう。お店、ちょっと借りるね。 バーのマスター: あぁ。まだオープンには早いし、うちの店の元マスコットのお願いは断れないよぉ。 バーのマスター: そうだ、あーちゃんに教えてもらったミートキッシュのレシピなんだけどこれ合ってる?レシピ通りにしても同じ味にならなくて困っててさ。 灯: レシピ通りにしたら同じ味になるよ。ならないのは、何か違う部分があるんだ。 灯: 手間かもしれないけど、食材や手順をひとつひとつ確認したほうが確実だし、早道だよ。 バーのマスター: やっぱ、そうするのが一番かぁ。食材は同じだし、やっぱり火加減かなぁ……? バーのマスター: ところで、叔父さんって今どこにいるかわかる?知り合いが厄介な翻訳案件をやってくれる人を探してるんだけど、彼くらいしか思いつかなくて。 灯: 叔父さんは本業の旅人が忙しくてね。今どこにいるかは私にもわからないんだ。 バーのマスター: じゃあ……あーちゃんにお願いできないかなぁ?面倒な案件だけど、それなりの対価は保証するよ。 灯: ふむ……面白そうだけど、翻訳の仕事は今は無理なんだ……ごめんね? バーのマスター: そっか、いいよいいよ。じゃあキッチンで試作と仕込みやってるから、カウンターは好きに使って適当に飲んじゃってぇ。 灯: ありがとうマスター。 灯: そー……っ。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: おかえり、あーちゃん。マスターと何を話して……その青いビニールシート? 灯: ええっと……マスターが店が事故物件化するのは腹を括ったけど、せめて掃除しやすいようにこれの上でやってくれと。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: ……マスターは私が比護くんを、ダクトテープで椅子に縛り上げて片耳でも切り落とした挙げ句にガソリンぶちまけて焼くとでも思ったの? バーのマスターの声: 火だけはご勘弁願いますッ!! #p秋武麗#sあきたけうらら#r: しません。冗談を言っただけじゃない。 比護: ……そうされるだけの理由はある。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: そこまではありません。 灯: いや、言葉に出るだけで十分だと思うけど……。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: あ゛ぁっ? 灯: いやすみませんなんでもないですごめんなさいッッ!! #p秋武麗#sあきたけうらら#r: はぁ……もし私がそのつもりなら、ここに来るまでの道中で比護くんの席は助手席じゃなくてトランクの中だよ? #p秋武麗#sあきたけうらら#r: ここに連れてきたのも、他に落ち着いて話せる場所が思いつかなかったからだし。 灯: うちでもよかった気がするけど……。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: うちに連れ帰ったら、コロッケとおはぎがにゃーにゃー大はしゃぎで話どころじゃなくなるよ。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 確かにあの子たちを拾ったのも、名前付けたのも比護くんだけど、うちの家族より好かれてるのはなんで?何をしたらそんなに猫にモテモテになれるの? 比護: 特に何も……。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 絶対嘘だ……絶対何かしてるはずだ……。 比護: そう言われても……? 灯: ね……姉さん、何か飲まない?!マスターが好きに飲んでって言ってたから作るよ! #p秋武麗#sあきたけうらら#r: じゃあ、オレンジ以外で。 灯: わかった! #p秋武麗#sあきたけうらら#r: さて……比護くん。いくつか確認させて貰うね。 比護: ……答えられるかは断言できない。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: だと思うから、一方的に話をするよ……あなたの行動は不可解な点が多すぎる。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 命じられた役割が監視だけなら、広報センターの誰にも何もしていないことは、まだ理解できる。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 監視の目的と対象が南井さんなら、彼女が昔捜査を断念したって言う薬絡みかな?意味があるか疑問だけど、そこもわからなくはない。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: わからないのは、高野製薬へのアポ取り付けとあーちゃんに南井さんの居場所を教えたこと。 比護: …………。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 厚生省の人間とは言え、高野製薬の上役相手に3時で当日アポをねじ込むなんていったいどんな手段を使ったの? 比護: ……持てる手段を全部。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: つまり、自分の判断で南井さんに頼まれるまま、独断でアポ取りしたってことだよね。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 厚生省に、南井さんを高野製薬の上役に会わせるメリットなんて現状考えられないもん。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 比護くん、しばらく南井さんと音信不通だったでしょ?疑われてるのさすがに気づいてたよね。 比護: その南井さんから突然連絡が来て、高野製薬の上役とOB繋がりでアポが取れないかを聞かれて、すぐに約束を取り付けてくれた……。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 南井さんも言ってたよ。そんな無茶をしたら自分が厚生省の人間だってバレるってわかってたのに、やってくれて驚いたって。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 夏美さんの件も含めて、比護くんはある程度こっちの動向を流したけど、#p広報センター#sこっち#r側の人間だって……そう考えて、いいのかな? 比護: ……個人的には、そうありたい。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: そっか……。じゃあ、猫にモテる秘訣を教えてくれない以外で比護くんにがっかりする理由なくなっちゃった。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: けど、『上』は大丈夫なの?こんな真似してるってバレたら比護くん、大変なことになるんじゃない? 比護: …………。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 黙秘かぁ……そもそもだけど、なんで諜報員なんかになっちゃったの? #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 戸佐さん言ってたよ。あなたの真面目過ぎる性格は諜報員として不適切……それでもなったってことは、適正よりも別の理由があるんじゃないか、って。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: だから私、色々考えたの。上と揉めて左遷とか厄介払いとか……けど、どれもしっくりこなくて。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 優秀な人間は民間に行くこの時勢、官民に行く人には信念なり親なりで何かしら理由がある。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 目立たない・評価されない・なのにできなければ非難される……。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 裏仕事も率先して行うような希少な人間をそんな閑職に追いやれるほど、厚生省は人材豊かなの? 比護: …………。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 答えられないみたいだね。じゃあ次の質問……これ結構、肝心だけど。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: あーちゃんに南井さんの居場所を教えた理由は何?あーちゃんが可愛いから聞かれてつい教えちゃったわけじゃないよね? 比護: …………。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 比護くんのことだから、何か理由があることは察しがつくけど……それを秘密にしなければいけない理由は何? 比護: …………。 灯: 姉さん、できたよ! バージンモヒート! #p秋武麗#sあきたけうらら#r: わ、ありがとあーちゃん。喉渇いてたから嬉しいなぁ。 灯: ひーさんにはシンデレラ。前、おいしいって言ってたから。 比護: ……いいのか? #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 私の方見て、確認しなくていいよ。そもそも拷問してるんじゃないんだから。 比護: いただきます。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: はぁ、さっぱりしてておいしいね。 灯: ほんと? さっぱりした?……ひーさんのこと、怒ってない? #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 怒ってないよ。 灯: よっ……かった!いや、本っっ当によかった! 灯: 姉さんが南井さんの行方を知らないならひーさんならと思って聞いたのが原因でひーさんがうぎゃーなことになったらと気が気じゃなかったっ!! #p秋武麗#sあきたけうらら#r: あぁ、だから付いてきたんだ……ごめんね。色々考え込んでたせいで、怖い顔になってたみたい。 灯: いやいや怒ってないならいいんだ!よかったね、ひーさんっ。 比護: ……シンデレラがシンデレラである証拠は、本人が靴に足を通してでしか示せない。 秋武姉妹: えっ? 比護: 例え第三者がシンデレラはあのみすぼらしい子だと王子に事実を教えても、王子が信じなければ意味がない。下手をすれば本人に不審を抱きかねない。 比護: シンデレラ自身ですら、足をガラスの靴に収めないと自分がシンデレラだと証明ができなかった。 比護: 仮にガラスの靴が紛失していたら、おそらく自力証明はほぼ不可能……だと、思う。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: それは何故答えられないか、って私の質問に対しての答えかな? #p秋武麗#sあきたけうらら#r: …………。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: ……本人自身にすら物証提示が困難な証明を行う場合、第三者による情報の開示は意味がないどころか逆に不審や疑心暗鬼を招きかねない。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 関係者ではあるけど当事者ではない自分は口を閉じるしかない……だから知りたいなら、自分で調べろってことかな? 比護: その解釈でかまわない。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: じゃあ、知りたいなら事件が解決するまで追うしかなさそうだね。元からそのつもりではあったけど。 比護: ……全部終わったら。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: ん? 比護: 全部終わったら、俺は広報センターにはいられない。それは……残念に思う。 比護: あそこは、人生で一番楽しい居場所だった。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 広報センターに流れついただけの私が言うのもなんだけど……居場所が必要なら、探すしかないよ。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 必要なら仕事紹介するよ。真面目で実直な人間を欲しがってるところなんて、腐るほど心当たりがあるから。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: ……だから、全部終わったらちゃんとした経歴とか全部教えてね。 比護: うん。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: あと、猫に好かれる方法も。 比護: えっ。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 生粋の犬派の人間の人生に猫をねじ込んでおいて、のうのうと逃げられると思ってたんだ……へぇ。 比護: えっ……あの、その……あーちゃん? 灯: こちら、プッシーフットでございます。 比護: 猫の手を借りたい状況ではあるけれど。 #p秋武麗#sあきたけうらら#r: 手じゃなくて足じゃない?フットなんだから。