Part 1: 朱志香: おぉっ……!夜景もよかったけど、昼の眺めもなかなかだな!空気が澄んでるせいか、遠くまで見えるぜ。 戦人: あぁ、まったくだぜ!とりあえずこの後は、また例の温泉施設で身体を休ませてもらうとして……。 戦人: ……問題は、その後だ。朱志香、お前手持ちはどれだけ残ってる? 朱志香: えっ……?ひょっとして戦人、お前も結構厳しいのか? 一穂(私服): あの……どうしたんですか?お二人とも、なんだか青い顔をしてますけど。 戦人: いや……まさか宿泊施設が燃えちまうとはさすがに思ってなかったからさ。朱志香を探しに行く時に、小銭入れを……その。 朱志香: わ、私も知らない土地で財布を落としちゃマズいと思って……荷物と一緒に……。 菜央(私服): ……つまり、宿に置いたままにして燃えちゃったから、お二人は一文無しなんですね。 戦人: い、一文無しじゃねぇよ!ほれっ、この何枚ものキャッシュカードを見ろ!出かける時は忘れずに、だっ! 魅音(私服): ……あの、すみません戦人さん。雛見沢だと、郵便局以外に銀行はないんです。それに、今日は日曜日なんで……。 戦人: ま、マジかよぉ……!ということは今夜の宿、どうしたらいいってんだ? 朱志香: うーん……こうなったら、タクシーを呼んで穀倉まで運んでもらうしかねぇな。あれだけの町なら、銀行の自動窓口もあるだろうし。 朱志香: いやしかし、そうすると雛見沢にまた戻るのが、面倒だってんだ。 美雪(私服): ……。ねぇ、前原くん。ちょっと、相談があるんだけどさ。 圭一(私服): おっ……ひょっとして美雪ちゃんも同じことを考えたのか?だったら頼む手間が省けて、助かるぜ。 戦人: ? どうした圭一、美雪ちゃん。2人で何を話し合ってるんだ? 美雪(私服): いや、ね。そういうことだったら、2人に提案があるんだけど……。 戦人: 圭一の家で、ホームステイ……? 圭一(私服): あぁ。俺たち一家は今、ちょっと事情があって#p興宮#sおきのみや#rの別宅に住んでいてさ。んで、雛見沢にある自宅は、ここにいる3人……。 圭一(私服): 一穂ちゃんと美雪ちゃん、菜央ちゃんが寝泊まり……というか、暮らしているんだよ。 朱志香: ってことは……君。家が、2つもあるってことなのかよ? 朱志香: ウチもゲストハウスはあるけど同じ島の中だし、島の外の別宅で独り暮らしとかをしてみたいぜ。 戦人: ……あんなバカでっかいお屋敷に住んでて、まだ家が欲しいってのかよ?さすがに贅沢が過ぎると思うぜ。 朱志香: う、うるせーぜ! いくら広くたって、こちとら気難しい祖父さまやお小言ばかりの母さんがいるんだぜ。毎日息が詰まるぜ。 朱志香: 多少狭くてもいいから、私だってたまには羽を伸ばした生活を送ってみたいよ。 戦人: んー、まぁ……別々に離れて暮らすってのも、場合によりけりだと俺は思うけどなー。使用人がいない生活、想像できるのかぁ? 朱志香: マジでうぜーぜ!……でも、お前に当てつけるつもりでそう言ったわけじゃないからな。 戦人: いっひっひっひっ、わかってるって。俺は気にしてねぇし、どうしてもってんならその胸を揉ませてくれりゃ許してやるぜ? 朱志香: ちょ、調子に乗るんじゃねぇ! 一穂(私服): (……。戦人さん、大金持ちの出身って言ってたけど、何か家庭で嫌なことでもあったのかな……?) 戦人: ということは、俺と朱志香は雛見沢に滞在中は圭一の家に住んでる、この3人のお世話になるってわけか……? 一穂(私服): あ……は、はいっ。前原くんの代わりに、頑張っておもてなしをさせてもらいます! 戦人: こっちが泊めてもらうんだ、そこまで気を遣わなくてもいいって。朱志香だけならまだしも、俺まで一緒にありがとうな! 菜央(私服): じゃあ、朱志香さんはあたしたちと2階、戦人さんは1階で寝泊まりするってことでいいかしら? 朱志香: もちろん!へへっ、修学旅行みたいで楽しそうだなー! レナ(私服): はぅ~、それじゃレナも夕食のお手伝いをさせてもらおうかな、かなっ!おいしい料理、いっぱい作るからね! 菜央(私服): ほ、ほわっ……レナちゃんの手料理……!今からすっごく楽しみかも……かもっ……! 魅音(私服): あ、でも滞在して大丈夫なんですか?用事が済んだ以上は、すぐに戻らないとまずかったりするんじゃ……。 朱志香: あぁ、その点なら大丈夫だぜ。どうやら今回の件は、父さんの手配した業者が経費削減で手抜きしてたことが原因らしくてさ。 朱志香: ……こういう言い方はなんだけど、そのせいで家の中がてんやわんやになってて……今帰ると逆に、面倒なだけなんだよ。 一穂(私服): そうなんだ。だったら、時間が許す限りのんびり過ごしてくださいね。 菜央(私服): ちなみに、あたしたちが寝てる間にこっそり2階に上がって……なんて考えてるなら、やめた方がいいわよ。 美雪(私服): うんうん。一穂が速攻で反応して、迎撃するだろうからね。 戦人: いやいや、さすがに親切にしてもらってるのに非常識な事をする気はねぇって。 戦人: ……ってか一穂ちゃんって、この子だよな?こんな大人しそうで、可愛い子が迎撃……? レナ(私服): はぅ……戦人さん、一穂ちゃんは強いですよ。かぁいくて、とっても頼りになるんです♪ 一穂(私服): わ、私はレナさんの方が、はるかに強いと思うんだけど……。 圭一(私服): ……俺からすれば、どっちも強いんだがなぁ。 沙都子(私服): 完全に意味のない譲り合いになっておりますわね。 羽入(私服): あぅあぅ。レナはとても強いですが、腹をくくった一穂も相当の実力なのですのよー。 梨花(私服): みー。どんな相手も、ばったばったと蹴散らしていくのです。 魅音(私服): 腹をくくると強いのは、公由の血だろうね。そういうところ、公由のおじいちゃんと似ているよ。 一穂(私服): そ、そうかな……? 一穂(私服): (ど、どうしよう……お爺ちゃんのこと、全然覚えてないよ) 戦人: へぇ、一穂ちゃんは祖父さまに似てるのか。俺も祖父さまに似てるって言われたことがあるし、なんか親近感がわくぜ。 朱志香: 祖父さまって……うちにいるあの人か?そいつは初耳だが、誰に言われたんだ? 戦人: ……覚えてねぇけどよ?でも、そんな記憶があるぜ。 朱志香: 冗談じゃねぇぜ……! もしそうなら、戦人も将来はあの祖父さまみたいになるってことだぜ。 朱志香: 部屋に閉じこもって、謎の薬品をぶちまけて錬金術だの、黒魔術に夢中になるようなのは祖父さまだけで十分だっての。 戦人: いや、俺もそっち方面に、興味は全然……。 美雪(私服): 錬金術……確か、科学のもとになった学問だよね。最終目的は、黄金を作るんだっけ? 朱志香: おっ、よく知ってるね。えっと……。 美雪(私服): 美雪でいいよ。錬金術のことは昔、何かの本で読んでたまたま覚えてたんだ。 沙都子(私服): でも……なんだか、面白そうなお祖父さまですわね。一度お会いしてみたいですわ~! 朱志香: いや……たぶん、実際に目にしたらそんなこと言えないんじゃないかな……。孫の私ですら、何を考えてるのかわからないところがあるし。 魅音(私服): もしかしたら、朱志香さんのお祖父さん……うちの婆っちゃと似たタイプかもね。 詩音(私服): うちの鬼婆なら、気に入るかもしれませんね。……戦人さんと、会わせてみます? 魅音(私服): 会わせてみたいけど、例の大騒動の後始末でうちの家もドタバタだからなぁ……。 梨花(私服): みー。戦人が将来どうなるのか、楽しみなのですよ。みんなで賭けてみますですか? 戦人: おいおい、他人の人生でトトカルチョとは……雛見沢の連中ってのは、なかなか遠慮がねぇな。 圭一(私服): うちの部活メンバーは特別だぞ……って、仲間に加わっている俺が言っても説得力がねぇよなぁ……。 一穂(私服): あ、あははは……。 朱志香: ちなみにみんなの部活って、いろんなゲームで遊ぶサークル活動……だっけ? 戦人: 話を聞いてるだけだと面白そうだけど、このメンツが揃うとクセが強そうだな。 圭一(私服): ……っと、話が脱線したな。んじゃ宿の問題が片づいたところで、俺たちで2人を観光案内するとすっか。 レナ(私服): うんうん、レナは異議なーし、だよ♪2人は、どこか行きたいところとかありますか? 戦人: そうだな、とりあえず……。 戦人: ……。腹減った。 朱志香: お前っ……それ言うか? 今言うか?!さっきレナちゃんにおにぎりを山ほど差し入れしてもらっただろうが! 戦人: あぁ、あれは美味かった!気がついたら一瞬で山が消えてたくらいに! レナ(私服): はぅ……ごめんなさい、足りなかったですか? 朱志香: こいつが馬鹿みたいに食べるからだろ……燃費悪すぎだぜ。その図体を保つのに、どれだけのカロリーが必要なんだ? 戦人: う、うるせぇ! 成長期なんだよ! 詩音(私服): って、まだ伸びるつもりなんですか……末恐ろしいですね。 美雪(私服): んー、おにぎりに背を伸ばす効果があるなら、一穂も背が伸びようとしてるってこと? 一穂(私服): そ、そうなのかな……? 菜央(私服): この子はただの食いしん坊よ。 一穂(私服): うっ?! 圭一(私服): つまりうまいものが食いたいってことだな!なら、いい場所があるぜ。 圭一(私服): というか、戦人をあそこに連れて行かないなんて絶対にありえねぇぜ! 戦人: な、なんだか自信満々だな……。 梨花(私服): みー。圭一がどこに連れて行こうとしているのかわかったのです。 美雪(私服): うん、私も。 魅音(私服): あそこしかないだろうねぇ。 朱志香: お、なんだなんだ、みんなは予想がついてるのか?ってことは、よっぽどいいところなんだな。 戦人: いや~、楽しみだぜっ!! Part 2: 戦人: って、連れてこられたけど……。 朱志香: ここ、ファミレスか? 羽入(私服): あぅあぅ、#p興宮#sおきのみや#r一番のファミレス、エンジェルモートなのですよ~! 戦人: ファミレスか……。 朱志香: やった、ファミレスだ! 梨花(私服): っみー、反応が極端に違うのですよ。 沙都子(私服): 朱志香さんは、ファミレスがお好きですの? 朱志香: あぁ! 昔、修学旅行で行ったっきりだからな!こことは違う系列の店だけどさ。 美雪(私服): ……修学旅行で、ファミレス? 朱志香: 私が通ってる学校は小さい島にあるから、ファミレスなんてないんだよ。 戦人: ファミレス……。 朱志香: おいおい戦人、なに落ち込んでるんだよ。いいじゃねぇか、行こうぜ♪ 戦人: いや、あそこまで自信満々だったからもっとこう……ここでしか食えない郷土料理、とか? 戦人: 名水を使った蕎麦とか、天ぷらとかそういうのを期待してたんだよ……。 梨花(私服): みー。期待が外れて、戦人がしょんぼりなのですよ。……なでなで。 戦人: ……なんで俺、ナチュラルに頭を撫でられてるんだ? 沙都子(私服): 梨花の趣味ですの。 戦人: 趣味……か。なぁ、梨花ちゃん。君と俺、どこかで会ったことないか? 梨花(私服): みー? ナンパなのですか? 魅音(私服): なっ! こんな小さな子をナンパ?! 戦人: えっ、違ッ……?! レナ(私服): はぅ……梨花ちゃんがかぁいいのはわかりますけど、ナンパとかそういうのは……。 美雪(私服): いや、この人はおっぱいが好きだから……つまり将来性を見越して、光源氏計画?! 一穂(私服): えっ……えええっ?! 沙都子(私服): 梨花、こっちに来てくださいまし。そこにいると危険ですわ。 梨花(私服): みー。 詩音(私服): 梨花ちゃま、私の背中に隠れててくださいね。 菜央(私服): ちょっと距離を開けた方がよさそうね。 戦人: 俺を中心にして、円を描くように距離を取るな! 地味にすげぇ傷つく!! 戦人: いや、違うって!本当に、どこかで会ったことが……! 朱志香: ほら、ぼさっとしてないで入ろうぜ!腹減ってるんだろ? 一穂(私服): あっ……ま、待ってください、朱志香さん! 戦人: とほほ……なんか踏んだり蹴ったりだぜ。 圭一(私服): ……なぁ、戦人。「着痩せ」という言葉、わかるだろ? 戦人: な、なんだ圭一……? 急にどうしたんだ? 圭一(私服): 服を着た状態だとスレンダーに見えるが、脱いだら実は……ってヤツだ。 戦人: ま、まさか……?! 圭一(私服): 飲食店の本質は、外からではわからない!先入観は毒、いやこの場合は罪ってことさ!! ウェイトレス: ご注文、うけたまわりました~。メニューをお下げしまーす。 戦人: …………。 戦人: な、な、な……!! 圭一(私服): どうだ、戦人……?いいんだ、感じたことを言葉にしてくれ。 戦人: な、ななな……なんだ、あのウェイトレスの衣装はっっ?! 戦人: 最高だ……いや、最高すぎるっ!ここは天国か、楽園か?! 戦人: いい……実にいい……!!俺はもう少しで、このシャングリ・ラを見逃してしまうところだった……! 圭一(私服): どうだ……俺が勧めた理由、わかってくれたか? 戦人: あぁ……すまなかった圭一、心の友よ!俺は恥ずかしいぜ! 情けないぜ!今すぐにでも穴を掘って入りたいくらいだぜぇえぇ!! 戦人: この光景を、俺は網膜の細胞全てに焼きつけて持ち帰ろう……!#p雛見沢#sひなみざわ#rで手に入れた、至高で究極のお宝としてな!! 詩音(私服): そ、そこまでですか……?!いや、この店のウリは確かに衣装ですし評価してもらって悪い気はしませんが……? 魅音(私服): ……なんか、圭ちゃんに対する好感度がナイアガラ級にダダ下がってきているように感じるのは、私だけかな……? 戦人: ……ところで、圭一。お前は上乳と下乳、どっち派だ? 圭一(私服): 両方と答えたいが、あえて言うなら……。 圭一(私服): 上乳、だな! 戦人: ほぅ……その心を聞かせてもらおう。 圭一(私服): なぜなら、下乳はエロい。……しかし、エロすぎる。 圭一(私服): 下乳が見えるのは、下乳が見えることを前提とした特殊な服……。 圭一(私服): もしくは、シャツなどを下から胸ギリギリまでめくりあげた時だ。 戦人: だが、後者の場合は見えるとしても……ほんの一瞬の、チラリとした刹那の偶然! 圭一(私服): そう、一瞬だからこその破壊力! 希少!そこに価値があり、しびれて憧れるんだ!! 戦人: だが……下乳が常に見え続ける状況では、いつしかそれが当たり前になっちまう……。つまり、飽きやすいという欠点は否定できない! 圭一(私服): その点、上乳は普通の服でも見える場合がある!さらに見えても、なぜか品がある! 圭一(私服): 少し襟元が大きく開いたシャツ!ちょっと勇気を出した、ビキニの胸元! 圭一(私服): バニーがあんなに露出度が高いのに、清潔感と汎用性を兼ね備えているのは何故か?! 戦人: そうだ……出ている乳が、上だから……!! 戦人: ちなみに俺も、お前と同意見だぜ……! 戦人&圭一: …………。(がっしりと握手) 戦人: お前と俺は、前世で親友だったのかもな……。 圭一(私服): いや、兄弟だったかもしれねえな。 戦人&圭一: はははははははっっ……!! 沙都子(私服): な……なんですの、あれは……? 梨花(私服): みー。隣の男だけのテーブルで、暑苦しい語りと暑苦しい握手が暑苦しく交わされているのですよ。 美雪(私服): キミたち、あれは見てはいけないものだよ。さ、こっちでメニューを見ようね~。 朱志香: つまり、あの2人にとってエンジェルモートの衣装は、清楚の部類に入る……ってことなのか? 一穂(私服): あの制服の、どの辺りが清楚なの……? 沙都子(私服): 圭一さんと戦人さんにしか見えないものが、存在しているようですわね。 菜央(私服): ……愛が無ければ、視えない。 魅音(私服): えっ? 菜央(私服): 今……その言葉が、ふっと頭に浮かんだのよ。どこかの小説で読んだフレーズだったかしら? 朱志香: 愛、って……あの2人は乳を愛してやまないから、清楚に見えるってことか? レナ(私服): はぅ、そう言うことになるのかな……? 美雪(私服): ……それって愛? 梨花(私服): みー、本人たちが愛だと思えば愛なのです……きっと、たぶん、……おそらく。 羽入(私服): あぅあぅ、それは全然フォローになっていないのですよ~。 沙都子(私服): な、なんだか哲学的ですわね……。私にはちんぷんかんぷんでしてよ。 一穂(私服): わ、私も……。 レナ(私服): はぅ……いつかわかる日が来るかもしれないね。 美雪(私服): んー、この話題に関しては理解できても、あまり得しないような気がするけどなぁ。 詩音(私服): ……ま、それはともかくとして。 詩音(私服): 沙都子におかしな話を聞かせてくれたあの2人は、……後で園崎家にご招待するとしましょう。 魅音(私服): ……それ、どっち? 上? 下? 詩音(私服): さぁ、どっちでしょう……くっくっくっ。 魅音(私服): くっくっくっ……! 沙都子(私服): し、詩音さんと魅音さんが、笑顔なのに全然笑っていない表情を浮かべておりますわ……! 菜央(私服): ……あっちの上下論争は下品だけど、こっちの上下選択は物騒ね。 朱志香: 園崎家の上、下……ってなんのことだ? 梨花(私服): あまり知らないほうがいいと思うのです、みー。 Part 3: 戦人: わははははは!! 圭一(私服): はははははは!! 羽入(私服): ……それにしても、あの2人は気が合うみたいなのですよ。 朱志香: 戦人のヤツ、イキイキしやがって。人数多いからテーブルを別れただけで、女子と一緒にいるの忘れてんじゃねぇのか? ウェイトレス: お待たせしました、ご注文の品お持ちしました~。ごゆっくりどうぞ~。 朱志香: あ、ありがとうございます……。 朱志香: ……それにしても、本当にすげえ制服だな。こういうの本当に流行ってるのか?お客さんもたくさんいて、賑わってるし……。 朱志香: 父さんがこういう感じの店に出資する、って言い出したら、ちょっと考えちまうな。 詩音(私服): そうでしょうねぇ……まぁ、ここをやっているのはうちの親戚だったりするんですけど。 朱志香: えっ?! そ、そうだったのか?! 詩音(私服): あれ、さっき言いませんでしたか? 朱志香: ご、ごめん……ウェイトレスのインパクトに圧倒されて、よく聞いてなかったぜ。 魅音(私服): あぁ、大丈夫だよ。それが当然の反応だと思うからさ。 レナ(私服): はぅ~、でもかぁいい制服のファミレスが増えるんだったら、レナは大歓迎かな? かな? 菜央(私服): えぇ。あたしも、レナちゃんに同意見よ。 美雪(私服): というか、キミがレナちゃんに異議を唱えたことが一度でもあった? 菜央(私服): ないわ。あるわけないじゃない。レナちゃんが白と言えば、たとえ黒でもあたしは白と言い続ける覚悟よ。 美雪(私服): 嫌な覚悟だなぁ……。 一穂(私服): あ、あははは……。 朱志香: あ……でも確かに、飯は美味しいぜ。盛りつけも凝ってて、見栄えがいい。 魅音(私服): もちろん、ちゃんとご飯にも力を入れているんだよ。リピーター獲得には、味が必須だからね。 朱志香: なるほど、制服だけの店じゃないんだな。……うん、美味しい! 羽入(私服): 甘いものも、すっごくおいしいのですよ。あとで食べるのです、あぅあぅ! 梨花(私服): みー、それは羽入が食べたいだけなのですよ。 戦人: 眼福だな……。 圭一(私服): 見てるだけで、こう……胸が満たされるな。 美雪(私服): おぅ、男連中は制服だけで腹を満たしてるよ。 魅音(私服): ……さすがにちょっと、度が過ぎるねぇ。ここはひとつ、お灸をすえなきゃならないかな。 魅音(私服): 詩音、「例のやつ」を準備。……言わなくても、わかっているよね? 詩音(私服): えぇ、もちろん。たっぷりと、この店の恐ろしさを味わわせてやるとしますか……くっくっく! 一穂(私服): (み、魅音さんと詩音さん、いったい何をやるつもりなの……?) 魅音(私服): おっ……来た来た!お待ちかねの、「例のやつ」だよ~! レナ(私服): 例のやつ……って、どうして小皿に1つずつチョコが乗っているのかな、かな? 魅音(私服): さっき頼んで、次のシーズンに向けた試作中のお菓子を出してもらったんだよ。これはね、ロシアンルーレットチョコ! 魅音(私服): チョコの中にハズレが混じっていて、噛むと激辛ソースが出てくるんだよ。……で、ハズレを食べてしまった人が負け! 羽入(私服): あぅあぅ、普通においしくチョコを食べたかったのですよ……。 美雪(私服): んー、でもぱっと見だとどれがハズレかわからないねー。 詩音(私服): もちろんです。簡単にわかったら、意味がないじゃないですか。……というわけでお二方、覚悟はいいですか? 戦人: なるほど、これが部活ってヤツか……おもしれぇ、やってやろうじゃねえか! 朱志香: へへっ、だな! 魅音(私服): 1度手に取ったチョコは、絶対食べるルール!さぁ、激辛チョコバトル、スタートっ!! 魅音(私服): ……っし、私はセーフっ!次は戦人さんの番だよ~? 戦人: っ……お、おおぉっ! わかってるぜ!次こそ絶対に、当ててやる……ッ! 戦人: ……よし、わかった!俺の選択は……この真ん中のチョコだ! 詩音(私服): あら……くすくす、本当にいいんですか?もう少ししっかりと吟味してからでも、遅くないと思いますけどね~。くっくっくっ! 戦人: へっ……ぬかしやがれ!さっきもそのブラフで俺の思考を惑わしてきたが、もう騙されねぇからな! 戦人: 迷った時はど真ん中!せっかくだから俺は、この赤のチョコを選ぶぜ!うおおおぉぉぉおぉっっ!! …………。 戦人: おぁあぁああああああああ!!!辛ッ、辛ッッ、うぉおおおお!!! レナ(私服): はぅっ?! またまた戦人さんがハズレ?! 沙都子(私服): 戦人さんが負けたの、これで何回目ですの? 梨花(私服): みー。3戦中3連敗中なのですよ。 戦人: ひぃいぃい、辛っ、辛ッ!!なんだこの刺すっていうか抉るような痛みは?! 戦人: っていうか口の中全体がビリビリ通り越してざりざりしてなんだこれかゆいかゆいぞ口の中がかゆ……いやなんだこれイテェぞこれ??!! 戦人: ひぃいいいいいぃいいいいいひぃいいい!! 一穂(私服): は……はい! お水です、戦人さんっ! 戦人: ありが……ぐっ?! 美雪(私服): そういや、社宅の辛いもの好きな人が言ってたんだけど……辛いものを食べて苦しい時に水を飲むのは、逆効果なんだって。 一穂(私服): えっ……?! レナ(私服): はぅ……辛み成分が水に混じって口の中に広がっちゃうから……? 菜央(私服): つまりこの状況で水を飲むのは、痛みの源を口全体に塗り広げるのと同意義ってことね? 戦人: ぐぅぉおぉおぉおおぉおおおおおおおお!!! 一穂(私服): あぁあぁああ!! ごめんなさいごめんなさい!! 朱志香: お、おいおい大丈夫か、戦人?! 羽入(私服): あ、あぅあぅぶるぶる……!僕が引かなくてよかったのですよ……! 梨花(私服): みー。羽入に引かせたかったのに、戦人が全部持って行ってしまったのですよ。 圭一(私服): はっ?! まさか戦人は、俺たちをかばってわざとハズレを……?! 戦人: ひぃいいぃいいいいいいいいいい!!! 詩音(私服): ……いえ、全然違うみたいですよ。 美雪(私服): すみませーん。ミルク1つくださーい。つめたーく冷えたヤツでよろしくー。 一穂(私服): ごめんなさい、戦人さん!わっ、私っ、水がダメって知らなくて……! 戦人: い、いや……いいってことよ。俺をハメようと思って、やったんじゃないんだろ……? 戦人: さ、最後におっぱいの大きな子に看取られて、本望だ……。 戦人: あれ、なんだ…………昔、似たようなことが……あった……よう…………。 戦人: な…………。 一穂(私服): あぁーっ?!くっ、首がガクーンって! ガクーンって!! 朱志香: おい戦人?! 戦人ーっ?! 圭一(私服): しっかりしてくれ、戦人ぁぁあぁっ!! 梨花(私服): ……真っ白に燃え尽きたのですよ。 詩音(私服): 仏具のチーン、って音が聞こえてきそうですね。 沙都子(私服): この人、なんですの?実力はあるけど運がない……? 魅音(私服): それに加えて、なんと言うか……人を疑うのが苦手なんじゃないかな? この人。 菜央(私服): 誰が、ロシアンルーレットのハズレを押しつけようとしているのか……そういう心理戦があまり向いてないのかしら。 レナ(私服): はぅ……運もそうだけど、観察力がないのかな……? かな? 魅音(私服): 人間としては実直ないい人だとは思うけど、ゲームでも人を疑えないとなると、ウチの部活じゃ勝てなさそうだねぇ……。 戦人: うぅ、こっちのゲームはもうこりごりだぁ……。