Part 01: レナ(私服): あれっ……菜央ちゃん?さっきまで、この近くにいたはずなのに……。 レナ(私服): 菜央ちゃん、どこにいるのー?聞こえていたら返事をして~! 菜央(私服): ……んしょ、っと。なぁにレナちゃん、どうしたの? レナ(私服): よかった……そこにいたんだね。急に姿が見えなくなったから、どこに行ったのかと思っちゃったよ。 菜央(私服): ごめんなさい。目の届く場所にいてね、って言われてたのに黙ってそばから離れちゃって。 レナ(私服): ううん、いいよ。レナも掘り出すのに夢中になっていたから、退屈させちゃったかな……かな? 菜央(私服): ううん、全然そんなことないわ。レナちゃんが宝探しに誘ってくれて、とっても嬉しかったもの。 レナ(私服): あははは、それならよかったよ。……今日はこのくらいにして、そろそろ帰ろっか。日が暮れると、足元が暗くなって危ないからね。 菜央(私服): わかったわ。……にしても、最近また持ち込まれたゴミが増えたみたいね。 菜央(私服): ……ほら、見て。こっちの窪みのところに、雑誌をまとめた束がたくさんあったのよ。 レナ(私服): ホントだ……わりと発行日が新しいね。先月くらいにレナがひとりで来た時は、確かなかったはずなんだけど。 菜央(私服): 誰かがここに来て、無断で捨てていったのかしら。全く、お行儀が悪いったらないわ。 レナ(私服): たぶん、村の外の産廃業者とかだと思うよ。……以前にも夜中に、見たことのないトラックが何台か横付けになっていたことがあったからね。 菜央(私服): 今でもゴミの山になってるから、少しくらいゴミを持ち込んでもわからないし、構わない……ってこと?いわゆる、割れ窓理論ってところね。 レナ(私服): 割れ窓理論……?それってどういう意味なのかな、かな? 菜央(私服): 例えば……そうね。建物の窓がひとつ壊れたままで放置していると他の窓も壊されたり、落書きされたりして……。 菜央(私服): ついには泥棒が入り込んで治安が最悪になる、という犯罪学の中で取り上げられた考え方らしいわ。 レナ(私服): そっか……窓が壊れたまま修理の手が入っていないと周りには管理がちゃんとできていないところだ、って印象を与えちゃうもんね。 菜央(私服): この前、美雪が教えてくれたのよ。……けど、この説明だけで理解できるなんてさすがレナちゃんよね。 レナ(私服): あははは。それは菜央ちゃんの説明が上手だったからだよ。 レナ(私服): でも……確かにその通りだね。誰もここのゴミ山を片付けようとしないまま、放置していると……どんどん酷くなる一方。 レナ(私服): レナは色々と発見があって楽しいけど……さすがに最近は度を超している気がするよ。 菜央(私服): ……魅音さんたちに相談して、村を挙げて処分してもらえるように頼んでみるのはどうかしら? レナ(私服): 魅ぃちゃんたちも何度か、ちゃんとした産廃業者さんに依頼をかけて作業してもらったことがあったみたいだよ。 レナ(私服): けど、あまりに量がありすぎて……完全に終わらせることができなかったんだって。 菜央(私服): まぁ……業者さんにこの規模のゴミの処理をお願いしたら、人件費と処分代諸々の経費で目玉が飛び出るくらいの額を要求されるでしょうしね。 レナ(私服): はぅ~! 飛び出した菜央ちゃんの眼球、水晶玉みたいに綺麗でかぁいいんだろうなぁ~!お持ち帰りぃ~♪ 菜央(私服): え、えっと……レナちゃん?今のはたとえ話であって、本当には飛び出さないしまして抉り出そうとかなんて考えないでよね……? レナ(私服): あははは、もちろんわかっているよ~。ほんの軽い冗談だから♪ 菜央(私服): ……そのわりに、一瞬舌なめずりしたように見えたのはあたしの気のせいかしら。 レナ(私服): ? 何か言った、菜央ちゃん? 菜央(私服): いいえ、なんでもないわ。……それはそうと、レナちゃんの首尾は? レナ(私服): レナの方も、あと少しくらいかな。ランディくん人形……あれ、ケンタくんだったかな?足の向こうに顔が見えてきたから、もうすぐだよ。 菜央(私服): それは良かったわ。奥の方に入り込んでたから、さすがに無理かなって心配してたのよね。 レナ(私服): 菜央ちゃんも手伝ってくれて、ありがとうね。……ただ、この先は他の人の手を借りた方が安全に作業を進められそうな気がするよ。 菜央(私服): 確かにそうね。それじゃ、次は一穂や美雪たちも誘ってみましょう。……あとは、増えすぎたゴミの処理も。 レナ(私服): はぅ……そこまでやるんだったら、魅ぃちゃんにお願いして搬出用のトラックとかを手配してもらったほうがいいと思うよ。 菜央(私服): それはいいアイディアね、レナちゃん!ついでに町会からの処理依頼ってことにできたら、バイト代とかも出してもらえるかも……かもっ♪ レナ(私服): あははは。菜央ちゃんは本当に、しっかり者だね~。 Part 02: 美雪(私服): あのゴミ山のお掃除かぁ……うーん……。 菜央(私服): えぇ。それと、今回の作業でバイト代を出してくれるかどうかについても、魅音さんに相談してみたわ。 菜央(私服): 額面はそこまで高くないけど、エンジェルモートでの日当くらいならなんとかしてもらえるそうよ。 美雪(私服): おぅ、それはいいね。やっぱり対価のあるほうが張り合いもあるしさ。ただ……。 一穂(私服): ……? どうしたの美雪ちゃん、何か気になることでもあるの? 美雪(私服): んー、気になるっていうか……引っかかるって表現の方が正しいだろうね。 菜央(私服): なによ。まさか汚れるような仕事なんてやりたくない……なんて、言うつもりだったりしないわよね? 美雪(私服): いやいや、見損なわないでよ。ゴミの処理が環境を守る上で大事な作業だってことくらい、私だってよく理解してるっての。 一穂(私服): あっ……そっか。美雪ちゃんって以前、ガールスカウト活動をやってたんだもんね。 美雪(私服): そういうこと。不法投棄された大半のゴミって、自然分解されないからものすごい量があってさ。集め始めると、ゴミ袋があっという間に一杯。 美雪(私服): どれだけ集めても報酬がなしってことには、そこまで不満とかはなかったんだけど……やっぱ釈然としなかったよね。 美雪(私服): 誰も見てないから、咎められないから……そんな感じで好き放題にゴミを捨ててくれやがる、マナーの悪い連中に対してはさ。 一穂(私服): う、うん……その気持ち、よくわかるよ。 美雪(私服): んで……話を戻すと、私としては業者丸投げとかバイトとして任せるとかじゃなく、村人たちにも全員でちゃんと関わってもらいたいんだよ。 美雪(私服): 別に手を貸してくれなくてもいいけど……村外れのゴミ山の現状がどうなってるのか、せめてその目で確かめるくらいのことはさ。 一穂(私服): えっと……それはどうして? 美雪(私服): んー……これは私の偏見かもしれないけどね。汚すだけ汚しておいて、自分たちは高みの見物……なんて姿勢に見えるのが、ちょっと嫌っていうか。 一穂(私服): えっ……?じゃあ、あのゴミ山を最初につくったのは#p雛見沢#sひなみざわ#rの人たちってことなの? 美雪(私服): あれっ……一穂は知らなかったの?例のダム戦争の資料には、結構目立つところにそのことが書いてあったはずなんだけどな。 一穂(私服): ご、ごめんなさい……よく見てなくて。 美雪(私服): あははは、別に責めてるわけじゃないんだから、気にしなくていいって。 美雪(私服): もちろん村の人たちは、悪意であの場所に粗大ゴミの不法投棄をしたわけじゃない。国家権力に対抗する、戦術のひとつだったんだ。 一穂(私服): 戦術の、ひとつ……? 美雪(私服): あの付近って、元々ダムが建設されるはずの予定地だったってことはもう知ってるよね?……でも、雛見沢の人たちはそれを認めなかった。 美雪(私服): とはいえ、国が公有地に手続きを踏んで工事を行うんだから……彼らが公的行為を邪魔すれば、公務執行妨害で逮捕になる。 美雪(私服): そこで、雛見沢の人たちは考えたんだよ。産業廃棄物が不法投棄されてる場所にだったら、市町村単位の行政執行で手を出すことができる。 美雪(私服): そのため、あそこに大量の粗大ゴミを運び込んで建設反対運動の人員を送り込んだってわけさ。 菜央(私服): ……そうだったわね。何の後ろ盾もなくデモ運動を行ってるだけだったら所轄警官や機動隊を派遣すれば、それで終わり……。 菜央(私服): けど、粗大ゴミを処理する名目で村の人たちがそこにいるだけなんだから、ダム建設のための車両や作業員を足止めすることも可能……。 美雪(私服): そういうこと。……っていうか菜央、公有地とか公務執行妨害とかって言葉は結構難しいのに、よく知ってたねー。 菜央(私服): お母さんと一緒に観たドキュメンタリー番組で、そういった説明があったのよ。1972年のしらかば山荘事件……だったかしら。 菜央(私服): でも……それが事実だとしたらあのゴミ山は、いろんな意味で宝の山じゃなかったのね……。 一穂(私服): 菜央ちゃん……。 美雪(私服): と、いうわけだからさ……菜央。せっかくなんだし、私たちだけじゃなくて村の人たちにも来てもらうってのはどう? 美雪(私服): で、ゴミ山の実態を見てもらって……あわよくばお手伝いもお願いする、ってね? 菜央(私服): そりゃ、人の手が増えれば色々と助かるけど……魅音さんにその分のバイト代を出してもらうのは、さすがに厳しいんじゃないかしら。 一穂(私服): だ、だよね……?いくら日当の額が安くても、数十人単位だと業者さんを雇ったくらいになっちゃうよ……? 美雪(私服): 大丈夫! 仕事とかじゃなくて、娯楽……つまりはレジャーにしちゃえばいいんだよ♪ 菜央(私服): ゴミ掃除を、レジャーって……何をさせる気なの? 美雪(私服): もちろん、レナと菜央がやってた「宝探し」!そのために魅音と、大石さんにお願いして……。 Part 03: 魅音(私服): はーい! では村の皆さん、休日にもかかわらずお集まりをいただきましてありがとうございます! 魅音(私服): ひぃ、ふぅ、みぃ……おぉっ、連絡したのが直近だったのに結構集まったねー!これだけいれば期待できそうだよ、うんうん! 村人: いや……それは大丈夫だけど、その……。 村人: 本当なのかい?このゴミ山に、盗難で紛失した貴金属が隠されているって話は……? 梨花(私服): みー、本当なのです。その点については、警察が太鼓判を押して立証してくれているのですよ。 梨花(私服): そうなのですよね……大石? 大石: んっふっふっふっ……!えぇ、実に嘆かわしいお話ですが……事実です。 大石: 先日捕まえた犯人が、間違いなくここに隠したと自供をしましてね。で、捜査員総出で現場検証に乗り出したわけなんですが……。 大石: なにしろ、私たちもそこまで暇では……げふんげふんっ、ここは広すぎる。そこで、皆さんのご協力を求めたいのですよ。 魅音(私服): 発見した人には、報奨金がドドンと進呈だ!宝探し感覚と言いつつ、事実上の宝探しだからみんな気合いを入れて探してねー! 村人たち: 「「お……おおぉぉぉおおぉぉっっ!!」」 美雪(私服): おぅ……みんな、すごいやる気だ。さて、私たちは予定通りバイトに精を出すとしましょうっと。 一穂(私服): う、うん……でもすごいね、美雪ちゃん。本当にここで、宝探しのイベントをしちゃうなんて。 美雪(私服): あっはっはっは……!私じゃなくて、色々と動いてくれたのは魅音と大石さんだよ。 美雪(私服): 特に、ありがとうございます大石さん。忙しいのにわざわざ、私たちのハッタリにつき合ってくれて。 大石: いえいえ、これくらいはお安い御用です。実際に盗難があったかどうかの真相なんて、誰も気にしたりはしません。 大石: 報奨金も警察ではなく、園崎家から出してもらえてこちらの懐が痛まないわけですしね……んっふっふっ! 魅音(私服): まぁ、その報奨金もバイト何人かを雇ったと思えば全然安い出費だしねー。それに……。 村人A: よっと……それにしても、すごい量だな。ここって、こんなにも粗大ゴミがあったのか? 村人B: いい加減、なんとかしないとなぁ。せっかく観光客がこの村に来てくれても、こんな光景を見たら驚いてしまうぞ。 村人C: びっくりならまだしも、がっかりされたらもう一度来ようだなんて思ってもらえないぞ。それに、口コミで噂なんて広まったら……。 村人A: あっちだと、ゴミの搬送をやっているな……。せっかくだからあとで少し、手伝っていくか。 村人B: ……今度俺、自宅の古トラックで知り合いの廃品回収業者のところまで運びに行くよ。 村人C: その時は、俺も呼んでくれ。何人か元気なやつを連れて、手伝うからさ。 魅音(私服): ……うん。宝探しと同じくらい、このゴミ山の現状に目を向けてくれる人もいるみたいだしね。 魅音(私服): 普通にゴミ山の掃除を頼んだとしても、みんな色々言い訳して二の足を踏んだだろうから……これもひとつの策だったと思うよ。 大石: えぇ、私もそう思います。それにこのゴミ山は、我々警察にとって因縁のあるあまり思い出したくない場所……。 大石: 過去の遺恨を取り払って前に進むためにも、いずれ綺麗さっぱりなくなってくれることを心から願わずにはいられませんよ。 魅音(私服): あぁ、そうだったね。あの時は私も、警察を相手にヤンチャさせてもらったもんだよ……くっくっくっ! 大石: なっはっはっはっ!あれはヤンチャどころか、子どものイタズラを越えたとんでもない襲撃でしたよ~! 一穂(私服): (み、魅音さんって……昔ここで、いったい何をしたんだろう……?) 菜央(トレジャーハント): ……というわけで、レナちゃん!あたしたちも頑張って、宝探しをしましょう! レナ(私服): あははは、任せて!このゴミ山のことだったら、レナが一番詳しいんだから~はぅっ♪ 美雪(私服): っていうか……菜央、その格好はどうしたのさ?完全に宝探し目的の格好じゃんか。 一穂(私服): え、えっと……確か、宝探しを名目にしてみんなにゴミ山の掃除を手伝ってもらう……ってことだったよね? 菜央(トレジャーハント): 出来レースとはいえお宝を隠してあるんだから、そっちも気合いを入れて探すに決まってるでしょ!そのための覚悟みたいなものよ! 美雪(私服): おーい菜央、本末転倒って言葉知ってるー? 菜央(トレジャーハント): ……あら、なんのこと?あたしはまだ小学生なんだから、そんな難しい言葉知ってるわけないじゃないの。 美雪(私服): 嘘つけー!公務執行妨害を知ってるキミが、四字熟語を知らないはずがないだろうがー! 一穂(私服): あ、あははは……。