血族となり、さらには《聖別》を経て《
沖田は少なくとも、ベルリッヒンゲンに疾さでは引けを取っていない。
これはベルリッヒンゲンにとって驚異的だった。血族と人間との身体能力の格差を考えれば、ありえないことだと言っていい。より速く動くためには、より鋭敏な知覚力とより強い筋力を必要とする。そのいずれも、血族と人間の差は数十倍近くはあるだろう。
にも関わらず、ただの人間である沖田は圧倒的に速いはずのベルリッヒンゲンの猛攻をしのぎ続けている。のみならず、その合間に的確な反撃すら返していた。
おそらくこれは、速さ──つまり速度で対抗しているのではないはずだ。
──なるほど、恐るべき才能よ。剣士としてはワシの遥か高みを行っておる。
ベルリッヒンゲンは、
一方の沖田も、決して余裕があるわけではない。ベルリッヒンゲンの疲れ知らずの猛攻は、それがもたらす圧力をただ
人外の
「天に祝福されし才を与えられた、闘神の申し子よ! 常人が十年の修行を積んでもたどり着けない境地を、最初の一歩から踏破できるような恵まれた者たち……! お主のような戦の天才は、これまでもワシの前に立ちふさがって来た」
ベルリッヒンゲンが、攻防に重ねて
「ワシは武人としては平凡な男だった。才気を望みながら決してそれを手にすることはできなきなかった。闘神はワシを選んではくれなかったのだ……だが、それでも貴様らのような武の天才を退けてきた。それはな、己の才能を
言葉の合間にも、巨体は前進を止めない。左右への逃げ場がないことを悟った沖田は、体勢を低く沈め正面から
「たかが天才、
隻腕の傭兵騎士が獰猛に
ベルリッヒンゲンの右手……その鋼鉄の義手が変じた長剣。その表面に血管のような紅い光が浮き上がったと見えた瞬間。
見切ったはずのベルリッヒンゲンの刃が、沖田の腕を
「なにッ──」
傷はそこまで深くなかったが、確かにこの身を切られていた。遅れて血が噴き出す。
何が起きたんだ、と沖田は先ほどの一瞬を思い返す。
──剣そのものが……曲がった? いや、のみならず伸びてきた……?
そうとしか思えない出来事だった。剣の軌道、そして届く距離は確実に見切りその外に自分はいたはずだ。にも関わらず、
沖田は改めて、ベルリッヒンゲンの振るう『剣』が右腕の義手と一体化していることに注意を向けた。そして再び見た。鉄の刀身に、生身の血管が赤く光りつつ浮かび上がる様を。
そして今度こそ、沖田は怪奇の正体を看破する。ベルリッヒンゲンの右腕の剣は、
「ぐッ」
鮮血の華が散った。沖田は再び間合いを取る。
「ち──」
ベルリッヒンゲンの振るう剣は、変幻自在の軌道を描きながら襲いかかってくる。しかも傷ついた箇所ばかりを集中的に狙われるため、痛みで集中が途絶えてしまう。その猛威を前に沖田は防戦一方となり、先までのように反撃を返す余裕がない。
「妖術の
それでも、沖田の解析は速かった。続けざまにわずか数合を切り結んだあと、その
「変幻自在の攻撃」と言いはしても、実際は使い手の癖や気性によってその変化に法則性は必ずあるのだ。沖田の卓越した剣眼は、そこに潜む共通した
「なんと、もう見切ったというのか──クク、天才とはつくづく憎々しいものよなッ」
立て続けに剣を回避する沖田の動きを目の当たりにし、ベルリッヒンゲンが嫉妬と憎悪の入り混じった愉悦に顔を
先ほども見せた、武装の変形をベルリッヒンゲンは再び行おうとしている。必然、動きの止まったベルリッヒンゲンに対し、沖田はその
だが、次の瞬間。響き渡ったのは、刃が首をはねる音ではなかった。それは鋼と鋼が
そして沖田は見た。ベルリッヒンゲンの右手が変じた新たな異形の『剣』を。
剣ではあるのだが、刀身に
「
しまった、と沖田が寒気を覚えた瞬間。美しくも破滅的な残響を
「……不覚!」
すかさず脇差を抜き放ちつつ、
ベルリッヒンゲンは再び、妄執に満ちた口調で沖田へ語りかけていく。
「なぜ我が剣は闘神の
ベルリッヒンゲンの声には
ベルリッヒンゲンの巨体が、後退した沖田を追い詰めるように更に一歩前進する。
「ワシには守るべき
ベルリッヒンゲンの鋼鉄の右腕。そこに再び赤く輝く血が流れる。すると義手は再び姿を変える。沖田が先ほど打ち砕かれた、
「我が墓碑銘をここに
節度や美学など無用、いかなる手段を使ってでも己以上の強者──天才を
その瞬間、
「無駄だァッ──ギヒヒッ!」
しかし、瞬間的に『盾』に変じた鉄腕によって銀弾は再び撃墜される。それと同時に、正面から沖田が仕掛けた。
だが、その機は沖田自身が見出だしたものではなく、柩が強引に起こした行動に乗じた苦しまぎれでしかなかった。ベルリッヒンゲンには十分に予測が可能であり、
「ぐッ──」
軽量の沖田にとって、ベルリッヒンゲンの巨体から繰り出す剛撃は骨身にまで響いた。かろうじて盾が激突する瞬間に、相手を
しかし、自らを
長刀を失い、今また片足に痛手を負った
──その瞬間。
雷鳴のような銃声が、立て続けに一階ホールの天井を
「我々は横浜居留地駐留軍である! この場の全員に告ぐ。直ちに
「そこの
柩は、大声でそう告げる指揮官の隣に
「ふん……無粋な。有象無象の相手をしてやる
ベルリッヒンゲンが不機嫌そうに
「貴様らは、この武器を目にしたことがあるか?
柩と沖田には、ベルリッヒンゲンの右手がいきなり膨張したように見えた。駐留軍の持つ、
それは長大な円筒形の構造体で、その先端部に蓮根の断面を思わせる環状に並んだ六つの穴──銃口が並んでいた。
「あれはまさか……!」
誰よりも早く血相を変えたのは、沖田だった。会津藩の
蜂の群れが飛ぶような甲高い斉射音が連続して響いたのは、その直後のことだった。
米国南北戦争が生んだ新時代の悪魔。毎分二百発の死を吐き出す銃口の前に立ち続けられる者は、誰もいない。沖田も柩も、ひたすら頭を低くし荒れ狂う
やがて斉射音が止み、静寂が戻った。濃い霧の中にいるように、舞い散る
「さて、有象無象は片付いた。続きを始めようか、若武者よ……クク、物陰に潜んでも生きているのはわかっているぞ?」
たちこめる猛烈な血臭に酔ったかのように、ベルリッヒンゲンが累々たる屍の山を見渡す。
「待ていッ。我らは
そこへ、けたたましい足音が乱入した。港労働者に扮した薩摩藩士数名が、血相を変えて船の
「貴様ッ、命令を忘れたのか! 事は隠密裏に進めろと言ったはずだ! よりによって幕府の兵を敵に回すとは何事かッ、撤退するぞ!」
「心配するな、すぐに済む。黙って見ておれ」
だが彼らの剣幕にも、ベルリッヒンゲンは嘲笑するのみで取り合おうとはしない。
「いいや、すぐに引き上げるぞ」
薩摩藩の密偵がなおも言い募った、その瞬間、屍の山の一角が崩れた。その下から
「おっとォ、駐留軍の新手が来たみてえだな?」
薩摩藩の密偵が視線を巡らす。その先に、港に向けて遠くから人波が向かってくるのが見えた。
「ベルリッヒンゲン──二度は言わぬ」
それを見た密偵の一人が、懐から
「これには銀弾が
銃口を向ける男を
「よかろう。どの道、有象無象は増える一方のようだからな。興も
ベルリッヒンゲンがうそぶいた
「ワシに銃口を向けた報い、思い知ったか──勝負は預けたぞ、東洋の若武者よ」
姿の見えない
「助かった……の?」
「ひどい傷……! 大丈夫……!?」
柩が慌てて抱え起こすと、沖田はかすれた声で答えた。
「大丈夫だ、深くはない……ただ少しばかり、血を流しすぎたようだがな……」
意識が
「ありがとう……わたしのために」
「
そう言いながらも、万次郎は
「なんだァ、あの火は……?」
遠くに見えるホテルの建物が炎に包まれ、延焼を起こしていた。そんな万次郎の様子に、柩は思い出したように不安を覚える。
「……隼人は?」
「俺が見てくる。お前は先に墓地で待ってろ」
あの火事は、万次郎にとっても予定外の事態だったのだろう。その顔からは余裕の笑みが消えていた。それを見た柩は、隼人の安否を気にしてか思わず叫ぶ。
「そんな……! わたしも隼人のところに──」
その柩の肩を
「お前が行っても、どうにもならん。むしろ、隼人を危険にさらすだけだ……今は逃げることだけが、隼人を助ける唯一の手段だと思え」
語気こそ静かだったが、有無を言わさぬ口調だった。
それを前に、柩は言葉を呑み込む。窮地を救ってくれた沖田が深刻な怪我を負っている以上、食い下がることはできなかった。
「…………」
柩は、隼人がいるホテルの方角をわずかに
* * *
「……なんだ、あの騒ぎは?」
ヒコックは
隼人もまた自分に向けられた銃口を
その時だった。物が燃焼する焦げくさい臭気が、隼人の
「……火事?」
そして、周囲がやけに明るくなっているのを
煙は既に、部屋の中にまで侵入してきていた。
「ちッ、火事騒ぎだと? いつの間に──」
ヒコックも灰色の
「
武士──新兵衛は、倒れている隼人を
「港でベルリッヒンゲンが無差別の
「やはりそうだったか……この火はあんたの仕業か?」
「不本意ながらな。騒ぎを隠すにはより大きな騒ぎを起こせばいい。逃走用の目くらまし、および我らの
「わかった。その前に、
再び銃口を隼人に向けようとした、ヒコックの
「なにッ!?」
なぜ急に動けるようになったのか、隼人自身には理解できない。それはこの「罠」を仕掛けた相手も同様であるようだったが、こちらは遅れて何かに気づいたような焦りを浮かべた。
しかし、
だが、その瞬間。隼人の耳を突き刺したのは、鋼が打ち合う雷鳴のような響きだった。
「くっ!?」
一刀を握る腕に受けた衝撃を感じて、隼人はとっさに身を退く。いつ動いたのか、恐るべき敏捷さで田中新兵衛が二人の間に割り込んでいた。
隼人の放った一刀を
「俺の顔を知っているということは、貴様も京にいたことがあるな。だが志士ではない……
眼前すぐで、新兵衛が隼人を鋭く見据える。
「この場は退け。我らも退く。異存はないな、ヒコック?」
「ああ……わかったぜ」
侮っていた新兵衛に借りを作られたことで、ヒコックは
「追ってくれば、斬る。こちらは二人というのを忘れるな」
そう
「くっ……」
張り詰めていた緊張が途切れたせいか、隼人はその場に座り込む。だいぶ
あの銃使いは、いったい何を自分に仕掛けたのか──隼人はその
「おい、無事だったか?」
足音とともに現れたのは、
「万次郎……!
隼人が急くように聞くが、万次郎は降りかかる火の粉を避けながら急ぎ隼人を担ぎ起こす。
そして新兵衛とヒコックが脱出したホテルの裏口から、火災の現場を後にしながら遠ざかる。
「ああ、二人とも無事だぜ。街の外れの丘にある、外国人墓地で落ち合うように言ってある。港から海沿いに西へ行ったところだ」
「そうか……よかった」
「沖田っていうと、あのお人はその名も高い新選組の沖田
「ああ、そうだ。あの人が負ける相手なんて、たとえ吸血種と言えどいやしないよ」
まるで自分のことのように誇らしげに、隼人はそう答えた。
「お前も無事でよかったが、安心はできねえな。なんとか、あの追っ手を追い払うために幕府の駐留軍に情報を流したが、あっちも俺たちの味方なわけじゃねえ。むしろお前の立場としちゃ、素性を知られたら面倒になるぜ……っと、まっすぐ歩けねえのか?」
酔っぱらいのように足取りがふらつく隼人を、万次郎が横から支える。
「どうしちまったんだ。まるで何日も血を摂ってないみたいに真っ青な顔をして……」
ほれ、と万次郎から押し付けられたのは血晶の小粒だった。口に入れて
「すまない……もう、大丈夫だ。一人で歩ける」
「なら、急ぐぜ。俺たちも早くここから離れにゃならん。お前は先に行って、柩の嬢ちゃんたちと合流してくれ。場所はさっき教えたな? 俺は状況を把握して、移動手段を手に入れておく」
万次郎は、墓地までの道順を隼人に手早く伝えた。そして疲れ切ったような
「半刻後に合流だ──まったく、ここまで危険な目に遭うとは聞いてねえぜ……亡霊さんよ」
後半は、半ば独り言のような
どうにか窮地を切り抜けた
* * *
「
「──
隼人と柩は、互いの名を自然と呼び合っていた。そして同時に、それぞれの無事な姿に安堵する。しかし、次いで隼人の目に飛び込んできたものは……
「
沖田は怠そうな口調で言う。
「いずれも骨には達していない……血さえ止まれば、なんとかなる」
沖田は何ともないというような表情を装っていたが、それは無理をしているせいだろうと隼人は思った。
その沖田を横から見つめながら、柩は悲痛な表情を浮かべている。まるで、自分自身が傷を負ったかのように。
沖田は旅の荷物を探りながら、隼人へそれを手渡した。
「この中に、
「……! もちろんです」
隼人はそれらを取り出すのを手伝いながら、柩に向き直った。
「柩……すまないが、手当ての間、誰かが来ないか、墓地の入り口を見張っていてほしい」
墓地の入り口は、今隼人たちがいるところから少しだけ距離がある。柩の安全を確認しながら、沖田と二人きりで隼人が話すことのできる、ちょうどいい距離だと隼人は目測した。
「? うん。わかった」
柩は隼人のあらたまったような口調に疑問を呈しつつも、そう答える。
柩がこちらに背を向け離れていったのを確認すると、沖田は自らの服をおもむろにはだけさせる。その下から
サラシにきつく締め付けられてはいるが、その曲線は女性特有のものにほかならない。
「…………」
性別は女性──これこそが、
新選組隊内にあっても、局長の
「……では、失礼します」
隼人は心を落ち着かせながら、鮮血に
沖田の肌も乳房も京にいた頃から見慣れているし、何より今は火急の時だ。
「……しかし、沖田さんが刀を折られるとは」
愛刀を失ったという沖田の話を聞き、隼人は
隼人が
「その男……いかに血族としての力を誇るとはいえ、相当な技量を持つ使い手ということですね?」
「いや……剣の技量だけで言うなら、さほどの域でもなかった。土佐の
しかし、と沖田は失血で
「それでも、私が奴に圧倒されたのは紛れもない事実だ。私は奴の、剣才以外の何かとひどく相性が悪い気がする……正直、もう一度立ち合って勝てるかどうかの断言はできん……最後は私が必ず勝つがな」
いや、断言しているじゃないですか──という指摘は、口には出さず飲み込んでおく。こうした沖田の勝負師らしい負けず嫌いぶりは、隼人も以前からよく知ってはいた。
「……私は何をしているんだろうな」
背中に負った刀傷。その治療に身を
「私は、お前が裏切ったなら、容赦なく
深く吐かれた
「
「痛ッ!」
すみません、と慌てて隼人は沖田の傷口から手を離した。思わず指先に力が籠りすぎていたようだ。
「いや、大丈夫だ。ただな、隼人。私は
「……伊東も今、江戸にいるのですか?」
また力が籠りすぎないようにと注意しながら、隼人は沖田に問いを向けた。
「ああ。江戸に正式な屯所が用意されるまでは、
新選組が危ない、と隼人は思う。伊東の行動は、新選組自体の力を削ぐためのものだ。本来ならば今すぐにでも江戸に向かいたいが、
状況のままならなさに、隼人は思わず歯
そんな隼人の顔を、沖田は肩越しに見守っている。
「私はまだ、お前の言ったことをすべて信じたわけじゃない。近藤さんのことも、本当のところはわからんよ……もしかすると、私が自分の感情を正当化したがっているだけの、思い過ごしかもしれない」
そして、
それは隼人の耳にもかろうじて届き、疲れきっていた心に温かな光を
「……自分への買いかぶりかもしれませんが、沖田さんは、昔から俺を買ってくれていますよね──うッぷ」
ぽつりと
「思いあがるなよ、馬鹿者」
「やっぱり、買いかぶりでしたかね……ははっ」
沖田の表情と仕草、そしてこんな他愛ないやり取りがどうにも懐かしかった。新選組で過ごした日々を思い出し、隼人は思わず声を出して笑っていた。
沖田はそんな隼人を神妙な顔で
しばし、二人の間で柔らかな時間が流れた。
「沖田さんが、こんなに俺を買ってくれるのは……やっぱり弟さんに俺が似ているからですか?」
それまで笑っていた沖田が、急に真顔になった。
しばし、
「そう……なのかもしれないな」
沖田に弟がいたと聞いたのは、隼人が新選組の沖田の隊に配属されてしばらく経ってからのことだった。隼人はそのときのことを、昨日のようによく覚えている。
あれは、そう──池田屋への討ち入りで大戦果を挙げた後の、祝いの酒宴であっただろうか。
酒宴の席を外した沖田の後を、隼人は追った。昨日の
入ってきた隼人を見て、少し酩酊して
『お前を見ていると、弟のことを思い出すんだ』
沖田が女性であることを隼人が知ることになったのは、それからまたしばらく経ってからのことだった。沖田自身から伝えられたのだ。
そうして以前よりも距離が近くなった沖田から、隼人は彼女の弟の話を折りにつけ聞かされるようになった。隼人の方から
沖田の弟の名は、宗次郎。
沖田姉弟は、奥羽の白河に生まれた。馬の産地で、子供の頃はよく姉弟で
やがて二人は、天然理心流を掲げる試衛館の内弟子になった。同門の近藤や土方と出会ったのも、そこでの縁だという。
だが、女のみつの身に剣術はあくまで道楽。男子の宗次郎が剣で名を上げ、身を立ててくれればいいと彼女は将来を楽しみにしていた。宋次郎が
宗次郎の喪があけて間もなく、近藤から京に上り浪士組に参ずるという話を聞かされたという。
隼人は、沖田の傷に血止めの
「どうして、沖田さんは弟さんの代わりに……? それで、いいんですか?」
「どういう意味だ」
初めて投げかけられたその質問に対し、
しかし、この機会を逃せば二度と同じ問いはできなくなる。そんな予感を隼人は感じた。何より、隼人はその理由を知りたかったのだ。勇気を出して、言葉を継ぐ。
「『沖田
激動の時代を己の剣一つで闘い抜き、その名を天下に
その姿はあるいは、弟の死を受け入れることのできない、常軌を逸した殉教者のようでもあったからだ。
沖田は、しばし隼人をじっと見ていたが皮肉げに口をゆがめた。
「ああ、その通りかもしれん。私は『沖田総司』を己の全力をもって演じてきた」
だが、と沖田は言葉を続ける。