Part 01: 魅音(冬服): はー、お腹いっぱい! レナ(冬服): 名雪さんに紹介してもらったお店、とってもおいしかったね~! 羽入(Kanon): あぅあぅ、でも昨日ご馳走してもらった名雪のお母さんのご飯もおいしかったのですよ。ですよね、梨花? 梨花(Kanon): …………。 羽入(Kanon): あの……梨花?顔色が悪いのですが、大丈夫ですか? 梨花(Kanon): みー……名雪母の料理は、どれもとてもおいしかったのですが……。 梨花(Kanon): ジャムの味だけは、一刻も早く記憶から消去したいのですよ……。 一穂(Kanon): あ、あははは……よっぽど梨花ちゃん、謎ジャムの印象が残ってるんだね。あと、沙都子ちゃんも……沙都子ちゃん? 沙都子(冬服): …………。 魅音(冬服): おーい沙都子、生きているー?目が明後日どころか、1年前の方角に向いて死んだ魚の瞳になっているんだけど。 沙都子(冬服): だ、大丈夫ですわ……。予想外の味でびっくりしただけで別にまずくはありませんでしたし……。 名雪: えっ……ほ、本当にっ? 菜央(冬服): いや、なんで名雪さんが驚いているんですか。 名雪: だ、だって……私も祐一も、それに真琴も「あれ」だけは受けつけなかったのに……! 名雪: 「まずくない」って感想だけで、奇跡だよ!すごいよ沙都子ちゃん! 梨花ちゃんも! 梨花(Kanon): ……みー。そこまでわかっていたのなら、もっと早い段階で止めてもらいたかったのですよ。 沙都子(冬服): 確かに……あのジャムは、言葉には言い表せませんでしたわね……。 沙都子(冬服): でも、なんだかんだで今回の旅はなかなか楽しくて、良い思い出ばかりでしたわ。 魅音(冬服): おっ、復活したね。でも、まだ終わるには早いよ~。明日の朝、家に帰るまでが旅行だから! レナ(冬服): うん、そうだね。だから今夜は早く休んで、ちゃんと寝よう。 羽入(Kanon): ……あれ?一穂たちは……あれ? 美雪(冬服): ――……だけど。 菜央(冬服): でも……――。 一穂(Kanon): それは……――。 羽入(Kanon): あぅあぅ……3人だけみんなから離れて、何を話しているのですか? 一穂(Kanon): わぁっ! 菜央(冬服): ちょっと、一穂。いくらなんでもびっくりしすぎよ。 美雪(冬服): んー、まぁ……まさか#p雛見沢#sひなみざわ#r以外の場所で怪物と戦う羽目になるとはね、って話を3人でしてただけだよ。 美雪(冬服): そうだ。羽入にも聞きたいんだけど、あの高校に出現した魔物……あれって『ツクヤミ』だったと思う? 羽入(Kanon): あぅあぅ……?3人は違うと考えているのですか? 一穂(Kanon): うん。『ロールカード』の攻撃がある程度通じたってことは同じか、似てるものだと考るべきだって思うけど……。 菜央(冬服): とはいえ、「カード」の力は一般人に対しても通じる場合があるみたいだから、断定できるほどの確証はないのよ。 一穂(Kanon): 手紙の送り主も、今のところ誰なのか全く見当がつかないもんね……。 美雪(冬服): 真相は闇の中ってわけか。歯がゆいなぁ……。 美雪(冬服): こんなことだったら高校で出くわしたあいつを倒したりしないで、生け捕りにしておけばよかったよ。 菜央(冬服): 無茶言わないで、美雪。あの時は名雪さんのご家族の安否が関わってたんだし、なにより手加減できる相手でもなかったじゃない。 美雪(冬服): んー、確かにその通りなんだけど……こうも手がかり一切なしで八方塞がりだと、何か取っ掛かりが欲しくてさー。 一穂(Kanon): 取っ掛かりかぁ……うーん。 一穂(Kanon): あ、そう言えば……あの夜の高校で私たちと一緒に剣を振るって戦ってた人って、名雪さんが言ってた「先輩さん」なのかな? 菜央(冬服): どうかしら。本人に確かめたわけじゃないから、なんとも言えないわね。 羽入(Kanon): 制服は、名雪と同じ高校のものだったようでしたが……。 菜央(冬服): 連絡先を知ってるか、名雪さんに聞いてみる? 美雪(冬服): それが一番確実かな。探すにしても、これだけ大きな町だとあてどなく探すにはなかなか厳しいだろうねー。 一穂(Kanon): ばったり会えたりしないかな? 美雪(冬服): あはは、そう都合よくは……。 舞: …………。 美雪(冬服): ……あれ? 羽入(Kanon): い、いたのです!僕たちの前を無言で通り過ぎていったのですよ! 菜央(冬服): 美雪、どうする? 美雪(冬服): 追いかけて話を聞きたいな。 美雪(冬服): 帰る前に「先輩さん」がなんで夜の高校で「魔物」と戦ってたのか、事情を今のうちに確かめておきたい。 一穂(Kanon): あ、でも……私たちの顔を覚えてくれてるかな?それに、少しとっつきづらい感じだったし……。 美雪(冬服): 話してみないと、実際のところはわかんないよ。そりゃまぁ、変わった感じの人だってことは第一印象でも残ってるけど……。 羽入(Kanon): あぅあぅ! 喋っている暇はないのですよ!「先輩さん」の姿が見えなくなりかけているのです! 美雪(冬服): ちょっ、足速すぎない?!すぐに追いかけないと……! 一穂(Kanon): あ、魅音さんたちに一言……。 菜央(冬服): そんなことしてたら、確実に見失うわ!すぐに追いかけるわよ! 羽入(Kanon): ま、待ってくださいなのです~! 一穂(Kanon): あ、あれっ?! 道が二手に別れて……。 菜央(冬服): はぁ、はぁ……あの人、どっちに行ったのかしら。 美雪(冬服): 私と菜央はこっち行くから一穂と羽入、そっちをお願い! 一穂(Kanon): わ、わかった! 菜央(冬服): 見つからなかったら、あとで駅前で合流よ! 羽入(Kanon): はいなのです! 一穂(Kanon): はぁ、はぁ……ねぇ、羽入ちゃん。この道、と言うか方角って……。 羽入(Kanon): はいなのです。この先は……。 羽入(Kanon): 魔物と戦った、高校なのですよ。 Part 02: 一穂(Kanon): 校庭にいなかったってことは、やっぱり校舎にいるのかな? 羽入(Kanon): でも、もう「魔物」は倒したはずなのです。 一穂(Kanon): でも、ここに「先輩さん」が戻ってきたってことは、もしかして……。 佐祐理: あのー。 一穂&羽入: っ?! 佐祐理: こんにちはー。あれっ、ひょっとしてあなたたちは……? 一穂(Kanon): えっ? あの……すみません。どこかでお会いしたことがありましたか? 佐祐理: あははーっ、やっぱり。あの時は真っ暗で、おまけに私は気絶から目覚めたばかりだったからちょっと自信がなかったんですけど……。 佐祐理: あなたたちの雰囲気に覚えがあったから、思わず確かめてみちゃいました。いきなり話しかけて、ごめんなさい。 羽入(Kanon): と言うことは、あなたは夜の高校で「先輩さん」と一緒に戦ってた……っ?! 舞: ……動くな。 一穂(Kanon): っ?! 佐祐理: ……舞、落ち着いて。この子たちとは、お話をしてただけだから。 舞: …………。 一穂(Kanon): ……ッ……! 舞: …………。 羽入(Kanon): あぅあぅ……僕たちはあなたと話がしたくて、ここに来たのです。戦うつもりはありませんのです。 羽入(Kanon): だから、一穂も落ち着くのですよ。 一穂(Kanon): ご、ごめんなさい……つい反射的に、反撃の体勢になっちゃって。 佐祐理: 舞も剣を下ろして。この子たちは、「敵」じゃないと思います。 舞: …………。 羽入(Kanon): あ、素直に下ろしてくれたのです。 一穂(Kanon): え、えっと……すみませんでした。背後に立っていたので、びっくりして……つい。 羽入(Kanon): 僕からもごめんなさいなのです。許してもらえないですか? 舞: ……はちみつクマさん。 一穂(Kanon): は、はちみつ……? クマさん? 佐祐理: あははーっ、ごめんなさい。舞がそう言った時は、「わかった」「はい」って意味なんですよ。 一穂(Kanon): あ……た、たしかあの時もそう言ってたような……。 佐祐理: ちなみに「いいえ」は「ぽんぽこタヌキさん」なんですよ。 羽入(Kanon): ……以前の時にも気になっていたのですが、それは合い言葉か何かなのですか? 舞: ……違う。祐一が、そう返事をしろと私に言った。 羽入(Kanon): どうしてそんな決まりごとになったのか、経緯がとても気になるのですよ……。 一穂(Kanon): っていうか、祐一……?確か、名雪さんのいとこさんがそんな名前だったような気が……。 佐祐理: ……? ということは、あなた方は祐一さんのお知り合いで……? 羽入(Kanon): ……これは、思ったより話がスムーズに進みそうなのですよ。 Part 03: 佐祐理: では、改めて自己紹介をさせてもらいますね。私は#p倉田佐祐理#sくらたさゆり#r、そして親友の#p川澄舞#sかわすみまい#rです。 舞: ……よろしく。 一穂(Kanon): は……はい。こちらこそ、よろしくお願いします。 佐祐理: あははーっ、それにしてもまさか皆さんが祐一さんとお知り合いだったなんて……世間は広いようで、狭いものですねー。 一穂(Kanon): あ、その……私たちは祐一さんって人とは実を言うとまだ会ったことがなくて。名雪さんからまた聞きした程度なんですけど。 舞: ……祐一は、時々意地悪だけど、嫌いじゃない。 一穂(Kanon): ……いい人なんですね。 舞: はちみつクマさん。 一穂(Kanon): (や、やっぱりこの応答は慣れない……) 羽入(Kanon): それより、2人はどうしてここにいるのですか? 舞: 魔物の確認。 佐祐理: また魔物が高校に現れていないか、念のためにパトロールしてるんですよー。私は、ただの付き添いなんですけど。 舞: 私ひとりでいい。 佐祐理: ……心配してくれてありがとう、舞。でも、万が一のことがあったら私が嫌だから。 舞: ……ん。 羽入(Kanon): あの……僕たちは、2人に聞きたいことがあるのですよ。 佐祐理: 私たちに、聞きたいことですか……? 羽入(Kanon): 単刀直入に聞くのですよ。……魔物とは、なんなのですか? 舞: …………。 佐祐理: 以前の時にも、お話をしましたが……あなたたちが言う『ツクヤミ』……? とは無関係だと思いますよ。 羽入(Kanon): どうしてそう断言できるのですか? 佐祐理: 魔物の正体を考えると、『ツクヤミ』と同じ原因だとは思えないからです。 佐祐理: 魔物の正体は……私の友達と深く関わってるので。 羽入(Kanon): 友達……とは、そこの舞とですか? 舞: …………。 一穂(Kanon): つ、つまり……佐祐理さんは魔物の正体を知っていて、それは舞さんと関係してて……。 一穂(Kanon): 魔物の正体を教えられないけど、『ツクヤミ』と魔物は無関係って断言できるってことですか? 佐祐理: はい、そうです。信じてもらえないかもしれませんが……。 羽入(Kanon): ……。自分たちが勝手なことを言っていると、重々承知しているのです。 羽入(Kanon): ……でも、ボクたちは問題解決のためにどうしても魔物の正体を知りたいのです。 舞: ……佐祐理。 佐祐理: いいの? でも……。 一穂(Kanon): あ……えっと、じゃあ羽入ちゃんだけに真実を教えるってのはどうでしょうか? 羽入(Kanon): えっ……? 一穂(Kanon): 羽入ちゃんが話を聞いて、魔物と『ツクヤミ』は無関係だって納得したら、私はそれを信じます。 一穂(Kanon): 他の皆にも、そう説明します。それでは……ダメでしょうか? 羽入(Kanon): 一穂……。 一穂(Kanon): もちろん羽入ちゃんは、絶対に秘密。……それでどう? 守れる? 羽入(Kanon): は、はい! 秘密は守るのですよ! 佐祐理: 舞、どうする? 舞: ……佐祐理に任せる。 佐祐理: ……そう、わかった。羽入さん、ですよね?絶対に教えないと約束してくれますか? 羽入(Kanon): も、もちろんなのですよ! 佐祐理: すみません、耳を貸してください。……――。 羽入(Kanon): …………。 佐祐理: ……私が聞いた話は、以上です。 羽入(Kanon): ……ありがとうなのですよ。 一穂(Kanon): ど、どうかな……羽入ちゃん。 羽入(Kanon): 佐祐理の言っていることが本当なら……魔物と『ツクヤミ』は確実に無関係なのです。 一穂(Kanon): そうなんだ。じゃあ、共通点は偶然ってことだね。 一穂(Kanon): すみません、舞さん。佐祐理さん。ご迷惑をおかけしました。 佐祐理: いいえ。お役に立てず、申し訳ありません。 羽入(Kanon): 謝ることなんて何もないのですよ。 羽入(Kanon): でも、今の話が真実なら……先日のあれはその魔物より『ツクヤミ』に近いものなのだと思うのです。 佐祐理: ……だとしたら尚更『ツクヤミ』に似たというあの魔物は、なぜここに現れたのでしょうか? 舞: 私もわからない。……けど、いつかきっと終わる。 佐祐理: 舞……? 舞: 大丈夫。私も、いつ戦いが終わるか、わからなかった。 舞: でも、終わった……大丈夫。 舞: だから、頑張って。 羽入(Kanon): ……秘密を教えてくれて、ありがとうなのです。僕たちも頑張るのですよ。 一穂(Kanon): あ、えっと……あ、ありがとうございます! 佐祐理: とりあえず、一通り校舎を見回っておかしな気配が無いそうなので……私たちもそろそろ引き上げようと思ってるんですけど。 一穂(Kanon): あ、じゃあ私たちも……あっ。 一穂(Kanon): そ、そう言えば魅音さんたちに何も言わないでここまで来ちゃったけど、結構時間経っちゃったよ……?! 羽入(Kanon): あぁっ! 早く戻らないとみんなが心配してるのです! 一穂(Kanon): 走って戻ろう、羽入ちゃん! 羽入(Kanon): はいなのです! 一穂(Kanon): すみません、私たちはこれで失礼します! 羽入(Kanon): 本当にありがとうなのですよ! 佐祐理: あ、もう校門の所まで辿り着いてる。でもあんなに急いで走ったら、転ばないかな? 舞: …………。 佐祐理: あの子たちが何と戦ってるかはよくわからないけど……きっと、勝てるよね。 佐祐理: きっと、舞みたいに。 舞: ……はちみつクマさん。 佐祐理: ふふっ……あの子たちも、幸せになれるといいね。 舞: ……うん。 舞: 佐祐理。私たちも、帰ろう。 佐祐理: うん。一緒に帰ろうね、舞。