Part 01: 千雨: ふぅ……いや、満喫した。日本全国に個性的な水族館はいくつもあるが、サメの充実度だけならやっぱり大洗だな。 千雨: 設備とかの関係上、大型の一般公開が行われてないのは残念と言えば残念だが……小型と中型だけでも見応えが十分だった。 千雨: きっと職員さんは全員、サメをこよなく愛してやまない人たちなんだろうな。水槽越しに熱量が伝わってきた。 千雨: そういえばあの水族館、近いうちに建て直しが予定されてるらしいな。リニューアルしたらその時は……。 美雪(私服): …………。 千雨: ……ん? どうした美雪。精根が尽き果てたようなぐったり顔で突っ伏して、息苦しくないのか? 美雪(私服): 事実ぐったりなんだよ!朝早くから電車に揺られること1時間半!駅に到着してからバスで30分! 美雪(私服): さらに水族館に入ってからは、千雨がサメ尽くしの水槽にベッタリ張りつきで……!その間イルカショーが何回あったと思ってるの?! 美雪(私服): 帰りは帰りで、ハイテンションになったキミが「徒歩で駅まで帰ろう!」なんて言い出すもんだから見知らぬ土地で迷いに迷って、約2時間の行軍! 美雪(私服): そこから再び1時間半かけて戻ってきたんだから、HPなんてもう真っ赤な残り1桁だっつーのっ! 千雨: なんだ、あの程度の歩きでもうへばったのか?行きは電車とバスだったんだし、実質歩いたのはほんの2時間ぐらいだろうが。 美雪(私服): 水族館で飲まず食わずの立ちっぱなしだったの、もう忘れちゃったのっ? しかも帰りの道中ずーっと千雨のマシンガンサメトーク止まらないし! 美雪(私服): こっちは水族館のパンフレットに載ってた大雑把な地図を頼りに、駅はどっちだ、現在地は……てな感じに方向感覚をずっと研ぎ澄ましてたのに! 美雪(私服): そりゃもう、着いたらクタクタにもなるさ!マッパーを私に全部丸投げした千雨と違ってね!うもおおぉぉおおおぉぉっっ!! 千雨: ちょっ……落ち着け、美雪っ?わかった、お前の疲労の理由はよーくわかったからこんなところで叫ぶと他の客に迷惑だろうが……! 美雪(私服): はぁ、はぁ、はぁ……ごめん、千雨。元ガールスカウトのくせに何度も道を間違えて、ちょっと悔しくてさ……。 美雪(私服): 任せて、って言ったの私なのに迷惑をかけた上に八つ当たりまでしちゃって……。 千雨: いや……私の方こそ、すまん。あのサメ尽くしの水族館が楽しすぎたせいで、お前への気遣いを忘れてた。 千雨: お詫びと言ってはなんだが、ここのデザートと飲み物は私持ちだ。好きなのを頼んでくれ。 美雪(私服): えっ、いいの?じゃあ、まずはこの新作シェイクとバーガー。あとは……。 千雨: ……夕飯が入る程度に加減しておけよ。食べ残して雪絵おばさんに怒られても、私は助けてやれんぞ。 美雪(私服): 大丈夫、任せなって。私のことをもっと信じなさい……なんてねっ♪ 千雨: 信じたおかげで、帰りの道中は迷子になりかけたんだがな……。 美雪(私服): ? 何か言った? 千雨: いや、気にするな。ホラ、好きなものを食え。 美雪(私服): はぁ……やっと少し落ち着いた。疲れた時は、甘くて冷たいものに限るねー。 千雨: バーガーはそのカテゴリに入るのか?よくもまぁその腹に全部収まったな。 美雪(私服): むっ……千雨にだけは言われたくないね。そこのトレイに積まれたバーガーの包み紙、ほとんどキミのお腹に入ったやつじゃんか。 千雨: これでも私は体育会系だからな。加えて育ち盛りだし、食う量が多くて当然だ。 美雪(私服): 「元」体育会系でしょ?カロリーを使うような激しい運動は最近かなり減ったって自分で言ってたじゃん。 美雪(私服): そろそろ量を絞っておかないとね。次の健康診断でひっかかったら、おばさんが怖いよー? 千雨: ……ほぉ、面白い仮説だな。ならばその反証としてこの後、腹ごなしも兼ねて鈍ったかどうかを身体で味わわせてやろうか……? 美雪(私服): 冗談じゃないよ。私は一般市民なんです。千雨みたいな玄人を相手取る趣味なんてありませんからっ。 千雨: お前は必要だと判断したら、相手が誰であれ銃火器揃えてたった1人でも向かっていきそうだが。……まぁ、それはさておいてだ。 千雨: 今日は遠くまで付き合わせて、悪かったな。お前が一緒で色々と助かったし……楽しかった。 千雨: ひとりで外出もそれなりに良いものだが、気の合ったやつと連れだってどこかに行くのも結構面白かったよ。……ありがとう、美雪。 美雪(私服): そう?まぁ、キミがそう言って満足してくれるならこういう旅もたまには悪くないねー。 千雨: 旅にしては近距離すぎないか? 美雪(私服): え、じゃあ他になんて言うの?小旅行、おでかけ、デート……。 千雨: デート……なるほど。美雪とサメと私でデートだな。 美雪(私服): なにその、サメを挟んだややこしい関係性は。 美雪(私服): まぁでも、真由姉ちゃんも気心の知れた相手と出かけて楽しく過ごせたら男女問わずデートだ、とか前に言ってたっけ。 美雪(私服): ついでに、次の約束を取り付けるまでがデートです……とか、お家に帰るまでが遠足です、みたいなことも言ってたけど。 千雨: そうだったな……ところで、美雪?案内のお姉さんが教えてくれたんだが実は来週、あの水族館でバックヤードツアーがあるんだ。 千雨: それだと、一般公開していない大型ザメの様子も見ることができるらしくてな。それで……。 Part 02: 美雪(私服): てな感じに、結局3週……いや、4週か。その水族館に通い詰めることになって、結構大変だったよー。 菜央(私服): へぇ……付き合いがいいのね、美雪って。その幼なじみの子はサメ好きだからいいとしても、あんたは一緒で退屈したりしなかったの? 美雪(私服): もちろん、しないように工夫したよー。 一穂(私服): どうやって? 美雪(私服): 千雨はサメの水槽の前で何時間も過ごしたり、バックヤードツアーに行ったりしてたけど……。 美雪(私服): 2週目以降は、私もイルカショーを見に行ったりお土産屋をうろついたりして個別に動いてたからね。それなりに有意義な時間を過ごしたってわけ。 一穂(私服): そうなんだ。……水族館って、話を聞くだけでもなんだか楽しそうだね。屋内だと天候が悪くても気にしなくてもいいし、静かそうだし……。 美雪(私服): 魚たちの健康管理の目的もあって、館内は空調完備で快適だしねー。……って一穂、キミは水族館に行ったことがなかったの? 一穂(私服): う、うん……。機会とかなかったから。それに、ひとりで行っても楽しめるかどうか。 美雪(私服): んー、別にそう決めつけたものじゃないでしょ。だって千雨なんかは、私が一緒じゃなくてもひとりで何度も水族館に行ったりしてたしね。 菜央(私服): サメ猛烈ラブっ子と比べちゃダメでしょ。あたしだって水族館にひとりで行けって言われたら、少し躊躇っちゃうかも……かも。 美雪(私服): お、おぅ……これが一般的な反応。千雨を見慣れてたせいで、麻痺してた……。 美雪(私服): じゃあ今度、一緒に水族館へ行ってみようよ!もちろんレナや魅音たちも誘ってさ! 一穂(私服): えっ? け、けど水族館って#p雛見沢#sひなみざわ#rから結構離れた場所になるんじゃ……? 美雪(私服): んー、確かに。一番近いのは名古屋か、北陸か……。 菜央(私服): どちらを選ぶにしても、電車だとかなりの遠路ね。時間もそうだし、運賃もすごいことになりそうよ。 美雪(私服): ……魅音たちに頼んで、車を出してもらう?もしくは入江先生か、富竹さんに頼むとかさ。 菜央(私服): あの人たちならきっと力を貸してくれると思うけど……最初からその善意に頼るのは、さすがにどうかしらってあたしは思うわ。 菜央(私服): 負担のかかる協力には、ちゃんと対価を払わないと。お金か、あるいは別の……。 詩音(私服): はろろーん。おや一穂さん、それに美雪さんと菜央さんも。今日も図書館通いで調べものですか? 美雪(私服): まーね。詩音こそ、これからエンジェルモートでバイト? 詩音(私服): えぇ。今週はシフトが結構キツイ感じなので、穴埋めにかり出されて大変なんですよ。 詩音(私服): お姉にもヘルプをお願いしているんですが、運悪く温泉宿の手伝いも入っているそうで……。 美雪(私服): シフトの穴埋め……人員不足……。 一穂(私服): ……美雪ちゃん、菜央ちゃん。 菜央(私服): えぇ、そうね。……詩音さん、実は相談があるんだけど少しいいかしら? …………。 詩音(私服): ……なるほど。そういうことでしたら、こっちにも利があって反対する理由はないです。 詩音(私服): 実は正直、あえてこういう話をしたのは手伝ってもらいたいという意図もあったんですよ。ただ、正直労基法だのが色々と厄介で……。 詩音(私服): けど、現物支給ってことなら問題なし。つまりは渡りに船ってやつですよ~、くっくっくっ♪ 美雪(私服): んじゃ、決まりっ。……あっ、もしよかったらレナたちにも声をかけるってのはどう? 詩音(私服): いいと思いますよ。こっちも人件費を削りつつ、遠慮なく無理を言うことができますからね。 一穂(私服): ありがとう、詩音さん! 菜央(私服): ……働くことに不満はないけど、素直にお礼を言っていいのかしら。なんか足元を見られたような……。 美雪(私服): 結果よければ、全てOK~!! Part 03: 魅音(私服): いやー、楽しかったね!さすがは関東圏、いや日本でも指折りの水族館!全部に見応えがあってすっごく良かったよ~! 梨花(私服): みー。あれだけの種類のお魚さんを見るのはボクも初めてだったので、大満足なのですよ~♪ 沙都子(私服): をーっほっほっほっ、まったくその通りですわ!図鑑の絵や解説なんかより、ずーっと面白くて迫力満点! 見ていて全然飽きませんでしてよ~! 美雪(デート): うんうん、みんなにそう言って喜んでもらえると私もオススメした甲斐があったよ~! 羽入(私服): あぅあぅ……海の底をのぞいたみたいでとっても楽しかったのですよ~。 詩音(私服): 全員で海に潜ったりするより、水族館の方が安上がりで安全ですからね。 魅音(私服): それに、ショーも楽しかったからね。美雪のおかげでいい思い出ができたよ! 美雪(デート): あ、でも……ホントに大丈夫なの、魅音?電車賃はもちろんのこと、入館料やら何やら全部お世話になっちゃって……。 魅音(私服): あっはっはっはっ、問題ないって!この程度の出費と手間で頼りになるバイト要員が確保できたんだから、むしろお安い御用! 魅音(私服): それに私も、水族館に興味があったからねー!たとえば#p雛見沢#sひなみざわ#rにそういう施設を作ることができないかなー、とかさ。 詩音(私服): いや……お姉。内陸で海のない雛見沢に、水族館なんてものはさすがに無理ですよ。海水を運ぶだけでも一苦労じゃないですか。 美雪(デート): んー……でも、首都圏だと周囲に海がない埼玉にも水族館があったよ。川の魚とか、水生生物を飼ったりしててね。 梨花(私服): ……みー。川の生き物だったらわざわざ海水を運ばなくてもいいので、手間が省けるのですよ。 沙都子(私服): 沢ガニやオタマジャクシ、カエルなども捕まえて展示するなら、私たちもお手伝いできますわよ!地元の生物を扱った水族園、なんていかがでして? 圭一(私服): おぉ、それはいいな!俺は魚を釣ってもどういう名前か知らねぇから、そういうところで教えてもらえると助かるぜ! 羽入(私服): あぅあぅ、周辺の子どもたちも勉強ができて集客が期待できるかもしれないのですよ~! 魅音(私服): でしょでしょ? というわけで町会には、すでに企画書を提出済み! 魅音(私服): だから、ここで買うお土産は全部経費扱い!遠慮なく売店に行ってくれて大丈夫だよ! 詩音(私服): いつの間にそんな根回しを……最近のお姉の手腕、ますます磨きがかかってきましたね。 魅音(私服): お土産とかも売れるしね!そうだ、水族館の売店のグッズもいくつか参考に買って帰ろうか。 レナ(私服): は……はぅぅっ、ホントに?だったらかぁいいイルカさんのぬいぐるみ全種類買ってきてもいいかな、かなっ? 詩音(私服): 全種類って……一番大きいぬいぐるみなんて2メートルはあるじゃないですか。 一穂(私服): 雛見沢に、イルカ……? 魅音(私服): さすがにイルカは、言い訳として苦しいかもね。魚系グッズでも、できれば参考になりそうなものにしておいてもらえると助かるよ。 レナ(私服): はぅ……じゃあ、お魚のキーホルダーにしようかな。菜央ちゃん、お揃いにするならどれがいい? 菜央(私服): ほわっ……?あ、あたしはレナちゃんが気に入ったものだったらなんでも……! 圭一(私服): うーん、俺は何にしようかなぁ。お袋にはうまそうな魚の干物とかでもあったら買ってきてくれ、って頼まれたんだが……。 魅音(私服): 干物って……圭ちゃん、海鮮市場に来たわけじゃないんだからさすがにそれは見当違いじゃない? 美雪(デート): いや、あるよ。この近くには、有名な港町があるからね。 美雪(デート): そこだと安くて、量もしっかりあるのが揃っていたりするよ。 沙都子(私服): それはいいですわね……って、美雪さん?よく見るとその手にアイスがありますけど、いつの間に買ったんですの? 美雪(デート): あっちの売店で売ってるよ~。ここの水族館の名物らしくてね、食べる価値は大いにありだねっ。 梨花(私服): みー、それはいいことを聞いたのです。早速買ってきて、羽入の目の前で美味しくペロペロむしゃむしゃするのですよ。 羽入(私服): ぼ、僕の分は買ってくれないのですかっ?梨花だけ食べるなんてずるいのですよ~?! 沙都子(私服): あらあら……梨花も羽入さんも、あわてんぼうのいやしんぼうさんですわねぇ。アイスが逃げるわけでもありませんのに。 詩音(私服): ……あら? そのアイスって、どうやら地元のイチゴを使っているみたいですね。あっちののぼりに、期間・数量限定……。 圭一(私服): お、数量限定と聞いたなら俺も食うしかねぇな!沙都子が食わないならその分俺がいただくぜー! 沙都子(私服): なっ……! 独占なんてさせませんわよー! 詩音(私服): ちょっと、沙都子!そこの道滑りやすいから走ったら危ないですよ! 魅音(私服): あっ、ちょっと待ってー!買うんなら、私の分も一緒にっ! 美雪(デート): おぅ、みんな元気だなー……ん? 一穂(私服): はぁ……。 美雪(デート): どうしたの一穂、ベンチに座り込んで。さっきから口数が少ないけど、ひょっとして疲れちゃった? 一穂(私服): あ……ううん、そうじゃなくって。なんていうか……その……。 一穂(私服): こんなふうに、みんなと一緒に水族館に行くことができるなんて全然思ってなかったから……。 一穂(私服): なんか胸がいっぱいと言うか、足がふわふわすると言うか……。 一穂(私服): すごく楽しくて、幸せだなぁ……って。連れてきてくれてありがとうね、美雪ちゃん。 美雪(デート): どういたしまして。私もみんなと一緒に来ることができて、すっごく嬉しかったよ。 美雪(デート): 同じ場所に足を運ぶのでも、誰と一緒に行くかで面白さの種類って変わるよね! 美雪(デート): さてと……一穂、確認だけどちょっと暑くない?足元がふわふわするのって熱気に当てられたせいじゃない? 一穂(私服): 言われてみれば、ちょっと暑いかも……? 美雪(デート): やっぱりね。お疲れ気味の一穂にはこの美雪ちゃんが特別に買ってきてあげるから、そこで座って待ってなさい。 一穂(私服): ありがとう……美雪ちゃん。それじゃ、お願いしてもいい……? 美雪(デート): よしきた、フレーバーは私に任せてよ。食べたいのが後で見つかったら、それはまた今度来た時のお楽しみってことで。 一穂(私服): ……次のデートの約束? 美雪(デート): おぅ、なんだって? 一穂(私服): 次の約束を取り付けるまでがデートなんだよね? 美雪(デート): あー……そう言えばそんなこと言ったっけ。真由姉ちゃんの定義だと今回のコレもデートか?……うん、デートかも。デートでいいや。 美雪(デート): なら、帰り道にまたみんなで来ようって次のデートの約束を取り付けないとね! 一穂(私服): うん。またみんなで、いろんなところに行きたいな。 美雪(デート): あはははっ、私も!んじゃ、次のデートも楽しもうねー!