Part 01: 一穂(冬服): 窓の外、すごいね……。 美雪(冬服): うーわ、外めちゃくちゃ吹雪いてきたよ……。 千雨: 正月三が日にいいのか、とは思ったが……この様子だと神社を閉めて正解だったな。 菜央(冬服): けど、大丈夫なの?知らずに神社に行っちゃった人とかがいたら……。 魅音(冬服): あー、その辺りはちゃんと対策済みだよ。神社を閉めるってことは、電話の連絡網を使って村のほぼ全員に通達してもらったからね。 レナ(冬服): この吹雪だから#p興宮#sおきのみや#rから来る人もそういないんじゃないかな? かな? 詩音(冬服): 車を出すのも、今日は一苦労でしょうからね。みんな家で大人しくしていると思いますよ。 一穂(冬服): そうなんだ。よかった……。 美雪(冬服): でも、昨日は魅音の家に泊まらせてもらって正解だったよ。レナと菜央に作ってもらったおせちも、そろそろ食べ切っちゃいそうだったし……。 美雪(冬服): おまけに、年末年始のドタバタで買い物の量を見誤っちゃってさ。危うく食料が尽きそうになってたんだ。 千雨: この雪だと、車があっても買い出しは難しそうだな。……そういや、セブンスマートって営業は何日からだ? レナ(冬服): えっと……今年は7日からだって。 菜央(冬服): 7日?……7日?! 美雪(冬服): お、おう……結構休むんだね。 魅音(冬服): そう? #p雛見沢#sひなみざわ#rのお店は、それくらい休むのが普通なんだけどね。 千雨: 都会だと、元日から営業してる店舗も多いからな。特に大きいデパートなんて、福袋商戦ってやつで熱く盛り上がってるくらいだ。 美雪(冬服): 社宅で年末年始に遠い目をしてるママさんは、だいたいケーキ屋か惣菜屋かデパート勤めだよねー。時給もいいし充実してる、とは言ってたけど。 美雪(冬服): まぁ、私たちの正月と引き換えに古手神社の平穏を守れたのは充実感があるかな。 美雪(冬服): 梨花ちゃんの平穏を守るのは、今のところ入江先生にお願いするしかないんだけどさ……。 詩音(冬服): 昨日電話で聞いた限りだと、梨花ちゃまの症状は良くなっているそうですよ。 魅音(冬服): とりあえず、一安心ってやつだね。……まぁこの寒さだから、梨花ちゃんが体調を崩すのも無理はないか。 美雪(冬服): 千雨もちょっと前に熱を出してたしね。寒いのに、暑い暑いって薄着で走り回るから……。 千雨: うるさい……ちょっと油断しただけだ。お前らにうつさなかったんだから、いいだろ? 一穂(冬服): うつると言えば、梨花ちゃんと一緒にいる沙都子ちゃんと羽入ちゃんは……大丈夫かな? 詩音(冬服): 意外と羽入さんがしっかりしているので、そこは大丈夫だと思います。 一穂(冬服): 意外と……? 菜央(冬服): 確かに、羽入のパッと見の頼りなさは一穂といい勝負よね。 一穂(冬服): そ、そんなに私、頼りないかな……? レナ(冬服): パッと見の印象だけだよ。一穂ちゃん、神社の列整理ですっごく上手にさばいてくれていたよね。 菜央(冬服): えぇ。あれがなかったら人があふれて、もっと混雑が酷くなってたと思うわ。 一穂(冬服): そ、そう? えへへ、良かったぁ……。 詩音(冬服): まぁでも、せっかくのお正月ですし。それなりにお正月を楽しませてもらいましょう。 詩音(冬服): 沙都子たちだって、私たちが遠慮して自粛なんてしていたら逆に気にすると思いますしね。 魅音(冬服): とかなんとか言っているけど……詩音は神社の手伝いをしていないよね?園崎系列の旅館のバイトを優先してさ。 詩音(冬服): だって、仕方がないじゃないですか。そっちの方が先約だったんですから。 詩音(冬服): 大変だったんですよ~?年越しの瞬間も働いていたんですから。 魅音(冬服): 私たちも年越しの瞬間、おみくじを売っていたんだけど……? 詩音(冬服): ほー……だったら、どっちが忙しかったか勝負でもします? 魅音(冬服): 望むところだっ! んじゃ、カードオープン!木に激突して、木に文句を言う酔っ払い客! 詩音(冬服): カードオープン!廊下に倒れて、名前も言えない酔っ払い! 魅音(冬服): くっ、酔っ払いに酔っ払いを返してきたか……?だったら、こっちは……! 美雪(冬服): おーい、苦労比べゲームはやめようよ?正月早々、不毛にもほどがあるからさー? 千雨: この双子のやりとりが不毛なのは同意だが……それはそうと、何かトラブルでもあったのか?さっき向こうで揉めてたように見えたぞ。 魅音(冬服): あぁ、いや……大したことじゃないんだけど、この大雪のせいでちょっと……ね。 一穂(冬服): 大雪で、トラブル……? Part 02: 菜央(冬服): ここをこう、して、帯はこう……はい、完成っ。 一穂(正月着物): わ、わぁ……! 美雪(着物): おー、似合う似合う! 一穂、可愛いじゃん! 一穂(正月着物): えへへ、ありがとう。美雪ちゃんも似合ってるよ。 魅音(宵越し): はー、にしてもこうも着物姿の女子が揃うと絶景だねぇ。 魅音(宵越し): だからこそなおさら、大雪のせいで小学生用の着物が届かなかったのが惜しい!画竜点睛を欠くってやつだよ……! 菜央(冬服): あたしのことは気にしないで。着付けの勉強ができて、楽しかったもの。 菜央(冬服): でも帯って、本当に色んな結び方があるのね。すごく勉強になったわ。 魅音(宵越し): 慣れると楽しいよ……ということで、千雨もどう? 千雨: やめろ。私は着物が苦手だって言ってるだろ? 美雪(着物): んー、似たような感じのを稽古とかで着たりしてたのに……? 千雨: あれは道着だ。ちょっと似ているだけで全然違う。そもそも重さが段違いだ。 詩音(伝統芸能): あら、そうなんですか? 千雨: そもそも枚数が違うだろうが。しかも着飾ることが優先で、外で動くことを前提にしてない。 千雨: 毎年、婆ちゃん家で着せられて……苦手なんだよ、着物って。重いし、暑いし、暑いし、……暑い。 詩音(伝統芸能): ほとんど暑いとしか言っていませんが……。 千雨: それに、着物で海とかは絶対泳げないだろ? 詩音(伝統芸能): 着物で海に入るなんて……完全に入水自殺じゃないですか。 レナ(正月): はぅ……ホラー映画にありそうな絵だね。 一穂(正月着物): うーん、千雨ちゃんだったら……サメと一緒に泳げるくらい、軽い着物があったら着てくれるのかな。 菜央(冬服): ……それ、いいわね。 千雨: なんで着物を着る必要があるんだ?!普通に水着でいいだろっ? 菜央(冬服): サメで釣ってもダメか。……これは相当だわ。 千雨: まぁサメ柄の着物なら、考えなくもないがな。 一穂(正月着物): (なんか、すごく怖い絵が浮かんできた……?!) 菜央(冬服): あと、そうね……着物イコール重いって印象を払拭できる素材で作れたら、もっといろんな人に楽しんでもらえるような衣装になるかも……かも。 レナ(正月): はぅ~。菜央ちゃん、着物も作るの?レナ、すっごく楽しみだな~。 菜央(冬服): 作る、作るわ! 菜央(冬服): だから作ったらレナちゃん、その、えっと……。 菜央(冬服): もし完成したら、一番に着てもらえる……? レナ(正月): はぅ~。もちろんだよ~!レナが菜央ちゃん専属の、生きたマネキンになるよ~! 魅音(宵越し): それ、普通にモデルって言い方でいいんじゃない? 千雨: サメと泳ぐレナか……いい絵になりそうだな。 詩音(伝統芸能): あのー、主題はサメじゃありませんよ。泳げるくらいに軽い着物って話だったと思うんですが。 美雪(着物): ……サメが絡んだ千雨に、そういう正論は通じないよ。 詩音(伝統芸能): すっごく遠い目していますね……何があったんです? 魅音(宵越し): 幼馴染みならではの、苦い記憶ってやつかな。くっくっくっ……。 魅音(宵越し): で、今さらだけど……詩音、なんであんたはここにいるのさ。確か今日も旅館でバイトじゃなかったっけ? 詩音(伝統芸能): 本当に今さらな話題ですね……この猛吹雪の影響で、直前で団体客にキャンセルが入っちゃったんですよ。 詩音(伝統芸能): 人手が余っても逆にってことで、私はお役御免のお帰りください状態になってしまったってわけです。 魅音(宵越し): へー、そりゃ大変だねぇ。 詩音(伝統芸能): あれ? いいんですかお姉、そんな態度で。可愛い妹が、お土産を持って帰ってきたってのに。 一穂(正月着物): お土産? 詩音(伝統芸能): その調子だと冷蔵庫見てませんね……仕方ない、準備してあげますよ。 一穂(正月着物): わぁ……! すごいご馳走……! レナ(正月): はぅ……詩ぃちゃん、これどうしたの? 詩音(伝統芸能): キャンセルになった団体客分の食事を、一部もらってきたんです。 詩音(伝統芸能): 吹雪の話を聞いた時に、美雪さんたちがバイト終わっても家に帰れなくなる可能性考えたら、お姉は皆さんを家に泊めると思いましてね。 詩音(伝統芸能): 口うるさい鬼婆たちは、今も#p興宮#sおきのみや#rですし。……まぁ、いても引き留めたとは思いますが。 魅音(宵越し): あんた、よくわかったね……。 詩音(伝統芸能): くっくっくっ……そりゃ、双子ですから。お姉の考えていることはすぐわかります。 一穂(正月着物): わぁああ……! 菜央(冬服): あたし、一穂と双子じゃないけど……この子の頭がご馳走でいっぱいなことはすぐわかったわ。 千雨: それは……顔を見れば誰でもわかることだな。 一穂(正月着物): わぁ、お寿司やお刺身もある……!すごいすごい! 美雪(着物): なんか、普通のおせちをおせちと呼ぶのならこっちは、なんか、こう……「大おせち」って感じじゃない? レナ(正月): はぅ……さすがプロのおせち料理だね。 美雪(着物): レナと菜央のおせちもすっごいおいしかったけど、これは……食材が素人じゃ手に入らないヤツだよ? 詩音(伝統芸能): 旅館のおせちですからね。お雑煮ダシももらってきてますから、それも作って一緒に食べましょう。 一穂(正月着物): うんっ! うんっ! 魅音(宵越し): 2回頷いた。 千雨: 大事なことだからな。 一穂(正月着物): はぐはぐもぐもぐ……。 一穂(正月着物): んー! ご馳走もおいしいけどお雑煮もおいしいねぇ。おもちもふわふわで柔らかくてとろけるみたいで……。 魅音(宵越し): そ、そう……園崎家の餅は年末にまとめて作るから、それを聞いたら参加者は喜ぶと思うけど……けど……。 菜央(冬服): ちょっと一穂。あんた今お雑煮、何杯目? 一穂(正月着物): えっと、んっと……。 一穂(正月着物): …………? 美雪(着物): 一穂……可愛く首を傾げても食べた量はごまかせないからね? 一穂(正月着物): あ、ごめんね。みんなの分なくなっちゃうよね!そろそろ、お雑煮は終わりにするから……! 千雨: いや、もうみんな腹一杯食っただろ。一穂の目の前で……おい、まさか覚えてないのか? 魅音(宵越し): ダメだこの子、もう食べ物のことしか考えていない……! レナ(正月): はぅ~♪ 幸せそうに食べている一穂ちゃん、かぁいいよ~。 美雪(着物): なんかさ……動物園の動物を見てるみたいな気分になってくるよね。 千雨: おい、それはさすがに言い過ぎ……でもないか。 菜央(冬服): ……一穂、あんたある程度のところで終わりにしなさいよ。 一穂(正月着物): うん、ちゃんと明日の分も残しておかないとね! 詩音(伝統芸能): いや、そうじゃないですけど……まぁいいです。沙都子たちに差し入れする分は別にしてありますから、好きなだけ食べてください。 美雪(着物): ありがとう、詩音……いろんな意味で。 一穂(正月着物): お餅、おいしいねぇ。 千雨: こいつ……米だけじゃなくて餅も好きなんだな。 菜央(冬服): 餅米もある意味で、米だもの。一穂の「穂」は、稲穂の穂……名は体を表すとは、よく言ったものね。 千雨: つまりは……共食いか? 美雪(着物): それは言ってあげるなっ! Part 03: 一穂(正月着物): ごちそうさまでしたーっ! 魅音(宵越し): よかった、ちゃんと残った……全部一穂が食い尽くすかと思った……。 千雨: こいつ……リミッタ-外したらどうなるんだ? 菜央(冬服): リミッターってのは、外したら大概壊れるものよ。つけたままにしてて。 レナ(正月): それじゃ、この後は何をしようかな……かな? 美雪(着物): せっかく着物を着てるし……あれやらない?帯くるくる! 魅音(宵越し): へ? それってテレビでよく見るあーれー、ご勘弁を~ってやつ? 美雪(着物): そうそうそれそれ! 一穂(正月着物): ……それって、楽しいの? 美雪(着物): いや、楽しいのか確かめてみたい。 詩音(伝統芸能): なんでそんなのやりたがるんですか? 美雪(着物): 私がやっても、着物を脱ぐ前と脱いだ後のビフォーアフターが大して変わらないからねっ! 詩音(伝統芸能): なんでいい笑顔でサムズアップしてるんです……? 千雨: 結局コイツも、ご馳走と腹一杯でテンション上がってるんだろ。 菜央(冬服): 呆れた。子どもじゃあるまいし……。 美雪(着物): ぐわっ?! 詩音(伝統芸能): ……この場の一番の子どもに言われるとキツいセリフですね、それ。 美雪(着物): うぐぐ……! 魅音(宵越し): じゃあさ、私の部屋からゲーム持ってきてボードゲームやろうよ。ゲーム! 一穂(正月着物): ゲーム?! 千雨: おっ、一穂の意識が食べ物から他に向いた。 魅音(宵越し): んじゃ私、部屋に置いているやつをいくつか取ってくるから。 レナ(正月): レナもお手伝いしようか? 魅音(宵越し): ありがと。でも、ゲームよりお茶の準備を頼んでいい?出している分を飲み尽くしちゃったからさ。 レナ(正月): わかった。 菜央(冬服): じゃあ、あたしはレナちゃんのお手伝いをするわ。 千雨: なら私は、魅音の手伝いだな。魅音のゲーム、たまにでかくて重いやつがあるし。 魅音(宵越し): お、サンキュー。 詩音(伝統芸能): あーらら。取り残されちゃいましたね。 美雪(着物): ちゃいましたねーって……一穂? 一穂(正月着物): ゲーム、ゲームできるんだ……えへへ……。 詩音(伝統芸能): 一穂さん、ご機嫌ですねぇ。 一穂(正月着物): うん。みんなでゴロゴロするお正月、楽しいなって思って。 詩音(伝統芸能): ご飯を食べて、ゲームして……あとはテレビ見て寝るくらいですか?本質的にはほとんど寝正月ですよねぇ。 一穂(正月着物): でも、みんなで過ごせるから嬉しいんだと思うよ。 一穂(正月着物): ゴロゴロしただけと言えば、だけど……なんだかね。このお正月が、すごく貴重で大事で……。 一穂(正月着物): かけがえのない時間に思えるんだ。 一穂(正月着物): 私、きっと……死ぬまで今日のこと、忘れないだろうなって。 一穂(正月着物): 絶対に忘れたくないだろうなって。 一穂(正月着物): えへへ……本当に幸せなお正月だなぁ。 一穂(正月着物): あぁ、でも梨花ちゃんや沙都子ちゃんや羽入ちゃんが一緒だったらもっと幸せになれたのかな……?次は一緒だといいな……って。 美雪&詩音: …………。 一穂(正月着物): あれ、どうしたの2人とも。 詩音(伝統芸能): ……一穂さん。 一穂(正月着物): なぁに? 詩音(伝統芸能): あのご馳走の中に、食べると幸せを感じる的な……口にしたらまずいヤツでも入っていましたか? 一穂(正月着物): えっ? 美雪(着物): いやいや、そんなことないって!ただ一穂は食べ過ぎて頭がふわーってなってるだけで! 一穂(正月着物): 頭がふわー……? 詩音(伝統芸能): だって急に口走ったかと思うと、言葉がなんか浮いていると言うか……ちょっと頭の状況が心配になるレベルなんですけど。 美雪(着物): 大丈夫かな。ご馳走に混ざってた謎成分のせいで明日起きたら一穂が子どもに戻ってたりとか……そんなことないよね?! 詩音(伝統芸能): どこの漫画の話ですか、と言いたいですが……正直それが起きないとは言いづらいですね。 一穂(正月着物): えぇえ……? 美雪(着物): 一穂、異変が起きそうだったらすぐに言うんだよ? 詩音(伝統芸能): 遠慮しなくていいですからね? 一穂(正月着物): う、うん? わかった……。 魅音(宵越し): ただいまー! ゲーム持ってきたよー! 千雨: おい、ちょっとそこ開けてくれ。 レナ(正月): はぅ~、お茶をいれてきたよー。 菜央(冬服): ほらゴロゴロしてないで、テーブル片付けて。 美雪(着物): はーい……まぁ、でも。 詩音(伝統芸能): でも……なんです? 美雪(着物): 梨花ちゃんの風邪とか吹雪とか、色々あるけど……。 美雪(着物): 確かにこれはこれで、幸せな正月かもしれないね。 詩音(伝統芸能): ですね。 一穂(正月着物): えへへ……うん。とっても幸せなお正月だよ!