Part 01: レナ(冬服): はぅ~……! 一穂ちゃんが変身した猫ちゃん、今思い出してもすっごくかぁいかったよ~。 美雪(冬服): だねー。なぜか人の姿の時より毛並みが整ってて、「どういうこと?」とは思ったけどさ。 菜央(冬服): 写真に収められなかったのが残念だわ……撮影のためにもう一度ヤエモンを呼び出して、呪いをかけてもらうってのはどうかしら? 一穂(冬服): そ、そんなのやだよ……!あの時は元に戻れるかどうかわかんなくて、ものすごく不安だったんだよ……? 美雪(冬服): あははっ、冗談だって。まぁ元に戻ったからこそ、こんな軽口が言えるわけなんだから。 美雪(冬服): とりあえず、一件落着でほっとしたよ。私も体を張った甲斐があったわけだしね。 一穂(冬服): ご、ごめんね美雪ちゃん。私のために、あんな格好をさせちゃって……。 レナ(冬服): あははは、レナは楽しかったから全然平気だよ。猫になった時は、また助けてあげるからね。 一穂(冬服): いや、もう猫になったりするトラブルは金輪際ご勘弁です……。 魅音(冬服): あっはっはっはっ、それもそうだね。で……あとは猫たちの処遇をどうするか、しっかりと考えていかなきゃ。 羽入(冬服): あぅあぅ、猫たちも#p雛見沢#sひなみざわ#rの仲間なのです。できればよい形で共存の道を探ってほしいと思いますが……。 菜央(冬服): 問題になってくるのは、やっぱりエサ問題ね。雪が融けるまでの間、何らかの方法であの子たちの食料を用意する必要がありそうよ。 梨花(冬服): みー。その点について、ボクから提案があるのですよ。 沙都子(冬服): 何かいいアイディアでもあるんですの、梨花? 梨花(冬服): みー。当分の間、古手神社に猫さん食堂を作るというのはどうでしょうか。 魅音(冬服): 猫さん食堂……?それって、ヤエモンが店のマスコットとして宣伝をしたりするやつ? 詩音(冬服): いや、それはまずいですよ。食べ物を扱う店とかだと衛生問題がありますし、そもそもヤエモンがやりたがらないと思います。 梨花(冬服): いえ、ボクが言ったのはにゃーにゃーのいる飲食店などではなく、文字通りの食事の場なのです。 梨花(冬服): ……一穂、ヤエモンとの会話はまだできますですか? 一穂(冬服): あ、うん。この前試したら、以前かけられた呪いの力がまだ残ってるみたいだったから……。 梨花(冬服): ヤエモンと、話がしたいのです。もしこの近くにいるようなら、呼び出してもらえますですか? 一穂(冬服): え、えっと……一応やってみるけど、そんなに遠くまで届くかなぁ……。 一穂(冬服): (……ヤエモン、聞こえる?もしよかったら、こっちに来てもらってもいいかな……?) …………。 ヤエモン: 『……呼んだか、カズホとやら』 一穂(冬服): わっ、すごい! ちゃんと届いたよ……! 梨花(冬服): では、通訳をお願いするのです。……ヤエモン、話を聞いてくれますか? ヤエモン: 『……何か?』 梨花(冬服): ヤエモンは、他の動物とも意思疎通できますか?あなたの直接脳に意思を伝える力があれば、ひょっとしたらと思いましたので。 ヤエモン: 『それを他の種にもできるかということだな。単純な内容であれば、可能だ』 菜央(冬服): なるほど。相手の知性に応じて、ということね。 ヤエモン: 『うむ。そもそもヒト以外の生き物は、そこまで複雑な意思伝達を必要としてこなかった。虫は無理だが、小動物ならばたやすいことだ』 梨花(冬服): 虫は季節的に冬眠中なので、除外するのです。では、あなたが食事できる場所へ誘導することはできると考えても構いませんですか? ヤエモン: 『構わぬ。場所を指定して、行けと伝えるくらいはできるだろう』 魅音(冬服): えっ……ちょっと待って、梨花ちゃん。それって猫だけじゃなくて、どんな動物でもウェルカムってこと? 梨花(冬服): はいなのです。羽入が言った通り『雛見沢の命』にすべて手を差しのべるなら、猫さんだけというわけにはいかないのです。 美雪(冬服): ……確かに。分け隔てはよくないよね。 ヤエモン: 『といっても、我にできるのは伝えるだけだ。聞いた連中が従うとは限らぬぞ』 梨花(冬服): もちろんなのです。それは各々の意思なので、強制するものはないのですよ。 梨花(冬服): ボクたちが壊してしまった自然がある……そのことは、以前から頭ではわかっていました。雛見沢には、その象徴とも言える場所もあります。 レナ(冬服): はぅ……それって、やっぱり……? 魅音(冬服): まぁ、ゴミ山のことだよね。あの辺りはむしろ私たちも迷惑していることではあるんだけどさ。 羽入(冬服): 動物から見れば違いはないとおもいます。……あぅあぅ。 梨花(冬服): といっても、ゴミ山に関しては解決しようという動きも出てきました。 梨花(冬服): 長い時間はかかるかもしれませんですが、ボクたちが雛見沢の未来を作っていける限りはよい方へ向かっていくと信じているのですよ。 レナ(冬服): ……すごいよ、梨花ちゃん。雛見沢のことを、本当に大切に想っているんだね。 梨花(冬服): みー……改まって口にするのは、少し恥ずかしいのですよ。 一穂(冬服): 全然、恥ずかしくなんかないよ。すごく立派なことだと思う。 魅音(冬服): さすが雛見沢御三家、古手家の頭首さんだね。いやいや……最近の梨花ちゃんの言動にはおじさんも驚かされてばっかりだよ。 沙都子(冬服): 難しいことはよくわかりませんけど……梨花がそんなふうに考えているのでしたら私、喜んで協力させてもらいますわ。 沙都子(冬服): 私にとっても梨花たちと一緒に過ごす、この雛見沢のことがとても大切なんですからね。 梨花(冬服): 沙都子……。 美雪(冬服): 村の人だけじゃなく、村にいる生き物全てが仲間ってことか……うん、悪くないね。 美雪(冬服): 私たちも、当然力を貸すよ。その食堂関係で肉体労働が必要だったらどんどん言ってね。 梨花(冬服): 頼もしいのですよ、にぱー。 梨花(冬服): ……それでヤエモン、どうでしょうか。山で食べものに困っている周辺の動物たちに、声をかけてもらえますですか? 梨花(冬服): 場所は、古手神社に用意しますのです。その代わり、村に下りて悪さをしないよう注意をしてくれれば……。 ヤエモン: 『……よかろう。お前の願い、引き受けた』 Part 02: 菜央(冬服): うそ……ほんとにインターホンを押してきたわ。猫の次元を軽く超えてるわね。 美雪(冬服): あははっ、そりゃ私がちゃーんと教えたからね。 一穂(冬服): 座布団、この大きさで足りるかな……あっ、私がお迎えしてくるね。 菜央(冬服): ……ねぇ。人間に戻ったあとの一穂って、なんだかヤエモンにかなり親身じゃない? 美雪(冬服): んー、その身で体験したっていうのは大きいのかもしれないよ。追いかけまわされて、怖かったみたいだしさ。 菜央(冬服): ……。猫として親分猫への服従心が抜けてないってわけじゃ、ないわよね。 美雪(冬服): いやいや、犬じゃあるまいし……って菜央、キミってそんなことを心配してたの? 菜央(冬服): だって……これからは猫のために戦うとか言われたら、どういう顔すればいいのよ。 美雪(冬服): んー、さすがにそれはないとは思うけど……。 ヤエモン: 『参ったぞ』 美雪(冬服): やぁ、ごめんね。こっそりウチに呼びだしたりしてさ。 一穂(冬服): うう、スリッパのサイズが合わなかったよ……一応、足の裏は拭かせてもらったけど。 菜央(冬服): ……もしかして進んで迎えに行ったのって、そういうこと? 一穂(冬服): あ、うん。靴を履いてるわけじゃないから、足跡だらけになっちゃうかなって。 一穂(冬服): 猫になって逃げてた時も、結構あちこちを足跡で汚しちゃったし、それで……。 菜央(冬服): はぁ……なるほど、ね。 美雪(冬服): ほら、大丈夫だったでしょ? 一穂(冬服): ……? えっと、何のお話? 菜央(冬服): なんでもないから、一穂は気にしないで。ほら、ヤエモンとの通訳をよろしくね。 一穂(冬服): う、うん……。 ヤエモン: 『して、我を呼びだした理由はなんだ。昼間の件で、伝え忘れでもあったか?』 美雪(冬服): んにゃ。私としては人間の側から、ああいう提案ができたことはよかったと一応は思ってるんだ。 美雪(冬服): ただ……『引き受けた』って言った時のヤエモンの表情が、ちょっと気になってさ。 美雪(冬服): 実のところ、本心では話し合った内容に納得してないんじゃないかなー、と思ってね。 ヤエモン: 『ふん……種が異なるというのに、よく見ておるな』 美雪(冬服): まぁ、癖みたいなものだよ。ごめん、そう言われて気分が悪かった? ヤエモン: 『いや……「納得しているか」という意味では、事実お前の言うとおりだからな』 美雪(冬服): んー、やっぱりそうだったか~。あの場で言わなかったのは、せっかくできた話し合いの場を壊したくなかったから? ヤエモン: 『食料を提供するという話を、喜ぶ者も中にはおろうと思ってな。それを我が一存でふいにするのは如何かと思ったのだ』 美雪(冬服): さすが、冷静だね。やっぱり声をかけてよかったよ。 美雪(冬服): もし取り決めた内容について「ここがイヤだ」っていう部分があれば、私たちが梨花ちゃんに伝えてみるからさ。 ヤエモン: 『ふむ……どう言えばよいのであろうな……』 ヤエモン: 『我らの多くは、今までずっと自力で生きてきた。……だが、この策は事実上我らがヒトに飼われることを意味するに等しい』 ヤエモン: 『ヒトが生きものを飼うことは知っている。そういう仕組みに取りこまれて生きている同胞をどうこう言うつもりはない』 ヤエモン: 『……だが、我らには我らの誇りがある。ひとたび自由を失えば、それを取り戻して野生に還ることは困難となるだろう』 菜央(冬服): ……奪われたものへのお詫びでも、施しを受けるみたいで気持ち悪いということ? ヤエモン: 『そういうことだ。ヒトからエサをもらうことに慣れてしまい、その安住と負担の軽減に甘えて抜け出せなくなる者が出るかもしれない』 美雪(冬服): んー……その心配は、確かにあるね。 ヤエモン: 『……誤解のないように言っておくが、あの娘の申し出はありがたいと思っている。ゆえに、あまり気を悪くさせたくなかった』 ヤエモン: 『ただ、与えられることを無償で受けるのは心苦しい……あくまでも我の考えではあるが』 美雪(冬服): つまり、一方的じゃなければいいわけだね。 美雪(冬服): 人間の考え方からすると、それなら働いて糧を得るかってことになるけど……猫の感覚からすると、それってアリなの? ヤエモン: 『……? 我には、お前が何を言おうとしているのかがわからぬのだが』 美雪(冬服): うーん、うーん……ど、どう言えば伝わる? 菜央(冬服): 働く概念を、動物に教えるってのもね……そもそも猫って、食事の時以外は基本的に部屋でゴロゴロしたりするものじゃないの? 一穂(冬服): それは飼い猫の場合だよ。野性の猫は、狩りをして食べものを得たりするんでしょ? ヤエモン: 『その通りだ。……ただ、それが近年立ちゆかなくなってきている』 一穂(冬服): じゃあ、その狩りに代わる行為をやってみないかっていう話だと思う。 一穂(冬服): といっても、これはさっき言っていた誇りにも影響する部分で……。 一穂(冬服): 働くということは、対価を払う側に評価されるということだから……狩りをして食べるという自分の行為だけで完結しないの。 一穂(冬服): だから。孤高ではいられない……っていうことになると思う。 美雪(冬服): お、おぉっ……一穂すごい!まさに私の言いたかったことをぴったり言葉にしてくれてるよ! 一穂(冬服): そ……そうなの?なんとなく、言葉を並べてみただけなんだけど……。 ヤエモン: 『ふむ……今の話は我にもよくわかったぞ。我は時折、弱き者の狩りを手助けすることもある。するとその者たちは、我を敬うようになる』 ヤエモン: 『それは誇りの一部になっていると言っていい。つまり働きを評価されるというのは、そういうことに近いと考えてよいというわけか……』 美雪(冬服): う、うーん……近いけど遠い……!でも、考え方はかなり合ってると思う! ヤエモン: 『…………』 ヤエモン: 『近いと言いつつ、遠いとはどういうことだ。わけがわからぬ。理解しているというならば、お前が範を示してみせよ』 美雪(冬服): んがっ……! 菜央(冬服): そうね。本来なら猫の習性にはないものをやらせようっていうんだもの。それくらいはしないと示しがつかないわ。 一穂(冬服): が……頑張って、美雪ちゃん! 美雪(冬服): って、なにそれっ?3人でやろうって話にはならないの?! 一穂(冬服): だ、だって……にゃんにゃんコスチュームを持ってるのは、美雪ちゃんとレナさんだけだしね。 美雪(冬服): じゃあ、レナと頑張れってこと? 菜央(冬服): は? バカ言わないで、なんでレナちゃんを勝手に巻きこもうとしてるのよ。これは美雪が言い出したことなんだからね。 美雪(冬服): んぐぐぐぐ……! わかった……わかったよ!全力でやらせていただきます! Part 03: 詩音(冬服): 当分の間、美雪さんがゲストハウスを定期的に使用したいって……いったい何を始めるつもりなんです? 魅音(冬服): いや、なんでも美雪がヤエモンと一緒になって、興行を打つんだってさ。 詩音(冬服): えっ……? それってお客を入れて、ヤエモンを見せるってことですか? 魅音(冬服): あ、そっちじゃなくてさ。この前集めた猫たちの中から、有志を募って鍛えるそうだよ。 沙都子(冬服): ……つまり大道芸をやる、ということですの? 梨花(冬服): みー。話だけ聞くと美雪が猿回しならぬ、猫回しをやるように思えるのですが……。 羽入(冬服): あぅあぅ……?僕は美雪が踊ると聞きましたのですよ? 梨花(冬服): 美雪も一緒に……?それは面白そうなのです。ぜひぜひ見に行きたいのですよ、にぱー。 沙都子(冬服): なるほど……美雪さんとしては、猫さんたちだけを見世物にはしないということですのね。 レナ(冬服): 圭一く~ん、お待たせ! 菜央(冬服): こんにちは……こんばんは? 圭一(冬服): おっ、レナに菜央ちゃん。今日は誘ってくれてありがとな!ゲストハウスで、面白いことをやるんだって? レナ(冬服): あははは、そうなの。レナも一緒にやりたいって言ったんだけど、菜央ちゃんに止められちゃって……はぅ。 菜央(冬服): だ、だって……他にどんな人が見に来るかわからないし……。 圭一(冬服): ん? あんまり人には見せたくないもんなのか? 菜央(冬服): 格好が、ちょっとね。みんなの前だったら存分に楽しめるんだけど、にゃんにゃんだし……。 圭一(冬服): にゃんにゃん……き、きわどい格好ってことか……そいつぁヤベェな! レナ(冬服): はぅ……圭一くん、鼻の下が伸びているよ。 圭一(冬服): 何言っているんだ、レナ!こんなことを聞かされて期待しない男がいるだろうか! いや、いないっ! 圭一(冬服): きっと、罰ゲームで俺がみんなに用意しそうな衣装を着るってことだろ? それを自ら進んでやるとは、美雪ちゃん……漢だぜ……! 菜央(冬服): いや、美雪は女の子なんだけど。はぁ……どうして男の人って、そういう方面で女性を見ようとしてくるのかしら……? 圭一(冬服): レナもやりたい……ってことは、2人でできる分の衣装はあるわけだよな?それってこの前話していた、例の「アレ」かっ? レナ(冬服): うん、対になるにゃんにゃんだよ。 圭一(冬服): そうか……そうだな。レナがあとでこっそり俺にだけ見せてくれるなら、今日は美雪ちゃんの踊りを見ても邪なことを考えないって誓うぜ。 レナ(冬服): はぅっ? え、えっと……それは……。 菜央(冬服): ……レナちゃん、騙されちゃダメ。前原さん、そんなこと言っておいて美雪の時もレナちゃんの時も、目一杯楽しむつもりでしょ? 圭一(冬服): ははっ、バレたか。だけど男ってのは、そういう生きものなんだ。諦めてくれ。 レナ(冬服): はぅ~っ、圭一くん。菜央ちゃんに変なこと教えないでよ。 圭一(冬服): おいおい、今のは菜央ちゃんが真実を見抜いて言ったんだからな?俺が変なことを言ったわけじゃないぜ。 圭一(冬服): ……それに、俺はひとつ信じていることがある。いや、理解していると言ってもいい事実だ。 菜央(冬服): 事実って……なんのこと? 圭一(冬服): もし、俺と菜央ちゃんだけでこっそりレナのにゃんにゃん見せてもらおうぜー、って誘ったら菜央ちゃんはどうする? 菜央(冬服): 協力するに決まってるでしょ?きっと前原さんと同じように顔を崩しまくって、至福のひと時を全身で味わってみせるわ。 圭一(冬服): よし……ならば今日は前哨戦だ!美雪ちゃんの踊りをしっかり目に焼き付けて、レナの撮影会の参考にさせてもらおうぜっ! 菜央(冬服): えぇ、わかったわ!次の天国をパーフェクトにするためにも、今回は気合を入れて臨まないとねっ! レナ(冬服): は、はうぅぅ~……菜央ちゃん、圭一くんの口車に乗せられちゃっているよ……。 美雪(にゃんコス): えー、テステス。マイクチェック、オーケー。 美雪(にゃんコス): うひゃぁ……いっぱい集まったねぇ。口コミでこんなに集まるって、どういうこと? 美雪(にゃんコス): えー、どうも今日は方々から集まっていただきまして、ありがとうございます。赤坂美雪です。 梨花(冬服): 裏方は一穂と羽入、そしてボクが司会進行だそうなのですよ。にぱー☆ 美雪(にゃんコス): ちょっと梨花ちゃん、「だそうです」ってなんで他人事なのさ~! 梨花(冬服): みー。そうは言ってもさっき頼まれて、いきなりここに立たされているのです。さすがに乱暴が過ぎると思うのですよ。 美雪(にゃんコス): あ、あははは……ごめんごめん。でも、趣旨を一番理解してるのは梨花ちゃんなんだからさ。 美雪(にゃんコス): ご来場の皆さんにひと言、よろしくね。 梨花(冬服): ……わかりましたのです。では、少しだけ。 梨花(冬服): 最近、たくさんの猫さんが各所に出没していたのを知っている人も多いと思うのです。そのおかげで、ボクたちの暮らしに被害が出るようになりました。 梨花(冬服): でも、それは猫さんたちが望んだことでもありません。村や町の開発が進んだことや、ボクたちも困っている不法投棄が原因かもしれないのです。 梨花(冬服): ボクたちから見たところの「悪さ」を猫さんたちがせざるを得ない状況が、この村、この町にはあります。 梨花(冬服): ただ、だからといってボクたちの暮らしが悪だと言うつもりもないのです。そこにはお互いに事情と、営みがあるだけです。 梨花(冬服): そういう状況を知ってしまった以上、これから先はどうするかを考えていきたい……という話になりましたのです。 梨花(冬服): そこで手を挙げてくれたのが、ここにいる「猫使い美雪」でした。 美雪(にゃんコス): って、いつそんなあだ名がついたの?! 梨花(冬服): 「にゃんにゃんマスター美雪」とかの方がいいですか? 美雪(にゃんコス): いや、酷くなってるじゃん! 梨花(冬服): わかりやすく言うと、猫さんたちと意思疎通ができるようなのです。 梨花(冬服): 猫さんたちは、美雪の言うことを聞いてくれます。フシギなのです。 美雪(にゃんコス): まぁそこは話半分に聞いてほしいんですが、今日は猫と一緒にダンスを披露したいなと思ったわけです。 美雪(にゃんコス): なんでかって? 餌代がかかるから!そして、里親探しも兼ねて!あと、先に言っておきます。 美雪(にゃんコス): 一部の猫を里親として引き取ってくれたらとてもありがたいんですが、だからといって芸を求めないでください。 美雪(にゃんコス): みんな普通の猫なので、今日が特別なマジックだと思ってくれれば。 梨花(冬服): みー、ちょっとのつもりがかなり長くなってしまったのです。では、そろそろいきますのですよ。 圭一(冬服): いよっ! 待ってました! 赤坂屋! 美雪(にゃんコス): ち・がーう!その掛け声は明らかにアレでしょ! 梨花(冬服): 舞台の撮影は、富竹がしてくれます。後日焼き増し販売もしますので、今は存分に舞台をお楽しみくださいなのです。 梨花(冬服): それでは羽入、ミュージックスタート。 羽入(冬服): なのです! 美雪(にゃんコス): それじゃあにゃんにゃんたち! カモーン! レナ(冬服): はぅ~っ! 猫ちゃんたちが右から左から飛びこんできたよ! 菜央(冬服): す、すごいわ……美雪と猫が綺麗に揃って踊ってる! レナ(冬服): はぅぅっ~、かぁいいよぉぉ~!お持ち帰り予約は、どこですればいいのかな、かなっ? 沙都子(冬服): 予約……まさかのパターンが出ましたわ……。 圭一(冬服): まだ自分を抑えられている感じだな。限界突破をしていたら、俺たちも吹き飛ばされちまっているだろうからさ。 菜央(冬服): これって……ヤエモンが指示を出してるってことなの? 沙都子(冬服): いえ。美雪さんに合わせて動けるように、ヤエモンさんが長い時間をかけて猫たちを指導したみたいですわ。 圭一(冬服): おっ沙都子、ずいぶん詳しいんだな。どこかで練習しているところを見かけたりしたのか? 沙都子(冬服): 見かけたもなにも、美雪さんたちは古手神社に集まって練習をしておりましたのよ。 圭一(冬服): なるほど、そういうことか。それにしても美雪のヤツ、ダンスも結構さまになっている感じだなぁ。 魅音(冬服): もともと身体動かすのは得意そうだったし、勘のいい子はなにやらせても呑みこみが早いんだろうねー。 レナ(冬服): みっっゆっきちゃーん!かあぁぁいいぃぃよおぉぉ~!! 美雪(にゃんコス): あー、そーゆーのはいいからっ!恥ずかしいでしょっ! 菜央(冬服): にゃんにゃんかぁーいぃーよぉー。 美雪(にゃんコス): 棒読みもやめろっ! 魅音(冬服): いやぁ~、大成功だったんじゃない? 美雪(冬服): 一穂、照明係ありがとね。 一穂(冬服): うん。なんとか無事に終わってよかったよ。 梨花(冬服): 早速引き取りたいという申し出もあったのです。ヤエモンを通じて、人間と暮らしてもいいという猫さんを募りましょう。 ヤエモン: 『……あの装束を身につけておれば、直接話ができるのではないのか?』 美雪(冬服): それはそうなんだけど、ヤエモンも心配でしょ。頑張ってまとめてきた仲間のことなんだしさ。 ヤエモン: 『……感謝する。共に踊った者たちも楽しんだようだ』 羽入(冬服): あぅあぅ、よかったのです~。猫さんたちがどう感じるかは続けられるかどうかの決め手になると思っていたところなのですよ。 魅音(冬服): じゃあ、ゲストハウスは定期的に提供するってことで。 梨花(冬服): ありがとうなのですよ、魅ぃ。 詩音(冬服): 次は、沙都子がやってみてもいいと思いますよ?猫っぽい可愛さなら、絶対に負けやしません。 沙都子(冬服): どちらかというと私は、舞台を作らせてほしいと申しあげましたのに……まだ今はダメだ、と梨花が許してくれませんでしたの。 魅音(冬服): ほぅ? そりゃまた、どうして? 沙都子(冬服): 私が提案した設計では、仕掛けが多すぎて猫が驚いて逃げてしまうと……。 詩音(冬服): でも、『まだ今は』ということは……いずれ? 梨花(冬服): みー。まずは食堂に猫さんたちの遊び場を作ってもらいたいのです。沙都子のトラップは、そういう活かし方もできますので。 梨花(冬服): その「遊び場」を発展させて、猫さんが沙都子の舞台で駆けまわる姿が演目の一部になれば、きっと盛り上がるのですよ。 ヤエモン: 『なるほど……我らの楽しみを増やそうと考えてくれるということか』 沙都子(冬服): ……を、をーっほほほほっ!梨花にそこまで見込まれたのでは、やってみせるしかありませんわね! 美雪(冬服): あ、照れてる。 一穂(冬服): ふふっ、そうだね。 沙都子(冬服): て……照れておりませんわっ。 美雪(冬服): まぁ仕掛け舞台はいずれの楽しみにするとして、次はみんなの中の誰かにやってもらおっかね~。 詩音(冬服): う~ん、私があの格好をすると……ちょっと行政指導が入ってしまうかもしれませんねぇ。 魅音(冬服): あからさまに、自分は色っぽいぜ自慢っ?それとも衣装がはちきれそうとか言うつもり?! 美雪(冬服): まずは、衣装を持ってるレナが最有力……っていうか今夜もうやりそうな勢いで帰ってったけどね。 羽入(冬服): あぅあぅ……今宵、菜央は竜宮家にお泊まりで撮影会と服の仕立てをやるそうなのですよー。 美雪(冬服): やれやれ、あの子はどこまで行っちゃうんだろうね~。 一穂(冬服): あ、あははは……。