Part 01: 羽入(巫女): #p田村媛#sたむらひめ#rー、田村媛~っ!どこにいますかー?いたら返事をしてくださいなのですよ~! 田村媛命: ……騒々しい#p也#sなり#rや。して、何の用#p哉#sかな#r。 羽入(巫女): お願いがあるのです! 田村媛命: いや、それは大方わかっている也や。やり取りが増えるといつも話が脱線する故、用件と簡潔に伝えるが善きと知り給え。 羽入(巫女): わかりましたのです。この前話していた、田村媛が思いついたという僕が村の外を出られるようになる方法……。 羽入(巫女): ぜひ明日、それを試したいのですよ~! 田村媛命: 何を急に……いずれとは話題に上げたが、せめて前もって準備の時間を用意するのは最低限の礼儀哉。それを――。 羽入(巫女): そんなことを言われても、いきなり急に必要になってしまったのです!頼れるのは、もうあなただけなのですよ~! 田村媛命: …………。 羽入(巫女): だ、ダメでしょうか……? 田村媛命: ……。とりあえず、必要になった理由と経緯を吾輩に語って聞かせる也や。 羽入(巫女): は、はいなのです……。 田村媛命: 海……? まさか角の民の長よ、そなたはこの地を離れる心づもり哉? 羽入(巫女): いえ、ほんの数日ほどなのです。アルバイトでみんな一緒に行こう、ということになったのですよ。 田村媛命: ふむ……ところで角の民の長は、海を見た記憶が皆無也や? 羽入(巫女): ……もしかしたら、訪れたことは以前にあったのかもしれません。でも、今の僕にその記憶はないのです。 田村媛命: 想起できぬ、か……なるほど。 羽入(巫女): ですから、見てみたいのですよ。それが梨花たちと一緒なら、なおさらなのです。 田村媛命: ……して、そなたからの対価は何を想定している也や? 羽入(巫女): へっ……? 田村媛命: よもやそなた、吾輩に無償の奉仕を求めているとは申さぬ哉……? 田村媛命: 何も差し出さぬ他者への要求は、たとえ神の立場同士であっても奴隷の奉仕同然だと知り給え。 羽入(巫女): も、もちろん理解しているのですよ。おいしいシュークリームを用意してもらうのです。 羽入(巫女): ……足りないでしょうか? 田村媛命: ……否。とはいえ……何があった也や。 羽入(巫女): あぅ? 何がって、さっき説明したではないですか。魅音が海の家のアルバイトに行かないかって……。 田村媛命: それは聞いた哉。……さりとて、妙に性急也や。他に何があるのか、もしも裏に含まれたものが存在するのであれば率直に、忌憚なく語り給え。 羽入(巫女): …………。 田村媛命: ……語れぬ事情がある哉?されば無理強いはせぬ。 羽入(巫女): いえ……少し、驚いていただけです。いつもの田村媛だったら、対価を提示した後は受けるか受けないかの二択だと思っていたので。 羽入(巫女): ごめんなさいなのです。別に、隠すほどのことではないのですよ。ただ、僕もどうすればいいか考えて……。 田村媛命: ……? 羽入(巫女): 海に行ってみたいというのは、本当なのです。そこに嘘はありません。 羽入(巫女): 性急だった理由は、沙都子のことと……。 羽入(巫女): 最近現れた、美雪の友達のことなのです。 Part 02: 魅音(水着): うーん、まさか全員くじに外れて海上アスレチック選手権の予選にすら出られないとは……。 沙都子(水着): これだけ人数がいれば、一組ぐらいは当たると思っていましたが、甘かったですわね……。 菜央(水着): 仕方ないわよ。参加希望者がたくさんいてその中から決める方法はくじだけなんだもの。勝負は時の運、の典型例ね。 レナ(水着): アルバイトのこともあるから、全員当たってもそれはそれで困っちゃったかも……はぅ。 レナ(水着): でもでも、アスレチックの利用チケットを全員分お持ち帰りできたのはラッキーだったねっ。 一穂(ナイト水着): 配ってたから反射的に貰っちゃったけど……このチケットって、何に使えるの? 羽入(水着): あぅあぅ、チケットには撮影後設置したあの海上アスレチックで、自由に遊べると書いてあるのですよ。 魅音(水着): この指定日と時間だったらアルバイトが終わった後だから……思う存分に遊べそうだね! 美雪(水着): んー、延泊することになるけど……滞在日数とかは大丈夫? 魅音(水着): それはなんとかするから安心して! 梨花(水着): 海の家アルバイトが終わった後の楽しみができたのですよ、にぱー。 羽入(水着): あぅあぅ、それもそうですが……旅行が予定よりも長くなるなんて、なんだかお得な気がするのですよ。 千雨(水着): 撮影時にセットが破壊されないことを祈るしかないな。そうなったら、一般の利用が中止になるだろうし。 美雪(水着): そういう不吉なこと言わないっ! 千雨(水着): 考えられることは、先に考えておくべきだろ。 羽入(水着): …………。 沙都子(水着): あの……ところでこの海上アスレチック、今後テレビで放送されるんですのよね? 沙都子(水着): なんだか不思議な感じですわ。海水浴に、海上アスレチック……。 沙都子(水着): テレビの中の遠い世界の話だと思っていたのに、今、目の前にこうして存在しているなんて……まるで夢を見ているようでしてよ。 千雨(水着): まぁ、#p雛見沢#sひなみざわ#rでこの海上アスレチック番組が見られるかは不明だけどな。 レナ(水着): はぅ……テレビ局の都合だから難しいよね。 魅音(水着): 大丈夫、いざとなったら親戚連中に頼んで番組を録画したテープを入手するからさ! 一穂(ナイト水着): す、すごいね……。 沙都子(水着): あらあら……では放映でもテープでも入手できれば、皆さんで鑑賞会ですわね~。ね、詩音さん。 詩音(水着): 優勝賞金が……はぁ。あれがあれば、温泉旅行でも海外でも行けたのに。 魅音(水着): いや、海外はさすがに無理でしょ。 羽入(水着): 今のこの時間だけで、十分なのです。目の前のものを楽しみましょうなのですよ~♪ 詩音(水着): そうですね……はぁ。 詩音(水着): そうとなったら、皆さん!そろそろバイトに戻りますよー! 菜央(水着): ……立ち直りが早いわね。 羽入(水着): あぅあぅ、詩音の手のひらクルックルはすさまじい切り替えの早さなのですよ~。 詩音(水着): 褒め言葉じゃありませんね、それって……。 魅音(水着): まぁまぁ。それじゃ、海上アスレチックを楽しみにして海の家アルバイトを乗り切るぞーっ! 羽入(水着): おーっ! ……なんて言って羽入は、あんなに楽しみにしていたのに。 羽入(水着): あぅあぅあぅあぅあぅぅぅうううっ~!! ばっしゃーん!!! 沙都子(水着): は、羽入さーん?! 梨花(水着): みー……飛び込んだというよりも、あれは落下なのです。 千雨(水着): 見事な腹打ちだな。 美雪(水着): いや、感心してる場合じゃないって?! レナ(水着): 羽入ちゃん、大丈夫?! 羽入(水着): だ、大丈夫なのです。あ、足元が柔らかくて……あぅあぅ……。 梨花(水着): みー。岩場から川へ飛び込むのとはそもそも勝手が違うのですよ。 一穂(ナイト水着): 足場が違うだけでそこまで変わるんだ……。 詩音(水着): 踏み込みの感覚がズレたせいで、落ちるときの姿勢もズレたんでしょうね。 羽入(水着): あぅあぅ……そういう感覚の違いは、知らなかったのです。 沙都子(水着): 海に来なければ、一生知ることがない豆知識でしたわね。 沙都子(水着): では、私が挑戦してみますわ。 梨花(水着): ……頑張ってくださいなのですよ。 羽入(水着): 気をつけてほしいのですよ。 沙都子(水着): えぇ! 一穂(ナイト水着): も、もう登って行っちゃった……沙都子ちゃん、大丈夫かな。 羽入(水着): 大丈夫ですよ、沙都子は。 梨花(水着): はい、沙都子は大丈夫なのですよ。 沙都子(水着): とぉっ!! 千雨(水着): ……悪くないな。 バシャーン!! 美雪(水着): おぅ、綺麗な着地。 沙都子(水着): ぷはぁっ! はぁ、はぁ……。 魅音(水着): あ、戻ってきた。 沙都子(水着): いかがでした?私の華麗な飛び込みは……はふぅ……。 レナ(水着): うんうん! とっても華麗な飛び込みだったよ! 菜央(水着): 上手いじゃないの。 沙都子(水着): 羽入さんの飛び込みを見て色々と考えてみましたの。そしたら上手くいきましたわ。 千雨(水着): ……つまり沙都子の成功は、羽入の失敗があってってことか。 羽入(水着): ありがとうなのですよ、沙都子!僕の仇を取ってくれて……!! 沙都子(水着): をーっほっほっほっ、当然ですわー! 一穂(ナイト水着): 仇……仇? 美雪(水着): はーい。言いたいことはわかるけど、そこはちょっと黙ってようね~。 沙都子(水着): ふふふ……コツは掴みましたわ。もう一回飛び込みに挑戦しますわよ! 魅音(水着): おっ、じゃあ私もお供しようかな~。詩音も行く? 詩音(水着): 私はやめておきます……水着がポロリ、なんてベタなハプニングは起こしたくないので。 美雪(水着): それは……うん。その水着と詩音のスタイルだと、それは起きそうだね。 梨花(水着): ……沙都子。 沙都子(水着): 羽入さんも再挑戦はどうかしら?今の私なら、飛び込みのコツを伝授できますわよ! 羽入(水着): …………。 羽入(水着): はいなのです!次こそは綺麗に飛び込みたいのです!! 沙都子(水着): では勝負ですわ。さぁ、再び飛び込み台に参りますわよ! 梨花(水着): ……沙都子。 沙都子(水着): あら、なんですの梨花。 梨花(水着): ……。今、沙都子は楽しいですか? 沙都子(水着): あらあら、どうしましたの急に。 沙都子(水着): もちろん、楽しいに決まってますわ! 梨花(水着): そうなのですか……。 梨花(水着): それなら、よかったのですよ。 羽入(水着): ……ふふっ。 Part 03: 美雪(私服): 合体! 線香花火・ファイブ!! 一穂(私服): わぁ、大きな火の玉……。線香花火にこんな楽しみ方があったなんて……。 菜央(私服): ……線香花火のはかなさが台無しね。 沙都子(私服): 羽入さん、こんなところにいましたの? 羽入(私服): あぅあぅ……沙都子? 沙都子(私服): ちょっと煙たくなってきたので、避難ですわ。 沙都子(私服): それにしても皆さん、花火がお好きですわねぇ。前にもやったのに、またやるとは思いませんでしたわ。 羽入(私服): あぅあぅ、今日が旅行最終日ですから。 沙都子(私服): ……明日には#p雛見沢#sひなみざわ#rに帰るんですのね。なんだか実感が湧きませんわ。 羽入(私服): 帰りたくない、ですか? 沙都子(私服): いえ、そういうわけではありませんが……旅行がこんなに楽しいとは思わなかったので。 沙都子(私服): いつかまた、こんなふうに皆さんと一緒にどこかへ遠出をしてみたいですわね。 羽入(私服): ……沙都子もそう思って楽しんでくれていたとわかって、本当によかったのですよ。 沙都子(私服): えっ……? 羽入(私服): 僕と梨花は今回の旅行が楽しみでしたが、沙都子はどう思っているのかと少しだけ気になっていたのです。 沙都子(私服): あら、そうでしたの?私のことなんて、お気遣いをいただかなくても別に構いませんのに。 羽入(私服): ですが……沙都子は僕たちが旅行に行きたいと言えば、きっとついてきてくれますよね? 沙都子(私服): もちろんですわ。梨花が行くというのであれば、よほどの理由がない限り私も一緒でしてよ。 沙都子(私服): 実際、思っていた通りに楽しめましたもの。まぁ、海の家のアルバイトは大変でしたけどね。 羽入(私服): ……でも僕は、それに加えて沙都子が自分から旅行に行きたいと言い出すのを初めて聞いたのです。 沙都子(私服): あら、そうですの?あの時は一緒に見てたテレビの話題の延長で、そんな大層なことを言ったつもりは……。 羽入(私服): 僕が知る限り、沙都子はどんなに綺麗な景色やご飯がテレビに出ても「いいな」とは言っても……行ってみたいと言ったことはないのですよ。 沙都子(私服): それは……。 沙都子(私服): そう、かもしれませんわね。 羽入(私服): はい。だから嬉しかったのです。沙都子が自分から言い出してくれたことが。 沙都子(私服): くす……ちょっと大袈裟すぎる気がしますわ。 沙都子(私服): それに私が旅行に行きたいと言っても自分には叶える方法がありませんもの。 沙都子(私服): ……年齢とか、お金の問題だってありますし。 羽入(私服): そうですね……たくさんの問題があります。でも今回は、それらが全て解消できた。 沙都子(私服): 解消してもらった、の間違いですわ。私は結局、何もしてませんもの。 沙都子(私服): 確かにアルバイトと言う名目はありますが、正直このお仕事……無理に私たちではなくてはならない理由は、ありませんわよね? 羽入(私服): それは……あぅ。 沙都子(私服): だって園崎家ですもの。本気を出せばきっと、もっとよく働くいい方を見つけられるに決まってますわ。 沙都子(私服): 特に、詩音さんがそれに気づいてないとはとても思えませんし。 沙都子(私服): それでも私たちを連れて来てくださった……理由はともあれ、感謝しておりますわ。 羽入(私服): そう思っているのであれば感謝は伝えた方がいいと思うのです。 羽入(私服): 沙都子、今までその気持ちを伝えたことはありますか? 沙都子(私服): あ、いえ……それは……。 羽入(私服): あぅあぅ、では帰ってからこっそりお礼を言うのですか? 沙都子(私服): あ、えっと……そ、その。 沙都子(私服): 軽いお礼ならともかく、畏まったお礼は最初から言うつもりはありませんでしたわ。 羽入(私服): 素直にお礼を言うのは、照れくさいですか? 沙都子(私服): ……羽入さんに、隠し事はできませんわね。 沙都子(私服): 私が真面目にお礼を言っても、普段が普段ですもの。お二人には笑い飛ばされる気がしますわ。 羽入(私服): ……それでは、ダメですか? 沙都子(私服): えっ……? 羽入(私服): 珍しいと笑い飛ばされたとしても、それは喜んでいるからこそだからだと思うのです。 羽入(私服): きっとあの二人は面と向かってお礼を言われたら、照れくさくなるのですよ。 羽入(私服): でも……不快には思わないはずだと思うのです。 沙都子(私服): …………。 沙都子(私服): こう言うのは、照れた方が負けということですの? 羽入(私服): だとしたらどうしますか、沙都子。 沙都子(私服): ……勝負となれば、挑戦する気持ちになってきましたわね。 沙都子(私服): まぁ、雛見沢に帰ってからですが。でも色々とやりようはありそうですわね……。 沙都子(私服): そうと決まれば、うんと照れさせてやりますわ~!さっそくトラップを考えますわよ!! 沙都子(私服): あの花火、使えるかもしれませんわね……羽入さん、失礼しますわ。 羽入(私服): 行ってらっしゃいなのですよ、あぅあぅ。 羽入(私服): …………。 羽入(私服): 沙都子にはこの旅行、楽しんでもらえたみたいなのです。 羽入(私服): ……あなたはどうですか、千雨。 千雨: ……気づいてたのか。 羽入(私服): 少し前から、近くにいたのは気づいてたのですよ。 千雨: ……私が声をかけるのを待って、こんな離れた場所に一人でいたのか? 千雨: それとも今の沙都子への話を私にも聞かせたかったのか?……聞かせたい意図は読めないが。 羽入(私服): どう解釈してもらっても構わないのです。 千雨: …………。 羽入(私服): 千雨は、嫌いですか?僕たちのこと……あるいは、雛見沢を。 千雨: …………。 千雨: ……私は、サメが好きだ。 羽入(私服): え? えっと、雛見沢は……。 千雨: だから、サメが嫌いだとかいなけりゃいいとか言われりゃ、腹が立つ。 千雨: 仮に身内がサメに食われたとか、それらしい理由があったとしてもな。 千雨: ただ、お前はサメに対して興味を示してくれた。悪口は言わなかった……だから、言わない。 羽入(私服): サメを悪く言わない僕が大切にしているから、答えを……雛見沢の悪口を言わないのですか? 千雨: 答える必要を感じないだけだ。 千雨: 私は、雛見沢に無関係な人間だからな……じゃあ、先に戻る。 羽入(私服): あっ……。 羽入(私服): …………。 羽入(私服): 自分は雛見沢とは無関係、ですか。 羽入(私服): ……無関係では、ないと思いますよ?