そしてその火力──
小さな岩塊くらいなら、あっさりと
そして、砲撃がなおも続くうち──
虚空に光の
爆発は無音の衝撃と化し、連なる小さな岩塊を動かした。
衝撃と、小さな岩塊とに横から押され、あるいは岩に激突してダメージを受け、あるいは盾にした岩の陰から押し出される、
むろんこのチャンスを、
その瞬間。
数条の光が闇を
爆発の
「何だ!?」
『デス・クラウド』の
「──て、敵です! 上から!」
「えぇいっ! 何見てやがった!? レーダー!」
「……ま……まだ射程には遠いからと……」
「
ガレーの問いに、乗組員のひとりが、記録データをチェックして、
「ちがいますぜ! ラグルドがまわしてくれたデータの中にある、なんでも屋の
「なんでも屋の
「ええ! 名は──『ソードブレイカー』!」
「このまま突っ込むぞ!」
海賊艦隊の上方から、その中央を目ざして、『ソードブレイカー』は宇宙を
「了解!」
主武装のひとつ──サイ・ブラスターがふたたび虚空を切り裂いて、
その爆煙と衝撃波とを貫いて、『ソードブレイカー』は
さすがに
ケインはふたたび『ソードブレイカー』を転進させ、海賊艦隊へと向かう。
「──ケイン! 注意して!」
キャナルはいきなり声を上げた。
「中央にいる三五〇M級!
「なにぃぃぃぃっ!?」
思わず声を上げ、とっさに進路を変えるケイン。
『デス・クラウド』のエネルギー弾が、『ソードブレイカー』をかすめて過ぎた。
「そーいうことは早く言えっ! とすると奴が、お前の言ってた……!?」
「ちがうわ! 目の前のはただの
「
「話はあとよ! とにかく気をつけて!」
「わかった!」
応えてふたたび、
そしてまた、『デス・クラウド』も動いた。
一隻だけ艦隊を離脱し、『ソードブレイカー』へとその艦首を向ける。
「ほう!
頰に不敵な笑みを浮かべるケイン。
「ケイン!
「いーから無視しろ!」
キャナルの報告を受け流すケイン。
むろんこの場合、危ない立場にいたのは『ソードブレイカー』ではなく、
今の警告は、あくまでも立場上送ってきただけのものだろう。むろんケインは、そんなものに従う気はない。
『ソードブレイカー』は『デス・クラウド』とまっ向からむきあって、一気に加速をかける。
最初の一撃は、双方が同時に放った。
たがいの放つサイ・ブラスターの一条を、『ソードブレイカー』は余裕で、『デス・クラウド』はかろうじてかわす。
かわしきれないと悟ったか、『デス・クラウド』は加速をかけて、サイ・バリアを展開する。バリアを展開したままで、『ソードブレイカー』に突っ込むつもりなのだ。
ミリィはいくどか砲撃を加えるが、『デス・クラウド』の展開したサイ・バリアは、かろうじてその攻撃にもちこたえていた。
「キャナル! リープ・レールガンは!?」
ミリィは問う。
一定距離で炸裂し、あたりに小さな転移装置を
すなわち、これに当たった
今ここで、『デス・クラウド』に向かって放てば、確実にしとめることもできるだろうが──
「だめです!」
キャナルは首を横に振った。
「発射準備、間に合いません!」
「くっ!」
ミリィは小さな声で
『デス・クラウド』の船体が、ディスプレイの中でその大きさを増してゆき──
むろん、このまま素直にぶつかってやる義理はない。『ソードブレイカー』は直前でバーニアを吹かし、『デス・クラウド』とすれ違う。
「ケイン! このまままっすぐ!」
「わかった!」
ミリィのことばに
その後ろでは、すれ違った『デス・クラウド』がくるり、と方向転換をして──
ミリィの待っていたのはこの瞬間だった。
敵が『ソードブレイカー』を追撃するにしろ、あるいは砲撃を加えるにしろ、いったんは、展開したバリアを
すでに後部砲座の発射準備はできている。
ミリィの指が、コントロール・パネルの上を──
しかし、この瞬間。
首すじに、
同時にミリィの放った一撃は、『デス・クラウド』から大きくそれた空間を、
「ケイン──!?」
ミリィが文句を言うより早く。
メイン・ディスプレイの中に、その光景が映し出された。
五〇〇M級の
「リープ・レールガン!?」
もし彼があの瞬間、
『デス・クラウド』が放ったものではない。
「今のは──!?」
つぶやいて、キャナルの目が──メイン・ディスプレイの画像が、死の一撃が解き放たれた方向に向く。
惑星をとりまく大小さまざまな岩塊の中──一隻の黒い宇宙船が、じっとこちらを見つめていた。
──
コウモリの
「三〇〇M級、機動
『『
キャナルの声に
エネルギー反応を隠し、ただよう岩塊にまぎれていた『ネザード』は、ゆっくりと、
「──それで、自分はどこかで隠れて震えてて、かわりにあなたみたいな小物をよこした、ってわけね」
『ほざけ、ヴォルフィード。きさまごときにかまっている
「大きなこと言うわりには、まえはずいぶんあっさり封じられたものね」
『ほざけ!』
キャナルの、あざけりを込めた口調に、『ネザード』の、怒りのこもった声が
『ネザード』のメイン・エンジンが輝いた。
空間を切り裂くかのような加速で宇宙を
「速いっ!」
うめいてケインは回避に移る。
『ソードブレイカー』のサイ・ブラスターが、そして『ネザード』のニードル・レーザーの雨が、一瞬前まで互いのいた空間を切り裂く。
『ソードブレイカー』の放った
サイ・バリアを展開し、ニードル・レーザーのすべてを防ぎきると同時に『ソードブレイカー』はふたたびバリアを解除し、加速をかけてその場を離れる。
ニードル・レーザーを放った直後、『ネザード』の撃ったリープ・レールガンは、闇にむなしくはじけて散った。
もしも『ソードブレイカー』が、あの場所でバリアを展開したままならば、そこで勝負は終わっていたはずだった。
おかえしとばかりに、こんどは『ソードブレイカー』がリープ・レールガンを撃つ。しかし『ネザード』は、いともあっさりと身をかわす。
『ネザード』が放った
滅びをもたらす光の矢が、互いの船体を打ち砕こうと、放たれ、虚空へ散り消える。
高い機動性を
今のところは。
そして一方。
残りの数も少なくなった
これが敵だということは、むろん疑う余地はない。
彼らが無敵と信じていた『デス・クラウド』と互角以上の戦いを演じた化け物である。
しかし、あとからやって来て、その化け物に向かって、互角の戦いを演じているあれは一体、敵なのか、はたまた味方なのか。
たしかに出現した時、その黒い
──むろん、『単なるもののはずみ』で殺された方はたまったものではないが、『デス・クラウド』のガレーたちにとっては、死んで行ったもと仲間たちのことより、自分たちが生き残ることのほうが大事だった。
となればやはり、はっきり『敵』とわかるものから叩くのみ。
「全艦、あのなんでも屋の
『無茶だ! ガレーさん!』
『
ガレーの命令に、残った海賊船二隻の艦長からの、抗議の通信が入る。
「やかましい! てめえらも見ただろ!? あの、なんでも屋の
一方的にがなり立てて通信を切る。
しぶしぶながらも納得したのか、『ソードブレイカー』に砲撃を加えるべく、回頭する二隻の
そのスキをついて、今の今まで、岩の陰で、死んだふりをしていた
あとの一隻は不利を悟ったか、電磁バリアを展開し、守りに専念する。
「
ガレーは吐き捨てるように言い放ち、
『ソードブレイカー』と『ネザード』が、光の刃を交えるまっただ中に向けて。
戦いはやがて、『ソードブレイカー』の優勢にかたむいていった。
決め手になるはずのリープ・レールガンは、たがいの動きが速すぎるせいで、転移装置の開放位置の設定が定まらず、双方、放てずにいた。
いいかげんな設定でぶっ放せば、自分の撃った一撃で、自分が傷つく、などということにさえなりかねない。
機動性はほぼ互角。速度は『ネザード』に分があったが、火力と防御力とでは、『ソードブレイカー』が勝っていた。
すぐにカンを
命中範囲のひろい『ネザード』のニードル・レーザーも、『ソードブレイカー』をとらえてはいるのだが、『ソードブレイカー』のサイ・ブラスターに比べると、かなり出力が弱いせいか、あっさりとサイ・バリアではじかれている。
とはいえ『ソードブレイカー』の方も、決定打を放てずにいた。プラズマ・ブラストを使うことができるなら、『ネザード』を
発射準備を進めるうちに、『ネザード』に射程内から逃げられたのでは無意味である。
ケインと『ネザード』、双方に、やや
『デス・クラウド』がエネルギー弾を解き放つ!
「ちぃっ!!」
舌打ちをして、ケインは船体をひるがえす。エネルギー弾の一条が、『ソードブレイカー』の外装をかすめて
無言のまま、わずかに顔をしかめるキャナル。
「二対一かよ!?」
あせりをにじませ、声を上げるケイン。
形勢はいきなり逆転した。
むろん『ネザード』は、『デス・クラウド』も沈めるように命令を受けている。しかしそれは、『ソードブレイカー』を落としたあとでもできること。
となれば今は、『デス・クラウド』を利用して、先に『ソードブレイカー』を沈めるのみ。
二隻がかりの集中砲火に、必死で回避行動を取るケイン。ミリィも砲撃は続けているが、攻撃というより
「ケイン! このままじゃあ不利よ!」
「わかってる!」
ミリィの声にこたえ、ケインは『ソードブレイカー』を、
「キャナル! リープ・レールガンの発射準備! ミリィ! 精度の
二人に指示を出すケイン。
『ネザード』と『デス・クラウド』が、砲撃を加えつつ、そのあとを追う。
『ソードブレイカー』のすぐそばを、光の
思わずバリアを使いたくなるような状況だが、ここでサイ・バリアを展開すれば、慣性にまかせて動くしかなくなる。永遠にバリアを張りつづけることなどできない以上、解除した瞬間を
やがて、それでもなんとか『ソードブレイカー』は、
ごっ!
岩塊のひとつに身をひそめようとした直前、衝撃が『ソードブレイカー』のコックピットを襲った。
「どこをやられた!?」
岩陰に船体を隠しながら問うケイン。といっても、それほど大きな岩ではない。『ソードブレイカー』一隻が、なんとか身を隠せる程度の大きさである。
「
キャナルは言う。
地上との行き来のために、『ソードブレイカー』の船腹に、上下逆にドッキングしているシャトルに当たったらしい。
「シャトルのコックピットが大破! ほかには影響なし!」
「ちっ! ともあれミリィ! 手はず通りだ!」
「了解!」
『ソードブレイカー』から、たて続けに放たれたサイ・ブラスターは、『ソードブレイカー』自身が盾にしている岩を貫通し、
しかし、岩の向こうから、カンだけで放った攻撃が、そうそう当たるわけもない。
二隻の
だがその瞬間。
二隻のちょうどまん中の空間で、『ソードブレイカー』の放った一撃がはじけて散った。
『リープ・レールガン!?』
あわてて回避に移る『ネザード』。『ソードブレイカー』は、隠れた岩にサイ・ブラスターで穴を開け、その穴からリープ・レールガンを放ったのだ。
しかし『デス・クラウド』はそのことに気づかなかった。
いや、そもそも乗員の誰ひとりとして、リープ・レールガンなどというものの存在自体を知らなかったのだ。
転移装置のひとつに接触したか、あるいは作動範囲に入ったか、船体の一部──エンジンの半分近くがえぐり取られる。
あわててエンジンを切り放す『デス・クラウド』。直後、そのエンジンが爆発を引きおこす。
爆圧と、それまでの加速に圧され、制御を失った『デス・クラウド』の船体を、岩の陰から現われた『ソードブレイカー』のサイ・ブラスターが貫いた!
爆発の光と衝撃波を浴びながら、『ネザード』に向かって加速をかける『ソードブレイカー』。
──ただ一隻残っていた海賊船が、
『役立たずが! しょせんはただの
『ネザード』も、ふたたび『ソードブレイカー』に向かって突っ込みながら、ニードル・レーザーの雨を降らせる。エンジンをカットし、サイ・バリアを展開したまま、『ネザード』に向かって突っ込む『ソードブレイカー』。
このまままともにぶつかれば、たとえバリアを展開したとて『ネザード』の方が不利である。衝突のその直前、『ネザード』はその
「よしっ!」
瞬間、ケインが吠えた。
「サイ・バリア、カット! シャトル、強制排除!」
これは予想外だったらしく、回避と砲撃を同時におこなう『ネザード』。しかしこの距離、この速度ではどちらも遅すぎた。
『ネザード』のニードル・レーザーの数条が、シャトルを貫き、その向こう──再び展開された『ソードブレイカー』のバリアにはじき散らされる。
シャトルは、『ネザード』がバリアを展開するより一瞬早く、その船体に接触し──
そして、爆発が起きる。
至近距離で生まれた閃光に圧され、バリアを展開したままはじかれる『ソードブレイカー』。
光の消えたそのあとには──三枚ある翼の一枚を失い、全身に傷を負った『ネザード』の姿。
『……ぐうぅ……ぅ……ぅうぅ……』
低い
『──ヴォルフィード!』
『ネザード』は、まだ
「その根性だけは認めてやるぜ!」
言ってケインは、船首を、向かい来る『ネザード』へと向ける。
火を吹き、船体のあちこちに小さな爆発を起こしながらも、なおかつニードル・レーザーを放ち続ける『ネザード』の姿が、メイン・ディスプレイの中で、
「だが──つき合ってやる義理はねえ!
キャナル! サイ・バリア解除!
「
射出された六基のチップは、『ソードブレイカー』のまわり、一定距離にぴたりとはりついた。
「サイ・バリア展開!」
再び展開されたバリアが接触するなり、一基のチップは、青白いエネルギーの
「行けぇっ! プラズマ・ブラスト、発射!」
展開されたバリア全体が一瞬輝き、無数の、
蒼い死の腕が虚空に
ぎおおおおおおおおおおおおおっ!
聞こえるはずもない
そして──
光と無言の衝撃と化し、『ネザード』は今、闇へと