ごどぅんっ!
「何だっ!?」
彼の
「まさか──
声を上げ、しましま模様のパジャマの上からマントを
銀河の
しかし今の
とりあえず、
間を置かず、画面に映し出されたのは、銀色の
時代をまったく無視しまくった、ファンタジー風の
この
メイン・コンピューター、というより
「キャナル! 今のは何だ!?」
ケインの問いにめずらしく、彼女はしばし
ややあってから、ようやく、意を決したかのように、
『──圧力ナベが
──しばしの沈黙。
「……は……?」
間の
『……つまり……ミリィが『料理をする
』ってキッチンに入って……圧力ナベを爆発させちゃいました……』
「なっ……!? それで!? ミリィは無事か!?」
『ええ……その……』
キャナルはなおも言いにくそうに、
『……
「…………」
さらにかなりの沈黙が落ちた。
「……つまり……」
ややあって、つぶやくように言うケイン。
「ミリィが、装甲服着て料理してて、圧力ナベを爆破した、と……」
彼の問いに、キャナルは自信なげに、画面の中でうなずいた。
またまた続くしばしの沈黙。
「お前……正気か……?」
いつもなら怒るところだが、今回は、さすがに困った顔のまま、
『……わたしもそう思って、自己
ケインは、ぽりぽりと頭を
「……とりあえず……キッチンに通信つないでくれ……」
『……わ……わかったわ……』
『はぁい。ケイン』
画面に映し出されたのは、にこにこ顔のミリィだった。
確かにキャナルの言った通り、きっちりと、装甲服を着込んでいたりする。
『なかなかいいじゃないの。このキッチン。自動調理機くらいしか置いてないと思ってたら、いろいろ
「……まーな……」
ケインはあいまいに答えた。
もともとケインが、ある程度の調理器具を揃えたのは、材料はぜひともこの手で
『……けどなんなのよケイン、そのかっこう。パジャマの上からマントなんて羽織って』
「もちろん、男の身だしなみ、って
『……そ……そぉ……』
「それより……圧力ナベが
問いかけるケインのことばに、バイザーの中のミリィの
『い……いやまあ、その、ちょっとピザつくっててね
』
「だから……どーやったらピザつくってて、圧力ナベが爆発するんだ!?」
『それは……えと……』
ミリィはしばし考えて、人さし指を、ぴっ、と立て、にこやかな笑みを
『
』
「だぁぁぁっ! いつからピザが中華料理になったっ!?」
『……まあ……世の中、科学で説明できることばっかしだとは限んないのよ』
……こいつを助手にしたのって……ひょっとしたら失敗だったんじゃあ……
ばがぅん!
すさまじい
「何だ!?」
なんとかイスにしがみつきながら、船長は思わず声を上げた。
「
「
報告に、船長の声が
メインの航路からも外れた、住む人間もない無人の星系。この船とて、
それがまさかこんな所に、
「おそらく、
「
別のひとりが声を上げる。
「『停船せよ、さもなくば
「救難信号を!」
「だめです!
「くっ……」
船長は思わず歯がみした。
こちらは船体こそ大きいものの、申し訳程度の
かといって、言われた通り船を
となれば残る手はひとつ──
「なんとか敵を
うろたえて声を上げる船長。
漂う岩をタテにする手はあるのだが、そちらには
あわてふためく船長の目に、メイン・ディスプレイの
「あの
船長は、思わずそう叫んでいた。
「あの
おせじにも、
「
半ば悲鳴を上げるように答え、
ぐごぅっ! がごうっ!
「
言わずもがなの報告を、いちいち聞いている
そして──
ぐどぉんっ!
ひときわ大きな振動とともに、
室内に
誰かが誰かの名を
一瞬の後には、非常用の電源が入り、室内を
「エンジンに
「切り
「
ごぐんっ。
エンジンを船体から
ぐがぁんっ!
三度目の大きな振動が船体をゆるがした。
「切り離したエンジンが
直後で爆発したエンジンの爆圧に背中を
──なぜ!?
──
記録には、こうとだけ記されることになる。
『──なんだ、こりゃあ!?』
感度の悪いスピーカーを通して、誰かのかすれた声が聞こえた。
バイザーの外にひろがるのは、くろぐろとした
名前も知らぬ、この小さな
むろん、彼らが
せっかくのエモノだというのに、エンジンに
船体の
目の前にあるクレーターと、その底にわだかまる巨大な
それでも、まだ使えるものがあるかもしれないと、わざわざ降下して調査をはじめたのだが……
積んでいたのは、もっぱら何かの機械部品だったらしく、すべては、ひと山いくら、以下のシロモノとなり果てていた。
しかし、そんなことよりも。
問題は、この惑星のほうである。
墜落した貨物船は、地表の土をえぐり取り、その下にめり込んでいた。
金属製の
『……建物……だよな……地下の……』
誰かがぽつりとつぶやいた。
『そいつぁ見りゃあわかるよ』
別のひとりがぶあいそに答える。
ひと昔前に
見慣れぬデザイン、見知らぬ金属ではあったが、さすがに
そのうちひとりが、ふらり、と、
手にしたサーチライトの明りを、裂け目の奥に
『……なんだ……ありゃあ……?』
ぽつり、と男はつぶやいた。
『何がある?』
問いかける別のひとりに、男は身をかがめ、闇の奥底をのぞき込んだあと、
『──
『──! それって! まさかあれじゃねぇのか!?
別のひとりが、かすれた声でつぶやいた。
『──
見なれたはずの自分の
家財道具があるのとないのとで、こうも
やさしいベージュ色の
「……さようなら……あたしの
トレンチ・コートの
「ほんとうはもっと住んであげたかったんだけど……ケインがお給料あんまし
「やかましいっ!」
マンションの戸口でダンボール箱をかかえつつ、ケインは思わず声を上げていた。
「ひとに
しかしケインのことばにも、ミリィは笑みさえ
「まーまー。若いうちの苦労は買ってでもしろ、って言うじゃない
」
「……なら、苦労させてやろーか?」
ぴくっ。
ジト目で冷たく言い放つ彼に、さすがに笑みを引きつらせる彼女。
「……や……やーねーケインったら
目が笑ってないわよ
」
「…………」
「……あたしも荷物運ぶ……」
ミリィは大きく肩を落とし、マンションの戸口に山積みされた、ダンボール箱に手をかけたのだった。
「……うーん……これはっ! ってぇのはないもんかなぁ……」
小さなディスプレイに視線を向けたそのままで、ケインはぽつりとつぶやいた。
衛星港に停まったままの、宇宙船『ソードブレイカー』の
「……ケイン、早くしないと、衛星港の
「あー、わかってる」
ミリィの引越しも無事終えて、帰って来てからほぼ一時間、ケインはずっと画面に見入っていた。
次の仕事を物色しているのだ。
情報は、ざっとした仕事の内容、依頼料、
ここから一週間以内に行ける区域、という条件で
むろん、おいしいしごとがいつも転がっているわけもなく、今現在残っているのも、依頼料が安かったり、危険度の高いしごとだったり。
「……もう、てきとーなのに決めちゃったら?」
いつの間にやって来たのか、後ろから、ディスプレイをのぞき込みつつ言うミリィ。
「そうは言うけどなぁ……」
「──あ、それなんてどう? K‐一〇五番。依頼料、けっこうあるみたいだし」
「……あのなぁ……こーゆーのは、たいていヤバいの」
ため息つきつつ言うケイン。
「……やばい?」
「ああ。依頼料と連絡先が出てるだけで、仕事の内容も何も出てねーだろ。こーゆー奴ってのはたいてい、密輸だの密入国だのってしごとだ」
「ちょっと! それって立派な
「立派な犯罪だよ」
あっさりさらりと答えるケイン。
「
「……いーの?
「いいわきゃねーだろ。実際、
けど、
むろん、このサービスそのものを中止すりゃあ、こーゆーこともなくなるかもしれんが、そうすりゃ宇宙に散らばった、俺たちみてーな
ンなことになりゃあ、そのまま犯罪に走る
「……なるほど……むつかしいもんねー……」
「けど、早く仕事と行き先決めて、出港しないと、
ぼそりっ、と、つぶやくように言うキャナル。
「わかってるって。……とは言うものの、なぁ……」
えてして情報という奴は、ないともちろん困るのだが、逆にありすぎても困る。ナダレのように
しかたなく、彼はキャナルに視線を送り、
「……なあ、なんかお
彼女はため息ひとつつき、
「……最初っからそう言ってくださいよ……
──そうですねー、C‐〇一一なんてどうです?」
「C‐〇一一、ねぇ……」
ケインは画面を
「……けどこれって、
「けど、条件はいいでしょ。
「……あ。ほんとだ」
もっぱら依頼料でチェックしていたせいか、きっちり見落としていたのだ。
「ねーねー、何のしごと?」
「貨物船の
「……けっこージミチなしごとねー……」
「まーな。……ラグルド社……聞いたことねーな」
「銀河座標4─3─B、ウィナラーン星系最大……というより
「ふぅん……ともあれキャナル、ここに星間通信つないでくれ」
「それはかまいませんけど……先に、とりあえず出港しません?
「わかったわかった。管制室への
「りょーかい!」
元気な声で
そして──
『ソードブレイカー』はふたたび旅立つ。