栄子「むずかしい・・・」

イカ娘「何をうなっているのでゲソ?」

栄子「うおぉっ! ・・・何だ、お前か」

イカ娘「これは何でゲソ?」

栄子「数学の問題だよ」

イカ娘「数学・・・。数学って何でゲソ?」

栄子「一から説明しろってか。それがわかれば、こんな問題、簡単に解いてるっつーの!」

イカ娘「ふんふん」

栄子「何がふむふむだよ。一度読んだくらいで理解できりゃあ、苦労しないって」

イカ娘「この問題の答えは、

でゲソね」

栄子「もっともらしいこといいやがって。うああっ!? あ、当たってる・・・何で? あっ、お前答えのページ、こっそり見ただろ」

イカ娘「そんなことしないでゲソ!」

栄子「んじゃあ、これ解いてみろ」

イカ娘「x=0」

栄子「あ、合ってる。じゃあ、これ」

イカ娘「x=±√7」

栄子「ええっ!? ならば、これならどうだ! 思い知れ! 日本最高学府の・・・いいっ!?」


栄子「数学だけなら東大も楽勝・・・」

たける「イカ姉ちゃん、天才じゃん!」

イカ娘「天才? 私がでゲソか?」

千鶴「そうね。いきなり日本語話したり、ゲームやったり、相当適応能力高いと思ってたけど」

たける「ノーベル賞も取れるよ!」

イカ娘「ノーベル賞に数学賞はないでゲソ。取るならフィールズ賞でゲソね」

栄子「その偏った知識といい、この数学といい、頭の中に計算機でも入ってんのか」

イカ娘「いったい何するでゲソ! これ取ったらイカは死んでしまうじゃなイカ! 私に言わせれば、こんなのに悩むほうがどうかしてるでゲソ」

栄子「こっ・・・、こんなの?」

イカ娘「計算のやり方が決まってるんだから簡単じゃなイカ」

栄子「か、か、簡単・・・」

たける「よかったね、栄子姉ちゃん」

千鶴「イカ娘ちゃんに教えてもらえるじゃない」

栄子「冗談じゃねえ・・・。イカ娘に教えてもらうことなんざ何もねえーーーっ!! 見てろよ! 自力でさくっと解いてやるぜ!」

イカ娘「何を熱くなっているのでゲソ?」

千鶴「イカ娘ちゃんに負けて悔しいのよ」

たける「天才にはかなわないのにな」

イカ娘「天才・・・?」(天才!)


栄子「全然わからんっ・・・! あいつ、こんなのどうやって一瞬で解いたんだ? 何か簡単に解く方法でもあるのか? あっ?・・・ わかった!!」


栄子「おい、イカ娘!! お前、インド式計算みたいな特殊な計算法を知っているんだろう! だからさっきの問題もすらすら解けたんだ。そうに違いない、うっはっはっはっは!!」

たける「なんか怖いよ」

栄子「そうだ! きっとそうだ!」

千鶴「頭の使いすぎでおかしくなったのね」

栄子「おい、その計算方法を詳しく教えろ」

イカ娘「それが天才の私にものを頼む態度でゲソか?」

栄子(ううっ、上から来やがって・・・)

長ける「栄子姉ちゃん、人にものを頼むときは『お願いします』って言うんだよ」

栄子「たけるは黙って・・・あっ」(方法さえ教えてもらえれば、次のテストは楽勝)「・・・教えてください」

イカ娘「いま何か言ったでゲソ?」

栄子「教えてください」

イカ娘「そんな小さな声じゃ聞こえないでゲソ。三つ指突いて『お願いします』と言わなイカ!」

栄子(テストのため、テストのため。こらえろ、私!)「教えてください! お願いします、イカ娘様!」

イカ娘「仕方ないでゲソね。私の言うことを聞いたら、教えてあげてもいいでゲソ」

栄子「言うこと?」


イカ娘「はい、焼そば、3番テーブル! 横浜ラーメンは5番でゲソ!」

栄子「焼きそば3番、横浜5番!」

イカ娘「それがすんだらビールを運んでくるでゲソ」

客「ここ、いい?」

イカ娘「はーい! いま片付けますでゲソ! ほら、早く行かなイカ」

栄子「おい、あんまり調子に乗るなよ」

イカ娘「ほう、口答えでゲソか? 教えて欲しくないなら、いいでゲソ」

栄子「ううっ、・・・こらえろ、私」


イカ娘(時々忘れてしまうが、そもそも私は人類を征服するために地上にやってきた侵略者でゲソ。私がいかに天才か、思い知らせてやろうじゃなイカ。そうすれば・・・)


男「あんな難しい問題を解くなんて、人類よりはるかに知能が高い!」

女「真の天才とは、このイカ娘のこと!」

女「イカ娘様!」


イカ娘「おい!」

悟郎「あ?」

イカ娘「この問題が解けるでゲソ?」

子供「助けて!」

悟郎「あっ・・・。それどころじゃねえっ!」

イカ娘「あああーーーっ!」


イカ娘「渚、今日はお前に特別に数学を教えてやるでゲソ」

渚「ええっ! いいです! 数学なんか、普通に生活する分には必要ないし」

イカ娘「え、必要ない・・・?」


早苗「すごーい! イカちゃーん!」

イカ娘「それほどでもないでゲソ」

早苗「私の心も解いて」

イカ娘「そ、そんなもの、解きたくないでゲソーっ!」

早苗「ああっ」


シンディー「フーリエ解析にポワソン和公式。高等数学を一瞬で解いてしまうなんて・・・」

イカ娘(やっと私のすごさがわかる人が)

シンディー「やっぱりあなたは宇宙人!」

イカ娘「い」

シンディー「さあ、いまから私の研究所に行きましょう!」

イカ娘「どうしてそうなるでゲソ!」


イカ娘「はあ・・・、人類征服の夢が・・・また一歩、遠のくでゲソー! あっ・・・」

栄子「天才はいつの世も孤独なもんだ」

イカ娘「栄子だけでゲソ、私のことをわかってくれるのは! 意地悪して悪かったでゲソ!」

栄子「計算方法を教えてくれたら、水に流そう」

イカ娘「教えるでゲソ!」


栄子「な、何だ、これは!?」

イカ娘「これさえ使えば、どんな計算問題も簡単に解けるでゲソ。いてっ! 何てことするでゲソ!」

栄子「読めるか、こんなもん!」

イカ娘「せっかく教えてあげたのに、ひどいじゃなイカ!」

栄子「返せ! 今日一日の私の時間と、失った何かを返せ!」

イカ娘「痛いでゲソ」