――― やる気 ―――

祐子「あああ・・・」

みお「どうしたの、ゆっこ?」

祐子「色々やる気が出なくて」

みお「何言ってんの? 私たち高校生なんだよ。新学期なんだよ。やる気なんて、やれば自然に出てくるもんだよ」

祐子「そのやるまでやる気が出ないんだよ・・・やるまでのやる気を出すにはどうすりゃいいの?」

みお「やるまでのやる気か・・・ふーん・・・とにかく、やるっきゃない!」

祐子「よっしゃ!」

単純な馬鹿でありたい。

――― 日常の1 ―――

なの「はかせ! そろそろ起きて下さーい!
よーっと・・・あ! うふ」

はかせ「ふああああ・・・おはよう。何してるの?」

なの「今日の朝ご飯は焼魚ですよ!」

はかせ「ええ、オムライス・・・」

なの「昨日食べたじゃないですか? お魚は栄養がたくさん入ってるんですよ! 好き嫌いしないで何でも食べないと、大きく・・・あ!? あ?
あの、それは大切な朝ご飯なので!
え? あ、いや、違うんです! これは決してロボット的なものではなくてですね! えーと・・・その・・・」

はかせ「あ、逃げた」

なの「ああ、待って~~~!」

はかせ「いってらっしゃーい」

なの(もしかしたら、あの猫も困っているのかな・・・)「ああ!? ああ! ぶつかる~~~~~!!」

(OP)

みお「あああ・・・」

祐子「みおちゃん! セラマッパギ!〔Selamat pagi〕」

みお「あ、ゆっこ! おはよう! どうしよう? 学生章付け忘れてきちゃったよ」

祐子(あれ? セラマッパギ素通り?)

みお「上級生に呼び出されたりしないよね」

祐子「そういうときは、『私は3年生だ!』って言っちゃえばいいんじゃない?」

みお「何の解決にもなってないじゃん・・・ん? 何? 雷? 晴れてるのに」

祐子「いきなり降ってくるかもよ! 夕立ちとか、雹とか―
こけしが振ってきた」

みお「だ、大丈夫、ゆっこ?」

祐子「う、まさかのこけしだよ・・・」

みお「びっくりした! どっから落ちてきたんだろう?」

祐子「分かんないよ・・・でも、人生の中でこけしに当たるなんて、なかなかないからね! めったにないでしょ? そんな人」

みお「まずいないよ」

祐子「逆に付いてるかも!
付いてねぇ・・・」

みお「ゆっこ、大丈夫?」

祐子「まさかの赤ベコだよ・・・」

みお「赤ベコ」

祐子「違う、付いてないんじゃない。こう考えればいいんだよ、みおちゃん! 当たったのが生物じゃなくてよかったって、そう考えれば不幸中の幸いって―」

みお「あ?」

祐子「シャケだ~~~~~~~」



月夜野「おはよう」

中之条「おはようございます」

みお「あ、麻衣ちゃん、おはよう!」

祐子「セラマッパギ!」

麻衣「おはよう」

みお「麻衣ちゃん、何読んでるの?」

麻衣「不動産の情報誌」

みお「えっ? 麻衣ちゃん、引っ越すの?」

麻衣「未定」

祐子(とっほっほ。セラマッパギはスルーですか? しかたない。このワードは、今日でララバイしますか・・・」

麻衣「ゆっこ」

祐子「お?」

麻衣「セラマッマラム〔Selamat malam〕」

祐子「あああああ! え・・・え・・・あ・・・麻衣ちゃん! そこはセラマッパギだろう?」

みお(それ、何語?)

桜井先生「ホ、ホームルーム始めます・・・」



桜井先生「えっと、今朝学校に来たら、
これが下駄箱に入っていました。誰か入れた人はいませんか?
え、えっと、もし、何が知ってる人がいたら、教えてくださいね!」

祐子「みおちゃん、誰だろうね、あんなことするの?」

みお「悪戯なのかな?」

祐子「意外と先生のことを好きな生徒だったり!」

みお「それで弥勒菩薩はないよ。ま、でもそういう叶わない人への憧れの気持ちは分からなくもないよ」

祐子「うん、あれでしょ? みおちゃんが笹原先輩思ってるみたいな」

みお「バ、バカやろう!」



なの「ここはどこだろう? ああう・・・ああ・・・あ・・・
・・・あっ、帰らなきゃ!
はかせもきっと心配しているし、七輪点けっぱなしで危ないし
これ、降りられない! え? お箸がない! あっ、つっかけもない! えっ・・・どうしよ~~~・・・うわっ! 腕がないっ! はぁ・・・ロボだってばれちゃうぅぅ!!」

――― ワンダフル ―――

麻衣「行くよ」

――― 日常の2 ―――

麻衣「ご馳走さま」

みお「お? ほら、早く食べないと5時間目LLだよ。あれ? ウィンナー好きじゃなかったっけ?」

祐子「ふっふっふっふっふー。お弁当の最後は、一番おいしいやつにするのが基本ですよ! そんで、『うまいっ!』と言って締め括るんです」

みお「ふ~~~ん」

祐子「そいじゃあ、一つ! いっただきま~~~す!
あああああぁぁぁぁぁ!!! うううぅぅぅ・・・ぬおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!! ぬわぁぁぁ!! あっ!」

みお「あっ!」

中之条「あ・・・」

祐子「ああああぁぁぁぁ!!」

みお「貫けた!」

祐子「まだだぁぁぁ!」

みお「終わった~!」

祐子「まだまどぅあぁぁっ!!」
(一つ・・・二つ・・・三つ)

みお「ああ・・・」

祐子「セーフ!」

みお「あああ、アウトだよ!!」

祐子「ふふふ、やだな、みおちゃん! 3秒ルールだよ! 3秒ルール」

みお「いや、何かもぉ、いっぱいいっぱいアウトだよ!」

中之条「えへへ」

祐子「うまいっ!」

みお(ゆっこはバカだな)

――― はかせとなののジャンケン―――

はかせとなの「♪最初はグー! その次パー! グチョパは無しよ! ジャンケンポン!」

ジャンケンの結果
はかせ - チョキ
なの - 花束

なの「へえええ!?」

――― 縄跳び ―――

みお「はい!」

コンテキスト - みおの顔は空中の縄で打たれてしまった

――― 日常の3 ―――

校長先生「え、皆さんおはようございます。春になり、新しい年度が始まりましたが、まだまだ寒い日が続きますね。私は皆さんの倍は寒いんですけどね。
とにかく、風邪を引かないように。いいですか? これは校長先生との約束です。皆さんが言うことを聞かなかったら校長先生は・・・他の学校の校長先生になっちゃいますよ」

祐子「みおちゃん、みおちゃん?」

みお「何? 話してると怒られるよ」

祐子「あのさ、校長って自分のギャグが古過ぎること気付いてないのかな? 毎回受け入れられてないことくらい、本人が一番分かっていると思うんだけど」

みお「ううん、どうなんだろうね?」

祐子(もしかして、受け入れられてないことを知りながら、なお努力する姿勢を現代の擦れた若者に見せているの・・・かも! そうだとすれば、この校長・・・かなりのてだれ!)「あっ!?」(麻衣ちゃん!?)

みお「麻衣ちゃんが!」

祐子「まさか、あのおやじギャグが!?」

みお「えええ?!」

祐子(しかも麻衣ちゃんがこんなに笑ってるところ初めて見たよ! よし! ここは一つ!)「麻衣ちゃんっ!」

みお「ん?」

祐子(あ・・・なぜだろ? 今ここで言ったら、すべてを失いそうな気がする!)「うっふ・・・」

麻衣「ゆっこ」

祐子「おう? お・・・」

麻衣「ごめん。やっぱ、なんでもない」

祐子「お? ん?」

麻衣(やっぱり気付くまで・・・取るのは止めよう)



教頭「では、続いて桜井先生から生徒指導のお話です。桜井先生、お願いします」

高崎先生「あの、桜井先生・・・?」

桜井先生「はい! すいません、生徒指導の桜井です。うう、すいません、えええ、ああ・・・」(うう・・・やっぱりこんな人数いると緊張する・・・だめだめ! こんなんじゃ。いつまでたっても理想の教師に近づけないんだから。言うべきところでビシッと言わないと・・・。そうだ!)
「最近、校内でヤギをよく見かけるんですが、ヤギは学校にはあまり持ってこないようにしましょう!」

幸治郎「ヤギの・・・ヤギの何が悪い! ヤギで通学するのは校則違反ではないんであろうがああああっ!!」

桜井先生「え? あ、その・・・」

祐子「みおちゃん、あれ笹原先輩じゃない?」

みお「へー、そーお?」

桜井先生「うううー。いや・・・。ヤギを許可します!」

幸治郎「ふん」

みさと「却下よ、却下! ど却下よ。ヤギなんか持ってきていいわけないでしょ!」

幸治郎「そうは言うが、立花みさとよ、なぜ私が二本足ですたこら歩かねばならんのだ。だいたい笹原家の長男というのは―」

みさと「何が笹原家の長男よ! あんたんち普通の農家でしょうが」

幸治郎「だから何だ。長男が長男といって何が悪いのだ」

フェッちゃん「ふえーっ、笹原君ちって農家だったんだ」

ウェボシー「なんか騙された気分」

みお(あの自転車置場のヤギ、笹原先輩のだったんだ。白ヤギに乗った笹原先輩が、私を迎えに・・・!」


幸治郎「ア・ハッピー・ニュー・イヤー!」

みお「ミ、ミー・トゥー」


祐子「みおちゃん!?」

麻衣「あ・・・」



桜井先生「ええー、自転車に乗りながらの携帯は大変危険です。絶対やめましょう。それと最後に、今朝、私の下駄箱に弥勒菩薩が入っていました。こういう悪戯をするのは良くないと思います!」


祐子「すいませーん、通りまーす」

麻衣「弥勒菩薩・・・」

祐子「ああ、麻衣ちゃん、急に立ち止まらないで」

麻衣「あ・・・」(ここら辺、デジャヴかもしれない)


桜井先生「誰がやったんですか? 怒らないから手を挙げてください! 出てくるまで今日はこのまま朝礼ですよ」

男子学生「誰だよ」

男子学生「お前、出ろよ」

桜井先生「え、ええ?・・・」

校長「いやあ、桜井先生が誕生日だと聞いていたもので」

高崎先生「ふんぐぁーっ!」

富岡先生「ああ!?」

校長「いやいや、そうですか。弥勒菩薩は駄目ですか。えー、

. 誕生日 よかれと思って プレゼント
.  弥勒菩薩は いらぬとスルー
.                 校長

教頭「以上で朝礼を終わります。校長先生、今日までありがとうございました」

校長「きょーとー!」

――― ボタン ―――

みお「この消火栓のボタンって、凄く押したくなる魔力があるよね」

祐子「そうだね。あっ! ふっふっふ・・・押してみたら? それ前押したら、音とか鳴らなかったしぃ」

みお「え、本当?」

男の学生A「火事?」

男の学生B「うそ?」

女の学生「どうすんの、これ? 逃げんの?」

男の学生C「皆、とりあえず校庭に出るぞ!」

男の学生D「てめぇ、何、人の背中押してんだよ!」

男の学生E「お前が押したんだろ!」

男の学生D「何言ってんだ? だいたいお前、前からむかついてたんだよ!」

女の学生「止めなよ! 人が死ぬかもしれないのよ!」

男の学生F「まずは逃げろ! 喧嘩はそれからだ!」

――― Helvetica Standard ―――

死神「あの・・・すいません、KYってなんでしょうか?
あの・・・KYってなんなんでしょう?
すいません! KYについて教えてくださ~い!」

男の人「助けてくれぇぇ!」

隊長「おおい!」

死神「隊長! KYって何でしょうか?」

隊長「お前のことだよ」

――― 要件と用件 ―――

富岡先生「2年P組、笹原幸治郎。至急職員室の富岡の所まで来るように」


富岡先生「確かに校則違反ではないがな・・・ヤギはないだろ、ヤギは? 何とかならんか? 徒歩が嫌なら、自転車でもいいんだぞ。ヤギでなければ」

幸治郎「御仁」

富岡先生「富岡だ」

幸治郎「富岡」

富岡先生「『先生』を付けろ」

幸治郎「先生、『ヤギ』ではなく、『笹原コジロウ』と呼ぶ訳は行かないか?」

富岡先生「今はヤギだ

――― 日常の4 ―――

なの(私は東雲なのって言います。一緒に住んでいるはかせが作ってくれたロボットです。はかせは何らかの研究をしているらしく一日中家にいます。私はそのお手伝いをしながら、日々過ごしています)「はかせ! 牛乳あっためましたっ!」(秀でた機能はありませんが、痛覚はあるようです)

はかせ「なの、どうしたの?」

なの「あ、はかせ、小指が・・・小指が・・・!」

はかせ「こ、ここここ小指ががががががががが・・・とりあえず、これで大丈夫やから」

なの「へええ!?」(秀でた機能はありませんが、小指が取れるそうです)
「はかせ、このネジはなんなんですか?」

はかせ「あー、回したことなかったっけ?」

なの「あ、はい。たまに回りますが」

はかせ「これは、こうやって回すとね」

なの「あ、何ですか?」

はかせ「うぅぅ、ちょっぱぁぁぁ・・・」

なの(すみません。秀でた機能満載です)

はかせ「ね、面白いでしょ?」

なの「もしかして、これだけのためにネジを?」

はかせ「そうだよ」

なの「もしかして、これだけのためにネジを?

はかせ「そうだよ!」

なの「外して下さい!」

はかせ「やだ~!」

なの「へええ!??!」

はかせ「なぜなら可愛いからです」

なの「リアルに外して下さい!」

はかせ「えええ・・・可愛いのに」

なの「私はもっと普通がいいんです。普通の人みたいに椅子に座ったり、寝返りを打ったりしたいんです。これじゃ、学校にも行けないです。いっそ、人型ロボットでなければよかったのに」

はかせ「なの・・・」

なの「は? あぁぁあぁぁ、なんて嘘ですよ! 嘘、もう、嫌だなぁぁ、はかせはぁぁ」

はかせ「じゃ、取って!」

なの「え?」

はかせ「芥川賞取って!」

なの「何で!?」

はかせ「芥川賞! あくたがわ!」

なの(そんな、毎日です)



男(ここ、どこだろう?)

――― 次回予告 ―――

「こんにちは、なのちゃんの足の親指です。容量は1ギガです。もうちょっと欲しいところですよね。次回の『日常』は第2話です。お楽しみに」