キョン:
七夕のとき、憂鬱だったハルヒは、
期末試験期間中に
ステータスをメランコリー状態から回復させて
また好き勝手に振舞うようになっていた。
俺はといえば、
その反作用で押し出されたブルー色を
バトンタッチされたような
鬱々真っ盛りだ。
俺の後ろの席でテストを受けていたハルヒは、
なぜかいつも時間が余るようで、
試験終了30分前には大抵机で寝息を立てていた。
忌々しい、ああ忌々しい、忌々しい。


ハルヒによると、SOS団には休みというものがないらしい。
試験期間中で部活動が中止されていた間も、
部活でも何でもないこの謎の団は、
コンビニエンスストアのように年中無休で営業していた。

ハルヒ:
ちょっと。これ見なさい。

キョン:
何これ。

ハルヒ:
見て分からないの?

キョン:
わからんね。全然分からん。

ハルヒ:
あたしのSOS団のエンブレムよ。

キョン:
エンブレム?
酔っ払ったサナダムシがくだを巻いているようにしか見えないが。

ハルヒ:
ちゃんと見なさいよ。
ほら、真ん中にSOS団って書いてあるでしょ?

キョン:
そう言われてみると、そんな気がしないでもないようなあるような…
でも大声で言いかねるくらいには見えないでもないね。
さて、俺は一体いくつ否定語を重ねたかな?
ひまなやつがいたら、数えてくれ。

ハルヒ:
一番ひまなのはあんたでしょ。
それより、これをSOS団サイトのトップページに載せようと思ってるの。

キョン:
トップページしかないこのしょぼくれたサイトにか。

ハルヒ:
あんたの作ったこのサイト、訪問者が増えないのよ。
遺憾を覚えるわ。
にぎやかすものが全然ないのよ。
あんたが邪魔したせいよ。
せっかくみくるちゃんのエロ画像で客を呼ぼうと思ったのに。
だから考えたの。
SOS団のシンボルみたいなものを貼り付けたらどうかって。

キョン:
こんな阿呆なホームページ、とっととネットから撤収しろよ。
アクセスカウンターは3桁に達してない上に、
そのうち9割はお前が自分で回しているようなもんだぞ。

日記でも書いたらどうだ?
業務記録をつけるのは団長の仕事だろ?

ハルヒ:
いやよ、面倒くさい。

キョン:
俺だって面倒くさいんだが。

ハルヒ:
さ、キョン。このシンボルマークを
サイトの頭に表示するようにしなさい。

キョン:
お前が自分でしろ。

ハルヒ:
あたしは団長なの。
団長は命令するのが仕事なのよ。
それにあたしが全部やっちゃったら、あんたたちのする仕事が無くなるでしょ。
少しはあんたも頭を使いなさいよ。
言われたことをやってるだけじゃ、人間進歩しないわよ。

キョン:
お前は俺にやれと言っているのか。
するなといってるのか、どっちなんだ。

ハルヒ:
いいからやんなさい!

キョン:
俺はしぶしぶ、ハルヒ画伯様のサナダムシ風イラストを、
適当なサイズに縮小してから、
ファイルに貼り付け、アップロードした。