(読む場合を想定して読点を挿入しています)
(!や?は使用せずすべて句点に統一しています)
(なるべく文脈の変化ごとに罫線を引いています)




ジョゼ:
彼女は僕の妹。
いつも一緒なので、フラテッロと呼ばれる
フラテッロ、兄妹という意味だ。
周囲からは物笑いの種だが仕方ない。
実際ほとんど、その通りなんだから。



マルコー:
共和国派への武器密輸の重要参考人の確保・・・
やはり複数のネストを抑える必要があるのでは。

ロレンツォ:
うーん。
南部のネストはヒルシャー・トリエラのフラテッロで。

ヒルシャー:
はい、十分です。

マルコー:
しかしもう一方の、ジャン・リコ組みには補助が必要です。

フェッロ:
ビルの周囲は私が2課の人間と一緒に抑えます。
しかし、彼らとの接触はもう一組フラテッロが必要かと思います。



ヒルシャー:
ジャンさん、ヒルシャーです。
ええ、共和国派のネストは制圧しましたが、
重要参考人の姿はありません。
おそらくすでにそちらに、移送されたんでしょう。
はい。

ジャン:
裏付けを取れ。

ヒルシャー:
はい。
まだ息のある人間から・・・

電話の男:
おいどうした。

ヒルシャー:
何か聞いてみます。

電話の男:
聞こえてるのか。
おい。



ロレンツォ:
ジョゼ、やれるか。

ジャン:
課長、彼らにはまだ、グループ活動は無理なのでは。

ジョゼ:
大丈夫だ、ジャン。

ロレンツォ:
ジャン・リコ組にはジョゼ・ヘンリエッタを付ける。いいな、ジャン。

ジャン:
はい。



ジャン:
トリエラ・ヒルシャー組から連絡があった。
どうやらこっちが本命らしい。
例の重要参考人がやつらと一緒にいるか確かめるんだ。
いいか、確認ができない場合はやつらを泳がせる。
一切手を出すな。

ジョゼ:
行こう。

ジャン:
フェッロ、出入り口は大丈夫か。

フェッロ:
正面は私とアルフォンソ、裏口はアマデオとジョルジョが。
もし逃げ出せるとしたら、その窓くらいです。

ジャン:
指示を待て。

フェッロ:
了解。

ジャン:
リコ、ブラインドの影に集中しろ。

リコ:
はい。



ボス:
南部のネストが襲われた。

男:
何ですって。

男達:
えっ。

ボス:
どうやら何者かがあの男を探してるようだな。

男1:
それじゃあここにも。

ボス:
やってくるかもな。
ネストに現れたのは幼い少女だったらしいが・・・

男2:
少女。

ボス:
あぁ。

ボス:
そういえば、最近こんな噂を聞いたことがあるな。
少女の殺し屋を使う組織があるとか。



ルイ:
おっ。

男3:
ルイ、誰だ。

ルイ:
背広の男と・・・それから・・・

ボス:
どうした。

ルイ:
それが・・・女の子です。

ボス:
開けるなよ。

ルイ:
追い返してやりますよ。

ボス:
ルイ、やめろ。



ジョゼ:
こんにちは。
突然お邪魔して申し訳ありません。

ルイ:
なんのようだ。

ジョゼ:
はい。
私はリベロイタリア紙の記者をしている者です。

ルイ:
記者がどうした。

ジョゼ:
こちらにコステロ社のスカロ氏がいらっしゃると聞いて
ぜひ取材をと思いまして。

ルイ:
そんな奴はここにはいない。
住所が違うよ。

ジョゼ:
ええと。
確かにこの建物だと聞いて。

ルイ:
おい。
知らないって言ってんだろうが。
おい、聞こえなかったのか。
ここにはそんな奴いないんだ。

ジョゼ:
しかし・・・

ルイ:
いい加減にしないと痛い目に・・・




男3:
おい、どうした。
なにしてる。



ジャン:
ジョゼ、このままイタリア中の病院を回るつもりか。

ジョゼ:
ああ、いや・・・

ジャン:
俺はもう決めてきたぞ。

ジョゼ:
兄さん、本当に子供じゃなきゃいけないのか。

ジャン:
公社の人間はそう言ってる。
体の改造も条件付けも
なるべく若い方がいいらしい。



マージ医師:
ええっと、社会福祉公社さんでしたっけ。

ジャン:
はい。

マージ医師:
国もすばらしい組織を作りましたね。
救急救命医療支援を積極的に打ち出すとはね。

ジャン:
それでマージ先生、
この病院に重症の少女がいると聞いてやってきたのですが。

マージ医師:
ええ。
まさしく、あなた方の助けを必要としています。
ご存知ですか。
先週起きた、一家惨殺事件の生き残りですよ。
彼女は、家族の死体の隣で、
一晩中、暴行を受けていました。
本人は、自殺を望んでいます。



フェッロ:
何にします、名前は。

ジョゼ:
ヘンリエッタ。

フェッロ:
ヘンリエッタ、ですね。

ジョゼ:
ああ。

フェッロ:
しばらくは一人部屋で、
ここに慣れたらリコと相部屋ということで。


フェッロ:
起きましたね。



ジョゼ:
目が覚めたね。
喉は渇いてないかい。

ヘンリエッタ:
いえ。

ジョゼ:
私の名前は、ジョゼ。



ジョゼ:
もう起きていたのか。
眠らなかったのか。

ヘンリエッタ:
はい。

ジョゼ:
なぜ。

ヘンリエッタ:
ジョゼさんが、
早く扱えるようにと仰ったからです。

ジョゼ:
やめるんだ。


ジョゼ:
実戦の射撃では、サイトを使うな。
標的をエリアで捉えるんだ。
近距離ならこの方法で人体の中心に銃弾を撃ち込める。
そこに命中すれば、相手の活動を止めることができる。


ジャン:
まあまあだな。

男:
おい、手榴弾。

ジャン:
撃て。


ジョゼ:
やってくれたな。

ヘンリエッタ:
はっ。

ジョゼ:
フェッロ、失敗した。
何人か連れて応援に来てくれ。

フェッロ:
わかりました。
すぐ向かいます。

ジョゼ:
ヘンリエッタ、どうして暴れた。

ヘンリエッタ:
あの・・・

ジョゼ:
今まで、こんなことはなかったのに。

ジョゼ:
腕を撃たれたな。
大丈夫か。

ヘンリエッタ:
平気です。


フェッロ:
ジョゼさん。

ジョゼ:
フェッロ、重要参考人を探せ。
彼らの反応からすると、
この建物に隠しているだろう。

フェッロ:
了解です。 

フェッロ:
アルフォンソ、アマデオ、
屋上から階下へ。
ジョルジョは建物の周囲を警戒して。


重要参考人:
撃つな、撃たないでくれ。


ジャン:
ジョゼ、やはりもっと条件付けを徹底すべきだ。
猟犬には、首輪をつける必要がある。

ジョゼ:
それには反対だ、兄さん。
条件付けの多用は、寿命を縮める。

ジャン:
使えなくなったら、新しい患者を用意すればいい。
お前は道具に愛着を持ちすぎだ。

ロレンツォ:
ジャン、まあ待て。
少々問題はあるが、ヘンリエッタは優秀だ。
簡単に使い潰すのも惜しい。
とにかく、重要参考人の身柄は抑えたのだ。
今回の件は、大目に見よう。

ジャン:
はい。



ロレンツォ:
ジョゼ、ここの義体の扱いは、
担当官に、一任している。
ヘンリエッタが最低限の条件付けで使えるというなら試してみろ。
ただし、大きなミスは許されない。
今回のことは、きつく叱っておくんだな。

ジョゼ:
はい。

ジョゼ:
公社へ連れてきたばかりのヘンリエッタは、無口な子だった。
もともと連続殺人事件の被害者だったのだから、無理もない。
一家6人が惨殺され、彼女一人が生き残った。
国立病院で会った彼女は、身も心もボロボロで、
僕はこの子をパートナーに選んだ。
善行を積みたかったのか、同情したのか。
とにかく、彼女を救いたかった。


トリエラ:
ヘンリエッタ。

ヘンリエッタ:
ん。

トリエラ:
リコから聞いたぞ。
大暴れしたんだって。

ヘンリエッタ:
ん、んー。
ちょっと、かっとなっちゃって。
トリエラ。どうしよ。

トリエラ:
大丈夫。
よし、私とクラエスの部屋で一杯やろう。

ヘンリエッタ:
一杯。

トリエラ:
紅茶とケーキには、幸せの魔法がかかってるの。


トリエラ:
結局ヘンリエッタは手柄を立てたかったわけだ。

ヘンリエッタ:
えっとー、そうかも。

クラエス:
でも、トリエラ。
私たちにできることはそれくらいしかないんじゃない。
とは言うものの、もし私なら、そんなに献身されても、
鬱陶しいだけだけどね。



ジョゼ:
やってくれ。

アルフォンソ:
はい。

ヘンリエッタ:
ジョゼさん・・・

ジョゼ:
ん。
傷が痛み出したか。

ヘンリエッタ:
私は・・・私はジョゼさんのお役に立ちたかったんです。

ジョゼ:
帰ったらすぐに、先生に診てもらいなさい。