きんいろモザイク>2. ちっちゃくたって

アリス「おはよう、忍」

忍「おはようございます~」

アリス(日本に来て数週間。生活にも大分慣れてきました
日本はとても住みやすい)

女子高生A「マジうける!」

女子高生B「で、そしたらその娘がさぁ…」

アリス(外国人もたくさんいるし、周りの人もみんな優しいです)

忍「アリス、夏でもないのに水撒かないでください」

アリス「日本、大好き!」

―――――

アリス(大宮忍。忍はおっとり優しくて、大和撫子の鏡だよ)

勇「いいなあ、色白の地肌」

アリス「勇、おはよう」

勇「おはよう」

忍「お姉ちゃん、今日仕事でしたっけ?」

勇「そう、午後から」

アリス(勇はモデル。二人は姉妹だけど、あんまり似てない。
こんな感じ!)

アリス・忍「いってきま~す」

アリス「わーい―」

忍「おはようございます」

近所の人「おはよう、忍ちゃん、アリスちゃん」

アリス「こんにちは」

忍「アリスは人見知りですね」

アリス(大人と話すのは、まだちょっと緊張します。あとあの犬!)

忍「アリス!まずご挨拶からです!」

アリス「怖い~!」

忍「おはようございます、綾ちゃん」

アリス「おはよう、綾」

綾「おはよう」

忍「陽子ちゃんは?」

綾「日直でさき行ったわ」

忍「すみません、お待たせして」

綾「早くいきましょう。遅刻しちゃう」

アリス(小道綾。綾は頭も良くてしっかり者。だけど、時々…)

忍「綾ちゃん!タイツはき忘れてますよ!」

綾「え!?あ、ああ!」

忍「わ、私の靴下を!」

綾「シノが裸足になっちゃうじゃない!
あ、確か…あった!」

忍「わー」

アリス(…凄くおっちょこちょい)

陽子「おっはよー!」

アリス(猪熊陽子。陽子は明るくて元気)

綾「おはよう」

アリス「おはよ~」

綾「朝ご飯食べてこなかった?」

陽子「え?食べたけど」

綾「その『何か?』みたいな顔止めて」

アリス(いっぱい食べるのはいいことだよね)

陽子「起立。礼」

クラスの皆「おはようございます」

アリス(アリス・カータレット。今日も目いっぱい、日本の高校生活楽しみます!)

―――――

忍「アリスは今年でいくつになるんですか?」

アリス「え?皆と同じ高校一年生だよ。同じクラスでしょ?」

忍「そうでした。でもその割には小さいですね。私が155㎝ですので、アリスは50㎝くらいですかね」

アリス「それはないよ」

陽子「背が低いのがコンプレックス?」

アリス「うん…」

陽子「なんで?小さいの可愛いじゃん」

忍「そうですよ!」

綾「心配しなくてもこれから伸びるわよ」

アリス「でも私、小学生の時から3㎝くらいしか伸びてなくて」

綾「それはもう…」

忍「はい」

陽子「ダメかも」

アリス「そんな!そんなことないっていって! orz」

陽子「そんなに落ち込むことか?」

アリス「おぉ…陽子…」

陽子「…え?背が小さいから胸も小さいって?」

アリス「うん…」

陽子「はは…それは身長関係ないって」

綾「そうよ、それこそ気にしなくても」

陽子「いい例がここに」

綾「どうせ無いわよ! 悪かったわね!!」

陽子「冗談!冗談なのに~!
な、ほら、授業始まるから」

忍「やった!1時間目英語です~!」

アリス「忍、英語好きなの?」

陽子「カラスちゃんが好きなんだよね~」

アリス「カラス?」

綾「烏丸先生よ。担任の」

アリス「あー、メガネの」

忍「そうです~!優しくて美人で、英語ペラペラで、大人で、ジャージで
あんな人になりたいです!」

綾「ジャージはいいの!?」

烏丸「と、ここはこうなります。
本場の方がいると緊張しますね。先生の英語はどうかしら?」

忍「先生の英語は日本一です!」

烏丸「まあ、ありがとう!」

アリス(ラ、ライバル!)「はい!」

烏丸「アリスさん」

アリス「Miss Karasuma, your English sounds a little awkward!」
〔ミス・カラスマ!あなたの英語はちょっとだけ変です!〕

生徒A「英語だ!」

生徒B「すんげ~!」

烏丸「すごいわ、アリスさん!皆さん、アリスさんがお手本を見せてくれますよ」

アリス「え??」

烏丸「それでは、40ページの最初から」

アリス「あ、はい!」
(な、なんでこんなことに!?)

陽子「すごいな、アリス。手上げて」

綾「やっぱ本物の英語は違うわね」

アリス「へへへへ…」

忍「先生も喜んでました」

陽子「シノ、教科書あった?」

忍「ありました」

綾「シノ、筆箱は?」

忍「あっ!」

陽子「シノー…」

忍「すみません…」

アリス「あぁ?
『シノ』って何?」

忍「あだ名ですよ。仲良しどうしの呼び方です」

アリス「仲良し…」

忍「あ、先生だ!」

アリス(あっ、これだ!)

烏丸「顔がいっぱい重なって」

アリス「先生!」

烏丸「ん?」

アリス「私忍のこと、『シノ』って呼びます!」

烏丸「あぁ…まぁ、仲が良いのね」

忍「嬉しいです~」

アリス(あれ?何この反応?)

―――――

陽子「アリス、萌え!」

アリス「『萌え』って何?」

陽子「可愛すぎて燃える!もえ~~!」

綾「バカね。字が違うわよ
あれ!?なんか違う!」

陽子「見れば見るほど分からなくなる!」

忍「これは当て字なんですよ」

陽子「そうなの?」

忍「はい。元は『ピューン』みたいな効果音が語源です」

陽子・アリス「おおぉぉ」

綾「またあからさまな嘘を…」

忍「本当は可愛いものを見た時の効果音、『も、へ~』が語源です」

陽子「なるほど!『も、へ~』が変化して『萌え』になったのか。誰が考えたんだ?」

忍「私です!」

―――――

綾「……」

陽子「ごめん、遅れちゃった」

綾「遅い!」

陽子「10分だけじゃん」

綾「だけ?だけって何よ!?私なんか1時間も前からここにいるのに!」

陽子「真面目だな
シノとアリスはまだじゃん」

綾「そうなのよ。心配だわ。どこかで事故にでもあっていたら…」

陽子(この差は何だ?)

忍「ごめんなさい。遅れました」

綾「あっ」

陽子「来た…
なんだ、あれ!?
シノ、それは私服か?」

忍「はい!似合いますか?」

アリス「シノは何かの物真似をしてるんだよ」

陽子「なるほど、コスプレか。えっと、メイド?」

綾「ゴスロリとか?」

忍「ブブー!正解は外国人でした!」

綾・陽子「ざっくり!」

男「よし!」



綾「あら?外国の方がいるわ」

アリス「旅行かな?」

忍「何か困ってるみたい!私、いってきます!」

綾「え?ちょっと、シノ…!」

忍「ハロー。
…アリス~!」

アリス「え?あ、ああ!
Hiya! Uh, how can I help you, sir? Alright--」

陽子「何で行ったんだ、あいつ」



陽子「最近、シノの外国好きがマニアの域に達している」

綾「昔からホームステイするくらい好きだったもんね」

陽子「そのうち英語もちゃんとしゃべれるようになるかもなぁ…って英字新聞!?

綾「でもあの顔は絶対理解していない!」

忍「ふん、ふん…」

アリス「シノはヨーロッパが好きなの?」

忍「あ?ヨーロッパ?好きなのはイギリスとかフランスとか」

アリス「ヨーロッパだよね」

忍「え?ヨーロッパ、イギリス…あぁ、何かよく分からなくなってきました!ちょっと紙に描いてみます!

私たちの住む星は地球!」

綾「そこから!?」

女子生徒「先生、さよなら」

烏丸「はい、さようなら」

忍「私、卒業したら髪の毛染めようかなって思ってるんです」

陽子「ええ?どんな色?」

忍「金色です」

綾「えーと、金はちょっと…」

忍「金っていうか、金に近い茶です」

陽子(変わらねーよ)

綾「でも、案外似合うかも!」

陽子(綾、絶対思ってないだろ!)

アリス「シノ、金髪にするの?」

忍「はい!アリスとお揃いですね!」

アリス「似合わないよ~!!」

綾「はっきりっ!」

陽子「さすが!」

忍「あ!?しゅん…
やっぱり金髪は変なんですね」

アリス「シノ、ごめんね。そんなつもりじゃ…」

忍「でも私が金色にすると、似合わな過ぎてモザイクが掛っちゃうかも」

アリス「え?何の話?」

綾「あ、まぁ、まぁ、似合う似合わないは人それぞれよ」

アリス「そうだよ!シノ、昨日の服は凄く似合ってたよ!」

綾(え?)

陽子(そうか?)

忍「本当ですか?」

アリス「うん!あんなに可愛く着こなせるのはシノ以外いないよ!」

忍「へへ、ありがとうございます~!あの服には金髪が似合うと思うんですよ。だから金髪に―」

アリス「NO金髪!」