Layer:02 GIRLS


女の子:
何を怖がっているの?
ちょっと試してみるだけでいいのに。



玲音:
ううん、違うよ!
来てないんだ。
分かんない。

美香:
なーんだ、誰か来てんのかと思った。

玲音:
誰かって?

美香:
玲音の空想のお・と・も・だ・ち。
とかね。
また遅刻するよ!

玲音:
あっ!



ありす:
玲音!
おはよう。

玲音:
お、おはよう。

麗華:
ほら、やっぱり違うよ!

樹莉:
そうかなぁ?でも・・・

玲音:
なに?

ありす:
止しなさいよ。かわいそうじゃない、玲音が。
何でもないよ。さあ、行こう。

玲音:
うん。

樹莉:
でもさあ~・・・

ありす:
もういいじゃない!

樹莉:
へッ?

玲音:
まだ来てる?メール。

樹莉:
メール?

玲音:
千砂ちゃんからの。

樹莉:
ああ、あのこと?
もう来てないって。

ありす:
玲音にも来たの!?イタズラメール。

樹莉:
へー!?

麗華:
そうなの?

玲音:
ちょっと・・・気になっただけ。

樹莉:
なーんだ。

麗華:
やっぱり・・・似てっかなぁ?

樹莉:
んん?

麗華:
玲音!昨日の夜何してた?

玲音:
え?

麗華:
でしょでしょ!

ありす:
だから違うって!

麗華:
だよね!
似てない、似てない!

樹莉:
ええええ?

玲音:
なに?

麗華:
いやさあ、昨日の夜、サイベリアに玲音そっくりな子がいてさー!

玲音:
サイベリア?

樹莉:
あたしたち、昨日勇気出して初めて行ってみたんだよね。

麗華:
大したことなかったじゃん!

ありす:
緊張してたくせに。ウフフ。
あ、クラブだよ。
夜中に若い子達が集まるところ。
そこで、玲音にちょっと似た子がいたの。

玲音:
あたし、昨日は・・・

ありす:
分かってるって。
玲音じゃないよ、その子。
あたしたちもはっきり見たわけじゃないんだけど、
すごく派手なカッコしてたし、
なんかすごい剣幕で怒鳴ってたし。

麗華:
うん、まあ、性格とかも全然違うって感じ!

樹莉:
でも、似てたけどなぁ・・・
そうだ!今度玲音も連れて行こうよ。

麗華:
確かめるってわけ?

ありす:
止しなさいよ!
面白がってさ。

麗華:
意外と、玲音みたいな子がクラブとか行くと、
突然性格変わっちゃったりしてねー!

ありす:
そっか、玲音も少しは活発になるかな?

樹莉:
そうだよ!行こう?玲音!

麗華:
面白いかもよ!

ありす:
玲音だって、もうちょっと、社交的になったほうが楽しいよ。
ね、玲音?



一種のスマートサプリメントであるこのアクセラは、
ナノメカニズムによって、体内にて固有の周波数の振動を発振し、
ある特定のホルモンの分泌を促します。
そのホルモンが分泌されますと、人間の意識の中の時間の感覚が影響を受け、
意識が加速したようになると言われています。
意識だけでなく、確かに脳の働きも活性化されまして、
演算機能が倍から最大12倍まで高くなるようです。
このナノメカニズム自体は、消化液で一昼夜(いっちゅうや)にてほぼ消滅しますが、
その影響力は断続的・・・



玲音:
あっ・・・

配達人:
あっ!
ここ、君んち?

あー、やー、よかった!
お届け物です。
すぐおろしますので、よろしくお願いします!
よっ。
いよっ。

じゃ、ここにサインくれる?

しかし、すげえなあ、これ!

玲音:
え?

配達人:
俺も欲しいよ、こんな・・・
おっ、ども。
これって、全部アンタんだろう?

玲音:
分かんない。

配達人:
ふーん、じゃあ、これがなんだか知らないのか?

最新式のNAVIだよ!
それもフル装備の!
これだけのマシンパワーがあったら、
ワイヤードに入っても、全然ストレスなく自由に動けるんだろうなあ!
俺も自作マシンやってんだけどさ、全然敵(かな)わないや!

玲音:
そんなこと、ない。
あたしも、全然知らないんだもの。

配達人:
クスッ、すぐ分かるって。
じゃ、どうも!



康男:
届いてたな、玲音のNAVI。

美穂:
早く片付けてくださいよ。
邪魔なんだから・・・

康男:
食事が済んだらセットアップしてあげるからねえ。
うーん・・・このNAVIはわたしが自分で使いたいくらいだよ。

玲音:
パパ・・・

康男:
ん?

玲音:
これ、今、セットしてほしいの。

康男:
えー?
おいおい、どうしたんだい?急に。

玲音・・・
そうしよう。



康男:
子供用のNAVIなんてものを、いつまでも使っててはいけないよ。
コミュニケーションというものは、人と人との関係が、
成熟するのにあわせて、それなりの高度なシステムが必要なものだ。
分かるかい、玲音?

NAVI:
Copland OS Enterprise.

康男:
おいで。
このマシンのユーザー登録をしなさい。
話しかけてごらん。

玲音:
ハロー、NAVI。

康男:
これで、このNAVIは、玲音のものだ。
友達にも自慢出来るぞ!

おっと。何だい、美香?
どうかしたのかい?

玲音:
NAVI、メールは来てる?

NAVI:
lain 宛のメールはありません。



ありす:
うん、そこの角を左!
そのまままっすぐ。
見えた?

玲音:
うん。

ありす:
その地下だから。ね!



男の子①:
ねえ!お姉さん!

女の子:
通れないよー!

玲音:
え、ごめんなさい。

男の子①:
だからそんな方法じゃ、情報監視センターにすぐ見つかっちゃうって!

男の子②:
アタックするだけなら平気じゃない?

女の子:
今度あそこのゲーセンでさー・・・



麗華:
遅い!玲音たら!
この時間、玲音はいつも寝てるもんね、ウフフ。

樹莉:
玲音さあ、夜なら夜向きな服ってもんがあるんじゃないの?

ありす:
今度玲音に大人っぽい服選んであげようよ!

麗華:
えー?似合うかなー!

ありす:
麗華!

樹莉:
じゃあさあ・・・

ありす:
なに?

樹莉:
やっぱりこないだのって、玲音じゃなかったんだね。

麗華:
だから、そう言ってるじゃないよ。
玲音はあんなカッコしないし、
あんな言葉遣いしないし、
あんな顔しないってば!

玲音:
その子って・・・そんなにそっくりだったの?

樹莉:
うん!
あたし絶対玲音だって思ったもん!

玲音:
そう・・・

[銃声]
玲音:
え?

[悲鳴]
店の客①:
何だこれは?!

店の客②:
銃声が聞こえたぞ!

店の客③:
助けてくれ!

店の客④:
助けてくれー!

樹莉:
きゃあ!

ありす:
樹莉!

樹莉:
アアン・・・

ありす:
玲音!

麗華:
何してるんだよ、あの子!

ありす:
麗華、樹莉を・・・!

麗華:
ありす?ありす!

殺人者:
何見てんだよ!

ありす:
玲音!何してんの!?
逃げよう!早く!玲音!
玲音!玲音たら!

殺人者:
[うめき声と荒い息]
向こう行けよ!
何で俺にこんなことさせんだよ!?
アンタは一体何の権利があるのさ!?
俺はただアタマをクリアにしたかっただけなんだ!
知らない!そんなこと関係ない!
アンタは散漫なる神の・・・
俺は関係ない!カンケイナイ!
ワイヤードは絶対にリアル・ワールドを干渉してはならない!
俺は関係ない!
アンタは誰なんだ!?

ありす:
れ、玲音・・・!

殺人者:
[うめき声]
俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、俺は関係ない、関係ない、関係ないのに・・・ 関係ないのに・・・ 関係ないのに・・・
[うめき声]

玲音:
どこにいたって、人はつながっているのよ。