The Squid Girl (Japanese) > 12c. もっとピンチじゃなイカ?

南風店長「あれからずいぶん経っちまったなあ。ここもすっかり普通の店になっちまって」

栄子「前から普通の店だっつの。ま、静かになったってのは否定しないがな」

渚「どうしてるんでしょうね」

南風店長「元気でやってるといいな」

栄子「あいつ、本気で帰りやがって」

イカ娘「この家を地上、いや、宇宙侵略の拠点にさせていただくでゲ・・・ああっ!」

栄子「お前・・・イカ娘!」

たける「イカ姉ちゃん!」

早苗「イカちゃーん!」

栄子「こいつ、心配かけさせやがって。いったい今までどこをほっつき歩いてたんだよ。もうこれ以上心配させんなっつーの!」
シンディー「オーウ! ウッジュウ(Would you) xxx? イカガール!」

全員「あ?」

イカ娘「地上だとか人類だとか小さいだわ。私はこれから宇宙の支配者になるだわ」

全員「あああ・・・」

シンディー「ファーンタスティック! とうとう地球外生命体の第一歩を踏み出すのね!」

早苗「私はイカちゃんがどういうふうに変わっても、イカちゃんの味方だから!」

偽イカ娘「あのう、それ・・・」

たける「イカ姉ちゃん、触手は?」

イカ娘「もうあれは触手じゃないだわ。人間と同じ髪みたいなものだから、いらないでゲ・・・だわ!」

栄子「自分で切ったのか?」

イカ娘「もう機能してないから、再生もしないだわ」

栄子「いいのか、イカ娘。それにその喋り方、めちゃくちゃ不自然だぞ」

イカ娘「何がだわ? 今の私は、イカ娘はイカ娘でもイカ娘マークII、ゲソゲソいう喋り方はやめたでゲ・・・だわ」

栄子「無理しなくていいんだぞ」

イカ娘「無理なんかしてないだわ」

千鶴「まあ、いいじゃないの。イカ娘ちゃんが帰ってきてくれて、本当にうれしいわ。たとえ触手が動かなくても、イカ墨が吐けなくても」

イカ娘「そうでだわ! 私は触手が使えなくたって、やっていけるだわ!」


イカ娘「あっ! あ、ありがとうだわ・・・」

渚「いえ」


栄子「イカ娘、これ全部4番に頼む」

イカ娘「わかっただわ」

栄子「お前」

イカ娘「ん?」

栄子「すっかり手ェ使うのに慣れたみたいだな」

イカ娘「そ・・・そうねだわ」

たける「違う」

イカ娘「ん?」

たける「こんなの、違う!」

栄子「たける、何言ってんだ・・・」

たける「イカ姉ちゃんはそんなんじゃない! イカ姉ちゃんはもっと元気で、威張ってて、でも失敗ばっかで、でもめげなくて、今のイカ姉ちゃんは、イカ姉ちゃんじゃない!」

イカ娘「あ・・・。わあっ」

栄子「たける!」

イカ娘「・・・ご、ごめんなさいだわ」

たける「僕のほうこそごめんなさい」


イカ娘「私はどんどんだめになってる気がするだわ」

梢「そんなことはないんじゃないかしら」

イカ娘「あっ・・・。お主は?」

梢「いきなり話しかけたりしてごめんなさい。隣、いいかしら?」

イカ娘「うん・・・」

梢「あなたは地上を侵略しに来たの?」

イカ娘「そうでゲソ。海をけがす悪い人間どもを懲らしめてやるのでゲソ。でも、イカ機能はなくなるし、どうしたらいいかわからないでゲソ」

梢「『悪い人間ども』。実際に人間と対面してみていい人間どももいたでしょ? あなたはどうしたらいいかわからないって言うけど、それは違う。あなたがしたいと思うことをすること、それが大事なのよ」

イカ娘「私がしたいと思うこと・・・」

梢「あなたなら大丈夫。自分の思うようにすればいいと思うわ」

栄子「おーい、イカ娘! 泳ぎに行こうぜ!」

梢「あら。それじゃあ、私はそろそろ」

イカ娘「う、うん」

梢「あ、それと・・・あなたは一人ぼっちじゃない。それを知っておいて」

栄子「お前の知り合いか?」

イカ娘「いや、初対面でゲソ」

栄子「やっぱそっちのほうがいいな」

イカ娘「え?」

栄子「ゲソ喋り。お前が『だわ』とか言ってると、調子が狂う」


3バカ「イヤッホーゥッ!」

クラーク「深海こそ、地球に残る未知の世界。そこには宇宙人誕生の謎が隠されているはず!」

ハリス「イエース! あのイカ娘が最後の一人とは思えない!」

マーティン「ダイオウイカ娘、タコ娘、クラゲ娘の可能性が!」

クラーク「もしくはリュウグウノツカイ娘!」

マーティン「ヒヤウィーゴー!」


(梢「あなたは一人ぼっちじゃない」)


栄子「あれ、変だな・・・。うおっ」


クラーク「ワットハプン・・・?」

3バカ「イャッホーッ!」


栄子「イカ娘、逃げ・・・うわ!!」

イカ娘「栄子!」


イカ娘「栄子ーっ!! あ、あ・・・ああああっ!」


栄子「あ・・・お前」

イカ娘「復活でゲソ。とうっ! お主たちの仕業でゲソね!」

3バカ「ひいいいっ」

マーティン「ヘ、ヘルプミー!」

ハリス「ママー!」


3バカ「すみません! ほんとすみませんでしたーっ!」

栄子「どうする? 許してやるか?」

イカ娘「思えば、栄子が溺れてくれたおかげで私もイカ能力を取り戻した、といえるでゲソ」

栄子「だとさ。仕方ない、許してやるよ」

3バカ「ありがとう! ほんとありがとうございます!」

イカ娘「これからもよろしくでゲソ。これからは私の体調が悪くなったら、栄子を海に放り込むことにするでゲソ。やっぱり私は海のみならず、地上をも手中に収める最強の存在でゲソ! はーっはっはっはっは!」

栄子「調子に乗るな!」

イカ娘「いでっ」