Kamichu! (Japanese) > 01. 青春のいじわる


ゆりえ:(教室。弁当を食べている)光恵【みつえ】ちゃん…
光恵:ふーん?
ゆりえ:わたし、神様になっちゃった。
光恵:なんの?
ゆりえ:わかんない。昨日の夜なったばっかだから。
光恵:ふーん、お供え。
ゆりえ:いらない。
光恵:神様が好き嫌いしちゃダメでしょ?
ゆりえ:信じてないでしょ?
はあ、とにかくね、わたし、もうなったからには自分がなんの神様なのか知っておきたいんだ。でも、どうしたらいいのかな?
光恵:取り敢えず、小テストの予習かな。
ゆりえ:やっぱ信じてない。
祀:今、神様の話してたわね、一橋ゆりえさん?いえ、「ゆりえ」と呼ばせてもらうわ。
ゆりえ:三枝【さえぐさ】さん?
祀:「祀【まつり】」と呼んで。今日からあたしたちは心の友よ。よろしくね、ゆーりえ。
あたしも気づいてたわ、今日のあなたは一味【ひとあじ】違うって。
ゆりえ:わかったの?
光恵:ああ、三枝さん家【ち】神社だしね。
祀:宿題忘れて立たされたあなたは、昨日とは違う、神々しさに満ちていたわ。
ゆりえ:(微笑)フフ。神々しかった、わたし?
光恵:堂々とはしてたけど。
ゆりえ:えっと、で、三枝さん。
祀:「祀」と呼んで。
ゆりえ:うん…、まつり…ちゃん、わたし、なんの神様なの?
祀:わからないわ。わからないから調べましょ?
光恵:ねぇ、テストの予習は?
ゆりえ:あとでやる。
教師:走るな!

----オープニング----

ゆりえ:なんで屋上?
祀:ひと目があると恥ずかしいからよ。
ゆりえ:(息を整えながら)恥ずかしいことするの、あたし?
祀:ゆりえが何の神様か知る方法、それはどんな力が使えるか調べることよ。
ゆりえ:どうやって?
祀:ふーん、先ずは形から。テレビのヒーローが力を使うときは、どうしてる?
ゆりえ:ポーズ取ったり、掛け声を出したり…
祀:理解が早いわ、さすが心の友よ。
ゆりえ:やるの?ポーズ?掛け声?わかんないよお…!
祀:じゃあ、わかる動きでやってみましょ。
祀、ゆりえ:ちゃんちゃちゃらんちゃちゃちゃ、ちゃんちゃちゃらんちゃちゃちゃ♪
祀:何か感じない、いつもとは違う感覚を?
ゆりえ:恥ずかしい…
祀:そんなことじゃダメよ!もっと気持ちをこめて、ほら!
もっとナチュラルに!
ゆりえ:わかんないよお…、どんなの?
祀:自分で考えなさい!
光恵:潤いほしいなあ…
ゆりえ:えー?!
祀:今ひとつノリが悪いわね。
ゆりえ:そりゃあ、だって、恥ずかしいし…
光恵:汗…。
ゆりえ:ありがとう。
光恵:(風に飛ばされてきた半紙がゆりえの顔にかぶさる)何?
ゆりえ:(驚いて)あ?
(給水塔の梯子を登りながら)よいしょ。二宮くん?!
健児:うーん。(大袈裟に)違う!
ゆりえ:(習字をつかもうとしてバランスを崩し悲鳴を上げる―小さな悲鳴x数回)
(健児、気がついてゆりえの手を掴んで引っ張るが、ゆりえは梯子に頭をぶつけてしまう)あっ!
健児:あー、ゴメン。俺夢中になると人がいることに気づかなくて。えーと…
ゆりえ:あっ、一橋ゆりえです。
健児:何年?
ゆりえ:同じクラスです。
祀:健ちゃん!なんで部室で書かないの?
健児:書道部俺一人だもん。部室取り上げられちゃった。
祀:こんなところでやらなくてもいいじゃない。
健児:でも、気持ちいいし。
ゆりえ:あの、えっと、見てました?
健児:は、何を?
ゆりえ:いえ、いいんです。
(健児、ゆりえの背後を通ってを給水塔の梯子を降りる)
光恵:二宮くんって変人。
ゆりえ:(むっとして)フン!天才だってば!
光恵:ふ、ふーん。
祀:ラブね。
(ゆりえ照れて真っ赤になる)
光恵:(ため息)中学入ってずっと。
ゆりえ:光恵ちゃん!
光恵:三枝さん、二宮くんと仲いいの?
祀:時々、書物【かきもの】とか頼んでるの。健ちゃん、字だけは上手い【うまい】から。
光恵:確かに、字は綺麗よね。
ゆりえ:(小声で)健ちゃん・・・
祀:ゆりえ、こんな伝説知ってる?
ゆりえ:ん?
祀:風が強い日、この屋上で告白するとその恋は絶対に実るって。
ゆりえ:えっ、ホントに?
祀:神様に誓うわ。もう一回、頑張ってみない?
ゆりえ:うん!
光恵:(呆れて)あんた、ちょろすぎ。
祀:さあ、風を起こすのよ!
ゆりえ:どうやって?
祀:思いをこめて、呪文を唱えるの。
ゆりえ:なんて言うの?
祀:うーん、神様で中学生なんだし、「かみちゅ」でいいんじゃない?
ゆりえ:なんか変。
祀:とりえあえずよ。ほら!ラブな思いを込めてやってみて。
ゆりえ:かー、みー、ちゅー!
祀:変化なし。
ゆりえ:あぁ、もう疲れたよ。
(昼休み終了のチャイム)
祀:じゃあ、続きは放課後ね。
ゆりえ:まだやるの?
祀:家【うち】に行きましょ。道具もあるから。
光恵:五時間目始まるよ。
ゆりえ:はあ、テストどうしよう。

(風景、学校から海沿いの町、神社の石段に移る)
ゆりえ:ごめんね、付き合わせちゃって。
光恵:いいけど、疲れてない?
ゆりえ:ちょっとだるいけど、平気。古文で休めたし。
光恵:いや、休んだらダメだよ。
ゆりえ:うん。
祀:(石段を登り切って)ようこそ、来福神社へ。
(ゆりえと光恵、息を切らしながら石段を登ってくる)
祀:支度【したく】してくるからちょっと待ってて。
ゆりえ:誰もいないね。
光恵:神社なんて、しょっちゅう来るもんでもないし。
ゆりえ:そうだよね。あっ?あー!
(おみくじを引く)85。85、85。
光恵:「吉」、恋愛、ゆるやかにゴーゴー。「ゴーゴー」?
ゆりえ:「小吉」
光恵:神様なのに?
ゆりえ:「凶」じゃない分、いいじゃん。
光恵:ふん。
ゆりえ:恋愛、嵐の予感。(ため息)
祀:妹のみこ。
みこ:は、はじめまして。
祀:心の友と、その友よ。
ゆりえ:一橋ゆりえです。
光恵:四条光恵です。
みこ:三枝みこです。お姉ちゃんがいつもお世話になってます。
祀:ねぇ、何の神様だかわかる?
光恵:わかるの?
祀:この子、そういう力があるから。
みこ:(しばらくゆりえの顔見つめてから)ごめんなさい。
(ゆりえと祀、ため息)
でも、なんだかすっごい力は感じます。
祀:ふーん...、ねえ、八神【やしま】様に聞けない?
みこ:え?
祀:同じ神様だし、きっといけるわ。
みこ:い、今はだめみたい。
祀:(がっかりして)うーん。じゃ、イベントでもやってみようか?

ゆりえ:!あれ?
祀:なんか来た?
ゆりえ:いや、わかんない。
祀:反応してるわ。あと一息よ。
ゆりえ:(祀の太鼓に合わせて体が動く)!、!、!
(ゆりえ大きなくしゃみをする)ハクション!


ゆりえの母:まあ、どうしたの?
ゆりえ:ちょっとね・・・
ごめんね。ありがとう。
光恵:いいから、ゆっくり休んで。
ゆりえ:うん。
光恵:じゃあ、失礼します。
ゆりえの母:帰っちゃうの?お夕飯、食べてかない?
光恵:いえ、家の支度もあるんで。
ゆりえの母:章ちゃん、ゆりちゃんの自転車、取ってきてくれない?
ゆりえ:ごめんね、タマ。今は寝かせて。
章吉:えー、なんで俺が?
ゆりえの母:お願い。ゆりちゃん、疲れて動けないんだって。
章吉:ああ、わかったよ!
ゆりえ:ごめんね、章ちゃん。
章吉:うるせぇ!
ゆりえ:ご、め、ん。
ゆりえの母:ゆりちゃん、お茶飲む?
ゆりえ:いい。晩御飯まで寝てる。
テレビの声:ますます美味しいコーラ饅頭【まんじゅう】。コーラまいった。
6時半になりました。本日は予定の内容を変更して、台風情報を中心に放送をお送りします。気象庁は先程、徳之島沖で発生したと思われる台風「ゆりえ」を観測史上稀【まれ】に見る超小型台風と発表しました。調査によりますとこの「ゆりえ」は、雨量は極めて少ないですが、風力が非常に強く、予想される進行方向上の、九州、四国の北部、瀬戸の地域については強風波浪注意報が出されています。「ゆりえ」は間もなく本州に上陸する勢いで、各市町村に於【お】いては指定された場所への避難警報が発せられるものと思われます。テレビ、ラジオなどの情報にご注意ください。気象庁から続報が入りました。発表された気象衛星の画像に、一部問い合わせが集まっておりますが映像の加工は一切無く…

ゆりえ:(飛び起きて)うわっ、あたしだ!
(電話の呼出音)あ、もしもし・・・
光恵:あんたが―
ゆりえ:光恵ちゃん!
光恵:―ホントに神様になったんだ。
ゆりえ:だからそう言ったじゃない。どうしよう、これあたしのせいだよね?
光恵:多分、あの昼休みの屋上の・・・
ゆりえ:強い風のかみちゅ。こんなに凄いの頼んでないよ。
光恵:学校で会おう。動ける?
ゆりえ:う、うん。あ、章ちゃん。ちょうどよかった。
章吉:おい、ゆりえ!
ゆりえ:ごめんね。ありがと。
章吉:なんだよ?!
ゆりえ:学校行ってくる。

防災無線:台風が接近しています。戸締りをきちんとして、不要の外出は控えてください。台風が接近しています。
物の怪1:待てー!
物の怪2:(悲鳴)壊れちゃうー!
物の怪3:ちーぎれるー!
物の怪4:吹き飛ばされるぞー!
物の怪5:台風が来るよー。
ゆりえ:やっぱり、力、出てたんだ。
あんなのが来たら・・・
祀:ゆりえー!来ると思ったわ。
ゆりえ:なんでわかったの?
祀:心の友だから。あなた、台風を止める気ね。
(ゆりえうなずく)
グーッド。来福神社は協力を惜しまないわ。手伝って!
(光恵石段を登ってくる)
ゆりえ:光恵ちゃん!
祀:台風の目的地はここよ。止められるのは、あなたしかいないわ。
ゆりえ:頑張る。
光恵:って、頑張れ。
ゆりえ:お願い。台風さん、消えて。お願い、消えて!消えて。消えて!
うわっ。(ゆりえ吹き飛ばされる)うわーっ!
光恵:大丈夫?
絶対無理。
ゆりえ:神様なのに...、何にも【なんにも】できないの?!
あ?二宮くん!
光恵:嘘、まだいたの?ゆりえ!
健児:部室がー!
ゆりえ:二宮くん!
(健児、竜巻に飛ばされていく)二宮くーん!
二宮くん、助けたい。かー、みー、ちゅー!
二宮くん!健児くん!
(台風が消えて、雲が晴れていく)
健児:俺、飛んでる。
すげーよな。
ゆりえ:風の強い日、屋上で告白したら・・・
好きです。
健児:あ?
ゆりえ:うわっ
祀:落ちた。
光恵:ゆりえ!
ゆりえ:(健児とゆりえ、プールの水面に顔を出す)ぷはっ。
光恵:ゆりえ、大丈夫?
祀:健ちゃんも。
光恵:どこも痛くないー?
祀:生きてるー?
ゆりえ:うん!ふー。
健児:つめてー。あ?
あれ?
ゆりえ:あの、さっきの・・・
健児:アンタ、誰?
ゆりえ:えーっ?!神様の、バカ・・・

ゆりえ:(ゆりえ悲鳴を上げて飛び起きる)うわっ!はーっ、どこまで夢だろ?
(時計を見て驚く)!、昼!
物の怪:あーしんど、はーしんど。よいしょ、こらしょ、どっこいしょっ。
ゆりえ:全部ホントだ。おはようございます。
女性:ゆりえちゃん、神様になったんだって?
ゆりえ:え、まあ・・・

光恵:爆睡、遅刻。神様になっても変わんないんね。
祀:中身はいいの!肝心なのはイメージよ。史上初、現役女子中学生の神様。これは当たるわー。
光恵:当たる?
健児:おーい。ゴミ、焼却場に持ってくから。
あ、えーと、一橋【いちはし】さん?
ゆりえ:一橋【ひとつばし】です。
健児:あー、じゃね。
ゆりえ:(ため息)
光恵:脈はあるのかな?
祀:健ちゃんの鈍さは尋常じゃないわよ。
ゆりえ:いいよ。取り敢えず、名前は覚えてくれたんだし。
光恵:いや、覚えてなかったけど。
ゆりえ:ちょっとずつやっていこう。それでもう一度。
女生徒:かーみさまー!ネットが倒れてるの。何とか出来ない?
ゆりえ:気楽に頼るな!神様だって大変なんだ!

----エンディング----

あの、神様が困ったときは誰に相談すればいいんでしょう?
お父さん?お母さん?先生?
んー、取り敢えず次回は『神様お願い』で、あなたにちゅーです。