The Squid Girl (Japanese) > 03a. 怖くなイカ?

TV「もう一度、見ていただきたい。おわかりいただけただろうか。せっかくの楽しい夏の思い出を、一瞬にして凍りつかせてしまう、この謎の人物」

たける「わあああっ!!」

イカ娘「は?」

たける「姉ちゃん、やっぱ他の番組にしてよ! トイレに行けなくなっちゃうよ!」

栄子「夏はやっぱ幽霊特集見ねーとな。怖いもの見たさっつーか」

たける「うう・・・」

イカ娘「幽霊って何でゲソ?」

たける「幽霊っていうのは、死んだ人が成仏できなくて、さ迷っているもののことだよ。普段は見えないんだ」

イカ娘「普段見えないものに怯える意味が分からないでゲソ」

たける「見えないのにそこにいるから怖いんだよ!」

イカ娘「ふっ。非科学的じゃなイカ」

栄子「お前が言うな!」

たける「じゃあ、あの写真は?」

TV「ちょっと通りますよと言わんばかりのこの人物。通りますよと(xxx)とでも言うのだろうか」

イカ娘「このおっさんを合成しただけでゲソ」

栄子「そりゃ、そういうのもあるかもしれねーけどさ」

イカ娘「全部気のせいでゲソ! 見るまでは絶対に信じないでゲソ」

栄子(うーん、何とかしてイカ娘に幽霊ってやつを見せて、怖がらせてやりたいな)


―――


栄子「っつーわけで、肝試しをするぞ!」

たける・早苗「おーっ!」

イカ娘「何で私まで」

栄子「楽しい日本の恒例行事ってことで」

悟郎「何で俺まで」

栄子「ボディーガードだ」

悟郎「千鶴さんも一緒だって聞いてたのに」

栄子「あ、ああ、なんか急用が入ったって言ってた・・・気がする」

悟郎「あ?」

早苗「何かあったら、私が守ってあげるからね、イカちゃん」


イカ娘「怖いでゲソー!」

早苗「大丈夫よ、イカちゃん」


栄子・早苗「ノー・リアクション?」

悟郎「マジやべえよ、ここ。早く帰ろうぜ」

栄子「お前は怖がるな! ボディガードなんだから、しっかりしてくれよ」

悟郎「人外相手なんて聞いてねーよ。千鶴さん、いないし」

栄子「あ、姉貴」

悟郎「かかってこいやーっ!」

栄子「と思ったら落ち武者の幽霊だった」

悟郎「いやああああっ!! やめてよ、もう!!」


イカ娘「んで、いつになったら楽しくなるのでゲソ?」

早苗「あ、いや、楽しいというか・・・。イカちゃん、怖くないの?」

イカ娘「何がでゲソ? 真っ暗なだけじゃなイカ。これの何が怖いのでゲソ?」

早苗「ここ、お墓だよ。死んだ人たちが眠っているところだよ」

イカ娘「死んだ人間よりサメやシャチのほうが怖いじゃなイカ。おかしな連中でゲソ」

栄子「こりゃ肝試しは失敗かな」

悟郎「そうだよ。早く帰ろう」

早苗「帰らない!」

悟郎「へ?」

栄子「んん?」

早苗「・・・ってなるまで、私、帰らない!」

栄子「あー、はいはい」

早苗(このくらいで怖がらないのは計算のうち。だったら、こちらから仕掛けるのみ!)
「えいっ」

悟郎「ぎゃああああああああっっ!!!」

栄子「って、お前の声にびっくりするわ!」

悟郎「お前、石投げただろう! やめろよ、そういうの!」

早苗「あんたがやめてよ! 計画が台無しじゃない! このチキン・ライフセイバー!」

悟郎「何だと、この!」

早苗「何よ、チキン!」

栄子「醜い・・・。てか、あれ? イカ娘は?」

悟郎「そういえば」

早苗「先に行っちゃったのかな?」


イカ娘「あ? みんなどこに行ったでゲソ? 帰り道がわかんないでゲソ。しかたない、発光するでゲソ」

ナレーション: イカ娘はホタルイカの能力を持っていた。

イカ娘「よし! これならすぐに見つけてくれるはずでゲソ!」


たける「イカ姉ちゃーーん!」

早苗「イカちゃん、見当たらないね」

栄子「何やってんだ?」

悟郎「きっと、先帰ったんだよ。俺たちも帰ろう」

早苗「ねえ、あれって・・・」

栄子・悟郎「え?」

イカ娘「あ、いたでゲソ」

たける「なに?」

早苗「やだ、こっち来る!」

悟郎「出たーっ! 人魂ーっ!」

栄子「本物だーっ!」

イカ娘「あ?」

たける「助けてーっ!」

早苗「来ないでーっ!」

イカ娘「おーい! なぜ逃げるんでゲソ!」

悟郎「うわーっ! 落ち武者だーっ! 源氏の落ち武者だーっ!」

早苗「いやああーっ!」

イカ娘「待ってでゲソーっ! もしかして気づいてないんじゃなイカ?」

たける「うわあっ、何か点滅してる!」

栄子「まぶし!」

イカ娘「フラッシュなら見つけてもらえるでゲソ」

悟郎「呪いの電波だ! ゲンジボタルだ! 呪われるーっ!!」

イカ娘「・・・人間は、みんな薄情でゲソ。一人じゃ海に帰れないでゲソ。あ? 何の用でゲソ? 私は今それどころじゃないでゲソ」

幽霊たち「ああああああ・・・」

イカ娘「は? もう、何言ってるかわからないでゲソ! はっきり言うでゲソ・・・こら! やめなイカ! あ、どこへ連れて行くでゲソ。ちょっと! いい加減に放さなイカ! あ? ああっ! ・・・あ? 知っている道じゃなイカ! もしかして、道案内をしてくれたんでゲソ?」

幽霊たち「ああああ・・・」

イカ娘(いい人間も、たまにはいるんでゲソね)


イカ娘「みんな、私を置いていくなんてひどいじゃなイカ!」

栄子「悪い悪い。それどころじゃなかったんでな」

早苗「勢いで撮っちゃったけど、どうしよう、これ」

たける「絶対これ幽霊だよ」

悟郎「供養したほうが、いいんじゃないか」

千鶴「そうねえ」

栄子「やばいもん撮っちゃったなあ」

イカ娘「幽霊なんて、いるわけないでゲソ」