千鶴「雨だと、お店も静かねー」

栄子「どうした?」

イカ娘「あそこにいる髪の毛の長い女は、誰でゲソ?」

栄子「ああ?ずっといただろうが」

イカ娘「それは知ってるでゲソ!お主や、お主の弟と何か関係があるのでゲソか?」

栄子「は?気付いてなかったのか?姉貴だ、姉貴。千鶴って名前の」

イカ娘「あねき...はぁぁ?ええ!?全然違うでゲソ!お主はバイオレンスだし、弟の方はうるさいし、追っかけてくるし。でも、あれはなんだかバイオレンスもないし、ものすごくまともに見えるでゲソ!」

栄子「バイオレンスで悪かったなぁぁ!」

千鶴「あら、あら、だめよ、栄子ちゃん!イカ娘ちゃんをいじめちゃ!」

栄子「優しいでゲソ!」

千鶴「イカ娘ちゃん、悪いけど、これ運んでくれる?」

イカ娘「了解でゲソ!
は...は...ぶわぁー、ぶわぁー、ぶわぁー
は...今日は肌寒いでゲソ」

栄子「お前なんてもん吐いてんだよ!?」

イカ娘「何を焦っているのでゲソ?イカ墨を吐いただけじゃなイカ」

栄子「吐血かと思ったじゃねぇか、早く拭け!」

千鶴「あら、本当、イカ墨だわ!」

栄子「リアクション薄...しかも舐めた」

千鶴「イカ娘ちゃんって、本当にイカ気味なのね!」

栄子「『イカ気味』ってなんだよ?ってかシャワーを浴びて来たら?イカ墨臭いよ」

千鶴「あ、そうするわ。お店、よろしくね」

イカ娘「お主なら私を許すまい」

栄子「当たり前だ!はあ...お前のお陰で、イカ墨スパゲティーは当分食えないな...」

イカ娘「イカ墨...スパゲティー?人間どもはこれを食べるのでゲソか?」

栄子「だから目の前で吐くなっての!?ああ、そうだよ!スパゲティーと絡めてイカの身と一緒に!」

イカ娘「えええ!?まさか、私も...」

栄子「誰が食うか!?」

イカ娘「お主が食わずとも、別の客が...!
人間がいないでゲソね」

栄子「雨が降ってるからな」

イカ娘「雨が降ると、人間がいなくなるのでゲソか?」

栄子「こんな天気の日に遊ぶ物好きはいないだろう」

イカ娘「今、このあたりにいるのは、千鶴とかいうおとなしい黒髪の女と、うざったい子供たける、それに少し強いが、そこにいるこいつだけ...
ということは...食われる前に食え。この家を支配するチャンスでゲソ。今日こそ、今日こそ、ギャフンと言わせてやるでゲソ!」

栄子「さてと、私は掃除でもすっかなぁ。イカ娘、お前も手伝えよ」

イカ娘「嫌でゲソ」

栄子「お前、自分の立場が分かってんのか?」

イカ娘「それは、こっちの台詞でゲソ。人間の分際で、偉そうに。私が何のために地上に来たと思っているのでゲソ?」

栄子「アルバイトじゃないのか?」

イカ娘「人類征服でゲソ!その拠点として、まずこの家が必要。そのためには、お主が邪魔なのでゲソ!」

栄子「どいういうつもりだ?離せ!」

イカ娘「口の聞き方に気を付けたほうがいいんじゃなイカ?この一捻りでお主の体など...」

たける「ああ!何やってるのさ?」

栄子「たける、危ない!」

たける「ずるいや、ねえちゃん、一人だけ楽しそうにして!僕もイカねえちゃんと遊びたい!」

栄子「お前はパニック映画もそんな風に見るのか?」

イカ娘「言わずとも、同じ目に合わせてやるでゲソ!」

たける「わーい!えへへ...」

イカ娘「さて、後は一人」

栄子「あねきに手を出す気か?」

イカ娘「止めても無駄でゲソ。今日の私は、本気なのでゲソ!」

栄子「いや、私達を解放した方が身のためだと思うぞ」

イカ娘「ふっ、この状況でまだそんなこと言っていられるでゲソか?」

栄子「だから私達じゃなくて、お前のためだって!」

千鶴「あら、何事?」

イカ娘「来たでゲソね!お主もおとなしく捕まって、3人仲良く朽ち果てるでゲソ!ていっ!あっ!?ああ!」

千鶴「店ノ中デ、フザケチャダメデショ?

イカ娘「は...はい...」

千鶴「分かればいいのよ!
はい、ちゃんと二人に謝って」

イカ娘「...ご...ごめんなしゃいでゲショ」

栄子「い、いいよ」

たける「楽しかったよっ!」

栄子「だから言ったろ、お前のためだって」

千鶴「ところで、イカ娘ちゃん」

イカ娘「はー!?」

たける「なんか用意してる」

千鶴「イカ墨お願い!」

栄子「イカ墨ってこいつの?」

千鶴「ええ」

栄子「冗談だろう?」

千鶴「なんで?だってイカ墨じゃない」

栄子「いぃぃ...」

千鶴「さっき私にかかったとき」

イカ娘「うわっ!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいでゲソ!」

千鶴「うううん!違うの!舐めてみたけど、味は確かだったわ!かけてもらっていいかしら、イカ娘ちゃん!」

栄子「ぶえぇー...」

イカ娘「イカ墨なら、いくらでも掛けるでゲソ」

千鶴「はーい!できあがり!」

たける「僕も食べる!僕も!」

千鶴「はい、栄子ちゃんも!」

栄子「吐くとこ見せられて食えるか―」

千鶴「いいから食べてみなさい」

栄子「...美味い!」

男性お客さんA「美味い!」

男性お客さんB「泳いだ後に、塩気のあるイカスミがたまらん!」

女性お客さんA「イカスミスパゲティー!」

男性お客さんC「イカスミスパください!」

男性お客さんA「イカスミお代わり!」

女性お客さんB「イカスミスパゲティー!」

男性お客さんD「イカスミスパゲティー、二つ!」

男性お客さんE「イカスミスパゲティー!」

女性お客さんC「イカスミ!」

女性お客さんD「イカスミ、持ち帰りで!」

男性お客さんF「イカスパ!」

千鶴「大好評ね!」

たける「うん!」

栄子「何も知らない客にはな
おーい、あと四人前な」

イカ娘「も、もう出ないでゲソ。もう、こんな搾取ばかりのところにはいられないでゲソ!あっ!」

千鶴「イカ娘ちゃん、お願いね。オ客様ガ待ッテルノ...

イカ娘「はい、いいでゲソ!」

栄子「はあ、誰が一番怖いか、ようやく悟ったようだな」


---予告---
イカ娘「海からの使者、イカ娘でゲソ! 次回は『仲間じゃなイカ?』『祝わなイカ?』『遊ばなイカ?』。見ないとお前を征服するでゲソ!」