My Ordinary Life (Japanese) > 09. 第9話
――― 1-B ―――
高崎先生「はい、これにてテスト終了」
生徒たち「おーっ! やったー!」「わあーっ!」
高崎先生(おお、すごい喜びようだな。それだけみんな精一杯、このテストに打ちこんでいたんだな。微笑ましいじゃないか)
男子生徒1「テストが終わったジャンケンポーン!」
男子生徒2「ジャンケンしてないだろ!」
女子生徒1「夢みたい! 私、夢みたい!」
女子生徒2「終わったのよ。すべてが終わったのよ!」
男子生徒3「うちの親から一人に一つずつ、米俵が贈られます」
男子生徒4「よっ、米問屋!」
女子生徒3「わたしたち、結婚しまーす!」
男子生徒5「よっしゃ! おい、みんな手伝え! せーの・・・」
高崎先生「どうなんってんだ、これは!」
生徒たち「わっしょい! わっしょい!」
――― 日常の35 ―――
よしの「あ、みお。おはよう。・・・ええっ!? いやいやいやいや。ほらほらほらほら! 『えっ? ちょ、何その格好』的な。もう、まだ怒ってるんでしょう。昨日、みおのモンブランに桂馬を刺したこと」
みお「まあ、食べられなくなったわけじゃないから別にいいけどさ・・・って、よかないわよ!! 人が楽しみにしてたモンブランに! 何何!? 何なの!? 意味わかんないよ! 何で桂馬刺したのよ!」
よしの「いやあ、何かかっこいいかなあ、と」
みお「面!」
よしの「相も変わらず、冗談通じないんだから」
みお(ったく、バカ姉
(ねえ)
。1日10個限定のモンブランだったのに。そうとも知らず、いつもいつもちょっかい出して。お姉も大学生になったんだから)
よしの「あ・・・」
みお(少しは人の痛みを知らなきゃだめだ。ま、しかしながら、今日の私は姉の愚行を許そうではないかというキャパを持ち合わせているのである。なぜなら、ひそかに隠しておいた1日5個限定のショートケーキがあるからで・・・。王手ーーーー!!
羽生
ーー! 羽生、羽生、羽生! はっ! イチゴ! 昨日の夜から楽しみにしてた1日5個限定の! 私の、私のイチゴ!)「イチゴは!? ここのポゼッションのスイーツはーーーっ!?」
よしの(ふっ・・・。南ー無ー)
みお「胴っ!」
よしの「っつう」
みお「ああーーっ、もうバカ姉! イチゴのないケーキなんて、もはやパンじゃん! ただのあまいパンじゃん!」
よしの「ハッピー・バースデー・トゥー・ミー ハッピー・バースデー・トゥー・ミー ハッピー・バースデー・ディア私 ハッピー・バースデー・トゥー・ミー」
みお(お姉)
よしの(みお)「・・・っつう」
みお「あんた誕生日じゃないじゃん!」
――― 豆テスト ―――
――― 日常の36 ―――
祐子「ここって一回来てみたかったんだよねー」
みお「雑誌に載ってたんだって?」
祐子「そうそう。ほら、クーポンもばっちりですよ」
みお「いま出さなくても・・・」
麻衣「私、ニシンそば」
祐子「おおー、この暑いのに通ですな」
麻衣「ニシン抜きで」
祐子「あはははは、それじゃただのそばじゃん! ははは! ・・・あ。みおちゃん、何にするの?」
みお「普通にざるそばかな」
祐子「無難だね。いかにも素人が考えそうなこった」
みお「べつにいいじゃん。ゆっこは?」
祐子「私はこの夏野菜の天丼いっときますか。そば屋であえてご飯ものチョイスって、どう?」
みお「ああ、かっこいいね」
祐子「でしょ、でしょう? それに季節限定だからね。いま逃したら、いつ食べられるかって話だよ」
みお「1年後じゃない?」
祐子「いやいやいや。みおちゃんは夢がないなー。大事なのは今だよ。ナウ!」
みお「ああ、そう」
祐子「まあ、みおちゃんにはちょい早かったかもね」
みお「はいはい」
祐子「すみませーん」
店員「ご注文をお伺いします」
祐子「ニシンそばとざるそばと、あと夏野菜のー、天丼で」
店員「ニシンそばとざるそばと夏野菜の天丼ですね。少々お待ちください」
みお「このお店、おそばもここで手打ちで作ってるんだって」
祐子「さすが、本格的だね。あ、この『そばがき』って何だろうね」
みお「そば粉を固めて、ぶにぶにしてるやつだよ」
祐子「へえー、そっかー」
店員「お待たせしましたー。ニシンそばと、ざるそばになります」
祐子「あ、先に食べてくれてていいよ」
みお「悪いね」
麻衣「冷めないうちに」
みお「もともと冷めてるよ」
祐子(やっぱ私のは限定メニューだからね。時間かけて、丁寧に作ってるんだな)
みお「ん? ゆっこの何か遅いね。天ぷら揚げるのに時間かかってるのかな」
祐子「意外と、いま夏野菜、採りにいってたりして」
みお「あっちゃー、そりゃ遅いわけだ」
祐子「ここ、一品料理もいろいろあるらしいよ」
みお「ほうなんだ
(=そうなんだ)
。・・・あ」
祐子「あっ・・・。はい!」
みお「違ったね」
麻衣「残念」
祐子「ガッテーーーム!!」
みお「ちょ、ゆっこ落ち着いて」
祐子「いられますか! 遅い! 遅すぎるよ! いくら老舗だからって、味は守っても心は守れないよ!」
みお「意味わかんないよ!」
祐子「こうなったら、絶対文句いってやる!」
店員「お待たせしましたー」
祐子「ちょっと遅すぎるんじゃな」(はっ!)「・・・どうも。あ、雑誌でも見てて。すぐ食べ終わるから」
――― かっこいいと思うもの ―――
祐子・みお「かっこいいと思うもの!」
男「うーん」
男「おお、そうきますか」
男たち「おおおっ」
祐子・みお「子供棋士!」
――― 日常の37 ―――
祐子(うーん・・・。蚊取りもベープもオーケー。しばらくすれば消えると思ったが、消えぬは深夜の最上川)「うりゃっ! ・・・はい! はい! はいーっ! ふう、一寸の蚊にも五分の魂っつってね。観念して安らかに眠りましょ、お前がな!! あ・・・。あああ。やあ! チェストーッ! ううあっ! つまらぬ殺生をしてしまった」(叩いても、叩いても、毎年毎年懲りもせず、もう何が何だかわからなくなってきたーっ!)「お母さん! ここは、この家はもうだめだ! 引っ越すしか、ない!!」
祐子母「あんた、何時だと思ってんのっ!? 静かに寝なさい! もう!」
――― Helvetica Standard ―――
天使ちゃん「ちらしずし。はい」
なまはげ「つ
ん
らすずす」
天使ちゃん「ノー。ち・ら・し・ず・し。はい」
なまはげ「つ・ら・す・ず・す」
天使ちゃん「ノン、ノン。ち」
なまはげ「ち」
天使ちゃん「ら」
なまはげ「ら」
天使ちゃん「し」
なまはげ「し」
天使ちゃん「ず」
なまはげ「ず」
天使ちゃん「し」
なまはげ「し」
天使ちゃん「イエース! ちらしずし。はい」
なまはげ「つらす
ん
ずす」
――― 我慢 ―――
――― 日常の38 ―――
はかせ「阪本、見て見てー! アイスのあたりが下に来てた」
阪本さん「ふーん」
はかせ「ふーんとは何か!」
なの「だめですよ、そんなもの食べてちゃ」
はかせ「そんなものとは何か!!」
なの「夕食、食べられなくなっちゃいますよ」
はかせ「オムライス」
阪本さん「だいたいアイスのあたりくらいで大騒ぎするなんて、まだまだ子供だな」
はかせ「ただのあたりじゃないもん! 下にきてた超ーレアだもん!」
阪本さん「上でも下でもあたりはあたりじゃねえか。そりゃしょっちゅう食ってりゃ当たるときもあるだろうよ。ったく、ガキは幸せでいいよな。あたりぐらいで大喜びしすぎだぜ。おっ、カニだーっ! こりゃ滅多にお目にかかれないスーパー・レアじゃねえか。こいつは最後にとっといてー、っと。お!」
なの「ごちそうさまでした。あれ? はかせ、全然食べてないじゃないですか。ひょっとして、お昼にお菓子いっぱい食べたんじゃないですか?」
はかせ「ごめんなさい・・・」
なの「あーん、もう、納戸のお菓子、どれだけ食べたんですか?」
はかせ「・・・全部」
なの「全部!? 今月分、全部食べたんですか!?」
はかせ「ひっひっひ」
なの「褒めてないです! まったく、もう・・・」
はかせ「だって阪本が食べろって言うから!」
なの「阪本さん!」
阪本さん「ええええっ!?」
はかせ「阪本が、夏は食べ物が腐りやすいって言うから」
阪本さん「それとこれとは別だろう」
はかせ「お菓子は別腹だって言うから」
阪本さん「お前は昼下がりのOLか!」
なの「阪本さん!」
阪本さん「お前も何、真に受けてんだよ! 俺はまったくの無実だ。クロかシロかっていえばシロなんだよ!」
はかせ「阪本は真っ黒だよ」
なの「そうですよ」
阪本さん「だーっ、それはもう生まれつきだ!」
なの「もういいです。これ以上言っても仕方ないです。というわけで、はかせのイチゴジュースはおあずけです」
はかせ「もうお菓子食べないから」
なの「だめです」
はかせ「アイスのあたり、あげるから」
なの「いりません」
はかせ「野菜もちゃんと食べるから」
なの「当たり前です!」
はかせ「・・・なののネジ取るからー」
なの「ええっ?」
なの「こ、今回だけは許しますけど、次やったら1ヶ月お菓子なしですよ」
はかせ「はーい!」
なの「じゃあ」
はかせ「わー」
なの(何か、いま渡したらすべてがうやむやに終わる気が!)「イチゴジュースはネジ取った後にしてください」
はかせ「えっ? うーん・・・。じゃあ、うしろ向いて」
なの「えっ? はいっ!」
なの「ぎゃーっ!」
はかせ「右手ははずれです」
なの「何でもう付けてんですか!」
はかせ「ひひひひひ」
なの「褒めてなーい! 大体はかせは適当すぎます。もう少し考えて行動してくださ・・・。聞いてなーい!」
――― まぁまぁの奇跡 ―――
「うー、これ、ちょうだい」「だめー」「かなりまぶしいですね」
男の子「じゃん」
全員「けん、ぽん!」
女の子「わああ! はい」
――― ヒトコトワドコトバ ―――
検索すると何でもでてくるなぁ・・・。
――― 日常の39 ―――
よしの「あ、みお」
みお「ん?」
よしの「ちょうどよかった」
みお「どうしたの、お姉?」
よしの「ちょっとお姉ちゃん、急用できちゃって、代わりに町内会の出し物、手伝ってきて欲しいんだけど」
みお「ええー。こういうの、お母さんに頼みなよ」
よしの「お母さん、友達とセパタクローいってるのよ。それにほら、バイト代1万円出るって。それじゃあ、よろしくね!」
みお「バイト代1万円はうれしいな。どうせ暇だし、行ってみるか」
男「今度ウィッグでとさかリーゼントにしてみたら?」
女「ええ、何それ、超かわいいじゃん」
みお(は、はめられたーーーっ!! 最悪だ。何だこれ、何なんだこれ。何で私がこんな破目に)
中之条さん「白いよー、白いよー。せいっ、いらっしゃい」
みお(しかも町内会の出し物が、路上で二人だけで大福売るって、これ・・・)
女「・・・女の子だよね」
みお(恥ずかしいよ!! これ、恥ずかしいよ!! みんな残念そうに私を見ていく。これで客引き、これがマスコット・キャラの大福君。目もなくて口もない、ただの白いお面。もはやこれ、大福君じゃないよ。大福だよ!! はっ、ちょっと待って。この大福フェア、フェアじゃねえよーーーっ!!!)
女の子「わああっ、あ・・・。ごめんなさ・・・。いやああああっ!!」
みお(完全にアウトだよ、これ)
まーちゃん「あー、何これ。気持ち悪(わり)い」
おさむ「はははははっ、えーい、食らえ!」
みお(やめて! 地味に痛いからやめて! ちょっと、下はプロテクトしてないから。下はプロテクトしてないから! ちょっ、こら)「やめろーーーっ!!」
まーちゃん「怒った。逃げろーーっ!」
おさむ「おーっ!」
まーちゃん「どうかしてるぜ!」
おさむ「逃げろーっ!」
みお(あー、もう。何だかなあ。ん? おんぎゃああああっ! ゆっこ!)
祐子「・・・くくくく、大福、大福・・・」
中之条さん「大福のイメージを壊さないでくれ」
みお(えーーーー)
中之条さん「もう見ちゃおれん。ほれ、早く脱げ。これだからバイトは。ぼーっと突っ立ってないで、店番のほうでもやったらどうだ? ええ?」
みお「はい」(バイト代1万円のためだ。我慢しよう)
中之条さん「十勝、小豆」
みお(帰りたい)
中之条さん「和三盆!」
みお(あーあ、家が恋しい。しっかし、これ売れてるのかなあ。ずいぶんきれいに整列してあるけど)
男「すみません」
みお(ん?)
男「これ、1個いくら?」
みお(お客さんだ)「あーっと・・・」(そういや、いくらで売ってんだろう?)「すいませーん、大福って1個・・・」
中之条さん「和三盆じゃだめなのか」
みお「あっ!」
中之条さん「逃げないぞ。俺は逃げない。イチゴなんかにゃ逃げないぞ!」
みお「あ、えー・・・無料でけっこうです」
男「おっ、ラッキー」
――― 蚊 ―――
なの「こら! ううう・・・」
ナレーション「東雲家は今日も平和であった」
――― 予告 ―――
「どうも! 王将よ。将棋といえば羽生さん。
ハブさんといえば
マングース
さん
。何か沖縄に旅行に行きたくなっちゃった。
ナンクルナイサー
! 次回の「日常」は第10話。お楽しみに!」
つ
ん
らすずす
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高崎先生「はい、これにてテスト終了」
生徒たち「おーっ! やったー!」「わあーっ!」
高崎先生(おお、すごい喜びようだな。それだけみんな精一杯、このテストに打ちこんでいたんだな。微笑ましいじゃないか)
男子生徒1「テストが終わったジャンケンポーン!」
男子生徒2「ジャンケンしてないだろ!」
女子生徒1「夢みたい! 私、夢みたい!」
女子生徒2「終わったのよ。すべてが終わったのよ!」
男子生徒3「うちの親から一人に一つずつ、米俵が贈られます」
男子生徒4「よっ、米問屋!」
女子生徒3「わたしたち、結婚しまーす!」
男子生徒5「よっしゃ! おい、みんな手伝え! せーの・・・」
高崎先生「どうなんってんだ、これは!」
生徒たち「わっしょい! わっしょい!」
――― 日常の35 ―――
よしの「あ、みお。おはよう。・・・ええっ!? いやいやいやいや。ほらほらほらほら! 『えっ? ちょ、何その格好』的な。もう、まだ怒ってるんでしょう。昨日、みおのモンブランに桂馬を刺したこと」
みお「まあ、食べられなくなったわけじゃないから別にいいけどさ・・・って、よかないわよ!! 人が楽しみにしてたモンブランに! 何何!? 何なの!? 意味わかんないよ! 何で桂馬刺したのよ!」
よしの「いやあ、何かかっこいいかなあ、と」
みお「面!」
よしの「相も変わらず、冗談通じないんだから」
みお(ったく、バカ姉(ねえ)。1日10個限定のモンブランだったのに。そうとも知らず、いつもいつもちょっかい出して。お姉も大学生になったんだから)
よしの「あ・・・」
みお(少しは人の痛みを知らなきゃだめだ。ま、しかしながら、今日の私は姉の愚行を許そうではないかというキャパを持ち合わせているのである。なぜなら、ひそかに隠しておいた1日5個限定のショートケーキがあるからで・・・。王手ーーーー!! 羽生ーー! 羽生、羽生、羽生! はっ! イチゴ! 昨日の夜から楽しみにしてた1日5個限定の! 私の、私のイチゴ!)「イチゴは!? ここのポゼッションのスイーツはーーーっ!?」
よしの(ふっ・・・。南ー無ー)
みお「胴っ!」
よしの「っつう」
みお「ああーーっ、もうバカ姉! イチゴのないケーキなんて、もはやパンじゃん! ただのあまいパンじゃん!」
よしの「ハッピー・バースデー・トゥー・ミー ハッピー・バースデー・トゥー・ミー ハッピー・バースデー・ディア私 ハッピー・バースデー・トゥー・ミー」
みお(お姉)
よしの(みお)「・・・っつう」
みお「あんた誕生日じゃないじゃん!」
――― 豆テスト ―――
――― 日常の36 ―――
祐子「ここって一回来てみたかったんだよねー」
みお「雑誌に載ってたんだって?」
祐子「そうそう。ほら、クーポンもばっちりですよ」
みお「いま出さなくても・・・」
麻衣「私、ニシンそば」
祐子「おおー、この暑いのに通ですな」
麻衣「ニシン抜きで」
祐子「あはははは、それじゃただのそばじゃん! ははは! ・・・あ。みおちゃん、何にするの?」
みお「普通にざるそばかな」
祐子「無難だね。いかにも素人が考えそうなこった」
みお「べつにいいじゃん。ゆっこは?」
祐子「私はこの夏野菜の天丼いっときますか。そば屋であえてご飯ものチョイスって、どう?」
みお「ああ、かっこいいね」
祐子「でしょ、でしょう? それに季節限定だからね。いま逃したら、いつ食べられるかって話だよ」
みお「1年後じゃない?」
祐子「いやいやいや。みおちゃんは夢がないなー。大事なのは今だよ。ナウ!」
みお「ああ、そう」
祐子「まあ、みおちゃんにはちょい早かったかもね」
みお「はいはい」
祐子「すみませーん」
店員「ご注文をお伺いします」
祐子「ニシンそばとざるそばと、あと夏野菜のー、天丼で」
店員「ニシンそばとざるそばと夏野菜の天丼ですね。少々お待ちください」
みお「このお店、おそばもここで手打ちで作ってるんだって」
祐子「さすが、本格的だね。あ、この『そばがき』って何だろうね」
みお「そば粉を固めて、ぶにぶにしてるやつだよ」
祐子「へえー、そっかー」
店員「お待たせしましたー。ニシンそばと、ざるそばになります」
祐子「あ、先に食べてくれてていいよ」
みお「悪いね」
麻衣「冷めないうちに」
みお「もともと冷めてるよ」
祐子(やっぱ私のは限定メニューだからね。時間かけて、丁寧に作ってるんだな)
みお「ん? ゆっこの何か遅いね。天ぷら揚げるのに時間かかってるのかな」
祐子「意外と、いま夏野菜、採りにいってたりして」
みお「あっちゃー、そりゃ遅いわけだ」
祐子「ここ、一品料理もいろいろあるらしいよ」
みお「ほうなんだ(=そうなんだ)。・・・あ」
祐子「あっ・・・。はい!」
みお「違ったね」
麻衣「残念」
祐子「ガッテーーーム!!」
みお「ちょ、ゆっこ落ち着いて」
祐子「いられますか! 遅い! 遅すぎるよ! いくら老舗だからって、味は守っても心は守れないよ!」
みお「意味わかんないよ!」
祐子「こうなったら、絶対文句いってやる!」
店員「お待たせしましたー」
祐子「ちょっと遅すぎるんじゃな」(はっ!)「・・・どうも。あ、雑誌でも見てて。すぐ食べ終わるから」
――― かっこいいと思うもの ―――
祐子・みお「かっこいいと思うもの!」
男「うーん」
男「おお、そうきますか」
男たち「おおおっ」
祐子・みお「子供棋士!」
――― 日常の37 ―――
祐子(うーん・・・。蚊取りもベープもオーケー。しばらくすれば消えると思ったが、消えぬは深夜の最上川)「うりゃっ! ・・・はい! はい! はいーっ! ふう、一寸の蚊にも五分の魂っつってね。観念して安らかに眠りましょ、お前がな!! あ・・・。あああ。やあ! チェストーッ! ううあっ! つまらぬ殺生をしてしまった」(叩いても、叩いても、毎年毎年懲りもせず、もう何が何だかわからなくなってきたーっ!)「お母さん! ここは、この家はもうだめだ! 引っ越すしか、ない!!」
祐子母「あんた、何時だと思ってんのっ!? 静かに寝なさい! もう!」
――― Helvetica Standard ―――
天使ちゃん「ちらしずし。はい」
なまはげ「つんらすずす」
天使ちゃん「ノー。ち・ら・し・ず・し。はい」
なまはげ「つ・ら・す・ず・す」
天使ちゃん「ノン、ノン。ち」
なまはげ「ち」
天使ちゃん「ら」
なまはげ「ら」
天使ちゃん「し」
なまはげ「し」
天使ちゃん「ず」
なまはげ「ず」
天使ちゃん「し」
なまはげ「し」
天使ちゃん「イエース! ちらしずし。はい」
なまはげ「つらすんずす」
――― 我慢 ―――
――― 日常の38 ―――
はかせ「阪本、見て見てー! アイスのあたりが下に来てた」
阪本さん「ふーん」
はかせ「ふーんとは何か!」
なの「だめですよ、そんなもの食べてちゃ」
はかせ「そんなものとは何か!!」
なの「夕食、食べられなくなっちゃいますよ」
はかせ「オムライス」
阪本さん「だいたいアイスのあたりくらいで大騒ぎするなんて、まだまだ子供だな」
はかせ「ただのあたりじゃないもん! 下にきてた超ーレアだもん!」
阪本さん「上でも下でもあたりはあたりじゃねえか。そりゃしょっちゅう食ってりゃ当たるときもあるだろうよ。ったく、ガキは幸せでいいよな。あたりぐらいで大喜びしすぎだぜ。おっ、カニだーっ! こりゃ滅多にお目にかかれないスーパー・レアじゃねえか。こいつは最後にとっといてー、っと。お!」
なの「ごちそうさまでした。あれ? はかせ、全然食べてないじゃないですか。ひょっとして、お昼にお菓子いっぱい食べたんじゃないですか?」
はかせ「ごめんなさい・・・」
なの「あーん、もう、納戸のお菓子、どれだけ食べたんですか?」
はかせ「・・・全部」
なの「全部!? 今月分、全部食べたんですか!?」
はかせ「ひっひっひ」
なの「褒めてないです! まったく、もう・・・」
はかせ「だって阪本が食べろって言うから!」
なの「阪本さん!」
阪本さん「ええええっ!?」
はかせ「阪本が、夏は食べ物が腐りやすいって言うから」
阪本さん「それとこれとは別だろう」
はかせ「お菓子は別腹だって言うから」
阪本さん「お前は昼下がりのOLか!」
なの「阪本さん!」
阪本さん「お前も何、真に受けてんだよ! 俺はまったくの無実だ。クロかシロかっていえばシロなんだよ!」
はかせ「阪本は真っ黒だよ」
なの「そうですよ」
阪本さん「だーっ、それはもう生まれつきだ!」
なの「もういいです。これ以上言っても仕方ないです。というわけで、はかせのイチゴジュースはおあずけです」
はかせ「もうお菓子食べないから」
なの「だめです」
はかせ「アイスのあたり、あげるから」
なの「いりません」
はかせ「野菜もちゃんと食べるから」
なの「当たり前です!」
はかせ「・・・なののネジ取るからー」
なの「ええっ?」
なの「こ、今回だけは許しますけど、次やったら1ヶ月お菓子なしですよ」
はかせ「はーい!」
なの「じゃあ」
はかせ「わー」
なの(何か、いま渡したらすべてがうやむやに終わる気が!)「イチゴジュースはネジ取った後にしてください」
はかせ「えっ? うーん・・・。じゃあ、うしろ向いて」
なの「えっ? はいっ!」
なの「ぎゃーっ!」
はかせ「右手ははずれです」
なの「何でもう付けてんですか!」
はかせ「ひひひひひ」
なの「褒めてなーい! 大体はかせは適当すぎます。もう少し考えて行動してくださ・・・。聞いてなーい!」
――― まぁまぁの奇跡 ―――
「うー、これ、ちょうだい」「だめー」「かなりまぶしいですね」
男の子「じゃん」
全員「けん、ぽん!」
女の子「わああ! はい」
――― ヒトコトワドコトバ ―――
検索すると何でもでてくるなぁ・・・。
――― 日常の39 ―――
よしの「あ、みお」
みお「ん?」
よしの「ちょうどよかった」
みお「どうしたの、お姉?」
よしの「ちょっとお姉ちゃん、急用できちゃって、代わりに町内会の出し物、手伝ってきて欲しいんだけど」
みお「ええー。こういうの、お母さんに頼みなよ」
よしの「お母さん、友達とセパタクローいってるのよ。それにほら、バイト代1万円出るって。それじゃあ、よろしくね!」
みお「バイト代1万円はうれしいな。どうせ暇だし、行ってみるか」
男「今度ウィッグでとさかリーゼントにしてみたら?」
女「ええ、何それ、超かわいいじゃん」
みお(は、はめられたーーーっ!! 最悪だ。何だこれ、何なんだこれ。何で私がこんな破目に)
中之条さん「白いよー、白いよー。せいっ、いらっしゃい」
みお(しかも町内会の出し物が、路上で二人だけで大福売るって、これ・・・)
女「・・・女の子だよね」
みお(恥ずかしいよ!! これ、恥ずかしいよ!! みんな残念そうに私を見ていく。これで客引き、これがマスコット・キャラの大福君。目もなくて口もない、ただの白いお面。もはやこれ、大福君じゃないよ。大福だよ!! はっ、ちょっと待って。この大福フェア、フェアじゃねえよーーーっ!!!)
女の子「わああっ、あ・・・。ごめんなさ・・・。いやああああっ!!」
みお(完全にアウトだよ、これ)
まーちゃん「あー、何これ。気持ち悪(わり)い」
おさむ「はははははっ、えーい、食らえ!」
みお(やめて! 地味に痛いからやめて! ちょっと、下はプロテクトしてないから。下はプロテクトしてないから! ちょっ、こら)「やめろーーーっ!!」
まーちゃん「怒った。逃げろーーっ!」
おさむ「おーっ!」
まーちゃん「どうかしてるぜ!」
おさむ「逃げろーっ!」
みお(あー、もう。何だかなあ。ん? おんぎゃああああっ! ゆっこ!)
祐子「・・・くくくく、大福、大福・・・」
中之条さん「大福のイメージを壊さないでくれ」
みお(えーーーー)
中之条さん「もう見ちゃおれん。ほれ、早く脱げ。これだからバイトは。ぼーっと突っ立ってないで、店番のほうでもやったらどうだ? ええ?」
みお「はい」(バイト代1万円のためだ。我慢しよう)
中之条さん「十勝、小豆」
みお(帰りたい)
中之条さん「和三盆!」
みお(あーあ、家が恋しい。しっかし、これ売れてるのかなあ。ずいぶんきれいに整列してあるけど)
男「すみません」
みお(ん?)
男「これ、1個いくら?」
みお(お客さんだ)「あーっと・・・」(そういや、いくらで売ってんだろう?)「すいませーん、大福って1個・・・」
中之条さん「和三盆じゃだめなのか」
みお「あっ!」
中之条さん「逃げないぞ。俺は逃げない。イチゴなんかにゃ逃げないぞ!」
みお「あ、えー・・・無料でけっこうです」
男「おっ、ラッキー」
――― 蚊 ―――
なの「こら! ううう・・・」
ナレーション「東雲家は今日も平和であった」
――― 予告 ―――
「どうも! 王将よ。将棋といえば羽生さん。ハブさんといえばマングースさん。何か沖縄に旅行に行きたくなっちゃった。ナンクルナイサー ! 次回の「日常」は第10話。お楽しみに!」
つんらすずす