Haruhi(Japanese)>01. 涼宮ハルヒの憂鬱 Ⅰ
キョン :
サンタクロース を いつまで 信じ[しんじ] ていたか 、 なんて 事[こと] は 、 他愛[たあい] もない 世間話[せけんばなし] にも ならない くらいの 、 どうでも いい 話[はなし] だが 、 それでも 、 俺[おれ] が いつまで サンタ など という 想像上[そうぞうじょう] の 赤[あか] 服[ふく] じいさん を 信じ[しんじ] て いたかと いうと 、 これは 確信[かくしん] を 持って[もって] 言え[いえ] るが 、 最初[さいしょ] から 信じ[しんじ] てなど いなかった 。
キョン :
幼稚園[ようちえん] の クリスマスイベント に 現れ[あらわれ] た サンタ は 偽[にせ] サンタ だと 理解[りかい] していたし 、 お 袋[ふくろ] が サンタ に キス を している 所[ところ] を 目撃[もくげき] した 訳[わけ] でも ないのに 、 クリスマス にしか 仕事[しごと] を しない ジジイ の 存在[そんざい] を 疑って[うたがって] いた 賢し[さかし] い 俺[おれ] なのだが 、 はてさて 、 宇宙人[うちゅうじん] や 未来人[みらいじん] や 幽霊[ゆうれい] や 妖怪[ようかい] や 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] や 悪[あく] の 組織[そしき] や 、 それらと 戦う[たたかう] アニメ 的[てき] 特撮[とくさつ] 的[てき] 漫画的[まんがてき] ヒーロー 達[たち] が 、 この 世に[よに] 存在[そんざい] しないのだ ということに 気づ[きづ] いたのは そうとう 後に[あとに] なってから だった 。
キョン :
いや 、 本当[ほんとう] は 気付い[きづい] ていたのだろう 。 ただ 気付き[きづき] たく なかっただけなのだ 。 俺[おれ] は 心[こころ] の 底[そこ] から 、 宇宙人[うちゅうじん] や 未来人[みらいじん] や 幽霊[ゆうれい] や 妖怪[ようかい] や 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] や 、 悪[あく] の 組織[そしき] が 目の前[めのまえ] に ふらりと 出て来て[でてきて] くれること を 望ん[のぞん] でいたのだ 。 しかし ! 現実[げんじつ] ってのは 意外[いがい] と 厳し[きびし] い ! 世界[せかい] の 物理法則[ぶつりほうそく] が 良く[よく] 出来て[できて] いる 事[こと] に 感心[かんしん] しつつ 、 いつしか 俺[おれ] は 、 テレビ の UFO 特番[とくばん] や 心霊[しんれい] 特集[とくしゅう] を そう 熱心[ねっしん] に 観な[みな] くなっていた 。 宇宙人[うちゅうじん] ? 未来人[みらいじん] ? 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] ? そんなの 居る[いる] 訳[わけ] ねえ 、 でも 、 ちょっと 居て[いて] 欲しい[ほしい] 、 みたいな 最大公約数的[さいだいこうやくすうてき] なこと を 考え[かんがえ] る 位[くらい] まで 、 俺[おれ] も 成長し[せいちょうし] たのさ 。
キョン :
中学[ちゅうがく] を 卒業[そつぎょう] する 頃に[ころに] は 、 俺[おれ] は もう そんな 餓鬼[がき] な 夢[ゆめ] を 見る[みる] 事[こと] からも 卒業[そつぎょう] して 、 この 世の[よの] 普通[ふつう] さにも 慣れ[なれ] ていた 。 俺[おれ] は 大した[たいした] 感慨[かんがい] もなく 高校生[こうこうせい] になり 、 そいつと 出会った[であった] 。
キョン :
これから 一年間[いちねんかん] 、 よろしく 、 お 願い[ねがい] します。
ハルヒ :
東中[ひがしちゅう] 出身[しゅっしん] 、 涼宮[すずみや] ハルヒ 。 ただの 人間[にんげん] には 興味[きょうみ] ありません 。 この 中に[なかに] 、 宇宙人[うちゅうじん] 、 未来人[みらいじん] 、 異世界人[いせかいじん] 、 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] が 居た[いた] ら 、 あたしの 所[ところ] に 来な[きな] さい ! 以上[いじょう] !
キョン :
これ 、 笑う[わらう] とこ ?
キョン :
偉い[えらい] 美人[びじん] が そこに 居た[いた] 。
キョン :
あっ …。
教師[きょうし] :
あ ー 、 では 次[つぎ] 。
キョン :
誰も[だれも] が 冗談[じょうだん] だと 思った[おもった] だろう 。 結果[けっか] から 言う[いう] とそれは ギャグ でも 笑い所[わらいどころ] でも なかった 。 ハルヒ はいつも 大[おお] マジ なのだ 。
谷口[たにぐち]:
東中[ひがし中] から 来ま[きま] した 谷口[たにぐち] です 。 趣味[しゅみ] は ラジオ 番組[ばんぐみ] への 葉書[はがき] の 投稿[とうこう] です 。
キョン :
こうして 俺達[おれたち] は 出会っち[であっち] まった 。 しみじみと 思う[おもう] 。 偶然[ぐうぜん] だと 信じ[しんじ] たいと 。
キョン :
涼宮[すずみや] ハルヒ は 、 黙って[だまって] じっと 座って[すわって] いる 限り[かぎり] では 、 一[いち] 美少女[びしょうじょ] 高校生[こうこうせい] に しか 見え[みえ] なかった 。 たまたま 席[せき] がまん 前[まえ] だった という 地[ち] の 利[り] を 活か[いか] して 、 お 近づ[ちかづ] きに なって おくのも いいかなと 、 一瞬[いっしゅん] 、 血迷った[ちまよった] 俺[おれ] を 誰が[だれが] 責め[せめ] られよう 。
キョン :
なあ 、 しょっぱなの 自己紹介[じこしょうかい] のあれ 、 どの 辺り[あたり] まで 本気[ほんき] だったんだ ?
ハルヒ :
しょっぱなの あれって 何[なに] ?
キョン :
いや 、 だから 宇宙人[うちゅうじん] が どうとか 。
ハルヒ :
あんた 宇宙人[うちゅうじん] なの ?
キョン :
違う[ちがう] けどさ 。
ハルヒ :
違う[ちがう] けど 、 何[なん] なの ?
キョン :
いや 、 何で[なんで] もない 。
ハルヒ :
だったら 話し[はなし] かけないで 。 時間[じかん] の 無駄[むだ] だから 。
男子生徒[だんしせいと] :
気に[きに] すんなって 。
キョン :
後で[あとで] 分か[わか] った 事[こと] だが 、 そいつらは 全員[ぜんいん] 、 ハルヒ と 同じ[おなじ] 中学[ちゅうがく] 出身[しゅっしん] だった 。
谷口[たにぐち] :
もし あいつに 気が[きが] あるんだったら 、 悪い[わるい] 事[こと] は 言わ[いわ] ん 。 やめとけ 。 中学[ちゅうがく] で 涼宮[すずみや] と 三年[さんねん] 間[かん] 同じ[おなじ] クラス だっから 良く[よく] 知って[しって] るんだがな 、 あいつの 奇人[きじん] ぶりは 常軌[じょうき] を 逸し[いっし] ている 。
国木田[くにきだ] :
あの 自己紹介[じこしょうかい] ?
谷口[たにぐち] :
そう 。 中学時代[ちゅうがくじだい] にも 訳[わけ] の 分か[わか] らん 事[こと] を 散々[さんざん] やり 倒し[たおし] ていたな 。 有名[ゆうめい] なのが 「 校庭[こうてい] 落書き[らくがき] 事件[じけん] 」。
キョン :
何だ[なんだ] そりゃ 。
谷口[たにぐち] :
石灰[せっかい] で 白線[はくせん] 引く[ひく] 道具[どうぐ] があるだろ ? あれ 何つ[なんつ] うんだっけ ? あ 、 まあいいや 。 それで 校庭[こうてい] に でかでかと けったいな 絵文字[えもじ] を 書き[かき] やがった 事[こと] がある 。 しかも 夜中[よなか] の 学校[がっこう] に 忍び込ん[しのびこん] で 。
国木田[くにきだ] :
ああ 。 それ 見た[みた] 覚え[おぼえ] あるなあ 。 確か[たしか] 新聞[しんぶん] の 地方[ちほう] 欄[らん] に 載って[のって] なかった ? 出来[でき] 損な[そこな] いの ナスカ の 地上[ちじょう] 絵[え] みたいなの 。
キョン :
その 犯人[はんにん] が あいつ だったって 訳[わけ] か。
谷口[たにぐち] :
本人[ほんにん] がそう 言った[いっった] んだから 間違い[まちがい] ない 。 朝[あさ] 、 教室[きょうしつ] に 行った[いった] ら 、 机[つくえ] が 全部[ぜんぶ] 廊下[ろうか] に 出さ[ださ] れてた 事[こと] も あったなあ 。 校舎[こうしゃ] の 屋上[おくじょう] に 星[ほし] マーク を ペンキ で 描い[えがい] たり 、 学校[がっこう] 中に[なかに] 変な[へんな] お 札[ふだ] を べたべた 貼り[はり] まくられた 事[こと] もあった 。 キョンシー が 顔[かお] に 貼っ付[はっつ] けているような 奴[やつ] な 。
キョン :
何[なに] やってるんだ 、 あいつ ?
谷口[たにぐち] :
意味[いみ] 分か[わか] んねえよ 。 でもなあ 。 あいつ もてるんだよ なあ 。 なんせ 面[つら] が 良い[いい] しさ 。 おまけに スポーツ 万能[ばんのう] で 成績[せいせき] も どちらか といえば 優秀[ゆうしゅう] なんだ 。 ちょっとばかし 変人[へんじん] でも 、 黙って[だまって] 立って[たって] たら 、 んなこと 分か[わか] んねえし 。
国木田[くにきだ] :
それにも 何か[なにか] エピソード が あるの ?
谷口[たにぐち] :
一時期[いちじき] は 取っ替え[とっかえ] 引っ替[ひっ替] え ってやつだったなあ 。 俺[おれ] の 知る[しる] 限り[かぎり] 一番[いちばん] 長く[ながく] 続い[つづい] て 一週間[いっしゅうかん] 。 最短[さいたん] では 告白[こくはく] された 五分[ごふん] 後に[ごに] 破局[はきょく] してた 、 なんてのも あったらしい 。
ハルヒ :
普通[ふつう] の 人間[にんげん] の 相手[あいて] を している 暇[ひま] は ないの !
谷口[たにぐち] :
だったら オーケー するなっての 。
谷口[たにぐち] :
聞い[きい] た 話[はなし] だって ! マジ で 。 なんでか 知ら[しら]ねえけど 、 告[こく] られて 断る[ことわる] って 事[こと] を しねえんだよ あいつは 。 だからな 、 お 前[まえ] が 変な[へんな] 気を[きを] 起こ[おこ] す 前[まえ] に 言って[いっって] おいてやる 。 止め[やめ] とけ 。
キョン :
止め[やめ] とくも 何も[なにも] 、 そんな 気は[きは] 無い[ない] んだが 。
谷口[たにぐち] :
俺[おれ] だったら そうだなあ 、 この クラス での 一押し[いちおし] は 、 あいつ だな 。
谷口[たにぐち] :
朝倉[あさくら] 涼子[りょうこ] 。 一年[いちねん] の 女[おんな] の 中[なか] でも ベスト スリー には 確実[かくじつ] に 入る[はいる] ねえ 。
キョン :
一年[いちねん] の 女子[じょし] 全員[ぜんいん] を チェック でも したのか ?
谷口[たにぐち] :
おうよ ! A から D まで ランク 付け[づけ] して 、 その 内[うち] A ランク の 女[おんな] は フルネーム で 覚え[おぼえ] たぜ 。
国木田[くにきだ] :
朝倉[あさくら] さん が その A な 訳[わけ] ?
谷口[たにぐち] :
AA ランク プラス だな 。 あれは きっと 性格[せいかく] まで 良い[いい] に 違い[ちがい] ない 。
男子生徒[だんしせいと] :
速[はえ] ぇ 。
キョン :
この 時期[じき] 、 涼宮[すずみや] ハルヒ もまだ 大人[おとな] しい 頃合[ころあい] いで 、 俺[おれ] にとっても 心[こころ] 休ま[やすま] る 月[つき] だった 。 しかしながら ハルヒ の 奇矯[ききょう] な 振る舞い[ふるまい] は 、 この 頃[ころ] から 徐々[じょじょ] に 片鱗[へんりん] を 見せ[みせ] ていたと 言う[いう] べき だろう 。
キョン :
とういう 訳[わけ] で 片鱗[へんりん] その 一[いち] 。 髪型[かみがた] が 毎日[まいにち] 変わ[かわ] る 。 月[げつ] 、 火[か] 、 水[すい] 、 木[もく] 、 金[きん] 、 曜日[ようび] が 進む[すすむ] ごとに 髪[かみ] を 結ぶ[むすぶ] 箇所[かしょ] が 増え[ふえ] ている 。 月曜日[げつようび] に リセット された 後[あと] は 金曜日[きんようび] まで 一つ[ひとつ] づつ 。 果た[はた] して 日曜日[にちようび] は どんな 頭[あたま] に なって いるんだ ? 見て[みて] みたい 気も[きも] する 。
キョン :
片鱗[へんりん] その 二[に] 。 体育[たいいく] の 授業[じゅぎょう] は 男女別[だんじょべつ] に 行わ[おこなわ] れる 。 着替え[きがえ] は 女[おんな] が 奇数[きすう] クラス 、 男[おとこ] が 偶数[ぐうすう] クラス に 移動[いどう] して 行う[おこなう] ことに なって いるの だが 、 まだ 男子[だんし] が 残って[のこって] いるにも 関わ[かかわ] らず 、 やおら セーラー 服[ふく] を 脱ぎ[ぬぎ] だし やがった !
女生徒[じょせいと] :
キャー !
キョン :
どうやら 男子生徒[だんしせいと] の 事[こと] は じゃがいも 位[くらい] にしか 思って[おもって] ない らしい 。
キョン :
片鱗[へんりん] その 三[さん] 。
キョン :
呆れ[あきれ] る 事[こと] に ハルヒ はこの 学校[がっこう] に 存在[そんざい] する あらゆる クラブ に 仮[かり] 入部[にゅうぶ] していたのだった 。 運動[うんどう] 部[ぶ] からは 例外[れいがい] なく 熱心[ねっしん] に 入部[にゅうぶ] を 勧め[すすめ] られ 、 その 全て[すべて] を 断って[たって] 毎日[まいにち] 参加[さんか] する 部活動[ぶかつどう] を 気まぐれ[きまぐれ] に 変え[かえ] た 挙げ句[あげく] 、 結局[けっきょく] どこにも 入部[にゅうぶ] する 事[こと] は 無か[なか] った 。 何[なに] が したいんだろうなあ 、 こいつはよ 。
キョン :
そんなこんな を しながら ゴールデンウィーク が 明け[あけ] た 一日目[いちにちめ] 。
谷口[たにぐち] :
よう 、 キョン 。
キョン :
よう 。
キョン :
ちなみに 、 キョン っていうのは 俺[おれ] のあだ 名[な] だ 。 いい 加減[かげん] に 止め[やめ] て もらいたいのだが 。
谷口[たにぐち] :
ゴールデンウィーク どこか 行った[いった] か ?
キョン :
妹[いもうと] 連れ[つれ] て 祖母[そぼ] さんとこ 。
谷口[たにぐち] :
湿気[しけ] て やんなあ 。
キョン :
ああ 。 今日は[きょうは] 水曜日[すいようび] か 。
キョン :
などと 考え[かんがえ] つつ 、 魔[ま] が 差し[さし] て しまったんだろう 。 それ 以外[いがい] に 思い[おもい] 当た[あた] る ふしがない 。
キョン :
曜日[ようび] で 髪型[かみがた] 変え[かえ] るのは 、 宇宙人[うちゅうじん] 対策[たいさく] か ?
キョン :
涼宮[すずみや] ハルヒ に 話し[はなし] かけていた 。
ハルヒ :
いつ 気付い[きづい] たの ?
キョン :
う ー ん 。 ちょっと 前[まえ] 。
ハルヒ :
あっそう 。
ハルヒ :
あたし 思う[おもう] んだけど 、 曜日[ようび] によって 感じ[かんじ] る イメージ って 、 それぞれ 異なる[ことなる] 気が[きが] するのよね 。 色[いろ] で 言う[いう] と 月曜[げつよう] が 黄色[きいろ] で 火曜[かよう] が 赤[あか] で 水曜[すいよう] が 青[あお] で 、 木曜[もくよう] が 緑[みどり] 。 金曜[きんよう] が 金色[きんいろ] で 土曜[どよう] が 茶色[ちゃいろ] 。 日曜[にちよう] は 白[しろ] よね 。
キョン :
初めて[はじめて] 会話[かいわ] が 成立[せいりつ] した ような 気が[きが] する 。
キョン :
なんとなく 分か[わか] るような 気も[きも] するが 。
キョン :
つう 事[こと] は 数字[すうじ] にしたら 月曜日[げつようび] が ゼロ で 日曜[にちよう] が 六[ろく] なのか ?
ハルヒ :
そ 。
キョン :
俺[おれ] は 月曜[げつよう] は 一[いち] って 感じ[かんじ] が するけどなあ 。
ハルヒ :
あんたの 意見[いけん] なんか 誰も[だれも] 訊い[きい] てない !
キョン :
そうかい ?
ハルヒ :
あたし 、 あんた と どこかで 会った[あった] ことがある ? ずっと 前[まえ] に 。
キョン :
いや 。
キョン :
きっかけ 。 なんてのは 大抵[たいてい] どうって 事[こと] ないもの なんだろう けども 、 まさしくこれが きっかけに なったんだろうな 。 しかし ハルヒ が まともな 返答[へんとう] を 寄越し[よこし] た 事[こと] は 驚き[おどろき] だ 。 てっきり 、 うるさい 、 馬鹿[ばか] 、 黙れ[だまれ] 、 どうでも いいでしょ ンなこと 、 と 言わ[いわ] れるもの ばかりだと 思って[おもって] いた からなあ 。
キョン :
だから 、 ハルヒ が 翌日[よくじつ] 、 長か[ながか] った 髪[かみ] を ばっさり 切って[きって] 登場[とうじょう] した 時に[ときに] は 、 結構[けっこう] 俺[おれ] は 動揺[どうよう] した 。 それにしたって 俺[おれ] が 指摘[してき] した 次の[つぎの] 日[にち] に 短く[みじかく] するってのも 短絡的[たんらくてき] 過ぎな[すぎな] いか ? おい 。
ハルヒ :
別に[べつに] 。
キョン :
あれ 以来[いらい] 、 ホームルーム 前[まえ] の 僅か[わずか] な 時間[じかん] に ハルヒ と 話す[はなす] のが ちょっとした 日課[にっか] に なりつつあった 。
キョン :
ちょいと 小耳[こみみ] に 挟ん[はさん] だんだけどな 、 付き合う[つきあう] 男[おとこ] 、 全部[ぜんぶ] 振った[ふった] って 本当[ほんとう] か ?
ハルヒ :
なんで あんたに そんな 事[こと] 言わ[いわ] れなくちゃ いけないのよ 。 何を[なにを] 聞い[きい] たか 知ら[しら] ないけど 、 まあいいわ 。 たぶん 全部[ぜんぶ] 本当[ほんとう] だから 。
キョン :
一人[ひとり] くらい 、 まともに 付き合お[つきあお] う とか 思う[おもう] 奴[やつ] が いなかったのか ?
ハルヒ :
全然[ぜんぜん] 駄目[だめ] 。 どいつも こいつも 、 アホ らしいほど まともな 奴[やつ] だったわ 。 宇宙人[うちゅうじん] でも 未来人[みらいじん] でも 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] でもないし 。
キョン :
そりゃ 普通[ふつう] そうだろう 。
ハルヒ :
あと 、 告白[こくはく] が ほとんど 電話[でんわ] だったのは 何[なん] なの あれ ?! そういう 大事[だいじ] な 事[こと] は 面[めん] と 向か[むか] って 言い[いい] なさいよ !
キョン :
まあ そうかな 。 俺[おれ] なら どこかに 呼び出し[よびだし] て 言う[いう] かな 。
キョン :
一応[いちおう] 、 同意[どうい] しておこう 。
ハルヒ :
そんなことは どうでも いいのよ !
キョン :
どっち なんだよ 。
ハルヒ :
問題[もんだい] はね 、 くだらない 男[おとこ] しかこの 世に[よに] 存在[そんざい] しないのか 、 どうなの 、 って 事[こと] よ 。 本当[ほんとう] は 中学時代[ちゅうがくじだい] は ずっと 苛々[いらいら] しっぱなし だった 。
キョン :
じゃ 、 どんな 男[おとこ] なら 良か[よか] ったんだ ? やっぱり 宇宙人[うちゅうじん] か ?
ハルヒ :
宇宙人[うちゅうじん] 、 もしくはそれに 準じ[じゅんじ] る 何か[なんか] ね 。 とにかく 、 普通[ふつう] の 人間[にんげん] で なければ 、 男[おとこ] だろうが 女[おんな] だろうが 。
キョン :
どうして そんなに 、 人間[にんげん] 以外[いがい] の 存在[そんざい] に こだわるんだ ?
ハルヒ :
そっちの 方が[ほうが] 面白い[おもしろい] じゃないの 。
谷口[たにぐち] :
おい キョン ! お 前[まえ] どんな 魔法[まほう] を 使った[つかった] んだ ?
キョン :
何の[なんの] 話[はなし] だ ?
谷口[たにぐち] :
俺[おれ] 、 涼宮[すずみや] が あんなに 長い[ながい] 間[あいだ] 喋って[しゃべって] るの 、 初めて[はじめて] 見る[みる] ぞ 。 お 前[まえ] 何[なに] 言った[いった] んだ ?
キョン :
さて 何だ[なんだ] ろう 。 適当[てきとう] な 事[こと] しか 聞い[きい] てない ような 気が[きが] するんだが 。
谷口[たにぐち] :
驚天動地[きょうてんどうち] だ 。
国木田[くにきだ] :
昔[むかし] から キョン は 変な[へんな] 女[おんな] が 好き[すき] だからね 。
キョン :
誤解[ごかい] を 招く[まねく] ような 事[こと] を 言う[いう] な 。
朝倉[あさくら] :
私[わたし] も 聞き[きき] たいな 。 私[わたし] が いくら 話し[はなし] かけても なーんも 答え[こたえ] て くれない 涼宮[すずみや] さんが 、 どうしたら 話す[はなす] ように なるのか 。 コツ でもあるの ?
キョン :
分か[わか] らん 。
朝倉[あさくら] :
ふーん 。 でも 安心し[あんしんし] た 。 涼宮[すずみや] さん 、 いつまでも クラス で 孤立[こりつ] した ままじゃ 困る[こまる] もんね 。 一人[ひとり] でも 友達[ともだち] が 出来た[できた] のは 良い[いい] ことよね 。
キョン :
友達[ともだち] ね …。
朝倉[あさくら] :
その 調子[ちょうし] で 涼宮[すずみや] さん を クラス に 溶け[とけ] 込め[こめ] る ように してあげてね 。 せっかく 一緒の[いっしょの] クラス に なったんだから 、 みんな 仲良く[なかよく] して いきたいじゃない ? よろしくね 。
キョン :
と 言わ[いわ] れてもな 。
朝倉[あさくら] :
これから 何か[なにか] 伝え[つたえ] る 事[こと] があったら 、 あなたから 伝え[つたえ] て もらうように するから 。
キョン :
だから 待て[まて] よ ! 俺[おれ] はあいつの スポークスマン でも 何で[なんで] もないぞ 。
朝倉[あさくら] :
お 願い[ねがい] 。
谷口[たにぐち] :
キョン 、 俺達[おれたち] 友達[ともだち] だよな ?
キョン :
どいつも こいつも アホ だらけだ 。
キョン :
席替え[せきかえ] だそうだ 。 ゴーフル の 缶[かん] に 入れ[いれ] られた 籤[くじ] を 引い[ひい] た 俺[おれ] は 、 窓際[まどぎわ] 後方[こうほう] 二番目[にばんめ] という なかなかの ポジション を 獲得[かくとく] した 。 さらば ハルヒ 、 フォーエバー 。
キョン :
偶然[ぐうぜん] だよな 。
キョン :
全部[ぜんぶ] の クラブ に 入って[はいって] みたってのは 本当[ほんとう] なのか ? どこか 面白そ[おもしろそ] うな 部[ぶ] があったら 教え[おしえ] てくれよ ?
ハルヒ :
ない 。 全然[ぜんぜん] 。
キョン :
即答[そくとう] しやがった 。
ハルヒ :
全然[ぜんぜん] ない !
キョン :
どうやら こいつの 口癖[くちぐせ] は 「 全然[ぜんぜん] 」 のようだ 。
ハルヒ :
高校[こうこう] に 入れ[はいれ] ば 少し[すこし] は ましかと 思った[おもった] けど 、 これじゃ 義務教育[ぎむきょういく] 時代[じだい] と なんも 変わ[かわ] んないわね 。 入る[はいる] 学校[がっこう] 間違え[まちがえ] たかしら 。
キョン :
何を[なにを] 基準[きじゅん] に 学校[がっこう] 選び[えらび] を しているの だろう 。
ハルヒ :
ミステリ 研究会[けんきゅうかい] ってのが あったのよ 。
キョン :
へえ 。 どうだった ?
ハルヒ :
笑わ[わらわ] せるわ 。 今まで[いままで] 一回[いっかい] も 事件[じけん] らしい 事件[じけん] に 出く[でく] わさなかったって 言う[いう] んだもの 。 部員[ぶいん] も ただの ミステリー 小説[しょうせつ] オタク ばっかで 、 名探偵[めいたんてい] みたいな 奴[やつ] も いないし 。
キョン :
そりゃ そうだろう 。
ハルヒ :
超常現象[ちょうじょうげんしょう] 研究会[けんきゅうかい] には ちょっと 期待し[きたいし] てたんだけど 、 ただの オカルトマニア の 集まり[あつまり] でしか ないのよ 。 どう 思う[おもう] ?!
キョン :
どうも 思わ[おもわ] ん 。
ハルヒ :
あー もう つまんない ! これだけ あれば 少し[すこし] は 変な[へんな] クラブ があっても 良さ[よさ] そうなのに
キョン :
無い[ない] ものは しようが ないだろ ? 結局[けっきょく] の 所[ところ] 、 人間[にんげん] は そこに あるもので 満足[まんぞく] しなければ ならないのさ 。 言う[いう] なれば 、 それ を 出来な[できな] い 人間[にんげん] が 発見[はっけん] やら 発明[はつめい] やら を して 文明[ぶんめい] を 発達[はったつ] させて きたんだ 。 空[そら] を 飛び[とび] たいと 思った[おもった] から 飛行機[ひこうき] 作った[つくった] し 、 楽[らく] に 移動[いどう] したいと 思った[おもった] から 、 車[くるま] や 列車[れっしゃ] を 生み出し[うみだし] たんだ 。 でもそれは 、 一部[いちぶ] の 人間[にんげん] の 才覚[さいかく] や 発想[はっそう] に よって 初めて[はじめて] 生じ[しょうじ] たものであり 、 つまり 、 天才[てんさい] が それ を 可能に[かのうに] した 訳[わけ] だ 。 凡人[ぼんじん] たる 我々[われわれ] は 人生[じんせい] を 凡庸[ぼんよう] に 過ご[すご] すのが 一番[いちばん] であってだな …。
ハルヒ :
うるさい !
キョン :
もしかしたら 、 この 会話[かいわ] が ネタ 振り[ふり] だったのかも 知れ[しれ] ない 。
キョン :
それは 突然[とつぜん] やってきた 。
キョン :
何[なに] しやがる !
ハルヒ :
気が[きが] ついた !
キョン :
何[なに] に ?
ハルヒ :
どうして こんな 簡単[かんたん] な 事[こと] に 気が[きが] つかなかったの かしら !
キョン :
何[なに] が 。
ハルヒ :
無い[ない] んだったら 、 自分[じぶん] で 作れ[つくれ] ば いいのよ 。
キョン :
だから 、 何を[なにを] ?
ハルヒ :
部活[ぶかつ] よ !
キョン :
分か[わか] った 。 まあ 今[いま] は 落ち着け[おちつけ] 。
ハルヒ :
何[なに] その 反応[はんのう] 。 もうちょっと あんたも 喜び[よろこび] なさいよ 、 この 発見[はっけん] を 。
キョン :
今[いま] は 授業中[じゅぎょうちゅう] だ 。
ハルヒ :
協力[きょうりょく] しなさい 。
キョン :
カツアゲ されている 様な[ような] 気分[きぶん] だぜ 。 何を[なにを] 協力[きょうりょく] するって ?
ハルヒ :
あたし の 新[しん] クラブ 作り[つくり] よ !
キョン :
なぜ 俺[おれ] がお 前[まえ] の 思い[おもい] つきに 協力[きょうりょく] しなければ ならんのか 、 それ を まず 教え[おしえ] てくれ 。
ハルヒ :
あたしは 部室[ぶしつ] と 部員[ぶいん] を 確保[かくほ] するから 、 あんたは 学校[がっこう] に 提出[ていしゅつ] する 書類[しょるい] を 揃え[そろえ] なさい 。
キョン :
聞い[きい] ちゃいねえ 。
キョン :
何の[なんの] クラブ を 作る[つくる] つもり なんだ ?
ハルヒ :
どうでも いいじゃないの そんなの 。 とりあえず まず 作る[つくる] のよ 。 いい ? 今日[きょう] の 放課後[ほうかご] までに 調べ[しらべ] ておいて 。 あたしも それまでに 部室[ぶしつ] を 探し[さがし] ておくから ! いいわね ?!
キョン :
同好会[どうこうかい] の 新設[しんせつ] に 伴う[ともなう] 規定[きてい] 。 人数[にんずう] 、 五人[ごにん] 以上[いじょう] 。 顧問[こもん] の 教師[きょうし] 、 名称[めいしょう] 、 責任者[せきにんしゃ] 、 活動内容[かつどうないよう] を 決定[けってい] し
… 調べ[しらべ] る までも なかった 。 生徒手帳[せいとてちょう] の 後ろ[うしろ] の 方[ほう] にそう 書い[かい] てある 。
キョン :
だが 賭け[かけ] ても いいが 、 ハルヒ の 考え[かんがえ] る 内容[ないよう] が 「 創造的[そうぞうてき] かつ 活力[かつりょく] ある 学校生活[がっこうせいかつ] を 送る[おくる] のに 相応しい[ふさわしい] ものに なる 事[こと] はないだろう 。
キョン :
ちよっと 待て[まて] 、 待た[また] 、 待た[また] …
ハルヒ :
これから この 部屋[へや] が 我々[われわれ] の 部室[ぶしつ] よ !
キョン :
ちょい 待て[まて] 。 どこなんだよ 、 ここは 。
ハルヒ :
文化部[ぶんかぶ] の 部室棟[ぶしつとう] よ 。 美術部[びじゅつぶ] や 吹奏楽部[すいそうがくぶ] なら 美術室[びじゅつしつ] や 音楽室[おんがくしつ] が あるでしょ 。 そういう 特別[とくべつ] 教室[きょうしつ] を 持た[もた] ない クラブ や 同好会[どうこうかい] の 部室[ぶしつ] が 集ま[あつま] っているのが この 部室棟[ぶしつとう] 。 通称[つうしょう] 、 旧館[きゅうかん] 。 この 部屋[へや] は 文芸部[ぶんげいぶ] 。
キョン :
じゃあ 文芸部[ぶんげいぶ] なんだろう ?
ハルヒ :
でも 今年[ことし] の 春[はる] に 三年生[さんねんせい] が 卒業[そつぎょう] して 、 部員[ぶいん] ゼロ 。 新たに[あらたに] 誰か[だれか] が 入部[にゅうぶ] しないと 休部[きゅうぶ] が 決定[けってい] していた 、 唯一[ゆいいつ] の クラブ なのよ 。 で 、 この 子[こ] が 一年生[いちねんせい] の 新入部員[しんにゅうぶいん] 。
キョン :
じゃあ 休部[きゅうぶ] になってないじゃないか 。
ハルヒ :
似た[にた] 様な[ような] もんよ 。 一人[ひとり] しか 居な[いな] いんだから 。
キョン :
あの 子[こ] は どうするんだよ 。
ハルヒ :
別に[べつに] いいって 言って[いっって] たわよ 。
キョン :
本当[ほんとう] か 、 そりゃあ 。
ハルヒ :
昼休み[ひるやすみ] に 会った[あった] 時に[ときに] 、 部室[ぶしつ] 貸し[かし] て 、 って 言った[いっった] ら 、 どうぞ 、 って 。 本[ほん] さえ 読め[よめ] れば いいらしいわ 。
ハルヒ :
変わ[かわ] ってる といえば 変わ[かわ] ってるわね 。
キョン :
はい 。 お 前[まえ] が 言う[いう] な 。
長門[ながと] :
長門[ながと] 有希[ゆき] 。
キョン :
長門[ながと] さん とやら 。 こいつは この 部屋[へや] を 何だ[なんだ] か 分か[わか] らん 部[ぶ] の 部室[ぶしつ] に しようと してんだぞ 。 それでも いいのか ?
長門[ながと] :
いい 。
キョン :
いや 、 しかし 、 たぶん もの 凄く[すごく] 迷惑[めいわく] を 掛け[かけ] ると 思う[おもう] ぞ ?
長門[ながと] :
別に[べつに] 。
キョン :
そのうち 、 追い出さ[おいださ] れるかも 知れ[しれ] んぞ 。
長門[ながと] :
どうぞ 。
ハルヒ :
ま 、 そういう 事[こと] だから 、 これから 放課後[ほうかご] 、 この 部屋[へや] に 集合[しゅうごう] ね 。 絶対[ぜったい] 来な[きな] さいよ 。 来ない[こない] と 、 死刑[しけい] だから 。
キョン :
分か[わか] ったよ 。
キョン :
死刑[しけい] は 嫌だ[いやだ] からな 。
ハルヒ :
まずは 部員[ぶいん] よね 。 最低[さいてい] あと 二人[ふたり] は 要る[いる] わね 。
キョン :
てことは 何だ[なんだ] 。 あの 文芸[ぶんげい] 部員[ぶいん] も 頭数[あたまかず] に 入れ[いれ] て しまって いるのか ? 部室[ぶしつ] に 付属[ふぞく] する 備品[びひん] か 何か[なにか] と 勘違い[かんちがい] しているんじゃ ないか ?
ハルヒ :
安心し[あんしんし] て 。 すぐ 集め[あつめ] るから 。 適当[てきとう] な 人間[にんげん] の 心当た[こころあた] りは あるの 。
キョン :
で 、 次の[つぎの] 日[ひ] 。
ハルヒ :
先に[さきに] 行って[いって] て 。
キョン :
俺[おれ] は というと 。 仕様[しよう] がない 。 部室[ぶしつ] へと 足[あし] を 運ん[はこん] だ 。
キョン :
何[なに] 読んで[よんで] んだ ?
キョン :
面白い[おもしろい] ?
長門[ながと] :
ユニーク 。
キョン :
どういう とこが ?
長門[ながと] :
全部[ぜんぶ] 。
キョン :
本[ほん] が 好き[すき] なんだな 。
長門[ながと] :
割と[わりと] 。
キョン :
そうか 。
キョン :
帰って[かえって] いいかなあ ? 俺[おれ] 。
ハルヒ :
いやあ ごめん ごめん 。 遅れ[おくれ] ちゃって 。 捕ま[つかま] えるのに 手間取っち[てまどっち] ゃって 。
キョン :
またしても 少女[しょうじょ] だった 。 しかも すげえ 美少女[びしょうじょ] だった 。
みくる :
何[なん] なんですか ? ここ 、 どこですか ? 何で[なんで] 私[わたし] 連れ[つれ] てこられたんですか ?
みくる :
なんで 鍵[かぎ] を 閉め[しめ] るんですか ? 一体[いったい] 何[なに] …。
ハルヒ :
黙り[だまり] なさい 。
ハルヒ :
紹介[しょうかい] するわ 。 朝比奈[あさひな] みくるちゃんよ 。
キョン :
紹介[しょうかい] 、 終わり[おわり] かよ 。
キョン :
どこから 拉致[らち] って 来た[きた] んだ ?
ハルヒ :
そんなこと しないわ 。 任意[にんい] 同行[どうこう] よ 。
キョン :
似た[にた] ような もんだ 。
ハルヒ :
二年[にねん] の 教室[きょうしつ] でぼんやり してる 所[ところ] を 捕ま[つかま] えたの 。 あたし 休み時間[やすみじかん] には 校舎[こうしゃ] を 隅々[すみずみ] まで 歩く[あるく] ように してるから 、 何回[なんかい] か 見かけ[みかけ] て 、 覚え[おぼえ] てたわけ 。
キョン :
休み時間[やすみじかん] 、 教室[きょうしつ] に いないと 思った[おもった] ら 、 そんな 事[こと] していたのか 。 じゃあこの 人[ひと] は 上級生[じょうきゅうせい] じゃないか ?
ハルヒ :
それが どうかしたの ?
キョン :
あ ー 、 まあいい 。 え ー っと 朝比奈[あさひな] さんか 。 何で[なんで] また 、 この 人[ひと] なんだ ?
ハルヒ :
まあ 見て[みて] ごらんなさいよ 。
ハルヒ :
滅茶滅茶[めちゃめちゃ] 可愛い[かわいい] でしょ !
キョン :
危な[あぶな] い 誘拐犯[ゆうかいはん] の 様な[ような] 事[こと] を 言い出し[いいだし] た 。
ハルヒ :
あたしね 、 萌[もえ] って 結構[けっこう] 重要な[じゅうような] 事[こと] だと 思う[おもう] のよね 。
キョン :
済ま[すま] ん 。 何だ[なんだ] って ?
ハルヒ :
萌[もえ] よ 萌[もえ] ! 所謂[いわゆる] 一つ[ひとつ] の 萌[もえ] 要素[ようそ] 。 基本的[きほんてき] にね 、 何か[なにか] おかしな 事件[じけん] が 起こ[おこ] る ような 物語[ものがたり] には 、 こういう 萌[もえ] で ロリ っぽい キャラ が 一人[ひとり] は 居る[いる] ものなのよ !
ハルヒ :
それだけじゃ ないのよ !
ハルヒ :
ちっこい 癖[くせ] にほら 、 あたしより 胸[むね] でかいのよ 。 ロリ 顔[かお] で 巨乳[きょにゅう] ? これも 萌[もえ] の 重要[じゅうよう] 要素[ようそ] の 一つ[ひとつ] なのよ 。
キョン :
知ら[しら] ん 。
ハルヒ :
あ ー 。 本当[ほんとう] に 大き[おおき] いなあ 。 なんか 腹立って[はらだって] きたわ 。 こんな 可愛ら[かわいら] しい 顔[かお] して あたしより 大き[おおき] いなんて !
キョン :
アホ か お 前[まえ] は 。
ハルヒ :
でも メチャ でかいのよ ! マジ よ 。 あんたも 触って[さわって] みる ?
キョン :
遠慮[えんりょ] しとく 。 すると 何か[なにか] 。 お 前[まえ] はこの … 朝比奈[あさひな] さんが 可愛く[かわい] て 小柄[こがら] で 胸[むね] が 大き[おおき] かったから という 理由[りゆう] なだけで 、 ここに 連れ[つれ] てきたのか ?
ハルヒ :
そうよ 。
キョン :
真性[しんせい] の アホ だこいつ 。
ハルヒ :
こういう マスコット 的[てき] キャラ も 必要[ひつよう] だと 思って[おもって] 。 みくるちゃん 。 あなた 他に[ほかに] 何か[なにか] クラブ 活動[かつどう] してる ?
みくる :
あの 、 書道部[しょどうぶ] に 。
ハルヒ :
じゃあそこ 辞め[やめ] て 。 我が[わが] 部[ぶ] の 活動[かつどう] の 邪魔[じゃま] だから 。
みくる :
あ ! そっか 。 分か[わか] りました 。
キョン :
何[なに] が 分か[わか] ったんだろう ?
みくる :
書道[しょどう] 部[ぶ] は 辞め[やめ] て 、 こっちに 入部[にゅうぶ] します 。 でも 、 文芸部[[ぶんげいぶ] って 何を[なにを] する 所[ところ] なのか 、 よく 知ら[しら] なくて 。
ハルヒ :
我が[わが] 部[ぶ] は 文芸部[[ぶんげいぶ] じゃないわよ 。
キョン :
ここの 部室[ぶしつ] は 一時的[いちじてき] に 借り[かり] てる だけです 。 あなたが 入ら[はいら] されようと しているのは 、 そこの 涼宮[すずみや] がこれから 作る[つくる] 活動内容[かつどうないよう] 未定[みてい] で 名称不明[めいしょうふめい] の 同好会[どうこうかい] ですよ 。 ちなみにあっちで 座って[すわって] 本[ほん] を 読んで[よんで] るのが 、 本当[ほんとう] の 文芸[ぶんげい] 部員[ぶいん] です 。
みくる :
はあ 。
ハルヒ :
大丈夫[だいじょうぶ] ! 名前[なまえ] なら たった 今[いま] 考え[かんがえ] たから !
キョン :
言って[いっって] みろ 。
キョン :
皆[みな] の 衆[しゅう] お 知らせ[しらせ] しよう 。 新し[あたらし] く 発足[ほっそく] する クラブ の 名[な] は 今[いま] 、 ここに 決定[けってい] した !
ハルヒ :
SOS 団[だん] !
キョン :
世界[せかい] を 大い[おおい] に 盛り上げ[もりあげ] るための 涼宮[すずみや] ハルヒ の 団[だん] 。 略し[りゃくし] て SOS 団[だん] である 。 そこ 、 笑って[わらって] いいぞ 。
キョン :
本来[ほんらい] なら 、 世界[せかい] を 大い[おおい] に 盛り上げ[もりあげ] る ための 涼宮[すずみや] ハルヒ の 同好会[どうこうかい] 、 とでも すべき なんだろうが 、 何しろ[なにしろ] まだ 同好会[どうこうかい] の 体[てい] すら 立って[たって] いない 上に[うえに] 、 何を[なにを] する 集団[しゅうだん] なのかも 分か[わか] らない ので ある 。
ハルヒ :
だったら 、 団[だん] で いいじゃない 。
キョン :
意味不明[いみふめい] な ハルヒ の 一言[ひとこと] により 、 めでたく 、 その 様に[ように] 決ま[きま] った 。 好き[すき] にしろよ 。 もう 。
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サンタクロース を いつまで 信じ[しんじ] ていたか 、 なんて 事[こと] は 、 他愛[たあい] もない 世間話[せけんばなし] にも ならない くらいの 、 どうでも いい 話[はなし] だが 、 それでも 、 俺[おれ] が いつまで サンタ など という 想像上[そうぞうじょう] の 赤[あか] 服[ふく] じいさん を 信じ[しんじ] て いたかと いうと 、 これは 確信[かくしん] を 持って[もって] 言え[いえ] るが 、 最初[さいしょ] から 信じ[しんじ] てなど いなかった 。
キョン :
幼稚園[ようちえん] の クリスマスイベント に 現れ[あらわれ] た サンタ は 偽[にせ] サンタ だと 理解[りかい] していたし 、 お 袋[ふくろ] が サンタ に キス を している 所[ところ] を 目撃[もくげき] した 訳[わけ] でも ないのに 、 クリスマス にしか 仕事[しごと] を しない ジジイ の 存在[そんざい] を 疑って[うたがって] いた 賢し[さかし] い 俺[おれ] なのだが 、 はてさて 、 宇宙人[うちゅうじん] や 未来人[みらいじん] や 幽霊[ゆうれい] や 妖怪[ようかい] や 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] や 悪[あく] の 組織[そしき] や 、 それらと 戦う[たたかう] アニメ 的[てき] 特撮[とくさつ] 的[てき] 漫画的[まんがてき] ヒーロー 達[たち] が 、 この 世に[よに] 存在[そんざい] しないのだ ということに 気づ[きづ] いたのは そうとう 後に[あとに] なってから だった 。
キョン :
いや 、 本当[ほんとう] は 気付い[きづい] ていたのだろう 。 ただ 気付き[きづき] たく なかっただけなのだ 。 俺[おれ] は 心[こころ] の 底[そこ] から 、 宇宙人[うちゅうじん] や 未来人[みらいじん] や 幽霊[ゆうれい] や 妖怪[ようかい] や 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] や 、 悪[あく] の 組織[そしき] が 目の前[めのまえ] に ふらりと 出て来て[でてきて] くれること を 望ん[のぞん] でいたのだ 。 しかし ! 現実[げんじつ] ってのは 意外[いがい] と 厳し[きびし] い ! 世界[せかい] の 物理法則[ぶつりほうそく] が 良く[よく] 出来て[できて] いる 事[こと] に 感心[かんしん] しつつ 、 いつしか 俺[おれ] は 、 テレビ の UFO 特番[とくばん] や 心霊[しんれい] 特集[とくしゅう] を そう 熱心[ねっしん] に 観な[みな] くなっていた 。 宇宙人[うちゅうじん] ? 未来人[みらいじん] ? 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] ? そんなの 居る[いる] 訳[わけ] ねえ 、 でも 、 ちょっと 居て[いて] 欲しい[ほしい] 、 みたいな 最大公約数的[さいだいこうやくすうてき] なこと を 考え[かんがえ] る 位[くらい] まで 、 俺[おれ] も 成長し[せいちょうし] たのさ 。
キョン :
中学[ちゅうがく] を 卒業[そつぎょう] する 頃に[ころに] は 、 俺[おれ] は もう そんな 餓鬼[がき] な 夢[ゆめ] を 見る[みる] 事[こと] からも 卒業[そつぎょう] して 、 この 世の[よの] 普通[ふつう] さにも 慣れ[なれ] ていた 。 俺[おれ] は 大した[たいした] 感慨[かんがい] もなく 高校生[こうこうせい] になり 、 そいつと 出会った[であった] 。
キョン :
これから 一年間[いちねんかん] 、 よろしく 、 お 願い[ねがい] します。
ハルヒ :
東中[ひがしちゅう] 出身[しゅっしん] 、 涼宮[すずみや] ハルヒ 。 ただの 人間[にんげん] には 興味[きょうみ] ありません 。 この 中に[なかに] 、 宇宙人[うちゅうじん] 、 未来人[みらいじん] 、 異世界人[いせかいじん] 、 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] が 居た[いた] ら 、 あたしの 所[ところ] に 来な[きな] さい ! 以上[いじょう] !
キョン :
これ 、 笑う[わらう] とこ ?
キョン :
偉い[えらい] 美人[びじん] が そこに 居た[いた] 。
キョン :
あっ …。
教師[きょうし] :
あ ー 、 では 次[つぎ] 。
キョン :
誰も[だれも] が 冗談[じょうだん] だと 思った[おもった] だろう 。 結果[けっか] から 言う[いう] とそれは ギャグ でも 笑い所[わらいどころ] でも なかった 。 ハルヒ はいつも 大[おお] マジ なのだ 。
谷口[たにぐち]:
東中[ひがし中] から 来ま[きま] した 谷口[たにぐち] です 。 趣味[しゅみ] は ラジオ 番組[ばんぐみ] への 葉書[はがき] の 投稿[とうこう] です 。
キョン :
こうして 俺達[おれたち] は 出会っち[であっち] まった 。 しみじみと 思う[おもう] 。 偶然[ぐうぜん] だと 信じ[しんじ] たいと 。
キョン :
涼宮[すずみや] ハルヒ は 、 黙って[だまって] じっと 座って[すわって] いる 限り[かぎり] では 、 一[いち] 美少女[びしょうじょ] 高校生[こうこうせい] に しか 見え[みえ] なかった 。 たまたま 席[せき] がまん 前[まえ] だった という 地[ち] の 利[り] を 活か[いか] して 、 お 近づ[ちかづ] きに なって おくのも いいかなと 、 一瞬[いっしゅん] 、 血迷った[ちまよった] 俺[おれ] を 誰が[だれが] 責め[せめ] られよう 。
キョン :
なあ 、 しょっぱなの 自己紹介[じこしょうかい] のあれ 、 どの 辺り[あたり] まで 本気[ほんき] だったんだ ?
ハルヒ :
しょっぱなの あれって 何[なに] ?
キョン :
いや 、 だから 宇宙人[うちゅうじん] が どうとか 。
ハルヒ :
あんた 宇宙人[うちゅうじん] なの ?
キョン :
違う[ちがう] けどさ 。
ハルヒ :
違う[ちがう] けど 、 何[なん] なの ?
キョン :
いや 、 何で[なんで] もない 。
ハルヒ :
だったら 話し[はなし] かけないで 。 時間[じかん] の 無駄[むだ] だから 。
男子生徒[だんしせいと] :
気に[きに] すんなって 。
キョン :
後で[あとで] 分か[わか] った 事[こと] だが 、 そいつらは 全員[ぜんいん] 、 ハルヒ と 同じ[おなじ] 中学[ちゅうがく] 出身[しゅっしん] だった 。
谷口[たにぐち] :
もし あいつに 気が[きが] あるんだったら 、 悪い[わるい] 事[こと] は 言わ[いわ] ん 。 やめとけ 。 中学[ちゅうがく] で 涼宮[すずみや] と 三年[さんねん] 間[かん] 同じ[おなじ] クラス だっから 良く[よく] 知って[しって] るんだがな 、 あいつの 奇人[きじん] ぶりは 常軌[じょうき] を 逸し[いっし] ている 。
国木田[くにきだ] :
あの 自己紹介[じこしょうかい] ?
谷口[たにぐち] :
そう 。 中学時代[ちゅうがくじだい] にも 訳[わけ] の 分か[わか] らん 事[こと] を 散々[さんざん] やり 倒し[たおし] ていたな 。 有名[ゆうめい] なのが 「 校庭[こうてい] 落書き[らくがき] 事件[じけん] 」。
キョン :
何だ[なんだ] そりゃ 。
谷口[たにぐち] :
石灰[せっかい] で 白線[はくせん] 引く[ひく] 道具[どうぐ] があるだろ ? あれ 何つ[なんつ] うんだっけ ? あ 、 まあいいや 。 それで 校庭[こうてい] に でかでかと けったいな 絵文字[えもじ] を 書き[かき] やがった 事[こと] がある 。 しかも 夜中[よなか] の 学校[がっこう] に 忍び込ん[しのびこん] で 。
国木田[くにきだ] :
ああ 。 それ 見た[みた] 覚え[おぼえ] あるなあ 。 確か[たしか] 新聞[しんぶん] の 地方[ちほう] 欄[らん] に 載って[のって] なかった ? 出来[でき] 損な[そこな] いの ナスカ の 地上[ちじょう] 絵[え] みたいなの 。
キョン :
その 犯人[はんにん] が あいつ だったって 訳[わけ] か。
谷口[たにぐち] :
本人[ほんにん] がそう 言った[いっった] んだから 間違い[まちがい] ない 。 朝[あさ] 、 教室[きょうしつ] に 行った[いった] ら 、 机[つくえ] が 全部[ぜんぶ] 廊下[ろうか] に 出さ[ださ] れてた 事[こと] も あったなあ 。 校舎[こうしゃ] の 屋上[おくじょう] に 星[ほし] マーク を ペンキ で 描い[えがい] たり 、 学校[がっこう] 中に[なかに] 変な[へんな] お 札[ふだ] を べたべた 貼り[はり] まくられた 事[こと] もあった 。 キョンシー が 顔[かお] に 貼っ付[はっつ] けているような 奴[やつ] な 。
キョン :
何[なに] やってるんだ 、 あいつ ?
谷口[たにぐち] :
意味[いみ] 分か[わか] んねえよ 。 でもなあ 。 あいつ もてるんだよ なあ 。 なんせ 面[つら] が 良い[いい] しさ 。 おまけに スポーツ 万能[ばんのう] で 成績[せいせき] も どちらか といえば 優秀[ゆうしゅう] なんだ 。 ちょっとばかし 変人[へんじん] でも 、 黙って[だまって] 立って[たって] たら 、 んなこと 分か[わか] んねえし 。
国木田[くにきだ] :
それにも 何か[なにか] エピソード が あるの ?
谷口[たにぐち] :
一時期[いちじき] は 取っ替え[とっかえ] 引っ替[ひっ替] え ってやつだったなあ 。 俺[おれ] の 知る[しる] 限り[かぎり] 一番[いちばん] 長く[ながく] 続い[つづい] て 一週間[いっしゅうかん] 。 最短[さいたん] では 告白[こくはく] された 五分[ごふん] 後に[ごに] 破局[はきょく] してた 、 なんてのも あったらしい 。
ハルヒ :
普通[ふつう] の 人間[にんげん] の 相手[あいて] を している 暇[ひま] は ないの !
谷口[たにぐち] :
だったら オーケー するなっての 。
谷口[たにぐち] :
聞い[きい] た 話[はなし] だって ! マジ で 。 なんでか 知ら[しら]ねえけど 、 告[こく] られて 断る[ことわる] って 事[こと] を しねえんだよ あいつは 。 だからな 、 お 前[まえ] が 変な[へんな] 気を[きを] 起こ[おこ] す 前[まえ] に 言って[いっって] おいてやる 。 止め[やめ] とけ 。
キョン :
止め[やめ] とくも 何も[なにも] 、 そんな 気は[きは] 無い[ない] んだが 。
谷口[たにぐち] :
俺[おれ] だったら そうだなあ 、 この クラス での 一押し[いちおし] は 、 あいつ だな 。
谷口[たにぐち] :
朝倉[あさくら] 涼子[りょうこ] 。 一年[いちねん] の 女[おんな] の 中[なか] でも ベスト スリー には 確実[かくじつ] に 入る[はいる] ねえ 。
キョン :
一年[いちねん] の 女子[じょし] 全員[ぜんいん] を チェック でも したのか ?
谷口[たにぐち] :
おうよ ! A から D まで ランク 付け[づけ] して 、 その 内[うち] A ランク の 女[おんな] は フルネーム で 覚え[おぼえ] たぜ 。
国木田[くにきだ] :
朝倉[あさくら] さん が その A な 訳[わけ] ?
谷口[たにぐち] :
AA ランク プラス だな 。 あれは きっと 性格[せいかく] まで 良い[いい] に 違い[ちがい] ない 。
男子生徒[だんしせいと] :
速[はえ] ぇ 。
キョン :
この 時期[じき] 、 涼宮[すずみや] ハルヒ もまだ 大人[おとな] しい 頃合[ころあい] いで 、 俺[おれ] にとっても 心[こころ] 休ま[やすま] る 月[つき] だった 。 しかしながら ハルヒ の 奇矯[ききょう] な 振る舞い[ふるまい] は 、 この 頃[ころ] から 徐々[じょじょ] に 片鱗[へんりん] を 見せ[みせ] ていたと 言う[いう] べき だろう 。
キョン :
とういう 訳[わけ] で 片鱗[へんりん] その 一[いち] 。 髪型[かみがた] が 毎日[まいにち] 変わ[かわ] る 。 月[げつ] 、 火[か] 、 水[すい] 、 木[もく] 、 金[きん] 、 曜日[ようび] が 進む[すすむ] ごとに 髪[かみ] を 結ぶ[むすぶ] 箇所[かしょ] が 増え[ふえ] ている 。 月曜日[げつようび] に リセット された 後[あと] は 金曜日[きんようび] まで 一つ[ひとつ] づつ 。 果た[はた] して 日曜日[にちようび] は どんな 頭[あたま] に なって いるんだ ? 見て[みて] みたい 気も[きも] する 。
キョン :
片鱗[へんりん] その 二[に] 。 体育[たいいく] の 授業[じゅぎょう] は 男女別[だんじょべつ] に 行わ[おこなわ] れる 。 着替え[きがえ] は 女[おんな] が 奇数[きすう] クラス 、 男[おとこ] が 偶数[ぐうすう] クラス に 移動[いどう] して 行う[おこなう] ことに なって いるの だが 、 まだ 男子[だんし] が 残って[のこって] いるにも 関わ[かかわ] らず 、 やおら セーラー 服[ふく] を 脱ぎ[ぬぎ] だし やがった !
女生徒[じょせいと] :
キャー !
キョン :
どうやら 男子生徒[だんしせいと] の 事[こと] は じゃがいも 位[くらい] にしか 思って[おもって] ない らしい 。
キョン :
片鱗[へんりん] その 三[さん] 。
キョン :
呆れ[あきれ] る 事[こと] に ハルヒ はこの 学校[がっこう] に 存在[そんざい] する あらゆる クラブ に 仮[かり] 入部[にゅうぶ] していたのだった 。 運動[うんどう] 部[ぶ] からは 例外[れいがい] なく 熱心[ねっしん] に 入部[にゅうぶ] を 勧め[すすめ] られ 、 その 全て[すべて] を 断って[たって] 毎日[まいにち] 参加[さんか] する 部活動[ぶかつどう] を 気まぐれ[きまぐれ] に 変え[かえ] た 挙げ句[あげく] 、 結局[けっきょく] どこにも 入部[にゅうぶ] する 事[こと] は 無か[なか] った 。 何[なに] が したいんだろうなあ 、 こいつはよ 。
キョン :
そんなこんな を しながら ゴールデンウィーク が 明け[あけ] た 一日目[いちにちめ] 。
谷口[たにぐち] :
よう 、 キョン 。
キョン :
よう 。
キョン :
ちなみに 、 キョン っていうのは 俺[おれ] のあだ 名[な] だ 。 いい 加減[かげん] に 止め[やめ] て もらいたいのだが 。
谷口[たにぐち] :
ゴールデンウィーク どこか 行った[いった] か ?
キョン :
妹[いもうと] 連れ[つれ] て 祖母[そぼ] さんとこ 。
谷口[たにぐち] :
湿気[しけ] て やんなあ 。
キョン :
ああ 。 今日は[きょうは] 水曜日[すいようび] か 。
キョン :
などと 考え[かんがえ] つつ 、 魔[ま] が 差し[さし] て しまったんだろう 。 それ 以外[いがい] に 思い[おもい] 当た[あた] る ふしがない 。
キョン :
曜日[ようび] で 髪型[かみがた] 変え[かえ] るのは 、 宇宙人[うちゅうじん] 対策[たいさく] か ?
キョン :
涼宮[すずみや] ハルヒ に 話し[はなし] かけていた 。
ハルヒ :
いつ 気付い[きづい] たの ?
キョン :
う ー ん 。 ちょっと 前[まえ] 。
ハルヒ :
あっそう 。
ハルヒ :
あたし 思う[おもう] んだけど 、 曜日[ようび] によって 感じ[かんじ] る イメージ って 、 それぞれ 異なる[ことなる] 気が[きが] するのよね 。 色[いろ] で 言う[いう] と 月曜[げつよう] が 黄色[きいろ] で 火曜[かよう] が 赤[あか] で 水曜[すいよう] が 青[あお] で 、 木曜[もくよう] が 緑[みどり] 。 金曜[きんよう] が 金色[きんいろ] で 土曜[どよう] が 茶色[ちゃいろ] 。 日曜[にちよう] は 白[しろ] よね 。
キョン :
初めて[はじめて] 会話[かいわ] が 成立[せいりつ] した ような 気が[きが] する 。
キョン :
なんとなく 分か[わか] るような 気も[きも] するが 。
キョン :
つう 事[こと] は 数字[すうじ] にしたら 月曜日[げつようび] が ゼロ で 日曜[にちよう] が 六[ろく] なのか ?
ハルヒ :
そ 。
キョン :
俺[おれ] は 月曜[げつよう] は 一[いち] って 感じ[かんじ] が するけどなあ 。
ハルヒ :
あんたの 意見[いけん] なんか 誰も[だれも] 訊い[きい] てない !
キョン :
そうかい ?
ハルヒ :
あたし 、 あんた と どこかで 会った[あった] ことがある ? ずっと 前[まえ] に 。
キョン :
いや 。
キョン :
きっかけ 。 なんてのは 大抵[たいてい] どうって 事[こと] ないもの なんだろう けども 、 まさしくこれが きっかけに なったんだろうな 。 しかし ハルヒ が まともな 返答[へんとう] を 寄越し[よこし] た 事[こと] は 驚き[おどろき] だ 。 てっきり 、 うるさい 、 馬鹿[ばか] 、 黙れ[だまれ] 、 どうでも いいでしょ ンなこと 、 と 言わ[いわ] れるもの ばかりだと 思って[おもって] いた からなあ 。
キョン :
だから 、 ハルヒ が 翌日[よくじつ] 、 長か[ながか] った 髪[かみ] を ばっさり 切って[きって] 登場[とうじょう] した 時に[ときに] は 、 結構[けっこう] 俺[おれ] は 動揺[どうよう] した 。 それにしたって 俺[おれ] が 指摘[してき] した 次の[つぎの] 日[にち] に 短く[みじかく] するってのも 短絡的[たんらくてき] 過ぎな[すぎな] いか ? おい 。
ハルヒ :
別に[べつに] 。
キョン :
あれ 以来[いらい] 、 ホームルーム 前[まえ] の 僅か[わずか] な 時間[じかん] に ハルヒ と 話す[はなす] のが ちょっとした 日課[にっか] に なりつつあった 。
キョン :
ちょいと 小耳[こみみ] に 挟ん[はさん] だんだけどな 、 付き合う[つきあう] 男[おとこ] 、 全部[ぜんぶ] 振った[ふった] って 本当[ほんとう] か ?
ハルヒ :
なんで あんたに そんな 事[こと] 言わ[いわ] れなくちゃ いけないのよ 。 何を[なにを] 聞い[きい] たか 知ら[しら] ないけど 、 まあいいわ 。 たぶん 全部[ぜんぶ] 本当[ほんとう] だから 。
キョン :
一人[ひとり] くらい 、 まともに 付き合お[つきあお] う とか 思う[おもう] 奴[やつ] が いなかったのか ?
ハルヒ :
全然[ぜんぜん] 駄目[だめ] 。 どいつも こいつも 、 アホ らしいほど まともな 奴[やつ] だったわ 。 宇宙人[うちゅうじん] でも 未来人[みらいじん] でも 超能力者[ちょうのうりょくしゃ] でもないし 。
キョン :
そりゃ 普通[ふつう] そうだろう 。
ハルヒ :
あと 、 告白[こくはく] が ほとんど 電話[でんわ] だったのは 何[なん] なの あれ ?! そういう 大事[だいじ] な 事[こと] は 面[めん] と 向か[むか] って 言い[いい] なさいよ !
キョン :
まあ そうかな 。 俺[おれ] なら どこかに 呼び出し[よびだし] て 言う[いう] かな 。
キョン :
一応[いちおう] 、 同意[どうい] しておこう 。
ハルヒ :
そんなことは どうでも いいのよ !
キョン :
どっち なんだよ 。
ハルヒ :
問題[もんだい] はね 、 くだらない 男[おとこ] しかこの 世に[よに] 存在[そんざい] しないのか 、 どうなの 、 って 事[こと] よ 。 本当[ほんとう] は 中学時代[ちゅうがくじだい] は ずっと 苛々[いらいら] しっぱなし だった 。
キョン :
じゃ 、 どんな 男[おとこ] なら 良か[よか] ったんだ ? やっぱり 宇宙人[うちゅうじん] か ?
ハルヒ :
宇宙人[うちゅうじん] 、 もしくはそれに 準じ[じゅんじ] る 何か[なんか] ね 。 とにかく 、 普通[ふつう] の 人間[にんげん] で なければ 、 男[おとこ] だろうが 女[おんな] だろうが 。
キョン :
どうして そんなに 、 人間[にんげん] 以外[いがい] の 存在[そんざい] に こだわるんだ ?
ハルヒ :
そっちの 方が[ほうが] 面白い[おもしろい] じゃないの 。
谷口[たにぐち] :
おい キョン ! お 前[まえ] どんな 魔法[まほう] を 使った[つかった] んだ ?
キョン :
何の[なんの] 話[はなし] だ ?
谷口[たにぐち] :
俺[おれ] 、 涼宮[すずみや] が あんなに 長い[ながい] 間[あいだ] 喋って[しゃべって] るの 、 初めて[はじめて] 見る[みる] ぞ 。 お 前[まえ] 何[なに] 言った[いった] んだ ?
キョン :
さて 何だ[なんだ] ろう 。 適当[てきとう] な 事[こと] しか 聞い[きい] てない ような 気が[きが] するんだが 。
谷口[たにぐち] :
驚天動地[きょうてんどうち] だ 。
国木田[くにきだ] :
昔[むかし] から キョン は 変な[へんな] 女[おんな] が 好き[すき] だからね 。
キョン :
誤解[ごかい] を 招く[まねく] ような 事[こと] を 言う[いう] な 。
朝倉[あさくら] :
私[わたし] も 聞き[きき] たいな 。 私[わたし] が いくら 話し[はなし] かけても なーんも 答え[こたえ] て くれない 涼宮[すずみや] さんが 、 どうしたら 話す[はなす] ように なるのか 。 コツ でもあるの ?
キョン :
分か[わか] らん 。
朝倉[あさくら] :
ふーん 。 でも 安心し[あんしんし] た 。 涼宮[すずみや] さん 、 いつまでも クラス で 孤立[こりつ] した ままじゃ 困る[こまる] もんね 。 一人[ひとり] でも 友達[ともだち] が 出来た[できた] のは 良い[いい] ことよね 。
キョン :
友達[ともだち] ね …。
朝倉[あさくら] :
その 調子[ちょうし] で 涼宮[すずみや] さん を クラス に 溶け[とけ] 込め[こめ] る ように してあげてね 。 せっかく 一緒の[いっしょの] クラス に なったんだから 、 みんな 仲良く[なかよく] して いきたいじゃない ? よろしくね 。
キョン :
と 言わ[いわ] れてもな 。
朝倉[あさくら] :
これから 何か[なにか] 伝え[つたえ] る 事[こと] があったら 、 あなたから 伝え[つたえ] て もらうように するから 。
キョン :
だから 待て[まて] よ ! 俺[おれ] はあいつの スポークスマン でも 何で[なんで] もないぞ 。
朝倉[あさくら] :
お 願い[ねがい] 。
谷口[たにぐち] :
キョン 、 俺達[おれたち] 友達[ともだち] だよな ?
キョン :
どいつも こいつも アホ だらけだ 。
キョン :
席替え[せきかえ] だそうだ 。 ゴーフル の 缶[かん] に 入れ[いれ] られた 籤[くじ] を 引い[ひい] た 俺[おれ] は 、 窓際[まどぎわ] 後方[こうほう] 二番目[にばんめ] という なかなかの ポジション を 獲得[かくとく] した 。 さらば ハルヒ 、 フォーエバー 。
キョン :
偶然[ぐうぜん] だよな 。
キョン :
全部[ぜんぶ] の クラブ に 入って[はいって] みたってのは 本当[ほんとう] なのか ? どこか 面白そ[おもしろそ] うな 部[ぶ] があったら 教え[おしえ] てくれよ ?
ハルヒ :
ない 。 全然[ぜんぜん] 。
キョン :
即答[そくとう] しやがった 。
ハルヒ :
全然[ぜんぜん] ない !
キョン :
どうやら こいつの 口癖[くちぐせ] は 「 全然[ぜんぜん] 」 のようだ 。
ハルヒ :
高校[こうこう] に 入れ[はいれ] ば 少し[すこし] は ましかと 思った[おもった] けど 、 これじゃ 義務教育[ぎむきょういく] 時代[じだい] と なんも 変わ[かわ] んないわね 。 入る[はいる] 学校[がっこう] 間違え[まちがえ] たかしら 。
キョン :
何を[なにを] 基準[きじゅん] に 学校[がっこう] 選び[えらび] を しているの だろう 。
ハルヒ :
ミステリ 研究会[けんきゅうかい] ってのが あったのよ 。
キョン :
へえ 。 どうだった ?
ハルヒ :
笑わ[わらわ] せるわ 。 今まで[いままで] 一回[いっかい] も 事件[じけん] らしい 事件[じけん] に 出く[でく] わさなかったって 言う[いう] んだもの 。 部員[ぶいん] も ただの ミステリー 小説[しょうせつ] オタク ばっかで 、 名探偵[めいたんてい] みたいな 奴[やつ] も いないし 。
キョン :
そりゃ そうだろう 。
ハルヒ :
超常現象[ちょうじょうげんしょう] 研究会[けんきゅうかい] には ちょっと 期待し[きたいし] てたんだけど 、 ただの オカルトマニア の 集まり[あつまり] でしか ないのよ 。 どう 思う[おもう] ?!
キョン :
どうも 思わ[おもわ] ん 。
ハルヒ :
あー もう つまんない ! これだけ あれば 少し[すこし] は 変な[へんな] クラブ があっても 良さ[よさ] そうなのに
キョン :
無い[ない] ものは しようが ないだろ ? 結局[けっきょく] の 所[ところ] 、 人間[にんげん] は そこに あるもので 満足[まんぞく] しなければ ならないのさ 。 言う[いう] なれば 、 それ を 出来な[できな] い 人間[にんげん] が 発見[はっけん] やら 発明[はつめい] やら を して 文明[ぶんめい] を 発達[はったつ] させて きたんだ 。 空[そら] を 飛び[とび] たいと 思った[おもった] から 飛行機[ひこうき] 作った[つくった] し 、 楽[らく] に 移動[いどう] したいと 思った[おもった] から 、 車[くるま] や 列車[れっしゃ] を 生み出し[うみだし] たんだ 。 でもそれは 、 一部[いちぶ] の 人間[にんげん] の 才覚[さいかく] や 発想[はっそう] に よって 初めて[はじめて] 生じ[しょうじ] たものであり 、 つまり 、 天才[てんさい] が それ を 可能に[かのうに] した 訳[わけ] だ 。 凡人[ぼんじん] たる 我々[われわれ] は 人生[じんせい] を 凡庸[ぼんよう] に 過ご[すご] すのが 一番[いちばん] であってだな …。
ハルヒ :
うるさい !
キョン :
もしかしたら 、 この 会話[かいわ] が ネタ 振り[ふり] だったのかも 知れ[しれ] ない 。
キョン :
それは 突然[とつぜん] やってきた 。
キョン :
何[なに] しやがる !
ハルヒ :
気が[きが] ついた !
キョン :
何[なに] に ?
ハルヒ :
どうして こんな 簡単[かんたん] な 事[こと] に 気が[きが] つかなかったの かしら !
キョン :
何[なに] が 。
ハルヒ :
無い[ない] んだったら 、 自分[じぶん] で 作れ[つくれ] ば いいのよ 。
キョン :
だから 、 何を[なにを] ?
ハルヒ :
部活[ぶかつ] よ !
キョン :
分か[わか] った 。 まあ 今[いま] は 落ち着け[おちつけ] 。
ハルヒ :
何[なに] その 反応[はんのう] 。 もうちょっと あんたも 喜び[よろこび] なさいよ 、 この 発見[はっけん] を 。
キョン :
今[いま] は 授業中[じゅぎょうちゅう] だ 。
ハルヒ :
協力[きょうりょく] しなさい 。
キョン :
カツアゲ されている 様な[ような] 気分[きぶん] だぜ 。 何を[なにを] 協力[きょうりょく] するって ?
ハルヒ :
あたし の 新[しん] クラブ 作り[つくり] よ !
キョン :
なぜ 俺[おれ] がお 前[まえ] の 思い[おもい] つきに 協力[きょうりょく] しなければ ならんのか 、 それ を まず 教え[おしえ] てくれ 。
ハルヒ :
あたしは 部室[ぶしつ] と 部員[ぶいん] を 確保[かくほ] するから 、 あんたは 学校[がっこう] に 提出[ていしゅつ] する 書類[しょるい] を 揃え[そろえ] なさい 。
キョン :
聞い[きい] ちゃいねえ 。
キョン :
何の[なんの] クラブ を 作る[つくる] つもり なんだ ?
ハルヒ :
どうでも いいじゃないの そんなの 。 とりあえず まず 作る[つくる] のよ 。 いい ? 今日[きょう] の 放課後[ほうかご] までに 調べ[しらべ] ておいて 。 あたしも それまでに 部室[ぶしつ] を 探し[さがし] ておくから ! いいわね ?!
キョン :
同好会[どうこうかい] の 新設[しんせつ] に 伴う[ともなう] 規定[きてい] 。 人数[にんずう] 、 五人[ごにん] 以上[いじょう] 。 顧問[こもん] の 教師[きょうし] 、 名称[めいしょう] 、 責任者[せきにんしゃ] 、 活動内容[かつどうないよう] を 決定[けってい] し
… 調べ[しらべ] る までも なかった 。 生徒手帳[せいとてちょう] の 後ろ[うしろ] の 方[ほう] にそう 書い[かい] てある 。
キョン :
だが 賭け[かけ] ても いいが 、 ハルヒ の 考え[かんがえ] る 内容[ないよう] が 「 創造的[そうぞうてき] かつ 活力[かつりょく] ある 学校生活[がっこうせいかつ] を 送る[おくる] のに 相応しい[ふさわしい] ものに なる 事[こと] はないだろう 。
キョン :
ちよっと 待て[まて] 、 待た[また] 、 待た[また] …
ハルヒ :
これから この 部屋[へや] が 我々[われわれ] の 部室[ぶしつ] よ !
キョン :
ちょい 待て[まて] 。 どこなんだよ 、 ここは 。
ハルヒ :
文化部[ぶんかぶ] の 部室棟[ぶしつとう] よ 。 美術部[びじゅつぶ] や 吹奏楽部[すいそうがくぶ] なら 美術室[びじゅつしつ] や 音楽室[おんがくしつ] が あるでしょ 。 そういう 特別[とくべつ] 教室[きょうしつ] を 持た[もた] ない クラブ や 同好会[どうこうかい] の 部室[ぶしつ] が 集ま[あつま] っているのが この 部室棟[ぶしつとう] 。 通称[つうしょう] 、 旧館[きゅうかん] 。 この 部屋[へや] は 文芸部[ぶんげいぶ] 。
キョン :
じゃあ 文芸部[ぶんげいぶ] なんだろう ?
ハルヒ :
でも 今年[ことし] の 春[はる] に 三年生[さんねんせい] が 卒業[そつぎょう] して 、 部員[ぶいん] ゼロ 。 新たに[あらたに] 誰か[だれか] が 入部[にゅうぶ] しないと 休部[きゅうぶ] が 決定[けってい] していた 、 唯一[ゆいいつ] の クラブ なのよ 。 で 、 この 子[こ] が 一年生[いちねんせい] の 新入部員[しんにゅうぶいん] 。
キョン :
じゃあ 休部[きゅうぶ] になってないじゃないか 。
ハルヒ :
似た[にた] 様な[ような] もんよ 。 一人[ひとり] しか 居な[いな] いんだから 。
キョン :
あの 子[こ] は どうするんだよ 。
ハルヒ :
別に[べつに] いいって 言って[いっって] たわよ 。
キョン :
本当[ほんとう] か 、 そりゃあ 。
ハルヒ :
昼休み[ひるやすみ] に 会った[あった] 時に[ときに] 、 部室[ぶしつ] 貸し[かし] て 、 って 言った[いっった] ら 、 どうぞ 、 って 。 本[ほん] さえ 読め[よめ] れば いいらしいわ 。
ハルヒ :
変わ[かわ] ってる といえば 変わ[かわ] ってるわね 。
キョン :
はい 。 お 前[まえ] が 言う[いう] な 。
長門[ながと] :
長門[ながと] 有希[ゆき] 。
キョン :
長門[ながと] さん とやら 。 こいつは この 部屋[へや] を 何だ[なんだ] か 分か[わか] らん 部[ぶ] の 部室[ぶしつ] に しようと してんだぞ 。 それでも いいのか ?
長門[ながと] :
いい 。
キョン :
いや 、 しかし 、 たぶん もの 凄く[すごく] 迷惑[めいわく] を 掛け[かけ] ると 思う[おもう] ぞ ?
長門[ながと] :
別に[べつに] 。
キョン :
そのうち 、 追い出さ[おいださ] れるかも 知れ[しれ] んぞ 。
長門[ながと] :
どうぞ 。
ハルヒ :
ま 、 そういう 事[こと] だから 、 これから 放課後[ほうかご] 、 この 部屋[へや] に 集合[しゅうごう] ね 。 絶対[ぜったい] 来な[きな] さいよ 。 来ない[こない] と 、 死刑[しけい] だから 。
キョン :
分か[わか] ったよ 。
キョン :
死刑[しけい] は 嫌だ[いやだ] からな 。
ハルヒ :
まずは 部員[ぶいん] よね 。 最低[さいてい] あと 二人[ふたり] は 要る[いる] わね 。
キョン :
てことは 何だ[なんだ] 。 あの 文芸[ぶんげい] 部員[ぶいん] も 頭数[あたまかず] に 入れ[いれ] て しまって いるのか ? 部室[ぶしつ] に 付属[ふぞく] する 備品[びひん] か 何か[なにか] と 勘違い[かんちがい] しているんじゃ ないか ?
ハルヒ :
安心し[あんしんし] て 。 すぐ 集め[あつめ] るから 。 適当[てきとう] な 人間[にんげん] の 心当た[こころあた] りは あるの 。
キョン :
で 、 次の[つぎの] 日[ひ] 。
ハルヒ :
先に[さきに] 行って[いって] て 。
キョン :
俺[おれ] は というと 。 仕様[しよう] がない 。 部室[ぶしつ] へと 足[あし] を 運ん[はこん] だ 。
キョン :
何[なに] 読んで[よんで] んだ ?
キョン :
面白い[おもしろい] ?
長門[ながと] :
ユニーク 。
キョン :
どういう とこが ?
長門[ながと] :
全部[ぜんぶ] 。
キョン :
本[ほん] が 好き[すき] なんだな 。
長門[ながと] :
割と[わりと] 。
キョン :
そうか 。
キョン :
帰って[かえって] いいかなあ ? 俺[おれ] 。
ハルヒ :
いやあ ごめん ごめん 。 遅れ[おくれ] ちゃって 。 捕ま[つかま] えるのに 手間取っち[てまどっち] ゃって 。
キョン :
またしても 少女[しょうじょ] だった 。 しかも すげえ 美少女[びしょうじょ] だった 。
みくる :
何[なん] なんですか ? ここ 、 どこですか ? 何で[なんで] 私[わたし] 連れ[つれ] てこられたんですか ?
みくる :
なんで 鍵[かぎ] を 閉め[しめ] るんですか ? 一体[いったい] 何[なに] …。
ハルヒ :
黙り[だまり] なさい 。
ハルヒ :
紹介[しょうかい] するわ 。 朝比奈[あさひな] みくるちゃんよ 。
キョン :
紹介[しょうかい] 、 終わり[おわり] かよ 。
キョン :
どこから 拉致[らち] って 来た[きた] んだ ?
ハルヒ :
そんなこと しないわ 。 任意[にんい] 同行[どうこう] よ 。
キョン :
似た[にた] ような もんだ 。
ハルヒ :
二年[にねん] の 教室[きょうしつ] でぼんやり してる 所[ところ] を 捕ま[つかま] えたの 。 あたし 休み時間[やすみじかん] には 校舎[こうしゃ] を 隅々[すみずみ] まで 歩く[あるく] ように してるから 、 何回[なんかい] か 見かけ[みかけ] て 、 覚え[おぼえ] てたわけ 。
キョン :
休み時間[やすみじかん] 、 教室[きょうしつ] に いないと 思った[おもった] ら 、 そんな 事[こと] していたのか 。 じゃあこの 人[ひと] は 上級生[じょうきゅうせい] じゃないか ?
ハルヒ :
それが どうかしたの ?
キョン :
あ ー 、 まあいい 。 え ー っと 朝比奈[あさひな] さんか 。 何で[なんで] また 、 この 人[ひと] なんだ ?
ハルヒ :
まあ 見て[みて] ごらんなさいよ 。
ハルヒ :
滅茶滅茶[めちゃめちゃ] 可愛い[かわいい] でしょ !
キョン :
危な[あぶな] い 誘拐犯[ゆうかいはん] の 様な[ような] 事[こと] を 言い出し[いいだし] た 。
ハルヒ :
あたしね 、 萌[もえ] って 結構[けっこう] 重要な[じゅうような] 事[こと] だと 思う[おもう] のよね 。
キョン :
済ま[すま] ん 。 何だ[なんだ] って ?
ハルヒ :
萌[もえ] よ 萌[もえ] ! 所謂[いわゆる] 一つ[ひとつ] の 萌[もえ] 要素[ようそ] 。 基本的[きほんてき] にね 、 何か[なにか] おかしな 事件[じけん] が 起こ[おこ] る ような 物語[ものがたり] には 、 こういう 萌[もえ] で ロリ っぽい キャラ が 一人[ひとり] は 居る[いる] ものなのよ !
ハルヒ :
それだけじゃ ないのよ !
ハルヒ :
ちっこい 癖[くせ] にほら 、 あたしより 胸[むね] でかいのよ 。 ロリ 顔[かお] で 巨乳[きょにゅう] ? これも 萌[もえ] の 重要[じゅうよう] 要素[ようそ] の 一つ[ひとつ] なのよ 。
キョン :
知ら[しら] ん 。
ハルヒ :
あ ー 。 本当[ほんとう] に 大き[おおき] いなあ 。 なんか 腹立って[はらだって] きたわ 。 こんな 可愛ら[かわいら] しい 顔[かお] して あたしより 大き[おおき] いなんて !
キョン :
アホ か お 前[まえ] は 。
ハルヒ :
でも メチャ でかいのよ ! マジ よ 。 あんたも 触って[さわって] みる ?
キョン :
遠慮[えんりょ] しとく 。 すると 何か[なにか] 。 お 前[まえ] はこの … 朝比奈[あさひな] さんが 可愛く[かわい] て 小柄[こがら] で 胸[むね] が 大き[おおき] かったから という 理由[りゆう] なだけで 、 ここに 連れ[つれ] てきたのか ?
ハルヒ :
そうよ 。
キョン :
真性[しんせい] の アホ だこいつ 。
ハルヒ :
こういう マスコット 的[てき] キャラ も 必要[ひつよう] だと 思って[おもって] 。 みくるちゃん 。 あなた 他に[ほかに] 何か[なにか] クラブ 活動[かつどう] してる ?
みくる :
あの 、 書道部[しょどうぶ] に 。
ハルヒ :
じゃあそこ 辞め[やめ] て 。 我が[わが] 部[ぶ] の 活動[かつどう] の 邪魔[じゃま] だから 。
みくる :
あ ! そっか 。 分か[わか] りました 。
キョン :
何[なに] が 分か[わか] ったんだろう ?
みくる :
書道[しょどう] 部[ぶ] は 辞め[やめ] て 、 こっちに 入部[にゅうぶ] します 。 でも 、 文芸部[[ぶんげいぶ] って 何を[なにを] する 所[ところ] なのか 、 よく 知ら[しら] なくて 。
ハルヒ :
我が[わが] 部[ぶ] は 文芸部[[ぶんげいぶ] じゃないわよ 。
キョン :
ここの 部室[ぶしつ] は 一時的[いちじてき] に 借り[かり] てる だけです 。 あなたが 入ら[はいら] されようと しているのは 、 そこの 涼宮[すずみや] がこれから 作る[つくる] 活動内容[かつどうないよう] 未定[みてい] で 名称不明[めいしょうふめい] の 同好会[どうこうかい] ですよ 。 ちなみにあっちで 座って[すわって] 本[ほん] を 読んで[よんで] るのが 、 本当[ほんとう] の 文芸[ぶんげい] 部員[ぶいん] です 。
みくる :
はあ 。
ハルヒ :
大丈夫[だいじょうぶ] ! 名前[なまえ] なら たった 今[いま] 考え[かんがえ] たから !
キョン :
言って[いっって] みろ 。
キョン :
皆[みな] の 衆[しゅう] お 知らせ[しらせ] しよう 。 新し[あたらし] く 発足[ほっそく] する クラブ の 名[な] は 今[いま] 、 ここに 決定[けってい] した !
ハルヒ :
SOS 団[だん] !
キョン :
世界[せかい] を 大い[おおい] に 盛り上げ[もりあげ] るための 涼宮[すずみや] ハルヒ の 団[だん] 。 略し[りゃくし] て SOS 団[だん] である 。 そこ 、 笑って[わらって] いいぞ 。
キョン :
本来[ほんらい] なら 、 世界[せかい] を 大い[おおい] に 盛り上げ[もりあげ] る ための 涼宮[すずみや] ハルヒ の 同好会[どうこうかい] 、 とでも すべき なんだろうが 、 何しろ[なにしろ] まだ 同好会[どうこうかい] の 体[てい] すら 立って[たって] いない 上に[うえに] 、 何を[なにを] する 集団[しゅうだん] なのかも 分か[わか] らない ので ある 。
ハルヒ :
だったら 、 団[だん] で いいじゃない 。
キョン :
意味不明[いみふめい] な ハルヒ の 一言[ひとこと] により 、 めでたく 、 その 様に[ように] 決ま[きま] った 。 好き[すき] にしろよ 。 もう 。