Layer:03 PSYCHE


女の人:
レインって子、聞いたことあるでしょう?
ワイヤードのレイン。



刑事:
君の両親は旅行にでも行ってるんか?
教えてくれた電話番号にかけても誰も出ない。

玲音:
嘘なんて・・・言ってない。

刑事:
ああ、嘘とは思ってない。
調べたからねぇ。
確かに君は岩倉玲音で、その住所の電話番号だった。
もう今夜は遅いから送らせるけどね、
今度はちゃんと話をしてほしいもんだなあ。
そんな無口じゃ、いくら関係ないとしてもマズイだろう。
ふーん、やれやれ・・・

ありす:
玲音!ごめんね!
あたしたちのせいだね、大丈夫、玲音?
・・・大丈夫なの?玲音たら。

玲音:
あ・・・

ありす:
ん、なに?玲音・・・

玲音:
あ・り・す・・・

ありすのお母さん:
ありす!来なさい!帰りますよ!

ありす:
玲音・・・

ありすのお母さん:
ありす!

ありす:
ごめんね。ごめん、ごめんなさい、玲音!
明日・・・明日話そうね!
ごめん!

玲音:
あ・・・

刑事:
じゃ、君も帰るとするかい?

玲音:
あ・りす・・・



警察官:
鍵は持っているね?

玲音:
はい。



玲音:
メッ・セー・ジ・・・

NAVI:
レインあてのメッセージはありません。

玲音:
おやすみ、NAVI。

NAVI:
おやすみなさい、レイン。



美穂:
寝坊して遅刻なんて、中学生にもなって恥ずかしくない?

玲音:
お母さん、昨日の・・・夜って・・・

美穂:
え?なに?

玲音:
いい・・・やっぱり・・・



[黒い乗用車が停まっている]
玲音:
あっ!

あっ!?

あっ!



声:
レイン。レイン。レイン。

玲音:
えっ?

声:
――だよ、レイン。分かるね?

玲音:
誰?

声:
一人じゃない。

玲音:
えっ!?



女子生徒達:
おはよう!
おはよう!



クラスメート:
へー、すごい!

その子もかわいかった?

そう!
テレビじゃ顔見せてくんないし!

樹莉:
うーん、それはー…

麗華:
あんたヒーヒー言ってたくせに!顔見たの?

樹莉:
そ、そうだけど・・・
でも、ちょっとは・・・

麗華:
怖くて見れなかった。

ありす:
玲音!

樹莉:
玲音!
昨日、怒られた?

麗華:
別にあたしたちのせいじゃないよ!

ありす:
ごめん、ちょっと・・・

麗華:
そっ、アリスが一番犯人の近くにいたんじゃん!

クラスメート:
えー!?

で、で、血ドバーッ?

ありす:
あぁ・・・

樹莉:
話してあげなよ!

クラスメート?:
ねぇ、アリス!



――というばかりではない。
プシューケーには、ただのプロセッサーだと捉えると、全体が見えなくなってしまう――
汎用情報端末として、NAVIは小学生にまで普及するに至っているが、
ワイヤードでの活動限界は、マシンに依存しているのが現状だ。
プシューケーは、いかなるNAVIの機能をも劇的に上げることができる。

千砂:
あたしはもうリアル・ワールドにはいる意味がなかったの。
あたしは、リアル・ワールドにとって、いてもいなくてもどうでもいい存在だった。
それが分かった時、あたしは肉体をなくすことに、何の怖さも感じなくなったんだ。

声:
レインは誰?

玲音:
え?

声:
レインは誰?レインは誰?レインは誰?



ありす:
でも、あたしたち変だよ!
あたしたち、昨日人が死ぬのを間近に見たんだよ?
それなのに、まるで映画でも見たくらいの感覚でいる。

麗華:
だって、昨日の夜確かにあたしたちあそこにいたけどさ、
なんかリアリティがなかったって気がする。

樹莉:
あたしもそんな感じかな。
ありす、そんな深刻に受け止めない方がいいと思う。

ありす:
そうじゃなくて・・・深刻に受け止められないから、変だって。
ね、玲音?

玲音:
えっ?あっ、なに?

ありす:
あれ?それってラブレターとか?

樹莉、麗華:
えー!?ウソ!

玲音:
ち、違うよ・・・たぶん。

樹莉、麗華:
見せて見せて!

麗華:
ケチケチしないで見せなさいよ!

ありす:
そんな無理したら、可哀そうじゃない!

麗華:
ふーん、茶封筒ねー。

樹莉:
何て書いてあるの?

麗華:
へー?なーにこれ?

ツマーンナイ!

樹莉:
やっぱりねー。



玲音:
プシューケー・・・



ワイヤードからの声:
違うってば!
わたしのボイスメールが覗かれてたのよ!
信じらんない!

届いたレジュメにあった内容は、当該の条項が含まれておらず、現在対応を検討しているところです。
貴社におきましては・・・

キスするのが好きなの。
それだけで幸せになれる。

こないだ、クラブでガキがアクセラとかで事件起こしたろ?
あれで闇に流してる奴がビビッちまったみたいでよ、全然ブツ入って来ねーんだって。

プシューケーは台湾の工場で量産されている模様です。
設計したといわれるのは、ナイツと呼ばれている団体と申しますか、
そもそも、そのナイツが実在するものなのかも分らないのです。
ワイヤードにはそういった都市伝説が...

気持ちいいよ、死ぬって!

僕は加速したのを感じた。

やだあ! 部屋に誰かいるの!
緑と赤のしましまの服着た子供みたいに小さい人が...
あたし、ベッドで動けないの。
ドアのところに立って、あたしをじっと見てる...
助けてよ!

あなたの秘密の恋人、
あなたと一緒にいる写真を持っています。
わたしは商売をしたいだけです。
どうですか?
買っていただけないと、あなたの会社のサーバーにこの画像を...

レイン、どうしてこっち来ない?

NAVI:
レイン宛のメールが届いています。

玲音:
NAVIッ・・・

康男:
どうだい?玲音。
新しいNAVIには、慣れたかい?
どうか・・・したのかい?

玲音:
これ、知ってる?

康男:
知らないな。

玲音:
お父さんなら・・・お父さんなら、知ってるかな、って。

康男:
知らないと言っただろ。



玲音:
あっ!



男の人:
なぁ、いいだろう?
どうしてだよ?
どうして嫌がる?好きなんだよ。



DJ:
レイン!
最近どうしてたんだよ?
あんまり顔見なかったからよ。

玲音:
あたし・・・

DJ:
あれー、今日はヤケに少女趣味してんじゃん・・・
また、レイブやっからオルグ頼むぜ

タロウ:
何お前カッコつけてんだよ!

玲音:
あのさぁ――

マサユキ:
お前こそ!

玲音:
――これ、知ってる?

タロウ:
あ?えー!?
それ、プシューケーじゃねーのか!?

マサユキ、ミューミュー:
えっ!

マサユキ:
ま、まさか!

ミューミュー:
ウソー!
あたし初めて見た!

マサユキ:
ど、どこで買ったの?

玲音:
知ってるの?

タロウ:
何言ってるの?
それ入れたら、こいつでも、ワイヤードでフルアクセス出来るだろうが!

玲音:
これ、どうやって使うの?

ミューミュー:
ダッサー!そんなのも知らないの?
ウフフフフ。

マサユキ:
ね、これ売って、これ売って。

タロウ:
バカ!買えるかよ、お前が!
NAVIは何?

玲音:
よくわかんないけど、橘の。
たぶん一番新しい奴。

タロウ、マサユキ、ミューミュー:
ひえー、すげえ!

マサユキ:
あのさ、それ、自分で内部にアクセスした?

タロウ:
ふーん、あんた中二?中三?

玲音:
二。

マサユキ:
だったら、情報基礎は習ってんだろ?
NAVIのマザーボードの基本的なレイアウトは、教科書に載ってる。
こいつは、メインプロセッサーの裏側にコネクトするんだ。
そこで、本来の情報をインターセプトして、勝手に動作する。
作業自体はプラモ作るよか簡単だよ。
静電気にだけ気をつければね。

玲音:
そう。ありがとう。

タロウ:
待ってよ!
情報はタダじゃないんだぜ。
ワイヤードでも、リアル・ワールドでも!

マサユキ:
いくら貰う?いくら貰う?

玲音:
えっと・・・

タロウ:
あんたさ、レインでしょ!

玲音:
え?

タロウ:
俺、前に一回見てるんだ。
ワイヤードでね。

玲音:
あたしを・・・ワイヤードで?

タロウ:
そん時は、今と全然違ってた。
ワイヤードでは、リアル・ワールドと違う人格を装うってのは、
まあ普通だけど、ちょっと極端だね、あんた!

ミューミュー:
ウッソー!

タロウ:
この前、この店で馬鹿が事件を起こした時にもいたでしょ!
何企んでんの?

玲音:
あたし、何をしてあげたらいいの?

タロウ:
一回、デートしてよ!

ミューミュー:
バカ。

タロウ:
へへ。
でも、今の人格じゃなくて、あのイッちゃってるレインの方でだよ!

タロウ:
じょ、冗談!
また、その気になった時にでも。

ミューミュー:
何言ってんだよ?!

マサユキ:
あのさあ・・・

タロウ:
いいんだよ!行くぞ!

ミューミュー:
なーにが?!フン!



美香:
あっ・・・
あ、あの・・・うちに御用ですか?
どなたですか?
あっ・・・

謎の男①:
あなたは、私達と会っていない。

美香:
な、何よ?!
警察呼ぶわよ!

謎の男②:
なぜなら、私達は今、ここにいないから。

美香:
や、やだ・・・
な、何よ!?



美香:
ねぇ、ママ、今度来たら絶対警察呼んでよ!?
聞いてる?ママ!

もう!



美香:
フン!

あ?な、何してんのよ、玲音?
あぁ・・・
何してんのよ?そんな・・・カッコで・・・

玲音:
んー、静電気がマズイんだって。
服は脱いじゃった方がいいらしいんだ。

美香:
バ、バッカじゃない・・・?

玲音:
お帰り、お姉ちゃん!