Haruhi(Japanese)>12. エンドレスエイト Ⅰ

キョン:
気だるいが、いたってごく正常な、お盆を過ぎた夏の盛りの日のことである。
テレビに映る試合は、俺と全く縁もゆかりもない県どうしの戦いだが、
判官贔屓(はんがんびいき:cheer for the underdog)的精神により、負けているほうを
なんとなーく応援していると、携帯が着信音をがなりたて始めやがった。
ハルヒか・・・。

ハルヒ:
今日あんた暇でしょ? 二時ジャストに全員駅前に集合だから。

キョン:
おっ・・・あっさり切っちまいやがった。俺が今日暇だとなんでわかるんだ。
これでも俺は・・・まあ、まったくなんの予定もないわけだが・・・ん?
なんだ?

ハルヒ:
言い忘れてたわ。水着一式を持って自転車で来ること、それから、十分なお金ね。
以上~。オ~バ~?

キョン:
や~だ~。
何なんだ一体。

TV:
林が今、悠々と三塁を回る。ピッチャーの鈴木、マウンド上で崩れ落ちています。
見るに忍びない光景です。悲惨ですねぇ。 ・・

キョン:
はあ。しょうがねえなぁ。

opening

ハルヒ:
遅いわよ、キョン。もっとやる気を見せなさい。団長を待たせるなんて、あんた何様のつもり?
ペナルティーよ、ペナリティー。

キョン:
ちゃんと15分前に来たってのに、なんでいつも俺が最後なんだ?

ハルヒ:
それじゃあ、全員揃ったことだし、出発しましょう。
小泉君、あなたはみくるちゃんを乗せてあげなさい。
私と有希はキョンの後ろに乗るから。

キョン:
一応聞いておくが、 
どこに?

ハルヒ:
市民プールに決まってるじゃない。夏は夏らしく、夏じみたことをしないといけないの。
失った時間は決して取り戻すことはできないのよ。だから今やるの。
このたった一度きりの高一の夏休みに!

キョン:
失った時間ねぇ。



ハルヒ
うーん。この消毒液の匂い、いかにもって気がするわー。
それーっ。 そーれーぃっ。
早く来なさーい。水がぬるくて気持ちいいわよ。

キョン:
あちこちに書いてある飛び込み禁止という文字が読めないのか、あいつは。

小泉:
でも、ほほえましいですねえ。
涼宮さんも結構、常識的な楽しみ方を身につけてきたと思いませんか?

キョン:
いきなり電話かけてきて、一方的に用件だけ言って切っちまうような誘い方は
あまり常識的とは言えないだろ?

小泉:
まぁ、ああやって楽しげに笑っている涼宮さんは、この世を揺るがすような事はしないでしょうから。

キョン:
だと、いいがなぁ。

小泉:
心配はいりませんよ。例の合宿以来、目立った問題は何も起きていません。
今のところ、涼宮さんにとっても、僕たちにとっても、世界は平和そのものです。

ハルヒ:
そろそろご飯にしましょ。
なんと、みくるちゃんの手作りサンドイッチよ。

小泉:
おいしいですねぇ

ミクル:
ありがとうございます。

ハルヒ:
唐揚げもう一個もらいっと。
みくるちゃん、お皿取って。

みくる:はーい

キョン:
確かに、平和そのものだな。

女子児童:すみませーん。

ハルヒ:
よーし、行くわよー。

キョン: 
市民プールというより、庶民プールと名乗った方が似つかわしい場所だな。
こんな夏休みの過ごし方も悪くない。

ハルヒ:
キョン。
これが私の団員達よ。
なんでも言うことをきくから、なんでも言っちゃいなさい。

女子児童:はーい



ハルヒ:
これからの活動計画を考えてみたんだけど、どうかしら?

キョン:
なんだ? これは?

ハルヒ:
残り少ない夏休みをどうやって過ごすかの予定表よ。

キョン:
SOS団の?

ハルヒ:
そう。
夏休みももうあと2週間しかないのよねぇ。
やり残したことはたくさんあるような気がするのに。
ここからは巻きでいくわよ。

小泉:
うん。夏休み中にしなきゃだめなこと、ですか。

みくる:
夏季合宿、プール、盆踊り、花火大会、バイト、天体観測・・・。
たくさんありますねぇ。

キョン:
これだけのメニューを2週間足らずでこなさないといけないわけか。

ハルヒ:
他にも何かしたいことある?

みくる:
えっとー、私は金魚すくいがしたいです。

ハルヒ:
オッケー。金魚すくい、っと。
明日から決行よ。
この近くで、明日盆踊りやってるとこってある?
花火大会でもいいけど。

キョン:
せめて調べてから決行してくれ。

小泉:
僕が調べておきましょう。
追って連絡します。

ハルヒ:
あ、金魚すくいも忘れないでね。
みくるちゃんたっての希望なんだから。

小泉:
はい。

キョン:
なぜ俺がいつも払うはめになるんだ?

ハルヒ:
遅れたから当然でしょ。明日は待たせるんじゃないわよ。
んじゃ、今日は解散。

キョン:
やれやれ、これから毎日遊ぶっていうのか?