K-ON! (Japanese) > 05. 顧問!
唯: りっちゃん、おいっす。
律: お~す。
唯: ああ…暑い。あッ、何見てんの?
律: おもしろいもん見っけたぞ。見てみ。
唯: ああ、何これ?
律: この前、澪が見つけた段ボールに入ってたんだ。昔の軽音部の写真みたい。
唯: うわ~、すごいね。
律: いつの時代のバンドだよって感じだよな。
唯: えッ、そ、そうだね…
バンドといえばこういうイメージしかなかった私って…
OP
澪: ここ、ちょっと変えてみるか。
律: う~ん。
唯: 痛て。
律: どうした?
唯: 指の皮むけちった。
律: うわッ、痛々しい。
唯: ほら~、澪ちゃんも見て。
律: うん? あれ。
澪: 見えない聞こえない見えない聞こえない…
律: ふふ~ん…ああッ! 私もドラムの練習のしすぎで手のマメつぶれちゃった! うりうり、うりうりうり。うりうり。ほら! ほら見てみ! ほら! マメが! xxx 澪、見て見て! ほら! ほら! 見て見て、澪ちゃん。見て見て。あはは。ほら! xxx ほら! うりゃうりゃうりゃ! うっしゃーっ! ほらほら!
唯: りっちゃん、ばんそうこうとか持ってない?
さわ子: ごめんね。ちょっと譜面台を…あら?
先生: じゃあ、2人でノートを持ってきてくれるかな。
紬: ありがとうございました。
唯: 痛~ッ!
紬: あら?
唯: 消毒しみた~。
さわ子: はいはい。指そのまま固定しててね。
唯: あ、キレイな机。
さわ子: はい。これでいいわよ。
唯: ありがとうございます。
さわ子: どれどれ。
唯: あの…
さわ子: うん…まだまだね。この分じゃ、またすぐ皮むけるわよ。
唯: ええ~
さわ子: そうやって何度もやってるうちに皮が硬くなって弾けるようになるの。誰もが通る道よ。
唯: う~ん、そうなのか。って、あれ?先生ギターやってたんですか?
さわ子: ううん。昔、友達がね。
唯: ふ~ん。
さわ子: あッ、お疲れさまです。
先生: お疲れさまです。
さわ子: じゃあね。
唯: あッ、はい。
さわ子: 先生、お茶いかがですか?
先生: あッ、どうも。
唯: いい先生だな。お? ムギちゃ~ん。
紬: えッ?
唯: ムギちゃん、どうかしたの?
紬: いえ…、キレイだったなって思って。
唯: ああ、さわ子先生ね。それよりどこ行ってたの?
紬: あッ、うん。澪ちゃんに言われて、学園祭のステージを借りるための申請に行ってたんだけど、軽音部はまだちゃんとしたクラブって認められてないって断られちゃった。
唯: ああ~、そっか。ん? えッ?
律: 部として認められてないだって!?
紬: うん、そうみたい。
唯: 部員が4人集まったら大丈夫じゃなかったの?
律: そのはずなんだけどな。
唯: ていうか、クラブって認められてなかったのに、音楽室好き放題使ってよかったのかな。
律: 今まで何も言われなかったから、大丈夫だよ、きっと。それよりどういう理由なのか聞きに行かないとな。
紬: そうね。
律: あれ、そういや澪は?
唯: あ、澪ちゃんなら、あそこでまだおびえてる。
律: 帰ってこ~い!
唯: たのもう。
律: 部長は私。
和: あら、唯?
唯: 和ちゃん? ええ~、和ちゃんが何でここに?
和: 何でって、生徒会だからだけど。
唯: えッ!? すごいね。さすが和ちゃんだよ。
律: お前らホントに幼なじみ?
和: うん…やっぱりリストにはないわね。
唯: そんな。
律: もしかして・・・
唯: りっちゃん、何か心当たりが!?
律: うん、恐らくこれは…、弱小部を廃部に追い込むための、生徒会の陰謀!
唯: 和ちゃんは本当は心がキレイな子! 目を覚まして!
和: 何の話? ていうか、部活申請用紙が出てないんじゃないの?
紬: 部活申請用紙?
律: そんな話は聞いてないぞ。
澪: 聞いてるだろ!
律: そう、あれはまだ春のこと。
律: あたしが部長だからあたしが書く。
澪: 大丈夫か?
紬: あの~、パウンドケーキ持ってきたんだけど。
律: うわ~、食べようぜ。
澪: おい、律。
律: わ~かってるよ~。食べ終わったらすぐ書くって。食べ終わったらすぐ書くって…書くって…書くって…
澪: やっぱりお前のせいか!
紬: 澪ちゃん、りっちゃんも悪気があったわけじゃないし。
澪: ムギは甘いんだ!
紬: まあまあまあまあまあまあ…
澪: 6回! xxx 律は昔から甘やかすとすぐ調子に乗るから、xxx 言わないと駄目なんだ!
和: 何ていうか、軽音部って唯にぴったりだと思うわ。
唯: えッ?
和: しょうがないわね。私が何とかしてあげるわ。
唯: えッ!
4: ホント!
和: 「軽音部」と。部員は4人。で…顧問は?
4: 顧問?
和: あんた達…
律: 山中さわ子、わが校の音楽教師である。そのキレイな顔立ちとやわらかな物腰で、生徒だけでなく教師の間でも人気が高い。さらに楽器の腕前や歌声もすばらしく…
さわ子: あの・・・
律: ファンクラブが存在するほどの人気がある。
さわ子: さっきから何を言ってるの? あなた達。
4: 先生!
さわ子: はい?
律: 軽音部の顧問になってください。
さわ子: まだ顧問いなかったんだ。
澪: 先生しか頼める人がいないんです。
紬: お願いします。
さわ子: ごめんなさい。なってあげたいのはやまやまだけど、私吹奏楽部の顧問しているから、掛け持ちはちょっと…
唯: そんな…
さわ子: 本当ごめんなさいね。
律: 今まで声をかけてきた男は数知れず・・・
さわ子: だ、だからおだてても無理です。
澪: 時間なら取らせません。
紬: 練習も自分達でやりますから。
律: ここに名前書いてハンコ押すだけ。ねッ、簡単でしょ。
さわ子: ちょ、ちょっと…
唯: じ…。先生、ここの卒業生ですよね?
さわ子: ええ。
唯: さっき、昔の軽音部のアルバム見てたんですけど・・・
さわ子: えッ!
唯: うん…
澪: どうかしたのか?
さわ子: アルバムはどこにあるの?
唯: え? 部室ですけど。
さわ子: そう。
唯: 先生? お!
さわ子: まさか最後の1冊が学校に保管されているとは思わなかったわ。
あれは、決して人々に知られてはいけない血塗られた歴史。決して目覚めさせてはいけない悪魔の子。見てはならない封印の書。開けてはならない禁断の扉。あれは、あれは、あれは…!
これでもう…
律: やっぱり、先生なんですね。
唯: ほら、この人。
さわ子: よくわかったわね。そうよ、私、軽音部にいたの。
紬: いッ、意外でした。
唯: じゃあ、もしかしてこの声も。
DD: お前らがくるのを待っていた~、死ね~!
さわ子: やめて~~恥ずかしい…うん?
澪: 聞こえない聞こえない…
律: まだ引きずってんのか。
紬: あれ、じゃあギターも。
唯: そっか。弾いて弾いて。
さわ子: えッ。
唯: まあまあ。
さわ子: ちょっと…ダメ! どきゅーん!
ああ…このマホガニーとメイプルのレスポール独特の重さ、このハムバッキング・ピックアップの甘くひずんだ、倍音の多いやわらかい音・・・
唯: 先生?
さわ子: しゃ~ねえな。
4: 目つき変わった!
澪: 早弾き!
紬: タッピング!
律: 歯ギター!
唯: ああ…私のギター・・・
さわ子: おめ~ら、音楽室好きに使いすぎなんだよ!
4: ごッ、ごめんなさい!
さわ子: 大体な!…はッ。今の見た? 先生のときはおしとやかキャラで通すって決めてたのに。
律: 先生。
さわ子: あれはもう8年も前のこと・・・
律: いきなり語り出した。
さわ子: 私は…
さわ子: 私は恋をした。
好きです・・・
男: ごめんね。俺、もっとワイルドな女の子が好きなんだ。
さわ子: 私は決心した、彼の好みの女性になろうと。もっとワイルドに。もっともっとワイルドに。もっと、もっと、もっと! ワイルド、ワイルド、ワイルドに!
つきあってやってもいいんだぜ。
男: さわ子・・・やりすぎ。
さわ子: しょせん、そんなものよね。
唯: 先生。
さわ子: いいの、なぐさめの言葉なんて。
律: 先生、顔を上げて。
さわ子: りっちゃん。
律: バラされたくなかったら顧問やってください。
唯: りっちゃん、たくましい子…おッ? ムギちゃん?
澪: どうした?
唯: ムギちゃんが。
澪: ムギ!
唯: 大丈夫? 何かボーッとしてるよ。カゼ?
紬: ううん。
澪: って感じのオリジナルなんですけど。
律: どうですか? 顧問として。
さわ子: そうね。前ノリ後ノリとか、リズムセクションがバラバラとか、いろいろ気になることはあるけど、まず…ボーカルはいないの?
澪: あッ!
さわ子: じゃあ、まさか歌詞もまだとか。
唯: え、ええと…
さわ子: それでよく学園祭のステージに出ようなんて考えたわね。
澪: すみません。
さわ子: 音楽室占領して今まで何やってたの! ここはお茶を飲む場所じゃないのよ!
唯: 怒られた・・・
さわ子: 大体ね!
紬: 先生!
さわ子: あん?
紬: ケ…ケーキいかがですか?
3: ええ~ッ!
さわ子: いただきます!
3: いただくんかい!
澪: え~と・・・。はあ…詞、先にすればよかった。ムギか。
紬: さわ子先生が顧問になってくれて、なんだかドキドキしています。歌詞作り頑張って。
澪: 「ドキドキ」・・・まさかな。
3: できた!?
澪: あ、ああ…
唯: 見せて見せて。
澪: えッ、もう!?
律: いや、もうって。
紬: 私も見たいな。
澪: でも、やっぱり恥ずかしい。
唯: 大丈夫だよ。笑ったりしないし。
律: そうそう。
澪: でも…ああ、待って。
律: 待てない。持ってきたってことは見せるってことだろ。
紬: 澪ちゃん、お願い。
唯: ちょ、ちょっとだけ、こそ~っと私に。
律: ああーっ、ずりい。見せんなら私が先だろ。
唯: ええ~、何で?
律: なぜなら私が部長だから。
唯: ぬッ…ならば私は、澪ちゃんの心の友だから。
紬: じゃあ、私は澪ちゃんの心の友その2だから。
律: こしゃくな。私なんか澪の心のふるさとだぞ!
澪: いつからそうなった?
唯: あー、田舎のおばあちゃん元気かな。
律: いや、今関係ねえから。
澪: あッ、去年年賀状出したっけ。
律: 話をそらすな!
さわ子: 早く見せんか~い!
澪: あッ。
律: どれどれ。
かッ、かゆい!
さわ子: 破りたい・・・!
澪: 私としては、いい感じに書けたと思うんだけど。やっぱダメかな。
さわ子: ダメっていうか・・・
律: そうそう。ちょいイメージと違ったっていうか。ほら、唯からも何か言って。
唯: すごくいい!
律: マジで!?
唯: 私はすごく好きだよ、この歌詞。
澪: ホ、ホント?
律: ムギはどう思う? 超うっとりしてる~! ま、まさかムギも気に入ったの?
紬: はい。
律: こういうのあり?
紬: うん。
律: ホントに?
紬: イエス。
律: マジで?
紬: どんとこいです。
律: さわちゃん!
さわ子: さわちゃん?
律: さわちゃんはこの歌詞ないと思うよね?
さわ子: ええ…そ、そうね。
律: だよね。三人とももう少し考え直そうよ。まずはみんな落ち着いて。
さわ子: 待てよ。こういうキャピキャピした曲を好きって言ったほうが私のイメージ上がるかも。
澪: 先生若いですね。
紬: さすがさわ子先生。
唯: もうさわ子先生っきゃない。
さわ子! さわ子! さわ子!…
さわ子: わ、私もこの曲好きかも。
律: あれ!?
律: それじゃあ、もうこの歌詞でいくか。
唯: わ~い。よかったね、澪ちゃん。
澪: ああ…うん。
律: じゃあ、澪がボーカルってことで。
澪: えッ! 私は無理だよ。
律: 何で?
澪: だって…だって…、こんな恥ずかしい歌詞なんか歌えないよ!
律: おい、作者!
さわ子: 困ったわね。
律: うん…澪がダメとなると・・・。ムギやってみる?
紬: えっ。私はキーボードで精いっぱいだし。
律: そっか…じゃあ・・・。だよね。唯、やってみるか?
唯: えッ、私? でも歌そんなにうまくないし、私で務まるかどうかわかんないっていうか…
律: あ、じゃあ、いいや。
唯: ごめん、ウソ! 歌う! 歌いたいです!
律: えー、それじゃあ、歌ってみよっか。
唯: ラジャー。キミを見てると いつもハー…
律: あ、ちょっと、ちょっと。ギター弾きながら歌わないと。
唯: あッ、そっか。忘れてた。
澪: おいおい。
唯: えっと…
3: 今度は歌忘れてる。
唯: ギターを弾きながら歌が歌えない。
さわ子: 仕方ないわね。先生が特訓してあげる。
唯: 先生。
さわ子: それじゃあ、まず歯ギターのやり方は…
唯: それはいいです。
さわ子: じゃあ、振り落とされないようについてきなさいよ!
唯: ラジャー!
澪: 律。
律: 何?
澪: ムギってさ、もしかしてさわ子先生のこと・・・
律: 何?
澪: いや、だから、さわ子先生をさ。
律: えッ、マジで? ムギ、さわ子先生のこと好きなのか?
澪: ちょ! バカ!
紬: えッ?
澪: えっ?
紬: ああ、いえ。ただ、女の子同士っていいなって。
律: えッ、まさか…
澪: 何だ、よかった。
律: えッ、いいのかよ。
紬: 本人達がよければ、いいんじゃないでしょうか。
澪: えっと、ああ…うん?
律: ああ、何を言ってるんだ?
和: ええと、ボーカルが唯で、曲目が「ふわふわタイム」と。OK、じゃあ出演時間決まったらまた連絡するね。
紬: よかった。わざわざ来てもらってありがとう。
和: これも生徒会の仕事だから。でもホントに唯で大丈夫なの?
律: 先週から放課後さわ子先生の家で特訓してるからな。
澪: たぶん間に合うんじゃないかと。
さわ子: 待たせたわね。完ぺきよ。さあ唯ちゃん、見せてあげなさい!
律: すげ~!
澪: 上達している!
紬: 自信に満ちあふれた表情!
唯: キミを見てると いつもハートDOKI☆DOKI…
澪: なッ…
さわ子: てへっ、練習させすぎちゃった。
唯: 声かれちゃった。
律: カワイ子ぶってもダメだ!
紬: そんな…じゃあボーカルは?
和: 変更するなら今日中よ。
律: えッ、そうなのか? だとすると…
澪: えッ!?
さわ子: そうね。澪ちゃんなら歌詞覚えてるだろうし。
律: 歌詞作った本人だしな。
紬: がんばってね、澪ちゃん。
唯: ハスキー唯からもお願い。
澪: ああッ…
律: お、おいッ!
紬: 澪ちゃん!
律: しっかりしろ~!
唯: 本番まであと3日。
【予告】
澪: ねえ律、本番前の練習やっておかない?
律: あッ、ごめん。今無理。
和: じゃあ、まだ結構時間あるし、練習しておきたいんじゃないの?
律: そうだ。練習だ。何もなかった。何もなかったんだ。
澪: 今日本番だろ。めいっぱい練習しておこうよ。
紬: 練習しよう。
律: 練習か。
Portions not contributed by visitors are Copyright 2018 Tangient LLC
TES: The largest network of teachers in the world
Turn off "Getting Started"
Home
...
Loading...
律: お~す。
唯: ああ…暑い。あッ、何見てんの?
律: おもしろいもん見っけたぞ。見てみ。
唯: ああ、何これ?
律: この前、澪が見つけた段ボールに入ってたんだ。昔の軽音部の写真みたい。
唯: うわ~、すごいね。
律: いつの時代のバンドだよって感じだよな。
唯: えッ、そ、そうだね…
バンドといえばこういうイメージしかなかった私って…
OP
澪: ここ、ちょっと変えてみるか。
律: う~ん。
唯: 痛て。
律: どうした?
唯: 指の皮むけちった。
律: うわッ、痛々しい。
唯: ほら~、澪ちゃんも見て。
律: うん? あれ。
澪: 見えない聞こえない見えない聞こえない…
律: ふふ~ん…ああッ! 私もドラムの練習のしすぎで手のマメつぶれちゃった! うりうり、うりうりうり。うりうり。ほら! ほら見てみ! ほら! マメが! xxx 澪、見て見て! ほら! ほら! 見て見て、澪ちゃん。見て見て。あはは。ほら! xxx ほら! うりゃうりゃうりゃ! うっしゃーっ! ほらほら!
唯: りっちゃん、ばんそうこうとか持ってない?
さわ子: ごめんね。ちょっと譜面台を…あら?
先生: じゃあ、2人でノートを持ってきてくれるかな。
紬: ありがとうございました。
唯: 痛~ッ!
紬: あら?
唯: 消毒しみた~。
さわ子: はいはい。指そのまま固定しててね。
唯: あ、キレイな机。
さわ子: はい。これでいいわよ。
唯: ありがとうございます。
さわ子: どれどれ。
唯: あの…
さわ子: うん…まだまだね。この分じゃ、またすぐ皮むけるわよ。
唯: ええ~
さわ子: そうやって何度もやってるうちに皮が硬くなって弾けるようになるの。誰もが通る道よ。
唯: う~ん、そうなのか。って、あれ?先生ギターやってたんですか?
さわ子: ううん。昔、友達がね。
唯: ふ~ん。
さわ子: あッ、お疲れさまです。
先生: お疲れさまです。
さわ子: じゃあね。
唯: あッ、はい。
さわ子: 先生、お茶いかがですか?
先生: あッ、どうも。
唯: いい先生だな。お? ムギちゃ~ん。
紬: えッ?
唯: ムギちゃん、どうかしたの?
紬: いえ…、キレイだったなって思って。
唯: ああ、さわ子先生ね。それよりどこ行ってたの?
紬: あッ、うん。澪ちゃんに言われて、学園祭のステージを借りるための申請に行ってたんだけど、軽音部はまだちゃんとしたクラブって認められてないって断られちゃった。
唯: ああ~、そっか。ん? えッ?
律: 部として認められてないだって!?
紬: うん、そうみたい。
唯: 部員が4人集まったら大丈夫じゃなかったの?
律: そのはずなんだけどな。
唯: ていうか、クラブって認められてなかったのに、音楽室好き放題使ってよかったのかな。
律: 今まで何も言われなかったから、大丈夫だよ、きっと。それよりどういう理由なのか聞きに行かないとな。
紬: そうね。
律: あれ、そういや澪は?
唯: あ、澪ちゃんなら、あそこでまだおびえてる。
律: 帰ってこ~い!
唯: たのもう。
律: 部長は私。
和: あら、唯?
唯: 和ちゃん? ええ~、和ちゃんが何でここに?
和: 何でって、生徒会だからだけど。
唯: えッ!? すごいね。さすが和ちゃんだよ。
律: お前らホントに幼なじみ?
和: うん…やっぱりリストにはないわね。
唯: そんな。
律: もしかして・・・
唯: りっちゃん、何か心当たりが!?
律: うん、恐らくこれは…、弱小部を廃部に追い込むための、生徒会の陰謀!
唯: 和ちゃんは本当は心がキレイな子! 目を覚まして!
和: 何の話? ていうか、部活申請用紙が出てないんじゃないの?
紬: 部活申請用紙?
律: そんな話は聞いてないぞ。
澪: 聞いてるだろ!
律: そう、あれはまだ春のこと。
律: あたしが部長だからあたしが書く。
澪: 大丈夫か?
紬: あの~、パウンドケーキ持ってきたんだけど。
律: うわ~、食べようぜ。
澪: おい、律。
律: わ~かってるよ~。食べ終わったらすぐ書くって。食べ終わったらすぐ書くって…書くって…書くって…
澪: やっぱりお前のせいか!
紬: 澪ちゃん、りっちゃんも悪気があったわけじゃないし。
澪: ムギは甘いんだ!
紬: まあまあまあまあまあまあ…
澪: 6回! xxx 律は昔から甘やかすとすぐ調子に乗るから、xxx 言わないと駄目なんだ!
和: 何ていうか、軽音部って唯にぴったりだと思うわ。
唯: えッ?
和: しょうがないわね。私が何とかしてあげるわ。
唯: えッ!
4: ホント!
和: 「軽音部」と。部員は4人。で…顧問は?
4: 顧問?
和: あんた達…
律: 山中さわ子、わが校の音楽教師である。そのキレイな顔立ちとやわらかな物腰で、生徒だけでなく教師の間でも人気が高い。さらに楽器の腕前や歌声もすばらしく…
さわ子: あの・・・
律: ファンクラブが存在するほどの人気がある。
さわ子: さっきから何を言ってるの? あなた達。
4: 先生!
さわ子: はい?
律: 軽音部の顧問になってください。
さわ子: まだ顧問いなかったんだ。
澪: 先生しか頼める人がいないんです。
紬: お願いします。
さわ子: ごめんなさい。なってあげたいのはやまやまだけど、私吹奏楽部の顧問しているから、掛け持ちはちょっと…
唯: そんな…
さわ子: 本当ごめんなさいね。
律: 今まで声をかけてきた男は数知れず・・・
さわ子: だ、だからおだてても無理です。
澪: 時間なら取らせません。
紬: 練習も自分達でやりますから。
律: ここに名前書いてハンコ押すだけ。ねッ、簡単でしょ。
さわ子: ちょ、ちょっと…
唯: じ…。先生、ここの卒業生ですよね?
さわ子: ええ。
唯: さっき、昔の軽音部のアルバム見てたんですけど・・・
さわ子: えッ!
唯: うん…
澪: どうかしたのか?
さわ子: アルバムはどこにあるの?
唯: え? 部室ですけど。
さわ子: そう。
唯: 先生? お!
さわ子: まさか最後の1冊が学校に保管されているとは思わなかったわ。
あれは、決して人々に知られてはいけない血塗られた歴史。決して目覚めさせてはいけない悪魔の子。見てはならない封印の書。開けてはならない禁断の扉。あれは、あれは、あれは…!
これでもう…
律: やっぱり、先生なんですね。
唯: ほら、この人。
さわ子: よくわかったわね。そうよ、私、軽音部にいたの。
紬: いッ、意外でした。
唯: じゃあ、もしかしてこの声も。
DD: お前らがくるのを待っていた~、死ね~!
さわ子: やめて~~恥ずかしい…うん?
澪: 聞こえない聞こえない…
律: まだ引きずってんのか。
紬: あれ、じゃあギターも。
唯: そっか。弾いて弾いて。
さわ子: えッ。
唯: まあまあ。
さわ子: ちょっと…ダメ! どきゅーん!
ああ…このマホガニーとメイプルのレスポール独特の重さ、このハムバッキング・ピックアップの甘くひずんだ、倍音の多いやわらかい音・・・
唯: 先生?
さわ子: しゃ~ねえな。
4: 目つき変わった!
澪: 早弾き!
紬: タッピング!
律: 歯ギター!
唯: ああ…私のギター・・・
さわ子: おめ~ら、音楽室好きに使いすぎなんだよ!
4: ごッ、ごめんなさい!
さわ子: 大体な!…はッ。今の見た? 先生のときはおしとやかキャラで通すって決めてたのに。
律: 先生。
さわ子: あれはもう8年も前のこと・・・
律: いきなり語り出した。
さわ子: 私は…
さわ子: 私は恋をした。
好きです・・・
男: ごめんね。俺、もっとワイルドな女の子が好きなんだ。
さわ子: 私は決心した、彼の好みの女性になろうと。もっとワイルドに。もっともっとワイルドに。もっと、もっと、もっと! ワイルド、ワイルド、ワイルドに!
つきあってやってもいいんだぜ。
男: さわ子・・・やりすぎ。
さわ子: しょせん、そんなものよね。
唯: 先生。
さわ子: いいの、なぐさめの言葉なんて。
律: 先生、顔を上げて。
さわ子: りっちゃん。
律: バラされたくなかったら顧問やってください。
唯: りっちゃん、たくましい子…おッ? ムギちゃん?
澪: どうした?
唯: ムギちゃんが。
澪: ムギ!
唯: 大丈夫? 何かボーッとしてるよ。カゼ?
紬: ううん。
澪: って感じのオリジナルなんですけど。
律: どうですか? 顧問として。
さわ子: そうね。前ノリ後ノリとか、リズムセクションがバラバラとか、いろいろ気になることはあるけど、まず…ボーカルはいないの?
澪: あッ!
さわ子: じゃあ、まさか歌詞もまだとか。
唯: え、ええと…
さわ子: それでよく学園祭のステージに出ようなんて考えたわね。
澪: すみません。
さわ子: 音楽室占領して今まで何やってたの! ここはお茶を飲む場所じゃないのよ!
唯: 怒られた・・・
さわ子: 大体ね!
紬: 先生!
さわ子: あん?
紬: ケ…ケーキいかがですか?
3: ええ~ッ!
さわ子: いただきます!
3: いただくんかい!
澪: え~と・・・。はあ…詞、先にすればよかった。ムギか。
紬: さわ子先生が顧問になってくれて、なんだかドキドキしています。歌詞作り頑張って。
澪: 「ドキドキ」・・・まさかな。
3: できた!?
澪: あ、ああ…
唯: 見せて見せて。
澪: えッ、もう!?
律: いや、もうって。
紬: 私も見たいな。
澪: でも、やっぱり恥ずかしい。
唯: 大丈夫だよ。笑ったりしないし。
律: そうそう。
澪: でも…ああ、待って。
律: 待てない。持ってきたってことは見せるってことだろ。
紬: 澪ちゃん、お願い。
唯: ちょ、ちょっとだけ、こそ~っと私に。
律: ああーっ、ずりい。見せんなら私が先だろ。
唯: ええ~、何で?
律: なぜなら私が部長だから。
唯: ぬッ…ならば私は、澪ちゃんの心の友だから。
紬: じゃあ、私は澪ちゃんの心の友その2だから。
律: こしゃくな。私なんか澪の心のふるさとだぞ!
澪: いつからそうなった?
唯: あー、田舎のおばあちゃん元気かな。
律: いや、今関係ねえから。
澪: あッ、去年年賀状出したっけ。
律: 話をそらすな!
さわ子: 早く見せんか~い!
澪: あッ。
律: どれどれ。
かッ、かゆい!
さわ子: 破りたい・・・!
澪: 私としては、いい感じに書けたと思うんだけど。やっぱダメかな。
さわ子: ダメっていうか・・・
律: そうそう。ちょいイメージと違ったっていうか。ほら、唯からも何か言って。
唯: すごくいい!
律: マジで!?
唯: 私はすごく好きだよ、この歌詞。
澪: ホ、ホント?
律: ムギはどう思う? 超うっとりしてる~! ま、まさかムギも気に入ったの?
紬: はい。
律: こういうのあり?
紬: うん。
律: ホントに?
紬: イエス。
律: マジで?
紬: どんとこいです。
律: さわちゃん!
さわ子: さわちゃん?
律: さわちゃんはこの歌詞ないと思うよね?
さわ子: ええ…そ、そうね。
律: だよね。三人とももう少し考え直そうよ。まずはみんな落ち着いて。
さわ子: 待てよ。こういうキャピキャピした曲を好きって言ったほうが私のイメージ上がるかも。
澪: 先生若いですね。
紬: さすがさわ子先生。
唯: もうさわ子先生っきゃない。
さわ子! さわ子! さわ子!…
さわ子: わ、私もこの曲好きかも。
律: あれ!?
律: それじゃあ、もうこの歌詞でいくか。
唯: わ~い。よかったね、澪ちゃん。
澪: ああ…うん。
律: じゃあ、澪がボーカルってことで。
澪: えッ! 私は無理だよ。
律: 何で?
澪: だって…だって…、こんな恥ずかしい歌詞なんか歌えないよ!
律: おい、作者!
さわ子: 困ったわね。
律: うん…澪がダメとなると・・・。ムギやってみる?
紬: えっ。私はキーボードで精いっぱいだし。
律: そっか…じゃあ・・・。だよね。唯、やってみるか?
唯: えッ、私? でも歌そんなにうまくないし、私で務まるかどうかわかんないっていうか…
律: あ、じゃあ、いいや。
唯: ごめん、ウソ! 歌う! 歌いたいです!
律: えー、それじゃあ、歌ってみよっか。
唯: ラジャー。キミを見てると いつもハー…
律: あ、ちょっと、ちょっと。ギター弾きながら歌わないと。
唯: あッ、そっか。忘れてた。
澪: おいおい。
唯: えっと…
3: 今度は歌忘れてる。
唯: ギターを弾きながら歌が歌えない。
さわ子: 仕方ないわね。先生が特訓してあげる。
唯: 先生。
さわ子: それじゃあ、まず歯ギターのやり方は…
唯: それはいいです。
さわ子: じゃあ、振り落とされないようについてきなさいよ!
唯: ラジャー!
澪: 律。
律: 何?
澪: ムギってさ、もしかしてさわ子先生のこと・・・
律: 何?
澪: いや、だから、さわ子先生をさ。
律: えッ、マジで? ムギ、さわ子先生のこと好きなのか?
澪: ちょ! バカ!
紬: えッ?
澪: えっ?
紬: ああ、いえ。ただ、女の子同士っていいなって。
律: えッ、まさか…
澪: 何だ、よかった。
律: えッ、いいのかよ。
紬: 本人達がよければ、いいんじゃないでしょうか。
澪: えっと、ああ…うん?
律: ああ、何を言ってるんだ?
和: ええと、ボーカルが唯で、曲目が「ふわふわタイム」と。OK、じゃあ出演時間決まったらまた連絡するね。
紬: よかった。わざわざ来てもらってありがとう。
和: これも生徒会の仕事だから。でもホントに唯で大丈夫なの?
律: 先週から放課後さわ子先生の家で特訓してるからな。
澪: たぶん間に合うんじゃないかと。
さわ子: 待たせたわね。完ぺきよ。さあ唯ちゃん、見せてあげなさい!
律: すげ~!
澪: 上達している!
紬: 自信に満ちあふれた表情!
唯: キミを見てると いつもハートDOKI☆DOKI…
澪: なッ…
さわ子: てへっ、練習させすぎちゃった。
唯: 声かれちゃった。
律: カワイ子ぶってもダメだ!
紬: そんな…じゃあボーカルは?
和: 変更するなら今日中よ。
律: えッ、そうなのか? だとすると…
澪: えッ!?
さわ子: そうね。澪ちゃんなら歌詞覚えてるだろうし。
律: 歌詞作った本人だしな。
紬: がんばってね、澪ちゃん。
唯: ハスキー唯からもお願い。
澪: ああッ…
律: お、おいッ!
紬: 澪ちゃん!
律: しっかりしろ~!
唯: 本番まであと3日。
【予告】
澪: ねえ律、本番前の練習やっておかない?
律: あッ、ごめん。今無理。
和: じゃあ、まだ結構時間あるし、練習しておきたいんじゃないの?
律: そうだ。練習だ。何もなかった。何もなかったんだ。
澪: 今日本番だろ。めいっぱい練習しておこうよ。
紬: 練習しよう。
律: 練習か。