――― 日常の14 ―――

校長先生「最近、校内の風紀が乱れてきてましてな。生徒指導の桜井先生にはもう少し厳しく取り締まっていただきたいと」

桜井先生「はい! が、がんばります!」


桜井先生(そうだ、私は私を変えるために生徒指導の先生になったんだもん。しっかり取り締まらなきゃ)「あ・・・。なっ!?」(何てこった、いきなり何てこった。でも、だめ。怯んじゃだめなんだから)「あ、あの!」

笹原「どうなされた、御仁」

桜井先生「あ、すみません。えーとですね、歩きながら食べるのは少し行儀が悪いかなー、なんて」

笹原「はっはっはっは! 失敬。朝食を抜いたせいか、腹のやつが急にいななきおってな。今すぐ下げよう。失礼であった」

桜井先生「す、すみません。いいんです、わかってもらえれば、それで」(よかった。言えばわかってくれるんだなあ)

笹原「伝えてくれ」

桜井先生「あ・・・」

笹原「美味であったと!!」

桜井先生「あああああ・・・・」

みさと「何が美味よ! 廊下で大声出して。少しは風紀考えたらどうなのよ!」

桜井先生「あ、あのー、それは学校に持ってきては・・・」

ウェボシー「みさと、行くよー」

みさと「あ、うん。笹原、あんたは昼休み、話があるから教室にいなさいよ」

桜井先生(確かに風紀が乱れているのかもしれない)

笹原「失敬」

桜井先生「あ」

笹原「立花みさとも悪気があったわけではないのだ。許してくれ」

桜井先生「あ、はい。すみませんでした。あ、あの!」

笹原「あ?」

桜井先生「それ、何ですか? その首のふりふりの」

笹原「ああ、これか」

桜井先生「はい。何かかわいいな、って」

笹原「日々、私たちが過ごしている日常というのは、実は奇跡の連続なのかもしれん。いわばそういうものかもしれんな」

桜井先生「ああっ、えーと、つまり、そのふりふりは何なんでしょう・・・?」

笹原「はっはっはっはっは! はっはっはっはっは! ぬかしおる。では御仁、機会があったら授業で」

桜井先生「ああ、ええー、あっ」(ありがとうございました)


――― 生徒指導 ―――

女子生徒「帰りに寄ってみる?」

女子生徒「うん、楽しそうね」

桜井先生「あ、すみませーん! 中之条君!」

中之条「はい、何でしょうか?」

桜井先生「いえ、あのですね、学校でその髪型はちょっとあれかなー、なんて」

中之条「ああっ・・・」

桜井先生「あ、いえ、ちょっとだけ、ちょっとだけかなー、なんて」

中之条「・・・こないんです」

桜井先生「あ、ごめんなさい。ちょっと聞こえなかったからもう一度・・・」

中之条「横から・・・横から生えてこないんです!」


――― 囲碁サッカー部1 ―――

大工「だーるーまーさーんーがー・・・ころんだ!」

関口「みんな帰りました」


――― 日常の15 ―――

はかせ「なのー、これ何?」

なの「青梅ですよ。今年は家で梅干漬けてみようかなって思ってるんです」

はかせ「梅干、すっぱい・・・」

なの「梅は体にいいんですよ。それにおにぎりに入れておくと、ご飯が悪くならないし」

はかせ「あーっ! じゃーん! うーわー! なの!」

なの「だめです!」

はかせ「がん! はかせまだ何も言ってないんだけど」

なの「お菓子はこの前いっぱい買ったばかりじゃないですか。まずそれをちゃんと食べて、なくなったらまた買いに・・・」

はかせ「はー・・・」

なの「あー、もう、はかせ。だめですよ。今日はあの猫さん、えっとー・・・」

はかせ「阪本」

なの「そう、阪本さんのご飯も買って行くって約束してるんですから、お菓子は・・・」

はかせ「ん? はあ・・・。おっきい」

なの「あ、あの」

店員「はい、何か御用でしょうか?」

なの「この、これは・・・?」

店員「あ、雪だるまですね。本日入荷しました。よろしかったらどうぞ」

なの「はあ・・・」

はかせ「お菓子?」

なの「ああ、アイスのかき氷みたいなものでしょうか。冷たい・・・。安い」

はかせ「買うの?」

なの「ええっ? いや、見てただけです」

男「あ、雪だるまじゃん」

女「私、欲しい」

なの「えっ?」

おばさん「ちょっとあんた」

なの「あ、はい!」

おばさん「それ、買わないんだったらこっちにちょうだいよ」

なの「はあ・・・。か、買います!」


はかせ「あーあ、なのはなのの買うのにはかせははかせの買っちゃだめって言う」

なの「いえ、ですからこれは・・・」

はかせ「なのはなのの買うんだからはかせはかせの買ってもいいし! 欲しい欲しい! 欲しいったら欲しいーっ!」

なの「わかりました。1個だけですよ」

はかせ「ほんとー? なの好きー」


阪本さん「それでそんなもん買ってきたっていうのか」

なの「はい。かわいいし、冷たくて気持ちもいいし」

阪本さん「ふーん」

なの「はかせ、できましたよ」

はかせ「はーい! なの、もっとー」

なの「はいはい」

阪本さん「まったくお前らは・・・。それで、俺の飯はどこだ?」

なの「あっ」

阪本さん「ん?」


阪本さん「かき氷 こんな飯は こーりごり、なんてな」


――― じゃんけん ―――

はかせ・なの「最初はグー! その次パー! グチョパは無しよ、ジャンケンポン!」

なの「上へ参りまー・・・す」

はかせ「ねじが!」


――― 日常の16 ―――

祐子「NONO・・・」


桜井先生「あ・・・、はい、テスト終了です」

祐子「ナムサーーーーン!!」


麻衣「これもヅラ」


――― ヒトコトワドコトバ ―――

他人が何と求めるかを考えちゃうと、他人ていっぱいいるからわかんなくなっちゃうけど、自分が何を求めるかと考えると、少しいけそうじゃない?
あとはどっかの神様にいのるだけ。
さてと、それではどっかの神様、よろしくお願いします。


――― 囲碁サッカー部2 ―――

大工「だーるーまーさーんー・・・がころんだ!」

関口「もうやめませんか?」


――― インコ ―――

祐子「あー、また立たされた。ん、あ?」

セキセイインコ「コノカラダニモ、ダイブナレテキタゾ


――― 日常の17 ―――

なの「わああ、うー、見てるだけでよだれが溜まってきますね」
.                                           はかせ「庭には庭にはワニがいる」
阪本さん「何だこれは?」
.                                           はかせ「ワニワニワニワニバナナ園
なの「あ、阪本さん。梅干ですよ」
.                                           はかせ「庭には庭にはバナナ園」
阪本さん「ふーん・・・」

なの「あっ、だめですよ。まだ出来てないんですから」

はかせ「わああー。これで阪本と遊ぶー」

なの「あ、ネコジャラシだ」

はかせ「阪本、さーかもとー」

阪本さん「ちょ、ガキ! あれほど『さん』を付けろって言ってるだろ!」

はかせ「あっ、そうだった。ごめん、阪本」

阪本さん「おちょくってんのか」

博士「しまった。ついうっかり。ごめんなさい、阪本」

阪本さん「わざとだろ、お前!」


なの「じゃあ、買い物行ってきます」

はかせ「いってらっしゃーい!」

阪本さん「まったく、本当に教育がなってないな、ここの連中は」

はかせ「ごめん、阪本。わざとじゃないよ」

阪本さん「だから『阪本』じゃなくて!」

はかせ「はい、阪本。ガムあげるから」

阪本さん「何べん言わせるんだ! しかもお前、猫にガムあげるやつがあるか、ボケ! ああああああーーーっ!!」


阪本さん「いい加減にしろ」

はかせ「ごめんなさい」

阪本さん「いいか。この前言ったとおり、お前らより俺のほうが年上なんだ。目上の者にはきちんと、『さん』を付けて呼ぶのが、その・・・あれだ・・・、いわゆる、その・・・、あれという、わけだ。つまり、その、あれというのはだな・・・」

はかせ「あっ」

阪本さん「何だ!」

はかせ「おしっこ行っていいですか?」

阪本さん「あ、いいぞ! 行って来い!」

はかせ「おしっこー」

阪本さん(持って行くのかよ。見たところ、やはりこの家にはガキ二人しか住んでいないようだ。なるほど、教育がなっていないわけだ。となると、この家では俺が最年長ということか。しょうがない。面倒だが、やつらの親代わりになってやるか。おっ? まったく俺もとんでもない家に拾われたもんだぜ。やっベー、超楽しいーっ!! おっ!)

はかせ「阪本、何してるの?」

阪本さん(いいっ!? いかん、消しゴムで遊んでたなんて知られたら、親としての威厳が、威厳が、威厳が・・・)「あっ・・・ちょっと、寝てたかも」

はかせ「猫はいっぱい寝るな」

阪本さん「まあ、そんなこんなでだ」

はかせ「そんなこんなで?」

阪本さん「ああ、そんなこんなで、いろいろ詰め込んでもあれだから、まずは年上を敬うことから始めようじゃ・・・ないか!」(やべえ、超楽しい!)

はかせ「わああ・・・。阪本、もう一回もう一回。さーかーもーとー」

阪本さん「い、いや、違う、今のはだな」

はかせ「阪本ってば、こっちこっち。阪本」

阪本さん「『さん』付けろって言ってるだろうが!」

なの「ただいまー」

はかせ「ホームラーン!」


――― なわとび ―――

桜井先生「うー・・・、はい! はい! はい! は」


――― 中之条 ―――

中之条「あっ、お母さーーん!!」


――― 日常の18 ―――

子供「だーるまさんがこー・・・・・・ろんだ! だるーまさんがー・・・」


祐子(麻衣ちゃん、またわかりにくいボケを。しょうがない。とりあえずツッコんどくか)「麻衣ちゃん、それ、オン・ザ・ブックじゃん」

麻衣「ゆっこ、二度とそんなツッコミしないで」

祐子「え?」

麻衣「そんないいツッコミされると、私のボケがかすんで見えちゃうから」

祐子「あー・・・、へへへへへー、いやー、あれだよ、ついつい英語が出ちゃう年頃っつか、何つーか。でもそのオン・ザ・ブック、素なのかボケなのかわかりにくかったよ。まあ、何つーか、さがでツッコんだっつーか」

麻衣「わかりにくい・・・本気でそんなこと言ってるの? これはゆっこだから」

祐子「え?」

麻衣「ゆっこだからわかってもらえると思って」

祐子「いやあ、まいったね。まさかそんなふうに思われているとは。でも信用されてるていうのはうれしいなあ」

麻衣「信用?」

祐子「あ・・・うん」

麻衣「友達じゃないんだから、信用されるとかされないとか、そういう話はやめてくれない?」

祐子「え?」

麻衣「親友に言葉は要らないでしょ?」

祐子「麻衣、ちゃん・・・。もう、麻衣ちゃん、別に親友でも言葉にしたっていいじゃんか! あっ」(麻衣・・・ちゃん?)

麻衣「あんまりべたべたされると困るんだけど」

祐子「あ、え・・・えーと、ごめん」

麻衣「やめてよ。そんなことされたら、ゆっこのこと」

祐子「え?」

麻衣「ゆっこのこと、より好きになっちゃうから」

祐子(ええええーーーー!?)「い、いいじゃんか、好きになっちゃえば。ね? 親友! よっ、親友!」

麻衣「そういうんじゃないんだけど」

祐子「ん?」

麻衣「異性じゃないけど、異性として見ちゃうというか」

祐子(がーーーーーーん!)

麻衣「ごめん。上手く・・・言えない」

祐子「あああー、ええー・・・」(なーなななななななななっ!? 何か今日おかしいと思ったんだよ。だってだって、いつになくけっこう喋るし、寄り道していこうなんて言うし。全部、これ言うためだったの? っていうか、いつから? いつからそういうのって)「あ、ちょちょちょっと、ま、ま、麻衣ちゃん? な、な、何ていうか、その、そういうのってよくわかんないっていうか、やっぱりそういうのってまだ早いっていうか、まだ高校生だからというか」

麻衣「今のボケたんだけど」

祐子「スーパーウルトラグレートデリシャスワンダフルわかりづれええええええーーっ!! もう、変な演技とかやめてよ! ちょっと信じちゃったじゃんか!」

麻衣「そっか」

祐子「え?」

麻衣「ゆっこだったら頭の回転速いから、わかってもらえると思ったのに」

祐子「まーあ、ちょっとはわかってたけど」

麻衣「嘘でしょ」

祐子「いやいや、嘘っていうか何ていうか、頭がピーンと働いたというか、回転しちゃったというか。てか、普通に考えたら、さっきの話自体おかしいっていうか」

麻衣「さっき、信じちゃったって言わなかった?」

祐子「え?」

麻衣「私、嘘つかれるのいちばん嫌いなんだけど」

祐子「あ・・・、ごめん」

麻衣「今のもボケたんだけど」

祐子「もうどこが何やら気づきゃしないよーーーっ!」

麻衣「気づかなかった? 他にももう一つ」

祐子「わからないよ。どこー?」

麻衣「ゆっこは頭の回転が速いってところ。早くないよってツッコむところでしょ?」

祐子「そこかーーーーー! でも、そこだけ何だかとってもわかりやすいよ」


――― 予告 ―――

「もう40年になります。団地です。『団地妻』って書いてみてください。ほら、そこにとてつもないお色気が。あん。次回の『日常』は第5話。お楽しみに」