デュラララ!! 第4話 「形影相弔」
(竜ヶ峰帝人)都市伝説って何?
(紀田正臣)黒バイクだよ。首なしライダーだよ!
(ハンドルネーム「甘楽」)黒いバイクに 乗ってる男にはね首から上がないの。きれいに なくなってるのに動いてるんだって。
(新羅)そんなに難しい仕事じゃないみたいだけど一応 気をつけてね。
(臨也)オレ あんたが正義の味方になったなんて聞いてなかったけどなぁ~。
(浅沼)何なんだよ。 何なんだよ~~!!ジィーー
(録画をしている音)ヒヒィーーン!
(エンジン音)首なしライダー?聞いたことがある!友達が 走ってるの見たって!さあ? あんまり関心ないですねぇ。それだったら写真に撮りました。 ほら!首なしライダー?こいつっす こいつ!うがぁ~!
(晴子)聞いたことあるよねぇ。
(秋絵)サンシャイン近くで見たかも~。
(陽子)マジ~?
(晴子)よく分かんないけどみんな騒いでたからきっと そうなんじゃない?
(新羅・ナレーション)
みんな じょう舌だ
(甘楽)また出たみたいですね~ 例のバイク。
(新羅)
本当にかかわりあいになった人は寡黙になるらしい
(莉緒)ごめんなさいよく分からないんで。
(新羅)あなたは どうかな?あの伝説の首なしライダーにどんな印象を 抱いてる?怖い? 格好いい?実は なんだか いい人そう?いや やっぱり…どう受け止めたらいいのか分からない?
(新羅)
今日は首なしライダーについて僕が知っていることを 教えよう
縷縷綿綿とした話になるが希有壮大な心で 聞いてほしい
まずは 自己紹介しよう
僕は 岸谷新羅 24歳
この街でもぐりの医者を やっている
あえて言えば 出張闇医者だ
非合法な武器で傷ついた人たちの手当てとか顔を変えなきゃならない人たちの整形手術とか
こう見えても腕もいいし 信頼もあるんだ
さて いよいよ 本題だ
(新羅)ただいま~。バタン
(ドアの音)
(新羅)ん?ジャーー
(新羅)
そう…僕は あの首なしライダーセルティ・ストゥルルソンと同居している
帰ったよ セルティ。こっちはよくある簡単な仕事だったよ。そっちは どうだった?
(セルティ)のぞくな。ああっ ごめん ごめん。なんというかいやらしい意味じゃなくつい うっかり…。 ああっ。ああ~なんか イラついているようだね。カルシウムの摂取が 必要かな?バン!
(新羅)ああ いいんじゃないかな?もっとも 僕は あれだ栄養学には疎いから 卵の殻にいかほどのカルシウムが含まれているのかどれだけ 吸収効率がい いのかといった類のことは分からないけどね。そもそも 君の脳みそがどこにあるかも 分からないのにカルシウムが どれだけ有用かってこともあるけどさ。 バン!ふぅ…。なあ セルティ 何度も聞くけど眼球の存在しない君には一体 この世界がどんなふうに見えるのかな?
(セルティ)自分で 理解できないものを他人に教えることは できない。
(新羅)
彼女には 首がないけど視界もあるし 音も聞こえるしにおいも感じてる
ただ 首がないからって全方向が見えるわけじゃないらしい
普通の人間より少し視野が 広い程度みたいだ
これは 僕の推理に過ぎないけど君の体から絶えず染み出しているその影のような不思議SFとんでも物質その粒子が光の代わりに 周囲に放たれ跳ね返ったところを 吸収し周囲の情報を得ているというのは どうかな?当然 遠くのものに対しては情報が 不鮮明になる。
(セルティ)興味ない。見えて聞こえれば それでいい。セルティ…君は いつだって そうだ。君の感じる世界は果たして 僕が感じてる世界とどれだけ 差 異があるのか僕は ただそれが 気になるだけなんだよ。これは何も 視界だけの話じゃない。価値観の問題でもある。人間としての価値観ではなくこの街に具 現化したただ一人の妖精…。デュラハンとして見た世界の価値ってやつをさ…。ん?どうしたんだい?よかったら 話してくれよ何があったのか。
(新羅)今日の仕事折原君は 簡単だって言ってたけど。
(セルティ)仕事自体は 何事もなくあっさり 終わったんだ。で?
(臨也)ほんとに 運び屋様様だね。あんたあっての オレオレあっての あんた
(セルティ)あとの方は 認めたくないな
(臨也)そう言わないで。これからも よろしく頼むよ。あんたとは仲よくやっていきたいんだからさこの先も ずっと…
(セルティ)不気味さを感じるのは気のせいか?
(臨也)おっと!間違いなく気のせいだよ。ところでさ あんたデュラハンって知ってる?アイルランドの首がない妖精のことらしいんだけど最近 代々木公園 に流れてきた似顔絵描きのじいさんが昔 それを見たって言ってんだよねぇ。そのじいさんがさぁ「首がない 首がない」って騒いでたらしいんだ。それって要 するにデュラハンってヤツの首のことかな?
(セルティ)まだ そこにいるのか?
(臨也)さあ?ちょっと分かんないけどヒヒィーーン!キキィーー!ブオォーー!ふっ… やっぱり 気になるんだ
(新羅)
セルティ・ストゥルルソンは人間ではない
俗に デュラハンと呼ばれるケルト伝承などに うたわれる妖精の類である
(セルティ)似顔絵描きを知りませんか?ああ… あの人ならもういないですよ。ねえ! あの人 横浜へ行くって言ってなかった?・ああ?
(新羅)
デュラハンは 切り落とした自分の首を 脇に抱えコシュタバワーと呼ばれる首なし馬に 引かれた二輪の馬車に乗って やってくる
彼らが訪れるのは死期が迫った人間がいる家だ
もし うっかりと扉を開けてしまったら最後…
うわぁ…バシャーン!
たらいいっぱいの血液を浴びせかけられる
そんな 不吉で死のにおいに満ちた伝説と現実の彼女の姿は簡単には 結び付かないね首がないことを除いては…
彼女がなぜ この日本 この東京この池袋に やってきたのかなぜ こんなにも自分の首に こだわっているのかそれを これから お話しよう
(新羅)
今から 20年前のことだ
彼女が ある山の中で不意に 目を覚ますといつの間にか首がなくなっていた
その瞬間に 気づいたのはさまざまな記憶が欠落していたこと
それは自分の行動の理由であったりある程度 さかのぼった過去の記憶であったり
けれど自分が デュラハンであること名前が セルティ・ストゥルルソンであること自分の能力の使い方に関しては確実に 記憶していた
そして彼女が まず 驚いたのは…
(セルティ・心の声)≪私は頭で 物を考えていたわけじゃなかったんだ…≫
ということだった
それに続いて自分の首とおぼしき気配を感じることができるのにも気がついた
状況を考え彼女は 一つの推理をした自分の意思は もともと体と頭で共有していたものであり欠落した記憶は 頭の中に含まれているのではないかと
そして 彼女は決意した己の存在意義を知る首を取り戻すことそれこそが 今の自分に与えられた存在意義だ
もしかしたら頭が 自らの意思で体のもとを離れたのかもしれないがそうだとしても 結局は手にしてみなければ分からない
(セルティ)横浜には もういなかった。次は 多摩 その次は 千葉。どこへ行っても 行き違いだった。
(新羅)また明日にでもすればよかったじゃないか。
(セルティ)必死だった。自分の首がそこにあるかもしれないんだ。
(セルティ)どうしても 取り戻したかった一日も 早く。このまま…自分の記憶も あいまいなまま生きていくのは 嫌だ。
(新羅)
周囲に残るわずかな気配を たどりここまで やってきたものの首は どうやら海外に渡ってしまったようだ
船の行き先は 日本らしい
密航して後を追うと決めたはいいが問題は この馬だ
これは馬の死がいに 憑依させたデュラハンの使い魔のような存在だ
いざとなれば消し去ってしまうこともできたのだが 果たしてその後にどこへ行ってしまうのか?
その記憶は たぶん 頭の中だ
そう思うと消し方が分かっていてもなかなか踏み切ることができない
ヒヒィーーン!ヒューー!
(風の音)
そんなとき…
彼女はそれに 出会ったんだ
(セルティ)結局 どこにも見つからなかった。けど…。
(静雄)ああ~ その似顔絵描きなら知ってるぜ
(セルティ)えっ?
(セルティ)おとといくらいから南池袋公園に来てたんだ。
(静雄)そうだ一緒に行ってやろうか?
(静雄)そんなんじゃ不便だろ? なっ?
(老画家)さあ 出来たよ
(亜梨沙)うわぁ~ すっごい!亜梨沙より美人に 描けてる
(亜梨沙)ん? ちょっと~!おじさん さすがですね!
(老画家)いやいやまだまだ 描きたいものもまともに描けない有様でね
(亜梨沙)ありがとうございました
(老画家)どういたしまして。また おいで
(亜梨沙)は~い!ああ すまんがもう 暗いんでな今日は これで終わりだ
(静雄)デュラハンを見たってのは 本当か?ああ?ああ。 ああ 本当だとも私が 若いころアイルランドの山の中で見た間違いなく この目でな「首をなくした」?はははっ そうじゃない首がないんだ。首が どうしても決まらないん?ほれ
(老画家)女だった。それも ひどく美しい女だった。霧の深い夜 山道で すれ違った。ものすごい勢いで走り去っていった。恐ろしくも 美しい姿だった。 この世のものじゃない…そう直感した。宿に帰って 話をするとそれは デュラハンに違いないと言われた。古くからその地に 住んでいるんだそうだ
(セルティ)なぜ あなたのデュラハンは首を抱えてないんだ?描けないんだ。描けば描くほど 違って見える。あの日の記憶は 確かなのにどうしても あの女にたどりつくことが できない
(セルティ)その女の髪の色は?目の色は?表情は どんなだった?
(老画家)ふっ…。それを 口に できるなら絵にしようとは思わなかっただろう。そういえば 最近妙な男が 訪ねてきてなその男は この絵はこれで 完ぺきだと言うんだ。彼女は 首がなくていいんだとね。変わった男だった
(静雄)なんでそこまで こだわるんだ?
(老画家)あの経験は私の人生で 最高のものだ。あの夜が 一生だった。取り戻したいんだあの瞬間あのときの記憶を
(静雄)じいさん ありがとな
(新羅)なるほどね。ところで 君は そのおじいさんと会った記憶は ないんだろ?
(セルティ)ない。
(新羅)そのデュラハンは君かもしれないし君じゃないかもしれない。あるいは単なる 見間違いかもしれない。
(セルティ)あれは 私だ。 きっと そうだ。そうか…。
(セルティ)私は どこに向かって走っていたんだろう?何を思い どんな目的で…。
(新羅)そんなに気にする必要があるんだろうか?
(セルティ)ん?
(新羅)君は まさしく神出鬼没で斬新奇抜な存在だよ。だからといって今のままでは 君の望みの達成は前途遼遠だ。
(セルティ)何が言いたい?
(新羅)単純に言おう。 あきらめなよ。
(新羅)その変わった男の言ったこと当たってるんじゃないかな?首 なくたっていいんじゃないかな?
(新羅)自分の首を捜すのはもうやめてさ二人で どこかに行こうよ。どこでもいい。君が 望むなら僕は どんな手を使ってでも君を 故郷に帰してみせる。僕も そこへ行くよ。それで ずっと一緒に…。
(セルティ)お前のことは 嫌いじゃないが今 こうしてここで暮らしているだけで十分だ。ふっ。 そんなこと言わないでさ…。
(セルティ)十分だ!
(新羅)だったらさ せめてもうちょっと 女の子らしく…。
(セルティ)もういい!
(新羅)あぁ…。・バン!
(新羅)はぁ…。
(新羅)
やっぱり僕の価値観と 彼女の価値観には違いがあるのだろうか?
閑話休題さっきの続きを話そうか
船に乗ってからの彼女の…いや 彼女と僕の話を
船員に話をつけて密航したはいいが彼女は 自分の姿がひどく目立つことに 気がついた
彼女を知る今となってはなんてことない光景だけど…
初めて見たときは驚いたものさ
僕が 4歳のときだった
僕は 父さんと一緒に日本へ帰る途中だった
父の森巌は お世辞にも普通とは言えない人間だ
僕が見たことを聞いたら親としては一笑に付すのが正しい態度じゃなかろうか
しかし 父さんは違った
医者としての性なのかがぜん 興味を持ったんだ
ガチャ
(森巌)ご婦人失礼だが あなたには首がないというが 本当かな?
父さんは言った一度だけでいいあなたを 解剖させてくれれば居場所を提供しよう
彼女は 承諾した
打算もあればいろいろ 不安もあったろう
このときのことを 彼女はあまり覚えていないらしい
(セルティ)うっ… うぅ…
人間用の麻酔は あまり効かずショックが強かったのかもしれない
(森巌)痛覚はあるようだが人間よりは かなり鈍いようだな
(セルティ)くっ! はぁ…
(森巌)心臓がない。どの臓器も形だけでなんの機能もしていない。血管はあるのに血は通っていない。ただ 肉があるだけだ。まるで生きている人体模型だな。ただし 見ろ
(新羅)あっ…
(森巌)こいつ どうやったら死ぬんだ?
(新羅)あっ…
(新羅)
ひどい父親だろう?
4歳の子供に 彼女の解剖をさせようっていうんだから
けど こんな教育のお陰で医者の技能が身に付いたんだから何が幸いするか分からない
(森巌)どうした?
(新羅)あっ…
ひと目 見たときから彼女に魅せられていた
その気持ちは一緒に暮らした この20年間まったく変わってない
そして 彼女は運び屋の仕事をしながらずっと 自分の首を捜してる
首が戻ったら 彼女はどうするつもりなんだろう?
彼女はどうなってしまうんだろう?
彼女の意思はそのまま首の意思なんだろうか?
それとも…
(セルティ)何を撮ってるんだ?ああ~ いや… なんというか甘い日常の断面を一切合財 語り尽くして後世に 残そうかと。
(セルティ)なんでもいいから静かにしてくれ。 眠れない。悪かったよ セルティ。じゃあ このへんで。続きは また いつか。
(新羅)おお~!完ぺきじゃないですか!
(老画家)んん? どこが 完ぺきなんだ。デュラハンは 首を抱えているのが本来の姿なんだぞ?
(新羅)別に なくたっていいんじゃないですか?首なんていいわけがない。実物を見ていないからそんなことを言うんだ。世にも美しい女だったんだよ
(新羅)ですよねんん?
(新羅)でも やっぱり首は ない方がいいなぁその方が チャーミングですよ。これで 完ぺきですだから おじいさんも悩むことはないんですよ描けなくたっていいんです。ずっと このままで…ふむ…。 だが 私は描く
(新羅)いいんですって これで!
(老画家)変わった男だなぁ あんた
(新羅)いやぁ~ それほどでも
(老画家)ふふふふっふふっ ふふふっ…
(老画家・新羅)ははははっ!オレのラブラブゲッチューでハートブレイキンな日常を 知りたいか?なら 君のハートのチャンネルをこのシャイで クールな紀田正臣に 合わせてくれ~!300年に一度のチャンスを見逃すな!
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(紀田正臣)黒バイクだよ。首なしライダーだよ!
(ハンドルネーム「甘楽」)黒いバイクに 乗ってる男にはね首から上がないの。きれいに なくなってるのに動いてるんだって。
(新羅)そんなに難しい仕事じゃないみたいだけど一応 気をつけてね。
(臨也)オレ あんたが正義の味方になったなんて聞いてなかったけどなぁ~。
(浅沼)何なんだよ。 何なんだよ~~!!ジィーー
(録画をしている音)ヒヒィーーン!
(エンジン音)首なしライダー?聞いたことがある!友達が 走ってるの見たって!さあ? あんまり関心ないですねぇ。それだったら写真に撮りました。 ほら!首なしライダー?こいつっす こいつ!うがぁ~!
(晴子)聞いたことあるよねぇ。
(秋絵)サンシャイン近くで見たかも~。
(陽子)マジ~?
(晴子)よく分かんないけどみんな騒いでたからきっと そうなんじゃない?
(新羅・ナレーション)
みんな じょう舌だ
(甘楽)また出たみたいですね~ 例のバイク。
(新羅)
本当にかかわりあいになった人は寡黙になるらしい
(莉緒)ごめんなさいよく分からないんで。
(新羅)あなたは どうかな?あの伝説の首なしライダーにどんな印象を 抱いてる?怖い? 格好いい?実は なんだか いい人そう?いや やっぱり…どう受け止めたらいいのか分からない?
(新羅)
今日は首なしライダーについて僕が知っていることを 教えよう
縷縷綿綿とした話になるが希有壮大な心で 聞いてほしい
まずは 自己紹介しよう
僕は 岸谷新羅 24歳
この街でもぐりの医者を やっている
あえて言えば 出張闇医者だ
非合法な武器で傷ついた人たちの手当てとか顔を変えなきゃならない人たちの整形手術とか
こう見えても腕もいいし 信頼もあるんだ
さて いよいよ 本題だ
(新羅)ただいま~。バタン
(ドアの音)
(新羅)ん?ジャーー
(新羅)
そう…僕は あの首なしライダーセルティ・ストゥルルソンと同居している
帰ったよ セルティ。こっちはよくある簡単な仕事だったよ。そっちは どうだった?
(セルティ)のぞくな。ああっ ごめん ごめん。なんというかいやらしい意味じゃなくつい うっかり…。 ああっ。ああ~なんか イラついているようだね。カルシウムの摂取が 必要かな?バン!
(新羅)ああ いいんじゃないかな?もっとも 僕は あれだ栄養学には疎いから 卵の殻にいかほどのカルシウムが含まれているのかどれだけ 吸収効率がい いのかといった類のことは分からないけどね。そもそも 君の脳みそがどこにあるかも 分からないのにカルシウムが どれだけ有用かってこともあるけどさ。 バン!ふぅ…。なあ セルティ 何度も聞くけど眼球の存在しない君には一体 この世界がどんなふうに見えるのかな?
(セルティ)自分で 理解できないものを他人に教えることは できない。
(新羅)
彼女には 首がないけど視界もあるし 音も聞こえるしにおいも感じてる
ただ 首がないからって全方向が見えるわけじゃないらしい
普通の人間より少し視野が 広い程度みたいだ
これは 僕の推理に過ぎないけど君の体から絶えず染み出しているその影のような不思議SFとんでも物質その粒子が光の代わりに 周囲に放たれ跳ね返ったところを 吸収し周囲の情報を得ているというのは どうかな?当然 遠くのものに対しては情報が 不鮮明になる。
(セルティ)興味ない。見えて聞こえれば それでいい。セルティ…君は いつだって そうだ。君の感じる世界は果たして 僕が感じてる世界とどれだけ 差 異があるのか僕は ただそれが 気になるだけなんだよ。これは何も 視界だけの話じゃない。価値観の問題でもある。人間としての価値観ではなくこの街に具 現化したただ一人の妖精…。デュラハンとして見た世界の価値ってやつをさ…。ん?どうしたんだい?よかったら 話してくれよ何があったのか。
(新羅)今日の仕事折原君は 簡単だって言ってたけど。
(セルティ)仕事自体は 何事もなくあっさり 終わったんだ。で?
(臨也)ほんとに 運び屋様様だね。あんたあっての オレオレあっての あんた
(セルティ)あとの方は 認めたくないな
(臨也)そう言わないで。これからも よろしく頼むよ。あんたとは仲よくやっていきたいんだからさこの先も ずっと…
(セルティ)不気味さを感じるのは気のせいか?
(臨也)おっと!間違いなく気のせいだよ。ところでさ あんたデュラハンって知ってる?アイルランドの首がない妖精のことらしいんだけど最近 代々木公園 に流れてきた似顔絵描きのじいさんが昔 それを見たって言ってんだよねぇ。そのじいさんがさぁ「首がない 首がない」って騒いでたらしいんだ。それって要 するにデュラハンってヤツの首のことかな?
(セルティ)まだ そこにいるのか?
(臨也)さあ?ちょっと分かんないけどヒヒィーーン!キキィーー!ブオォーー!ふっ… やっぱり 気になるんだ
(新羅)
セルティ・ストゥルルソンは人間ではない
俗に デュラハンと呼ばれるケルト伝承などに うたわれる妖精の類である
(セルティ)似顔絵描きを知りませんか?ああ… あの人ならもういないですよ。ねえ! あの人 横浜へ行くって言ってなかった?・ああ?
(新羅)
デュラハンは 切り落とした自分の首を 脇に抱えコシュタバワーと呼ばれる首なし馬に 引かれた二輪の馬車に乗って やってくる
彼らが訪れるのは死期が迫った人間がいる家だ
もし うっかりと扉を開けてしまったら最後…
うわぁ…バシャーン!
たらいいっぱいの血液を浴びせかけられる
そんな 不吉で死のにおいに満ちた伝説と現実の彼女の姿は簡単には 結び付かないね首がないことを除いては…
彼女がなぜ この日本 この東京この池袋に やってきたのかなぜ こんなにも自分の首に こだわっているのかそれを これから お話しよう
(新羅)
今から 20年前のことだ
彼女が ある山の中で不意に 目を覚ますといつの間にか首がなくなっていた
その瞬間に 気づいたのはさまざまな記憶が欠落していたこと
それは自分の行動の理由であったりある程度 さかのぼった過去の記憶であったり
けれど自分が デュラハンであること名前が セルティ・ストゥルルソンであること自分の能力の使い方に関しては確実に 記憶していた
そして彼女が まず 驚いたのは…
(セルティ・心の声)≪私は頭で 物を考えていたわけじゃなかったんだ…≫
ということだった
それに続いて自分の首とおぼしき気配を感じることができるのにも気がついた
状況を考え彼女は 一つの推理をした自分の意思は もともと体と頭で共有していたものであり欠落した記憶は 頭の中に含まれているのではないかと
そして 彼女は決意した己の存在意義を知る首を取り戻すことそれこそが 今の自分に与えられた存在意義だ
もしかしたら頭が 自らの意思で体のもとを離れたのかもしれないがそうだとしても 結局は手にしてみなければ分からない
(セルティ)横浜には もういなかった。次は 多摩 その次は 千葉。どこへ行っても 行き違いだった。
(新羅)また明日にでもすればよかったじゃないか。
(セルティ)必死だった。自分の首がそこにあるかもしれないんだ。
(セルティ)どうしても 取り戻したかった一日も 早く。このまま…自分の記憶も あいまいなまま生きていくのは 嫌だ。
(新羅)
周囲に残るわずかな気配を たどりここまで やってきたものの首は どうやら海外に渡ってしまったようだ
船の行き先は 日本らしい
密航して後を追うと決めたはいいが問題は この馬だ
これは馬の死がいに 憑依させたデュラハンの使い魔のような存在だ
いざとなれば消し去ってしまうこともできたのだが 果たしてその後にどこへ行ってしまうのか?
その記憶は たぶん 頭の中だ
そう思うと消し方が分かっていてもなかなか踏み切ることができない
ヒヒィーーン!ヒューー!
(風の音)
そんなとき…
彼女はそれに 出会ったんだ
(セルティ)結局 どこにも見つからなかった。けど…。
(静雄)ああ~ その似顔絵描きなら知ってるぜ
(セルティ)えっ?
(セルティ)おとといくらいから南池袋公園に来てたんだ。
(静雄)そうだ一緒に行ってやろうか?
(静雄)そんなんじゃ不便だろ? なっ?
(老画家)さあ 出来たよ
(亜梨沙)うわぁ~ すっごい!亜梨沙より美人に 描けてる
(亜梨沙)ん? ちょっと~!おじさん さすがですね!
(老画家)いやいやまだまだ 描きたいものもまともに描けない有様でね
(亜梨沙)ありがとうございました
(老画家)どういたしまして。また おいで
(亜梨沙)は~い!ああ すまんがもう 暗いんでな今日は これで終わりだ
(静雄)デュラハンを見たってのは 本当か?ああ?ああ。 ああ 本当だとも私が 若いころアイルランドの山の中で見た間違いなく この目でな「首をなくした」?はははっ そうじゃない首がないんだ。首が どうしても決まらないん?ほれ
(老画家)女だった。それも ひどく美しい女だった。霧の深い夜 山道で すれ違った。ものすごい勢いで走り去っていった。恐ろしくも 美しい姿だった。 この世のものじゃない…そう直感した。宿に帰って 話をするとそれは デュラハンに違いないと言われた。古くからその地に 住んでいるんだそうだ
(セルティ)なぜ あなたのデュラハンは首を抱えてないんだ?描けないんだ。描けば描くほど 違って見える。あの日の記憶は 確かなのにどうしても あの女にたどりつくことが できない
(セルティ)その女の髪の色は?目の色は?表情は どんなだった?
(老画家)ふっ…。それを 口に できるなら絵にしようとは思わなかっただろう。そういえば 最近妙な男が 訪ねてきてなその男は この絵はこれで 完ぺきだと言うんだ。彼女は 首がなくていいんだとね。変わった男だった
(静雄)なんでそこまで こだわるんだ?
(老画家)あの経験は私の人生で 最高のものだ。あの夜が 一生だった。取り戻したいんだあの瞬間あのときの記憶を
(静雄)じいさん ありがとな
(新羅)なるほどね。ところで 君は そのおじいさんと会った記憶は ないんだろ?
(セルティ)ない。
(新羅)そのデュラハンは君かもしれないし君じゃないかもしれない。あるいは単なる 見間違いかもしれない。
(セルティ)あれは 私だ。 きっと そうだ。そうか…。
(セルティ)私は どこに向かって走っていたんだろう?何を思い どんな目的で…。
(新羅)そんなに気にする必要があるんだろうか?
(セルティ)ん?
(新羅)君は まさしく神出鬼没で斬新奇抜な存在だよ。だからといって今のままでは 君の望みの達成は前途遼遠だ。
(セルティ)何が言いたい?
(新羅)単純に言おう。 あきらめなよ。
(新羅)その変わった男の言ったこと当たってるんじゃないかな?首 なくたっていいんじゃないかな?
(新羅)自分の首を捜すのはもうやめてさ二人で どこかに行こうよ。どこでもいい。君が 望むなら僕は どんな手を使ってでも君を 故郷に帰してみせる。僕も そこへ行くよ。それで ずっと一緒に…。
(セルティ)お前のことは 嫌いじゃないが今 こうしてここで暮らしているだけで十分だ。ふっ。 そんなこと言わないでさ…。
(セルティ)十分だ!
(新羅)だったらさ せめてもうちょっと 女の子らしく…。
(セルティ)もういい!
(新羅)あぁ…。・バン!
(新羅)はぁ…。
(新羅)
やっぱり僕の価値観と 彼女の価値観には違いがあるのだろうか?
閑話休題さっきの続きを話そうか
船に乗ってからの彼女の…いや 彼女と僕の話を
船員に話をつけて密航したはいいが彼女は 自分の姿がひどく目立つことに 気がついた
彼女を知る今となってはなんてことない光景だけど…
初めて見たときは驚いたものさ
僕が 4歳のときだった
僕は 父さんと一緒に日本へ帰る途中だった
父の森巌は お世辞にも普通とは言えない人間だ
僕が見たことを聞いたら親としては一笑に付すのが正しい態度じゃなかろうか
しかし 父さんは違った
医者としての性なのかがぜん 興味を持ったんだ
ガチャ
(森巌)ご婦人失礼だが あなたには首がないというが 本当かな?
父さんは言った一度だけでいいあなたを 解剖させてくれれば居場所を提供しよう
彼女は 承諾した
打算もあればいろいろ 不安もあったろう
このときのことを 彼女はあまり覚えていないらしい
(セルティ)うっ… うぅ…
人間用の麻酔は あまり効かずショックが強かったのかもしれない
(森巌)痛覚はあるようだが人間よりは かなり鈍いようだな
(セルティ)くっ! はぁ…
(森巌)心臓がない。どの臓器も形だけでなんの機能もしていない。血管はあるのに血は通っていない。ただ 肉があるだけだ。まるで生きている人体模型だな。ただし 見ろ
(新羅)あっ…
(森巌)こいつ どうやったら死ぬんだ?
(新羅)あっ…
(新羅)
ひどい父親だろう?
4歳の子供に 彼女の解剖をさせようっていうんだから
けど こんな教育のお陰で医者の技能が身に付いたんだから何が幸いするか分からない
(森巌)どうした?
(新羅)あっ…
ひと目 見たときから彼女に魅せられていた
その気持ちは一緒に暮らした この20年間まったく変わってない
そして 彼女は運び屋の仕事をしながらずっと 自分の首を捜してる
首が戻ったら 彼女はどうするつもりなんだろう?
彼女はどうなってしまうんだろう?
彼女の意思はそのまま首の意思なんだろうか?
それとも…
(セルティ)何を撮ってるんだ?ああ~ いや… なんというか甘い日常の断面を一切合財 語り尽くして後世に 残そうかと。
(セルティ)なんでもいいから静かにしてくれ。 眠れない。悪かったよ セルティ。じゃあ このへんで。続きは また いつか。
(新羅)おお~!完ぺきじゃないですか!
(老画家)んん? どこが 完ぺきなんだ。デュラハンは 首を抱えているのが本来の姿なんだぞ?
(新羅)別に なくたっていいんじゃないですか?首なんていいわけがない。実物を見ていないからそんなことを言うんだ。世にも美しい女だったんだよ
(新羅)ですよねんん?
(新羅)でも やっぱり首は ない方がいいなぁその方が チャーミングですよ。これで 完ぺきですだから おじいさんも悩むことはないんですよ描けなくたっていいんです。ずっと このままで…ふむ…。 だが 私は描く
(新羅)いいんですって これで!
(老画家)変わった男だなぁ あんた
(新羅)いやぁ~ それほどでも
(老画家)ふふふふっふふっ ふふふっ…
(老画家・新羅)ははははっ!オレのラブラブゲッチューでハートブレイキンな日常を 知りたいか?なら 君のハートのチャンネルをこのシャイで クールな紀田正臣に 合わせてくれ~!300年に一度のチャンスを見逃すな!