ユウタ「よし、できた!」

たける「完成だね」

ユウタ「なかなかいい感じじゃない?」

たける「うんうん」

イカ娘「ふっ、所詮お子様にはその程度が限界のようでゲソね」

ユウタ「な、何だよ」

イカ娘「それでは、私の城の足元にも及ばないでゲソ。見よ、私の作ったこの城を!」

たける・ユウタ(何か妙なの作ってる!)

イカ娘(いつも子供になめられてるでゲソからね。たまには私から仕掛けてやるでゲソ)

ユウタ「何だよ、その気持ち悪いの! 城っていうか、ウンコじゃん!」

イカ娘「う・・・!」

ユウタ「なあ?」

たける「えっ? えーと、少なくともお城には見えないかな、イカ姉ちゃん」

ユウタ「ウンコだよ、ウンコ!」

イカ娘(お、落ち着くでゲソ。こんなの子供の戯れ言じゃなイカ。一生懸命作ったお城がバカにされたぐらいで・・・)

ユウタ「あと、その帽子もダサい」

イカ娘「私の容姿は関係ないじゃなイカ! もう、怒ったでゲソ!」

ユウタ・たける「うわあ!」

ユウタ「動いた!」

たける「そういえば、前から気になってたんだけど、イカ姉ちゃんの帽子の横にあるそれ、何?」


栄子「うーん、本来イカって、ヒレとか漏斗とか使って泳ぐもんなんだよな。ということは、お前の頭に付いてるそれって、やっぱりただの飾りか?」

イカ娘「飾りじゃないでゲソ!」

栄子「ううわっ、動いた!」

イカ娘「さっきから何でゲソ?」

3人「動いてる、ヒレ!」

イカ娘「ん? うわあっ、ほんとに動いてるじゃなイカ!」

栄子「いま知ったのかよ」


栄子「というわけで、触手、イカ墨、発光機能に続く新たな能力が発覚したわけだが、どうよ、これ」

早苗「何なの、そのかわいすぎる能力」

渚「え? あの、わけわからないんですが」

悟郎「というか、こんなことのために俺たちは呼ばれたのか?」

栄子「じゃ、帰れよ」

悟郎「はっ・・・、いやあ、僕なんかを呼んでいただけるなんて大変光栄です!」

早苗「イカちゃん、これはきっとほっぺをぺちぺちするための能力なのよ。私が実験台になるわ!」

イカ娘「や、やめるでゲソ!」

早苗「痛幸せ・・・」

イカ娘「わ、悪気はないでゲソ」

栄子(意外と強力、と。しかし、これだけのパワーがあれば・・・)「そのヒレで思いきりあおげるか?」

イカ娘「え? こ、こうでゲソか?」

栄子「ああ、そこそこ涼しい」

ユウタ「涼しい」

イカ娘「私はちっとも涼しくないでゲソ! いたたたたた、ヒレが攣ったでゲソ!」

渚「あの、でも今までまったく使ってなかったってことは、生きていくうえで必要な能力じゃないんですよね」

栄子「本来イカなら泳ぐために必要になるが、イカ娘のこれはまた別物として考えたほうが良さそうだな」

渚「やはりさっきみたいに、外敵を攻撃するためにあるんじゃ」

栄子「地味すぎるだろ。それに触手があるし」

たける「わかった! 水中だと会話できないから、このピコピコで合図を送るとか」

栄子「手とか触手で事足りるだろ」

イカ娘「ちょっと待つでゲソ! さっきから聞いていればどうでもいいことばかり羅列して! 私のこれは、もっと有意義なものでゲソ!」

栄子「それじゃお前は何だと思ってるんだ?」

イカ娘「うっ・・・、こ、これはきっと空を飛ぶための翼なのでゲソ」

栄子「どんな原理だよ」

たける「体に比べて翼、小さすぎだよ」

イカ娘「うむぅ、せ、成長とともに大きくなるのでゲソ!」

悟郎「もはやイカでも何でもねえ! 本当に何なんだろうなあ、そのピコピコ」

渚「気になりますね、ピコピコ」

早苗「何でこんなにかわいいのかしら、このピコピコ」

栄子「なあ、ピコ娘」

イカ娘「イカ娘でゲソ!」

たける「あっ、イカ姉ちゃんの頭に蚊がとまったよ」

イカ娘「え? ・・・ううううう」

千鶴「まあ」

悟郎「見事、蚊を倒した!」

栄子「よかったな、イカ娘。もう触手なしで蚊を倒せるじゃないか」

ユウタ「ていうか、普通に殺虫剤使ったほうが早いと思うけど」

イカ娘「さっきからお主は生意気でゲソ! ピコピコもないくせに!」

ユウタ「ウンコの城作るよりましだよ!」

イカ娘「ウ・・・」

栄子「ウンコ?」


栄子「これは・・・」

悟郎「ウンコだな」

早苗「ウンコだわ」

渚「です・・・」

ユウタ「どうだ!」

イカ娘「このお城の兵士は何人いるのでゲソ?」

ユウタ「え? ええと・・・」

たける「100?」

ユウタ「いや、1000人くらいかな」

イカ娘「私の城は1億万人でゲソ。戦力はこっちのほうが上でゲソ」

たける「知らないよ、そんな設定」

ユウタ「ちゃんと見た目で勝負しろ!」

イカ娘「見た目でも勝負してるじゃなイカ! お城は大きさよりも建築美でゲソ!」

悟郎「おい、止めなくていいのか?」

早苗「小学生にむきになるイカちゃんかわいい」

イカ娘「この完璧な曲線美を見るでゲソ!」

ユウタ「気持ち悪いだけじゃん!」

ユウタの父「ならば私と勝負だ」

ユウタ「父ちゃん」

イカ娘「父ちゃん? うっ・・・」

ユウタの父「悪いね、お嬢ちゃん。たまには息子にいいところを見せたいんでね」

イカ娘(気迫が違うでゲソ)

ユウタの父「ふう・・・。こんなところかな」

たける「おお、すごーい」

悟郎「こ、この八角堂に乗った望楼の姿は、天下の名城と謳われた安土城!」

ユウタ「どうだ、まいったか。父ちゃんはプロの造形師なんだ」

栄子「これは勝負あったか?」

イカ娘「ふっふっふー、確かに見た目はいいでゲソが、ただそれだけのこと。私のお城はピコピコで操縦することができるのでゲソ」

ユウタの父「ピ、ピコピコ・・・」

イカ娘「見るがいいでゲソ。この動く城にはかなわないでゲソが!」

ユウタの父「な、何だと!?」

栄子(気色わる!)

早苗「かわいい!」

ユウタの父「こ、こんなことが・・・!」

イカ娘「行くでゲソ!」

ユウタの父「ああ、あああ・・・! ああ、私の負けだ」

ユウタ「父ちゃん!」

ユウタの父「城を動かすことは今の私にはできない! 父さん、修行し直してくるよ」

ユウタ「ちょっと待ってよ。動かす必要なんてないじゃん。くそっ、おぼえてろよ!」

イカ娘「勝ったでゲソ。やはり私はさまざまな能力に加え、芸術的才能も人間より上なのでゲソね」

栄子「おい、置いてくぞ」

イカ娘「あ、ちょっと待つでゲソ。あ・・・。しまった! ここから動いたら私の傑作が壊れてしまうじゃなイカ!」


イカ娘「ううう、どうしたらいいんでゲソ?」