Layer:04 RELIGION


女の子:
親なんていらない。
人間なんてたった一人なんだよ。
誰とも繋がってなんか、ない・・・



美穂:
どうでした?

美香:
玲音、おかしいよ。
ま、今日に限ったことじゃないけど・・・

康男:
いいや、おかしくはないんだ。

美香:
はぁ?何よ、それ。

美穂:
美香、お父さんに言葉遣いが悪いわよ。
・・・そうなのね?

康男:
そうなんですよ。



男の人:
クソ!クソー!
クソ!
クソー、クソー!
何なんだよ?!
何だってんだよ?!
クソ!
クソー!

少女:
ガッチャ!



ありす:
次の時間、ホームルームなんでしょう?
ラッキー!

麗華:
臨時の職員会議なんて変だね?

ありす:
やっぱり・・・あれ本当なのかな?

麗華:
あれって?

ありす:
高等部の三年の先輩が自殺したって。

樹莉:
じ、自殺・・・?

ありす:
うちの学校だけじゃなくて、
こないだも、団地の屋上から飛び降りたっていうし。
ね、玲音?

玲音:
えっ?あぁ・・・

ありす:
ん・・・

玲音:
ごめん、なあに?

樹莉:
玲音がそういうの聞いてるわけないよね?

玲音:
自殺のこと?

麗華:
知ってんの?!あんたが?!

ありす:
ホント?

玲音:
っていうか、あたしも聞いただけ。

ありす:
どこで?

玲音:
ワイヤード。

ありす:
ああ、もう新しいNAVIに慣れたんだ?
今度あたしにも見せてよ。

玲音:
うん、いいよ。
でも、ちょっと改造してるの。

樹莉:
改造?
玲音ってばそんなハッキーな趣味あったっけ?

麗華:
あのさ、最近ちょっと変わったね、あんた。

玲音:
え?そう?

樹莉:
そうかなー。

麗華:
うん、なんかさ!



ありす:
んで、ワイヤードじゃ、どんな噂なってるの?

玲音:
えっと・・・なんかゲームなんだって。

麗華:
ゲーム?!
ネットワークゲームのこと?

玲音:
よく分かんない。
あたしやってないから。
でも、死んだ子達って、みんなそれにハマってたって。

樹莉:
男子って好きだよね、そういうの。

ありす:
ふーん、ゲーム?
でも、どうして?

玲音:
わたし・・・

ありす:
そんなに急に!
のどにつかえるよ!

玲音:
だ、大丈夫。
あたし、先に帰ってもいい?

麗華:
いちいち断んなくたって、いいけどさ。

樹莉:
なんか用事?

玲音:
早く帰って、NAVIを組み上げたいの。
まだちゃんとしてないから。

樹莉:
ふーん、友達よりマシンか?

玲音:
えっ?

ありす:
樹莉!止しなさいよ、そういう責め方。

樹莉:
別に責めてないじゃん。

ありす:
玲音、完成したら見せてね?

玲音:
うん!じゃ、ごめんね!

ありす:
確かに、あの子、変わってきた。
あっ!あー、ごめんなさい!
はい!

少女:
ううん、あたしの方が悪いの。
お姉さん、ごめんね!



玲音:
ログイン、玲音

NAVI:
オーソライズド

玲音:
メール

NAVI:
ボイスメール

男の声:
こんにちは、玲音。
君がくれた質問は僕一人じゃ解決出来ないので、僕の研究室の仲間に聞いてみた。
もし君が本当にプシューケープロセッサを持っているのだったら、多分、君の予想通り、発振はヴァリアブルに設定すべきだ。
NAVIのマザーは大体どこの製品でも規格が統一されてるんだけど、多少の仕様差はあるからね。
成功を祈ってるよ。
じゃ、また何かあったら、聞いてくれ。



玲音:
JJ!

JJ:
あー?

玲音:
ガキんちょ達がハマってるネットゲーム、知ってる?

JJ:
あー、ファントマねー。よしなって。あんたみたいな大人がやるもんじゃねーよ。なー玲音?
うっそまじ・・・俺も空耳聞く様になっちまったかよー。



猫シャツ少年:
俺は、俺はもう止めたんだ!関係ねぇよ!
ここはワイヤードじゃねーんだぞ!なんで、なんでこんな――

玲音:
待って!逃げないで!

猫シャツ少年:
誰だよ!
お前もPKかよ?助けてくれよ!

玲音:
あたしはそこまでいけない。

猫シャツ少年:
何なんだよ!
ふざけてるんじゃねーよ!
ブレットチャージ!ゲージファイヴ!
くたばれ!
くたばれ!くたばれ!くたばれ!くたばれ!くたばれ!くたばれ!
くたばれ!くたばれ!くたばれ!
くたばれ!くたばれ!くたばれ!くたばれ!

猫シャツ少年:
僕、ただ怖かっただけで――ちっちゃい子だったなんてそんなの・・・。
僕、悪くないですよ。だって、全然知らなかったし。
ファントマは、専用のクライヤントアプリケーションがあって、それを使ってワイヤードの中で戦うっていうゲームです。
僕はちょっと前に、非合法なサーバーからそのアプリをダウンロードして遊んでました。
そのゲームは、僕らにはダンジョン型のアクションゲームっていうインターフェイスだったんですけど、幼稚園で使ってるちっちゃい子用の鬼ごっこゲームとなぜかリンクしてたみたいで・・・。



NAVI:
メールが届きました

玲音:
開いて

男の声:
やあ玲音。君がファントマなんてものに興味があるなんて知らなかったぜ。一応調べてみたけど、どうも分からん。
あ、いや、ベースになったゲームはワイヤードでも珍しくもないタイプで、多分それを改造しただけだと思う。
問題はプログラム同士を複合させるという部分だ。
プロトコルに変な穴があるみたいなんだ。
僕らの間では、これもナイツの仕業じゃないかって。

玲音:
ナイツ・・・。

父:
玲音
随分慣れてきた様だね、ワイヤードとの付き合い。

玲音:
うん

父:
一つだけ忠告しておこう

玲音:
え?

父:
ワイヤードはあくまでも情報を伝達し、コミュニケーションをする為の空間。リアルワルドと混同してはいけない。
忠告の意味、分かるかな?

玲音:
違うよ

父:
え?

玲音:
そんなに境界ってきちんとしてないみたいだよ。
もうすぐ中に入れるんだよ。フルレーンジ、フルモーションであたしをメタファライズさせて。

父:
そんなこと、いくら最新でも民生用のNAVIでは・・・

玲音:
出来るよ。改造したから

父:
プシューケープロセッサ、か。しかし・・・

玲音:
心配しないで。あたしはあたしだもの。

父:
そうかな・・・。

声①:
ずっと待ってた。どうして、どうして来てくれなかったの?

声②:
お前を呪ってやる。お前を呪ってやる!お前を呪ってやる!お前を呪ってやる。

声③:
このメールは幸せのメールです。あなたはこのメールを受け取った事で誰よりもチャンスに恵まれ・・・

声④:
という事である。つまりナイツはそれ自体が実態として存在しているのではなく、ネットワーク内に於ける思想そのものなのだ。
言わばワイヤード世界にて蔓延しつつある宗教だと言い換えてもいい・・・

声⑤:
付き合ってくれませんか?あの、もし彼氏とかいたら、ごめんなさい。もしその人のことを今でも好きなんだったら、僕は諦めます。でももし

声⑥:
コードJ946@548AA97464。参照願います。

声⑦:
誰でもいいです。このメールを受け取った人、あたしを助けてください。信じられないかもしれないですけどあたし、ずっと付けられてるんです。

声⑧:
玲音、どうして早くこっちに来ないの?

玲音:
あっち行け

玲音:
あっち行け!

NAVI: 
Intruder Interrupted.