男性客「おお・・・」「すげえ・・・」

栄子「あ、いらっしゃい・・・、いっ」
(何かかっこいい人来たなあ)

千鶴「ほら栄子ちゃん、オーダー行かないと」

栄子「ええ? えーと、渚ちゃんは? あっ、そうか、遅番だ」

千鶴「何事も経験よ」

栄子「ああっ、とっとっと、っとこ・・・。あああ、えーと、イート? ド、ドリンク? ハウ・メニュー、プリーズ? ズドラーストヴィーチェ[Zdravstvuite]? ヴィ・ブージェッチェ・イースティッツジェーシ[Vy budete est' zdes]?」

シンディー「宇宙人が欲しいわ」

栄子「はいー!?」

シンディー「この辺で目撃情報があるのよ。見てない?」

栄子「あああ、はい、ちょっとよくわからないです・・・。ああ、宇宙人ではないけど」

イカ娘「え?・・・」

シンディー「宇宙人発見!」

イカ娘「うええええ?」

シンディー「これは今すぐ研究室に連れていって分析解剖を!」

イカ娘「ちょっと待たなイカ! いきなり何でゲソ! お前は何者なのでゲソ!」

シンディー「オオー、ソーリー、自己紹介がまだでしたね。アメリカ地球外生命体対策調査研究所の一員、シンディー・キャンベルよ。宇宙人の正体を突き止めるべく、世界中を調査しているの」

イカ娘「ヒマ人でゲソ」

栄子「お前が言うな」

シンディー「まあ、そういうことだから、連れて行っても問題ないわよね」

イカ娘「大ありでゲソ。私が宇宙人だということを前提に話を進めるなでゲソ」

シンディー「あーら、私の知ってる宇宙人もそういうの生えてるもの。間違いないわ」

イカ娘「はあ・・・、こやつはいったい宇宙人の何を調べてきたのでゲソ。とにかく、私は地上を侵略するために来たイカ娘でゲソ!!」

栄子「いいからカウンターから降りろ」

シンディー「アッハー! 侵略者といえば宇宙人と相場が決まっているわ! やっぱり宇宙人ね!」

イカ娘「だからそういう安直な発想はやめなイカ! 言ってもわからぬのなら、実力行使でゲソ!」

シンディー「あああっ」

イカ娘「どうでゲソ。10本の触手にイカ墨、これが私がイカである証拠でゲソ」

シンディー「強力な触手、謎の液体・・・これぞ、夢にまで見た宇宙人」

イカ娘「うええ、こいつ気持ち悪いでゲソ!」

シンディー「ああ!」


イカ娘「まったく、人間ときたら。付き合ってられないでゲソ。あ。で、私は侵略に来たのであって、清掃に来たのではないでゲソ」

シンディー「はい」

イカ娘「ありがとうでゲソ」

シンディー「これってUFOの燃料? それとも食べるの?」

イカ娘(追って来たでゲソ)
「こんなところで遊んでないで、おぬしも働いたらどうでゲソ!」

シンディー「オーウ、何を言いますか。いまもこうして宇宙人とのコミュニケーションという大事な仕事をしているじゃないですか」

イカ娘「・・・。私はあの海で生まれて、あの海で育って、あの海から地上を侵略しに来たのでゲソ!! いい加減、私を宇宙人扱いするのをやめなイカ!」

シンディー「あなたの種族が地球で生まれた証拠はあるの?」

イカ娘「え?」

シンディー「だって、あなたが海で生まれたとしても地球上の生き物とは限らないし、あなたが生まれるもっと昔にあなたの種族がこっそり地球に来て、人間に見つからないように深海に拠点を築き、地球で生活するために海・地上の両方で行動できるイカと人間の姿に模した形に進化したとしたら、昔から言われている宇宙・海底人同一説も説明がつくし・・・」

イカ娘「ああああ・・・・・・」


イカ娘「というわけで、どうやら私は宇宙人だったみたいでゲソ」

栄子「えええ?! 急にどうした、イカ娘」

イカ娘「これからは『イカ星人』と呼ばなイカ」

栄子「イカは残すのか」

イカ娘「私がイカ星人である証拠を見せるでゲソ」

栄子「ええ?」

イカ娘「宇宙人だからミステリー・サークルを描くでゲソ」

栄子「落書きじゃねーか」

イカ娘「宇宙人だから地上絵を描くでゲソ」

栄子「同じじゃねーか。どこで覚えた!」

イカ娘「ふっふっふー、正体不明の・・・」

栄子「だからどこで!」

イカ娘「ワレワレハ・・・。うえっ、強く叩きすぎたでゲソ」

栄子「そもそも宇宙人はそんな喋り方しないだろう」

イカ娘「とにかく、今日から私のことは宇宙人として扱うことでゲソ」

栄子「ま、お前がそれでいいなら別にいいけど。んじゃ、イカ娘改めイカ星人」

イカ娘「んん?」

栄子「この料理を左奥のテーブルに持ってってくれ」

イカ娘「わかったでゲソ」

たける「イカ星人姉ちゃん、遊ぼうよ!」

イカ娘「たける、ちょっと待つでゲソ。はっ! これじゃあいつもと同じじゃなイカ! 宇宙人としての扱いを要求するでゲソ」

栄子「何だよそりゃ」

イカ娘「はっ、この匂いは・・・、エビー!」

千鶴「はい、イカ星人ちゃん」

イカ娘「美味しそうでゲソ。食べていイカ?」

千鶴「もちろん。あ、でも、イカ星人ちゃんって宇宙人なのよね。うーん・・・」

イカ娘「ああ・・・」

千鶴「イカ星人って、エビ食べるのかしら?」

イカ娘「え?」

栄子「いいや、聞いたことないなあ。たける、お前は?」

たける「宇宙人って確か、牛とか豚をさらって、血を吸うんじゃなかった?」

イカ娘「ええっ? 不味そうでゲソ」

千鶴「そうよね。家畜はともかく、宇宙人はエビ食べないわよね」

イカ娘「ああああああ・・・」

栄子「お前が食えないなら、もったいないから私が食べるわ」

イカ娘「ああっ」

栄子「いっただきまーす。あ、宇宙人のくせに何食ってんだよ!」

イカ娘「何のことでゲソ? 私はイカ娘でゲソ」

栄子「何だそりゃ」

シンディー「ちっ、洗脳が甘かったか」

千鶴「申し訳ありませんが、イカ娘ちゃんはお渡しすることはできません」

シンディー「うわあっ。え?」

千鶴「たとえ宇宙人であったとしても。ね? 栄子ちゃん」

栄子「ああ、イカ娘は渡せねーな」

イカ娘「え? 栄子・・・」

栄子「イカ娘はうちの大事な召使だからな!」

イカ娘(味方不在!)

栄子「大体こいつを研究したところで、イカ墨くらいしか出てこねーよ」

シンディー「オーケー、今日のところはこの辺で引き上げるわ。でも、絶対あきらめないわ。あなたが宇宙人と認めるまで何度でも会いに来るわ。おっほっほっほ、おーっほっほっほほ」