古泉[こいずみ]:
涼宮[すずみや]閣下[かっか]、先行[せんこう]の策敵[さくてき]艇[てい]より入電[にゅうでん]。敵艦隊[てきかんたい]を捕捉[ほそく]しました。

長門[ながと]:
敵艦隊[てきかんたい]、黄道[こうどう]8時[じ]20分[ふん]、距離[きょり]6.3天文[てんもん]単位[たんい]、光速[こうそく]の約[やく]60%で本艦隊[ほんかんたい]に接近[せっきん]中[ちゅう]。
総数[そうすう]は約[やく]15000隻[せき]

ハルヒ:
来た[きた]わね。敵を[てきを]殲滅[せんめつ]するわよ。全艦[ぜんかん]、戦闘[せんとう]配置[はいち]。

古泉[こいずみ]:
アイアイ、マム!
全艦[ぜんかん]、戦闘[せんとう]配置[はいち]。反応[はんのう]炉[ろ]戦闘[せんとう]出力[しゅつりょく]へ。
推進機関[すいしんきかん]解放[かいほう]。第一[だいいち]船速[せんそく]。3、2、1 イグニッション。

みくる:
超[ちょう]重力[じゅうりょく]魚雷[ぎょらい]、全[ぜん]発射管[はっしゃかん]に装填[そうてん]開始[かいし]します。
それから、スーパープロトン砲[ほう]、全[ぜん]砲門[ほうもん]を発射[はっしゃ]体制[たいせい]へ

長門[ながと]:
電子[でんし]戦[せん]開始[かいし]。レンジブースター最大[さいだい]、全[ぜん]ECLM作動[さどう]

ハルヒ:
よし、最大[さいだい]船速[せんそく]よ!

キョン:
おい、ハルヒ。もうちょっと下が[さが]ったほうがいいんじゃないか?
お前[まえ]の艦隊[かんたい]が前[まえ]に出過[です]ぎだぞ。

ハルヒ:
あたしだって、ビームやミサイルをピコピコ撃ち[うち]あったりしたいのよ。

キョン:
将棋[しょうぎ]やチェスだって、王将[おうしょう]が敵陣[てきじん]にズカズカ乗り込ん[のりこん]だりしないだろう?

ハルヒ:
それは...そうかもね。じゃあ、あんた達[たち]で何とか[なんとか]しなさい。
敵[てき]の大将[たいしょう]を見付け[みつけ]て、バシバシ攻撃[こうげき]するの。必ず[かならず]勝つ[かつ]のよ。
チョコザイなコンピ研[けん]の連中[れんちゅう]なんか、ギッタギッタのメッタメタに
やっちゃいなさい!

キョン:
とっとと白旗[しろはた]を上げ[あげ]た方が[ほうが]いいんじゃないのか?
ま、そうも行か[いか]ないんだろうが。


キョン:
季節[きせつ]は秋[あき]、文化[ぶんか]祭[さい]がどうにか無事[ぶじ]に終って[おって]数日[すうじつ]が過ぎ[すぎ]、学園[がくえん]に静けさ[しずけさ]が戻って[もどって]いた。
つまり平凡[へいぼん]な日常[にちじょう]がまた始ま[はじま]ったわけなのだが、このSOS団[だん]あじとでの放課後[ほうかご]、平凡[へいぼん]な日常[にちじょう]と呼ん[よん]で良い[よい]のかは保留[ほりゅう]しておくべきだろう。
未来人[みらいじん]、宇宙人[うちゅうじん]、超能力者[ちょうのうりょくしゃ]の3人[にん]と一室[いっしつ]でまったりと過ご[すご]し、かつ正 気[しょうき]と客観性[きゃっかんせい]を保ち[たもち]続け[つづけ]ている俺[おれ]は、結構[けっこう]大物[おおもの]なのかもしれない。
ラカンにスカウトされるかもしれん。

古泉[こいずみ]:
随分[ずいぶん]、悩ん[なやん]でいるみたいですね。

キョン:
別に[べつに]。
最近[さいきん]、この理不尽[りふじん]空間[くうかん]に普通[ふつう]に馴染[なじみ]んで来て[きて]いる自分[じぶん]に感心[かんしん]してな。
そろそろ誰か[だれか]が褒め[ほめ]てくれても良さ[よさ]そうなものだ。

古泉[こいずみ]:
ならば僕[ぼく]が称賛[しょうさん]の言葉[ことば]を贈って[おくって]差し上げ[さしあげ]ましょうか?

キョン:
お前[まえ]に褒め[ほめ]られても、嬉し[うれし]くねぇよ。
何か[なにか]裏[うら]があるんじゃないかと、不安[ふあん]になるだけだ。

古泉[こいずみ]:
ごもっともですね。

みくる:
お待た[また]せしちゃってごめんなさい。
雁音[かりがね]っていうのを買って[かって]みたんです。上手く[うまく]淹[い]れることが出来た[できた]と思う[おもう]けど

キョン:
いえいえ、朝比奈[あさひな]さんの御[おみ]手[て]が差し[さし]出す[だす]ものなら、たとえ水道水[すいどうすい]でも、
アルプスの雪解け[ゆきどけ]水[みず]以上[いじょう]です。

みくる:
味わ[あじわ]って飲ん[のん]でね。

古泉[こいずみ]:
ところで、涼宮[すずみや]さんは?

キョン:
掃除当番[そうじとうばん]だ。あいつが居な[いな]いと、平和[へいわ]そのものだな。

みくる:
はぁい、ただいま。



みくる:
コンピュータ研[けん]の部長[ぶちょう]さん。

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
ん?団長[だんちょう]さんは不在[ふざい]か。

キョン:
何[なん]でしょうかね?

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
まず、これを受け取って[うけとって]欲しい[ほしい]
ディスクに入って[はいって]いるのはゲームソフトだ
僕達[ぼくたち]のところが開発[かいはつ]したオリジナルのものだよ。
この前[まえ]の文化祭[ぶんかさい]で発表[はっぴょう]したんだけど、見な[みな]かったのかな?

キョン:
憶え[おぼえ]てません。
文化祭[ぶんかさい]でいつまでも憶え[おぼえ]ていたい記憶[きおく]は、朝比奈[あさひな]さんのメイド衣装[いしょう]ぐらいのものだ

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
そうか、展示[てんじ]場所[場所]が悪か[わるか]ったのかなぁ

キョン:
それで、御用件[ごようけん]は?

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
そうだった. 君達[きみたち]の団[だん]と挑戦[ちょうせん]しに来た[きた]んだ
勝負[しょうぶ]だよ、ゲームで勝負[しょうぶ]するんだ。真剣勝負[しんけんしょうぶ]だ。君達[きみたち]と勝負[しょうぶ]したいんだ。
SOS団[だん]との積年[せきねん]の確執[かくしつ]をこの勝負[しょうぶ]で一気[いっき]に

キョン:
頼む[たのむ]からそう勝負[しょうぶ]勝負[しょうぶ]と連呼[れんこ]しないでくれ
ハルヒの地獄耳[じごくみみ]がその単語[たんご]を聞き[きき]付け[つけ]たら

ハルヒ:
勝負[しょうぶ]したいですって? あんた達[たち]何者[なにもの]?
ははーん、さては私[わたし]のSOS団[だん]を邪魔[じゃま]に思う[おもう]秘密組織[ひみつそしき]か何か[なにか]でしょう?
そうはいかないわよ。
暗い[くらい]闇[やみ]を照ら[てら]して邪悪[じゃあく]を根絶やし[ねだやし]にするのが、正義[せいぎ]の味方[みかた]の使命[しめい]なんだからね

キョン:
ハルヒ、蹴り[けり]を入れ[いれ]る前[まえ]に話[はなし]を聞け[きけ]よ

ハルヒ:
キョン、勝負事[しょうぶごと]なんてのはね、言い出し[いいだし]たその時[とき]から勝負[しょうぶ]なの
敗者[はいしゃ]が何を[なにを]言お[いお]うと、それは言い訳[いいわけ]よ。
アンタ達[たち]だったの?
どうしてコンピ研が[とが]私達[わたしたち]に喧嘩[けんか]を売り[うり]に来た[きた]わけ?

キョン:
だから今[いま]まさにそれを説明し[せつめいし]てもらうところだったんだよ

ハルヒ:
そう、そうだったの

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
卑怯[ひきょう]なり、SOS団[だん]
とにかく我々[われわれ]コンピュータ研[けん]は、SOS団[だん]に勝負[しょうぶ]を申し込む[もうしこむ]ぞ

ハルヒ:
勝負[しょうぶ]ね!

キョン:
なあ、いい加減[かげん]に話[はなし]を進め[すすめ]たいんだが

ハルヒ:
それで要す[ようす]るに何[なに]?

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
自作[じさく]ゲームで対戦[たいせん]して、僕達[ぼくたち]が勝った[かった]ら返却[へんきゃく]して欲しい[ほしい]んだ

ハルヒ:
返却[へんきゃく]?何を[なにを]?

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
使って[つかって]ないならPC返せ[かえせ]よ

ハルヒ:
私[わたし]はしょっちゅう使って[つかって]いるわよ。この前[まえ]の映画[えいが]もこれで編集[へんしゅう]したの

キョン:
実際に[じっさいに]やったのは俺[おれ]だが

ハルヒ:
ホームページも作った[つくった]し

キョン:
はい、それも俺[おれ]。

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
何を[なにを]言う[いう]、そのサイトだって殆ん[ほとん]ど更新[こうしん]してないじゃないか

キョン:
ははあ、毎日[まいにち]サイトに訪問[ほうもん]していたのは彼[かれ]だったのか
カマドウマも説明[せつめい]が付く[つく]

ハルヒ:
待ち[まち]なさいよ、私[わたし]が頂戴[ちょうだい]って言った[いった]時[とき]、あげるって答え[こたえ]たじゃないの
あんたも憶え[おぼえ]ているでしょう、キョン?

キョン:
そうだっけ?

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
あんな取り引き[とりひき]は無効[むこう]だ、そっちがやらせたんだろう!
PC強奪[ごうだつ]時に[じに]受け[うけ]た精神的苦痛[せいしんてきくつう]はこの際だ[さいだ]から忘れ[わすれ]てもいい
いや、忘れ[わすれ]たい。お互い[たがい]忘れ[わすれ]よう。
とにかくそういう訳[わけ]で、俺達[おれたち]と戦え[たたかえ]。

ハルヒ:
まあいいわ、そんなに勝負[しょうぶ]したいならしてあげようじゃないの
それで、そっちは何を[なにを]賭け[かけ]るの?

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
そうだな、新たに[あらたに]ラップトップを人数分[にんずうぶん]4台[だい]進呈[しんてい]しようじゃないか

ハルヒ:
まじで?
本当[ほんとう]ね?途中[とちゅう]で気が[きが]変わ[かわ]ったなんてのは許さ[ゆるさ]ないわよ

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
心配[しんぱい]御無用[ごむよう]、約束[やくそく]しよう。

ハルヒ:
結構[けっこう]な自信[じしん]ねぇ。いいわ。
そういやアンタのところ女子部員[じょしぶいん]居な[いな]いでしょ?
もしそっちが勝った[かった]らこの娘[こ]をコンピ研[けん]に進呈[しんてい]するってのはどう?
ユキならきっと即戦力[そくせんりょく]になるわよ。
そっちがPC4台[だい]賭け[かけ]るんだし、こっちも1台[だい]賭け[かけ]るよりユキの方が[ほうが]釣[つり]合う[あう]でしょう?

キョン:
いやPC4台[だい]と長門[ながと]ではスペックに開き[ひらき]がありすぎるぞ、お前[まえ]は知ら[しら]ないだろうが

ハルヒ:
そんじゃ、みくるちゃんの方が[ほうが]良い訳[いいわけ]?

キョン:
お前[まえ]が賞品[しょうひん]になれ。賭け[かけ]るなら、自分[じぶん]の体[からだ]を賭け[かけ]たらいいじゃねえか
勝手[かって]なこと抜か[ぬか]すな

ハルヒ:
何言[なにごと]ってんのよ. 神聖[しんせい]にして不可侵[ふかしん]な象徴[しょうちょう]たる存在[そんざい]、それがSOS団[だん]団長[だんちょう]なのよ
私[わたし]はこれだって人[ひと]以外[いがい]にこの職[しょく]を譲る[ゆずる]つもりはないわよ

キョン:
お前[まえ]は卒業後[そつぎょうご]もここに居座る[いすわる]つもりか?

ハルヒ:
どっちがいいわけ?

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
えーっと

ハルヒ:
分か[わか]った、仕方無い[しかたない]わね。どうしても私[わたし]がいいなら

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
いや、いや、断固[だんこ]遠慮[えんりょ]する
ゲーム内容[ないよう]は5対[つい]5のオンライン宇宙戦闘[うちゅうせんとう]シミレーションゲームだ
対戦[たいせん]開始[かいし]は一週間後[いっしゅうかんご]の午後[ごご]4時[じ]
それまでに腕[うで]を磨い[みがい]ておくことだね、あまりに弱い[よわい]と拍子抜け[ひょうしぬけ]するから

キョン:
既に[すでに]勝った[かった]気で[きで]いるな

ハルヒ:
賞品[しょうひん]の前払い[まえばらい]とは気前[きまえ]がいいわね
うんうん、やっぱりPCは団員[だんいん]の数[かず]だけあるべきよね

キョン:
こっちも態度[たいど]は同じ[おなじ]か


キョン:
今度[こんど]の勝負[しょうぶ]だけどな、インチキは止め[とめ]ておこう

古泉[こいずみ]:
インチキ? 我々[われわれ]が?

キョン:
ああ、今回[こんかい]ばかりは、宇宙[うちゅう]的[てき]あるいは未来的[みらいてき]あるいは超能力[ちょうのうりょく]的な[てきな]いかさま技[わざ]は100%封印[ふういん]だ
真っ当[まっとう]に戦って[たたかって]真っ当[まっとう]な結末[けつまつ]を迎え[むかえ]る、それが一番[いちばん]いい

古泉[こいずみ]:
我々[われわれ]が負け[まけ]てしまってもいいと?

キョン:
そうさ、負け[まけ]ても失う[うしなう]ものは盗品[とうひん]のPCだけだ
オレたちは別に[べつに]困ら[こまら]ん。

キョン:
そんなことになったら、朝比奈[あさひな]画像[がぞう]集[しゅう]をどこかに移す[うつす]必要[ひつよう]はあるだろうが

古泉[こいずみ]:
PCの事[こと]ではありません。涼宮[すずみや]さんは何か[なにか]に負け[まけ]ることが好き[すき]ではないのですよ。
負け[まけ]そうだと感じ[かんじ]ると閉鎖[へいさ]空間[くうかん]を生み出し[うみだし]て, 人知れず[ひとしれず]例の[れいの]あれを大暴れ[おおあばれ]させてしまう。
それでもいいと言う[いう]のですか?

キョン:
構い[かまい]やしないね. いくらあいつでも、そろそろ学ん[まなん]でいいころだ。
ん、なんだ気色悪い[きしょくわるい]。

古泉[こいずみ]:
いえ、羨ま[うらやま]しくなったものですから.
あなたと涼宮[すずみや]さんの間に[あいだに]ある見え[みえ]ざる信頼関係[しんらいかんけい]に対し[たいし]てね

キョン:
何の[なんの]事[こと]やらさっぱりだね

古泉[こいずみ]:
例えば[たとえば]1週間後[しゅうかんご]のゲームに負け[まけ]たとします。
しかしそこで涼宮[すずみや]さんは閉鎖[へいさ]空間[くうかん]を生み出さ[うみださ]ないとあなたは実感[じっかん]している。
彼女[かのじょ]を信頼[しんらい]しているからです
涼宮[すずみや]さんの方[ほう]もあなたならゲームを勝利[しょうり]に導く[みちびく]だろうと信じ[しんじ]ている
負け[まけ]るはずが無い[ない]と確信[かくしん]しているから、団員[だんいん]の身柄[みがら]を賭け[かけ]ようとした。
それが信頼[しんらい]です。
決して[けっして]言葉[ことば]に出し[だし]たりしませんが、
あなた方[ほう]二人[ふたり]は理想形[りそうけい]と言って[いって]いいくらいの信頼感[しんらいかん]で結び[むすび]付い[つい]ているんです。


キョン:
3ってことは、1と2もあったのか。

ハルヒ:
良い[いい]感じ[かんじ]に決め[きめ]ようとして、何か[なにか]意味不明[いみふめい]になっている名前[なまえ]ね。

キョン:
それを言い出し[いいだし]たら、SOS団[だん]はどうなんだ?
ゲーム自体[じたい]は極[ごく]シンプルだな。
5人[にん]にそれぞれ15000隻[せき]の宇宙[うちゅう]艦隊[かんたい]が与え[あたえ]られる。
それを各自[かくじ]のパソコンから操る[あやつる]。
敵を[てきを]全滅[ぜんめつ]させるか、あるいは敵[てき]の大将[たいしょう]を撃破[げきは]すれば勝ち[かち]だ。

ハルヒ:
この明る[あかる]いところは?

古泉[こいずみ]:
これは策敵[さくてき]範囲[はんい]ですよ。
この範囲[はんい]の中[なか]でしか、敵[てき]や障害物[しょうがいぶつ]の位置[いち]がわからないんです。
策敵[さくてき]偵[てい]を出し[だし]てこの範囲[はんい]を広げ[ひろげ]ないと、敵[てき]の先手[せんて]を打て[うて]ません。
速やか[すみやか]な敵[てき]の位置[いち]特定[とくてい]と行動[こうどう]予測[よそく]が勝負[しょうぶ]の明暗[めいあん]を分け[わけ]ることになりそうです。

みくる:
えっと、最初[さいしょ]は相手[あいて]が見え[みえ]ないってこと?
キョンくん、あの、あたしこういうの苦手[にがて]で良く[よく]わからないんですけど

キョン:
大丈夫[だいじょうぶ]、ゲームですから。適当[てきとう]に遊んで[あそんで]おけばいいんですよ。

ハルヒ:
適当[てきとう]なんてとんでもないわ。
完膚[かんぷ]無き[なき]までにコンピュータ研[けん]を叩き[たたき]のめすんだから。
これからみっちり練習[れんしゅう]するわよ。
大将[たいしょう]は当然[とうぜん]あたし。さあ、総員[そういん]戦闘[せんとう]配置[はいち]。

キョン:
長門[ながと]なら健闘[けんとう]できそうだな。
前言撤回[ぜんげんてっかい]。駄目[だめ]だこりゃ。

ハルヒ:
全軍[ぜんぐん]突撃[とつげき]!
全軍[ぜんぐん]突撃[とつげき]!
全軍[ぜんぐん]突撃[とつげき]!
全軍[ぜんぐん]突撃[とつげき]!

ハルヒ:
ああ、またやられた。何か[なにか]腹[はら]が立つ[たつ]わよ、このゲーム。

キョン:
突撃[とつげき]ばかりだからだ。戦術[せんじゅつ]がそもそも間違って[まちがって]いる。

ハルヒ:
ああ、面倒い[めんどい]ったら無い[ない]わね。
私[わたし]はもっと分か[わか]りやすいのが好き[すき]なのに。

キョン:
気の[きの]性[せい]かもしれんが、楽しそう[たのしそう]だな。
念[ねん]を押し[おし]ておくが、今回[こんかい]はインチキ技[わざ]は無し[なし]だからな。


ハルヒ:
本日[ほんじつ]、天気[てんき]晴朗[せいろう]なれども波[なみ]高し[たかし]。皇国[こうこく]の荒廃[こうはい]、この一戦[いっせん]にあり!
この戦い[たたかい]は始まり[はじまり]に過ぎな[すぎな]いの!
あらゆる邪魔者[じゃまもの]をけちらして、SOS団[だん]は宇宙[うちゅう]の彼方[かなた]までその名[めい]を轟か[とどろか]せるのよ。
そのうち教育委員会[きょういくいいんかい]にかけあって、全て[すべて]の公立[こうりつ]校[こう]にSOS支部[しぶ]を作る[つくる]つもりよ。
勝って[かって]当然[とうぜん]とはいえ、手抜き[てぬき]は絶対[ぜったい]に禁止[きんし]。
徹底的[てっていてき]に叩き[たたき]のめすのよ。

キョン:
この自信[じしん]の原材料[げんざいりょう]は何[なに]なんだろう?
2mgでいいから、俺[おれ]にも分け[わけ]て欲しい[ほしい]ねぇ

ハルヒ:
そう、ちょっぴり注入[ちゅうにゅう]してあげようか?
どう少し[すこし]は効い[きい]たでしょ

キョン:
この睨めっこ[にらめっこ]にどんな効能[こうのう]があるんだ?

ハルヒ:
エネルギーを視線[しせん]に込め[こめ]て送って[おくって]あげたじゃないの
そんなのをあんたも感じ[かんじ]たでしょう?

キョン:
いや、身の[みの]危険[きけん]なら感じ[かんじ]たが

古泉[こいずみ]:
そろそろスタートです

ハルヒ:
全軍[ぜんぐん]前進[ぜんしん]

キョン:
で、ゲームは始まり[はじまり]、つい今[いま]しがた敵艦隊[てきかんたい]を発見[はっけん]した訳[わけ]なのだが、長門[ながと]のお蔭[いん]で敵[てき]の動き[うごき]の一部[いちぶ]が掴め[つかめ]ている状態[じょうたい]だ
策敵[さくてき]をしながら戦闘[せんとう]もこなして獅子[しし]奮迅[ふんじん]の働き[はたらき]だなぁ
ゲーム音痴[おんち]の朝比奈[あさひな]さんと、突撃[とつげき]馬鹿[ばか]のハルヒは役に立た[やくにたた]ないし、既に[すでに]5対[つい]3、数[かず]で負け[まけ]ている

古泉[こいずみ]:
敵[てき]は、鶴翼[かくよく]陣形[じんけい]で我々[われわれ]を誘い[さそい]込む[こむ]つもりのようです。
防御[ぼうぎょ]に徹す[てっす]るのが得策[とくさく]かと

キョン:
そりゃ、良策[りょうさく]だこって。だがハルヒはどう言う[いう]か。
なぬ?
別の[べつの]艦隊[かんたい]から攻撃[こうげき]されている?
どこから湧い[わい]て出た[でた]?

古泉[こいずみ]:
こちらの艦[かん]にも来ま[きま]した。
どうやって我々[われわれ]の位置[いち]を?

ハルヒ:
何[なに]やってんの? ちゃっちゃっと反撃[はんげき]しなさい

キョン:
言わ[いわ]れんでもそうするさ
右舷[うげん]に90度[ど]回頭[かいとう]、全[ぜん]砲門[ほうもん]開け[ひらけ]

古泉[こいずみ]:
なかなかやる気に[きに]になってきているじゃないですか。

キョン:
目標[もくひょう]、敵艦隊[てきかんたい]、全[ぜん]ビーム砲[ほう]発射[はっしゃ]! ってあれ?
くそ、逃げ[にげ]やがった

古泉[こいずみ]:
こちらもです。撃た[うた]れるだけ撃た[うた]れて、雲隠れ[くもがくれ]されました

キョン:
一撃離脱[いちげきりだつ]作戦[さくせん]か

古泉[こいずみ]:
また来ま[きま]した、側面[そくめん]から

キョン:
ええい、チクチクと

ハルヒ:
何も[なにも]たもたやってんのよ。敵[てき]が逃げ[にげ]ちゃうじゃない。

キョン:
分か[わか]っているが、どうにもならないんだ。
野郎[やろう]ども、両側[りょうがわ]に隠れ[かくれ]てやがる

ハルヒ:
じゃあ、ガンダムを発信[はっしん]させなさい

キョン:
行き[いき]まーす、って待て[まて]

みくる:
私[わたし]、今[いま]どこにいるんですか?

ハルヒ:
もう我慢[がまん]できないわ, 全艦[ぜんかん]全速[ぜんそく]前進[ぜんしん]せよ!
私[わたし]が敵[てき]の親玉[おやだま]を見つ[みつ]け出し[だし]て、フルボッコにしてやんよ!

キョン:
何[なに]やってんだ、後ろ[うしろ]に戻れ[もどれ]!

古泉[こいずみ]:
ええ、我々[われわれ]にお任せ[まかせ]ください。

ハルヒ:
いいから退き[しりぞき]なさい。偉い[えらい]者[もの]同士[どうし]、サシでドンパチやるわ!

キョン:
戻れ[もどれ]って、敵[てき]の所在[しょざい]も分か[わか]らんだろ

ハルヒ:
任せ[まかせ]なさい、私[わたし]が発見[はっけん]してやるわ

キョン:
戻れ[もどれ]っつうの

古泉[こいずみ]:
まず落ち着い[おちつい]て、敵[てき]が撃って[うって]来て[きて]いますよ

みくる:
皆さん[みなさん]、どこに行っち[いっち]ゃったんですか?

ハルヒ:
退き[しりぞき]なさい

キョン:
退き[しりぞき]たくても、動け[うごけ]ねぇ

キョン:
何だ[なんだ]こりゃ?

古泉[こいずみ]:
ああ、艦隊[かんたい]を分散[ぶんさん]したんですね。

キョン:
そんなことできるのか?

古泉[こいずみ]:
取説[とりせつ]の最後[さいご]に書い[かい]てありましたよ
艦隊[かんたい]を20まで分散[ぶんさん]させて操作[そうさ]できるみたいですね。
ただこんな数[かず]を同時操作[どうじそうさ]するなど人間技[にんげんわざ]では不可能[ふかのう]なので、誰も[だれも]やらなかった訳[わけ]です。

キョン:
人間技[にんげんわざ]ではねぇ

みくる:
そんなに力[ちから]を入れ[いれ]ると壊れ[こわれ]るんじゃあ..

ハルヒ:
敗北主義[はいぼくしゅぎ]者[しゃ]は、校庭[こうてい]10周[しゅう]の刑[けい]よ!
しかも素ッ裸[すっぱだか]で、「緑色[みどりいろ]の火星人[かせいじん]が追っかけ[おっかけ]て来る[くる]」って叫び[さけび]ながら10周[しゅう]!



キョン:
ええとだなぁ
あの長門[ながと]さん、なたたは一体[いったい]何[なに]をしておいでなのでしょうか?
おい長門[ながと]、俺[おれ]はインチキすんなって言って[いって]おいたはずだぞ。

長門[ながと]:
していない. 特別[とくべつ]な情報操作[じょうほうそうさ]を行って[いって]いる訳[わけ]ではない。
課せ[かせ]られたルールを遵守[じゅんしゅ]している

キョン:
ほ、本気[ほんき]でか?

長門[ながと]:
本気[ほんき]。インチキをしているのはコンピュータ研[けん]の方[ほう]

キョン:
奴等[やつら]が? どういうことだ?

長門[ながと]:
彼ら[かれら]の策敵[さくてき]モードが無効化[むこうか]している
マップ上の[うえの]全て[すべて]が我々[われわれ]の位置[いち]を含め[ふくめ]て最初[さいしょ]から丸見え[まるみえ]

キョン:
お前[まえ]の説明[せつめい]を理解[りかい]できることもあるんだな。
こちらから敵[てき]が見え[みえ]ないのに、向こう[むこう]からは見え[みえ]てるってのか
どおりで勝て[かて]ない訳[わけ]だ。

長門[ながと]:
我々[われわれ]には敗北[はいぼく]以外[いがい]の選択肢[せんたくし]は無か[なか]った
それを是正[ぜせい]したい

キョン:
連中[れんちゅう]がズルをしているのは分か[わか]ったよ
だからって、こちらが更に[さらに]インチキな魔法[まほう]で対抗[たいこう]したら、結局[けっきょく]は連中[れんちゅう]と同じ[おなじ]になっちまうぜ、分か[わか]るか? いや、それ以下[いか]だ。

長門[ながと]:
あなたの指示[しじ]に違反[いはん]することは無い[ない]。
地球[ちきゅう]の現代[げんだい]技術[ぎじゅつ]レベルに則って[のっとって]、プログラムに修正[しゅうせい]を施し[ほどこし]たいと思う[おもう]。
条件[じょうけん]を対等[たいとう]にするだけ. 許可[きょか]を。

キョン:
ひょっとして勝ち[かち]たいのか?
よし、やっちまえ

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
よーし、よし
分[ぶん]艦隊[かんたい]で策敵[さくてき]されたときは肝[きも]を冷や[ひや]したが、まだこちらの優勢[ゆうせい]だ
我々[われわれ]には敵[てき]が丸見え[まるみえ]なのに、向こう[むこう]からは見え[みえ]ないんだぞ
そろそろ仕上げ[しあげ]だ、撃破[げきは]せよ

コンピ研[けん]部員[ぶいん]:
部長[ぶちょう]、策敵[さくてき]モードが有効[ゆうこう]になっています。
旗艦[きかん]から攻撃[こうげき]を受け[うけ]ています。
敵[てき]の動き[うごき]が掴め[つかめ]ません。

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
何を[なにを]やってるんだ、策敵[さくてき]モードを無効[むこう]にしろ

コンピ研[けん]部員[ぶいん]:
駄目[だめ]です。アクセスが拒否[きょひ]されて締め出さ[しめださ]れました。

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
ば、馬鹿[ばか]な

ハルヒ:
見付け[みつけ]た、撃て[うて]撃て[うて]撃て[うて]!

キョン:
眠る[ねむる]がいい

ハルヒ:
こら、キョン。それは私[わたし]の獲物[えもの]よ

古泉[こいずみ]:
敵艦隊[てきかんたい]の二つ[ふたつ]が壊滅[かいめつ]しました。他の[ほかの]艦隊[かんたい]も混乱中[こんらんちゅう]。
長門[ながと]さんの分[ふん]艦隊[かんたい]のおかげで、一気[いっき]に形勢[けいせい]が逆転[ぎゃくてん]しましたね。

キョン:
だが、まだ大将[たいしょう]が健在[けんざい]だぞ. どうやってし留める[とどめる]か

長門[ながと]:
問題[もんだい]ない、そちらに追い込む[おいこむ]

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
く、くそ

キョン:
いい具合[ぐあい]に飛び込ん[とびこん]で来た[きた]

古泉[こいずみ]:
袋[ふくろ]の鼠[ねずみ]ですね

みくる:
あの、これ撃て[うて]るんですか?

ハルヒ:
なんか良く[よく]分か[わか]んないけど、でかしたわ。
全艦[ぜんかん]全力[ぜんりょく]射撃[しゃげき]! 敵[てき]の大将[たいしょう]を地獄[じごく]の業火[ごうか]に焼い[やい]てあげなさい。

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
コンピ研[けん]に栄光[えいこう]あれ!


コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
負け[まけ]たよ、完全[かんぜん]にうちの負け[まけ]だ。謝る[あやまる]よ。認め[みとめ]るよ、すまない。
でもまさか、ゲームの最中[さいちゅう]にゲームの中身[なかみ]を書き換えら[かきかえら]れるとは.
有り[あり]得な[えな]い

ハルヒ:
なにぶつぶつ言って[いって]んの? まあいいわ。約束[やくそく]は憶え[おぼえ]ているわよね?
このPCは全部[ぜんぶ]SOS団[だん]のモノ、返さ[かえさ]ないわよ。

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
なあ、あの、あれをやったのは誰[だれ]なんだい?
世界[せかい]でも通用[つうよう]しそうなスーパーハッカーは?
いやまあ、大体[だいたい]想像[そうぞう]はつくんだが
ものは相談[そうだん]だが、君[きみ]が暇[ひま]な時[とき]でいい、コンピュータ研[けん]の部活[ぶかつ]に参加[さんか]してみないか?是非[ぜひ]!

キョン:
何か[なにか]長門[ながと]を勧誘[かんゆう]し出し[だし]たぞ

ハルヒ:
ちょっとちょっと、勝手[かって]にユキをレンタルしちゃ駄目[だめ]よ
いい? この娘[こ]は、SOS団[だん]に不可欠[ふかけつ]な無口[むくち]キャラなの
私[わたし]が最初[さいしょ]に目[め]を付け[つけ]たんだからね

キョン:
長門[ながと]だって興味[きょうみ]を惹か[ひか]れるものが少なか[すくなか]らずある、
かは定か[さだか]じゃないが、俺[おれ]にはキーボードを叩く[たたく]こいつの姿[すがた]が、何故か[なぜか]楽しそう[たのしそう]に見え[みえ]た
それに、いつまでもハルヒの監視[かんし]だけでは長門[ながと]だって疲れ[つかれ]るに違い[ちがい]ない
宇宙人[うちゅうじん]製[せい]有機[ゆうき]ヒューマノイドインターフェイスだってたまには気晴らし[きばらし]も必要[ひつよう]だ

キョン:
お前[まえ]の好き[すき]にしろ
気が[きが]向い[むい]た時に[ときに]でもお隣[となり]さんに行って[いって]、PCを触ら[さわら]せてもらえばいい

長門[ながと]:
たまになら。

コンピ研[けん]部長[ぶちょう]:
いやあ、ありがたい。

キョン:
だそうだ。

ハルヒ:
まあ、ユキがいいならいいけど。
ああ、それから、コンピ研[けん]は敗残[はいざん]兵[へい]。勝者[しょうしゃ]の言う[いう]ことは何で[なんで]も素直[すなお]に聞か[きか]ないといけないの
あんたたち全員[ぜんいん]、私[わたし]に絶対的[ぜったいてき]な忠誠[ちゅうせい]を誓い[ちかい]なさい。
心配[しんぱい]しないで、悪い[わるい]ようにはしないわ
頑張り[がんばり]ようによっては、正式[せいしき]な団員[だんいん]にしてあげてもいいわよ。
古泉[こいずみ]君[くん]、さっそく調印[ちょういん]書[しょ]を作って[つくって]頂戴[ちょうだい]。