唯: ライブハウス?

律: そう。中学ん時の友達がさ、一緒に出ないかって誘ってくれたんだー。

唯: へえー。

澪: でも、これ、大晦日って書いてあるけど、あと十日しかないぞ。

梓: 何にも用意してませんよ。

唯: えー。でも楽しそう。わたし出てみたいな。

律: だろう?

唯: うん。

澪: でも、また大勢の人の前に出るのは・・・

律: 澪、そんなこと言ってたら、いつまでたっても成長できないぞ。

唯: ベース弾いてる澪ちゃん、かっこいいよ。

澪: じゃあ、多数決で決めよう。今回パスの人。

梓: 律先輩、唯先輩、すみません。

律: 小癪な、梓! じゃあ出たい人!

唯: はいっ! はいっ! はーいっ!

紬: はい!

梓: むぎ先輩!?

澪: むぎは年末年始は旅行じゃなかったのか?

紬: うん。でもこんなにいい機会、めったにないでしょ?
それに、今年最後の日もみんなで演奏ができるなんて、すごく幸せじゃないかなあ、って。

澪: むぎ・・・
確かにそのとおり・・・

梓: むぎ先輩を不幸にできない・・・
あのう・・・

澪: わたしたちも参加で。

唯: はははー。

律: よーし! じゃあ参加決定!

唯: やったー!

律: やるからには優勝だぜ!

紬: 優勝とかあるの?

唯: こうして、わたしたちの初のライブハウス参戦が決まったのでした。
どきどきです!


OP


唯: かわいいー。もうすぐクリスマスだね。

律: ほら、行くぞ。

唯: はーい。


唯: ここがライブハウスか。

紬: 何だか緊張するね。

澪: う、うん・・・

律: 大丈夫だって。
すみませーん。

川上: はーい!
はい、いらっしゃい。

律: あ、あの、出演、申し込みに来たんですけど。
放課後ティータイムです!

川上: ああ、話は聞いてるわ。「ラブ・クライシス」のマキちゃんの紹介ね。

唯: 「らぶ・くらいしす」! 何かかっこいい名前。
ねえ、律っちゃん。わたしたちのバンド名、ちょっとほわわんとしすぎかなあ。

川上: 「放課後ティータイム」って何だかかわいいバンド名ね。

唯: あれ? ほめられた?


ラジカセ: ふわふわタイム ふわふわタイム

律: こんな感じですけど・・・

川上: うん。じゃあ、参加申込書を書いてもらえる?

律: はい!

川上: えっと、当日出演者は13時入りね。

律: けっこう早いんですね。

川上: リハやるから。各バンド15分で。

律: え、あ・・・

川上: 15時からミーティング、客入れが16時、開演は17時ね。
あと、当日・・・だけど、基本何をかけても・・・

律: あ、は、はい!
あ、あたしが忘れても、みんなが・・・

澪: これがライブのチケットか。

唯: 入場料払わないと入れないんだね。

律: 聞いてねえ。


川上: じゃ、中を案内するから。
ここが楽屋。

唯: 楽屋? こ、ここが・・・!

紬: あの、暖簾掛けたりしていいですか?
「毎度!」

唯: わあ、かっこいいね、むぎちゃん!

紬: でしょ、でしょう?

川上: 他のバンドの子たちも使うから。


川上: で、この扉からステージに。

律: すっげーなー!

唯: ねえ、ミラーボールもあるよ!

川上: 演奏中の照明のプランも考えておいてね。

唯: もう、ぐるんぐるんのぴかぴかのきらきらで。

梓: ここで演奏をするんですね。

紬: どきどきするわね。

澪: あ、あ、あああ・・・

律: まだ燃え尽きるな。


川上: じゃ、本番よろしくね。

HTT: よろしくお願いしまーす!


憂: え? ライブハウスに?

唯: そう。今からその打ち合わせなんだ。

憂: すごい、お姉ちゃん!

唯: えへへへへ。

律: 曲目は4曲か。「ホッチキス」に「ふでペン」「カレー」「ふわふわ」でいいやね。

唯: あ、何着て歌う?

律: 1年目の学園祭で着たやつか?

梓: え・・・、あのふりふりの?

唯: あずにゃんの分もさわちゃん先生が作ってくれるよ。

梓: えええー・・・

律: でも、他にさわちゃんが作ってきたのって、スク水・白衣・ロリロリ・・・

梓: いやです!

律: うーん、じゃあ新しく作ってもらおうか。

唯: あ、変身して戦う感じの衣装は?

紬: あ、かわいい! 魔法少女とか?

澪: 制服でいいんじゃないか。

梓: 制服がいいです!

唯: あ、それがいいね!
あっ、そうだ・・・
はい。これ憂と純ちゃんの分。

憂: え?

唯: 二人で見に来てね。

憂: お姉ちゃんが初めてライブに出る記念のチケット・・・何かもったいなくて使えない!

梓: 使わないとは入れないよ。

唯: あとは和ちゃんにも渡さないと。


唯: はい、和ちゃん。

和: へえ、ライブに出るんだ。すごいわね。

唯: でへへへへー。
今のうちに、わたしたちのサイン貰っといたほうがいいよー。

和: え? 別にいいわよ。

唯: え!? もう書いてきたのに・・・

澪: 気が早いな。

和: わかった。貰っとく。

唯: ありがとう、和ちゃん。あとはさわちゃん先生に渡して、と。


梓: あ、貼ってある。

唯: わあ。わたしたち、これに出るんだね。

紬: うん。

律: おう!

唯: 他にはどんな人たちが出るのかな?

澪: ううっ!

梓: 澪先輩!?

律: 澪、人見知りだからな。


憂: お姉ちゃん、お風呂、先入るね。

唯: はーい。
ギー太、明日は一緒にがんばろうね。きっと、すっごく楽しいよ。


ファン: 年明けでしょ?/うん。/うーん、でもね、とりあえず内定で・・・/楽しみだよね。

ファン: お疲れ様です!

唯: はい?

律: どうもー!

唯: 何だろう? 出演バンドの子たちかな?

律: の、ファンの子たちじゃない?

唯: ああー、すでにファンが。


唯: こんにちは。

律: よろしくお願いしまー・・・

HTT: ええっ!

唯: こ、これは皆さん、手強そうな・・・

律: えええ・・・

澪: うっ。

サヤカ: おはようっす。

LC: お早う。

エリ: よろしく。

唯: ちゃんと挨拶してくれた。

マキ: 律っちゃん! 澪ちゃんも久しぶり。

律: あ、マキちゃん。
みんな、紹介するね。こちら、「ラブ・クライシス」のドラムのマキちゃん。今回ライブに誘ってくれた。

マキ: よろしくね。

唯: こ、こちらこそ! 律っちゃんがいつもお世話になってます!

アヤ: ああー、澪さんだ!

マキ: うちのベースのアヤ。澪ちゃんの大ファンでさ。

澪: ええっ?

アヤ: 学園祭のライブ、かっこよかったです。

唯: え? 見に来てくれたんだ!

アヤ: あ、遅れてきた人。

唯: すいません! すみません!

アヤ: そんな。楽しいライブでした。
あ、あの・・・

律: えへへ、ごめん。知らない人からライブをほめてもらったこと、あんまりないから。たぶん・・・

アヤ: そうなんだ・・・
あ、そうだ! 今度はわたしたちのライブ、ぜひ見に来てください。

マキ: 次は単独ライブなんだ。

紬: すごい・・・

アヤ: よかったらCDも。手作りなんだけど。

唯: すごいですね!

マキ: それじゃあ、またあとで。

律: うん!
何かうちらと意気込みが違うな。

唯: ねえねえ、わたしたちも何かロゴマークとかあったらいいね。

律澪紬梓: え?

唯: んーと、えへへへー。
えっとね、こんなのとか!

律: それじゃ温泉だ!

唯: あれ?

紬: ティーカップも描いたらどう?

唯: こう?
おおー、まったりお茶するいい感じ!
できました!

律: おっほー。これにも描いて描いて。

紬: わたしのキーボードにも。

澪: じゃあ、わたしもこれに。

梓: わたしもピックに。

唯: みんなでお揃いだね。

川上: じゃ、ミーティング始めまーす!

唯: あ・・・

HTT: うん!

律: よっしゃーっ!

HTT: 行くぞー!


唯: おおー! わたしたち2番目だ!

澪: 2番か・・・

アシスタント: すいませーん。これ、バックステージ・パスです。

澪: あ・・・ど、どうも・・・

律: すみません。

唯: これ、どこに貼ればいいの?
ん? ああ、あれか!

紬: すごい・・・

律: ライブ重ねてきたつわものだな。

澪: うん。

唯: じゃあ、わたしたちはこれが1枚目だね。

梓: はい!

唯: ・・・よっと。

律: いやいや。当日は自分に貼らないと出入りできないから。

唯: あ、そうなんだ。

律: そこに貼るか!

唯: へ?

梓: 湿布か!

唯: ええー?
何か無難な位置だな。

律: おっ、それよか、セッティング・シート書こうぜ。


唯: はー。いろいろ書くとこあるんだね。

律: まあ、曲名や曲調は決まってるからいいとして・・・

唯: 照明のイメージって?

律: それなんだよなあ。

紬: どう書けばいいのかな?

唯: うーん・・・
あ! ちょっと行ってくる!

澪: 選りに選っていちばん怖そうなところへ!

唯: 「元気よく」とか「ポップな感じで」って書いてた。

律: おおー! じゃ、うちもそんな感じで。

澪: あ、待って!
うちは・・・全部ピンクで!

梓: ピンクですか?

澪: だめ?

律: んじゃ、「ふわふわタイム」のサビはピンクで。

唯: あ、ミラーボールも!

律: じゃあ、前奏と間奏に使おうぜ。

紬: あとは・・・

律: うーん・・・。
ずばっとあたしにピンスポット当ててもらってもいいかな
「ずばっ!」

梓: 何で律先輩だけに? メンバー紹介のときに、一人ずつ照明当ててもらいましょうよ。

唯: ギー太にもね。

澪: わたしはいらないから!

律: 「ベースが転んだらすかさずピンスポ・・・」

澪: 絶対転ばない!

紬: 音響イメージはどうする?

唯: あ・・・。待ってて!
「3曲目、リバーブください」とか「ボーカル、目一杯ください」とか書いてた。

律: ああー。じゃ、うちもそんな感じで。
あ。MCはどこに入れるんだろ?

唯: 聞いてくる!
書き終わったから、これ参考に持ってっていいって。

律: おっほー!・・・ ええっ!?
す、すんません・・・

唯: ありがとうー。

澪: すでに馴染んでる・・・

律: ある意味最強だな、唯は。


澪: 他のバンドのリハも参考になるからな。

梓: あ、すごい。エフェクターいっぱい・・・

律: あ、マイ・マイクだ。いくらくらいするんだろうなあ・・・

唯: ねえねえ! お菓子も売ってるよ! あ、律っちゃん、CDが売ってるよ! あー、わたしたち売る物ないね、澪ちゃん。あ、あずにゃん、わたしたちもこれに映るのかな! うはー、へー、凄いね、むぎちゃん。

律: あー、はいはいはいはいはいはいっ。

唯: わあー、「放課後ティータイム様」だって! 「さ・ま」!

澪: いいから落ち着け!

紬: お茶にしよっか。

澪: ええっ!?

律: むぎもある意味、最強だな。


唯: はああー、おいしいねー。

律: やっぱこれだなー。

マキ: ああ、いい香り。

紬: よかったらご一緒にお茶、いかがですか?

マキ: えっ? じゃあ・・・、遠慮なく。

紬: うん。


律: へえー。じゃあ、けっこういろんなコンテストに出てるんだ。

エリ: なかなか入賞できないんだけどね。

サヤカ: でも、絶対プロになりたいから。

マキ: そうだよね。あきらめたら終わりだもん。

アヤ: ずっと音楽やってきたいし。

梓: すごい・・・

澪: みんな音楽がやりたくて、バンドやってるんだな。

唯: 「めざせ武道館」って言ってたのが恥ずかしいね。

澪: こんな話ができたのも、唯やむぎ、みんなのおかげかも。みんな、いつもちょっとずつ新しいドアを開いてくれる。

アシスタント: 放課後ティータイムさん、リハお願いします!

澪: しまった! まったりしすぎた!


唯: あ、まず何から・・・

律: セッティングだろ!

紬: しょ、照明!

梓: 誰に言ってんですか!

川上: じゃあお願いします!

HTT: え、はいっ!

律: じゃ、準備OK?

唯: いいっす!

梓: はい!

紬: だいじょーうぶ!

澪: う、うん・・・

律: じゃ、じゃあ、ええーと、4曲目「ふわふわタイム」、ワンコーラスいきます!

唯: あはあ、へへ・・・

律: 唯、ボーカル!

唯: あっ、しまっ・・・! ああ!

澪: だ、大丈夫・・・あああ!

梓: 澪先輩!

紬: あ、あ、ああっ!

律: 落ち着け、みんな!

エリ(?): 落ち着いて!

アヤ: もう一回、最初からでいいよ!

サヤカ: 大丈夫、大丈夫!

紫髪: がんばれ!

唯: みんなに迷惑かけないように、ちゃんとやらなきゃ。

梓: わたしたちだけのライブじゃない。

紬: だから、落ち着いてがんばらなきゃ。

澪: せっかく新しいドアを開いたんだから。

律: うん!


和: たしか、このあたりのはずだけど。ん?

純: ああっ! あれ、みんなお客さん!?

和: こんなに?

憂: お姉ちゃん、大丈夫かな?

唯: ういー!

憂: あ・・・、お姉ちゃん。

唯: 和ちゃんと純ちゃんも来てくれてありがとう。

純: すごい盛況ですね。

唯: でへへへへー。あ、見て見て。バックステージ・パス!

和: あんた、緊張しないの?

唯: するよー。お菓子食べて、緊張ほぐしてくる。あ、そうだ! ステージからみんなの名前呼ぶね。

和: やめて! わたしたちが緊張するから。

唯: じゃあ、またあとで。

憂: 大丈夫。いつものお姉ちゃんだ。


さわ子: ふう・・・。昔の服探してたら、時間かかっちゃったわよ。

唯: お気に入りのうさちゃん 抱いて
今夜もおやすみ ふわふわタイム

澪: ふわふわタイム

唯: ふわふわタイム

澪: ふわふわタイム

唯: ふとした仕草に 今日もハートずきずき

川上: ん?・・・ ああっ、キャサリン!

さわ子: え? ジャニス! あんた何で?

川上: ここのマネージャーやってんの。あんた、ちっとも変わらないわね。

さわ子: か、変わったわよ。だって、わたし、あの子たちの先生してるんだから。

川上: そっか・・・

唯: ああ神様 どうして好きになるほど
ドリームナイト 切ないの
とっておきのくまちゃん出したし 今夜は大丈夫かな?


唯: んんー、ああ、終わったー!

律: 終わったな。

さわ子: お疲れ様。

唯: ああっ、さわちゃん先生! 待っててくれたの?

憂: お姉ちゃん! お姉ちゃん、すごいよかったよ!

唯: ありがとう。

和: ほんと、みんながんばってたわね。かっこよかったわよ。

唯: ありがとう。

梓: あ・・・

ファン: お疲れ様です!

律: すごいな。

梓: はい。

唯: でも、わたしたちも和ちゃんとか、みんな来てくれたよ。
ありがとう!

マキ: あ・・・

律: また、一緒にライブしよう!

梓: お世話になりました!

紬: ありがとう。

澪: お、お疲れ様。

マキ: また誘うからね!

唯: よいお年を!


さわ子: ほら、虎ビキニもあるから着てみてー。

梓: いやです!

さわ子: なーにを・・・

澪: さっきの感動が・・・

憂: みなさん、年越しソバもありますよ。

梓(?): わあー!

律: うまそう!

澪: ごめんね、大勢で押しかけて。

憂: いいえ、全然です。だって・・・

唯: うーまああああい・・・

憂: あの顔が見られるだけで幸せですから。


唯: あ、またババだぞー・・・

律: いっひひひひひひひ。

アナウンサー: さあ、残すところ今年もあと1分を切りました。

律: あ、いよいよだな。澪、今年はどんな年だった?

澪: たくさん楽しいことがあったよ、みんなのおかげで。ありがとう。

律: へっ? あー・・・。いや、よせやい、気持ちわりいー!

澪: へ、き、気持ちわりいって・・・

律: おーい、みんなー! もうすぐ年明けだぞ!
・・・って、寝てるし!

アナウンサー: あけましておめでとうございます!

澪: あ、年明けた。

律: ちょーっ! 肝心なときに寝てどうすんだよ!

澪: ぐだぐだ・・・。けど、それも軽音部だよな。

律: むぎ! 唯! とっとと起きろって、もう。あ、口開いてるってば。ったく、もう・・・


唯: 起きて! ねえ! ねえ、みんな起きて!

律: ん・・・? あ? 何だ?

紬: ここどこ?

梓: いま何時ですか?

唯: 初日の出、見に行こう! 初日の出!

律: 眠いからいいや・・・

唯: もう! こんなときに寝てどうするの!

澪: いや、お前が言うか?


唯: さわちゃん先生おいて来ちゃったけど、大丈夫かな?

澪: 憂ちゃんもいるし、大丈夫だろ。

唯: ああ!

紬: きれい・・・

唯: でしょ、でしょ? ここ穴場なんだ。

澪: それじゃあ、えっと・・・、あけましておめでとうございます。

律唯紬梓: あめでとうございます!

唯: ところであずにゃん、それいつまで付けてるの?

梓: え? にゃあっ!

唯: えへへへー。

梓: な、何で誰も教えてくれないんですか!

律: ごみんごみんー、あんまり似合ってたもんで。

紬: すっごくかわいい。

唯: あずにゃん、自信持ちなよ。

梓: ううぅぅ・・・

澪: ふう、やれやれ。