K-ON! (Japanese) > 02. 楽器!
和: 唯。
唯: あ、のどかちゃーん。
和: 一緒に帰ろ。
唯: ごめーん。今日どうしても部活に行かなきゃいけないんだ。
和: そうなんだ。それじゃあ仕方ないね。
唯にも打ち込めるものができたのね。嬉しいような悲しいような…
どうしたの?
唯: 今日はむぎちゃん、おいしいお菓子持ってきてくれるんだ。
和: ギターやるんじゃないの?
唯: あ! でっへへへへへ。
唯: 幼稚園のときも、
(唯: ぼー・・・
和: んー? )
唯: 小学生のときも、
(唯: ぼー・・・)
唯: 中学生になっても…
(和: アイス。
唯: あっ)
唯: ずっとぼおっと生きてきたけど…高校生になった私は初めて、部活を始めました。
OP
唯: こんにちはー!
この三人が軽音部の仲間です。
律: よっ。
紬: こんにちは。
唯: ベース担当の秋山澪ちゃん。背が高くて、かっこいい大人の女性って感じです。
ねえねえ、なんで澪ちゃんはギターじゃなくてベースをやろうと思ったの?
澪: だってギターは恥ずかしい…
唯: は、恥ずかしい?
澪: ギターってバンドの中心って感じで先頭にたって演奏しなきゃいけないし、観客の目も自然と集まるだろ? 自分がその立場になるって考えただけで…
唯: 澪ちゃん!?
澪ちゃんは少し繊細です。
紬: 大丈夫?
唯: キーボード担当、琴吹紬ちゃん。通称むぎちゃん。おっとりぽわぽわ、かわいい人です
むぎちゃんはキーボードうまいよねー。キーボード歴長いのー?
紬: 私、四歳のころからピアノを習ってたの。
コンクールで賞をもらったこともあるのよ。
唯: へええ、凄いね。
なんで軽音部にいるんだろう?
紬: さあ、いただきましょう。
唯: そういえばずっと疑問に思ってたんだけど、この部室ってやけにものが揃ってるよね。最近の高校ってこんな感じなのかな~?
紬: ああ、それは私の家(うち)から持て来たのよ。
唯: 自前!?
紬: はい!
唯: むぎちゃんはかなりお嬢様っぽいです。
ドラム担当の田井中律ちゃん。元気一杯の明るい女の子です。
りっちゃんはドラムって感じだよね。
律: なっ!? あたしにもちゃんとすごく立派な聞けば誰でも感動する理由があるんだぞ!
唯: へええ、どんなどんな?
律: それは! ええと、あれだ…かっこいいから…
唯: そこ?
律: だってさああ、ギターとかベースとかキーボードとか指でちまちまちまちまするのを想像しただけでドハァァァァァ! ってなるんだよ!
唯: 楽器選びにも性格が出るんだな
紬: おかわりはいかが?
唯: ありがとう。
そういえば、むぎちゃんは合唱部に入りたかったんでしょう?
紬: ええ、でもめったに出会えないとっても楽しくて愉快な人たちの仲間になりたかったの
澪律: 珍獣ってことですか...
澪: そういえば、ひらさわさん。もうギターは買ったの?
唯: ゆいでいいよ
澪: え・・・
唯: わたしすでにみおちゃんのことみおちゃんってよんでるし
澪: ゆい
唯: かわいい
律: で、ゆい、ギターは?
唯: ん? ギター? ああ、そっかー! 忘れてた! 私ギターやるんだっけえ!?
澪: 軽音部は喫茶店じゃないぞ。
唯: ギターってどれくらいするの? 値段。
澪: 安いのは一万円台からあるけど。あんまり安すぎるのもよくないからなあ。五万円くらいがいいかも。
唯: へ、五万! 私のお小遣い10ヵ月分
澪: 高いのは十万以上するのもあるよ。
唯: 部費でおちませんか?
律: おちません
紬: これおいしいわよ
澪: とにかく楽器がないと何も始まらないしな…
律: よ~し、今度の休みにギターみにいこうぜ! おー!
唯: 無念なり・・・。ほーい。
憂: おねえちゃん、ごはんだよ。
唯: ういー。
憂: ん? どうしたの?
唯: 軽音部に入ったの。
憂: ええ!
唯: でね、ギター買いたいんだけど・・・
憂: へえーおねえちゃんギター弾けたんだ
唯: ううん! ゼッゼン! でねええ、お金を貸していただけないでしょうか。
憂: ごめんね、私もあんまりない。
唯: ですよねー。
憂: お母さんにお小遣いの前借り頼んでみたら? 私も一緒にお願いしてあげる。
唯: さすがあ! 頼りになるう。
律: あっ唯こっちこっち!
唯: あっみんな! あ、いて! ごめんなさい! お?
澪: あと数メートルなのに…
律: たどり着けない?
唯: よーしよしよしよしよし。
紬: お金は大丈夫だった?
唯: お母さんにムリ言って、五万円前借りさせてもらった。これからは計画的に使わなきゃ...いけないんだけど...今なら買える。
律: こらこら。
唯: ちょっと見るだけ。
唯: あーつかれたー。
律: 買ッチッタ。
紬: 楽しかったですね。
唯: 次どこ行こうか。あれ、何か忘れてない?
澪: 楽器だ、楽器。
唯: おお! しまった!
唯: すごーーい! ギターがいっぱーい! おお? うーん・・・
(4本腕: へいへーい)
律: ゆい! どれがいいかきめた?
唯: うーん、何か選ぶ基準とかあるのかな?
澪: もちろんあるよ。ギターって音色はもちろん、重さやネックの形や太さもいろいろあるんだ。だから女の子はネックが細いほうが…
唯: あっ、このギターかわいい!
澪: 聞いちゃいねェ。
律: そのギター二十五万円もするぞ。
唯: あっ本当だ! これはさすがに手が出ないや~。
紬: このギターが欲しいの?
唯: うん。
律: あっちに安いのあるぜ。
唯: やっぱこれがいいなああ。
澪: そういえば、私も今のベースが欲しくて…悩んで悩んで・・・
澪: こ、これください!
律: あたしも中古のドラムセット値切って値切って・・・
律: もう一声! もう一声ー!
澪: 店員さん泣いてたぞ。
律: どうしてもあのドラムが欲しかったんだよ。
紬: あの…値切るって…
律: 欲しいものを手に入れるために努力と根性で負けさせることダヨ!
紬: すごいですね! なんか憧れます!
澪: 憧れる要素がどこに!? あ・・・ゆい…
律: よし、みんなでバイトしよう!
紬: バイト?
律: うん! 唯の楽器を買うために!
唯: えっ、そんな悪いよ。
律: これも軽音部の活動の一環だって。
唯: りっちゃん…
紬: 私、やってみたいです。
唯: むぎちゃん…
律: うっしゃああやるぞお! おー!
紬: おー!
律: うおー!
紬: うおー!
律: うおおぉー!
澪: どんなバイトするんだろう…
和: バイト?
唯: うん! ギター買うために!
和: いつの間にこんな自立した子に? 嬉しいような悲しいような。
唯: 軽音部のみんなも協力してくれるんだ。
和: ええ!? みんなを巻き込んで!?
唯: うん!
唯: 何のバイトがいいかなあ?
律: ティッシュを配るのは?
澪: む…むり。
紬: ファーストフードはどうですかあ?
澪: い…いらっしゃいませ!
澪: だめ…かも…
律: そっか…澪にはハードル高いかもね。
澪: 怖い人が出てきたらと思うと玄関のベルが押せない。オーダーが聞きにいけない。
紬: 澪さん!
唯: ごめんね! 無理しなくていいから!
澪: やる前から無理だとか駄目だとかばかり言ってる。唯のギターを買うためなのに。それは、軽音部のためでもあるのに! 乗り越えないと、自分を!
私…なんでもやるよ!
律: あっ
澪: な、なに!?
律: これなんてどう?
3: 交通量調査?
律: 歩いてる車や人の数を数えるんだよ、カウンターを持って。
唯: あー! 野鳥の会?
律: これなら澪もできるっしょ。
紬: ほんとですねえ!
唯: いってきまーす。
憂: あっおねえちゃん、お弁当。
唯: あ・・・うっ、こんなに?
憂: 軽音部の皆さんの分も用意したの。おねえちゃんのためにバイトしてくれるんでしょ?
唯: うっはーい、ありがとー。
律: ほい。二人ずつ一時間ごとに交代だから。
紬: 軽快ですね。
律: こしゃくな!
唯: りっちゃんはやーい。
律: あいて!
澪: 向きになるからだ。
紬: 調査開始まであとちょっとありますね。とりあえずお茶にしましょう。
唯: うはー、ピクニックー!
澪: あー、みんな何だか心配だー。
唯: 天気が良くてきもちいいねー。
紬: そうねー。
唯: 高原のお嬢様?!
澪: 雑誌の懸賞?
律: 商品はギターだって!
澪: たしかにこっちのほうが早いかもな!
律: だろー?
唯: むぎちゃん、疲れない?
紬: 大丈夫よー。
唯: 指痛くない?
紬: うん。
唯: 眠くない?
紬: あ! 返事する変わりにカウンターを押しちゃった…
澪: 今のは4ビート。今のは8ビート。・・・って、真面目にやれー!
唯: むぎちゃん、すっごくおいしいんだけど、こんな高そうなお菓子、いつももらっちゃっていいのかなあ?
紬: いいのよ。いつもいろんな方から頂くんだけど、家に置いていても余らせてしまうから。
唯: いろんな人から余るほどお菓子をもらう家ってどんな家?
律: 流れる雲を数えてる。
澪: これって職業病!?
律: いちんちめシュウリョー!
紬: じゃあ、私は駅へ行くから。
律: 私と澪はバス。
澪: 唯は歩いて帰るんだっけ?
唯: うん!
紬: 明日も…
唯: うん! お菓子よろしくー!!
紬: 頑張りましょうって言おうとしたんだけど・・・
律: こらこら。
唯: でも余ってるんだったら。
律: こらこらこらこらこらこらこらこら・・・
澪: やっぱり職業病だ...
唯: じゃあね。
律: おう。
澪: バイバイ。
紬: またあした。
唯: みんなー! 本当にありがとねー! 私、ギター買ったら毎日練習するねー!
社員: 二日間お疲れ様。
4: お世話になりましたー。
澪: はい。
律: 一日八千円か。
紬: お母さんに前借りした五万円と合わせてもまだ全然足りないわね。
澪: あと、何回かバイトするか。
紬: そうですね。
律: うーし、じゃあまたさがそっか。
澪: うん。
唯: やっぱりこれいいよ。バイト代はみんな、自分のために使って。
紬: 唯ちゃん。
唯: 私、自分で買えるギターを買う。
律: 唯…
唯: 一日でも早く練習して、みんなと一緒に演奏したいもん。また、楽器屋さんに付き合ってもらってもいい?
うん
唯: みんな、ありがと。じゃ、帰るね。
律: うん。
澪: じゃ、また明日。
紬: じゃあね。
唯: じゃあね。みんなのためにも早く上手くならなきゃ。
紬: じゃあ、私も帰るわね。
2: うん。
律: なんか、恥ずかしい人になってるゾ…!
唯: あ・・・
澪: よっぽど欲しいんだな。
律: よっしゃ、やっぱまたバイトを。
紬: あ、ちょっと待ってて。
あのう・・・
店員: はい?
紬: 値切ってもいいですか?
店員: ハァ?
紬: ギターのお値段、負けて貰えないでしょうか?
店員: あ! あなたは、社長の娘さん!
では、こんなもんで!
紬: もうひとこえー。
紬: このギター五万円で売ってくれるって。
律: マジで!?
唯: なに!? なにやったの!?
紬: このお店、実はうちの系列のお店で。
唯: そ、そうなんだー。むぎちゃんありがとー。残りはちゃんと返すから。
唯: へへへー、かわいいなー。ぎゅいーん! ふおお、ミュージシャンっぽい! あ! サインの練習しなきゃあ!
憂: お姉ちゃん、うるさーい。
憂: お姉ちゃーん! 早く起きないと遅刻するよ! お姉ちゃん?
ああっ、添い寝...
律: すっげえ。
澪: ギター持つとそれらしく見えるね。
律: なんか弾いてみて。
澪: まだ全然練習してないの?
唯: イヤー、だってギターってキラキラピカピカしてるから、なんか触るのが怖くて。
澪: あーわかるわかる。
唯: 鏡の前でポーズ採ったり、写真撮ったり、添い寝したりはしたんだけど。
澪: 弾けよ。
澪: そういやあ、ギターのフィルムもはずしてないもんねえ。
律: おっ、そよいっと! なんちってー。
澪: 律! あやまれ!
律: ゴメン! ほんの出来心だっったんだゴメンね唯ちゃん!
紬: 唯ちゃん、お菓子お菓子。
澪: そんなもので機嫌が…ナオッタア!!
唯: そうだよね。ギターってやっぱり弾くものだよね。ただ大事にしてるだけじゃ、可哀想だよね。ありがとう、りっちゃん! 私、やる気出てきた!
律: うッ、そっかぁ? 唯が練習するきっかけになればと思ったんだ。さーすがーハイウッター?
澪: じゃあ、練習するかあ。
唯: ライブみたいな音出すのはどうしたらいいのかなあ。
澪: アンプに繋いだら出るよ。
律: よし!
唯: かっこいい。
澪: やっとスタートだな。
律: 私たちの軽音部。
紬: ええ。
律: 夢は武道館ライブ!
3: ええ!?
律: 卒業までに!
2: えええ!?
唯: ごめん、まだこれしか弾けない。アンプで音を鳴らすのはもう少ししてからだねー。
澪: あ! 危ない!!
唯: ふん?
澪: アンプのボリューム下げる前にコード抜くとそうなっちゃうんだよ。
唯: 早く言って…
武道館ライブまであと1065日?!
【予告】
唯: ええっ! 中間テスト!!
和: それも・・・コード?
律: 何で勉強しなかったのさ。
唯: いやあ、しようと思ったんだけれど、なんか試験勉強中ってさ、勉強以外のことに集中できたりしない?
唯: あ、今日は羊羹ー。
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唯: あ、のどかちゃーん。
和: 一緒に帰ろ。
唯: ごめーん。今日どうしても部活に行かなきゃいけないんだ。
和: そうなんだ。それじゃあ仕方ないね。
唯にも打ち込めるものができたのね。嬉しいような悲しいような…
どうしたの?
唯: 今日はむぎちゃん、おいしいお菓子持ってきてくれるんだ。
和: ギターやるんじゃないの?
唯: あ! でっへへへへへ。
唯: 幼稚園のときも、
(唯: ぼー・・・
和: んー? )
唯: 小学生のときも、
(唯: ぼー・・・)
唯: 中学生になっても…
(和: アイス。
唯: あっ)
唯: ずっとぼおっと生きてきたけど…高校生になった私は初めて、部活を始めました。
OP
唯: こんにちはー!
この三人が軽音部の仲間です。
律: よっ。
紬: こんにちは。
唯: ベース担当の秋山澪ちゃん。背が高くて、かっこいい大人の女性って感じです。
ねえねえ、なんで澪ちゃんはギターじゃなくてベースをやろうと思ったの?
澪: だってギターは恥ずかしい…
唯: は、恥ずかしい?
澪: ギターってバンドの中心って感じで先頭にたって演奏しなきゃいけないし、観客の目も自然と集まるだろ? 自分がその立場になるって考えただけで…
唯: 澪ちゃん!?
澪ちゃんは少し繊細です。
紬: 大丈夫?
唯: キーボード担当、琴吹紬ちゃん。通称むぎちゃん。おっとりぽわぽわ、かわいい人です
むぎちゃんはキーボードうまいよねー。キーボード歴長いのー?
紬: 私、四歳のころからピアノを習ってたの。
コンクールで賞をもらったこともあるのよ。
唯: へええ、凄いね。
なんで軽音部にいるんだろう?
紬: さあ、いただきましょう。
唯: そういえばずっと疑問に思ってたんだけど、この部室ってやけにものが揃ってるよね。最近の高校ってこんな感じなのかな~?
紬: ああ、それは私の家(うち)から持て来たのよ。
唯: 自前!?
紬: はい!
唯: むぎちゃんはかなりお嬢様っぽいです。
ドラム担当の田井中律ちゃん。元気一杯の明るい女の子です。
りっちゃんはドラムって感じだよね。
律: なっ!? あたしにもちゃんとすごく立派な聞けば誰でも感動する理由があるんだぞ!
唯: へええ、どんなどんな?
律: それは! ええと、あれだ…かっこいいから…
唯: そこ?
律: だってさああ、ギターとかベースとかキーボードとか指でちまちまちまちまするのを想像しただけでドハァァァァァ! ってなるんだよ!
唯: 楽器選びにも性格が出るんだな
紬: おかわりはいかが?
唯: ありがとう。
そういえば、むぎちゃんは合唱部に入りたかったんでしょう?
紬: ええ、でもめったに出会えないとっても楽しくて愉快な人たちの仲間になりたかったの
澪律: 珍獣ってことですか...
澪: そういえば、ひらさわさん。もうギターは買ったの?
唯: ゆいでいいよ
澪: え・・・
唯: わたしすでにみおちゃんのことみおちゃんってよんでるし
澪: ゆい
唯: かわいい
律: で、ゆい、ギターは?
唯: ん? ギター? ああ、そっかー! 忘れてた! 私ギターやるんだっけえ!?
澪: 軽音部は喫茶店じゃないぞ。
唯: ギターってどれくらいするの? 値段。
澪: 安いのは一万円台からあるけど。あんまり安すぎるのもよくないからなあ。五万円くらいがいいかも。
唯: へ、五万! 私のお小遣い10ヵ月分
澪: 高いのは十万以上するのもあるよ。
唯: 部費でおちませんか?
律: おちません
紬: これおいしいわよ
澪: とにかく楽器がないと何も始まらないしな…
律: よ~し、今度の休みにギターみにいこうぜ! おー!
唯: 無念なり・・・。ほーい。
憂: おねえちゃん、ごはんだよ。
唯: ういー。
憂: ん? どうしたの?
唯: 軽音部に入ったの。
憂: ええ!
唯: でね、ギター買いたいんだけど・・・
憂: へえーおねえちゃんギター弾けたんだ
唯: ううん! ゼッゼン! でねええ、お金を貸していただけないでしょうか。
憂: ごめんね、私もあんまりない。
唯: ですよねー。
憂: お母さんにお小遣いの前借り頼んでみたら? 私も一緒にお願いしてあげる。
唯: さすがあ! 頼りになるう。
律: あっ唯こっちこっち!
唯: あっみんな! あ、いて! ごめんなさい! お?
澪: あと数メートルなのに…
律: たどり着けない?
唯: よーしよしよしよしよし。
紬: お金は大丈夫だった?
唯: お母さんにムリ言って、五万円前借りさせてもらった。これからは計画的に使わなきゃ...いけないんだけど...今なら買える。
律: こらこら。
唯: ちょっと見るだけ。
唯: あーつかれたー。
律: 買ッチッタ。
紬: 楽しかったですね。
唯: 次どこ行こうか。あれ、何か忘れてない?
澪: 楽器だ、楽器。
唯: おお! しまった!
唯: すごーーい! ギターがいっぱーい! おお? うーん・・・
(4本腕: へいへーい)
律: ゆい! どれがいいかきめた?
唯: うーん、何か選ぶ基準とかあるのかな?
澪: もちろんあるよ。ギターって音色はもちろん、重さやネックの形や太さもいろいろあるんだ。だから女の子はネックが細いほうが…
唯: あっ、このギターかわいい!
澪: 聞いちゃいねェ。
律: そのギター二十五万円もするぞ。
唯: あっ本当だ! これはさすがに手が出ないや~。
紬: このギターが欲しいの?
唯: うん。
律: あっちに安いのあるぜ。
唯: やっぱこれがいいなああ。
澪: そういえば、私も今のベースが欲しくて…悩んで悩んで・・・
澪: こ、これください!
律: あたしも中古のドラムセット値切って値切って・・・
律: もう一声! もう一声ー!
澪: 店員さん泣いてたぞ。
律: どうしてもあのドラムが欲しかったんだよ。
紬: あの…値切るって…
律: 欲しいものを手に入れるために努力と根性で負けさせることダヨ!
紬: すごいですね! なんか憧れます!
澪: 憧れる要素がどこに!? あ・・・ゆい…
律: よし、みんなでバイトしよう!
紬: バイト?
律: うん! 唯の楽器を買うために!
唯: えっ、そんな悪いよ。
律: これも軽音部の活動の一環だって。
唯: りっちゃん…
紬: 私、やってみたいです。
唯: むぎちゃん…
律: うっしゃああやるぞお! おー!
紬: おー!
律: うおー!
紬: うおー!
律: うおおぉー!
澪: どんなバイトするんだろう…
和: バイト?
唯: うん! ギター買うために!
和: いつの間にこんな自立した子に? 嬉しいような悲しいような。
唯: 軽音部のみんなも協力してくれるんだ。
和: ええ!? みんなを巻き込んで!?
唯: うん!
唯: 何のバイトがいいかなあ?
律: ティッシュを配るのは?
澪: む…むり。
紬: ファーストフードはどうですかあ?
澪: い…いらっしゃいませ!
澪: だめ…かも…
律: そっか…澪にはハードル高いかもね。
澪: 怖い人が出てきたらと思うと玄関のベルが押せない。オーダーが聞きにいけない。
紬: 澪さん!
唯: ごめんね! 無理しなくていいから!
澪: やる前から無理だとか駄目だとかばかり言ってる。唯のギターを買うためなのに。それは、軽音部のためでもあるのに! 乗り越えないと、自分を!
私…なんでもやるよ!
律: あっ
澪: な、なに!?
律: これなんてどう?
3: 交通量調査?
律: 歩いてる車や人の数を数えるんだよ、カウンターを持って。
唯: あー! 野鳥の会?
律: これなら澪もできるっしょ。
紬: ほんとですねえ!
唯: いってきまーす。
憂: あっおねえちゃん、お弁当。
唯: あ・・・うっ、こんなに?
憂: 軽音部の皆さんの分も用意したの。おねえちゃんのためにバイトしてくれるんでしょ?
唯: うっはーい、ありがとー。
律: ほい。二人ずつ一時間ごとに交代だから。
紬: 軽快ですね。
律: こしゃくな!
唯: りっちゃんはやーい。
律: あいて!
澪: 向きになるからだ。
紬: 調査開始まであとちょっとありますね。とりあえずお茶にしましょう。
唯: うはー、ピクニックー!
澪: あー、みんな何だか心配だー。
唯: 天気が良くてきもちいいねー。
紬: そうねー。
唯: 高原のお嬢様?!
澪: 雑誌の懸賞?
律: 商品はギターだって!
澪: たしかにこっちのほうが早いかもな!
律: だろー?
唯: むぎちゃん、疲れない?
紬: 大丈夫よー。
唯: 指痛くない?
紬: うん。
唯: 眠くない?
紬: あ! 返事する変わりにカウンターを押しちゃった…
澪: 今のは4ビート。今のは8ビート。・・・って、真面目にやれー!
唯: むぎちゃん、すっごくおいしいんだけど、こんな高そうなお菓子、いつももらっちゃっていいのかなあ?
紬: いいのよ。いつもいろんな方から頂くんだけど、家に置いていても余らせてしまうから。
唯: いろんな人から余るほどお菓子をもらう家ってどんな家?
律: 流れる雲を数えてる。
澪: これって職業病!?
律: いちんちめシュウリョー!
紬: じゃあ、私は駅へ行くから。
律: 私と澪はバス。
澪: 唯は歩いて帰るんだっけ?
唯: うん!
紬: 明日も…
唯: うん! お菓子よろしくー!!
紬: 頑張りましょうって言おうとしたんだけど・・・
律: こらこら。
唯: でも余ってるんだったら。
律: こらこらこらこらこらこらこらこら・・・
澪: やっぱり職業病だ...
唯: じゃあね。
律: おう。
澪: バイバイ。
紬: またあした。
唯: みんなー! 本当にありがとねー! 私、ギター買ったら毎日練習するねー!
社員: 二日間お疲れ様。
4: お世話になりましたー。
澪: はい。
律: 一日八千円か。
紬: お母さんに前借りした五万円と合わせてもまだ全然足りないわね。
澪: あと、何回かバイトするか。
紬: そうですね。
律: うーし、じゃあまたさがそっか。
澪: うん。
唯: やっぱりこれいいよ。バイト代はみんな、自分のために使って。
紬: 唯ちゃん。
唯: 私、自分で買えるギターを買う。
律: 唯…
唯: 一日でも早く練習して、みんなと一緒に演奏したいもん。また、楽器屋さんに付き合ってもらってもいい?
うん
唯: みんな、ありがと。じゃ、帰るね。
律: うん。
澪: じゃ、また明日。
紬: じゃあね。
唯: じゃあね。みんなのためにも早く上手くならなきゃ。
紬: じゃあ、私も帰るわね。
2: うん。
律: なんか、恥ずかしい人になってるゾ…!
唯: あ・・・
澪: よっぽど欲しいんだな。
律: よっしゃ、やっぱまたバイトを。
紬: あ、ちょっと待ってて。
あのう・・・
店員: はい?
紬: 値切ってもいいですか?
店員: ハァ?
紬: ギターのお値段、負けて貰えないでしょうか?
店員: あ! あなたは、社長の娘さん!
では、こんなもんで!
紬: もうひとこえー。
紬: このギター五万円で売ってくれるって。
律: マジで!?
唯: なに!? なにやったの!?
紬: このお店、実はうちの系列のお店で。
唯: そ、そうなんだー。むぎちゃんありがとー。残りはちゃんと返すから。
唯: へへへー、かわいいなー。ぎゅいーん! ふおお、ミュージシャンっぽい! あ! サインの練習しなきゃあ!
憂: お姉ちゃん、うるさーい。
憂: お姉ちゃーん! 早く起きないと遅刻するよ! お姉ちゃん?
ああっ、添い寝...
律: すっげえ。
澪: ギター持つとそれらしく見えるね。
律: なんか弾いてみて。
澪: まだ全然練習してないの?
唯: イヤー、だってギターってキラキラピカピカしてるから、なんか触るのが怖くて。
澪: あーわかるわかる。
唯: 鏡の前でポーズ採ったり、写真撮ったり、添い寝したりはしたんだけど。
澪: 弾けよ。
澪: そういやあ、ギターのフィルムもはずしてないもんねえ。
律: おっ、そよいっと! なんちってー。
澪: 律! あやまれ!
律: ゴメン! ほんの出来心だっったんだゴメンね唯ちゃん!
紬: 唯ちゃん、お菓子お菓子。
澪: そんなもので機嫌が…ナオッタア!!
唯: そうだよね。ギターってやっぱり弾くものだよね。ただ大事にしてるだけじゃ、可哀想だよね。ありがとう、りっちゃん! 私、やる気出てきた!
律: うッ、そっかぁ? 唯が練習するきっかけになればと思ったんだ。さーすがーハイウッター?
澪: じゃあ、練習するかあ。
唯: ライブみたいな音出すのはどうしたらいいのかなあ。
澪: アンプに繋いだら出るよ。
律: よし!
唯: かっこいい。
澪: やっとスタートだな。
律: 私たちの軽音部。
紬: ええ。
律: 夢は武道館ライブ!
3: ええ!?
律: 卒業までに!
2: えええ!?
唯: ごめん、まだこれしか弾けない。アンプで音を鳴らすのはもう少ししてからだねー。
澪: あ! 危ない!!
唯: ふん?
澪: アンプのボリューム下げる前にコード抜くとそうなっちゃうんだよ。
唯: 早く言って…
武道館ライブまであと1065日?!
【予告】
唯: ええっ! 中間テスト!!
和: それも・・・コード?
律: 何で勉強しなかったのさ。
唯: いやあ、しようと思ったんだけれど、なんか試験勉強中ってさ、勉強以外のことに集中できたりしない?
唯: あ、今日は羊羹ー。