(竜ヶ峰帝人)すごい…。
上桜町銀座より すごい。
(紀田正臣)オレも
半分 知ったかだから 正確なことは
分かんねぇんだけどさ。

(静雄)お~らぁ~~!!
(紀田正臣)
ほかにも 危ない連中
山ほどいるし 気ぃつけろよ。

(ハンドルネーム「甘楽」)そういや 今日
見ましたよ~ 例の黒いバイク♪

(金沢)久々に おいしいっすね
10代女子。

(浅沼)情報屋様様だな。

(ナレーション)
「僕は そのとき 自分の体が
震えているのに気づいた」

「あなたが見ている現実は
本当に 現実なのだろうか?」
「見慣れた風景は
いつもと変わらず」

(校長)皆さん
ご入学おめでとうございます。
今 日本は
少子化 格差社会などと
暗い話題が 多いですが…。

(正臣)ふっ。
(帝人)へへっ。

(校長)皆さんの姿を 見ていると
この国の未来は 明るい
日本は まだまだ 大丈夫だという
気持ちになってきます。
励まされてきます。
本日は 皆さんにとっての
晴れの日ですが それは同時に…。

「どこにでもある日常が
今日 ここにも
広がっているのだと
信じてはいないだろうか?」

(帝人)
りゅ… 竜ヶ峰帝人です。

<東京に出てきたばかりの
内気な少年>

(杏里)
園原杏里です
よろしくお願いします。

「少し 浮世離れしたような少女」

(正臣)
紀田正臣です!
ちょっと 大人っぽく
見えるかもしれないけど
中身は みんなと おんなじ
もろくて傷つきやすい 15歳です!

「一人だけ 幸せそうな少年」

(莉緒)神近莉緒です
よろしくお願いします。

「どこか陰のある少女」
「あなたの周りに
いくらでも いるような人々」

(北駒)張間…
張間美香は いないか?

(帝人)
あっ…。

(北駒)欠席と。

「どこかで見たような
ありふれた光景」

(北駒)ああ~ 初日から遅刻か?
今 自己紹介中だ
その場でしなさい。

(誠二)矢霧誠二です
よろしくお願いします。

「けれど ふとしたきっかけで
現実は見知らぬ もう一つの現実を
垣間見せることがある」

(北駒)
さあ 矢霧 早く 席に着きなさい。

(誠二)着きません。
(北駒)はあ?

(誠二)僕 学校にしばらく来れないと思います。
いや もう来ないかもしれません。
(北駒)ん?

(誠二)それを 言いに来たんです。
失礼します。

(北駒)おいおい 矢霧 それは 一体…。

(誠二)
そういうことです。 僕にとっては 一生の
とても大事なことなんです。
あなたたちに
つきあってる暇はないんです。
失礼します。

(北駒)ああ… おい 矢霧
待て… 待ちなさい。

「平穏な日常に
不意に生じた亀裂は
人々を 動揺させる」
「そして ここにも 亀裂を
のぞいてしまった少女が 一人…」
「彼女は 本当なら
2日前に 死んでいたはずだった」
「少女は どこにでもある
普通の家庭に 生まれた」
「なんの問題もなく
なんの不自由もない毎日」
「けれど 彼女が 中学生になったとき
不意打ちのように
それが 送り届けられたのだ」

(ハンドルネーム「奈倉」)
何が入ってたんですか?
(ハンドルネーム「マゼンダ」)写真です。
父が 浮気をしてたみたいで
女の人と いるところの。
あと 手紙。
こんなことが 許されるのか?
みたいな。
送ってきたのは
女の人の関係者みたいでした。

(奈倉)お父さんも ひどいけど
その人も ひどいですね。
(莉緒)あぁ…。

(マゼンダ)私 どうしたらいいのか
分からなくて
とりあえず それを
隠しておくことにしました。

その日から
なんだか いつもの風景が
とても気持ちの悪いものに
なってしまって…。


(奈倉)つらかったでしょう?
ん? どうした? 莉緒。

(マゼンダ)
我慢できたのも半年くらいです。
いっそ 全部 明らかになった方が
楽だと思って…。

(奈倉)言いづらいことなら
無理しないでいいですよ。
僕も なかなか
話せないことがありますし。

(マゼンダ)
平気です。 知ってほしいんです。

(マゼンダ)
何も変わりませんでした。
母が 黙っていたのか
私が 知らないところで
両親が 話し合っていたのか
分かりません。
父の つまらない冗談も
母の 甘すぎる煮物の味も
とにかく
何一つ 変わりませんでした。

(マゼンダ)なら 試しに
いなくなってみようかなって。

(マゼンダ)ここ最近
ずっと そんなこと考えてます。

(奈倉)
僕も 同じような感じだな。
マゼンダさんほど
深刻じゃないかもしれないけど。

(マゼンダ)なにが あったんですか?

(奈倉)
つきあってた子が いたんだけど
僕の父親と できちゃって。

(マゼンダ)ひどい…。

(奈倉)でも いちばん
許せなかったのは 母親で。

(マゼンダ)なんて言われたの?
(奈倉)よくあることだし
世間体もあるから騒ぎ立てるなって。
自分が どう思ってるかなんてひと言もなくて。
それって 僕より 体面の方が
大事だってことだなぁって思って。
でも 僕の将来のこととかも
考えてくれたからなのかもしれないけど。

(マゼンダ)違うと思う。
(奈倉)そうかな?

(マゼンダ)奈倉さんのことなんて
なんにも考えてないのよ。
自分のことしか 考えてないのよ。


・コンコン(ノック)
・ご飯 出来ましたよ。

はい。
・トントン…(足音)

(奈倉)
マゼンダさん
よかったら一緒にいなくなりませんか?
僕とマゼンダさんが 一緒に死んだら
彼らも
嫌でも分かるんじゃないかな。
本当に 大事にすべきなのは
なんだったのか。



「今思っても愚かなことだったが
それなりの気持ちで
少女は 出かけた」
「奈倉の言葉に 力を感じたから」
「自分と同じようなことを
考えている人間の顔を
ひと目
見てみたかったからだった」

「仮に それが
ウソだったとしても
自分が 失うものは 何もない」
「そのはずだった」

はい。
(森田)マゼンダさん?

(莉緒)
はい。 あっ 奈倉さんですか?

(森田)よかった~!

「顔を見た瞬間 思った
この男は
奈倉ではないのではないか」
「それでも ついていったのは
ここで 逃げ出す自分が
許せないと思ったからだ」


ふっ。

「だから
実際 こうなったときも…」
(金沢)どうも。

(莉緒)どうも。
(金沢)周り 大丈夫?

(森田)人っ子一人いないし。
(金沢)じゃあ だましちゃって…。

「驚きと 抵抗と 後悔と
さまざまな思いが 去来したが
気を失う寸前には
こう思っていた
これが運命なのだ。
この期に及んで
自分を 大事にする必要が
どこにある?」

「す~っと
世の中から いなくなるのだ」
「このまま 誰一人 知らず」
「だが…」

ここに 一人いるっつうの。

「少女が
意識を なくしている間も
世界は 動く」

(新羅)まあ そんなに
難しい仕事じゃないみたいだけど
一応 気をつけてね。

「彼女の思いや 意志とは
無関係に」

・ブオォーー!
ヒヒィーーン!(エンジン音)

(静雄)ああ?

(おっさん)うっ うぅ…。
ダメなんだ…。
どうしても
金が 集まらなくてなぁ…。
あぁ… 返さないとは言わないよ。
でも オレに 何かあったら
粟楠会の四木さんが
黙ってないんじゃないかなぁ。

(静雄)おっさん。
オレには 時間がねぇ。
忙しいわけじゃねぇ。
オレの人生で
あんたに割く時間は
あと2分半くらいしかねぇんだ!!

(SFX)・バコッ!

(正臣)もう一人は…。
(SFX)・バコッ!
ガン!

(おっさん)あぁ…。
(SFX)ガシャーン!
(おっさん)うわっ! うぅ…。
(SFX)ピッ

よう。 あんたみたいな
優秀な運び屋に対して
わざわざ
言うまでもないことだけどさ
頼んだ以上のことは
しなくていいから。
向こうの連中は 適当に
あしらってくれりゃいいんで。
そんじゃあ よろしく。

「世界は 動く」
「少女が 運命と信じたこととは
微妙に 方向を変えながら」

(浅沼)おい。
(森田・金沢)ん?

ガン!
(金沢)うわっ!

(SFX)バチバチ!

(森田)ん!?
(浅沼)ひぃ~…。
(浅沼)なっ… 何なんだよ~~!!

(莉緒)はぁ~。 うっ…。

カチャ(端末機を開く音)
「大丈夫?」

(莉緒)あっ…。

「そこには 『あなたを
ある場所に 送り届けて欲しいと
言われている。』と書かれていた」
「バイクは 音もなく走り
時折 馬のように鳴いた」
「まるで
現実ではないような感覚だった」
「けれど この体の感触は
紛れもない現実だった」
「少女は ぬくもりの
向こうにあるものを思った
何を考え 何を知り
どのように生きてきたのか
この人の目に 自分は
どう見えているのだろうか」

(莉緒)
分かりました。

・マゼンダさん!
(莉緒)はっ…。

はじめまして 奈倉です。

(莉緒)
ほんとに 奈倉さん?

す~っと いなくなりたい奈倉です。

(莉緒)
あぁ…
はじめまして。 ひょっとして
助けてくれたの 奈倉さんですか?

はい 僕です。

(莉緒)ありがとうございました。

怖かったですか?
(莉緒)はい…。

大変でしたね。
ええ…。


(莉緒)
でも どうして分かったの?

だって 彼らに マゼンダさんを
拉致するように言ったのは
僕ですから。

(莉緒)えっ…。

それを わざわざ
助けるように言ったのも 僕です。

(莉緒)
どういうこと?

死のうと思ってたのに
拉致なんかされちゃって
ここで びびってる自分は
何なんだろうかと思って
ちょっと悔しいとか思ったりして。

でも 抵抗したら
死のうとしてた自分を
否定することになるから
ここは 運命だと思って
素直に受け入れようかと
思ったりもして。

でも いざ 助けられたら
ホッとしちゃったりとかしてる
そんな君の顔が 見たかったから。
ひと言で言うと
すべて見透かされちゃって
絶句してる君の顔が
見たかったから。

(莉緒)
どうして?

どうして? そうだねぇ
それに対する答えは 君にとって
とても哲学的に聞こえると思うよ。

それでも あえて 説明すると
人間が好きってことかなぁ。

人間ってものが
おもしろくて 興味深くて
しかたないんだよねぇ。
ああ あくまで好きなのは
人間であって
君じゃないから。 ここ 重要。


(莉緒)
全部 ウソだったの?

自分の立場 分かってきた?

おいで。
(莉緒)あぁ…。

ここ 何人か
人 飛び降りてるんだよね。
名所とまではいわないけどさ
ここからなら
確実に 死ねるんだって。
ほら 見てよ あそこの染み。
君さ 自分だけ
特別だと思ってない?
そんなことないから
みんな 一緒だから。
清廉潔白なだけで
生きていけるヤツなんて
どこにも いないんだからさ。
君だって
秘密の1つや2つ あるでしょ?

自分は よくて
な~んで 親が ダメなのか
考えたことある?

(莉緒)
それは…。

結論を言わせてもらうとね

浮気しても 浮気 知ってても
誰だって
つまんない冗談に笑って
甘すぎる煮物を食べて
生きてるんだと思うんだよね。

(莉緒) あっ。
あぁ…。

ご覧。 どんな悩みがあろうが
今や みんな
ただの染みだよ 染み。
例外なく誰でも
神のもとに 平等に。
放してあげようか?

(莉緒) あっ…。
ほ~らね。

(莉緒) うっ…。

まっ 今日一日
君の気持ちが
ぶざまに 揺れ動いたのが
見られただけで よかったよ。

オレが ほんとに 興味あるのは
君の お悩みとかじゃないからさ。
悩んでる君の生態だから。
ついでに言うと 君の生態は
予定どおりで 退屈だったよ。
最初から 死ぬ気ないのは
分かってたからね。
それじゃあね!
楽しかったよ マゼンダさん。

「少しだけ 迷った」
「こうすることで あの男を
傷つけてやることが
できるだろうか?」
「 だが 思った
自分は きっかけを
待っていただけなのかもしれない」
「それが
あんな男の あんな言葉でも」
「だが
少女の知らないところで…」

(莉緒)あぁ…。
あの…。
どうして?

また 余計なことを…。

「少女は 父と母のことを思った」
「父と 父の愛人 父と母
それぞれ
自分の知らない時間を思った」
「それは
自分が 考えていたほど
悪意や 打算や 憎悪で
彩られたものでは
なかったかもしれない」

「妥協や弱さで 隠されたものでは
なかったのかもしれない」
「家路を捜しながら
少女は 彼らを許そうと思った」
「あの日以来
世界が変わって見える」
「人の数だけの思い
人の数だけの秘密
それが 当たり前のことだと
実感できる」



どこ行こうか?
どこでも案内してやるから
今日は おごれ。
そうだな~ じゃあ 本屋とか。

ああ~ 本屋だったら
いろいろあるけど…。

「どこにでも いるような
彼らにも
きっと 秘密はある」
「誰にも言えない思いがある」

(杏里)待ってください!
(2人)ん?

(杏里)矢霧君 ほんとは 何か…。
(誠二)知らないよ。

(杏里)
で… でも 初日から欠席なんて…。
(誠二)知らないったら!
(杏里) 待って!
(正臣)あの~… どうかしました?

(帝人)どうしたんだろう?
(正臣)ふふっ オレも 罪な男だ。

(帝人)
えっ?

(正臣)
あの眼鏡っ子 オレに ほれたな?
これから始まる
危険で デンジャラスな
リスキーデイズに
不安を感じてるようだったぞ。

(帝人)ごめん
日本語で しゃべってくれる?


「彼にも そして 彼女にも
見えているものが
現実とは かぎらない」
「少女は思う。 自分も いつか
誰かに
伝えることが できるだろうか?」

「世界は
あなたが 考えているほど
ひどいものではないのだと」


オレ あんたが
正義の味方になったなんて
聞いてなかったけどなぁ~。
優秀な運び屋に 仕事を
頼んだはずだったんだけどなぁ~。

まさか~! 情報屋の折原臨也は
そこまで 悪人じゃないと思うよ。
死にたがってるヤツを
引き止めるほど
善人でもないと思うけど。

楽しかったぜ 優秀な運び屋さん。

<次回予告>

(サイモン)「池袋…
彼も 彼女も 私も あなたも
何かを探し 何かを求め 何かを変えようと
この街に やってくる」
「次回 跳梁跋扈」
「スシ食う? イイヨ。
おにいサン ヒサシ~ブリ!」