My Ordinary Life (Japanese) > 02. 第2話

――― グリコ ―――

祐子「よーし! じゃあ、いくぞ。じゃん、けん、ぽん! あちゃあ」

みお「よし、じゃあ私からね。パ・イ・ナ・ツ・プ・ル。じゃんけんぽん」

祐子「よーし! いくぞー」

みお「だめだよ! 1段ずつってルールじゃん」

祐子「わかってるって。グ・リ・コ、の、おまけ」

みお「お、おまーっ!」

祐子「え、何?」

みお「何勝手に付け足してんの」

祐子「え? ふつう『おまけ』って付けない? ねーえ、麻衣ちゃん」

麻衣「フィフティー・フィフティー」

みお「わかった。それでいいよ。ただし、そっちがそうくるなら、私も自分ルール発動させるからね」

祐子・みお「じゃんけんぽん」

祐子「いよっ、次は麻衣ちゃんだね」

麻衣「ち・よ・た・に・け・ら・は・と・ほ・ら・す・て・の・は・て・き・ら・と・な・り・は・し・て・と。復活の、呪文」


――― 日常の5 ―――

みお「あ・・・、止まってる・・・
もう、お母さん! 7時に起こしてって言ったじゃん! お母さん! あ・・・」(セパ、セパタクロー・・・)
「ああ、もう! 今日日直なのに!」(目覚ましも目覚ましだよ。何で今日に限って電池切れちゃってるの? まったく、切れるなら切れるって先に教えてっての、このスカポンタン! とにかく最速ラップをたたき出すの。そうすれば何とか・・・)「あ・・・」(というか、今・・・物凄いのいたーーーーっ!! しかも何か・・・きたーーーーっ!! なになになになに、このスプリンター!? 何で、私を、追って! 抜いたーーーっ!!)
(来る・・・!)

よしの「あのー、すみません。木魚、落としませんでした? あ・・・、金の木魚ですか?」

みお(やられる・・・やらなきゃ、殺(や)られる・・・)「すいませんでした!」

よしの「うふっ、ある時はクマ、そしてまたある時は、ク、マ。してその正体は!
・・・ご、ごめん、ごめん。いよ、んーー・・・、じゃーん、正解はお姉ちゃんでした! みおの学校の制服着てたからわかんなかったでしょ。あー、楽し・・・」

老人「ほう、これは朝から見事なコーク・スクリューじゃ」

付き人「いやあ、すばらしいですよ、実に」

よしの「いやいやあ、苦労したんだよ。目覚まし止めるのも大変だったし」

みお「お前が犯人か!」

よしの「いやいやいや、そんな怒んないで。ほら、これでラーメンおごるから」

みお「それ私の野口ーーっ!」


――― 呪文 ―――

麻衣「ち・よ・た・に・け・ら・は・と・ほ・ら・す・て・の・は・て・き・ら・と・な・り・は・し・て・と」


――― 日常の6 ―――

はかせ「ぷ、ぷ、ぷ、ぷ、ぷぷー、ぷー、ふん? ほー、サメ。サメー」

なの「ただいま。あれ? はかせ、何してるんですか?」

はかせ「なのー、あの雲、サメっぽい」

なの「へえ、どれですか? ああ、本当ですね」

はかせ「かっこいいね」

なの「そうですね。あ、そうだ。はかせ、買って来ましたよ、牛乳・・・


はかせ「ね、4.5(よん・てん・ご)! 4.5! ね、牛乳、4.5! 牛乳、4.5」

なの「はい、特濃ですよ。でもどうしたんですか? 急に牛乳飲みたいなんて」

はかせ「へへー、そーれーはーねー」

なの「え?」

はかせ「ロールケーキがあるからー」

なの「え・・・、って、何勝手に改造してるんですか」

はかせ「ロールケーキだから」

なの「意味がわかりません!」

はかせ「なの、4.5牛乳!」

なの「4.5じゃないですよ! 何で腕にロールケーキ入れて生活しなきゃいけないんですか!」

はかせ「ぷはーっ、冷たくておいちい」

なの「そういう問題じゃありません! もう、こんなところ、外で誰かに見られたら」

はかせ「はあ、ごろごろごろー、戻るー」

なの「はかせ」

はかせ「なーに?」

なの「あのう、私にも少し」

はかせ「いいよ。ちょっと待ってね。はい、どうぞ」

なの「ありがとうございます。・・・あ、あのう」

はかせ「ん?」

なの「ロールケーキのほうも」

はかせ「え? んー・・・あ、そうだ。じゃあ、なのは甘食ね」

なの「えええええー!? ああああ・・・」

はかせ「どうぞ」

なの「戻ったー!」

はかせ「あ、ごめんね、間違って押しちゃった」

なの「ひいいいっ! だ、だ、だから何でこういうことするんですか! なんかの弾みで外で作動したらどうなると思ってるんですか!」

はかせ「どうなるの?」

なの「きっと・・・」


男A「コマンド・サンボマスター、最高だよな」

男B「だよね」

なの「あいた! あっ!・・・」


はかせ「音楽再生機能も付けとくね」

なの「そうじゃないです。何で改造していく方向になってるんですか!」

はかせ「ぷはーっ」

なの「ちゃんと聞いて下さいよ」


はかせ「この一杯!」

なの「もう。・・・あ、何ですか?」

はかせ「甘食」

なの「だめです。はかせはもうロールケーキ食べたんですから」

はかせ「えーーっ?」

なの「あ、あれ? はかせ?」

はかせ「いいもん! なぜならまだバームクーヘンあるから!」

なの「えっ? ええっ? ま、まさか、今度はどこから? 上? 下? あ・・・? ああっ! ガビーン! 最初から全部冷蔵庫にしまっておいてください!」

はかせ「やだ!」

なの「ええっ! ・・・えええーー?」


――― じゃんけん ―――

はかせ・なの「最初はグー! その次パー! グチョパは無しよ、ジャンケンポン!」

なの「ううう・・・」


――― 縄跳び ―――

祐子「ふん! はっ! うっ!」


――― 日常の7 ―――

みお「んんんーっ、眠かった」

祐子「みーおーしゃん!」

みお「なーに、その笑顔」

祐子「ノート見せて!」

みお「まさかまた宿題忘れたの?」

祐子「いやあ、お恥ずかしいかぎりで」

みお「もう、そんなんだとまた試験で痛い目あうよ」

祐子「わかってるって。今回、今回だけ。最後にするから、お願い! ね?」

みお「ゆっこ、この前も同じこと言ってたでしょ」

祐子「武士に二言はない!」

みお「いや、だからすでに言ってるんだってば」

祐子「え? そ、そうか」

みお「もう、しょうがないな。今回だけだからね。ほんとだからね」

祐子「わかってますって。持つべきものはみおちゃんです」

吾妻「ゆっこ、さっき言ってたの、出てきたよ」

祐子「んじゃ、写したらすぐ返すね。ほんと? 見せて見せて」

みお(あれ? 何か私、忘れてない? 昨日の夜、宿題終わって・・・宿題終わって・・・)

(絵の男「そうは」)

みお(何気に描いた・・・)

(絵の男「させん」)

みお(何気に描いた絵・・・! 消すの忘れてた!!)

(絵の男「そうはさせんぞ!」)

みお「忘れてた! ああ・・・」

吾妻「でしょう、でしょう?」

祐子「んだね」

みお「ゆっこ」

祐子「ん? お?」

みお「いやあ、ごめんごめん! そういや私も宿題忘れててさ、いやはや参った参った。というわけで、ノートは返してね。ごめんね。・・・え? 何? だから見てもしょうがな・・・」

祐子「またまた。もう、そういうのやめてよ。次はやってくるって言ってるじゃん。んじゃ。ごめん、お待たせ」

みお(まずい・・・まずいぞ、これは。あんな絵見られたら、確実に変な目で見られる。しかもその絵を見るのが、よりによってゆっこ。その伝達力は・・・はっ!)

(祐子「いやあっはっはっは」)

みお(音速!)「ゆっこ!」

祐子「ん?」

みお「そ、それ、国語のノートだったよ。数学のはこっち」

祐子「え? でもこれ、数学って書いてあるけど」

みお(うわあっ!)「ち、ち、ち、違うの! 痛かったの! おなかが痛かったの!」

祐子「あ、うん」

みお(でゃん!)

祐子「じゃあすぐ写しちゃうから、ちょい待ってて」

みお(終わる・・・ここで見られたら、終わる・・・私の高校生活が、終わる)「ゆっこ、そのノート、1000円で買った!! 何で逃げるの!? ゆっこ! 違うの! そのノートは、そのノートは・・・爆発するのーーっ!」(無理だ・・・走ってゆっこに追いつけるはずがない。終わる、私の人生が。ありがとう、私の人生。今まで楽しかった。ちょっぴり嫌なこともあったけど、総じて幸せな人生だった。でも終わり。私の人生は終わるの)

みお・絵の男(「男たちの、宴」)

みお(とともに、終わり・・・に、するわけにはいかない! 命を、燃やせーーっ!!
それでも、届かない)「ゆっこ! 廊下は、走るなーーーっ!!」

祐子「えええ?! ちょ、大丈夫? あ・・・」


みお「はい」

赤城先生「じゃあ後ろからノート集めろ。あと宿題忘れたやつは早く名乗り出ろ」

みお(一時はどうなることかと思ったけど、何とか事なきを得てよかった。これで私の何気ない日常が戻っ・・・て・・・)「ああっ!!」

クラス一同「ああ?」

祐子「は?」

みお(消してない!)

(絵の男「やあ」)

赤城先生「どうした、長野原」

みお「先生! 宿題、忘れました!」


――― 片付け ―――

なの「こうして、っと。はかせ、ちょっと部屋のゴミ、片付けてもらっていいですか?」

はかせ「ほっ、え? うーん・・・」

なの「ん?」

はかせ「はかせにはまだちょっと早いかもしれない」

なの「え?」

はかせ「遊んできます」

なの「あの・・・」



――― 生徒指導 ―――

男子生徒「その時、俺はあいつに言ってやったのxxx」

桜井先生「あの、すみません、安中さん、ちょっといいですか?」

安中「あ・・・はい?」

桜井先生「あ、いえ、ちょっとだけなんですけどね、そのリボン、大きすぎるかなあ、なんて」

安中「ぴょん! なんて」


――― 甘食 ―――

はかせ「甘食もおいしいね」

なの「そうですね」


コンビニ店員「いらっしゃいませー」


――― 日常の8 ―――

みさと「笹原、あんた文化祭実行委員としての自覚あんの? もう少し真面目に考えたらどうなのよ」

幸治郎「私はいたって真面目だ。演劇部部長として常に役に備えているのだ。そんなこともわからんのか、立花みさとよ」

みさと「わかんないわよ!」

幸治郎「甘い」

みさと「聞けーっ! だいたい、ここは文化祭の出し物を決める場、あんたの演劇部は関係ないでしょ!」

幸治郎「銘柄が変わったか」

みさと「何でこいつと一緒の組になっちゃったかなあ」

幸治郎「美味である」

みさと「ああーっ、私だって剣道部の大会近いんだからね。まったく、文化祭の実行委員なんてやるんじゃなかったわ」

幸治郎「ふっ」

みさと「ちょっとあんた! 何マンガなんか読んでんのよ! さっさと案出さないと帰れなくなるじゃない!」

幸治郎「すまん。新刊だったものでな」

みさと「1個ぐらいアイデアないの?」

幸治郎「先に挙げた利きワイン選手権ではだめなのか?」

みさと「だめに決まってるでしょ! 却下よ、却下、ど却下よ!」


みさと「ねえ、笹原・・・・。ちょ、あんた、さっきから何なのよ!」

幸治郎「すまん。少し煮詰まったものでな。アナログ停波とは」

みさと「ああっ! 笹原、ドロンする気!?」

幸治郎「トイレへ馳せ参じてくる」

みさと「まったく・・・」


幸治郎(ふむ、今日は相当機嫌が悪いようだ。私としては利きワイン選手権で十分だと思うのだが。しかもあいつは最初から全然案を出さん。あまつさえ、それを言ったら今度は命すら取られかねん。すなわち、私が案を出さんと帰れそうにないということか。しかし、思考を庶民レベルまで落とせるものなのか。うむ。まあ少しは真剣に考えてみるか)

みさと「別にあんたなんか、何とも思っていないんだから!」


――― ヒトコトワドコトバ ―――

アジアの純真であれ


――― 次回予告 ―――

「甘食です。関西ではマイナーらしく、『あましょく』と読むのか『かんしょく』と読むのかもわからない人もいっぱいいるらしいですね。次回の『日常』は、第3話です。お楽しみに」