客「こっち焼きそば大盛りで」

客「かき氷練乳!」

客「[横浜/餃子]ラーメン! シュウマイ!」

千鶴「カツカレーと生しらす丼、あがったわよ」

イカ娘「すぐ運ぶでゲソ」

悟郎「うわあ、混んでるなあ」

たける「悟郎兄ちゃん!」

栄子「ああ、すまん、悟郎。またあとで来てくれ」


栄子「ああ、疲れたー」

千鶴「遅くなっちゃったけど、お昼ごはんにしましょう。イカ娘ちゃん、渚ちゃん、運んでくれる?」

渚「はい」

イカ娘「わかったでゲソ。・・・あ」

栄子「何やってんだ」

イカ娘「あれ? ふんっ、ふん! いーっ、いいーっ!」

たける「どうしたの、イカ姉ちゃん?」

イカ娘「触手が動かないでゲソ」

千鶴・栄子「ええっ?」

栄子「って、さっきまで動いてたじゃないか」

千鶴「どうしちゃったのかしら?」

悟郎「電池切れか?」」

渚「ええっ!?」

イカ娘「そんなもので動いてないでゲソ!」

たける「さっきまですごーく忙しかったから、疲れちゃったんじゃないの?」

悟郎「だるいとか、重いとかないのか?」

イカ娘「確かに重いし、だるいでゲソ」

悟郎「こむら返り的なものかもしれないな。――どうだ?」

イカ娘「何も感じないでゲソ」

たける「エビ食べようよ。栄養取ったら治るよ」

イカ娘「はあ」

たける「どう?」

イカ娘「やっぱりエビはおいしいでゲソ」

たける「そうじゃなくて、触手」

イカ娘「え?」

渚「あのう、本来の意味で、海水浴をするとか。昔は海水に医療効果があるとして、海に浸かったりしてたそうですよ」

栄子「どうだ? こうなったら最後の手段だ。ああ、もしもし、栄子だ。早苗、頼みが・・・お?」

早苗「イカちゃーん!」

栄子「ショック療法だ。いくらイカ娘でも早苗の・・・」

早苗「え?」

たける「イカ姉ちゃん、ピコピコだよ、ピコピコ」

イカ娘「そうでゲソ。ふん! うーーん・・・」

栄子「ピコピコもだめか」


シンディー「1.2ルクス。ほぼ月と同じくらいの明るさね。以前は4万ルクスはあったはずだけど」

イカ娘「えいっ、えっ、えいっ」

栄子「ホタルイカ能力もだめか」

ハリス「これは退化と言えるのではないか」

クラーク「これは退化かもしれません」

マーティン「MIT首席的には退化だと思われます」

栄子「退化?」

シンディー「陸上での新しい生活や環境に適応していくうえで、必要のない器官がなくなっていくことよ」

栄子「うーん、まあピコピコがなくても手で殴ればいいし」

早苗「ええっ?」

栄子「発光しなくても電気があるし、触手がなくても手を使えばいいし」

イカ娘「そんな簡単な話じゃないでゲソ!」

栄子「ていうか、お前、イカ機能が使えなくなったら、ただのウザいやつだぞ」

イカ娘「えっ!? ひどいじゃなイカ!」

早苗「そうよ、ひどいわ! たとえイカ機能が使えなくなっても、イカちゃんには素晴らしい属性があるわ!」

栄子「属性?」

早苗「イカのコスプレをしたかわいい女の子よ」

栄子「イカのコスプレってニッチすぎるだろ」

シンディー「イカ星人のコスプレをしたキュートな女の子では?」

栄子「って、お前もか!」

イカ娘「イカ墨は吐けるでゲソ!」

千鶴「だめね。コクも香りも量もない。お店には出せないわ」

イカ娘「えっ?」

マーティン「しかしなぜこれほどの急激な退化が起こったのか、実に不思議ですね」

クラーク「心配することありませんよ」

ハリス「われわれが念入りに調べてあげますから」

イカ娘「あああああーーーっ!!」

栄子「あ、おい!」


イカ娘「こんな体じゃ、侵略なんて出来ないじゃなイカ。勇気ある撤退か、ここに留まるか、それが問題でゲソ。いったん退却し、再び時機をうかがうのがいいか・・・。これは、地理的にはともかく、心情的にはとっくに侵略を終えているといってもいいのではなイカ? やつらが私にここに留まって欲しいと言うのなら、それを拒む理由はないでゲソ」


イカ娘「このままここにいても回復は望めないでゲソ。いったん海に帰ろうかと思うでゲソ」

3人「ええーっ?」

たける「そんなのやだよ、イカ姉ちゃん!」

栄子「そうだ! お前はもうわたしたちの家族なんだぞ」

千鶴「何でもするから行かないでちょうだい」

イカ娘「仕方ないでゲソ。そこまで言うのなら・・・」


たける「それがいいよ」

栄子「ここにいても治る見込みないもんなあ」

千鶴「さびしくなるわ」

イカ娘(ええーっ!?)


早苗「イカちゃんのためだもんね。止める権利も資格もないよね」

悟郎「いつまでも忘れないからな」

清美「手紙ちょうだいね」

シンディー「シーユーアゲイン」

3バカ「グッドラック!」


イカ娘「じゃあ・・・ほんとに帰るでゲソよ」

栄子「元気でな」

千鶴「元気でね」

悟郎「溺れたときは慌てず焦らず、だぞ」

たける「大丈夫かな、イカ姉ちゃん」

渚「ええ」

栄子「どうせすぐ帰ってくるさ」

全員「うん」

千鶴「イカ娘ちゃん、さみしがり屋だから」

清美「ほんと、そうですよね」

早苗「イカちゃんったら、意地張ってかわいい」

栄子「さあて、今晩はあいつの好きなエビカレーにしてやるか」

たける「イカ姉ちゃん絶対喜ぶね」

栄子「おーい、イカ娘! いつまでかっこつけてんだ?」

早苗「イカちゃーん!」

清美「イカちゃーん」

千鶴「イカ娘ちゃーん」

栄子「あ・・・」