女の声:
そっとあなただけ、教えてあげる
あなたが知らないだけで、この社会で何が起こっていて、何が進んでいるのか・・・



SOCIETY
Layer:07



玲音:
ううん、違うよ。
あたしは見ているだけ。
だって、ワイヤードの中のあたしって・・・
うん。あたしじゃなくなるんだもの。
うん、よく分からない。
え?誰が?

玲音:
お姉ちゃん?

玲音:
お姉ちゃん、最近変わっちゃった。
さあ、それはどうかな。
うん。
知らないよ

ねずみ:
俺は知ってるんだ。
ワイヤードとリアルワールドはリニアに繋がってるんだって。
おれはどこにだってそんざいできるんだ。
俺はどこにだって存在できるんだ。
肉体はどこにあったって、意識だけはどこへでも飛ばせられる。



女:
イモーターコンソーシアム夕食会のお時間です。

男:
はい

NAVI:
メイル

男:
あと三分。そしたら下で

女:
分かりました。

男:
今度は何をして遊ぶんだい?



フリーター:
そーれ!
そうさ、ばかめ。俺はお前らとは違うんだ。



玲音:
リアルワールドなんて、ちっともリアルじゃない。

ありす:
玲音、
大丈夫?

玲音:
え、何が?

ありす:
最近、玲音また戻ってる。
あたし達、玲音にもっと元気になってもらいたいと思って、あっちこっち連れてったりして・・・
ほんとにそう思ってたんだ。でも、もし玲音が嬉しくなかったんだったら、謝る。

玲音:
そんなこと、ない。嬉しくないなんて、そんなこと・・・
そんなことない!

ありす:
よかった。

玲音:
ありす!

ありす:
うん?

玲音:
あの、ありがとう、心配してくれて――

ありす:
友達、でしょ?
じゃ――



ニュースアナウンサー:
本日午後、情報庁情報監視センターのファイヤーウオールが何ものかのクラッキングにより破壊され、
現在ワイヤードネットワークの情報が混乱しています。
このニュースは今この時間に流しているものですが、このニュースが届くのは明日、
もしくは昨日になる事もありますので、ご注意ください。



声1:
ナイツがやったらしい。

声2:
ナイツってなに?

NAVI:
ナイツ。
ワイヤードで大きな影響力を持つと言われる算法騎士団。
構成するメンバーは一切不明。
単に情報を製作するばかりでなく、
非合法な情報機器の開発・流通も行っているとされる

声1:
レインが狙われたって

声2:
レインって誰?

NAVI:
レイン。
それに関する情報は、0件です。

さまざまの声:
レインなら最近見ないな。
レインってだれよ?
女の子さ
女の子?
強いんだ!
何が強いの?
メタファライズ、意思、パワー、目の光、存在。
ね、聞いてもいいかい?
なんだい?
あんた、ひょっとしてナイツのメンバーじゃないの?



女:
はーい

配達人:
宅配便でーす

女:
あ、判子ね

女:
ごめんなさい、お待たせしちゃって

配達人:
いや

女:
はい、判子。
え、なに?

配達人:
あ、NAVIっすよ。新型でしょ?いいなぁ。

女:
内職して買っちゃった。

配達人:
俺なんかこんなバイトしてても、全然買えないっすよ。はい

女:
頑張んなさいよ

配達人:
はぁ・・・
そうっすよねー
頑張んないと。
分かんないことあったら、聞いてください。俺、教えますから

女:
ふーん、教えてくれるの?

配達人:
え。自身、あるんっす。

女:
そうやって暇そうな主婦を誘惑してるんだ。

配達人:
いや、そんな、まあ、そうかな・・・

男の子:
ただいま

女:
じゃ、ご苦労様



男の子:
まま、あとでキンヤ君内に遊びに行ってもいい?

女:
ゲームだったらネットでやればいいんじゃない?

男の子:
だからそのゲームの仕方を教わるの

女:
ワイヤードはリアルワールドと一緒なのよ



玲音:
な、なに?

MIB1:
岩倉玲音さん、私達と一緒に来てくれませんか

玲音:
え?

MIB2:
無理にとは言いません。
これはお願いです。

MIB1:
私達はあなたに肉体的な危害を加える意図はありません。

玲音:
誰なの?

MIB2:
私達と来ていただければ、教えします。



ねずみ:
俺はこんな所にいたくないんだ。分かったの?俺はここまで出来るんだろう。
見てくれよ!俺はリアルワールドとワイヤードの垣根を取っ払ってるんだ。
なぁ、お願いだ。資格は十分あると思うよ。俺も入れてくれよ、ナイツへ。
褒めてくれるだろう?俺が自分一人で突き止めたんだ。
これがあんたたち専用の極秘回線なんだ。なぁ、俺を仲間にしてくれよ!
だっ、誰だ?



(ドア: 橘総合研究所、新橋事務所)

男:
ちょっと、こっちへ来て。
どうしても本社のファイヤーウオールに認証されない。
アプリ側でやれることはやったんだが。
やっぱり、こんな旧式じゃだめなのかね。
ずっとこれでやってきたからね。
今更新型のNAVIに移行する気力が湧かない。
もうこの歳だし。
君のように若ければ・・・

玲音:
そこのジャンパ

男:
え?

玲音:
これとこのジャンパ、抜いてみてください

男:
すまないが、お願いできるかな

玲音:
え?

NAVI:
オーソライズド

男:
はー

ねずみの声:
レインか?あんたナイツだったのか?
そうだったの、レイン。知らなかった。

レイン:
バーカ

ねずみ:
あぁ、待ってくれよ。
ね、ね、今間のガキ共を使った遊びは傑作だったね!
でも、でも僕ならもっと凄いこと思いつくよ。
だから頼むよ、僕も仲間に入れてよ、君達ナイツの・・・

男:
ワイヤードにはリアルワールドの政治的な国境はないと言った
寝言をほざく無政府主義者、悪ふざけが革命だと思い込んでるばか者。
そんな手合いならいくらでもいる。
しかし、ナイツはどうもそういうのとは違うらしい。

玲音:
ナイツ・・・

男:
君がどれだけ自覚的にやっていたのかは知らないが、
君自身のワイヤードでの存在は極めて不自然なものだった。
そしてどうやらナイツはそんな君に特別の関心を抱いたようだ。

玲音:
あ、あの・・・
な、なにを、言っているのか、あたし――

男:
ナイツ。君は彼らと一時は直接対話をしていた。

玲音:
で、でも、あたし、あの、なにが――

男:
ともかく、奴らは君を何かに利用したがっているらしい。
我々にとってそれはどんな手段をとってでも阻止せねばならないのだ。

玲音:
あなた、なに?誰、あなた達?



ねずみ:
ああ、秘密は守るさ、勿論だとも。
君達はデウスを信仰しているんだよな。
僕も従うよ。
でも、本当なのかい?
ワイヤードに神様なんているのかい?
僕にはまだ信じられないけど・・・
でも、仲間に入ったらもっと知ることが出来る。
そしたら、信仰だって持てるよ。
え?き、君達かい?
来てくれたんだね!
僕も迎えに!



男:
名前。本当の名前など知っても意味がない。
私にも、彼らにも、名前がない。
教えてもらいたい。
岩倉玲音。
君はワイヤードのレインと同一の人物なのか?
君は誰だ?

玲音:
あたしは・・・あたしは・・・

男:
君の両親は本当の両親か?

玲音:
え?

男:
君の姉は本当の姉か?

玲音:
な、何、言ってるの?
当たり、前・・・

男:
父親の誕生日はいつだ?

玲音:
お、お父さんは・・・

男:
じゃあ、母親の誕生日は?
両親はいつ結婚した?
恋愛か?見合いか?

玲音:
そ、それ、だから、それは・・・

男:
なぜ知らない?
聞いたこともないのか?
誕生日は家族に祝ったことがないのか?
小さいころから?
どうなんだ?
君はいつ、どこで生まれた?

玲音:
そんな、いいじゃない・・・
そんな・・・

男:
分からないのか、すべて。
大丈夫かな。君は本当にまったく全てを――

レイン:
ああ・・・
うるさい奴。
どうだっていいことばかり並べて、下らない。

男:
ほー!

MIB2:
は?

MIB1:
!!!

男:
ワイヤードのレインなのか?

レイン:
だったら?

男:
デヴァイスがなくても、ワイヤードとリアルワールドの境目がぐずぐずと崩れつつ事がある事、君も知っているね。

レイン:
だから?

男:
我々はそれを危険だと考えている

レイン:
面白いじゃん。
ふん・・・
どいて。
何よ?

MIB2:
危険なのは君自身だ

男:
カール!

レイン:
ふん・・・

男:
彼女の言うとおりだ。
面白いことが始まるのだよ。
黙って見ていればいい。



女:
ショウちゃん

ショウ:
なに、ママ?

女:
一緒にやろう!

ショウ:
お仕事終わったの?

女:
勿論!
ママは優秀だもん!
さ、ショウちゃんをやっつけちゃうぞ!
ほら、覚悟し!
ほら!