The Squid Girl (Japanese) > 03b. 天敵じゃなイカ?

イカ娘「地上上陸からしばらく、本来なら地上の半分は制圧してるはずなのに・・・」

客「ビールまだあ?」

栄子「はーい、ただ今」

イカ娘「私はこんなところで何をしているでゲソ」

栄子「お前が店の壁を壊したのが悪い」

イカ娘「もうとっくに直ってるじゃなイカ」

栄子「修理代の分、働いてもらわないとな」

イカ娘「あとどのくらいでゲソ?」

栄子「5~6年かな」

イカ娘「どんだけ低賃金で働かせるでゲソ!」

たける「栄子姉ちゃん、イカ姉ちゃん借りていい?」

イカ娘「借りる・・・」

栄子「壊すなよ」

イカ娘「私はおもちゃでゲソか!」


―――


栄子「たけるが溺れないように、しっかり面倒見ろよ!」

たける「たまには海で遊ばなきゃ」

イカ娘「修理代が・・・」


イカ娘「たける! 次はもっと沖まで行ってみるでゲソ!」

たける「あ、うん・・・。あんまり遠くに行ったら危ないよ。イカ姉ちゃん!」


たける「けっこう深いところまで来ちゃったね、イカ姉ちゃん」

イカ娘「どこが。こんなの、私にとっては浅瀬でゲソ」

たける「イカ姉ちゃん、足届くの?」

イカ娘「触手が届くでゲソ」

たける「いいなあ、イカ姉ちゃんは。海でも陸でも生活できて。海で暮らすのも楽しそうだなあ」

イカ娘「そうでもないでゲソ。これでも海にいるときは大変だったのでゲソよ」

(イカ娘「ゲソ」)

イカ娘「食う側でいる享楽、しかし一歩間違えれば・・・」

(イカ娘「ゲソーッ!」)

イカ娘「食われる側に回る恐怖・・・」

たける(人類征服より、自分の海を征服するほうが先なんじゃ・・・)

イカ娘「まあ、こんな浅瀬にはやつらもいないから安心・・・、わあっ、しゃしゃしゃしゃしゃ、シャチーっ!?」

たける「どうしたの?」

イカ娘「何でこんな浅瀬に私の天敵が!?」

たける「ああ?」

イカ娘「しかも、あんな子供が乗りこなしてるでゲソ!」

子供「えいっ!」

イカ娘「わあっ!」

子供「それ!」

イカ娘「あんな乱暴なことされて怒らないなんて、よっぽど厳しく調教されてるのでゲソね」

たける「調教?」

イカ娘(人間どもめ、侮れんでゲソ)
「あ・・・! 何だ、これは・・・。あっちこっちにいるじゃなイカ・・・! このままでは・・・」

(イカ娘「ゲソーッ!」)

イカ娘「や、やつらに襲われる前に帰るでゲソ!」

たける「やつら?」

イカ娘「早くするでゲソ!」

たける「ん・・・? わあっ!」


悟郎「あ・・・! いま行くぞ!」


千鶴「大丈夫?」

たける「うん」

悟郎「まあ、水も飲んでないようですから」

栄子「何溺れさしてんだよ、ったく。子守もできないのかよ」

千鶴「まあ、無事だったんだし。悟郎さん」

悟郎「え?」

千鶴「助けてくれて、ありがとう」

悟郎「いえ! ライフセイバーとして当然のことをしたまでです!」

たける「ねえ、僕に泳ぎ教えて。海の近くに住んでるのに泳げないなんて、バカにされるよ」

栄子「うーん、そうだなあ。教えてやってくれよ」

悟郎「あ、いま忙しいから、また今度」

千鶴「そうしてもらえると助かるわ」

悟郎「はい! 喜んで! よおーし、早速特訓だ!」

たける「やったあ!」

悟郎「行くぞ! たける君!」

たける「うん!」

栄子「分かりやすいやつ」

イカ娘「ちょっと待ったーーーっ、でゲソ!」

たける「イカ姉ちゃん?」

イカ娘「あいつらから逃げる方法は私が知ってるでゲソ」

たける「え?」

イカ娘「私に任せるでゲソ!」


悟郎「ようし! なかなか持つな。上出来だ」

イカ娘「1分も持ってないじゃなイカ。そんなんじゃあいつらから逃げられないでゲソ」

悟郎「いいんだよ、最初なんだから」

イカ娘「私が手本を見せてやるでゲソ」


子供「こいつー!」

女「待ってよ」

男「待て!」


悟郎「そうそう。もっと力を抜いて」

イカ娘「私を放置するとはいい度胸じゃなイカ!」

悟郎「ツッコミ待ちだったのか? じゃあ、次は1-2-3のリズムで息継ぎしてみよう・・・って、なに邪魔してんだよ!」

イカ娘「そんなまどろっこしいのよりも、私がもっと簡単に泳ぐ方法を教えてやるでゲソ」

たける「えっ、本当?」

悟郎「どんな方法だよ」

イカ娘「まずこうして・・・」

悟郎・たける「手足一切使ってない!」

イカ娘「ほら、簡単じゃなイカ。こうやってひたすらあいつらから逃げるのでゲソ」

悟郎「バカか」

たける「手足使ってくれなきゃ参考にならないよ」

イカ娘「手足なんて蛇足じゃなイカ」

たける「とんでもないこと言ってる」

悟郎「人間は、その蛇足だけで泳いでるんだよ。海で暮らしていたお前が万能な触手を10本も使って泳いでも、自慢にはならない。自慢したいのなら、蛇足だけで泳いでみろ!」

イカ娘「言ってくれるじゃなイカ。海の使者の実力、見せてやろうじゃなイカ!!」


悟郎「かっこ悪」

イカ娘「触手なしで泳げる人間どもがおかしいのでゲソ! 人間の分際で水の中を泳ぐこと自体おこがましいのでゲソ!」

悟郎「何だそれ」


イカ娘「いまに見返してやるでゲソ。ま、またしても出て来たでゲソ! 今度はサメまでいるじゃなイカ! ワニ!? 何で海にワニがいるでゲソ!? 何だ、あの黄色い巨大魚は? 初めて見るでゲソ! じ、地獄絵図でゲソ」


栄子「あいつ・・・何やってんだ?」

たける「うーん・・・。あっ、イカ姉ちゃん、もしかして」


イカ娘(水中を泳いでいけば、見つからずに帰れるじゃなイカ。我ながらナイス・アイデアでゲソ)


たける「あっ」

イカ娘「陸に上がってしまえば安全でゲソ」

たける「イカ姉ちゃーん! 借りてきたよ」

イカ娘「わああああああああっ!!!!」(陸から来るなんて反則でゲソ・・・)

たける「あれ? 乗りたいんじゃなかったの?」


イカ娘「ええーっ! これも浮き輪!? そういうことは最初に言わなイカ!」

たける「ごめん・・・」

栄子「つーか、気づけ」