Part 01: 詩音(冬服): あれ……?こんなとこで会うなんて珍しいですねー、お姉。今日はいったい、どういう風の吹き回しですか? 魅音(冬服): ……その言葉、そっくり熨斗をつけて返してやるよ。あんたこそ図書館で、何をしでかすつもりなのさ? 詩音(冬服): しでかすって、失礼な。私のことをテロリストか何かみたいに言わないでくださいよ。 詩音(冬服): 今日は、次に控えているエンジェルモートでのイベントに備えてのネタ探しです。ここだと、料理の本とかがタダで読めますからね。 魅音(冬服): 本くらい書店で買いなよ、ケチくさいなぁ。……それに料理のレシピだったら、レナや菜央ちゃんに頼んだほうが確実じゃないの? 詩音(冬服): まぁ、その通りではあるんですが……毎度あの2人に頼りっぱなしというのも、鼎の軽重を問われるってものですし。 詩音(冬服): あの店のイベント関係を任されている以上、ちゃんとしたイメージを伝えられるようになっておかないと失礼だと考えたんですよ。 魅音(冬服): へぇ……そいつぁ、殊勝な心がけじゃない。ケチくさいって言ったこと、撤回させてもらうよ。 魅音(冬服): まぁ、あんたもその気にさえなれば多少なら口に合うものを作る腕はあるんだし、それなりに期待させてもらおうかねー。 詩音(冬服): むっ……多少どころか、一流シェフが吠え面かくような料理だってできますよっ。次のイベント、見ていてください! 詩音(冬服): ……とまぁ、それはさておいて。話をもとに戻しますが、お姉はここで何か調べ物でもしていたんですか? 魅音(冬服): うん……実は私もあんたと同じで、ネタ探し。あの忍者屋敷で何か面白そうな仕掛けができないか、って資料を漁っていたんだよ。 詩音(冬服): 資料探し……ですか。料理本ならともかく、トラップのノウハウ本ってあんまり聞いたことがありませんが。 魅音(冬服): そうなんだよ。だから私も行き詰まっちゃって……やっぱそういった本は、都会の大型書店に行って探し回ったりしないと難しいだろうね。 詩音(冬服): まぁ探したところで、そういう技術や知識は付加価値が高いものなので……出版とかで外部流出をさせるとはちょっと思えませんよ。 詩音(冬服): あっ……そういうことだったらお姉、沙都子の知恵も借りてみたらどうです? 詩音(冬服): あの子ってそういうアイディアが豊富ですし、ネタ出しにはぴったりな人材だと思いますよ。 魅音(冬服): あー……それは私も同じことを思ったけど、ちょっと考えてやめておくことにしたんだよ。 詩音(冬服): おや……それはまた、どうして? 魅音(冬服): 沙都子がアイディアを出すとなると、攻略の際は圭ちゃんとの勝負であの子が圧倒的に有利になるでしょ? 魅音(冬服): まぁ圭ちゃんの性格だったら、おそらく気にはしないと思うけど……あの二人のガチ対決は、やっぱりイーブンで見てみたいからさ。 詩音(冬服): うーん、確かに。前回はお姉たちの鬼ごっこルールを入れたおかげで、勝負に番狂わせが起きましたが……。 詩音(冬服): あのタイムトライアル勝負も、見応えがありますしね。水を差したくないというお姉の考え、よくわかります。 魅音(冬服): ……というわけだから、詩音!ここで会ったが百年目――いや、用法が違うか?まぁそれはそれとして……。 魅音(冬服): ここに来たのも何かの縁だろうし、ネタ出しを手伝ってよ~!正直ひとりだと煮詰まって、困っていたからさー! 詩音(冬服): えぇ……? さっきの話、聞いていましたか?私がここに来たのはちゃんと目的があってのことで、お姉の仕事を手伝うためなんかじゃ……。 魅音(冬服): いいからいいから! 一段落ついたらあんたの方の仕事も手伝うから、ねっ? 詩音(冬服): はぁ、まったく……調子がいいんだから、もう。 魅音(冬服): いやー、助かったよ詩音!やっぱり持つべきものは頼りになる妹、ってやつだね! 詩音(冬服): はいはい。……おかげで私の方は、本を借りるだけでタイムアップになっちゃいましたよ。この埋め合わせは、ちゃんと忘れないでくださいね? 魅音(冬服): あっはっはっはっ、わかっているって!私は今までに約束を破ったことが……すごくあるけどたまにはない! なんてねっ! 詩音(冬服): ギャグにしては笑えませんし、本気だったらこの場でぶっ飛ばしてやるところですよ……ったく。 魅音(冬服): でも……ほんとにありがとうね、詩音。今日はマジで、あんたがいてくれてよかったよ。 詩音(冬服): っ……な、なんですかいきなり。そうやって不意打ちで素直に感謝されると、逆にいたたまれなくなるんですけど。 魅音(冬服): 実はさ……少しだけ、落ち込んでいたんだよ。私のおっちょこちょいのせいで、一穂や他のみんなに怖い思いをさせちゃったからさ。 詩音(冬服): 別にあれは、お姉のせいじゃないでしょう……?誰が鈴をあの屋敷に持ち込んだのかは不明な上、結果的には何事もなかったわけですしね。 魅音(冬服): それでもさ……何か役に立つ道具はないか、って梨花ちゃんに頼んだのは私だし、鬼ごっこルールを提案して一穂を中に入れたのだって……私が……。 詩音(冬服): ……ではお姉、念のために聞きますが。そのことで一穂さんから、何か言われましたか?あるいはあんたのせいだ、と詰られたとか……。 魅音(冬服): は……?あの子がそんなこと、言うわけないじゃんか。ただひたすら謝られて、それで……。 詩音(冬服): ということは、つまり……お姉が考えているほど一穂さんは悪感情なんて持っていないということです。他の皆さんもそうですし、もちろん私だって……。 詩音(冬服): だから、そんなふうに悪い方向へ考えないほうがいいと思いますよ。……なのでお姉は、せいぜい空回って空気読まずに色々とやってください。 詩音(冬服): その方がこっちも、動きやすくなりますし……結果的に楽しくやれると、私は信じています。 魅音(冬服): 詩音……。 詩音(冬服): ……さて、と。この距離だと葛西を呼ぶまでもありませんし、バイト先まで歩いていくとしますかね。 詩音(冬服): そんなわけでお姉、私はもう行きます。じゃ。 魅音(冬服): あっ……? 魅音(冬服): ……。ありがとう、詩音。 …………。 詩音(冬服): ……つくづく善人すぎますよ、お姉。あんたがそんなだから、私は――。 Part 02: 魅音(冬服): はぁ……。 空を見上げながら……私は大きくため息をつく。 たまたまあの場で詩音と出くわしたおかげで、いつもの調子に戻そうとしてみたけど……やっぱり駄目だった。どうにもうまくいかない。 普段だったら、特に意識することなくリーダー然として豪胆に、快活に振る舞うことができていたはずなんだけど……。 一度マイナスに入った思考と感情をプラスに転じるには、まだ何かのきっかけとそれなりの時間が必要なのかもしれない……。 魅音(冬服): (私って、ほんと打たれ弱いよなぁ……。普段はがさつっぽいキャラをやっているくせに、スイッチが入っちゃうとクヨクヨし始めてさ) ただ、私のせいであの子を……一穂を、あんなにも大泣きするほど怖がらせてしまった。それは紛れもなく事実で、……現実だ。 私は、みんなを楽しませたかったのだ。……だから、自分の楽しいと思うことで精一杯盛り上げて、喜んでもらいたかった。 とはいえ……世の中には、色々なタイプがいる。スリルを楽しいと感じて競争を好むやつもいれば、あるいはそれと正反対の、大人しい性格の子も。 部活メンバー以外でも、美雪と菜央は前者だ。だから彼女たちに対しては、不満はもちろんのこと不安などを感じたことはない。 けど、後者に関しては……正直、難しい。これまで仲良くしてきた子たちとは傾向が異なるので勝手が違い、やりにくさを覚えずにはいられなかった。 魅音(冬服): ……だからって、仲間はずれにしたいってわけじゃないんだよ。一穂は一穂として、結構いいところがあるってわかっているしさ。 だけど……今回のことで一穂には、私たちの部活に嫌なイメージを持たせてしまったのかもしれない。……それを思うと、心が痛かった。 梨花(冬服): ……魅ぃ? 背後から声をかけられて、私は振り返る。すると駐車場の近くから、梨花ちゃんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。 魅音(冬服): あれっ……梨花ちゃんじゃない。こんな時間に、こんなところでどうしたのさ? 梨花(冬服): こんばんはなのですよ、みー。 そう言って梨花ちゃんは、いつも通りににっこりと屈託のない笑顔で小首を傾げてみせる。 相も変わらず、私から見ても愛らしい仕草だ。村の連中……特に年寄りたちがマスコットのように手放しでかわいがるのも、頷ける話だろう。 ……なんだか、やけに嫌味っぽい思考だ。落ち込んでいる時はこういうものかもしれないが、うっかり表に出ないように戒めないと。 梨花(冬服): ボクはちょっと、この近くに用があったのです。……魅ぃこそ、こんな時間なのに戻らなくても大丈夫なのですか? 魅音(冬服): へっ……? こんな時間って……あ、ああっ? その指摘を受けて、ようやく私は思い出して声を上げながら頭を抱えてしまう。 うっかりしていた……よりにもよって今晩は、町会の寄合が入っていた日じゃないか……! 魅音(冬服): なぁんで、忘れていたかなぁ……?うぅ、みんな私が来るのを待ちぼうけてきっとカンカンだよ……! 間抜けな失敗をしてしまった自分を内心で責めながら、すぐさま近くに公衆電話がないか首を左右に振り向ける。 幸いこの近くが図書館ということもあり、電話ボックスはすぐに見つかった……が……。 魅音(冬服): うわっ、列ができちゃっているよ……!あの人数だと並んでしばらく待たなきゃ、とても使わせてもらえそうにないね……。 ちょうど帰宅ラッシュの時間だから、当然なのかもしれないけど……つくづく運が悪い時は何もかもがうまくいかないものだと思い知らされた。 魅音(冬服): こうなったら、図書館に引き返して事務室の電話を借りるしか……って、もう閉館しているじゃんか!はぁ、とほほぅ……。 踵を返した瞬間に照明が消える図書館の入口を恨めしく見つめながら、私はがっくりと肩を落とす。……と、その時。 梨花(冬服): みー……。特に急ぎの議題もなかったはずなので、今夜くらいは休んでも構わないと思うのですよ。 魅音(冬服): はぁ……? だからって、無断で休んだりできるわけがないでしょっ?それに、梨花ちゃんだって……って、あれ? その非常識な提案を、私はむっとした思いではねのけようとして……ようやく、梨花ちゃんの今の状況がおかしいことに気づく。 #p雛見沢#sひなみざわ#rのお偉方が集まる町会の寄合……そこには当然、御三家の代表格が顔を出して皆からの意見を吟味した上で判断を行う。 その代表格と言えば、言うまでもなく公由家の喜一郎おじいちゃんと私、園崎魅音だ。そして、もうひとりは……。 魅音(冬服): な……なんでっ?どうして梨花ちゃんが、ここにいるのさ? そう……寄合があるということは、古手家の頭首である梨花ちゃんもまたそれに参加する義務を負っている。 だから、真夜中の緊急招集でもない限り彼女が#p興宮#sおきのみや#rにいていいはずがないのだけど……。 梨花(冬服): みー。さっきも言ったように、ボクは今日ずっと興宮で大切な用事があったのです。だから喜一郎に言って、お休みをもらったのですよ。 魅音(冬服): ……そうだったんだ。あ、でも私はおじいちゃんたちに何も言っていないから、一刻も早く連絡して謝らないと……。 梨花(冬服): だから、大丈夫なのです。……魅ぃも休むと、さっき連絡をしておいたのですよ。 魅音(冬服): えっ……?ちょっ、どういうことなのさ梨花ちゃんっ? 衝撃の事実を告げられた私は、唖然となって思わず梨花ちゃんにくってかかるように迫ってしまう。 だけど、そんな反応さえ想定内だったのか彼女はこともなげににぱー、と笑ってから……すっと表情を改め、私に向き直っていった。 梨花(冬服): 実はちょっと前に、図書館で話し込んでいる魅ぃと詩ぃの姿を見かけたのです。 梨花(冬服): 2人ともずいぶん熱心に議論をしていたので、水を差すのは良くないと思って……声をかけずに失礼させてもらったのですよ。 魅音(冬服): えっ……そ、そうだったんだ。だとしたらごめんね、結構うるさかったでしょ? 梨花(冬服): 全然平気なのです。魅ぃと詩ぃは、あの温泉旅館を盛り上げようと一生懸命に考えていたのです。だから……。 梨花(冬服): ボクの勝手な独断で、ごめんなさいなのです。でも魅ぃは、少し休んだほうがいいと思ったのですよ。 魅音(冬服): いや、梨花ちゃん……気持ちはすごく嬉しいんだけどさ。おじさんは別に疲れちゃいないんだし、ただでさえやるべきことが山積みなんだから、休んでなんて……。 梨花(冬服): ……そう言って詩ぃは、先月体調を崩したのです。魅ぃが自分は違う、と言っても説得力がないのですよ。 魅音(冬服): うぐっ……? 痛いところを突かれて、私は反論もなく押し黙るしかできなくなってしまう。 自分ではそれなりに休みを取って、マイペースで進めていたつもりだったのだけど……周りの人間からは、そう見られていたということか。 魅音(冬服): えっと……私って、そんなに疲れているように見える? 梨花(冬服): 少なくとも、元気とはとても言えない感じなのです。……色々と溜め込んで破裂する前に、吐き出すかどこかにポイ捨てしたほうがいいと思うのですよ。 魅音(冬服): あははは……まぁ、そんな感じにできたらおじさんもきっと楽だったと思うんだけどね。 魅音(冬服): はぁ……でも、そっか。今夜は休むってことで、梨花ちゃんが連絡してくれていたんだ……。 私がそれを言葉にして呟いた途端、さっきから肩にのしかかっていたものが少し軽くなったようにも感じられて……。 勝手なことをしてくれた梨花ちゃんに対して一瞬腹を立ててしまっておきながら申し訳ないけど、今は逆に感謝したい思いだった。 魅音(冬服): ……ありがと、梨花ちゃん。んじゃお言葉に甘えて、今日は少しだけのんびりさせてもらうね……うん? そう言って私が大きく伸びをすると、お腹の中からくぅぅ、と音が響き渡ってくる。 ……そういえばお昼前から、何も食べていなかった。手足に力を感じないのはそのせいかと、妙に納得する。 魅音(冬服): せっかく興宮に来たことだし、なんか食べてから帰ろうかな。……よかったら、梨花ちゃんもどう? 梨花(冬服): みー。喜んでご一緒するのですよ、にぱー☆ Part 03: 詩音(エンジェルモート): お帰りなさいませー、お嬢さ……。 詩音(エンジェルモート): ってお姉、それに梨花ちゃまも。2人が一緒って、珍しい取り合わせですね。 詩音(エンジェルモート): あ、でも……今夜って確か、寄合があるって話じゃありませんでしたか? 魅音(冬服): なんで本人の私さえ忘れていた寄合の予定を、あんたが覚えているのかってツッコミを食らわせてやりたいところなんだけど……。 魅音(冬服): 今夜は色々あって、休むことにしたんだよ。で、せっかくだから戻る前にお腹にたまるものでも食べてから帰ろう、って話になってね。 梨花(冬服): みー。2時間もしたら入江が車で迎えに来てくれるそうなので、どんなに食べて飲んでも帰りは心配ないのですよ。にぱ~☆ 詩音(エンジェルモート): ……その「飲み」はソフトドリンク限定って認識で大丈夫ですよね? 変なオプションなんて絶対につけないでくださいよ。 梨花(冬服): 問題はないのです。今夜は魅ぃが一緒なので、詩ぃが黙認するような怪しい行為は控えるのですよ。 魅音(冬服): 詩音……? あんたまさか、私たちの目がここまで届かないのをいいことに梨花ちゃんにとんでもないものを勧めて……っ? 詩音(エンジェルモート): そんなわけないでしょう?1人分以下の売上と、数日から数ヶ月に渡る営業停止……ハイリスク・ローリターンで全っ然割に合いませんって。 魅音(冬服): まぁ、それならいいけどさ……とりあえず、なんか適当に持ってきてよ。梨花ちゃんは何か、食べたいものってあったりする? 梨花(冬服): みー。ボクも詩ぃにお任せでお願いするのですよ。 詩音(エンジェルモート): ここ、居酒屋とかじゃないんですけど……とりあえず何品か見繕ってきますから、あとでケチなんてつけないでくださいよね。 魅音(冬服): はいはい。……ふぅ……。 梨花(冬服): ……やはり、お疲れなのですか? 魅音(冬服): ん、まぁ……正直、疲れないはずがないよ。学業に部活、それに村のこと……。 魅音(冬服): ……あ、受験のことを忘れるところだった。はぁ、考えたくないねぇ……胃が痛いよ。 梨花(冬服): ……それでも、魅ぃは偉いのです。与えられた責任だけでなく、この#p雛見沢#sひなみざわ#rのために何ができるかを常に考えて、動いている。 梨花(冬服): 卑下しているわけではありませんが、今のボクはお飾りのようなものなのです。だから魅ぃのことを、ボクは心から尊敬しているのですよ。 魅音(冬服): ……ありがとね、梨花ちゃん。ここ最近、ちょいと気持ちが凹みまくっていたからそういうことを言ってくれると……励みになる。 魅音(冬服): とはいえ、なんか無駄に動いたりしてここんところは失敗ばかりだけどねー。相変わらずの空気の読めなさで、嫌な思いをさせちゃったしさ。 梨花(冬服): ……嫌な思いをさせたとは、先日の一穂のことですか? 魅音(冬服): あははは、やっぱ梨花ちゃんにも気づかれていたんだ。ちゃんとあの子に謝ったんだけど、まだ足りない気がするっていうか……。 これまでにも、沙都子や羽入を泣かせたことは何度となくあったが……あれはいわば、じゃれ合いだ。彼女たちもわかった上で、そう「演じて」いると思う。 けど……一穂のあれは、明らかにまずかった。本気で怖がらせた上で、傷つけてしまった。 意図的ではなかったにしても、しばらくは忘れられそうにない。 梨花(冬服): ……魅ぃ。 と、そんなふうに俯きがちになっていた私に、梨花ちゃんは優しげな声をかけていった。 梨花(冬服): その一穂ですが……今日はいったい、何をしていたと思いますですか? 魅音(冬服): えっ……? 梨花(冬服): 一穂と羽入は、沙都子たちに教わりながらあの忍者屋敷で特訓に励んでいたのです。……特にあの、苦手な池の飛び石コースを。 梨花(冬服): そして今夜は、一穂たちの家で泊まり込んでトラップを攻略するための勉強会をするんだと意気込んでいたのですよ。 魅音(冬服): そ……そうなのっ? ……そういえば夕食に誘った時、梨花ちゃんはあっさりと一緒に行くことに同意した。 普段であれば一緒に暮らしている沙都子や羽入を気遣って遠慮しているはずなのに、そうしなかったのには……そんな事情が……? 梨花(冬服): 一穂も羽入も、魅ぃたちに楽しんでもらいたいと思って、頑張っているのですよ。だからそんなに、気を落とさないでくださいなのです。 魅音(冬服): ……梨花ちゃん。 梨花(冬服): 相手を楽しませたいと思うからこそ、自分たちもその人に、楽しんでもらいたいと思う……そういう心遣いは、とても素敵だと思うのですよ。 魅音(冬服): ……っ……。 詩音(エンジェルモート): はーい、お持ちしました……って、お姉?ずいぶん目が赤いようですが、どうかしましたか? 魅音(冬服): な……なんでもないって!ちょっとタバスコの湯気が目にあたって、痛くなっただけだから……っ。 詩音(エンジェルモート): ……そのナポリタン、タバスコなんて一滴も入っていないんですけど。 梨花(冬服): にぱー☆ 魅音(くノ一): よーし、行くよ一穂!ここが決めどころだから着実に、確実にね! 一穂(くノ一): う……うんっ……! ……数日後、私たちは再び忍者屋敷で部活を行うことにした。 今回は、くじ引きで決めたタッグ戦だ。これなら苦手な子がいても、フォローすることで攻略が楽になる……という私のアイディアだった。 魅音(くノ一): さて、ここの巻物を取れば出口が……って、わわっ?何なのさこのトラップは?! 一穂(くノ一): み……魅音さん、大丈夫っ? 魅音(くノ一): くっくっくっ……この園崎魅音をなめんじゃないよ!天地が少し逆転したくらい、なんてことはないっての! 魅音(くノ一): 一穂、トラップの解除スイッチがどこかにあるはずだから、それを探して!まだまだ時間はあるから慌てず、慎重にねっ! 一穂(くノ一): わかった……それじゃ、待ってて! 魅音(くノ一): 任せたよ、一穂!今日はこの私と組んだ以上、狙うは1位!絶対に勝って、みんなをあっと言わせてやろう!