「ゴンちゃん。おはよう。あら、ネクタイ曲がってるわよおぅ♡ いそいそ」
「はっは。すまないね、ナミー♡」
「パパ、
「おはよう、季枝霞。クソ生意気な口を聞いて、お姉さんを困らせてないだろうな?」
「そんなことしてまちぇーん」
もちろん、
「そうかそうか。あっはっは!」
「おほほほほ」
父に続いて季枝霞と汝美重が一オクターブ
美しく楽しい家族の
もう、完全に阿重霞だけがコインロッカー・ベイビーである。
……どうして、私の家族はこんなのなの?
この
強い女によって、よりよい殿方を伴侶にですって?
これがそうなわけ?
こんなおぽんちな光景が?
「ところで阿重霞」
「は、はい」
「
「お父様、今日は何かパーティの予定でもありまして?」
「いや、そうじゃないんだ。
「……はい」
「その最大のお
「わかりました。そういうことでしたら、お供させていただきますわ」
阿重霞は
父が部屋を出て行ったら、母は元の厳格女に戻って説教を続けるだろう。
それよりは、外に出かける方が、なんぼか気が楽である。
「父様。あたちも行っていいでちゅか?」
「季枝霞がか? まあ、別に
手を
「あたちの素晴らしいプロポーションで、そのやってくる人を
「そうかそうか。それは楽しみだ。あっはっはー!」
「おほほほほほ!」
楽しい家族の笑い声が、食堂に
やっぱり阿重霞は、置いてきぼりだ。
その時。
権蔵と汝美重が、夫婦だけにわかる
それから、約四時間後。
父に言われて和服に着替えた阿重霞は、用意されていたリムジンに乗って、成田空港に
「そろそろだな」
ロレックスの時計を確認しながら権蔵が
「おお、いらっしゃったようだ」
「お父様、あの方は……?」
事情を聞いてなかった阿重霞が権蔵に
「ああ、ワールド・スタンダード社の社長をされている、ビフ・スタンダードさんだ。彼の会社が明日、『シンクロニシティ』というコンピュータのOSを発売するんだよ」
「なるほど。そのキャンペーンのために来日したってワケでちゅね」
「さすが、季枝霞は頭がいい。さ、行こう」
権蔵に
エレベータを上がってきたのは、ビフ、サム、そして
ビフは、
「
「標準世界のために」
小声で聞くビフに権蔵が答える。
ビフは、ますます明るい笑顔になった。
「ミスター・高田。
「いえいえ、スタンダード社にお
ビフは、権蔵の後ろに立っている阿重霞たちを見て、
「こちらのお
「私の娘で、阿重霞と季枝霞といいます」
権蔵に
「ほう……」
阿重霞をマジマジと見たビフは、彼女の周りをグルグルと二周して立ち止まり、メガネの奥の細っこい
そして、大げさに手を広げる。
「あなたが阿重霞さんですか。その
「…………は?」
あまりにも、お約束なビフの
そんなビフのパフォーマンスに
「さすが、
「なになに」
あっはっは。おっほっほ……と、ビフとサムはお互いの
「うわー、なんかベタベタな人たちでしゅね」
「お嬢さん、本気とジョークの
季枝霞の
……なんかすごい方みたい。
ことの成り行きを
「どうかね、阿重霞。スタンダードさんは?」
「どうっていいますと?」
「いや、ほら、
阿重霞はビフをよーく見た。
髪の毛がベチャッとしてて、メガネのレンズが油でギトギトしてて、全然笑えないジョークを言って、自分でウケて…………はっきり言って、ダサちん様だ。
「別にどうにも……」
相手は高田財閥のお得意様らしいし、正直に言うのもなんだから、阿重霞は
「まあいい。阿重霞、ビフさんをエスコートして、予約してある東京のホテルまで連れて行ってもらえるかな?」
「私が、ですか?」
「頼むよ。私は、もう一件、用事があってね」
「わ、わかりましたわ」
頼む、と軽く手を
「フッ、読めましたでちゅ」
「何がよ、季枝霞?」
「父様と母様は、あわよくば、ビフ・スタンダードさんとおねーたまを、結婚させよーとしてるんじゃないでちゅか?」
「ま、まさかっ!」
でも、確かにそう言われれば思い当たるふしがある。
さっきのお父様の
そんな、
私には天地様がいるのにっ! しかも、こんなアメリカンなオヤジと!!
「がんばって、くだちゃいね~。高田財閥の
工藤俊作のような季枝霞の言い方に、阿重霞のこめかみがピクつく。
「季枝霞ッ!!」
「どうしたんです? さあ、行きましょうか、ミス・阿重霞?」
「は、はあ……」
近づいてくるビフに、阿重霞は
自分はのっぴきならない
このまま、なし
でも、あの
今、目の前にいる男を
ああ、天地様、助けて。
私は、天地様のお
なのに、なのに。あー、天地様ああぁぁぁぁっっーっ!!
阿重霞の心の
天地は超能力者でも
しかも。
河合家は河合家で、ビッグなトルネードが
その2
魔法の国ジュライヘルムは、砂沙美の住む地球とは違う空間──次元を
どのようにして、この国が魔法の力を持ち、どのように発展してきたのか、もはや誰も知る者はない。
先代女王たちによって書かれた古文書だけが、その
しかし。
三〇〇年間立ち入る者がなかったその場所に、足を
着ている衣装がいつもと違う。今までは皇の塔の高官の衣装であったが、津名魅は女王第一
「なんて、本がいっぱいあるのかしら」
津名魅は、
元々読書好きな彼女である。女王候補となった
「お花の育て方の本があるといいんだけど……」
クッションに
なんとなく、
表紙を見ると、
何万年も前に書かれた本だが、『女王の棚』の空間には魔法の力が働いているので、
ページを開いてみる。
「……あら?」
書いてある文字を見て、津名魅は
この本の文字は、
現在、ジュライで使われている文字も、かなり日本の文字と
砂沙美の
それに、真なる女王になるための
現在、津名魅が受けているその審議は、女王候補と同じ
そのことから考えても、ジュライヘルムは地球の存在をかなり前から知っていたと考えてよさそうだ。
地球の人々も同じである。彼らは、ジュライヘルムの存在は知らないものの、『魔法』という不思議な
ただそれは、津名魅より何代か前の女王候補が
しかし。
なぜ、ジュライは地球の存在を知っていたのか?
どうして地球には、ジュライの国民と魂を同じくする者が存在するのか?
もしかしたら、この本の中に秘密が書かれているかも知れない。
津名魅は、
「……あんな………な…を…て、をしてしまっただけに、………えられることだ」
ジュライの古代文字なので、わからない部分が多い。漢字を飛ばして読んでみたりもしたが……当然のごとく、
そうだわ。
魔法の力を使って、
が、返事はない。
「あら、裸魅亜、出かけているのかしら? 裸魅亜、裸魅亜」
やはり、返事はない。
普通ならここで
だから、なんの
入口の足元には、小さな魔法石が置いてあり、津名魅の影がその石を
……なんてことに、まったく気づいていない津名魅は、自分に背を向けてソファに座っている裸魅亜の姿(後頭部ね)を見つけた。
「あら、裸魅亜、やっぱりいたのね?」
「ええ、そうね、津名魅」
見ると、裸魅亜の向いている方向には、魔法の映像が浮かび上がっており、砂沙美の家の全景が映し出されている。
どうやら、お昼をすぎているようだ。
「あら、裸魅亜ったら、砂沙美ちゃんのことを心配して、見ていてくれたのね。どうもありがとう」
ニコリとした津名魅は、裸魅亜の
「ええ、そうね、津名魅」
またもや、裸魅亜様は、抑揚なく答えてくれた。
「砂沙美ちゃんのサミーとしての活躍が始まってから、もう二カ月が過ぎたのね」
「ええ、そうね、津名魅」
「サミーの活躍のおかげで、サミーゲージは順調に上がってきてるし、私が女王になれる日も、そう遠くないかも知れないわ」
「ええ、そうね、津名魅」
「
「ええ、そうね、津名魅」
「そうだ。よかったら、これから、
「ええ、そうね、津名魅」
裸魅亜の
映像はクローズ・アップされ、
ちなみに。
この
で。河合家はと言うと、砂沙美が林間学校から戻った
お店も
もちろん……。
「ママ、
ラメ入りで
しかも、カラオケ大会に参加する時にしか付けない
昨日の夜まで、
ぱちぱちぱち。
クルクルと回りながら、
「あららららら。元気足りな~い!」
ぱちぱちぱちぱち。
ママの
「いいわよ、ストップしてちょうだい」
ちひろママは、両手をバッと広げて、拍手を
「てなわけで、復活記念の、河合ちひろ民芸ショーを始めまーすっ! 美星ちゃ~ん」
「は~い!」
店から現れた美星は、持っていた
「ではでは、
球を広げた番傘に乗せて回す。
よーするに、そめのすけそめたろーおじいさんな
番傘と球を手足のように
ママがご
演歌歌手時代に地方
最初の
もはや、マンネリを通り
「はい、砂沙美ちゃん!」
ちひろママが番傘を
片手で受け取った砂沙美は、
「ナイス・キャッチボール!」
ぱちぱちぱち。
天地と砂沙美と魎皇鬼は、
何百回と続けているので
そんな砂沙美たちのげんなりさんな気持ちを、
「すごいわ、ママさん。ふふっ。砂沙美ちゃんたち、とっても楽しそうね」
「ええ、そうね、津名魅」
「やっぱり、家族っていいわね」
「ええ、そうね、津名魅」
入口に置いてある魔法石が、
そのことに
「今日は、いつもと違って、とっても、おとなしいのね、裸魅亜」
「ええ、そうね、津名魅」
津名魅は、
そこには。
明らかに布でできている裸魅亜を
模してある……とは言うが、はっきり言って
顔には『へのへのもへじ』が書いてあるし、スプリングでも付けているのか、首がプラプラと
姉に
が、あまりにも似てないので、胸に『裸魅亜』と書いた
地球に降り立つことを決めた裸魅亜様は、津名魅がこの部屋に現れることを
津名魅は、ジーッとお人形裸魅亜を見つめる。
へのへのもへじが、ぷるんぷるん揺れていて、いとおかし。
……裸魅亜、楽しそう。
津名魅様は、こんなの裸魅亜じゃないっ!! とか。こりゃおかしいわ!! とか。あーん、裸魅亜が人形になっちゃったよー!! とか。そーゆうことは
ただただ、裸魅亜が自分の意見に
津名魅はニッコリと裸魅亜に笑みを向ける。
イノセントなのだ。彼女は。