でも、話さずにはいられなかった。

「あ、そうだ、ケーキを買ってあるの。ママ、帰ってこないし、一緒に食べよ」

 机の上に置いてあったおみやげの包みを開け、美紗緒は留魅耶にケーキを差し出す。包みの上に置かれたケーキを、留魅耶はようにクチバシでむ。

 留魅耶は、今、自分が食べているケーキが、野辺山で美紗緒が買ったおみやげであることを知っている。

 姉のちやな命令にしたがいつつも、ジュライヘルムから、魔法の映像でずっと彼女のようつづけていたから。

 ……お母さん、帰ってきてないんだね。

 自分を見つめている少女が、どんなに人をひつようとしているのか、どんなに話し相手が欲しかったのか、わかったような気がする。

 美紗緒もケーキを一口食べてから、留魅耶に言う。

「鳥さん、おいしいね?」

「キイイィィ」

 ……おいしいよ。

 そう、口に出して言ってやりたい。

 でも、今の自分は鳥の姿をしている。

 もし本当にそんなことを口走ったら、美紗緒は自分をわるがるだろう。もう二度と近づけばしないだろう。

 だから、鳥のフリをする。

 そんな留魅耶の気持ちがわからない美紗緒は、かたわらに置いてあった手紙をひろい上げ、

「あのね。さっき、パパから手紙が届いたの。パパは旅行してて遠くの島にいるみたい。戻ってくるのは……とうぶん先かな。もしかしたら、戻ってこないかも……」

 美紗緒の声がふるえる。

「でも、あたし、平気なの。学校で、砂沙美ちゃんと会えるし、じゆくがない日に一緒に遊べるし、砂沙美ちゃんのママさんや、お兄さんも優しいし、美星さんも清音さんも、いい人だし。それに、こうして、鳥さんが遊びに来てくれるもの……」

 その言葉に留魅耶は顔を上げた。

 うれしかった。そう言ってくれるのが。

 でも、美紗緒のひとみうるんでいる。

「だから…………あたし、さびしくないの。寂しくないから。だから……」

 留魅耶は美紗緒を見つめた。

 この娘は強がっている。それがわかる。

 だって。

 絵ハガキを大事そうににぎりしめている。

 お父さんに会いたいんだね。すごく、会いたいんだね。

 でもね、美紗緒。

 ボクは、姉さんの命令で、キミを魔法少女にしなくちゃいけないんだ。

 プリティサミーをイジメるために。

 ボクのこと、けいべつするかい?

 ボクのこと、きらいになるかい?

 でも。ボクはこう思ってるんだ。魔法少女ピクシィミサになっている時、キミは、その悲しい心からはなたれているってこと。

 こんな気持ちのままじゃ、ダメになっちゃうよ。そういうのいけないよ。

 たしかにボクは、姉さんの言うことを聞いてこんなことしてる……言うこと聞かないと姉さんはこわいし、そんな姉さんにボクはさからえない。

 でもね。

 ボクは、キミのために。

 そう。キミには、そうすることが必要なんだと思う。

 美紗緒が、美紗緒でありつづけるために……。


 そして、留魅耶は、魔法のどうを美紗緒に送った。