くねくねと恥じらう軟体動物に、魎呼のこめかみがピクついた。
「だー、それ以上言うなぁっ! あたしゃ知ってるんだよ、わかってんだよ。てめーが昨日一晩、天地と一緒にいたっていう事実をよぉ!」
「やだぁ、天地様。どうしましょう? すっかり、秘密が知られてるみたいですわ。隠し事は、そうそう、できないものですわね。ね、ね?」
「ムームー!」
わからんから黙れ、天地。
「くあー、ムカつく。阿重霞めぇ!」
意図的に恥じらっている阿重霞の後ろから顔をだし、魎呼に声をかけてくる者がいた。
「それは誤解だって、折笠。阿重霞さんは、天地君が行き倒れになっていたから……」
「そうそう。家に連れていって介抱してあげただけでー、別にやましいことなんて何もなかったんだよー」
「フッ、現実を理解しないで激昂する。つくづく女というのは、御しがたいな」
続けざまに会話のジェット・ストリーム・アタックをかけてきた少女たちは、阿重霞親衛隊のメンバーであった。
最初に声を発した三つ編みのそばかす少女が、上月由里。格闘技とつまらないギャグを考えることに命を燃やす親衛隊のリーダーだ。
次に声を出したのが、見た目とは裏腹なスリーサイズをしている白鳥結真。食べることと、情報端末機によるネット友だちとの会話を趣味としている。
そして最後に意味不明なことを言ったのが、クロスボーンの一員で鉄仮面な新城由佳。彼女はニュータイプだ。ちなみに、彼女がもっているナップは『サザビー』、腕に付けてる時計は『クエス』である。どちらも高価だが、彼女のお気に入りらしい。宇宙空間を生身で飛び出しそうな取り合わせが最高だとは……ユマの弁。
そんな個性派集団の親衛隊の言葉を聞き、魎呼は厭味な笑顔を阿重霞に向けた。
「なるほどね。ま、どシャイな阿重霞お嬢なら、そんなこったろうとは思ってたけどよ。ケンカならすぐ手を出すくせに、こーゆーことになると、私……エヘッ♡だしなぁ」
「人のことは放っといてください。それに、密偵……つまり、ここにいるユリ、ユカ、ユマの三人のことですけど……を使って、あなたの行動は知っておりますのよ。天地様が行き倒れになった原因は魎呼さん、あなたにあるってことを」
再び、親衛隊が阿重霞の後ろから顔を出す。
「そうそう、折笠ったら、一昨日の昼に天地君の家にどかどか上がり込んで、嫌がる天地君を無理やり連れ出して、バイト代が入ったから奢ってやるとか言って、ファミレス行って食事して、それから映画を観て……」
はユリ。
「んー、そんでもって、最後は、朝までカラオケしてたんだよねー。あたしたち、監視してたんだからー」
はユカ。
「傲慢が綻びを生むというのか」
はユマである。
「ムームー!」
「ほら、天地君もそうだって言ってる」
「ねー」
天地クンのムームー語は親衛隊にも……以下省略。
「しかも、あなたは、私の家で療養していた天地様を無理やりこんなところまで連れ出し、あまつさえ紐で縛り上げるなんて。何を考えてるんです!?」
魎呼をビシッと指さして阿重霞は言った。
「そんなこともわかんねーのか?」
「普通は、わかりません!」
「しれたこと。おめーと決着をつけるためだ! もう二度と、天地とあたしの仲を邪魔させないためになっ!」
阿重霞はフッと息を吐きながら、魎呼が求めていることに応じた。
「いいでしょう。魎呼さんがそれをお望みなら、私も、全力を持ってお相手しますわ!」
阿重霞は、謎の中国拳法の使い手である。
だから、謎っぽい構えをしてくれた。なんかセクシーだ。
「へん。そのポーズにその服。全然、似合わねーぜ」
「だまだま黙らっしゃい! ええい、ど許せぬ!!」
緊張感漂う睨み合いが約一分二〇秒続いた後、どちらからともなく二人は跳躍した!
阿重霞の繰り出した拳の小指と、魎呼の拳の小指が、刹那的にすれ違う!
それが、真空のかまいたち現象を起こし、近くにあった岩を両断する!
なんという攻撃力!
なんという愛の奇跡!!
「ムームー!」
天地は泣いていた。砂沙美が林間学校に出かけたから、彼は家に帰っていない。
一日目はカラオケBOX、二日目は阿重霞の屋敷のベッド、そして三日目がここだ。
太陽が燦々と輝いている。
ああ、だから、そんなにも太陽が眩しいもんだから、彼は、けんかをやめての河合奈保子状態になるしかなかった。
太陽、おまえがいけない!
そう言いたいが、河合天地は今、ムームー語しか話せないのだ。
悲しいがそうなのだ。
「阿重霞っ、あたしはアンタを越えるーっ!!」
「このバカ弟子があぁぁっっっっっっっっ!!」
二人の女の熱き魂が燃えている。燃えすぎて言語障害も起こっている。
男を奪いあってるだけの、事実その通りなだけのタダのケンカが終局を迎えるには、もう少し時間がかかりそうだった。
シリコンバレーにある、ワールド・スタンダード本社の私有地から、自家用ジェット機が爆音を響かせて大空に舞い上がった。
目的地は、東京の成田空港だ。
スタンダード社の新OS『シンクロニシティ』の発売イベントに出席するためである。
座席数が八つだけの広々とした機内には、ビフ・スタンダードの他に二人しか搭乗していない。
スタンダード社は、日本にも支社を持っているし、余分な人間を連れていく必要はない。ビフは無駄な経費を使うよりも、その金を研究開発費に使った方がマシだと思っているコンピュータ・バカなのだ。
「ついに、ついに開くのだな。私の求めていた未来への扉が」
「その通りでございます。ビフ様」
「ふふふ。早く日本に着いて欲しいものだ」
「楽しみでございます」
いつも通りの会話を続けているのは、ビフ・スタンダードと執事のサム・ヒカリ・ラングレンだ。
そんな二人を辟易としながら眺めている人物がいた。
黄色のスーツ(!)を着た女性だ。
胸に付けているネームプレートには、ワールド・スタンダード社、ビフ・スタンダード筆頭秘書と書かれている。メガネから垣間見える鋭すぎる目、金髪のロングヘア、整った容姿は、ハリウッドの女優だと言っても通用するくらいだ。
ゴゴゴ……。
気流にぶつかることなく、ジェットはスムーズに雲の上に出たようだ。
女性が窓の外を見ると、眼下に雲があり、上にはまるで海のような青空が広がっている。
……まるでジュライヘルムね。
そう独りごちて、女性は座席に備えつけてあるラップトップを取り出し、キーを叩く。
………………………………。
………………………………。
約二〇秒待った後、画面の左上に『WAITING』の文字が表われた。
………………………………。
………………………………。
………………………………。
それから約四七秒後に『WS』のロゴマークが表示される。
ピーン。ポンポンポンポーン……。
起動時を告げる音楽が、内蔵スピーカーから鳴り響く。
あーもう、遅いわねっ!
心の中ではイライラしっぱなしだが、それをおくびにも出さず、女性はキーを叩いて、シークレットと書かれたファイルを呼び出した。
コードネーム Jスタンダード
正式名称 日本標準化計画
発案 ビフ・スタンダード(ワールド・スタンダード社CEO)
計画発足日 1994年12月31日
概要 独自規格のパーソナル・コンピュータの開発と、独自規格のソフト開発を無意味に続ける日本企業に対して、世界標準であるワールド・スタンダード社のOS『シンクロニシティ』を日本全国津々浦々にまで浸透させるための計画。標準的でない文化を歩もうとしている愚かな日本国民を正し、標準なる情報化社会の一員として世界に迎え入れるための、これは忠義よりも重い、大儀である。
計画内容 1・OSの日本語化を完成させる。また、日本人の好みに合わせ、機能を一部変更、日本製周辺機器への対応も完璧にする。
2・一度シンクロニシティをインストールしたら、二度とプログラムを削除できないように、コンピュータの中身を乗っ取る。
3・マスコミを使って、様々な媒体に『シンクロニシティ』を取り上げさせ、その標準性をアピールする。特に、パソコンに関心を持たない四〇代以上の人々に向けてのCM、そして購入者にはユーザーサポートの充実を計り、誰でも気軽に使える標準的なソフトであることを──事実、その通りなのだが──徹底して告知する。
4・日本の大手ソフトメーカーに、『シンクロニシティ』の仕様を全て公開する。OSの発売と同時に、ワープロ、表計算、データベース、グラフィック、DTP、家計簿、ゲーム等の各アプリケーションが発売できるよう、積極的に働きかけてゆく。
5・日本で『シンクロニシティ』を扱う小売店に対して、独自規格の日本製パソコンを店頭販売しないよう、国会議員、流通メーカー等に圧力をかける。この件は、外部に漏れぬよう、細心の注意をもって行うことは言うまでもない。捕まりたくないだろ?
6・5の計画をさらに強力に推し進めるべく、日本独自規格のパソコンを下取りし、シンクロニシティを搭載できる新型パソコンを格安で提供するキャンペーンを、各種パソコンメーカーと共同で展開する。
7・6でもダメな場合は、その独自規格を続ける企業を買収し、ワールド・スタンダード社から標準的な人材を派遣して社長に就任させる。
8・7でもダメな場合は、その独自規格のソフトにのみ感染する、コンピュータウイルスをまき散らし、使い物にならなくしてやる。
……なるほど。エゲツないわね。
女性は、ビフという男の並々ならぬ、標準化への執念を感じた。
でも、そのくらいじゃないと、面白くないわ。
ピピッ。
女性が見ていたラップトップに、Eメール、つまり、電子による手紙が届けられた。
ネットワークが施されているパソコン同士は、回線さえ繫いでいれば、どんな場所であってもこのようにコミュニケーションがとれる。
Eメールのデータ・ファイルを、専用の読出しソフトで展開し、文字に直す。
『この計画は、一年以上も水面下で動いており、計画の1から8までを実行した我が社は、すでに八〇%の日本企業、マスコミから賛同を得ている。ただ、残念なことに、残りの二〇%の企業が時代の変化に対応しようとしない。由々しきことだ。
そこでだ。
私は、この計画書に9番目の項目を付け加えたいと思う』
女性は、前の座席に座っているビフを見た。
「どうだい、イカスだろう?」
似合わないビフのウインクに、苦笑で答えた女性は、再びラップトップに視線を戻す。
ディスプレイには、こう書かれていた。
林間学校に参加した雷凰学園初等部の生徒は、学園最寄りの私鉄駅に集まっていた。
駅前で体育座りをさせられた砂沙美たちは、先生の『家に着くまでは林間学校なんだから、寄り道などしないように……』云々と、わかりきったお説教を約七分間くらい聞かされて暑かったのだが……まあ、それも終わり、ようやく解散となった。
「河合、天野」
立ち上がった美紗緒と砂沙美の前に、声をかけてきたのは真嶋クンだ。
彼はこの林間学校で、とんでもなくドラスティックな体験をしている。もし彼がその事実を知ったら、頭がスキャナーズするくらいドガガーンとなる体験を。
しかし、砂沙美の……いや、愛と正義と、ほんのちょっとの利己主義のために戦うプリティサミーの活躍で、最悪の事態を防ぐことはできたのである。
よかったね、と。
「じゃあな。二学期に学校で会おうぜ」
「うん、二学期に!」
砂沙美は腕をぐるりと回す、おまかせのポーズをして答えた。真嶋クンは、砂沙美の隣にいる美紗緒を見る。
「…………あ、あの、さよなら」
俯いてはいたが、美紗緒は挨拶をした。砂沙美にもちゃんと聞こえる大きさで。
真嶋クンは、スッと砂沙美の後ろに隠れてしまった美紗緒に何か言おうとしたが、ニッコリと微笑んだだけで、そのまま走っていった。
うん。これでいい。
こうやって少しずつでいい。
真嶋クンがそう思っていることが、なんとなく砂沙美にもわかった。
和服でミニ・スカートなんて、時代劇にロックよりもミスマッチな恰好で恥ずかしさ無限大だけど、元気に走り去る真嶋クンの後ろ姿を見て、砂沙美はあの時、プリティサミーに変身してよかったと、心からそう思った。
親切にしてあげるのは、なんだかよい子ぶっておすましっ子な感じがするけど、でも、真嶋クンみたいに、ああいう風に前向きにがんばってくれるなら、そういう風に思ってくれるのなら、砂沙美は魔法少女に変身してもいいかなぁ、なんて思うのだ。
でもぉ……。
砂沙美は、いつまで魔法少女をしなくちゃいけないんだろ?
津名魅さんを女王にするためのサミーゲージは、順調に溜まってるのかなぁ?
それに、ピクシィミサ。
あの悪い魔法少女は、どうして砂沙美の周りにばかり現れるんだろ?
砂沙美がサミーだってことも知ってるみたいだし……。
そうだ、もし、砂沙美と同じように魔法少女になってるんだとすれば、きっとどこかに変身前のミサがいるんだ。
あんな性格してるんだもん。きっと、すごく嫌な娘だよ。
隣に本人がいるにも係わらず、砂沙美はムスッとしてそんなことを思ったりしている。
「どうしたの、砂沙美ちゃん? 怒ってるみたい」
「え、あ、なんでもない。行こう」
深く追求される前に、砂沙美は美紗緒の手をつかんで早足で踏切を渡った。
砂沙美の家は、CDショップを営んでおり、私鉄とE電(JRのことね)の間を結ぶ商店街の中にある。だから、学校でするより駅で解散した方が、帰りが楽になってラッキーちゃんだ。
「じゃあ、美紗緒ちゃん。また、遊びに来てね」
「うん。必ず行くね、砂沙美ちゃん」
アーケードの入口で美紗緒と別れた砂沙美は、天地兄ちゃんや美星お姉ちゃんたちへのおみやげを入れて、行きより確実に重たくなった荷物を引きずるようにして歩き出した。
商店街の中は意外に涼しい。
照りつける夏の日差しは、アーケードの屋根が遮ってくれるし、各店舗のエアコンから爽やかな風も流れてくるし。
四〇メートルくらい歩くと『真心と信頼を売るお店』と書かれたセクシーコマンドーな看板が見えた。砂沙美の実家、CD─VISIONの看板だ。
たった二日いなかっただけなのに、妙に懐かしく感じる。
ヘンだけど、そういう感じってあるよね。
「砂沙美ちゃん!」
周りに人がいなくなったので、魎皇鬼が旅行鞄から顔を出してきた。中はさすがに暑かったのか、プルプルと頭を振って汗を飛ばしている。
「ようやく、到着だね」
「うん。帰ったら、家のこと、いろいろしなくっちゃ。掃除、洗濯、そうだ、二階のお花、誰かお水やってくれたかなぁ」
「砂沙美ちゃん、学校の宿題と魔法の勉強も忘れないでね」
「あ~、今まで忘れてたのに。旅行気分を一瞬で現実に戻さないでよ、リョーちゃん」
そんな会話をしながら、砂沙美は店のシャッターの前へ……。
え、シャッター?
そんな。夏休みだけど、今日は平日なのに。
どうして店が閉まってるのぉ?
「お店、臨時休業だっけ?」
「わかんないけど……」
魎皇鬼の問いに砂沙美はそう答えるしかない。
仕方なく裏にある玄関から入ろうと、商店街をグルリと回ろうとする。
そこへ。
「砂沙美ちゃーん!(×2)」
声を張り上げて走ってきたのは、美星と清音だ。
「美星お姉ちゃん、清音お姉ちゃん!」
やってきた二人は、ちひろが経営するCDショップでアルバイトしている、商店街の隠れた人気デュオだ。
人気の秘密は、どちらもすっげー美人だから。
しかし、ごく一部の人には、草も木もないジャングル(店内)で毎日のように繰り広げられる──美星のカラリパヤットと、清音のコマンドサンボによる、ノンストップ美女異種格闘技戦がウケていた。美女で、リアルで、真剣だからだ。
「砂沙美ちゃん、大変なんです。すっごく大変なんですよ。あー大変。どうしましょう」
慌てていることに慌てているようなセリフを言ってくれたのは水谷美星だ。
様々な国の血が入り交じっているカオスなお人で、88─63─89のゴールデン・プロポーションはスーパーコンボ! 万年小麦色のような肌はエクストラ・アタックだし、小さめのシャツを挑発的に脇で結んだ姿はリバーシブル・アタック、ホットパンツから延びるむっち~んな足はガード・リバーシブル……なおギャル様である。
現在は、雷凰大学の文学部に所属する、ピッカピカの大学一年生様だ。
「でね、砂沙美ちゃん。何が大変かと言うと、それが大変なんですよ」
「え~い、全然、わからんわっ!」
美星ちゃんを叱ったのが、もう一人のアルバイター、清音由梨ちゃんだ。
漆黒のロングヘア、スレンダーな体形、和服を着せたらきっと似合うだろう。ぐるぐるメガネをかけているのは大きなマイナスポイントだが、その下には二重の美しいお目々が鎮座していることを、砂沙美はよ~く知っている。
現在は、美星のせいで(清音が主張。美星は関与を否定)大学受験を失敗して浪人中。
これが、二人の美女格闘の原因になってるんですけどね。
つーわけで。
砂沙美は裏口へ歩きながら、美星ではなく、清音から事情を聞いた。
「で、何が大変なの?」
「お店に入れないのよ。電話をかけても誰も出ないし……。ああっ、バイト代が減っちゃうと、あたしの学費貯金プロジェクトがぁ」
さりげなく、本音を交えて喋ってくれる清音ちゃんだ。
「入れないって、それっていつから?」
「え~っと、一昨日、砂沙美ちゃんが林間学校にでかけた日からでーす」
美星が現状を把握してないような明るい声で答えてくれた。
「ええ~っ!?」
ママや天地兄ちゃん、何してるのぉ?
砂沙美が遊びに行ったから、自分たちも出かけた……なんて、天地兄ちゃんが、そんなことするはずないよね。
「もしかしたら、ドロボーさんとかが侵入してきて、店長の首をキュッ。天地さんには脇腹をくすぐる悦楽悶絶地獄責めに合わせて、この家にあるかどーかもわからない財産を…」
「おのれは、なんでそーゆーこと言うんやっ!」
田舎である岡山弁を駆使して清音が叫ぶ。
そ、そんなぁ。
不安になった砂沙美は、ミニスカートのポケットの中から合い鍵を取り出して、玄関のドアを開けた。荷物をそのままにして急いで中に飛び込む。
「ママッ、天地兄ちゃん!」
ガッ。
「わわわ……!」
何かが足にひっかかって、砂沙美はそのまま廊下にダイブした。
「痛~い!」
続いて入ろうとした美星もコケて、砂沙美の上に重なるように倒れる。
ムニュ♡
「……み、美星お姉ちゃん、重いよぉ」
「あらあら、ごめんなさいね、砂沙美ちゃん」
なんてことをしていると。
「ミャアァ!?」
バッグから外に出た魎皇鬼が驚きの声を上げた。
はっとした砂沙美は、上に覆いかぶさっている美星の胸のせいで視界が極端に悪かったが、現在、自分の家がどうなっているのかを完全に理解した。
無茶苦茶だったのだ。何もかもが。
鍋が、椅子が、味の素が、タンスが、セガ・サターンが、廊下に散乱している。