ちなみに、この場合はかい活動に走ることになった。

「天野はここかー!? 天野はここかー!?

 さけびながら、木々をき、土をる。

 ああっ、いないっ!

 いつしゆんにして楽しいじようきようがデンジャラスなものに変わっていく様を、砂沙美ちゃんはぼうかんするしかなかった。

「砂沙美ちゃん!」

 ウサギのようなネコのような動物が走ってくる。

 ジュライヘルムの次期女王第一候補であるが、砂沙美のパートナーとして使わした魔法の国のマクガイバー、りようおうクンだ。

「砂沙美ちゃん、いちだいだ!」

「うん、見て見て、告白してるよ!」

 見ると、モンスターは、おまえが好きだっ! おまえがしいっ!! とかなんとか言って女生徒を追いかけ回している。

「そんなことはどーでもいいから、プリティサミーに変身して、みんなを助けなきゃ!」

 とにかく魎皇鬼は、みんなに見つからないように砂沙美を連れ出した。すぐさまくうかんに手をんで、デスドライヴしている魔法のバトンを取り出す。

 本当なら、すぐ魔法少女に変身して欲しいところなのだが、みんなの前でそんなことするんならしたんで死ぬ! と砂沙美がりきせつするから、いつもかくれて変身するのが、二人の長いさいばんの中で見出したかいあんだった。

 ……別に、ずかしがらなくたっていいのに。

 男の子ちゃんな魎皇鬼には、砂沙美の気持ちが今イチわからないのでちゅね。

「さあ、砂沙美ちゃん、変身して!」

「林間学校まで来てやるのぉ?」

「やるのっ!」

 ……しょうがない。ポポッとやっつけて、寝る前に美紗緒ちゃんとトランプするためにも、サミーになってがんばろう!

『善』なる魔法少女とは思えない自己中心的な考えをまとめて、砂沙美は魎皇鬼から魔法のバトンを受け取った。

 ピンク色でのしがみが巻かれている、一度持ったらやく連チャン間違いなしのおめでたくてありがたいデザインだ。

 先っぽに付いているハートマークのエムブレムは、ていしようするラブ&ピースのしようちようであり、それを千年なつる様と万年なかめ様が支えている。これまた、しちふくじんが富士山とナスビとたかを引き連れてさんしているくらいにハッピー!

 砂沙美はバトンをる。

 やけくそになって振る。

 そんなムチャなやり方でも、じゆうじゆんな魔法のぶつしつは、光のせきびて彼女の身体をつつんでくれた。

「プリティー・ミューテーション・マジカル・リコ─────!!

 砂沙美の赤いかみかざりがお花になる。

 上半身がふくで、下半身はなぜかミニ・スカートになる。

 帯が巻かれる。

 魔法のみなもとひたいしゆうやくする。

 ふくすうの魔法をおぼえることができる魔法使い級の能力のあかしである魔法の……ああ、ややこしいっ、つまり、砂沙美の額にタトゥーがきざまれた!

 地面にり立つ。

 片足を上げて、人さし指はホッペタに。

 ひとみがキラリ!

 小指がピピン!

「恋のなやみはサミーにおまかせ! 魔法少女プリティサミー、ネゴシエイターになってさんじようです!」

 目の前には魎皇鬼しかいないのに、いつもの調ちようで、サミーはこうじようべた。

 ま、それはそれとして、このさい無視だ!

「さあ、サミー、急ぐんだ」

「うんっ!」

 魎皇鬼にかされたサミーは、告白かかいかのどちらかを続けているだろう、ラブラブモンスターのいるげんに向かって走り出した。

「スペシャル・ストーップッ!!

 の影から何者かが現れ、サミーはかかとをすり減らして止まる。

「……誰?」

「好き、愛、告白、恋愛、でんせつの樹の下、フォーエバー・ウイズ・ユー……。他人の幸せを見るのって、なんてゆうばりファンタスティック。そう思わない、サミー?」

「ピ、ピクシィミサ!?

「どう、便べん、直った?」

「わけわかんないこと、言わないで!」

「そりゃソーリー」

 のほほんとが道をぱしってくれるミサを、サミーはにらみつけた。

 やっぱりと言うか、じゆつちゆうはつそうだと思ってたから全然おどろかないけど、やっぱりラブラブモンスターを呼び出したのは、ピクシィミサだったんだ!

「ミサ。せっかく、みんなで楽しくしてたのに、どうしてこんなことするの!?

「だって、ハッピーな状況をジャマするのって、とってもジョイフルだ・か・ら♡」

「あんなラブラブモンスター、すぐにやっつけちゃぅんだから!」

「いやに自信がピークに達してるわね?」

「そういうワケじゃないけど……」

 ……天地兄ちゃんがちよきんを使ってまで、連れてきてくれた旅行だもん。

 そうだよ。

 そうなんだからっ!

「どいて」

「オーライ」

 ごういんに進むサミーをじやしようともせず、ミサは口元に笑みを浮かべながらあっさりと道をゆずった。

 ……うふふ。サミー、また後でね。

 走り去ってゆくサミーに、キュートなウインクをおいする。

 ミサ様のお考えになっていることとは……。


 木々がなぎ倒され、炎の中で巨大な影がおどっていた。

「天野ーっ、天野ーっ!」

 見つけた。モンスターさんだ!

 今、サミーの目の前に、肉体と精神がへんぼうしたモンスターがいる。

 でも。

 いくら精神をゆがめられていても、変えることができないものがある。

 それは、心の声だ。

 心の奥底にあるたましいの叫びだ。

 サミーはその部分に精神を集中させた。

 人のおもいを感じることができる、二六種類あるサミーの魔法の能力がそれをのうにする。

 サミーの心とモンスターの心のちようが、少しずつ重なってゆく。

 聞こえてくる。心の声が。

 見えてくる。心の映像が。

『……オ……レ……は、……オレは、あんなことが……言いたかったんじゃない……。オレは、天野に、言いたかったんだ……』

 ラジオのアナログ・ダイヤルを合わせるように、声が、絵が、せんめいになってゆく。

 ちょっとボサボサした髪と、キリッとした目……。

 そこにいるのは……もしかして、じまクン!?

『オレは、天野のことが、天野のことが……』

 み込んでくる。

 真嶋クンの想いが。砂沙美の心の中に……。

 うん。真嶋クンの気持ち、知ってたよ。

 だって、いつも見てたもんね。美紗緒ちゃんのこと。

 わかってたよ、せいのカンで。

 だから……。

『サミー、ムー大陸ってどうしてしずんだんだと思う? 一度気になりだしたら、スヤスヤとスリーピングできないのよねー』

 ノイズのような声が、サミーの心の中にひびく。

『それはアトランティスがおそってきて、ムーのはくげいが……って、えっ? その声は!?

『うふふ。また、よい子ぶっちゃって、ラブラブモンスターの精神をリバースさせちゃおうってこんたん?』

『……ピ、ピクシィミサ!?

『ちょっと、お邪魔させてもらうわねぇん』

 なんと、サミーと真嶋モンスターの心のこうしんに、ミサ様が持ってらんにゆうして、木村ばりにマイクパフォーマンスしてきたのだ!

 おお、ミサ様。とつぱつ的に考えた作戦にしては、より二レベルくらい高いぞ。

 変身前の美紗緒ちゃんのおりこうさん度がわかるってもんです。

『…………あ、……まの…………』

 真嶋クンの心が再び、聞き取りにくいものになった。

 見えていた姿すがたも、きりの中に入っていくように消えてゆく。

『ひどいよ、ミサッ!』

『ゲラゲラゲラ。なーんて、スイートちゃん。あなたが、いつもこうやって、ろうじようしてるみなさまをせつとくしてるってことはわかってるんだから』

『やめて。聞こえなくなる。声が……』

『フッ。そのための魔法少女です。にゃーっはっは!』

『見えなくなるよ。想いが……』

 ダメだ。どうしよう。

 サミーが人々の想いを受け、それを力に変えるひつさつわざ、プリティ・コケティッシュ・ボンバーは、実は二種類存在する。

 やみくもにそのパワーだけを相手にぶつけるコケティッシュ・ボンバーAと、精神をゆがめられた人を元にもどすコケティッシュ・ボンバーFが。

 Aに比べてFの方は、あつかいがちょっとだけ大変だ。

 人形やおなべやテレビ等の心を持たない物なら、どうってことないのだが、心のある相手の場合、うまくシンクロさせないと、精神を元に戻すことができないのである。

 ヘタをすると、ベネズエラのせんりつさんだ!

『3×4×12÷2─11は、いくつ?』

『やめてよ!』

『あのね、一番最初は、ブツ切りの肉を入れるの。ちょっといためて、ジャガイモとニンジン、タマネギを弱火で痛めて、その上からルーを……』

『カレーの作り方は知ってるもん!』

 ……プッ。

 あー、真嶋クンの心が見えなくなっちゃったよー!


 ぞうばやしの中。

 大木の枝の上にいるピクシィミサは、勝利と栄光をこの手にしようあくして、裸魅亜お姉様にめてもらえることをかくしんした。

 ううん、ミサのミッション、大成功って感じっていうかー。

 ミサったらすごいっていうかー。なんかー。

 ごとすぎるほどの作戦に、ミサ様はコギャル化していた。

 キャンプファイヤーが行われている場所では、サミーがモンスターにほおずりされて、愛の告白を受けている。

「あー、天野ぉ、なんて、おめでたいかつこうをしてるんだあぁぁっっ!!

「あたしは、美紗緒ちゃんじゃないってー!」

「天野ぉ、天野ぉぉぉっっっ!!

 ふふん。このまま、ハネムーンにでも行ってきなさいサミー。

 じゆんぱくのウェディングドレス、チャペルがり響くチャーチ。空きかんをつけたイエロー・カー……。

 あー、幸せ。あー、幸せ。

 よかったわね、サミー。さあ、やられちゃって。

 ミサのマジカル・イヤーに、勝利のファンファーレを鳴り響かせてちょうだい!

「ミャア!!

 とつぜん、ミサの頭に、何かが近づいてきた。

「ホワット!?

「ミャア、ミャア、ミャア!!

 魎皇鬼であった。ミサの背後から飛びかかったのだ。

「ちょ……ストップ……精神が、集中できな……いっ!」

「ミャアッ!」

 背中をツツッとでる。

「そこは、ダメちゃんよ。ミサってば、ウイーク・ポイントで……ああああん♡」

 りになってあふあふしてるミサ様を横目に、魎皇鬼は念波を送る。

『今だ、サミー、もう一度、心を通じ合わせるんだ!』

『うん!』

 リョーちゃん、ありがとう! さすが、サミーのサポーターだね!!

 真嶋モンスターに頰ずりされながら、サミーは再び、魔法の力を使った。

 二人の心のベクトルが、ゆっくりと同一方向を示していく。

 重なった。

 見えたよ、心の中がっ!!

 真嶋クンの心の世界では、けんおちいりまくっている彼が、オレのバカバカと書かれたかべにヘッドバッドをれんぱつしていた。

 真嶋クン、こんな形で気持ちをぶつけたって、伝わらないよ。

 だから。

 元に戻ろう!

 ヘッドバッドをめた真嶋クンは、現れたサミーにり向く。

 彼のほおは、なみだれていた。

 そう。心の声は、こんなにもじゆんすいで、はかなく、もろい。

 でも、だから、強くならなくちゃいけないんだ。

 それが人なのだから……。

 流れてくる真嶋クンの心が、サミーにさらなる力を与えてくれる。

 うん、そうだよね。元に戻りたいよね。

 だいじよう。気持ち、受けとったから。がんばるから。サミーにまかせて!

 サミーの身体からだかがやき出す。

 真嶋クンの想いを受けたサミーは、津名魅のお古でない、真なる魔法少女のコスチュームをまとい始めている。

 金色のかたパットとロングブーツ、イチゴの髪飾り。全てがしん調ちようだ。

 バトン先端にあるハートマークのエムブレムは、げん力を示すサインが輝いている。

 これが、プリティサミーの本当の姿なのだ。

 輝きがす。モンスターを包み込む。

 広がる。

 そしてはじける。

 サミーとラブラブモンスターは、林間学校に参加している生徒たちの前から、いつしゆんにしてその姿を消した。


その4


 あー、こりゃ、どー考えても失敗だ。

 そう思ったは、ミサの作戦が失敗するのを確認する前に、姉がみつに作った魔法のゲートをくぐってジュライヘルムにかんした。

 魔法使い級の能力を持つ者たちがつどう、王国ようたしの神殿、すめらぎとうへ向かう。

 その最上階近くに、姉の自室があるからだ。

 ついでに鳥タイプから人タイプに戻り、パッとまどに座った。

 女の子とちがくり色の髪と、むらさきのマントのコントラストもあざやかな、美しいと言って差し支えないから言い切ってしまうが、美しい少年だ。

「姉さん……」

 見ると、はソファに横たわって、ほおづえをつきながら魔法映像をながめている。

 りつたいされている映像には、サミーと元の姿に戻れた真嶋クンの姿があった。


「いてててて……」

 多少、こうしようがあるのか、頭を押さえている真嶋クンは、自分の前にプリティサミーが立っていることを知った。

「あれ、オレ……どうして?」

「もう、大丈夫だよ」

「キミはプリティサミー……?」

「うん。もう、あなたの中にあった悪い魔法はなくなったから!」

「オレ、何をしてたんだ? なんか、すっごくずかしいことをしてたよーな……」

 してたんだ、真嶋。

「え~っ、そ、そんなことないよぉ。あは、あははは」

 サミーはうそをついた。

 真実を告げるには、あまりにもこくすぎる!

「なら、いいけど……」

「ほら、もうキャンプファイヤーは終わったし、早く宿しゆくしやもどらないと」

「あ、ああ……」

「じゃあね」

 サミーは、ぞうばやしに向かって走る。

 自分も早く変身をいて宿舎に戻らないと、ろうせい二〇分だっちゃ。

 あ、そうだ。

 サミーは、真嶋クンに振り返った。

 そして。

「勇気を出してね。気持ちや想いは、必ず伝わるものだから……」

「えっ……?」

「えへへっ!」

 軽くウインクして、サミーは消えてゆく。

 しばらくボーッとしていた真嶋クンは、辺りを見回し、そして、どろだらけになっている『COSBY』のトレーナーを見た。

 そうだった。オレ、天野に……。

 気持ちや想いは、必ず伝わるものだから……。

 サミーの言葉が心の中にひびく。

 そう、伝わるものだから。

「そうだよな。しょうがないよなぁ。へっ、へへへ……」

 足下にあった小石を軽くる。

 頭をポリポリかいて、真嶋クンはゆっくりと宿舎へ歩き出した。


 一言もしやべらずに映像をい入るように見つめている姉が気になって、は、ソファを回り込んで、その顔をのぞき込んだ。

 ほおを流れるものは……なみだ

「若いって、いいわよね……」

「姉さん、何、感動してるの?」

「ちょっとね、三八〇年前のことを思い出してただけよ……」

 鼻をすすりながらそう言う姉に、留魅耶はあることを思い出す。

「ああ、わかった。あこがれてたせんぱい(女)に告白しようとして、できなくて、日記かなんかにズラズラ書いてて、たまたまそれを読んださんが手助けしてくれるってんで、思い切って告白してみたら、あんた何考えてんのよとか言われて、あっさりフラれたっていうヤツでしょ?」

「ど、どうして、それを!?

「日記読んだから」

「留魅耶、あんた、人のプライバシーを!」

「姉さんだって、ボクのプライバシーを覗きまくってるじゃないかっ!」

 留魅耶は自分の身分もかえりみず、なまにもはんろんしたが、じんな姉がはんげきしてくることはわかっていたので、りよううでで全身をブロックしてアストロンをとなえた。

 が、がいにも、姉はものわかりがよくて。

「そうね。わかったわ、留魅耶」

「姉さん……」

 安心した留魅耶がぼうぎよくと同時に、裸魅亜は彼の首をつかみ、そのままかべに押し当てた。

「でもね、そんなさいなことはどーでもいいのよ。問題は、あんたが、今! をイジメる作戦に失敗したって事実なのよ!!

「も、問題をすりえて……」

「チェイッ!」

 裸魅亜は、留魅耶の頭を壁とのマッチぼうスタイルのさつねつごくおとしいれて、そのまま部屋のすみに放り投げる。

 そして、両手を広げてぜつきようした!

「ああ、どうしたらいいの!? サミーが世界を平和になんかしやがるから、よい子ちゃん度はんていのサミーゲージは、じようしようりゆうに乗りっぱなしでグイーン。このままでは、女王のは津名魅のものに……ああっ、津名魅が女王になってVサインしている姿すがたいつしゆんでも頭に思い浮かべちゃったわ。いやっ、そんなそうぞうゆたかな自分がすっごく嫌っ!」

「でも、こんな、いいげんな作戦ばっかりじゃ、どーしよーもないと思うけど」

 プスプスいってる頭をさすりながら、またしてもけいな一言を留魅耶は口にする。

 それが、これから世界をせつけんする大いなる事件の始まりになるとは、彼自身気づくわけもないのだが……。

「へー、そうなの、留魅耶?」

 裸魅亜はダイレクトに留魅耶にる。

 その顔は、笑っているのか、おこっているのか、悲しんでいるのか、はんべつのうだ。

「だったら、あんたには、何か作戦があるってゆーの!? そこまで言ったんだから、とうぜんあるんでしょうね!? え、留魅耶? ほら、言いなさいよ、言いなさいよ! 言わないとヒドイわよ!!

「そんなこと言われても……、でも、前にも言ったじゃないか。こんなうらけんみたいなことを続けてもしかたないでしょ。サミーゲージが上がるだけだよ!」

「あー、ムカつく!!

 裸魅亜は、いかりのほこささを壁に変え、頭の中で『○×△○□□○××』を押しつつ、れいな連続こうげきたたき込んだ。ゲーム性をした強さだ。

「姉さんは、地球のことを知らなさすぎる。砂沙美は魔法少女になったといっても、地球の世界でみれば、地位もけんりよくめいもない、ただの小学生の女の子なんだよ」

「その小学生に負け続けているのはあたしってワケだ。あははははは!!

 くやし笑いで、怒れるこぶしをさらに叩き込む裸魅亜様だ。

「だからさ、もっと、その星にあるしきたりというか、社会的な部分をしきして、砂沙美をおとしいれればいいんじゃないかと……」

「フッ。甘いわね、留魅耶」

「何が?」

「でも、今回だけは、あんたの言う意見をさんこうにしてあげるわ。広大な海のような心を持つこのあたしにかんしやしなさい」

「つまり、何も考えてなかったわけだ」

 そう言って姉を見ると、指先から『炎』がき出していて……。

「ボクの意見を参考にしてくれて、ありがとう、姉さん!」

「心がこもってないっ!!

「あがとりい!」

「んー、んー、いいわよ。あなたの深い感謝のじようねんが、そのちがった台詞せりふの中にはんえいされているわ。とってもトレビアンよ」

 けつきよく、裸魅亜は留魅耶のアイデアをさいようするのであるが、たんじゆんにそうすると、生意気な弟がつけあがるし、自分のプライドだってズタズタだ。

 だから、裸魅亜様のげんどうはこうなってしまうのである。

「そうね、じゃあ……」

 言いながら裸魅亜が指を鳴らすと、ゆかに落ちていた紙がゆっくりと浮かび上がった。

 留魅耶が地球から持ってきた、地球の新聞、タイムズ・スクエア誌である。

「これに決めたわ!」

 裸魅亜がビシシッと突きつけた記事はちようじやばんづけの順位表である。さらに、その順番の一番上……つまり世界一のお金持ちである人物を指さして裸魅亜は言った。

「この人間を使って、プリティサミーをギャフンと言わせてやるわ!」

「そんな、たんらく的な!」

「いいじゃない。砂沙美のいる世界で社会的に地位のある人間を選んだんだから。あんたの意見通りでしょ?」

「そりゃ、そうかもしんないけど……」

「いいから、こいつに関するりようでもなんでもいいからいつしきそろえて、あんたが読んで、四〇〇字以内にまとめて六時間後に持ってきなさいっ!」

「なんでボクがっ!?

「それ以上しやべらないで。首をヘシ折りたくなるからっ! このあたしを、弟殺しなんかにさせないで!!……お願いよ、留魅耶。姉さんを悲しませないでえぇぇっ!!

 裸魅亜は、留魅耶をきしめた。

 しかし、うでの力は……。

「わかったよ。姉さん、わかったから、やめてぇっっっっっっっっっ!!

 留魅耶の絶叫が皇の塔にひびき渡った。


 またまた、裸魅亜様は、留魅耶の意見を取り入れて多少はマシになったかも知れないが、やっぱりとつぱつ的でえんだいな作戦を始めようとしている。

 女王はあたしで、あたしは女王。

 クイーンはミーで、ミーはクイーン。

 それは、くつがえすことのできない、ぜつたい的な真実なのだから──。


その5


 ヨッシャ、事件かいけつ……なわけだから、魔法少女プリティサミーは変身をき、今は楽しいが、不幸な夏休みをごしているぼんな小学四年生の河合かわいとなって、宿舎にもどってきた。

 先生に見つからないように、よつんばいになってろうをズリズリ進む。

 気になって、じまクンのいる班の部屋の前で止まってみる。

 耳をそばだてると、中から男子たちの笑い声が聞こえてきた。

 うん。真嶋クン、元気だね。

 ちょっとケチがついちゃったけど、まあ、旅にはハプニングがつきものだし。

 なんて考えながら、砂沙美は自分の部屋のドアを開けた。

「あ、砂沙美ちゃん……」

 部屋で待っていたのは、だ。

「美紗緒ちゃん? どうして、砂沙美、探してたのに!」

「ごめんなさい。ぶん、気分が悪くなって、戻ってきたんだと思うの」

「もう、平気なの?」

「うん……」

 そっか。だから、宿舎の方を歩いてたのか。

 砂沙美はなつとくして、まどにいる美紗緒のとなりならんだ。

「何、してたの?」

「星を見てたの。東京だと、オリオンがすぐわかるのに、ここだと星がいっぱいありすぎて……」

 美紗緒は再び星を見つめた。

 流れ星が見つからないかな。

 そしたら、お願いしたいことがいっぱいあるの。

 気分が悪くならないようにしてください。

 パパが家に戻ってきてくれるようにしてください。

 それから。

 それから……。

 砂沙美ちゃんと、ずっといつしよにいさせてください。

 えへへっ。

 こんなにお願いがいっぱいだと、流れ星さんも、こまっちゃうかなぁ。

「何、ニコニコしてるの?」

 ベッドの上でバッグの中身を調べている砂沙美が言う。

 美紗緒は、そんな砂沙美に微笑ほほえみながら、

「楽しかったね、砂沙美ちゃん」

「うん!」

 砂沙美は、元気よくへんをした。

 そうだね、美紗緒ちゃん。楽しい林間学校だったよね。

 でも。

 砂沙美は、バッグからトランプを取り出して。

「まだまだ、夜は長いんだよ」

「うん」

 笑みを返す美紗緒の後ろで、ひとすじの光のせきが生まれた。

 まるで、彼女たちの願いをかなえてくれるかのように──。