Part 01: ……針のむしろに座るというのは、まさに今の状態。そんなことを逃避的に考えながら、私は足の痺れにひたすら耐え続けていた。 茜: いいかい……魅音? 私はあんたに弁護士だの官僚だの、学歴エリートになれって言っているわけじゃないんだ。 茜: まぁ、もしそんな可能性があるんだったら協力は惜しまないけど……私が無理だったことを、娘のあんたに強制するつもりは毛頭無いよ。 魅音: だ、だよねー……?蛙の子は蛙、私の勉強嫌いは成績がいまいちだった母さん譲りなんだから仕方な――ひっ?! 茜: あんた……私にケンカを売っているのかい……? いったいどこから取り出したのか、抜き身の真剣を目の前に突きつけられた私は……声のない悲鳴とともに、固唾を飲み込む。 ……全身に駆け巡る、冷たい感覚。遠のきそうになった意識を奮い立たせながら、私はなんとか言葉を絞り出していった。 魅音: あ……あの、母さん……?できればその、落ち着いて……っ! 茜: もちろん落ち着いているさね。でなけりゃあんたの首は、数秒前に宙を舞ってそこの畳の上で転がっているところだよ。 魅音: ……っ……。 今の台詞が単なる脅しだったら、私も多少は驚きつつ引きつった笑みのひとつでも返すことができるのだけど……。 我が母親ながら恐ろしいことに、この人はこういう場合の容赦がたとえ娘が相手でも……一切無い。 どうしよう。泣きたい。いや、その前にこの場から逃げ出したい。 そう思ってちらり、と縁側へと出る障子戸に視線を送ると……真剣の切っ先がひらめいて私の視界を遮ってきた。 茜: ……どこを見ているんだい、魅音。私が話している最中によそ見とはいい度胸だねぇぇ……っ? 魅音: いっ……いやいや、よ……よそ見じゃないよ!ちょ、ちょっと目に埃が入って痛かったから、瞬きをしただけでっ……! 茜: ……おや、そうだったのかい。だったら、取るのを手伝ってやろうか? 魅音: け、結構です! もう取れました!! 片目を手のひらで隠しながら、私はぶんぶんっと首を激しく横に振って拒否。 冗談じゃない。ゴミどころか眼球ごとくりぬきそうな勢いの笑みを前にして、素直に従ってたまるか……! 茜: まぁ……冗談はこのくらいにしておいて。 魅音: (いや、どこから冗談だったのっ?どう考えても顔はマジで怒っていたよね?!) 思わずそんなツッコミが口をついて出かけたが、なんとか喉元のあたりで押しとどめる。 「雉も鳴かずば……」のたとえ通り、余計な発言はこの場においては即試合終了にも繋がりかねない。……ここはとにかく、耐え抜くことが最優先だ。 茜: ……魅音。私も偉そうなことを言える立場じゃないから、学校の成績であんたを貶めるつもりはないよ。 茜: 学校で得られる大きな財産は、友達だ。だから学業を全うするためにそっちの努力をおざなりにするのは、本末転倒ってやつさ。 魅音: う、うん……その点は大丈夫だよ。レナや圭ちゃん、それに新しく加わった一穂たちも#p雛見沢#sひなみざわ#rのために色々と力を貸してくれているしね。 茜: あぁ、それはいいことだ。私よりよっぽど、あんたは園崎家頭首としての見込みがあると思っているよ。 茜: ただ……ねぇ?さすがに限度ってものがあるってことも、あんたにはわかってもらいたいのさ……。 そう言って母さんは刀を鞘に収めると、卓の上に置かれた中間テストの答案を手繰ってめくりあげ……。 茜: ……っ……。 軽くうめき声を上げながら、見てはいけないものを見てしまったような表情ですぐさま裏返しに戻し……大きくため息をついた。 茜: 私も学生時代は、あまり褒められるような成績じゃなかったけど……こいつはもう、幻想か悪い夢だと思いたくなるくらいの酷さだね。 茜: ……一応、聞いておくよ。この中間テストってのは、10点満点かい? 魅音: ……。100点満点、です……。 茜: まったく……葛西?立会人としてこれを見たあんたの感想を聞かせてもらおうじゃないか。 葛西: ……ノーコメントでお願いします。私の口から申し上げるのは、その……。 葛西さんはそう言って、くいっとサングラスを直しながら顔を背けてしまう。 ただ、その引きつった口元からはフォローの言葉も思いつかない、という苦渋さがありありと伝わってきた……。 茜: まぁ、いずれにせよ……この調子だと、#p興宮#sおきのみや#rの高校に進学できるかもわかったもんじゃないね。 茜: 成績云々はさておくとしても、園崎家の次期頭首様が中学浪人なんてしたら……間違いなく鬼婆の頭の血管がぶち切れちまうよ。 魅音: か、母さんは怒らない、の……? 茜: ははっ、大丈夫さ。自分の血管を切るくらいなら、あんたの頸動脈を斬ってやったほうが溜飲も下がるだろうしね……? 魅音: (目が、目が全然笑っていないぃ……!) この人ならやりかねない……じゃない、絶対にやる! 断言できるッ! 魅音: だ、大丈夫……!これから挽回して、母さんにも婆っちゃにも心配をかけないように、頑張るから……ッ! 茜: あぁ……そうしてくれると助かるね。とはいえ、気持ちだけじゃどうしようもないのが学業ってやつだ。そこで……。 Part 02: 魅音: ……ってことがあってさ。次の模試の結果次第では、私の受験校は聖ルチーア学園になるかもしれない……。 美雪: んー……でも、今の高校受験だとよほどのことがない限り私立と公立の併願受験はフツーのことだから、別にいいんじゃない? 魅音: ルチーアは、併願OKじゃないんだよ。ここに入るつもりで来る子じゃないと、願書そのものを受け付けていないんだってさ。 美雪: おぅ……そうなんだ。ちなみにルチーアの偏差値って、結構高めなの? 魅音: まぁ、一般枠はそれなりにね。ただまぁ、その……なんというか……。 菜央: ……ひょっとして、裏口入学? 魅音: んなことするわけないでしょ、人聞きの悪いっ!内申点で決まる推薦枠があるって話だよ! 美雪: あー、そっか。魅音は分校の学級委員長だし、その評価点で加算される可能性が高いもんねー。 魅音: うん、まぁ……。とはいえ、通常の試験を受けての入学じゃないからちょっと後ろめたさがあるというか……。 菜央: そう? 委員長としてみんなの世話を長い間一手に引き受けてきたんだから、十分胸を張っていい実績だと思うわ。 魅音: ……行く先がルチーアじゃなかったら、もっと誇らしく感じられるんだけどね。 レナ: はぅ……それじゃ魅ぃちゃんは、双子の妹さんと同じ高校に行くことになっちゃうのかな……かな? 魅音: そうなるね……はぁ……。 美雪: んー、でもそんなに落ち込んでるのはやっぱり#p雛見沢#sひなみざわ#rを離れたくなかったから……? 魅音: もちろん、それもあるよ。ただ……聖ルチーアってところが、その……詩音の話だとめちゃくちゃ厳しいらしくてさ。 菜央: ……そうなの、一穂?確か、ここに来るまではあんたもルチーアに……って……。 一穂: ……。くー……。 菜央: ……よく寝てるわね。起こすと可哀想だから、このままにしておきましょう。 沙都子: で、どれほど厳しいんですの?参考までに聞かせてくださいまし。 魅音: えっと……確か授業は、通常に加えて早朝と放課後にも強化授業があって、合格点を取るまで補習させられて……。 魅音: 全寮制だから自分の部屋に戻ってからも就寝まで自習時間が必須。もちろんその間はプライベートな会話や遊戯が一切禁止。 魅音: あと、あくまで噂だけど補習組制度ってものがあって、合格点を取れない生徒は監禁状態でひたすら勉強を強いられて……。 美雪: ……。確かに、ちょっと……いかにも管理された灰色な学生生活って感じみたいだね……。 魅音: ちょっと、どころじゃないでしょっ?そんな学生生活なんて灰色どころか、まさに暗黒ブラックホールじゃんか?! 魅音: はぁ……詩音のやつ、よくもまぁ2年以上もそんな監獄生活に耐えてきたもんだねぇ……。2、3度脱走しようとして失敗しているけどさ。 美雪: いや、逃げてるってことは全然耐えてないでしょ。っていうか、脱走って……刑務所じゃあるまいし。 魅音: それくらいにとんでもない学園なんだよ!しかも高等部になったら、さらにもっと厳しくなるって話だし……うぅ……! 沙都子: ……とんでもない学園ですのね。私は絶対、たとえ何があったとしてもお近づきにはなりたくありませんわ。 梨花: ……今の沙都子の台詞、ボクはよーく覚えておくのですよ。みー。 美雪: まぁ、そこまで厳しい学園に行くのを回避したいんだったら、次の模試を頑張るしかないねー。 魅音: それができたら苦労しないよ!まぁその通りだし、他に手段があるかと言われても特に思いつくものはないんだけど……。 魅音: だいたい、この前の中間テストは範囲が広い上に難しすぎだって!あんなの、多少勉強しても解けっこないっての! 美雪: んー、確かに難しかったけど……魅音?そもそもキミ、テスト勉強ってちゃんとしてた? 美雪: 確かテストの直前、せっかく開いた勉強会を「おもちゃ屋のTVゲーム機で部活だー!」って急に中止したような気がするんだけど……。 菜央: そうよ。レナちゃんがあれだけ心配して、「今回だけは止めたほうがいいよ」って何度も言ってくれたのに。 魅音: し、仕方ないじゃんか……!新作が入ったって前日に聞いて、誰よりも早くプレイしておきたかったし……。 魅音: 菜央ちゃんにばかりハイスコア出されるなんて、部長としてはいい加減それなりに威厳を示さないと沽券に関わるってやつでしょー? 菜央: ……そのせいで自分を見失っちゃったら、余計に評価が下がるだけだと思うんだけど。 魅音: ごふっ? な、菜央ちゃんの厳しいご指摘、ごもっともです……。 レナ: はぅ……菜央ちゃん、そのくらいにしてあげて。TVゲームの新作ってなかなか入ってこないから、魅ぃちゃんもつい夢中になっちゃったんだよ。 菜央: あっ……ごめんなさい、魅音さん。つい、責めるようなキツイ言い方をして……。 魅音: えっ? いやいや、さっきも言ったけど私の怠慢が原因だってちゃんと自覚しているしさ。 魅音: そう……全ては私の弱い心がもたらした不幸と悲劇ってやつさ……ふへ、ふへへっ……。 沙都子: ……壊れる直前ですわね、今の魅音さん。このまま見過ごすのは気の毒だと思いましてよ。 美雪: んー、そうだね……とにかく魅音の窮状を、どうやって打開するかを考えてみよう。 美雪: ちなみに魅音、これまでの入試対策ってどんなことをやってきたの? 魅音: へっ? 入試対策って……普段の授業とは何か違うの? 美雪: そりゃそうだよ。だって入試問題ってのは、3年間に学んだことが出るんだからさ。 美雪: 直近にやったことならともかく、2年前にどんなことをやったのかって結構忘れてたりするでしょ? 魅音: な、なるほど……確かに。 美雪: とりあえず、暗記が中心になる「社会」をおさらいしてみよっか。軽く問題を出すから、答えてみて。 …………。 美雪: ……おぉぅっ……。 レナ: は、はぅぅ……っ……。 菜央: なんというか、その……。 沙都子: ……無様ですわね。 梨花: 全問不正解なのですよ、みー……。 魅音: だ、だって……いくらなんでも、難しすぎるよ!聞いたことのない単語と地名ばっか出てきてさー! 美雪: んー……あのさ、魅音。今出した問題は、全部中学1年と2年の教科書から目立つのを抜粋したものなんだけど……。 魅音: えっ、そうなの……?! 美雪: そうなの、って……ちなみに魅音、キミって復習とか、ちゃんとやってた? 魅音: も、もちろんだよ!こう見えてもおじさんは、毎晩決まった時間に予習復習を自分の部屋でやって……。 魅音: やって……。 魅音: ……やっていませんでした。 美雪: ……。1年と2年の社会の内容って、どれくらい覚えてる? 魅音: ち、地理だったら……首都くらいは……。 美雪: ……ブラジルの首都は? 魅音: ジュネーブ。 美雪: 南米ですらないっ!! 菜央: ブラジルの首都は、ブラジリアよ。リオデジャネイロって間違う人は結構いるみたいだけどね。 菜央: あと、ジュネーブは金融とかで有名なスイスの大都市だけど……スイスの首都はベルンだから、これも引っかけ問題よ。 沙都子: いえ、菜央さん……現状の魅音さんは引っかかって間違うという以前に、スタート直後の小石で勝手にすっ転んでいましてよ。 魅音: しょ、小学生に負けるなんて……っ? 美雪: んー……これはもう、相当頑張らないとだねぇ……。 魅音: ……。無理だ。 美雪: 魅音……? 魅音: 絶対、ぜーっったい無理だッ!今からやって、間に合いっこないって!う……うがああぁぁぁぁぁああっっ!! レナ: は、はぅっ?魅ぃちゃん、お、落ち着いて……っ! 魅音: 落ち着けって、何をどうしたら落ち着くって言うんだよっ?どうすりゃいいってのさ?! レナ: そ、それは……はぅ……。 魅音: あっはっはっはっ! 私はおしまいだー!こうなったらもう試験会場を爆破して、全てをなかったことにしてやるうぅぅぅうぅぅっ?! 美雪: ちょっ……さすがにそれは、シャレにならないって!誰か、魅音を止めろぉぉぉ?! 魅音: やかましい、止めるなッ!もう自分の頭蓋骨を開けて、別のやつの脳みそと入れ替えでもしなきゃどうしようもないのにッ! 魅音: もう、死なせてくれえぇぇぇ!!もしくは私のこの腐った脳みそと、誰かの脳みそを交換してええぇぇぇぇえっ?! 美雪: んなこと、できるわけないじゃんか!CDの入れ替えじゃないんだから!! 魅音: できなくても、そうするしかないんだよぉぉぉ!!今の私には、何をどうすることも――! 魅音: ん……?中身を、交換……入れ替えて、別人に……。 菜央: ど……どうしたの、魅音さん……? 魅音: こ……これだぁぁあああぁぁっ!! Part 03: 詩音: ったく……身内の不幸で帰ってこいって言うから、やっと鬼婆がくたばったか、と思って喜び勇んで戻ってきたってのに。 詩音: まさか、私に身代わりで模試を受けてくれだなんて……正気なの、お姉? 魅音: し、仕方ないじゃんか……!今さら付け焼き刃程度の知識で挑んでも、結果はほとんど変わんないんだしさ! 魅音: だったら、私よりは勉強漬けの毎日を送っているあんたなら、まだマシな点数を取れるんじゃないかって考えたんだよ……! 詩音: そりゃまぁ、渋々で嫌々ながらも担任に呼び出されるほどじゃない成績はキープしているけどさ……。 魅音: お願いします、詩音様っ!このままだと高校は聖ルチーア学園一択になって、あんたと同じ寮生活になっちゃう! 魅音: そしたら、3年の高校生活が生き地獄に……っ!そんな悪夢の時間を過ごしたら、私のガラスハートは粉々に砕け散っちゃうよー?! 詩音: ……その地獄で悪夢な学園生活を、私は2年以上も続けているんだけど。 詩音: っていうか、誰のハートがガラスだって?防弾ガラスの間違いでしょ。 詩音: ましてや、ルチーアに行きたくないからってそのルチーアの人間に助けを求めるフツー? 魅音: それくらい追い詰められているんだよ、私は!お願いします詩音様、いえ詩音大明神様!頼れるのはあなたしかいないんですぅぅぅ!! 詩音: ……。はぁ、わかったよ。確かに話を聞く限り、今のお姉の学力じゃ結果は目に見えているしね。 詩音: そ・の・か・わ・りっ!!あくまでも今回だけだから、次回以降はちゃんと自分でなんとかすること! 詩音: さしあたって、今年の夏休みは1日も休めないことを覚悟しなさい……! 詩音: もしサボったりしたら、今回の一件を母さんと鬼婆に話す! いい、魅音?! 魅音: はい、わかりましたっ!今回のご恩は、末代まで語り継ぐことをここに誓いますっっ!! 詩音: ……ったく、もう。 詩音: まぁ、私としてもどうやって#p雛見沢#sひなみざわ#rに戻ればいいか考えあぐねていたところだから、ある意味で渡りに船なんだけどね。 詩音: これで、「あの子」と接触すれば……あるいは別の可能性も……。 魅音: ……?何をブツブツ独り言を言っているのさ、詩音? 詩音: なんでもないよ。……っていうか、今の悪口?協力するって言ったこと、別に白紙撤回しても私は全っ然構わないんだけど……っ? 魅音: も……申し訳ございません、出過ぎた真似でした!ど、どうか愚かで惨めな私に、お力添えを……っ! 詩音: ……貸し1つなんかじゃありませんよ、10です。よーくその心と記憶に刻み込んでおくように。 富竹: ……それじゃ、次の問題に行こうか。園崎さん、いいかい? #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: はーい、任されましたー!では早速……! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: この問題は、こうで、こう解いて……どうですか富竹さ……じゃない、富竹先生ー? 富竹: うん……正解だ。わりと難しい問題だったのに、すごいね。この分なら心配はいらないかな。 レナ: はぅ……すごいね、魅ぃちゃん!中間テストの頃から見違えるくらいだよー! 菜央: 本当ね……!凄く勉強してきたんだなってわかるわ。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: あっはっはっはっ!まぁおじさんが本気を出せば、こんなもんだよ! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: さて、次の授業は社会だったよね。今回の課題は……。 一穂: …………。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: ん、どうしたのさ一穂? 私の顔をじっと見て。 一穂: あ、えっと……。もしかして、と思ったんだけど、その……。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: …………。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: くっくっくっ……やっぱり、あんたには気づかれちゃいましたか。お察しの通り、私は「詩音」ですよ。 園崎魅音(詩音): ということは、一穂さん……あの場面からうまく脱出して、記憶の継承にも成功したというわけですね。 一穂: うん。でも……詩音さん。どうしてこの「世界」だとルチーアにいたままなの?これまでの他の「世界」だと、脱走に成功して……。 園崎魅音(詩音): ……ちょっと試したかったことがあるんですよ。私が雛見沢に戻ってくると、とある子が不幸になってしまう。 園崎魅音(詩音): だから、その子のために……戻らない。そうすれば別の未来や展開が起きることもあるんじゃないか、って。 一穂: …………。 園崎魅音(詩音): でも……結局のところ、同じでした。それで私、思ったんです。 園崎魅音(詩音): ずっとその子に負い目を……謝罪と後悔の思いを抱き続けてきましたが、実のところ私は……何もしていなかった。 園崎魅音(詩音): いえ、何もできなかった。だからこれからの「世界」で、その子のためにできることを見つけたいんです。 一穂: ……詩音さん。 園崎魅音(詩音): ひとまず一穂さん、情報交換をしましょう。今度の模試対策の勉強会という名目で集まりあって、秘密のお話でもどうです? 一穂: う、うん……。それって美雪ちゃんと菜央ちゃんが、一緒でも……大丈夫? 園崎魅音(詩音): えぇ、もちろん。全員で力を合わせて、見つけ出しましょう。……このくそったれな迷宮の出口を、ね。