Part 01: 圭一(私服): いや、待て待て! ちょっと待て!いきなり言われて、馬なんか乗れるかー!! 美雪(私服): おぅ、すごい勢いで役者から却下が入ったよ。 圭一(私服): 当たり前じゃねぇか!むしろ、これで却下が入らないほうがよっぽどおかしいだろ?! 圭一(私服): 誰だ? この「馬に乗って颯爽と現れる」っておかしな脚本書いたやつは! 魅音(私服): 大丈夫、圭ちゃんならいけるって! 圭一(私服): 聞くまでもなかったな、お前か魅音っ!だったらお前が乗れよ、馬に!! 詩音(私服): お姉が馬に乗ってどうするんですか。むしろ馬に乗せたい派なのに。 羽入(私服): あぅあぅ……当然の顔して言い切ったのです。 レナ(私服): はぅ……だけど、#p雛見沢#sひなみざわ#rにお馬さんっていたかな? かな? 魅音(私服): 園崎家の知り合いが馬を運ぶためにたまたまイベント当日に村の近くを通るらしくてね。それで休憩がてら貸してくれるって。 魅音(私服): ……そういや、私も初めて知ったんだけどさ。馬って車酔いしても、吐くことができないらしいね。 一穂(私服): え、そうなの? 美雪(私服): あ、私もそれ聞いたことあるよ。馬って身体の構造上、飲み込む力が強すぎて逆に吐くことが難しいみたい。 沙都子(私服): 意外な豆知識ですわね。体調が悪い時って、いっそ吐いてしまったほうが楽になることもありますけど……。 沙都子(私服): それができないというのは、お辛いというか……大変ですわね。 菜央(私服): 人間みたいにパーキングエリアで休憩してちょっと身体を動かしたり風に当たる、なんてできないものね。 魅音(私服): でも雛見沢なら、場所は無限に確保がOKでしょ?そんなわけで、運転手と馬の休憩ついでにちょっとお借りできることになったってわけ。 圭一(私服): いやいや……今は馬が吐けるか吐けないかより、俺がプレッシャーで吐くかどうかの瀬戸際なんだが? 梨花(私服): 圭一、吐きそうなのですか? 圭一(私服): ……落ち着いて聞いてくれ、みんな。 圭一(私服): 俺は、馬なんか、乗ったこと……ない! 一穂(私服): ふ、普通はそうじゃないかな……? 菜央(私服): あたしはあるわよ。旅行先で、ちょっとだけだけど。 美雪(私服): おぅ、ナチュラルなお嬢様発言だ。まぁでも、普通は乗馬経験なんてせいぜい動物園のポニーくらいじゃない? 沙都子(私服): をーっほっほっほ!圭一さんが馬の前に現れたら、脚で蹴られて死んでしまうのがオチでしてよ~! 圭一(私服): 俺は誰の恋路も邪魔してねぇ! 魅音(私服): 大丈夫、圭ちゃんなら馬も乗れるって!ちょっと走って止まるだけだから! 詩音(私服): 車で言うならアクセルを時々かけつつ、危なくなったらブレーキを踏むだけですよ。 圭一(私服): 無茶言うな魅音!って言うか今の発言だと詩音、お前実は無免許運転の経験あるな?! レナ(私服): はぅ……大丈夫、圭一くん?剣劇の練習もあるよね。 一穂(私服): どうしても馬が必要なら、わ……私が、頑張……る? 圭一(私服): えっ?! 美雪(私服): あの一穂が、自ら進んで立候補……だと……?! 梨花(私服): 人間、自分より慌てている人を見ると冷静になる理論なのですよ。 羽入(私服): あぅあぅ! それではまるで一穂が心配して自分から乗馬を申し出るほど圭一が取り乱しているみたいなのですよ!! 圭一(私服): ぐふっ?! 沙都子(私服): 羽入さんの一言って、時々殺傷能力高いですわよね。 梨花(私服): みー……羽入の発言がらしくない時は、だいたいが疲れているのですよ。 羽入(私服): そ、そうでしょうか……? 魅音(私服): まぁ、みんなには色々手伝わせているからねぇ。 詩音(私服): しかたありませんね。確かにこれ以上圭ちゃんに無理を言うのは可哀想ですから、他の誰かに……。 圭一(私服): ……あぁもう!わかった! わかったから!やってやるよチクショウ!! 菜央(私服): 前原さんも疲れてるんじゃない?大丈夫かしら? 圭一(私服): 安心しろ、菜央ちゃん。男に二言はねぇ! 圭一(私服): ……二言はねぇが、さすがに当日ぶっつけ本番で馬に乗るのは周りに対しても危険過ぎないか? 詩音(私服): 大丈夫、いいものありますから。 沙都子(私服): いいもの? Part 02: 菜央(私服): これが、詩音さんの持ってきた乗馬練習用の木馬トレーニングマシン……? 沙都子(私服): ……。何かの拷問道具みたいですわね。 圭一(私服): 言うな! 俺も同じこと思ったんだからっ!そもそも、なんで沙都子がここにいるんだ? 沙都子(私服): ご挨拶ですわね。一穂さんと美雪さんが外出中だと聞いて、気になって様子を見に来てさしあげましたのよ? 圭一(私服): ……面白がって見に来ただけだろ? 菜央(私服): 拷問道具というより、なんだかおもちゃみたいね。これで本当に練習になるのかしら。 圭一(私服): なる……って言う前に、するしかないだろうな。 沙都子(私服): やる気満々ですわね。 圭一(私服): そりゃ、俺がダメだったら一穂ちゃんがやることになるからな。で、ダメだったら次はおそらくレナが言い出す。 沙都子(私服): どうしてレナさんなんですの? 菜央(私服): 消去法よ。今回のイベントは運営の関係上、魅音さんと詩音さんが乗るわけにはいかないでしょ? 菜央(私服): まぁ、あの2人はできるか否かで言えばたぶんなんとかやってのけそうだけど。 沙都子(私服): むしろあの姉妹にできないことなんてありますの? 圭一(私服): 2人なら無敵……ってヤツだな。 菜央(私服): 確認だけど、あたしたちは? 圭一(私服): 沙都子と菜央ちゃんと梨花ちゃん、羽入ちゃんは身長が低いから、いざって時に危険過ぎるだろ? 圭一(私服): あとは消去法で美雪ちゃんだが……。 菜央(私服): 美雪はもう別の役割を振られちゃってるものね。あの子って大人受けするから、接客向きだって。 沙都子(私服): 確かに接客関係ソツなつこなしますわね、美雪さんって。 圭一(私服): 既に一穂ちゃんもレナも、みんなそれぞれ役割を割り振られてるんだ。これ以上、無理をさせるわけにはいかねぇだろ? 圭一(私服): ……ってことはできるかどうかじゃねぇ。やるしかねぇんだ! 菜央(私服): ……って、格好よく啖呵切ってたのにね。 圭一(私服): はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ……!! 圭一(私服): ただ木馬トレーニングマシンに座っているだけのつもりで挑戦したんだが、乗馬ってこんなに体力がいるのか……?! 沙都子(私服): ……私、乗馬には詳しくありませんが圭一さんの練習風景を見て理解しましたわ。 沙都子(私服): 揺れる馬の上に座ってずーっとバランスを取るって、ほとんど綱渡りと同じではありませんの? 菜央(私服): 接地面はお尻だからさすがに綱より広いけど、バランスを取るのは共通してるのよね。 菜央(私服): しかもそれがずーっと動いてるんだもの。前原さんが振り落とされるのも当然だし、本番はもっと不規則な揺れが来るからきついわよ? 圭一(私服): はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ……!ま、マジかよ……?! 菜央(私服): ここで嘘ついても仕方ないじゃない。 圭一(私服): ちょ、ちょっと休憩……!うぉお、腰が揺れ続けてビリビリしびれて……! 沙都子(私服): 大丈夫ですの、圭一さん? はい、麦茶。 圭一(私服): あ、ありがとよ、沙都子……ん? 沙都子(私服): どうしましたの、急にピタリと固まって。 圭一(私服): いや、このお茶に何か入っているんじゃないかと……苦いやつとか、腹下すやつとか。 沙都子(私服): さすがにそこまでやりませんわ!私のことをなんだと思っているんですの?! 菜央(私服): 日頃の行いじゃない? 沙都子(私服): わ、私は普段からそんなことしていまして?! 沙都子(私服): ……。して、いますわね。 圭一(私服): わ、悪かったって。つい疲れてぽろっと言っちまっただけで! 圭一(私服): 本気でお前が何か入れたか、疑っているわけじゃねぇって! 菜央(私服): そういうことにしてあげましょう、沙都子。羽入だって、この前ぽろっと余計なことを言ってたじゃない。あれと同じよ。 沙都子(私服): …………。 圭一(私服): 沙都子、その麦茶くれるか? 沙都子(私服): ……新しく入れ直しますわ。私がずーっとグラス握っていたせいで、ちょっと温くなっていますし。 圭一(私服): いや、そのお茶がいいんだ。……悪かったよ、もう疑ったりしねぇから。 沙都子(私服): 仕方ありませんわね、まったく。はい、どうぞ。 圭一(私服): サンキュ!んぐんぐ……ぷはぁ! 生き返った! 菜央(私服): そうしてると、仲のいい兄妹みたいね。 沙都子(私服): ちょっと菜央さん、今のやりとりを見ていてよくそんなことを言えますわね? 菜央(私服): だって喧嘩ばっかりしてるけどすぐに仲直りするじゃない。 菜央(私服): そういう意味じゃ、園崎姉妹も同じだけど。いっつも喧嘩してるものね。 圭一(私服): 魅音と詩音が仲がいいってのは同意だな!わっはっは!! 菜央(私服): ……羨ましいわ。 沙都子(私服): あら。菜央さんにはレナさんはもちろん、美雪さんと一穂さんもいるではありませんの。 圭一(私服): そうだなー。レナは隙あらば菜央ちゃんを構っているし、可能ならすぐにでも妹にしそうな勢いだもんな。 圭一(私服): それに、美雪ちゃんと一穂ちゃんとは実の家族みたいに仲良く暮らしているんだろ? 菜央(私服): 美雪と一穂はお姉ちゃんって感じはしないわね。むしろあたしの方がお姉ちゃんしてるわ。2人とも頼りないんだもの。 菜央(私服): 美雪は適当だし、一穂はうっかりやだから。あたしがちゃんとしてないとダメなのよ、まったく。 沙都子(私服): 妹の方がしっかりしてる姉妹って感じですわね。 圭一(私服): 園崎姉妹も、魅音より詩音の方がしっかりしてるからな。案外、そういう家庭って多いんじゃねぇか? 圭一(私服): ……兄弟姉妹、ねぇ。 菜央(私服): どうしたの? 圭一(私服): いや、参考がてら時代劇を見ていたんだが、昔は兄弟姉妹ってのは今よりも結びつきが強かったらしいな。 圭一(私服): 寿命も今よりもっと短かったから、親が死んだ後は兄ちゃんや姉ちゃんが親代わりやっていたりとかさ。 圭一(私服): そして武士の長男だったら、家を守らなくちゃいけないんだよな。 圭一(私服): ……自分がそうだったらって想像すると、気が重いぜ。 菜央(私服): 園崎家は昔ながらの家らしいから昔の役割の重さとか今もあまり変わらなさそうね。あぁ、でも園崎は女系なんだっけ? 沙都子(私服): だとしても、遙か遠い昔の話……というわけではなさそうですわね。 圭一(私服): ……なぁ、沙都子。 沙都子(私服): ? なんですの、改まって。 圭一(私服): いや……なんでもない。なぁ、菜央ちゃん。 圭一(私服): 菜央ちゃんは、美雪ちゃんと一穂ちゃんを妹みたいだって言ったよな。 菜央(私服): ? えぇ、言ったわよ。それがどうしたの? 圭一(私服): 血は繋がらなくても、妹みたいだって思うのか? 菜央(私服): 実の妹じゃなくても……って思うことに血のつながりはいらないでしょう? 菜央(私服): まぁ、あるに越したことはないと思うけど。 沙都子(私服): あら、そうですの? 菜央(私服): だって、血の繋がった家族って特別じゃない? 沙都子(私服): 別に血は繋がらなくても家族は家族と言ってもいいのでは? 沙都子(私服): 逆に血が繋がっていても嫌な家族もいるのではありませんの? 菜央(私服): それはそうだけど……。 圭一(私服): つまり、大事なのは関係性ってことだな。 沙都子・菜央: わっ!きゃっ! 沙都子(私服): ちょ、ちょっとちょっと!乱暴に頭撫でないでくださいます?! 菜央(私服): 髪がぐちゃぐちゃに……! 圭一(私服): 今回の困難も、みんなで家族みたいに協力して頑張って乗り越えような! 圭一(私服): よっしゃ! 練習再開だ!! 菜央(私服): なによ。急にあたしたちのお兄ちゃんになったみたいな発言したかと思ったら急に練習再開って……。 沙都子(私服): ……まぁ、やる気が出たならいいではありませんの。 圭一(私服): やってやるぜえええええええええ!! Part 03: 圭一(時代劇): おおおおおおおおおおお!! 一穂(私服): わ、わぁ……走ってる! 美雪ちゃん!すごい、前原くん馬で走ってるよ! 美雪: 言わなくても見えてるって。いやー、すごいねアレ。 詩音(私服): まさかあの木馬トレーニングマシンの練習成果がここまでとは……やりますね。 羽入: あぅあぅ! 圭一はできる男なのです! 梨花: みー、カッコイイのですよ。にぱー☆ 魅音(私服): よっ、圭ちゃん日本一! 現代のサムライ! 圭一(時代劇): どうだ! やってやったぜ!! 圭一(時代劇): どう、どう……ふぅ、よいしょっと。 レナ(私服): 圭一くーん! 圭一(時代劇): レナ! みんな! 馬: ぶるるるる……。 作業着のおじさん: いやぁ、すごいね彼。今日が初めてとは思えないよ。 圭一(時代劇): おじさん、馬乗せてくれてありがとな! 作業着のおじさん: どういたしまして。 作業着のおじさん: この馬は大人しくて人に慣れてるからあまり心配はしてなかったけど……。 作業着のおじさん: キミが初心者って聞いていたから少し心配だったんだが、これなら明日のイベント?の時も、安心して預けられそうだよ。 魅音(私服): 頼んだよ、圭ちゃん。この子はおじさんの家族だからね。 圭一(時代劇): あぁ、もちろんだ。 馬: ぶるるるる……。 圭一(時代劇): お前も乗せてくれてありがとな。明日もよろしく頼むぜ! 沙都子(私服): みなさーん! お茶がはいりましたわよ~! 菜央(時代劇): 明日の練習も大事だけど、少し休憩にしましょう。 一穂(私服): うん! 剣劇の練習頑張ったからお腹空いたねぇ。 魅音(私服): 一穂がお腹空いていない時なんて、私ゃ見た記憶ないなぁ。くっくっくっ……! 圭一(時代劇): で、どうだった沙都子、菜央ちゃん。ちゃんと見てくれていたか? 沙都子(私服): えぇ、もちろん。菜央さんとお茶の準備をしながら横目で見ておりましたわ。 沙都子(私服): なかなか形になっていましたわね。多少は褒めてあげなくもありませんわよ? 菜央(時代劇): 素直じゃないわね。あんなに目を輝かせて馬に乗った前原さんのことを見てたのに。 沙都子(私服): な、菜央さん?! 菜央(時代劇): いいじゃない、見事な乗馬だったんだもの。さ、前原さんもあっちでみんなと休憩しましょう? 圭一(時代劇): あ、あぁ……それなんだが。ちょっといいか? 沙都子(私服): なんですの、そんなところで突っ立って。 圭一(時代劇): そろそろ、限界なんだ。 菜央(時代劇): なにが? 圭一(時代劇): ……尻の皮が。 沙都子(私服): お尻の、皮? 菜央(時代劇): あ、あぁ……スレるものね。 沙都子(私服): ? いったいどう言うことですの? 菜央(時代劇): 沙都子、服の上からでもずーっと強い力で擦られ続けたら皮膚が削れてヒリヒリして痛いわよね? 沙都子(私服): あ、なるほど……乗馬でずっとお尻が擦られ続けてお尻の皮が剥けてしまったんですの? 圭一(時代劇): お、大きな声で言わないでくれ!! 沙都子(私服): ……仕方ありませんわね。家から塗り薬かなにか持ってきてあげますわ。 圭一(時代劇): み、みんなには内緒で頼むぜ? 菜央(時代劇): ……はぁ。昨日の俺はみんなのにーにーだ、みたいに格好いいこと言いだして見事な乗馬を見せたと思ったら。 菜央(時代劇): お尻の皮で涙目って。かっこつかないわね……センスがないわ。 圭一(時代劇): う、うるせー! 沙都子(私服): お尻の皮はセンスではどうこうできませんわ。猛特訓に免じての武士の情け、皆さんには黙っていてさしあげましてよ。 菜央(時代劇): あら、今日の沙都子はずいぶん前原さんに優しいわね。 沙都子(私服): 向こうがいいにーにーぶるなら、こちらもいい妹ぶってさしあげようと思いまして。 圭一(時代劇): いてて、ひーっ……ヒリヒリする……! 菜央(時代劇): そのお尻、今日明日でなんとかなるの? 圭一(時代劇): 皮はなんとかならない……が、明日の本番までは耐えてやるぜ! 沙都子(私服): 男は忍耐、ですわよ圭一さん。 沙都子(私服): がんばってくださいませ、にーにー。 圭一(時代劇): …………。 沙都子(私服): 圭一さん? 圭一(時代劇): ……あぁ、もちろんだ。にーにーに任せろ!!