Part 01: 魅音(冬服): はーい、みんなお疲れ~!結果的には空振りもいいところの無駄足に終わったけど、まぁ山の害獣駆除ができたということで良しとしようっ! レナ(冬服): あははは、そうだね。願いが叶う温泉が枯れていたのはちょっと残念だけど、みんなで楽しめたから行ってよかったかな……かなっ♪ 詩音(冬服): あのまま放っておいたら、この温泉街にまで被害が出ていた可能性だってあったわけですしね。 詩音(冬服): お姉を通じて町会に報告したら、お手柄なので今夜はここで宿泊して、おいしいものをたくさん召し上がっていってくださいとのことでした。 詩音(冬服): というわけなのでじゃんじゃん食べて飲んで、温泉で存分にあったまっていきましょう~! 沙都子(冬服): をーっほっほっほっ!まぁ温泉をご褒美に山狩りのお手伝いをしたと思えば、十分すぎるお駄賃ですわ~! 沙都子(冬服): そうですわよね、梨花……って、梨花? 梨花(冬服): みー……みみ……。 羽入(冬服): あ、あぅあぅ……梨花が三角座りの格好で遠い目をして、呆然とたそがれているのですよ~。 美雪(冬服): なんか、意外だね……。そこまで落ち込むほどに叶えたい願いがあったの? 菜央(冬服): 物に頼るなんて、らしくないわね。梨花だったら気持ちと頑張りで、どんなことでも実現してやるってガッツで臨みそうなのに。 梨花(冬服): 気持ちと頑張りだけでは、どうしようもないこともあったりするのですよ……みー……。 圭一(冬服): ま、まぁ……元気出せよ、梨花ちゃん。神頼みとかもそうだけど、他力本願ってのは運だのタイミングだのに左右されちまうもんだしさ。 圭一(冬服): やっぱり本当に叶えたい願いは、自分の力でなんとかするしかないんだなって今回のことで思い知らされたぜ。 一穂(冬服): 前原くん……。 菜央(冬服): ……前原さんの叶えたかった願いって、温泉に向かう途中で言ってた「アレ」のこと?確か、ハーレムを築きたい……だったかしら。 美雪(冬服): 前原くん……他人の願望に口を挟むのは野暮だけど、それを私たち女子の前で公言するのはどうかと思うよ。一穂なんてほら、ドン引きの顔してるしさ。 一穂(冬服): えっ? そ、そんなことはないよ。欲望に対して正直で、前原くんらしいというか……。 沙都子(冬服): ……あの、一穂さん。その感想はどう好意的に聞いてみたとしても、圭一さんのフォローにはなっておりませんわ。 一穂(冬服): ご、ごめんなさい……。 圭一(冬服): い……いや、いいぜ。欲望に忠実なのは俺の持ち味だしな……って違う!叶えたかった夢は、そんなのじゃねぇ! 圭一(冬服): と、とにかくだ……! 結局のところ、夢の実現は自分で努力をしてこそ意味があるっていうのが今回の神様からのメッセージだったんじゃないか、ってさ。 梨花(冬服): みー……努力、ですか……。 梨花(冬服): わかりましたのです、圭一。まだ他の手段もあるはずなので、ボクも諦めずにしっかりと努力してみたいと思うのですよ。 圭一(冬服): おぅ! その意気だぜ、梨花ちゃん! 梨花(冬服): ……なのですが、その前に。そんな試練を与えやがった神様に一言文句と然るべき制裁を加えてあげるのですよ。……羽入? 羽入(冬服): あ、あぅあぅあぅっ?な、なんで僕は首根っこを掴まれているのですっ?そしてずるずると引きずられているのですか~?! 梨花(冬服): ではみんな、ボクは神様との「対話」があるのでちょっとだけ失礼するのですよ。ぺこり。 美雪(冬服): お、おぅ……って、行っちゃった。あの2人、放っておいてもいいのかなぁ……? 魅音(冬服): まぁ、大丈夫でしょ。顔には出していなかったけど山歩きの疲れが出て、部屋で休んでくるだけかもしれないしさ。 レナ(冬服): はぅ……そうだね。今回は梨花ちゃん、温泉探しと『ツクヤミ』退治の両方で頑張っていたから少し息抜きしたいんじゃないかな、かな……? 一穂(冬服): う、うん……。 一穂(冬服): (そのわりに梨花ちゃん、目が殺気立ってたように見えたんだけど……私の気のせい?) 詩音(冬服): それはそうと、圭ちゃん。温泉の力で叶えたかった夢って、何だったんです?ハーレム以外ならモテモテになりたかった、とか? 圭一(冬服): おいおい、それってほぼ同じ内容じゃねぇか……。お前らは俺のことを、何だと思っているんだ? 詩音(冬服): くすくす……そんなにお望みでしたら、皆さんの正直な感想をここで発表してみましょうか?明日から家に引きこもりたくなるかもですが……。 圭一(冬服): い……いや、いい! なんか怖い!そういうのは永遠のヒミツにしておいてくれっ! 美雪(冬服): ……前原くんを見てると時々、自己評価が低いんじゃないかって思うことがあるよね。普段は自信満々で、豪快な感じなのにさ。 レナ(冬服): 圭一くんって実は、照れ屋さんだから。でも、そんなところがとってもかぁいくて素敵なんだよ……ねっ、魅ぃちゃん? 魅音(冬服): は……はぁっ?ななな、なんで私に話を振ってくるのさー? 詩音(冬服): そりゃ、この流れでお姉に意見を求めないほうが逆に失礼ですからね。……で、そのあたり率直にどうです? 魅音(冬服): えっ? いや、まぁその……ほら、あれだよ……って、わかるでしょ? 美雪(冬服): いや、わかんないって。せっかくだからはっきり言っちゃいなよ。ここだけの話にしておいてあげるからさ。 魅音(冬服): いっ……言えるわけないじゃんか!もし圭ちゃんに聞こえでもしたら、どうすんのさー? 圭一(冬服): ん……? 今、俺のことを呼んだか? 魅音(冬服): よ、呼んでないって!圭ちゃんはあっちに行って! しっしっ! 圭一(冬服): なんだよ、虫みたいに追い払いやがって……。くそー、こうなったらヤケ食いしてやるぜー! 一穂(冬服): …………。 一穂(冬服): 前原くんの叶えたかった夢、か……。 Part 02: 一穂(冬服): はぁ……夜になったら、すっかり冷え込んできたなぁ。 一穂(冬服): えっと、前原くんはどこに……あっ、いた。 圭一(冬服): おぅ、一穂ちゃんじゃないか。どうしたんだ、こんなところに? 一穂(冬服): 気がついたら、姿が見えなくなってたから。どこに行ったのかなって、それで……。 圭一(冬服): そっか。心配かけて、悪ぃな。ちょいと夜風にあたって、頭を冷やしたかったのさ。 一穂(冬服): えっと……みんなが言ってたこと、あんまり気にしないでね。さすがにちょっと、からかいすぎっていうか……。 圭一(冬服): あっはっはっはっ、大丈夫だって。俺だってそれがわからねぇほど、あいつらとは浅い付き合いじゃないんだしさ。 圭一(冬服): むしろまた、あんなふうにバカ話をしたりいじられたりするのが……なんか、すげぇ嬉しいんだ。一時とはいえ、仲違いしていたことを思ったら……さ。 一穂(冬服): 前原くん……。 圭一(冬服): ……あ! 断わっておくが、俺はMとかそういう意味で言ったんじゃないからな!そのあたりは誤解がないよう、よろしく頼むぜ。 一穂(冬服): あははは……うん、わかった。 一穂(冬服): ……。あの……前原くん。 圭一(冬服): なんだ、一穂ちゃん? 一穂(冬服): 前原くんが言ってた、叶えたい願い……手に入れたい力って実際は何だったの? 圭一(冬服): …………。 圭一(冬服): ……逆に聞くけど、一穂ちゃん。 一穂(冬服): えっ……? 圭一(冬服): もしもの話だが……世界全体の時間が止まった瞬間に、自分の心臓めがけて銃弾が飛んでくるのが見えて……。 圭一(冬服): 時間が再び動けば、即座に死ぬ。それが意識でわかっているのに、身体がピクリともしねぇって状況になったら……どうする? 一穂(冬服): ど、どうするって……。そんな状況はすぐには想像できないから、うまく答えられないけど……。 一穂(冬服): ……身体が動かないと、どうしようもできないよね。だったらせめて、少しでも痛くないように身構えて覚悟するしかない……のかな……。 圭一(冬服): ……あぁ、俺も「あの時」はそう考えていた。俺にできることはもう何もねぇ、だから後はみんなを信頼して、任せようってな。 一穂(冬服): 「あの時」……? 圭一(冬服): 以前にも話したことがある、別の「夢」の話さ。みんなを守って、あと一歩のところで逃げ切れると思った瞬間……俺が、やられちまった。 圭一(冬服): 俺ひとりが犠牲になるだけで、その後他のみんなが無事だったらまぁ大成功って言ってもいいと思うが……あの状況だと、さすがに無理だろうな。 圭一(冬服): 俺が脱落したせいで、みんなが幸せをつかめなかった。自分がくたばったことよりも、その事実を認める方がずっと痛くて……辛くて……。 一穂(冬服): …………。 圭一(冬服): だから……今になって、思うようになったんだ。 圭一(冬服): せっかく用意された、奇跡の時間……俺はあの時、何が何でも銃弾を避けて生き残る手段を見つけるべきだった。 圭一(冬服): 無駄な悪あがきかも知れねぇ……それに見つけたところで結局役に立たないか、失敗して結果は同じだった可能性もある。 圭一(冬服): だけど、挑まなければ成功の確率はどこまで言ってもゼロのままだ。だったらコンマの差でも、やることをやる。 圭一(冬服): それが本当の努力ってやつじゃないのか、ってな……。 一穂(冬服): ……前原くん。 圭一(冬服): 諦めた瞬間に、可能性はゼロになっちまうが……どんな状況にでも活路は残されていると思う。 圭一(冬服): だからさ……一穂ちゃん。どんな時でも、絶望するんじゃねぇぞ。 一穂(冬服): えっ……? 圭一(冬服): 一穂ちゃんも、その奇跡ってやつに導かれてこの#p雛見沢#sひなみざわ#rに来たんだろ?……だったらきっと、君にしかできないことがあると思う。 圭一(冬服): 今は答えも、その解き方もわからないかもだけど……諦めなければ必ず、道は開かれる。少なくとも俺は、そう信じているぜ。 一穂(冬服): …………。 一穂(冬服): ……前原くん。あなたは、私たち……ううん、私のことで何か知ってることがあるの? 圭一(冬服): いや、悪いが知らねぇ。だからいつか、教えてくれる機会があったらじっくり色々と聞いてみたいと思っているよ。 圭一(冬服): まぁ、俺としてはこっそり一穂ちゃんのスリーサイズを教えてくれたりしたら、飛び上がって喜ぶところだけどな! 一穂(冬服): あ……別にいいよ。確か上から、えっと……。 圭一(冬服): のわぁっ? ま、待て待て待て、しばらく待て!場をなごませるためのちょっとした冗談なんだから、本気に捉えないでくれって! 一穂(冬服): えっ……そ、そうなの? 圭一(冬服): 当然じゃねぇか! だいたい、こんな話をレナや魅音たちにもし聞かれでもしたら、絶対あいつら勘違いを――? レナ(冬服): ……圭一くん。レナたちが聞いたら何を勘違いするのかな……かな? 圭一(冬服): れ、れれれ、レナっ? いや俺たちは別に、おかしなことなんて一切、話しては……! 魅音(冬服): へー……そうかい。ちょっと離れていたからはっきりとは聞こえなかったんだけど……。 魅音(冬服): おじさんの耳には「一穂のスリーサイズ」とか、聞き捨てならないセクハラワードが届いたように感じたんだけど……ねぇぇぇえぇっ……?! 圭一(冬服): い、いいいい、いや違う違う、それは誤解だ!俺は一穂ちゃんを元気づけようと、この場をあっためるような軽いジョークを……?! 沙都子(冬服): ……たとえ仲間同士だとしても、女性にセクハラを働いて熱くなるのは怒りと殺意の感情でしてよ。 梨花(冬服): みー……圭一、見損なったのですよ。 詩音(冬服): ……圭ちゃん。これはちょっと、さすがに聞き捨てにするにはギルティな意味合いが強すぎますねぇ……? 圭一(冬服): お、おおおっ、おいおいおいっ?なんだこれ、いつの間に俺を囲んで四面楚歌っ? 圭一(冬服): いや、ここって俺の見せ場のはずだよなっ?カッコいい台詞を決めて印象深いシーンで締めるところじゃなかったのか?! 美雪(冬服): だ、そうだけど……全員を代表して菜央、一言よろしく。 菜央(冬服): ――有罪ね。 圭一(冬服): ちょ、ちょっとまってくれお前らっ!俺の話を聞いて……ぎゃ、ぎゃああぁぁぁああっっ?! 一穂(冬服): あ、あのっ……?前原くんはほんとに、私を励まそうと、して……! 羽入(冬服): ……あぅあぅ、すでに時遅しなのですよ。 Part 03: 圭一(温泉): はぁ……生き返ったぁ。さっきはほんと、死ぬかと思ったぜ。 レナ(冬服): は、はぅ……ごめんね、圭一くん。調子に乗ってレナたち、やりすぎちゃったかな……かな。 魅音(冬服): まぁ、誰にでも聞き間違い、解釈違いはあるもんだね。今後も誤解を招くような発言は控えていこう、うん。 圭一(温泉): ……確かにその通りだとは思うが、お前にそう言われると納得がいかねぇな。 圭一(温泉): にしたって、問答無用で墨汁池に沈めるかフツー?あれって誰が用意したんだ、やっぱり沙都子か?! 沙都子(冬服): をーっほっほっほっ、その通りでしてよ!あれだけの量の墨汁を集めるのはなかなか大変で、結構骨が折れましたわぁ~♪ 沙都子(冬服): みー。温泉宿を忍者屋敷にしようという企画の時に、罰ゲームのトラップとして用意したものなのですよ。 羽入(冬服): ……あぅあぅ、落ちた人の阿鼻叫喚っぷりが目に浮かぶようなのですよー。 沙都子(冬服): 罰ゲームとなれば、ビジュアルも大事ですしね!この調子で小麦粉池、パン粉池も作って、驚きと笑いが両立のトラップを作ってまいりましてよ~! 菜央(冬服): ……トンカツかコロッケのレシピみたいね。なんかちょっと、おいしそうかも……かも。 沙都子(冬服): あらっ、それもナイスアイディアですわね~!となると最後は、煮えたぎった油風呂なんていかがかしら~♪ 圭一(温泉): 俺は石川五右衛門かっ?つーか、そんな中に人間を放り込んだらからっと揚がる前にあの世行きだろうが! 美雪(冬服): まぁまぁ、温泉に入って綺麗になったんだから。ほら前原くん、まずは一献。 圭一(温泉): いや、俺は酒なんて飲めるわけが……おっ?こいつはうめぇな、なんて飲み物なんだ? 菜央(冬服): レモン果汁とはちみつをお湯で割ったものよ。冬場だとあったまるし、栄養価が高いんだから。 詩音(冬服): レモネード自体は喫茶店で見かけたことがありましたが、ホットも結構いけるんですねー。いいことを教えてもらいました、メモメモっと。 圭一(温泉): 相変わらず抜け目がねぇな、詩音……。でも、これはいいぜ。もう1杯もらってもいいか? 菜央(冬服): もちろん。ちょっと待っててね。 一穂(冬服): あの……前原くん。 圭一(温泉): おっ、一穂ちゃんか。さっきはとんだ騒ぎに巻き込んじまって、悪かったな。 一穂(冬服): ううん。というか、巻き込まれたのはむしろ前原くんの方だと思うから……ごめんなさい。 圭一(温泉): ははっ、いいって。さっきも言ったように、こういうド派手な大騒ぎで一緒に盛り上がるほうが、俺は歓迎なんだからさ。 一穂(冬服): ……前原くんは、強いんだね。そういうところ、尊敬するよ。 圭一(温泉): …………。 圭一(温泉): 一穂ちゃんには申し訳ないが……俺は強くねぇ。そうありたいとは、ずっと願っているけどな。 圭一(温泉): だからこそ、同じようにあがいているやつがいたらそいつに力を貸してやりたくなっちまうんだよ。 一穂(冬服): ……そっか。 一穂(冬服): 前原くん……私、頑張ってみるね。あなたの期待に、少しでも応えられるように……。 圭一(温泉): おぅ! 応援しているぜ、一穂ちゃん! 美雪(冬服): んー、なになに?2人で何の話をしてるのさ? 魅音(冬服): 圭ちゃん……?また変なことを一穂と話しているようだったら、もう一回罰ゲームを味わってもらうからねー! 圭一(温泉): し、してねぇって!俺は一穂ちゃんと、ちょっとした世間話をだな……。 一穂(冬服): …………。 一穂(冬服): (ありがとう……前原くん。色々と励ましてくれて……) 一穂(冬服): (私……やってみるね。美雪ちゃんや菜央ちゃん、他のみんなのために今の私ができることを、精一杯……)