Part 01: 詩音(私服): お姉って、魔法が使えたらどうです? 魅音(私服): はい……? 詩音(私服): ですから、魔法が使えたら何をしますって話です。たとえば、恋の魔法とか使っちゃいます? 詩音(私服): あー、でも恋の魔法で相手に好きになってもらっても魔法が解けたら速攻で冷められたりするんですかね。 詩音(私服): それは嫌だなぁ……あ、でも魔法が解けなければいいのか。もしくは死ぬまで恋の魔法をかけ直し続けるとかですかね? 詩音(私服): それって、かけ直すたびに虚しくなったりしないんですかね……。 魅音(私服): ねぇ、さっきからどうしたのさ詩音。変な本でも読んだ?それって#p興宮#sおきのみや#rの学校で流行っているの? 詩音(私服): 単なるたとえ話ですよ。最近千雨さんと、そういう話になったので。 魅音(私服): どんな話? 詩音(私服): えっと、千雨さんが魔法の本がいっぱいある図書館? みたいな場所?……に、迷い込んだって話です。 詩音(私服): 終わりが見えないくらい、それはもう広い図書館だそうで。 魅音(私服): なにそれ。いつ迷い込んだのさ。 詩音(私服): 夢の中で、だそうですよ。で、そこでお姉も司書……かどうかは千雨さんもよくわからないけど、働いていたらしいです。 魅音(私服): へー……。 詩音(私服): なんかピンと来ませんけどね、お姉が司書って。 魅音(私服): …………。 詩音(私服): なんですか、そのしらーっとした態度は。 魅音(私服): いや、なんか最近あんたって千雨とよく話しているなーって思って。 魅音(私服): あんまり接点ないのに、わざわざ話しかけに行っているみたいだしさ。 詩音(私服): 私、結構千雨さんは気に入っているんです。ちょっと親近感が湧く性格と言いますか。 魅音(私服): …………。 詩音(私服): お姉は、千雨さんのことって嫌いですか? 魅音(私服): いや、別に嫌いじゃないよ?けどさ、なんというか……。 詩音(私服): 笑い合っていても、時々壁があるみたいに感じる……なんて言いたいんですか? 魅音(私服): ……わかっているじゃん。 詩音(私服): それくらいわかるに決まっているじゃないですか。 魅音(私服): 私たちが双子だから? 詩音(私服): ……あの。ちょっとさっきから奥歯に物が挟まったような言い方をしていますけど、お姉は結局何が言いたいんです? 魅音(私服): …………。 魅音(私服): あんたが最近何考えているかわからなくなってきたのに、あんたは私のことわかっているみたいなこと言うんだね。 詩音(私服): そりゃ……私とお姉じゃ置かれた状況が違いますから。 魅音(私服): なにその言い方。じゃあどういうことが違うか説明してよ。 詩音(私服): だって……。 梨花(私服): みー……魅ぃ、いますですか?お醤油が切れたので、もらいにきたのですが……。 魅音&詩音: お姉のばかーっ!詩音のばかーっ! 梨花(私服): ……みー……? 詩音(私服): ふんっ! 梨花(私服): 今、勝手口の方から出て行ったのは、詩ぃ……? 梨花(私服): お邪魔しますなのです。 魅音(私服): いらっしゃい梨花ちゃん!あー! もーもーもーっ! 梨花(私服): みぃ……どうしたのですか? 魅音(私服): ちょっと聞いてよ梨花ちゃん! 詩音がさぁ!私に話しても理解できない、って話すのを拒否したんだよっ! 梨花(私服): ……詩ぃが何の話をするのを拒否したのですか? 魅音(私服): わかんないんだよ、それすらもっ! 魅音(私服): 何年双子やってきたんだっつー話?!話したらわかるに決まっているじゃんっ! 魅音(私服): なのに話しても無駄だ、みたいなあの態度なんなの~っ?! 魅音(私服): しかもさ、私には話せないのに千雨には話しているっぽいのがまた腹立つーっ!! 梨花(私服): ……千雨に? 魅音(私服): そう、千雨に!誰に話してもわからないって態度なら、まだわからなくもないけど……。 魅音(私服): 千雨に話せて私に話せないって何?! 梨花(私服): どうどう、落ち着いてくださいなのです。 梨花(私服): お台所借りていいですか?お茶を淹れてくるのです。 魅音(私服): いや、私が……あーっ! もーっ! 詩音の馬鹿ーっ! 梨花(私服): ここはボクに任せてほしいのですよ。お茶を淹れてくる間に落ち着いてくださいなのです。 魅音(私服): でも……。 梨花(私服): 魅ぃと詩ぃがケンカするのはいつものことですが、今回のケンカは……上手く言えませんが、あまり長引かせるのはよくないと思うのです。 魅音(私服): ……梨花ちゃんはそう思うの? 梨花(私服): はいなのです。……だから魅ぃと詩ぃが早く仲直りしてくれると、ボクが嬉しいのです。 梨花(私服): だから、ゆっくり話を聞かせてもらうためにお茶を淹れてくるのです。 魅音(私服): あ、お茶っ葉の場所とか……。 梨花(私服): 全部わかっているのですよ。だから、魅ぃはゆっくりしててくださいなのです。 魅音(私服): ありがとう……。 魅音(私服): (あれ、でも……) 魅音(私服): (私、梨花ちゃんにいつお茶っ葉の置き場とか教えたっけ……?) Part 02: #p北条沙都子#sほうじょうさとこ#r?: ちょっと……ちょっと、しっかりしてくださいまし! 魅音(司書): え……? #p北条沙都子#sほうじょうさとこ#r?: さっきからずっと呼んでいるではありませんの!無視するなんて、どういうおつもりですの? 魅音(司書): どうしたの、沙都子。なんか不思議な格好をしているみたいだけど……。 #p北条沙都子#sほうじょうさとこ#r?: 不思議って……この図書館での正装ではありませんの。 魅音(司書): 図書館……。 #p北条沙都子#sほうじょうさとこ#r?: 本当にどうしましたの?侵入者を取り逃した叱責を受けたせいで記憶が飛んでしまいましたの? 魅音(司書): 侵入者……? #p北条沙都子#sほうじょうさとこ#r?: まぁ、いいですわ。はいこちら、お願い致しますわね。 魅音(司書): こちらって……この本の山2つはなに? #p北条沙都子#sほうじょうさとこ#r?: なにって写本作業の元と写しですわ。……本当に記憶がおかしくなっていますのね。 #p北条沙都子#sほうじょうさとこ#r?: まぁ、仕事してくれるならそれでかまいませんわ。いつも通り、こちらの本の内容をこっちの白紙の本に書き写してくださいまし。 魅音(司書): 全部? #p北条沙都子#sほうじょうさとこ#r?: えぇ、全部ですわ。終わるまで休憩はありませんことよ!あぁ、忙しい忙しい! 魅音(司書): あ、ちょっ……! 魅音(司書): ……今の、沙都子……だよね? 魅音(司書): (それにしては、なんかいつもと違ったような……) 魅音(司書): って、そもそもここはどこなんだろ。図書館みたいだけど#p興宮#sおきのみや#rの図書館はこんなにおしゃれじゃないし……。 魅音(司書): ……そもそもこれ、なんの本なの? 魅音(司書): へぇー……。 魅音(司書): (まさかとは思ったけど、この本って……) 魅音(司書): (詩音が主役の学園モノ小説じゃん!) 魅音(司書): (ルチーアで事件があって、詩音が解決のために動き出すけど次々と調査が妨害されて、その間にまた新たな犠牲が出て……) 魅音(司書): えぇ、なにこれ……結構面白いかも……。ジャンルはなんだろう……ジュブナイル系? 魅音(司書): (これ、写本じゃなくて普通に読んじゃだめかな……?) 魅音(司書): (いや、だめだ。多分最後まで読み終わらないと写本作業に戻れなくなる……) 魅音(司書): (でも……) 魅音(司書): 結構、悪くないんだよねぇ。 魅音(司書): (詩音の相棒……とまではいかないけど、協力者? の後輩が結構いい味を出してる) 魅音(司書): なんかちょっと好きになれそう…笑い方は変だけど。 魅音(司書): (でもこの後輩の口癖のゆぷぃって、なんだろう……本を最後まで読んだら意味わかるの?) 魅音(司書): (あー、早く最後まで読み切りたいっ!けどラストの締め方次第だと、次の本も続けて読みたくなるからな~) 魅音(司書): 適当に取った一冊がこんなに楽しいなら、他の本も面白いんだろうけど……けど…。 魅音(司書): (この小説だと、詩音は3年生になるまでルチーアにいたことになる……) 魅音(司書): (でも確か詩音は、2年生になった年の春先にルチーアを脱出して#p雛見沢#sひなみざわ#rに戻ってきたから……) 魅音(司書): 時系列が合わないんだよねぇ。 魅音(司書): (いやいや、これはただの小説だし?細かいことは別にいいかな) 魅音(司書): でもこの小説の中の詩音かっこいいじゃん。行動力あるから、主役向きなのかなー……。 タッタッタッタッ……。 魅音(司書): ん? 魅音(司書): (あれ、今梨花ちゃんみたいな子が走っていったような……) 魅音(司書): 梨花ちゃんー? タッタッタッタッ……。 魅音(司書): あれ、行っちゃった……。 魅音(司書): (梨花ちゃんじゃなかった?いや、でもちらっと見えた長い髪は梨花ちゃんだよね?) 魅音(司書): (追いかける? いや、でもこの本を最後まで書き写してからに……) 魅音(司書): …………。 魅音(司書): (いやいや、多分書き写したら次の本が気になってちょっと読むつもりが絶対ガッツリ読んじゃうって!) 魅音(司書): ちょっと休憩がてら、見に行こうかな……って。 魅音(司書): 私ってば、誰に言い訳してるんだろ……。 魅音(司書): 梨花ちゃーん? おーい、梨花ちゃーん? 魅音(司書): おかしいな……確かに足音的にこっちに来たはずなんだけど。 魅音(司書): (にしても、この図書館広すぎ……結構歩いたはずなのに、まだ続いてる) ――終わりが見えないくらい、それはもう広い図書館だそうで。 魅音(司書): (……まさかここって、詩音が言ってた千雨が迷い込んだ魔法図書館?) 魅音(司書): いやいや、そんなわけないって!あれはただの千雨の夢だし……。 魅音(司書): …………。 魅音(司書): (けど、なんで千雨はそんな夢の話を詩音にしたんだろ。雑談するほど仲良くなったってことにしても、なんかひっかかるような……) 魅音(司書): でもさっき沙都子みたいだけど沙都子とはちょっと違う子が、私も図書館で働いているみたいなことを言っていたし……。 魅音(司書): (まさか、私も千雨と同じ夢を見ている?そこで詩音が主役の小説を読んだから、詩音に夢の話をした、とか……) 魅音(司書): なんか、ピンと来ないような……。 タッタッタッタッ……。 魅音(司書): あ、梨花ちゃん? 魅音(司書): (足音近い……この近くにいる。となると、こっちから先回りして……!) ダダダダダッ!!! 魅音(司書): (図書館で走るのは禁止されているけど、夢の中だし。このくらいは自由でいいよねっ!) 魅音(司書): 梨花ちゃん、みーつけたっ! ――帰って。 魅音(司書): えっ? Part 03: 梨花(私服): 魅音……? 魅音? 魅音(私服): え……う? 梨花(私服): 大丈夫ですか? 魅音(私服): あれ、梨花ちゃん……着替えた? 梨花(私服): みぃ……どうしたのですか?ボクはお着替えなんてしていないのです。 魅音(私服): え? あ……もしかして私、寝てた? 梨花(私服): 寝ていました。 魅音(私服): あぁ、ごめん……なんか怒りが落ち着いたら一気に眠くなってつい居眠りしていたみたい。 梨花(私服): みー……なんだか寝ながらブツブツと呟いていましたが、大丈夫なのですか? 魅音(私服): 私……何か言っていた? 梨花(私服): 小さすぎて聞き取れなかったのですよ……。 魅音(私服): そっか……いや、大丈夫。なんかちょっと変な夢見ただけだから。 梨花(私服): 夢、ですか。どんな夢ですか? 魅音(私服): うーんそれが、わけわからない夢でさ……。 梨花(私服): みー……言えない夢なのですか? 魅音(私服): …………。 梨花(私服): ……魅ぃ? 魅音(私服): あ、いや……私、今さぁ、わけわからない夢だったで話を終わらせようとしたよね。 梨花(私服): ? はい、していたのです。 魅音(私服): せっかく梨花ちゃんがどんな夢だったかって聞いてくれたのに……私、ちゃんと説明せずに終わらせようとしてた。 魅音(私服): 詩音と同じこと、しようとしてた……。 梨花(私服): それは……詩ぃにされてケンカになった原因と同じことを魅ぃもボクにしようとしていたということですか? 魅音(私服): うん……。 梨花(私服): 魅ぃに聞きたいのですが、話してもらえない理由はボクに原因があるからですか? 魅音(私服): いやいや! 梨花ちゃんは何も悪くないよ! 魅音(私服): ただ……自分でも見たものをよくわかっていないせいかな。 魅音(私服): 説明してもわかってもらえないだろうって。そう、思っちゃったんだよ……。 梨花(私服): つまり、説明する難しさを前に説明することを諦めてしまったのですか? 魅音(私服): それは……うん、そうだね。私……今、諦めようとしていた。 梨花(私服): 落ち込まないでくださいなのです。あやふやな夢の話を一方的に聞かせて困らせたくない、と気を遣ってくれたのはわかっているのです。 梨花(私服): それとも……わかってもらえないことは、悲しいから。だから、そんな悲しい思いをするくらいなら説明も何もしないほうがいいと。 梨花(私服): 魅ぃは、そう思ってしまったのですか? 魅音(私服): ……詩音も。 梨花(私服): みー……? 魅音(私服): 詩音も、同じだったのかな。私に話して、わかってもらえないって決めつけてたんじゃなくて……。 魅音(私服): もしわかってもらえなかったら……悲しいから。だから私に何も言わなかったのかな……? 梨花(私服): ボクは、きっとそうだと思うのです。だって……。 梨花(私服): 魅ぃと詩ぃは、双子なのですから。考えていることは、似ているのですよ。 魅音(私服): ……ありがと、梨花ちゃん。せっかくお茶淹れてくれたところ悪いんだけど……。 梨花(私服): 詩ぃに会いに行くのですね。でも、行き先に心当たりあるのですか? 魅音(私服): わかんない。しらみつぶしに探して……。 魅音(私服): なんか今、勝手口の方から音しなかった?まさか……。 梨花(私服): きっと、詩ぃが戻って来たのですよ。 梨花(私服): ……ボクは帰るのです。お醤油、勝手にもらってしまってごめんなさいなのですよ。 魅音(私服): いや、お醤油はいいけど……なんで梨花ちゃんが帰るのさ。 梨花(私服): 詩ぃと魅ぃの2人で話したほうが、今回はいいと思ったからなのです。 梨花(私服): だから、全部解決したらその時は教えて欲しいのですよ。 魅音(私服): ……解決すると思う? 梨花(私服): それはボクには断言できないのです……残念ですが。 魅音(私服): そう……そうだね。解決できるかどうかは、私次第だよね。 魅音(私服): 詩音が何隠しているのかは知らないけど、今の魅音になら話してもいいかって。そう思ってもらえるように頑張ってみるよ。 魅音(私服): ……ありがと、梨花ちゃん。 梨花(私服): どういたしましてなのです。 梨花(私服): ……帰る前に聞きたいのですが、魅ぃが見た夢は、悪い夢ですか? 魅音(私服): 悪い夢……ではなかったかな?夢の中で、詩音が活躍してる小説を写本って言うのかな、ずっと書き写してて……。 魅音(私服): そこで梨花ちゃんみたいな子を見つけて追いかけたんだ。けど、見つけたと思ったら…。 梨花(私服): 思ったら? 魅音(私服): ごめん……そこから先の記憶が、ちょっと。なんかすごくモヤモヤするんだけど。 梨花(私服): 悪い夢でなければいいのです。 梨花(私服): それに……詩ぃならそのモヤモヤした気持ちをそのまま伝えれば、きっと受け止めてくれると思うのですよ。 魅音(私服): そっか……いや、そうかな?笑い飛ばされそうな気もするけど。 魅音(私服): まぁ、それはそれでいっか!とりあえず話してみるよ! 梨花(私服): ふぁいと、おー☆ なのです。 魅音(私服): ふぁいと、おーっ!