Part 01: レナ(私服): はぅ……レナに頼みたいお手伝いって、あのカーレース大会の? 詩音(私服): えぇ、お姉が先日話していたあの#p雛見沢#sひなみざわ#rカーレース大会の仕事です。 レナ(私服): ……本当にやるつもりなんだね。でも雛見沢で、カーレース大会なんてできるのかな……かな? 詩音(私服): お姉がやると言ったらやりますよ。幸い、今なら使えそうなものもありますしね。 レナ(私服): 使えそうなものって? 詩音(私服): くすくす……色々と交渉材料があるんですよ。そろそろ「賞味期限」が切れそうなので今のうちにぱぁっと使っちゃおうと思いまして。 レナ(私服): (な、なんだか不穏な感じがするけど……大丈夫かな……かな?) 詩音(私服): ただ、時間がないのは確かなので……さすがに総力をあげて準備しないと間に合わないんですけどね。 詩音(私服): 私も、色々と役目を仰せつかりまして……文字通り、一肌脱ごうと思っています。 レナ(私服): はぅ……文字通り? 詩音(私服): はい。レナさんはレースクイーンって、ご存じですよね? レナ(私服): うん。この前のカーレースのテレビ中継に映っていた、綺麗な女性スタッフのことだよね? 詩音(私服): えぇ、そうです。 詩音(私服): 今日呼び出したのは、他でもないです。レナさんに今度のレース大会でレースクイーンをやっていただきたくて。 詩音(私服): そのお願いのために、来てもらったんですよ。 レナ(私服): レナが? レースクイーン……?! 詩音(私服): いかがです? 最初は鷹野さんを誘ったんですが、都合がつけられるかまだわからないから、って回答が保留になっていまして。 レナ(私服): (都合がつくようだったら、やってくれたりするのかな……かな?) 詩音(私服): まぁ鷹野さんにお願いしたのは有事の時に看護婦さんがいると安心、って理由もあったんですけどね。 詩音(私服): その点を説明したら、怪我人が出た場合はそれとは関係なく、手伝ってくれるという約束を取りつけました。 レナ(私服): はぅ……詩ぃちゃんって、交渉上手だね。 詩音(私服): くすくす……そうでもないですよ。この程度のことは、交渉とも呼びませんしね。 詩音(私服): ……というわけでいかがです、レナさん?衣装は菜央さんがデザインしてくれたので、なかなかいい感じになっていますよ。 レナ(私服): 菜央ちゃんが……? うーん……。 詩音(私服): ……あー、あんまり乗り気じゃないって感じですか? レナ(私服): はぅ……ごめんね。嫌とかじゃないけど、レースクイーンがどんなことをするか、ちょっとピンと来なくて。 詩音(私服): 大丈夫です。私もピンときてませんから。 レナ(私服): そうなの? 詩音(私服): はい。でも、問題なしです。そもそも現状でレースクイーンが何をする人か、と雛見沢で正しく理解してる人はいませんしね。 詩音(私服): 私とお姉は実況と解説としても働きますから、レースクイーンじゃなくて、グリッドガール?……っていう役職の方が近いみたいですけどね。 レナ(私服): ぐ、グリッドガール……?はぅ……レナ、初めて聞いたかも。 詩音(私服): あぁ、それも問題はありませんよ。私もこの前調べて、初めて知りましたので。 詩音(私服): ただ、わかりやすさを通すため、今回ではレースクイーンで通すつもりです。その辺りは担当者権限を発動しちゃいます。 レナ(私服): はぅ……なるほど。ちょっと意味が違っていたとしても、まずわかりやすさを優先するんだね。 詩音(私服): さすがレナさん、理解が早いです。 詩音(私服): ……レナさんだから打ち明けますと、もう現時点でもスポンサーが結構な数で集まっているんですよ。 詩音(私服): みんな、あのレースを見ていたせいか、ノリノリで名乗りを上げてくれたので……かなり豪華なイベントになりそうです。 レナ(私服): あははは……楽しそうだね、詩ぃちゃん。 詩音(私服): あ、そう見えますか?まぁ、自分でもそんな感覚はありますけどね。 レナ(私服): あ、そうだ。もしレースクイーン以外で他にお手伝いできることとかがあったら、声かけてくれると嬉しいかな、かな。 レナ(私服): レナもレースがどんな感じになるのか、実際にこの目で見てみたいから……はぅ。 詩音(私服): えぇ。……あ、じゃあさっそくいいですか? レナ(私服): えっ……? 詩音(私服): 実はもうひとつ、相談に乗ってもらいたいことがありましてね……。 Part 02: 詩音(私服): ……ありがとうございます、レナさん。ちょっと実現性が低いってこともあったので……保険として引き受けてくれて、助かりました。 詩音(私服): 実のところ、現状ですとそっちの方が重要だったりしていたので……これで悩み事がひとつ、消えましたよ。 レナ(私服): あはははは。うまくできるかはわからないけど、一生懸命頑張らせてもらうねっ。 詩音(私服): 大丈夫ですよ。何かあったとしても、私たちが演出のひとつだって押し切ってやりますしね。 レナ(私服): はぅ……そう言ってくれると、レナも心強いよ。 詩音(私服): あ、ちなみに……レナさん以外でレースクイーンを頼むとしたら、他に誰がいいと思います? 詩音(私服): 思いつく範囲で考えてみたんですけど、正直ちょーっと決めかねていまして……。 レナ(私服): ……そうだね。お願いしたい人に条件とかってあるのかな? かな? 詩音(私服): 今回、初めての大会ですからね。トラブルが起きた時に救護だのなんだので素早く動ける人がいいです。 レナ(私服): 素早く動ける……行動が早い人だね。 詩音(私服): はい。ですからそう言う意味も含めて、レナさんが一番向いていると思ったんですよ。 レナ(私服): レナもそこまで、判断が早いわけじゃないと思うけど……うーん……。 詩音(私服): やっぱり、すぐには思いつきませんか?うーん、どうしましょうかね……。 レナ(私服): ……。千雨ちゃんはどうかな……かな? 詩音(私服): ぇ……千雨さん、ですか? レナ(私服): はぅ……ダメ? 詩音(私服): あ、いえ。ダメとかじゃないですけど。 詩音(私服): ……レナさんだから言っちゃいますけど、あの人って私、よくわからないんですよね。何を考えているか、さっぱりですし。 レナ(私服): はぅ……そうかな? 千雨ちゃんって、結構わかりやすい性格だと思うけどな。 詩音(私服): まぁ、サメが好きなのはわかりますよ。話し出したらもう、機関銃のように止め処なくまくし立ててきますし……。 詩音(私服): この前なんてうっかり沙都子が口を滑らせて、サメについて質問をしたものだから……延々と知識を吹き込まれて目を回していました。 レナ(私服): あははは。でも、千雨ちゃんのお話は面白いよ。サメだけじゃなく、それに関係するようなことをたくさん知っているしね。 詩音(私服): まぁ、知識があるのは認めますけど……あんなに一気に喋られたら理解できませんよ。呪文を唱えているみたいじゃないですか? 詩音(私服): んー、でも……レナさんの推薦ですし、一度聞いてみるだけ聞いてみましょうか。他に候補も思いつかないですし。 レナ(私服): はぅ……ごめんね。レナも考えてみたけど、千雨ちゃん以外に思いつかなかったから。 レナ(私服): 対応できる力ってことで、一穂ちゃんもちょっと考えたんだけど……最近、元気がないみたいだったし。 レナ(私服): 今頼むのは、ちょっと難しいと思うの。 詩音(私服): ……なるほど。レナさんって、いつもいろんな人をちゃんと見ていますね。さすがです。 レナ(私服): えっ……そ、そうかな? かな? 詩音(私服): えぇ、本当に……。 詩音(私服): 本当に……。 レナ(私服): ……? どうしたの、詩ぃちゃん? 詩音(私服): あ、いえ……なんでもありません。参考になりました、ありがとうございます。 レナ(私服): どういたしまして。詩ぃちゃんも、魅ぃちゃんと一緒に頑張ってね。 詩音(私服): 私はバイトみたいなものですからね。まぁ、無理のない程度に付き合うつもりですよ。 詩音(私服): とりあえず、さっきの話……もし実現した時は、前向きに考えてくださいね。 レナ(私服): うん、もちろんっ! Part 03: レナ(私服): ……えっ? この前に言っていた、レース用の生中継の機材って本当に借りられることになったの? 詩音(レースクイーン): はい……! もう、ギリッギリで!これでコースの途中から、生中継ができます! 詩音(レースクイーン): ただ、その……急すぎて中継役のレポーターがやっぱり調達できなくて……。 詩音(レースクイーン): すみません……レナさん。前にお願いしていた通り、そっちの方を手伝ってもらってもいいですか? 詩音(レースクイーン): こっちもあちこち、できる人がいないか探してみたんですが、条件面でなかなかいい人が見つからなくて……! レナ(私服): うん、いいよ。レナでよければ……。 詩音(レースクイーン): 本当ですか?! レナ(私服): だって、約束したもん。レポーターならテレビで見たことがあるから、何をすればいいかはなんとなくわかるしね。 レナ(私服): 上手くやれるかどうかわからないけど、頑張ってみるね。 詩音(レースクイーン): ありがとうございます……!いやー、本当にレナさんに相談して本当によかったですよ。 詩音(レースクイーン): レースクイーンの件も、千雨さんに相談したらあっさり引き受けてもらえましたしね。 詩音(レースクイーン): あと、鷹野さんにもOKをもらえたので今日は予想以上に充実したスタッフ構成で臨めそうです。 詩音(レースクイーン): ほんと、助かりましたよ。アドバイスをもらっていなかったら、今頃どうなっていたやら……。 詩音(レースクイーン): …………。 レナ(私服): はぅ……どうしたの、詩ぃちゃん? 詩音(レースクイーン): あ、いえ……すみません。レナさんにはうまく隠せそうにないので、正直に言っちゃいますけど。 詩音(レースクイーン): 実は私、ちょっと前までレナさんのことちょっと怖いな~って思っていたんですよね。 レナ(私服): えっ……ど、どうしてかな、かなっ? 詩音(レースクイーン): あ、レナさんに何かされたとかじゃないですよ。ただ、レナさんって人を見る目がありすぎるというか……鋭すぎて、怖いなって。 詩音(レースクイーン): だから、あの事件がなければ……今でもレナさんのことを、怖いと思っていたかもしれません。 詩音(レースクイーン): ……いや、事件とも呼べませんね。本当にささやかな出来事でしたし。 レナ(私服): ……そうだね。覚えている人もレナたち以外はもういないと思うよ。 詩音(レースクイーン): けど、なんと言うか……人って、ちょっとした出来事で見方が変わるものですね。 詩音(レースクイーン): あれがなければ、レナさんに相談しようとすら思わなかったと思います。 レナ(私服): ……うん、わかるよ。確かに人って、ちょっとしたことで見方が変わったりするもんね。 詩音(レースクイーン): あ、ちなみに……それまでも信用していなかったわけじゃないですよ? レナ(私服): あははは、それもわかってるよ。でも、もっと信用してもいいかなって思ってくれたってことだよね? レナ(私服): だから、レポーターを任せようと思った。そう考えてもいいのかな……かな? 詩音(レースクイーン): ……。やっぱりレナさんは、鋭いですね。そこまで見抜かれているとは、脱帽です。 レナ(私服): そ、そうかな? かな? 詩音(レースクイーン): もちろん、褒めているんですよ。 詩音(レースクイーン): では、レナさんを信用して、リポーターお願いしますね! 詳しいことはあっちの担当者からお願いします。 詩音(レースクイーン): 私もそろそろ、準備がありますので。 レナ(私服): うん、わかった。行ってくるね! 詩音(レースクイーン): お願いしますね~。 詩音(レースクイーン): ……さて。 詩音(レースクイーン): それにしても、本当にいい天気。……格好のレース日和ですねぇ。 詩音(レースクイーン): (突貫でしたが、お姉の方も上手くやれたみたいで……準備の方はなんとかなって、よかったです) 詩音(レースクイーン): (あとは大会自体が成功するかですが……対策も色々立てましたし、大丈夫ですよね) 詩音(レースクイーン): (残る気がかりとすれば……) 千雨:レースクイーン: ……おい、詩音。 詩音(レースクイーン): えっ……? あぁ、千雨さん。どうしましたか? 千雨(レースクイーン): 魅音が探してたぞ。そろそろ始めるらしい。 詩音(レースクイーン): あ、もうそんな時間ですか。……にしても、千雨さん。 千雨(レースクイーン): なんだ? 詩音(レースクイーン): その格好、結構似合っていますね。千雨さんに頼んで、正解でした。 詩音(レースクイーン): (と言うより、レナさんに相談して正解と言うべきですかね) 詩音(レースクイーン): (私だけだったら……いえ、お姉もこの人に頼むって発想はなかったでしょうし) 千雨(レースクイーン): どうした、ニヤニヤして。 詩音(レースクイーン): いえ……。 詩音(レースクイーン): 人を見る目が変わると、選択って変わるものだなぁ、と思いまして。 千雨(レースクイーン): ? ふむ……そういうものか? 詩音(レースクイーン): はい。そういうものです。 鷹野(レースクイーン): ……ねぇ、詩音ちゃん。撮影場所はどのあたりになるのかしら? 詩音(レースクイーン): あっ、今から案内します。それにしても鷹野さん、期待はしていましたけどやっぱりよく似合っていますね~! 鷹野(レースクイーン): あら……くすくす、ありがと。お世辞でもそう言ってもらえると、引き受けた甲斐があったわ。 鷹野(レースクイーン): それじゃ、早く行きましょう。ジロウさんが今か今かと待ちくたびれたように落ち着かない様子だから、ね。 詩音(レースクイーン): 了解です。千雨さんも、よろしいですか? 千雨(レースクイーン): あぁ、任せておけ。村のアピールになるよう、しっかりお役目を務めてみせるさ。