Part 01: 梨花(私服): みー。3人とも、よく来てくれたのですよ。 美雪(私服): いや、そりゃ駆けつけるでしょ。電話でいきなり呼びつけるだけならまだしも、あんな台詞を最後に付け加えられたらさ……。 菜央(私服): 「来てくれなかったら、ボクは大変な目に遭ってしまうのですよ……みー」なんて、すごく悲しそうに言うんだもの。 菜央(私服): いったい何事かと思って、朝食の片付けも途中で放り出して来ちゃったわ。……ガスの元栓、ちゃんと閉めたかしら? 一穂(私服): だ、大丈夫だと思うよ……?出かける直前に、一応ちゃんと確認したから。 美雪(私服): おぅ、火の元のチェックはいつも一穂がちゃんとやってくれてるから、安心だね。……で、鍵は誰が閉めた? 一穂(私服): えっ……?美雪ちゃんと菜央ちゃんの、どっちかじゃないの? 菜央(私服): あたしは鍵なんて持ってないわよ。最初に外に出たの、あんたも見たでしょ? 一穂(私服): っ? わ、私ちょっと戻って、戸締まりを確認してくる……! 美雪(私服): ちょっ……待って一穂、大丈夫だって!鍵だったら、私がちゃんと閉めたからさ。 一穂(私服): な……なんだ。てっきり私、鍵もかけずに出てきたと思って血の気が引いちゃったよ……はぁ。 菜央(私服): ったく、閉めたのなら素直にそう言いなさい。変にとぼけたりして、不安にさせないでよね。 美雪(私服): ごめんごめん。軽い冗談のつもりだったから、ここはひとつ勘弁して。 梨花(私服): みー。それに、#p雛見沢#sひなみざわ#rで空き巣に入るような不届き者などは滅多にいないと思うのです。 梨花(私服): もしそんなことをすれば、リアル#p綿流#sわたなが#rしの刑でがくがくぶるぶる、にゃーにゃーな目に遭うとみんなわかっているのですよ。にぱ~☆ 美雪(私服): リアル綿流しの刑……って、どんな罰? 菜央(私服): 綿流しって、確か雛見沢の村祭りのことよね。それと何か関係があるのかしら? 梨花(私服): いずれ時期が来れば、わかるのです。……それはさておき、実は3人にお願いしたいことがあって、わざわざ休みの日に来てもらったのですよ。 美雪(私服): おぅ……そうだった。菜央たちと戸締まり云々を話してたせいで、うっかり本題を忘れるところだったよ。 菜央(私服): そもそも言い出したのは、あんたじゃない。あたしたちのせいにしないでよね。 一穂(私服): ま、まぁまぁ……それで梨花ちゃん、お願いってなに? 梨花(私服): みー。明日、神社の奥にある裏山でサバゲーをすることになったと思いますですが……。 梨花(私服): 知っての通りボクは守備側のチームになって、最後の拠点を守る大役を任せられたので……迎撃用の武装を整えておきたいのですよ。 美雪(私服): そういえば梨花ちゃん、魅音と同じチームになったんだよね。他のメンバーは、確か……。 菜央(私服): レナちゃんと羽入よ。あたしはレナちゃんと一緒のチームがいいって、すっごく願掛けして臨んだのに……はぁ……。 一穂(私服): あははは……くじ引きの結果だから、しょうがないよね。 美雪(私服): で、対する攻撃側のチームは私たち3人と詩音、沙都子の5名だったよね。 美雪(私服): ただ、守備側が1人少ないってことで助っ人に前原くんが加わって同じ人数になったんだし、あえて武装を増やす必要はないんじゃない? 梨花(私服): いえ、あるのです。沙都子は今日の早朝から、裏山にこもって何かを仕掛けているのですが……。 梨花(私服): ボクに向かって、言い放ちやがったのです。「本気でかかると、他の方々はともかく梨花なんて瞬殺で倒せてしまいますわねぇ~」 梨花(私服): 「ですが、ご安心なさいませ。梨花が最後に残ったら、ちゃんと手を抜いて痛くないように倒してあげましてよ」 梨花(私服): 「をーっほっほっほっ!」などと……ッ!! 美雪(私服): んー、そのパターンは容易に想像できるよね。つまり梨花ちゃんは、キミをナメてかかってる沙都子に一矢報いてやりたい、と……? 梨花(私服): 一矢どころではないのです!このボクを侮ったことへのキツイ報復を、沙都子に食らわせてやるのですよー!! 菜央(私服): キジも鳴かずば撃たれまいに……沙都子も余計なことを梨花に言ったものね。 梨花(私服): みー。沙都子に怪我をさせるつもりは毛頭ありませんのです。……ただちょっと、びっくりさせたいと考えているのですよ。 美雪(私服): んー、なるほど。とはいえ梨花ちゃんだって、裏山の近所の敷地内に住んでるわけだからさ。 美雪(私服): 地の利を活かせて戦えば、それだけでキミも沙都子といい勝負ができるんじゃないの? 梨花(私服): 甘いのです……! たとえ裏山がボクにとって自分の家の庭同然だとしても、沙都子に関しては自宅そのもの! 梨花(私服): どちらが詳しく知り尽くしているかなんてとても比較にならないので、戦力増強は必須の対策なのですよ……! 一穂(私服): え、えっと……家の庭と自宅とで、どういう違いがあるのかな……? 美雪(私服): んー、まぁ庭は自分の家の敷地内とはいえあくまでも外だから……誰かが入り込んだとしても気づきづらいし、全てを把握できるわけじゃない。 美雪(私服): けど、家の中だったらほぼ全てに目が届くし、外から入ってくる相手に対しても圧倒的有利に運ぶことができる……ってことかな? 梨花(私服): みー、その通りなのです。美雪はボクの言いたいことを理解してくれて、とっても頼りになるのですよ。にぱー☆ 美雪(私服): おぅっ……?いや、まぁ……梨花お姉ちゃんのことならそれなりに知ってるつもりだしね……。 菜央(私服): ……何をブツブツ言いながら照れてるのよ。で、結局梨花は戦力の増強として何を頼みたいの? 梨花(私服): みー。ボクがお願いしたいのは、倉庫に収蔵している「最終兵器」を拠点の付近まで運び出すのを手伝ってもらいたいということなのです。 梨花(私服): そして、その設置に関しては他の部活メンバーにも黙っておいてほしいのですよ。 菜央(私服): まぁ、手伝うこと自体は構わないけど……それで「最終兵器」って、どんなものなの? 梨花(私服): 説明するよりもまず、現物を見てもらった方が早いのです。……ついてきてくださいなのですよ。 一穂(私服): あ、うん……。 Part 02: 梨花(私服): みー。……これが古手家に伝わる、「最終兵器」なのですよ。 美雪(私服): って梨花ちゃん、これってマジっ?さすがに予想外というか、なんであるのか摩訶不思議すぎるんだけど?! 一穂(私服): え、えっと……これ、大砲……だよね? 菜央(私服): ……かなりの骨董品だわ。形状からして、幕末から明治にかけて使われたアームストロング砲ってところかしら。 美雪(私服): キミもなんで知ってるんだ、菜央……? 菜央(私服): 昔、お母さんと一緒に行った博物館で見たことがあったのよ。……かなり古そうだけど、使えるの? 梨花(私服): みー、大丈夫……な、はずなのです。心配する必要はないと思いたいのですよ。 美雪(私服): いや、願望入ってるよねっ?自分でも断言できないって実は思ってるよね?! 美雪(私服): っていうか、これを今回のサバゲーに使うのっ?さすがに怪我とかじゃすまないレベルだよ?! 梨花(私服): 問題ないのです。これは小型の威嚇用で、弾は泥や粘土の塊を使うものなのですよ。 梨花(私服): 直撃さえしなければ地面に落ちて砕けるので、威嚇的な程度でとどまる……はずなのです。 一穂(私服): (ほ、本当に大丈夫かな……?) 菜央(私服): ……けど、梨花。だったらどうして、攻撃側チームのあたしたちに手伝わせたのよ。 菜央(私服): もし不意を突くつもりだったら、同じ守備側チームのレナちゃんか魅音さんに頼んだほうがよかったんじゃない? 梨花(私服): みー。粘土弾とはいえ、万が一直撃するとかなり危ないかもしれないのです。 梨花(私服): だから3人は、拠点に近づいた時……沙都子や詩ぃを足止めして、砲撃の射程外にうまく誘導してもらいたいのですよ。 美雪(私服): おぅ……なるほどね。ちょっとやらせ的な演出になるけど、沙都子をびっくりさせるだけなんだからそれもありか。 美雪(私服): んじゃ、運び出すとしよっか。一穂と菜央は、2人でそっちを持って。梨花ちゃんは私と一緒に、こっちね。 菜央(私服): 腕の力に頼ったら、腰を痛めるわよ。全身を使って、慎重に持ちなさい。 一穂(私服): う、うん……よいしょっ、と。 美雪(私服): ふうっ……小型っていうだけあって、意外に重さはそれほどじゃなかったね。 梨花(司令官): とりあえず、動作確認をするのです。早くしないと沙都子がここに戻ってきて、仕掛けがばれてしまうのですよ。 美雪(私服): いや、その前に音でばれるんじゃない?大砲なんてぶっ放したら、その轟音が響き渡るだろうしさ……。 梨花(司令官): みー、その点は大丈夫なのです。これは火薬ではなく大きなバネで弾を撃ち出す仕組みなので、射出音は小さいのですよ。 一穂(私服): あ、本当だ……って梨花ちゃん、その格好はどうしたの? 梨花(司令官): サバゲー演習に合わせて、魅ぃから借りてきたのです。拠点を守る将軍の衣装なのですよ。にぱ~☆ 一穂(私服): あ、そ……そうなんだ……。(意外にノリノリだね、梨花ちゃん……) 菜央(私服): とりあえず、バネで飛ばすんだったらそこまで危険じゃない……かもしれないし、試しに撃ってみましょう。 菜央(私服): って、梨花……?あんたが読んでるその古い本って、なに? 梨花(司令官): この大砲の使用説明書なのです。まずは砲弾をどこに詰めるか……みー、みー。 菜央(私服): ……本当に大丈夫かしら? 梨花(司令官): マニュアルは読んだので、いよいよ発射なのです!目標、あそこに見える大きな樹!! 菜央(私服): はいはい。明日はあんたが操作するんだから、ちゃんと見ておきなさいよね……発射ッ!! 一穂(私服): ひっ……ひぃぃぃいいいぃぃっ?! 美雪(私服): め、命中したけど……ど、どうなった? 菜央(私服): 樹皮がかなり削られちゃってるけど……とりあえず大丈夫みたいね。 一穂(私服): こ、こんなの本当に撃って、いいのっ……?さすがに特訓や演習のレベルを超えてると思うんだけど……! 菜央(私服): だから、詩音さんや沙都子に当たらないようあたしたちがうまく引き留めるのよ。……梨花、射出地点はどの辺りに決める? 梨花(司令官): みー、ちょっと待ってくださいなのです。射角を調整するのはここで、バネの威力は……。 一穂(私服): ……。あの、美雪ちゃん。ひょっとして梨花ちゃんだけじゃなくて、菜央ちゃんも……? 美雪(私服): んー……いかにもノリノリって感じだね。菜央ってミリタリーもの、結構好きだったんだ……。 Part 03: 梨花(私服): とりあえず、明日はなんとかなりそうよ。沙都子もあの大砲の砲撃を目にすれば、余裕なんて粉々に吹き飛んでしまうでしょうね……くすくす。 羽入(私服): あぅあぅ……いくら沙都子に吠え面をかかせるためとはいえ、あれを持ち出すのはやり過ぎだと思うのですよ~。 梨花(私服): しょうがないでしょ? 銃火器に慣れた詩音に、山の活動経験が豊富な美雪。勘の鋭い菜央……。 梨花(私服): これに沙都子が加わったら、鬼に金棒どころか鬼が戦車に乗るレベルじゃないの。もはや特訓や演習じゃなくて、一方的な蹂躙だわ。 羽入(私服): そ、それはさすがに大げさ……と、言い切れないところが恐ろしいのですが……。 梨花(私服): そんなに言うんだったら、羽入。あんたが私の代わりに拠点の防衛役に回る?希望するなら、魅音に推薦してあげるわ。 羽入(私服): じょ、冗談でも止めてくださいなのです!沙都子や詩音たちを相手にするなんて、ボコボコにされることが確定なのですよー?! 梨花(私服): ……つまり、私がボコボコにされるのはいいってことかしら? 羽入(私服): あぅっ?そ、そこまではさすがに……あぅあぅ……。 梨花(私服): くすくす……冗談よ。あくまでも「遊び」の範疇なんだから、私もせいぜい楽しませてもらうわ。 羽入(私服): ……そろそろ戻りましょうなのです。沙都子が目を覚ました時にいないと、心配してここに来るかもしれないのですよ。 梨花(私服): そうね。……ところで、羽入。結局のところ、「あれ」は何だったと思う? 羽入(私服): 「あれ」……とは、何のことですか? 梨花(私服): 決まっているじゃない。一穂が持っていた水晶玉……『スクセノタマワリ』よ。 羽入(私服): …………。 梨花(私服): 結局、私たちがよく知っている『カムノミコトノリ』は祭具殿でも見つからず……あんたの言う『隠し宝物殿』にもなかった。 梨花(私服): いったい誰が持ち出したのか……そもそも一穂の持つ水晶玉と古手家の秘宝が同一なのか、別物なのか……。 梨花(私服): わからないことがそのままで、完全にお手上げ状態なのが……悔しいわね。 羽入(私服): 梨花……。 梨花(私服): ……そういえば、羽入。例の『カムノミコトノリ』がどんなものなのか、詳しく聞いたことがなかったわね。 梨花(私服): 以前に見つけた時は、異なる「世界」のあんたと会話するためのトランシーバー的な通信手段だと勝手に思っていたけど……。 梨花(私服): 他に何か、超常的な力が秘められているとか……そういうものはなかったのかしら? 羽入(私服): ……ごめんなさいなのです。僕は遠い昔、何らかの用途があってあの水晶玉を祭具殿に保管していた……気がするのですが。 羽入(私服): その記憶は、長い時間を経ているうちにすっかり薄れて、色褪せてしまって……今では何も覚えていないのですよ。 梨花(私服): ……覚えていないのに、秘宝として後生大事に保管していたってわけね。 梨花(私服): しかも、飾られていたのは『オヤシロさま』の像の前……ある意味では一番いい場所。 梨花(私服): 何かの霊験と効能を秘めている代物じゃなかったら、あんな場所に置くはずがないと思うんだけどね……。 羽入(私服): …………。 梨花(私服): まぁいいわ。もし何か思い出したことがあったら、教えて。……じゃ、行きましょう。 羽入(私服): はいなのです。……あぅあぅ。 …………。 羽入(私服): 『……ごめんなさい、梨花』 ……梨花には伝わらないよう慎重に、私は謝罪の言葉を内心で呟く。 数え切れないほどの「繰り返し」を続け、梨花の身に降りかかる惨劇を回避するべく考えて、動くたび……。 私の胸の内で大きくなっていくのは……申し訳なさと同時に、後悔の念だった。 羽入(巫女): 『梨花……ひょっとするとあなたは、私と会わなかった方が幸せだったのかもしれません……』 もちろん、わかっている。……私が「時」を遡り、「世界」を変えなければ梨花は鷹野に「生け贄」として殺されていた、と。 裏切られ、己の夢を奪われた鷹野三四は……全てを無に帰すことを選択する始まりとして、梨花の命を奪った。 ただ、当時の私は誰が梨花を殺したのか……なぜ殺されたのかの動機がわからなかった。 その真相を知るため、そして彼女の未来を終わらせないために摂理を外れた力を用いて、同じ時間を繰り返してきたのだけど……。 真実へと至る過程で、梨花には無限の苦しみと悲しみを与えてしまった。……それこそ、魂の本質が変貌するほどに。 それが、結果として「悪魔」を生み出すことに繋がってしまったのだとしたら……私は……。 羽入(巫女): 『そう……「彼女」も、私と同じ選択をして……このいびつな運命を生み出してしまったんだ』 羽入(巫女): 『私は……「彼女」を責められない。その行いが愚かで、私たちにとっては有害だとわかっていても……』 …………。 だから私は、「あの子」に託すことにしたのだ。全ての業を背負わせて……そして……。 羽入(巫女): 『……梨花。もしもこの先で真実を知れば、あなたは私のことを罵るでしょうか……?』 魅音(サバゲー): よーし、3人とも来たね!んじゃ、あっちに置いてある武器をそれぞれ選んでおいて~! 一穂(私服): うん、わかったよ。……ねぇ、魅音さんたちって梨花ちゃんの用意したあの「最終兵器」のことをちゃんと聞いてるのかな? 美雪(私服): んー、どうなんだろ……。あとで梨花ちゃんが来た時に、それとなく確かめておいた方がいいかもだね。 菜央(私服): それはそうと、魅音さん。レナちゃ……守備側の他の子たちはまだここに来てないの? 魅音(サバゲー): もうすぐ来るはずだよ……あっ、来た来た!おーい、こっちこっちー! 一穂(私服): えっ……あ、あれは……?! 絢花(巫女服): ……おはようございます、一穂さん。今日はお互い、頑張りましょうね。