Part 01: 魅音(冬服): メリークリスマース! 昨日のイブはケーキ目当てのお客さんが殺到して大忙しだったけど、今日はまだマシ……だと思う! たぶん! 圭一(冬服): おいおい、そんな弱気じゃ売れるケーキも売れねぇぜ。 圭一(冬服): ぃよーし、ケーキ売るぜー! じゃんじゃん売るぜー!で、今夜のパーティーでご馳走たらふく食ってやるぜー! 魅音(冬服): おっ? いいよ圭ちゃん、頼もしいねぇ。貸し切りパーティーが待っているよー! 圭一(冬服): パーティーは、配達組が戻ってきたら開始か? 魅音(冬服): うん、その予定!あと、正月飾りを作ってくれている年少組はあとで葛西さんが迎えに行ってくれるって。 圭一(冬服): クリスマスが終わったら、すぐに正月商戦か。忙しいよな……一穂ちゃんもそう思うだろ? 一穂(冬服): …………。 圭一(冬服): 一穂ちゃん? 一穂(冬服): えっ? 圭一(冬服): どうした? どこか具合でも悪いのか? 一穂(冬服): う、うん……大丈夫だよ。ごめんなさい。 圭一(冬服): ……なんかさ、一穂ちゃんと千雨ちゃんって最近ちょっと様子がおかしくないか? 一穂(冬服): えっ?! 魅音(冬服): なになに? 何かあったの? 一穂(冬服): な、何もないよ? あ、あはは……。 圭一(冬服): そうか? 千雨ちゃんなんて、険しい顔でむっつり黙り込んでいることが増えた気がするんだけどな。 一穂(冬服): そ、そう……? 千雨ちゃんって、いつもあんな感じだったと思うけど……。 圭一(冬服): いや、それはそれで千雨ちゃんに対して失礼な発言だと思うんだが……。 魅音(冬服): んー、言われてみれば最近一穂と千雨って2人で話し込んでいることが多いよねー。美雪がなんか寂しい、ってこぼしていたよ。 一穂(冬服): えっ……ほ、本当に?! 圭一(冬服): ほう、やっぱり自覚があったんだな。……魅音、いいトラップだった。 魅音(冬服): ……なんのこと? 圭一(冬服): おいおい、こっちは自覚がなかったのか……。 一穂(冬服): だ、大丈夫だよ! え、えっと千雨ちゃんは風邪がちょっと治りきってないみたいで……! 魅音(冬服): あぁ、確かにちょっと前に風邪を引いていたよね。 一穂(冬服): そ、そう! でも千雨ちゃんが、みんなにうつしたり気を遣わせたりしたくないから、あんまり近づかない方がいいかな、って……! 圭一(冬服): その気持ちはわかるけどな……周りに心配をかけている感じだと、かえって意味がないと思うぜ。 一穂(冬服): ご、ごめんなさい……。 圭一(冬服): い、いや。俺に謝られても困るんだが……。 魅音(冬服): まぁ、みんなが知らないのはさすがに問題だけど……一穂だけでも千雨の具合を把握しているんだったら、大丈夫だって。 魅音(冬服): けど千雨って、なんか猫みたいだねー。 一穂(冬服): 猫……? 魅音(冬服): ほら、猫は具合が悪いのを隠すってよく言うでしょ? 圭一(冬服): それって、猫は自分の死期を悟ったら飼い主の前から姿を消す~ってやつじゃなかったか? 魅音(冬服): ただ、実際事例が多いらしいよ。猫って具合が悪くても、平気そうな顔をして普通に振る舞うことがあるそうだからさ。 魅音(冬服): で、ようやく気がついた飼い主が慌てて動物病院に駆け込んだら手遅れだった……みたいな。 圭一(冬服): そうなのか? じゃあ犬は? 魅音(冬服): 犬は結構、訴えてくるって言っていたよ。というか、急に元気がなくなるからわかりやすいって。 圭一(冬服): 確かに……犬は毎日散歩が必要だもんな。元気がなくなれば散歩もしなくなるから、すぐに変だって気がつくってわけか。 魅音(冬服): そうそう。あと、ひゃんひゃん変な声で鳴いたりとか……。 圭一(冬服): 魅音、今のもう一回。 魅音(冬服): え? 変な声で鳴く? 圭一(冬服): その前。 魅音(冬服): ひゃんひゃん鳴くとか……。 圭一(冬服): もっと感情を込めて! 魅音(冬服): ヒャンヒャンっ! 魅音(冬服): って、何を変なこと言わせるのさーっ! 圭一(冬服): はははははっ!いや、詩音がよくこうして魅音をからかっているからやってみたくなったんだよ。 圭一(冬服): よし、早く準備するか。そろそろお客さんが来ちゃうからなー。 魅音(冬服): し、詩音はそんなことしない……こともないけど!ごまかされないからね、圭ちゃんーっ! 前原くんと、魅音さん……人のいない店内で、楽しそうにはしゃぎ回っている。その姿はとても仲良しで、楽しそうで。 ……微笑ましい光景のはずなのに、なぜかちくりと胸を刺す痛みを感じた。 魅音さんは優しい。前原くんも優しい。でも、この痛みはたぶん……話しても伝わらない。 一穂(冬服): (だって……覚えてないんだから) Part 02: クリスマス直前の、事件と呼べない「事件」の後……私と千雨ちゃんと2人で話し合った。 千雨: 率直に聞くぞ、一穂。お前は悟史の偽者が消えた後の他のやつらの態度……どう思う? 一穂(冬服): ど、どうって……? 千雨: 美雪と菜央ちゃんは、疲れてるように見えた。が……他のヤツにあまり異常が感じられなかった。 千雨: というより……最初からいないのが普通だった、みたいに見えるんだよ。 千雨: ……で、以前との変化が一番顕著なのが詩音だ。 一穂(冬服): 詩音さん……? 千雨: これは、私の直感だが……詩音って、悟史のことが好きだったんじゃないか? 一穂(冬服): ? 詩音さんって、みんなのことが好きじゃないの? 千雨: いや、人間的な意味じゃなくて……恋愛的な意味で、特別だったんじゃないかってことだ。 一穂(冬服): え……えっ……? そ、そうだったの? 千雨: 少なくとも、私にはそう見えた……一穂はそう言うのに疎いから、気づかないのも無理はないと思うが。 千雨: まぁ、変な偏見を持たせるのも悪いと思って言わなかった私が悪かったがな。 一穂(冬服): う、ううん。言われなかったら私……一生気がつかなかったと思う。 千雨: ただ……そのせいか?例の偽悟史が消えた後から、ちょっと性格が変わったように見えたんだよ。 千雨: あれはたぶん、悟史にまつわる記憶が偽悟史の消滅とともに消えちまったせいだと……私は思っている。 一穂(冬服): ? 記憶が消えたら、どうして性格まで変わっちゃうの? 千雨: ……私はな、サメを好きになる前後で別人になったみたいだって言われるんだ。 千雨: 好きなものができると、行動が変わるんだ。今まで読まなかった本を読んだり、行かなかったところに行くようになったり……。 千雨: 他人から見ると、今までと違う人間になったみたいに見えてくるらしい。 一穂(冬服): えっと……つまり千雨ちゃんには、詩音さんが自分の時と同じように変わった……と感じたの? 千雨: あぁ……この場合、悟史がいるのといないのどっちが通常かはわからないがな……で、魅音の方だが。 一穂(冬服): 魅音さん……? 千雨: 魅音と詩音ってのは、双子だろ?外見以外はあまり似てないように見えるが、根っこは結構共通点が多い……ように見える。 千雨: 一卵性双生児は、DNA的には同じ人間らしいからな。人間的じゃなくて人体……構造的な意味でだが。 千雨: アカシュモクザメとシロシュモクザメみたいに、厳密には違う種類だが科は同じだから生態も似る……みたいな話だ。 一穂(冬服): え、えっと……? 千雨: ……要するに、私は魅音と詩音は男の趣味も似てるんじゃないか、ってな。 千雨: 体感だが、双子じゃなくても男の趣味が似てる姉妹は社宅でも結構多かったからな。……もちろん、真逆を行くタイプもいたが。 一穂(冬服): じゃあ魅音さんも、悟史くんのことを……?! 千雨: あ、いや……どうだろうな。魅音の場合は、あまり変わったところがないように感じる。 千雨: けど、少し探れば以前との違いが見つかるかもしれない。だから一穂は、魅音を探ってくれ。 千雨: 詩音は……下手をうつとヤバそうだから、私がやる。 千雨: 本当は妹の沙都子を調べたいんだが、あっちはなんだか妙な違和感があるんだよな……だから詩音とまとめて、私が調べる。 千雨: というわけで、魅音の方をよろしくな。これは悟史を覚えてるお前にしか頼めないことだ。 一穂(冬服): う、うん! 頑張るよ! 一穂(冬服): (とは言ったものの、全然探りなんて入れられない……!) 一穂(冬服): (私って本当、全然役に立ってない……) そもそも、あの事件はなんだったのだろう……? 沙都子ちゃんの兄の悟史くんの偽者がいつの間にか混ざって、消えて……。でも、みんなの記憶の中には残っていない。 覚えているのは、私と千雨ちゃんの2人だけ。これは、何を意味するのだろうか……? 一穂(冬服): (千雨ちゃんは、悟史くんの偽者がみんなを傷つける前に排除できて良かった、って言ってたし、私もそうだと思うけど……) 魅音(冬服): なーに、暗い顔してるのさ一穂。今日は楽しいクリスマスなんだから楽しまないと! 圭一(冬服): そうそう! 夕方にはみんなでクリスマスパーティーをやるんだからな! 一穂(冬服): う、うん。頑張ります……。 魅音(冬服): いや、頑張るとかそういうことじゃなくてさぁ……。 魅音(冬服): ……よし、決めた!今日のクリスマスパーティーの前にゲーム大会をやろう! 一穂(冬服): ゲーム……っ? 圭一(冬服): お、なんか急に元気が出てきた感じだな。 一穂(冬服): それってトランプとかボードゲームとか普通のゲームだよね? 魅音(冬服): ん? うん、普通のゲームだけど……嫌? 一穂(冬服): ううん、嬉しい! 圭一(冬服): ははっ、一穂ちゃんは本当に部活が好きだなぁ。まぁ、俺も好きだけどさ! 圭一(冬服): いやー、楽しみだなぁ部活! 魅音(冬服): あ、そう?じゃあ、もっと楽しみを増やしてあげるよ。……私、ちょっと電話してくるから。 圭一(冬服): お、おい魅音……なんだその企み顔は。ロクでもないこと考えているんじゃないだろうな? 魅音(冬服): そりゃクリスマスは特別なんだから罰ゲームだって特別にしなくちゃ……ねぇ? Part 03: 圭一(冬服): なーんて啖呵切ってたのになぁ、魅音!!はっはっはっはっ! 魅音(サンタ): ま、負けたーっ! くそーっ! レナ(冬服): はぅう~! 魅ぃちゃんかあぁいいよぉ~! 詩音(冬服): 今日のお姉、見事な負けっぷりでしたね。 梨花(冬服): ここまで見事に負けた魅ぃは珍しいのですよ。 沙都子(冬服): をーっほっほっほっ!サンタ姿、大変お似合いでしてよー! 羽入(冬服): あぅあぅ……それにしても菜央は電話を受けてから数時間でよくこんな凝った衣装を作ったのですよ。 菜央(冬服): あり合わせを組み合わせて、飾りを足しただけよ。大した作業でもなかったわ。 美雪(冬服): 組み合わせるだけの「あり合わせ」を持ってることが、そもそも凄いんだけどねぇ。 圭一(冬服): 魅音は、俺にこれを着せようとしてたのか……?想像しただけでゾッとするな。 レナ(冬服): はぅ……♪きっと、圭一くんも似合うと思うよ? 魅音(サンタ): そうだね、レナ!圭ちゃんに、あとでコレ着せてみようよ! 圭一(冬服): 俺は負けていないから、着ないっ!レナをさりげなく味方に引き入れようとするなっ! 魅音(サンタ): ぐっ……流れに乗せて、早く脱ぐ作戦が失敗! 圭一(冬服): へへへ、じゃあ罰ゲームの『サンタ衣装でケーキの仕上げ』さっそくやってもらおうか! 魅音(サンタ): 仕方ない……千雨、ケーキに何書く? 千雨: あ? なんで私に……というか、こういう場合メリークリスマスとか書くんじゃないのか? 魅音(サンタ): いやー、それじゃ普通すぎて面白くないでしょ。ほら、ケーキにサメ書いてあげようか? 千雨: いいのか?! 美雪(冬服): おぅ、すごい勢いで食いついた。 千雨: そうだな、ジンベエ、シュモク……いや、ここは定番でホホジロザメで! 魅音(サンタ): ホホ……? 千雨: 映画で有名なやつだ。 魅音(サンタ): おっ、ピーンときたよ!シルエット程度でいいなら、いけそう! 圭一(冬服): 魅音、サメなんて書けるのか?しかも生クリームで。 梨花(冬服): みー、魅ぃは漫画も書けるのですよ。 沙都子(冬服): えっ、そうなんですの? 魅音(サンタ): そうだよ~……あれ、梨花ちゃんに見せたっけ? 梨花(冬服): ……いつか見せてもらうと、ずっと前に話をしたのですよ。 魅音(サンタ): そ、そうだっけ? まぁいずれね……けどよかった。みんながパーティーを楽しんでくれて。 詩音(冬服): 皆さんのおかげで、今年のクリスマスケーキの売り上げも上々でしたからね-。 魅音(サンタ): それもあるけど、やっぱりパーティーってみんなで楽しまなくちゃ損じゃん? 魅音(サンタ): 私は部長だからね!仲間のためなら一肌でも二肌でも脱ぐよ! 魅音(サンタ): よーし、じゃあケーキの仕上げといこう!まずは外側からクリームをちょんちょっと……。 一穂(冬服): あ……。 一穂(冬服): (魅音さん、もしかして元気がない千雨ちゃんや私のことを心配して……?) 沙都子(冬服): 文字通り脱ぐことになったのは、負けたせいでは? 梨花(冬服): みー。肌面積がすごいのですよ。 魅音(サンタ): それについては、菜央ちゃんに文句言って! 圭一(冬服): なぁ、菜央ちゃん。なんで魅音をあんな風に飾り立てたんだ? 菜央(冬服): クリスマスらしくてかわいいでしょ? 圭一(冬服): いや、服は置いといて……髪も菜央ちゃんが整えてあげたんだろ? 菜央(冬服): あの服には、あの髪型が一番よ。……前原さんは似合わないと思ってるの?もしくはあたしのセンスがないと? レナ(冬服): ……圭一くん……? 圭一(冬服): い、いやいや菜央ちゃんの腕は今日も最高に冴えているぜ!似合う! 超似合う! 可愛いぞ魅音ー! 美雪(冬服): おぅ、前原くんが虎児の後ろから睨む親虎に屈した……。 ぶしゃっ。 魅音(サンタ): あっ、あ……あっ……あは、はははは!圭ちゃん冗談キツイよ! あはははっ!! 魅音(サンタ): お前みたいなサンタが枕元に現れても顔面にケーキ叩きつけられてるのがオチだってとかそういうこと思ってんでしょー! ぶしゃーっ! 詩音(冬服): ちょっ? お姉、生クリームを絞りすぎです! 沙都子(冬服): 生クリームのサメを書くスペースが、生クリームの海に沈みましたわね。 梨花(冬服): サメになる予定の生クリームが、生クリームに還っただけなのですよ。 羽入(冬服): 梨花……深い話をしようとしたのかもしれませんが、今の発言だけでは特に深くもなんともないのですよ? 梨花(冬服): 羽入、この激辛チキンさんを食べさせてあげるのですよ。はいあーん。 羽入(冬服): いらないのです真っ赤なのです辛そうなのですあうあぐもがあぁぁぁああーっ?! 美雪(冬服): お、おぅ……あっちゃこっちゃで大惨事。 一穂(冬服): (なんか、元気を通り越して大変なことになってるなぁ……) 千雨: ……一穂。ちょっといいか。 一穂(冬服): 千雨ちゃん……どうだった? 千雨: 詩音も沙都子も、悟史のことを全然覚えてなかった……収穫と言えばそれくらいだ。悪いな。 一穂(冬服): ううん、私は全然ダメだった。ごめんなさい。 千雨: いや……この件は、もうこれ以上探っても何も出ないかもしれない。だから、探るのは中止だ。 千雨: 悪かったな、付き合わせて。クリスマスパーティーを楽しんでくれ。 一穂(冬服): え? う、うん。わかった……。 一穂(冬服): (普通にパーティー楽しんじゃった……お腹いっぱい) 魅音(サンタ): どう、一穂? パーティーを楽しんでいる? 一穂(冬服): うん、とっても楽しいよ……あれ、他のみんなは? 魅音(サンタ): 低学年たちはもう眠いみたいだから、ソファ席で横にしてきた。他はあっちで、ドラマの内容について激論中。 詩音(冬服): ですから、あの登場人物は見ていて腹立つんですよ! もうウジウジ悩むなーって! 美雪(冬服): いや、でも上手くいく保証なんてないからさ。やっぱ一歩踏み出すのにためらっちゃうよねぇ。 レナ(冬服): はぅ……でもそのための時間が無いんだから、後悔がないほうがいいんじゃないかな? かな? 一穂(冬服): ……みんなが飲んでるの、ジュースだよね?みんな酔ってないよね?! 魅音(サンタ): ないない、ちゃんとジュースだって。 一穂(冬服): そ、そうだよね。よかった……。 魅音(サンタ): ……ねぇ、一穂。 一穂(冬服): ? なぁに、魅音さん。 魅音(サンタ): ……。一穂はさ、好きな男の子とかいるの? 一穂(冬服): 男の子……? 前の学校は女子校だったから、私の知ってる男の子は前原くんぐらいだけど……優しくていい人だよ。 魅音(サンタ): あ、いや。そういう意味じゃなくて……まぁいいや。詩音たちが激論しているドラマに関係するんだけどさ。 魅音(サンタ): 例えば、ある男の子を好きになったとするでしょ?でも、その男の子がいなくなっちゃった後……別の男の子を好きになることはダメなことだと思う? 一穂(冬服): …………? 魅音(サンタ): あはは! 一穂にはよくわからないか! 一穂(冬服): ご、ごめんなさい……男の子を好きになるっていうのが、その、よくわからなくて。 一穂(冬服): 私が美雪ちゃんや菜央ちゃん……千雨ちゃんが好きなのと、魅音さんや前原くんが好きなのは……違うのかな? 魅音(サンタ): なに、そのカテゴリ分け。一緒に住んでいるか否か? 一穂(冬服): うん。そんな感じ……だと思う。 魅音(サンタ): ふーん。確かに一緒に住んでると友達って言うより家族みたいに別のくくりになるのかねぇ。 魅音(サンタ): けど……まぁ、それは呼び方が違うだけで同じくらい好きでいいんじゃない? 魅音(サンタ): なんかね……前はそんなこと思わなかったのに最近ぽかっと穴が開いたような感じなんだよね。 魅音(サンタ): 今までピンと来なかったドラマの登場人物の悩みに、みょ~に共感しちゃったりとか。 魅音(サンタ): 寒くなったせいで、センチメンタルになってるのかねぇ。 一穂(冬服): (魅音さんは悟史くんを覚えてない……でも、何もかもなかったことにはなってない……?) 一穂(冬服): (……やっぱり、悟史くんのこと大事な仲間だって思ってたのかな) 一穂(冬服): (……。本物の悟史くんって、どこに行っちゃったんだろうな……) 魅音(サンタ): あー、一穂? そんなに真剣に悩まなくていいよ。おじさんの愚痴みたいなものだから……。 一穂(冬服): さっきレナさんが言っていたけど……後悔しないようにするのが、一番じゃないかな。 一穂(冬服): どれだけ頑張っても、後悔しないなんて無理かもしれないけど……。 魅音(サンタ): ……。一穂ってさ、なんにもわからないって顔して聞いているのに、時々核心をつくようなこと言うよねぇ。 一穂(冬服): そ、そうかな? 魅音(サンタ): くっくっくっ……でも、話を聞いてくれてありがと。おかげでちょっと胸の内がスッキリしたよ!やっぱ、モヤモヤ悩むのは身体によくないよねぇ! 魅音(サンタ): とはいえ……あっはっはっ!サンタの格好しているのに、私がプレゼントをもらっていたら、カッコつかないかなぁ! 一穂(冬服): ? そんなこと言ったら私、魅音さんからたくさんのプレゼントをもらったよ。ゲーム大会とか、今日のパーティーとか。 魅音(サンタ): ……それって、プレゼントって言っていいの? 一穂(冬服): 言わない……のかな?私は、みんなと一緒に楽しく部活をするのがずっと夢で、それを叶えてもらったから……。 魅音(サンタ): いや……そうだね。目に見えるプレゼントだけが、プレゼントじゃないよねぇ。 一穂(冬服): そうだよ。今ここでみんなが楽しく過ごせてるのは、魅音さんが色々と提案してくれたおかげだもん。 一穂(冬服): ありがとう、魅音さん。 魅音(サンタ): そうやって喜んでくれるのが、魅音サンタへの一番のプレゼントだよ。んじゃあらためて……。 魅音(サンタ): メリークリスマス!