単行本あとがき
あとがきでごわす。
新しいシリーズになってから、あとがきももう三個目ですねー。実は最初のプロットではこの巻の内容までが二巻だったりしたんですが、まあ書いてみて分かったんですが収まるわけありませんでした。
本編はともかくとして、あとがきのネタに困ってます……あと短編。どうしよ。
で、本編には出てこないあいつはどうしてるんだろシリーズ第三回。前回の宿題にしていた地人領です。
地人はもともとキエサルヒマ島の先住民だったものがドラゴン種族の移住によって南端に追いやられて暮らしていました。征服されて奴隷化したわけです。
当初のドラゴン種族は手に入れた魔術能力によって、地形や環境も簡単に造り替えてしまうくらい裕福で、非魔術種族の文化も自立もあっさり塗り替えるようなことも可能でした。文字通り心まで支配してしまうため、それ以前の地人種族と以降ではかなりの隔たりがあります。
これは三百年前にキエサルヒマに漂着した人間種族も同様で、彼らの言語や文明等はドラゴン種族(主に天人種族)から強引に教化されたものです。発明の順番や伝統、用語が全体的に
当然こうしたとんでもない非道は反発を生みましたが、絶頂期のドラゴン種族に敵うはずもありませんでした。さらにドラゴン種族が自滅してからはさらに悲惨で、聖域も人間種族に奪われ、彼らは自分たちのルーツもアイデンティティーも失った状態でマスマテュリアで細々と暮らすばかりでした。
と少し遡った話になりましたが、結界崩壊後、地人領を閉ざしていたウォー・ドラゴンも死滅してからさらにそれが進みます。街道が開けて人間種族が往来するようになると、地人たちは本当に、そこに住み続ける意味がなくなりました。元来そうなのか奴隷化された後遺症か、基本的に呑気な性質の地人種族たちは、地人領を放棄してめいめい気の向くままに放浪する道を選びます。
ひとりから数名の単位で毛皮のマントを着た地人たちが、キエサルヒマの各地をぶらついています。その姿は二十年前ほど物珍しいものではなくなり、大小さまざまな地人たちが今日もどこかで長々と名乗りをあげたりうまくいかない悪さをしたり爆発に巻き込まれたりしているようです。
この過去の経緯といったものは聖域の資料が開放されてから、市井にも広く知られるようになりました。貴族共産会の一部には、聖域の継承者を自負するのであれば地人種族への
主流にこそならなかったものの、それでもこの運動は失墜した貴族の権威を盛り返すスローガンとしては馴染みやすく(『真の権威に求められる行動を!』)、それなりの流行を見せました。
エバーラスティン家は各地にスパイを送り込むことで一定の地位を保っていた家でしたが、王立治安構想が消えてからは徐々に役割を失いました。本家の当主マーリー・エバーラスティン(現在四十四歳、当時はまだ二十八歳)は怪人物として有名で、急な没落も「ふうん。俺の番で来やがったか」と、明るみに出せない過去の資料ごと家屋敷に火を放って姿を消しました。
十年後、再び姿を現した時には前述の運動にのめり込み、地人と同じ毛皮のマントを着た格好で、旅先で知り合った地人の兄弟と一緒でした。親類の中で唯一破産していないトトカンタの分家に転がり込み、見覚えのある地人兄弟ともども、現在はそこに居候しています。
海を渡った魔王夫妻はそのことを知りません。
マーリー・エバーラスティンの行動が具体的に贖罪になっているかどうかは疑問ですが、運動全体は、少数種族が分散すれば次世代には絶滅の可能性もあるとして、地人種族に新たなる自治領を与えようというもの。
ただし地人種族はそれを結局はまた奴隷化なのではないかと警戒し、また『与えるとは何様だ』といった反発もあり、うまくいってはいません。土地を整備する開拓公社は開拓にかかる費用を徴収しないことには立ち行かず、そこに地人が住むというのなら彼らと契約しないとならないわけですが、その契約の代表者となる地人種族をまとめる者というのがいません。
十数年間、多数の地人種族と交遊したマーリーには商才もあり、地人の領主代行となり得る人物として目をつけられています。
「時期が来て、地人の王となる者が首を縦に振れば」と彼も言っており、マーリーが推薦する地人というのはまあ、そういうことになる可能性がわりとあるわけですが……
とまあ、こんなとこでしょうか。エバーラスティン家って登場が旧一巻で、最古の設定だけに色々矛盾ありそうですが、まあしょせん裏の設定なので。
次はどうしようかなー……
などと悩みつつ。次の巻末でまたお会いできれば幸いです。
ではー。
二〇一二年五月──
秋田禎信