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マヨールは爆発が起こった時点で、会議室の窓から飛び出していた。

他にも魔術戦士らが一緒に飛んでいた。庭に降りて、破られた正門へと駆け出す。見回すと、マヨールのすぐ近くを走っていたのはイシリーンだった。他にはビーリー・ライトやベクター・ヒームといった騎士団連中もいる。なにが起こったのか考えるよりもまずは現場に走る──のだが、すぐ分かったこともある。あれは魔術だ。

魔術士が外側から門を破った。これはおかしい。あり得ないことだ。

正門に着いて、状況は見えた……のだが、余計に困惑もした。破られた門に立つのはオーフェン・フィンランディ。この学校の前校長で、最高位の魔術戦士。

エド隊長と対峙たいじして、集まってきた騎士団にも動じた様子はない。背後を──壊した門を指さして、こう告げるのが聞こえた。

「門は開けておけ。出入りに面倒くさいだろ」

そして振り向き、今度は学校の外の群衆へと怒鳴りつける。

「入りたければ入ればいい。ただし、校内で騒ぎを起こした奴は二度と生きて出られると思うな。石を投げたいなら河原に行け。遊びで来てるならせろ! お前らが恐れる通り、戦術騎士団はこの世で最強最悪の戦闘魔術技能者集団だ!」

圧倒される人々を残して、オーフェンは肩を竦めると向き直って、すたすた庭に入ってきた。その頃にはマヨールらもエド隊長やもともといた魔術戦士らの近くまで来ていたが、そのへんにだけ聞こえるようにつぶやき出す。

「せんとうまじゅつぎのうしゃしゅうだん。噛まずに言えたの褒めるべきじゃないか? 大事なことだろ、びびらせるには」

「目立ちたがりなことをするものだな。珍しい」

と言うエド隊長に、前校長はにやりとし、

「門を破るまでは安心だ、と思ってたのは外の連中もさ。入る度胸のある奴は、もっと別の場所から入ってくる」

「見張りの負担が増す」

「門があったって見張ってたじゃないか」

「どちらにせよ破壊する必要は──」

「あー、分かったよ。確かに調子に乗ってぶっ壊した。直したけりゃ直せ」

耳を塞ぐポーズでうるさそうに、前校長。

本物、なのだろう。と思えた。ということは拘置所から脱走してきたのか? ならば大事だ。魔術士と世間との、対立の最後の一打にもなる。

オーフェンは騎士団のメンバーを見回し──最後に、マヨールに目を留めた。ように見えたがどちらにせよ一瞬のことだった。そのまま歩き出す。第一教練棟へ。

魔術戦士たちはただ、互いに顔を見合わせた。なにをすべきか分からない。

マヨールもそれは同じだったが進み出た。

「オーフェンさん!」

呼び止められても無視するのではないか。と思ったが違った。オーフェンは立ち止まり、振り向いてきた。

「マヨール」

そしてこう訊ねてきた。

「妹は見つけたか?」

虚を突かれた。がマヨールは考えずに告げた。

「はい。でも、今は行方が知れません」

「そうか」

そして考えるように一拍おいて、

「まさか騎士団に入ったわけじゃないよな?」

「ええ」

「なら、ついてこい。手勢が欲しい」

手を振ってまた歩き出す。

よく分からないまま追いかけて、マヨールは首を捻った。

「どういう意味ですか? 手勢なら……」

残してきた魔術戦士たちに目をやる。オーフェンは速度も落とさないまま、

「縄張りってもんがあるんだよ。以前と違って俺はもう騎士団顧問でもないし、あの連中は飽くまでエド隊長の部下だ。マジクの野郎も娘どもも、まだもどってないようだしな」

「でもぼくは──」

「俺もお前もはぐれ魔術士だ。所属を気にするのは都合が悪くなった時だけでいい。妹捜しを後日手伝ってやるから今は俺を手伝え」

「いや、でもですね」

「話もあるから来い。ぐずるようならそこの女だけでもいい」

「うわーお。好感度高い徴用の仕方」

と、これは〝そこの女〟つまりイシリーンだが。オーフェンはにやりとして言い直した。

「急いでてね。愛想は省略だ。だが使い物になるなら報いる。原大陸の魔王オーフェン・フィンランディとして約束する」

「え? お給料? 島とかくれます?」

「給料は出ない。今までと同じ、頼んだ記録も残さない。だがまあ、島なら考えとく」

「わーいマジ! あったかいとこがいいです!」

なんだか歓声をあげているイシリーンに、マヨールは疑わしくうめいた。

「お前、島なんか欲しかったか?」

「思いつきだけどいーじゃん島。教育した猿に労働させて、日々怠惰に暮らしましょうよ。ふたりで王家とか作ってさ」

はしゃぐイシリーンにオーフェンが言い添える。

「キャプテンキースの髑髏どくろ島にはヌンチャクとか使う猿がいっぱいいたな」

「あっ、そこすごく良さそう!」

「そう言える発想の根本が分からない」

色々な意味で不安にさいなまれるマヨールだったが。

イシリーンがなおも髑髏島について聞きたがり、猿がみんな赤いチョッキを着ていただの、毒蛇もたくさんいたが棺桶かんおけ山に近づきさえしなければ大丈夫だの、からすの予言書を火口に投げ込んだ後は一度も行ってないんだが死の騎士はまだ元気かなーだの、明らかに出鱈目でたらめの話をオーフェンから引き出した。何故か前校長は真顔で話していたが。