16
マヨールは爆発が起こった時点で、会議室の窓から飛び出していた。
他にも魔術戦士らが一緒に飛んでいた。庭に降りて、破られた正門へと駆け出す。見回すと、マヨールのすぐ近くを走っていたのはイシリーンだった。他にはビーリー・ライトやベクター・ヒームといった騎士団連中もいる。なにが起こったのか考えるよりもまずは現場に走る──のだが、すぐ分かったこともある。あれは魔術だ。
魔術士が外側から門を破った。これはおかしい。あり得ないことだ。
正門に着いて、状況は見えた……のだが、余計に困惑もした。破られた門に立つのはオーフェン・フィンランディ。この学校の前校長で、最高位の魔術戦士。
エド隊長と
「門は開けておけ。出入りに面倒くさいだろ」
そして振り向き、今度は学校の外の群衆へと怒鳴りつける。
「入りたければ入ればいい。ただし、校内で騒ぎを起こした奴は二度と生きて出られると思うな。石を投げたいなら河原に行け。遊びで来てるなら
圧倒される人々を残して、オーフェンは肩を竦めると向き直って、すたすた庭に入ってきた。その頃にはマヨールらもエド隊長やもともといた魔術戦士らの近くまで来ていたが、そのへんにだけ聞こえるようにつぶやき出す。
「せんとうまじゅつぎのうしゃしゅうだん。噛まずに言えたの褒めるべきじゃないか? 大事なことだろ、びびらせるには」
「目立ちたがりなことをするものだな。珍しい」
と言うエド隊長に、前校長はにやりとし、
「門を破るまでは安心だ、と思ってたのは外の連中もさ。入る度胸のある奴は、もっと別の場所から入ってくる」
「見張りの負担が増す」
「門があったって見張ってたじゃないか」
「どちらにせよ破壊する必要は──」
「あー、分かったよ。確かに調子に乗ってぶっ壊した。直したけりゃ直せ」
耳を塞ぐポーズでうるさそうに、前校長。
本物、なのだろう。と思えた。ということは拘置所から脱走してきたのか? ならば大事だ。魔術士と世間との、対立の最後の一打にもなる。
オーフェンは騎士団のメンバーを見回し──最後に、マヨールに目を留めた。ように見えたがどちらにせよ一瞬のことだった。そのまま歩き出す。第一教練棟へ。
魔術戦士たちはただ、互いに顔を見合わせた。なにをすべきか分からない。
マヨールもそれは同じだったが進み出た。
「オーフェンさん!」
呼び止められても無視するのではないか。と思ったが違った。オーフェンは立ち止まり、振り向いてきた。
「マヨール」
そしてこう訊ねてきた。
「妹は見つけたか?」
虚を突かれた。がマヨールは考えずに告げた。
「はい。でも、今は行方が知れません」
「そうか」
そして考えるように一拍おいて、
「まさか騎士団に入ったわけじゃないよな?」
「ええ」
「なら、ついてこい。手勢が欲しい」
手を振ってまた歩き出す。
よく分からないまま追いかけて、マヨールは首を捻った。
「どういう意味ですか? 手勢なら……」
残してきた魔術戦士たちに目をやる。オーフェンは速度も落とさないまま、
「縄張りってもんがあるんだよ。以前と違って俺はもう騎士団顧問でもないし、あの連中は飽くまでエド隊長の部下だ。マジクの野郎も娘どもも、まだもどってないようだしな」
「でもぼくは──」
「俺もお前もはぐれ魔術士だ。所属を気にするのは都合が悪くなった時だけでいい。妹捜しを後日手伝ってやるから今は俺を手伝え」
「いや、でもですね」
「話もあるから来い。ぐずるようならそこの女だけでもいい」
「うわーお。好感度高い徴用の仕方」
と、これは〝そこの女〟つまりイシリーンだが。オーフェンはにやりとして言い直した。
「急いでてね。愛想は省略だ。だが使い物になるなら報いる。原大陸の魔王オーフェン・フィンランディとして約束する」
「え? お給料? 島とかくれます?」
「給料は出ない。今までと同じ、頼んだ記録も残さない。だがまあ、島なら考えとく」
「わーいマジ! あったかいとこがいいです!」
なんだか歓声をあげているイシリーンに、マヨールは疑わしくうめいた。
「お前、島なんか欲しかったか?」
「思いつきだけどいーじゃん島。教育した猿に労働させて、日々怠惰に暮らしましょうよ。ふたりで王家とか作ってさ」
はしゃぐイシリーンにオーフェンが言い添える。
「キャプテンキースの
「あっ、そこすごく良さそう!」
「そう言える発想の根本が分からない」
色々な意味で不安に
イシリーンがなおも髑髏島について聞きたがり、猿がみんな赤いチョッキを着ていただの、毒蛇もたくさんいたが