「馬鹿な奴らが馬鹿しでかそうとしてる」

ぽつりとラチェットが言い出すのを聞いて、室内にある頭のうちみっつが彼女のほうを向いた──ひとつはサイアンである。つまり自分だ。もうひとつはふわふわした金髪の頭だった。ヒヨ・エグザクソン。ふたりともラチェットの級友で、今は第一教練棟の最上階にあるこの会議室Cに寝泊まりしている。そしてもうひとつ。これはやや小さな頭だ。黒いおかっぱの髪で、十歳の少年だった。マキ・サンクタム。

ここの住人は五人と一匹。残る頭ふたつは動かなかった。黒い犬はもともとラチェットのほうを向いていたからだが、最後のひとつ、これも金髪のクリーオウおばさんはぼんやりと縫い物を続けながら、小さくあくびした。

声を出したのはそのおばさんだ。

「それはいつものことでしょ」

「そだけど」

と、ラチェット。ついさっきまで犬と取っ組み合ってじゃれていたのだが、ふうっと立ち上がると窓に寄り、カーテンの隙間から外を見た。