しかし、淑彦は真顔でうなずいた。
「服を脱ぐんだ。言うことを聞いてくれ!」
「じ……自分が何を言っているのか……ぶげっ!」
分かっているのか? まで言うことは出来なかった。次の燃える岩の雨が発射され、やはり絢子は二発を喰らって地面に倒れたからだ。
「だから、服を脱ぐんだ。下着だって着けて居ちゃいけない」
回復魔法を使いながらも淑彦が声をあげる。
「だ、だから、何を馬鹿なことを……」
回復し、むっくりと起きあがった絢子が
と、まともな、しかし、それだけに決定的にどうしようもない答えが返ってきた。
「忍者は着ているものを脱げば脱ぐほど
「
真顔の淑彦に絢子は
しかし、淑彦は
「効率が良いことを言っているだけだ。それならば、君のレベルならば回避に集中すれば、私がイフリートを倒せる!」
淑彦=淑恵は、もちろん感情を
「脱ぐんだ! 恥ずかしくない! 私しか見ていない! いや、恥ずかしければまずはちょっと脱ぐところからはじめるべきだ! そうすれば、自由が実感できる!」
「どこのヌーディスト村だ!」
絢子は文句を言ったが、その次の瞬間、頭に岩を喰らっている。
「うがっ!」
「だから言ったのだ! あと一回しか回復は使えないぞ!」
「う……脱げば……脱げばいいんだろう! だが、向こうを向いていろ!」
回復して立ち上がった絢子は、
しかし、その決意にも
「向こうを向いていたら、イフリートに攻撃できない!」
「じゃあ、一枚だけだ!」
文句を言いながらも、絢子は自らの服に手を
「主に鎖帷子を脱がないと意味がないぞ!」
「だ、だから余計なことを言うなぁ!」
しかし、毒を
「こ、これでいいんだろうが……! って、あれ……?」
絢子は戸惑った。文句を言いかけたものの、自らの身体の自由度が、ぐっと上がったことが実感できたからである。
「これは……!」
三倍、とまではいかないが、次に
「それでいい。だが、確実を期すために、全裸になったほうが……」
「くどい! これで十分にかわせているのだからいいのだ!」
絢子は怒鳴る。
それに淑彦は首を振った。
「だが、イフリートは死にかけると、全方位にさらに岩を降らせるぞ!」
そして、すぐにその通りになった。
イフリートの身体が小さくなる。が、小さくなったのは、燃える岩をさらに大量に身体から
「馬鹿ぁああああ!」
泣きながら絢子はスカートに手をかけた。
そして……。
イフリートは
しかし、その
「ううう……なんという
そこに淑彦が歩み寄り、服を渡す。
「済まなかった。恥ずかしいところをよく
「馬鹿っ! もう少しデリカシーというものがないのか!」
絢子は怒鳴り、服をひったくる。
と、淑彦がその反応に驚いて、硬直する。
「す、すまなかった。どうにも人の感情の
その淑彦の反応の大きさと、あまりに
――
「つ……次はもう少し相手の気持ちを考えろ」
淑彦にあちらを向かせて絢子は服を着る。
「本当にすまなかった。そのせいだな、こんなことに学院を巻き込んでしまったのも」
後ろを向きながら淑彦はまた
「わかったから、あまり
「単なる自己反省だ。他人との直接のコミュニケーションが重要と考えていたからこその仮想異空間研究だったが、そういう本人が人の感情を理解できていないというのは悔やむべきだよ。いや、本当は理解できていないからこその仮想異空間研究だったというべきか。心底ではわかりあえる人を求めていたということだろう」
淑彦は振り返り、絢子に笑いかけた。
「いずれ君に認められるような人間になろう。その時は、私を好きになってくれ」
「なっ……」
絢子は顔を赤くして硬直した。
――い、今のは告白されたのか……ひょっとして……。
「……な、何を言っている?」
戸惑う絢子を見て、淑彦は残念そうに首を振った。
「いや、まだまだだな、私は」
「そ、そんなことは……いや、待て、私は何を言っているんだ? そういうことじゃない。ただ、その……まぁ、なんだ」
混乱した絢子がしどろもどろになる。
しかし、淑彦は何も気にせずに先に立って歩きはじめた。
これには絢子も拍子抜けする。
――こちらから「さっきの言葉はどういう意味か?」と聞くのも変だしなぁ……。いや、意識しているような場合じゃないんだが……。
そんなことをごちゃごちゃと考えていると、淑彦が前方を指さした。火口に降りる道である。火口を満たしていたマグマの湖が、すっかりその黒い
「イフリートが消えて、マグマが消失したんだ」
淑彦は解説し、さらにその中央を見るように絢子に言った。
「剣が……」
絢子は火口の中央に
「行こう」
淑彦が火口へと降りた。
絢子も後に続くが、しばらく行ったところで、ふと足を止めた。
「ちょっと待て。気配が」
「気配?」
淑彦が振り返る。絢子はうなずく。
「人の気配だ。後ろから来る生徒がいたか」
「それは助かる。剣を手に入れたなら、いよいよ魔王のところへ行くつもりだった……」
そう声を上げた淑彦だったが、その言葉は最後まで発せられることはなかった。火口へ続く道の上に、そいつが姿を現したからである。
最初に岩を踏む足音と、何かを引きずる音が重なって聞こえてきた。そして、その後に姿を現したのは、背の低い少女であった。
「誰だ……見覚えがない。クラスの者ではない」
絢子が身構えた。
と、背の低い少女も呼応するように身をかがめた。
それにしてもアンバランスに見えた。体の造作がおかしいわけではない。不自然に見えたのは、身長が百二十センチほどしかないのに、背中に百八十センチ近い刀を
しかし、顔も身体も、見かけには悪いところはない。むしろどちらも
「封印の地に足を踏み入れることは何人たりともまかりならん」
少女がどこか幼い声をあげた。しかし、その口調は堂々とした古風なもので、そのあたりもアンバランスであった。
「封印の地? すると、あなたがここを守っているのか?」
絢子が聞いた。と、やはり堂々とした声が返ってくる。
「いかにも。
「番人……イフリートは倒したはずだ。彼女が真の番人なのか?」
絢子が
淑彦が首を横に振る。
「このキャラクターはゲームにはいない」
「それは……確かなのか?」
絢子の声に
「待ってくれ、それにしても、言っていることもいかにもゲーム的だぞ。封印の地というのも合っている」
その絢子の反応には、淑彦も
「それはそうだ。だが、
「すると、こいつが例の不確定要素……?」
「そうなる……」
淑彦は、緊張した
だが、その密談は背の低い少女には好評ではなかったようだ。
「拙者、秘密の相談を好まぬ! かくなる上は……」
背の低い少女は、背中の刀に手をかけた。
絢子は身構えたが、そのとき、背の低い少女の刀は決して
案の定、背の低い少女の腕は、刀の
「普通、わかるだろうに……」
絢子はあきれたが、次の瞬間、その通り、背の低い少女とて〝普通わかる〟ことをわかっていたのだと思い知らされることになった。
「拙者けいすと申す。
けいすと名乗った背の低い少女は、握った刀の柄を一度
「ああっ!」
絢子が見上げる空に
「危ない!」
淑彦がするりと絢子の前に回りこんだ。自らの剣を抜き、空中から凄まじい勢いで降ってくるけいすの刀を受け止める。
重機械同士がぶつかったかのような金属音が響いた。けいすの凄まじい斬撃に淑彦は後方に飛ばされている。
「淑彦!」
反射的に絢子は名を呼んでいた。
が、淑彦は吹き飛ばされながらも身体のバランスは
「大丈夫。まだこの程度なら」
淑彦は絢子に笑いかけた。
「……なっ! こんなときに格好をつける
絢子は怒鳴る。
「しかし、これはゲームの部分からは外れている。何が起こるかわからない。これは私がとらなくてはならない責任だ」
淑彦はひるまない。
「わけのわからないことをごちゃごちゃと! 貴様ら、いい加減、拙者を
けいすはまたも
火口の広い岩原を下がっていくのでなければ、淑彦は簡単に追いつめられていただろう。ただけいすの攻撃をしのぐことしかできていない。
「淑彦!」
絢子がなんとかけいすの
「この地を守っているというが、何を守っている!」
攻撃を受け止めながら淑彦が聞く。
と、意外にも素直にけいすは答える。
「何を守っているかは秘密なのだが、守るものと言ったら秘密に決まっている!」
素直に答えたのはいいが、けいすはあまり頭が良くないのかもしれない。
「あの剣を守っているのか?」
「それは違う! 魔王が
けいすは首をひねった。
「待て、それなら、我々もそちらの
淑彦は言ったが、けいすは攻撃を止めることはなかった。
「だとしても任務は任務。負けるまで、拙者は攻撃を止めるわけにはいかん!」
「負けたら攻撃を止めるのか?」
「武士に二言はない! というか、負けたら死ぬ! 決まっておるじゃないか」
「そういうことなら……」
淑彦は剣を前に突き出し、ぴたりと動きを止めた。
「隙あり!」
けいすがその瞬間を
「淑彦!」
それを見て絢子が叫んだ。けいすの刀は確実に淑彦の首をはね跳ばす
「ひ!」
短い悲鳴を絢子はあげた。元々、淑彦には
そして、淑彦の身体は完全に硬直したまま、その姿を消そうとしていた。ゲーム的な意味での死であれば、
「まさか、本当に……」
死んでしまったのか、との言葉が口から出てこない。言いたくはなかったからだ。
しかし、完全にけいすは勝利を確信しているようだった。
「戦いに死すは武士の
けいすは絢子に顔を向け、刀を構えた。
絢子としても感傷に
「いざ!」
けいすが刀を振り回す予備動作に入った。大刀を振り上げる。
が……。
ひょい、とけいすの身体が宙に浮いた。ジャンプしたわけではない。刀にぶら下がるような形でいるからだ。
「な、何をするか! いや、何者だ!」
けいすは刀の柄にぶら下がりながらじたばたと暴れる。そして、振り返り、顔を確認して
「どうして!」
「ああ!」
絢子も驚きの声をあげた。
刀を
「普通では絶対に勝てないから、映像のバグを利用させてもらったのさ」
淑彦は言った。
「ばぐとは何か! ばぐなどあるはずがない! ええい、拙者は……!」
けいすはじたばたと暴れていたが、淑彦が刀を振り回すと、柄を握っていた手が滑ったらしく、けいすは、ぽーん、と飛んでいく。
「あーれー!」
けいすは地面に落ちて、ごろごろと転がった。
「バグ?」
絢子は淑彦に駆け
淑彦はうなずいた。
「特定の行動で、固まった映像が残る。しばらくしたら、少し離れた別の場所から出てくるけど、固まった映像は少しの間だけ残るんだ」
「馬鹿が……
絢子は
と、そこに大きな声が響いてきた。
「拙者の負けだ! 腹を切るからよく見ておけ!」
けいすが正座して、着物の前を、がば、と開けていた。
「お、おい、ちょっと待て! 早まるな!」
絢子が止めるが、けいすは
「止めるな! これが武士の死に様……」
けいすは右手を振り上げ、左手を腹に
そして……。
「……すまぬ、刀を貸してくださらんか?」
「いや、普通、貸さないだろ」
絢子は
「拙者、大刀主義にて、組み討ちもせず、
けいすが絢子に頭を下げた。
「最近は、そういう武士道は
「いや、拙者、古風にて」
「古風なら自決用の脇差しを持っていてくれ」
「自決はしたことがないので、勝手が分からん」
「自決だけは誰でもはじめてなんだよ! どこが古風だ!」
「じゃあ古風じゃなくてもよい」
けいすは言った。すでに会話がぐだぐだになりはじめているのは、どちらかといえば、けいすの性格のせいであるのは明白だった。見かねたのか、それとも多少ずれているのか、淑彦が助け船を出した。
「それなら、私が命を預かろう。協力してくれ」
「協力?」
けいすが立ち上がる。
「いや、君が何者か教えてくれればいい」
淑彦が言うと、けいすは腕を組んだ。
「それだけでよいのか?」
「そうだ」
「名は名乗った。けいす。魔王が聖杯を手に入れないように
「それはわかった。どこから来たんだ?」
「ここにいるために生まれた。それしかわからぬ」
けいすはそう言った。自分でもわかっていないことがあるらしい。
「しかし、魔王というのは、紗伊阿九斗のことだ。いや、ゲームとしての魔王ということなら、やはり聖杯を
絢子は淑彦に聞いた。
淑彦も首をひねる。
「いや、わからない。しかし、その聖杯というのもゲームには最初はない要素だった。つまり、彼がそれを手に入れると危険……そんなことなのかもしれない」
淑彦はそう言って、絢子と顔を見合わせた。
「何をごちゃごちゃ言っておる。魔王の力を封印したのが聖杯ではないか。魔王は倒せない。だから封印したのだ」
けいすが言う。
「これは……ストーリーが変わっている……いや、まさか現実の話なのか?」
絢子はおもわずつぶやいた。そして、淑彦に向かって緊張した顔を向けた。
「あなたは知らないかもしれないが、私たちは魔王をめぐるトラブルにずいぶん巻き込まれてきた。もし、これが現実の魔王の話なら、ゲームどころでない大きな
それを聞いた淑彦も顔色を変えた。
「それなら……どうしたらいいんだろう?」
「ともかく、その聖杯とかの話を阿九斗に伝えないと……。多分、彼女も
絢子はけいすを見ながら言った。
淑彦はうなずいた。
「……君、ついてきてくれるか?」
淑彦が
「命預けまする」
「すまないね。私もなんだかわかっていないんだよ……。でも、どうやら何かをしなくちゃいけないってことはわかる。こんな気持ちになったのははじめてだから
淑彦は言った。
その口調がこれまでの気取ったものでないことに、絢子は淑彦の
「私も手伝うよ。心配しないでいい」
絢子は淑彦に笑いかけた。
淑彦も
そこに剣があった。
魔王を倒せるという剣は、台座の上に突き刺さっていた。
両手持ちの剣で、
「これが『イビルスレイヤー』。設定上、最強の剣だ」
淑彦は、その柄を両手で握って力を込めた。剣は、ずるり、と抜けた。
「おお」
絢子は思わず声を上げていた。というのも、その剣を抜いた瞬間、地面がぐらぐらと
「こんな演出はないぞ……」
剣を握った淑彦が言い、絢子を振り返った。
「それじゃあ、また何かが……」
「魔王が動きはじめたのでしょう」
けいすが言った。
「え?」
絢子が意外に思って声を上げる。阿九斗はすでにこのゲーム世界では目覚めていると言ってもいいはずだ。
しかし、けいすはこう説明した。
「魔王は二段階で封印されております。この世界の様相が変わってしまったので、どこにいるのかはわかりませんが、少なくとも魔王そのものを封じ、そしてその力を聖杯に
「それはどういう……。魔王が二人いることになってしまう」
淑彦が言いかけたとき、大地の揺れがさらにひどくなった。
火口の黒い岩肌が割れる。百メートルほどの
「
淑彦が元来た道を指さした。
三人は道に向けて駆け出す。
そうしている間にも、裂け目は反対側に向かって伸びている。そして、裂け目の周囲の岩が、下へと崩れはじめた。
「
絢子が疑問を口にする。道を上りきり、火口を回る道に
「ああっ!」
「なんであろうか。拙者、あれは見たことがない!」
淑彦とけいすも声をあげた。
裂け目は、すでに巨大な穴とも呼べるものになっていた。直径数百メートルの穴の中は、真の
空気の圧力すら変わったように感じられた。その巨大なものが空を
それは、巨大な
「どういうことだ……?」
淑彦はそれ以降、言葉を失って立ち尽くした。
そして、その怪物は、移動しはじめた。火口をよじ登り、その向こう側へと
北は魔王の城がある方角である。
「あれがけいすの言っている魔王……? 聖杯を探しているのか……?」
絢子は
○
リリィは送られてくる情報に目を配りつつ、マナスクリーンに表示される地図へと走っていた。ひぃひぃ言いながらヒロシも続く。
「その先に2Vがいるんすか?」
「そう信じないと
リリィはすでに興奮している。
地図の先は、雑然とした地区の古びたマンションを示している。それほど所得の高くない者が住んでいる地区であり、必然的にそこの住人は長期居住を行わず、他者への関心は低い。
現場に
「誰か来たらまずは話しかけて止めろ。逃げたなら、追え。戦わないでいい。まとわりつけばいいんだ」
リリィはそうヒロシに念を押してから、自分は反対側からマンションへ入った。目標は二階である。
ところどころ破損の目立つ
「すぐに突入すれば……だ」
自分で忘れぬようにそうつぶやき、リリィは目的の
ドン!
凄まじい音とともに扉がへこみ、
そこは、人形だらけの部屋だった。その他に調度品は何もない。
部屋の中央に
その少女の外見が、リリィに即座に拳を打つのをためらわせた。
そして、その
「
少女がかすれた声を出した。久しぶりに他人に肉声を発した者だけがもつ不自然な
少女――2Vは、顔の横に表示したマナスクリーンに映像を映し出していた。
「あのゲームか」
リリィは身構えた。そして、人質、と2Vが言った意味を
「そうだ。中の人間を消去することもできる」
2Vが言った。
その口調はまさに2Vのもので、リリィは改めて自分の判断の
「人形遊びは女の子のものだってわかっておくべきだった。今ならそう言えるが……。そんな不健康でしょぼくれた女だとはね」
「身体については言うべきじゃないね。習わなかったか? 相手の外見を馬鹿にするなってさ。ともかく、生徒たちを消されたくないなら、大人しくしていることさ」
2Vが早口で言った。
「悪口を言われた程度で生徒を
リリィは
しかし、そう思って2Vを見ると、彼女は生身をさらしているにもかかわらず、2Vの側にもまだある程度の余裕があるように思えた。
――まさか、まだ手があるのか?
リリィは
「それなら、仲良くここで待っていようじゃないか。それでいいんじゃないか? お
2Vは軽口を叩く。
「てめぇ……わざわざ場所を特定される危険を
「さてね。とはいえ、何を追ってたかってことは調べたらバレちまうな。手間を避けるためにそいつだけは教えてやろうじゃないか。計画に使用した仮想異空間……。そこに最初からあったものが何か、ってことさ」
2Vの言葉に、リリィは
「最初から仮想異空間の中にあったもの、だと?」
「そういうことさ」
2Vが不健康ににやりと笑う。
「そいつは何だ! メギス神の仮想異空間だぞ?
リリィは
「神職の連中は知らなかったさ。ずいぶん昔の話だからね。いや、むしろそいつを忘れるために、資料は深い階層に
「で……結局、何が中にいるんだ?」
リリィが聞くと、2Vはくすくす笑う。
「ふふ……もったいぶることは無かったな。そいつは、一番最初の魔王だ」
「なん……だと……」
リリィは息をのんだ。
「そんなものが存在したのか?
「だからこそ、仮想異空間に押し込んだ。昔も今も考えることは同じだな。そして、私はそいつを目覚めさせてもらった。今、その初代魔王はゲーム内の怪物として姿を現した。こちらでプログラムを改変して、そういうことにさせてもらった」
「あのハッキングはそのためか!」
「中にはゲームのルールから少し外れた化け物がいることになる。そいつに殺されたら、仮想異空間から出てくるわけじゃなく、ホントに死ぬんじゃあないかな」
2Vは笑った。
「ちぃ! なんてことを!」
リリィは
「中への通信手段は封じさせてもらった。ゲームの掲示板はもう使えない」
「中の奴らでなんとかしろってことか……」
リリィは苦々しく
「あちらの時間であと数日のうちに決着がつくだろうさ。こちらでは、あと一時間もあるまい。このまま待とうじゃないか。ここならゲーム内の映像も見られる。さて、最後にどちらが勝っているか……お楽しみだ」
2Vはにやりとした。