Part 01: 沙都子(私服): にーにー、早く起きて!いつまで寝ているつもりなのっ? 悟史(野球服): っ、……ぅ、うーん……。 沙都子(私服): にーにーってば! 悟史(野球服): あと少し、……もうちょっとだけ……。 沙都子(私服): さっきからそればっかりじゃない、もう!今日は試合があるから、絶対寝坊できないって言っていたのはにーにーでしょ?! 悟史(野球服): ……? しあ、い……。 悟史(野球服): って、あぁっ?! 悟史(野球服): 沙都子、今は何時っ?……わわっ、もうこんな時間じゃないか!なんでもっと早く起こしてくれなかったのさー?! 沙都子(私服): ちゃんと起こしたわよ! でもにーにーが、「あと10分」「もうすぐ起きるから」って言ってどんどん先延ばしにしていったんじゃない! 悟史(野球服): だからって、起きるはずだった時間から2時間以上オーバーってあんまりだよぉぉっ?! 悟史(野球服): あぁっ、もう話し込んでいる場合じゃない!ユニフォームはどこ? バッグが見当たらないっ?とにかく、急いで自転車で行けばなんとか……?! 沙都子(私服): 家を出る前に、朝ご飯は食べなきゃダメでしょ?お腹が空いたまま試合に出て、途中で倒れたらみんなに迷惑をかけちゃうわ。 悟史(野球服): む、むぅ……それはそうかもしれないけど、とても食べている時間なんて……っ! 沙都子(私服): ……。ふふっ……あはっ、あはははっ!やーい、ひっかかったー! 悟史(野球服): えっ……ど、どういうこと沙都子? 沙都子(私服): まんまとだまされたわねぇ、にーにー?安心して、そんなに急がなくても大丈夫よ。まだ集合時間には全然余裕があるんだから。 悟史(野球服): で、でも……あっちの壁掛け時計だと、完全に遅刻の時間になっているじゃないか……? 沙都子(私服): それはそうよ。だってあの時計の針は、さっき私がいじって2時間ほど先に進めてあるんだから。 悟史(野球服): んなっ? そ、そうだったの……? 悟史(野球服): もう……それならもっと、早く言ってよ……。驚きすぎて、心臓が止まるかと思ったじゃないか。 沙都子(私服): あはははっ、大げさねぇ。だけど、ちゃんと時間通りに起きられたんだから今後も時々こういう目覚まし作戦でいきましょう♪ 悟史(野球服): むぅ……こんな起こし方を何度もされたんじゃ、僕の寿命が縮まっちゃうよ……。 沙都子(私服): くすくす……これに懲りたらもう少し、朝に強くなることね。 沙都子(私服): それはさておき、朝ご飯ができているから早く着替えて食べてね。せっかく作ったお味噌汁が冷めちゃうわ。 悟史(野球服): うん……わかった。すぐ行くから、先に1階に下りていてよ。 沙都子(私服): はーい。 悟史(野球服): ごちそうさまー。はぁ、おいしかった……。この食器、台所の流し台で洗っておくね。 沙都子(私服): いいわよ、私がやっておくから。にーにーは座って、お茶でも飲んでいて。 悟史(野球服): ご飯を作ってもらったんだから、それくらいはさせてよ。朝早くから面倒をかけちゃっているしさ。 沙都子(私服): もう慣れたから、全然平気よ。……それに、にーにーが洗いものをすると食器を割ったりするから、余計に心配だわ。 悟史(野球服): む、むぅ……それってまだ、2回くらいしかしていないじゃないか。 沙都子(私服): あはははっ! ゼロじゃないんだから説得力なんてありませーん。 沙都子(私服): あ、お弁当を作っておいたから忘れずに持っていってね。昨日の夕飯の残りばかりで、申し訳ないけど。 悟史(野球服): そんなことないよ。……ありがとう、沙都子。せっかくの日曜日なのに、全部任せっきりにしちゃってごめんね。 沙都子(私服): しょうがないわよ。お父さんもお母さんも引っ越し先の下見とか、業者の手配とかで色々と忙しいみたいだし。 悟史(野球服): うん……結局、移転賛成派の人たちの面倒を全部引き受けることになったもんね。 悟史(野球服): 本来だったら町会や、御三家の人たちがそういう対応をするべきなんだけど……。 沙都子(私服): まぁ……一度かなりこじれちゃったから、なかなか元に戻らないのも当然よ。 沙都子(私服): 和解してみんなと気持ちよくお別れ、が一番理想的なんだとしても……もう割り切って縁を切るしかないのかもね。 悟史(野球服): うーん……それはそれで寂しいから村を出ていった後でも、何人かとは連絡は取っておきたいかな。 悟史(野球服): 新天地に移って生活が安定してから……昔こんなことがあったね、って楽しく笑い話ができるようにね。 沙都子(私服): くすくす……にーにー?その「何人か」にはやっぱり、魅音さんも入っているのよね~? 悟史(野球服): ? もちろん、そのつもりだけど……。 沙都子(私服): じゃあ、大学は一緒のところに行くって決めていたりするの? それとついでに、将来のことも話し合ったりとか……? 悟史(野球服): 将来って言っても……魅音が大人になって何の仕事をしたいか、まだ聞いたことがないんだよね。 悟史(野球服): それに大学も、僕たちの新しい家がどこになるかわからないままだと、簡単には決められないしさ。 沙都子(私服): …………。 沙都子(私服): ……。はぁ、ちょっとだけ魅音さんが気の毒になってきたわ。この分だと自然消滅か、そうでなくても相当苦労するかも……。 悟史(野球服): え、えっと……なんで肩を落としているのさ? 沙都子(私服): なんでもないわ、こっちの話よ。まぁ私も、礼奈さんや絢花さん……それに一穂さんの新しい連絡先は聞いておいた方が良さそうね。 沙都子(私服): それに、……? 悟史(野球服): どうしたの、沙都子? 沙都子(私服): あ、ううん。別に……。 沙都子(私服): (この違和感……いったい……?何か、すごく大事なことを忘れているような気がするんだけど……) 悟史(野球服): ……沙都子? 沙都子(私服): っ……あ、あぁごめんなさい、にーにー。ちょっと眠気がぶり返してきたみたいね。 悟史(野球服): 大丈夫かい?もし寝不足気味だったら、今日はこのまま家で休んでくれてもいいと思うけど……。 沙都子(私服): あははは、平気だって。……それに、私が参加しないと#p雛見沢#sひなみざわ#rファイターズの攻撃力が大きく落ちちゃうでしょ? 悟史(野球服): ……うん。沙都子の長打力は、今のうちのチームにとって貴重だからね。 沙都子(私服): あははははっ、その通り!今日も大きいのをかっ飛ばしてみせるから、どーんと任せてね~! Part 02: 入江(野球服): いやぁ~、先ほどは素晴らしい試合でしたね!最後まで手に汗握る展開でしたが、まさか大逆転で勝てるとは……! 入江(野球服): 特に、公由さん! またしても助っ人の参加でご足労をおかけしましたが、あなたが来てくれて本当に助かりました……! 一穂(私服): あ、あははは……ありがとうございます。私も足手まといにならなくて、ほっとしました。 魅音(私服): あっはっはっはっ、ご謙遜だねぇ!最後の最後に、あれだけ見事な一撃を披露しておいてさー! 魅音(私服): うん、私の見立ては間違っていなかったよ!あんたは追い詰められた時こそ、その真価を発揮する秘密兵器だってね! 一穂(私服): た、たまたまだよ……!無我夢中でバットを振った先に、ボールがタイミングよく来ただけなんだし……。 沙都子(私服): あはははっ、なるほど~!つまり自分の得意なコースに投球を呼び込んで、それを綺麗に打ち返したのねー? 沙都子(私服): まるで大打者みたいで、かっこいい~!お世辞でもなんでもなく、一穂さんって天才なのかもしれないわ! 一穂(私服): だ、だから違うって……あぅぅ……。 #p竜宮礼奈#sりゅうぐうれいな#r: あははは。でも、あの試合で勝てたのは間違いなく一穂ちゃんのおかげだよ。絢花ちゃんだって、そう思うよね? 絢花(私服): ……そうですね。流れは完全に相手チームへと向いていたので、まさに起死回生の一発でした。 絢花(私服): 聞いたところによると、今回の試合であちらの助っ人に加わった亀田という投手は、プロも注目する逸材とのことでしたが……。 絢花(私服): 逆にだからこそ、一穂さんの力を過小評価して初球から甘いコースに投げてしまったんですね。きっと今頃は、悔しがっていると思いますよ。 魅音(私服): ……あんたって、なかなか小難しい分析をするんだね。素直に打ったからすごい、でいいじゃんか。 絢花(私服): 今後、一穂さんが助っ人に加わった時のことを心配しているだけです。思わぬ勝利とは、えてして判断基準や自己評価に強い影響を与える……。 絢花(私服): そこで調子に乗りすぎるようであれば、一穂さんの成長は望めなくなります。勝って兜の緒を締めよ、と戒めも必要でしょう。 魅音(私服): くっくっくっ……!そんなこと言っておいて絢花、私は知っているんだよ~? 絢花(私服): ……? 何をご存じなんですか? 魅音(私服): 一穂の打ったボールが外野に飛んでいった時、すっごい大声で叫んでいたじゃんか。「抜けてー、取らないでー!!」ってさ。 一穂(私服): えっ……そ、そうなの絢花さん?! 絢花(私服): ……つい、我を失ってしまっただけです。大人げない行為であったと、反省しています。 沙都子(私服): あはははっ、別にいいじゃない!むしろ、絢花さんにも結構熱血なところがあるんだって私、感動しちゃったわ! 悟史(野球服): うん、確かにね。無理やり来てもらったけど、絢花ちゃんを誘って本当によかったよ。 絢花(私服): ……。こちらこそ、楽しかったです。 魅音(私服): いやー、それにしても絢花って意外にスポーツ観戦が好きだったんだね。家でもテレビ中継とか観ていたりするの? 絢花(私服): 時々ですね。とはいえ、#p雛見沢#sひなみざわ#rだと以前の住まいと違って名古屋のチームの試合がほとんどだったりするので……ちょっと。 魅音(私服): まぁ、お隣の県だからそうなっちゃうよ。……でも、東京の人気球団の試合だったらキー局で放映しているんじゃない? 絢花(私服): 私が応援しているのは、横浜のチームなんです。あとは滅多に中継がありませんが、川崎の……。 沙都子(私服): な、なんと……!こういう言い方は少し失礼かもしれないけど、絢花さんって渋いチームのファンだったのね~? 絢花(私服): はい。一番好きな選手は、神主打法のあの人です。去年は三冠王を取りました。 魅音(私服): いや、この子ガチじゃんか……?!なんか、絢花の意外な一面を見た気分だよ。 #p竜宮礼奈#sりゅうぐうれいな#r: はぅ、ほんとだね~!絢花ちゃんがそこまでプロ野球に興味があったなんて、全然知らなかったよ~! 魅音(私服): ねっ、絢花。もしよかったら今度、どこかの家で野球中継をみんなで観ようよ!もちろん横浜のチームの試合でいいからさ! 絢花(私服): ……考えておきます。ただ、その時は一穂さんもお誘いして構いませんか? 一穂(私服): えっ……わ、私もっ? 絢花(私服): はい。野球観戦、お嫌いですか? 一穂(私服): う、ううん……!お好きです、じゃなかった、嫌いじゃないです。 魅音(私服): もちろんOKだよ!ほんとはみんな一緒に球場まで行って、生で観戦できると最高なんだけど……。 魅音(私服): 古手家のあんたと、今の村の状況下で出かけたりするのはその……さ。私の力が及ばなくて、申し訳ないね。 絢花(私服): いいんですよ。今は、そのお気持ちだけで十分です。 #p竜宮礼奈#sりゅうぐうれいな#r: あっ……それなら魅ぃちゃんと絢花ちゃん、一穂ちゃんも私の家に集まるのはどう?もちろん沙都子ちゃんたちもねっ♪ 悟史(野球服): えっ……いいの?僕は嬉しいけど……沙都子は、どう? 沙都子(私服): あはははっ、断る理由なんてないじゃない!礼奈さんの手料理を食べながら野球観戦なんて、絶対盛り上がるに決まっているわ~♪ 絢花(私服): ……よかった。では一穂さん、今日帰宅したら応援歌と全選手のヒッティングマーチのテープをお貸しします。次までに覚えておいてください。 一穂(私服): えっ……ぜ、全部っ?! 絢花(私服): あと、チームブランドのメガホンも2つありますので、ご安心を。鉢巻とハッピは確か去年のものが……。 魅音(私服): って、ほんとにガチだね絢花っ?なんか今日だけで、あんたに対する印象ががらり激変しちゃったよ?! 一穂(私服): あ、あははは……。 沙都子(私服): くすくす、楽しみねー!それじゃ、帰ったらいつの試合がいいか新聞で確かめないと――。 沙都子(魔女): 『……くす、……くすくす……』 沙都子(私服): ……って、えっ……?な、なんなの、この感覚は……?! Part 03: 沙都子(私服): っ……こ、ここはどこ……? 沙都子(私服): (見たことがないはず……なのに、なんとなく既視感が……) 沙都子(私服): なんで私、こんなところに……? 複数表示用:魔女沙都子発症: お元気そうですわね、「沙都子」。にーにーと一緒に暮らす時間……そんなにも楽しく満ち足りておりまして? 沙都子(私服): ど……どこにいるの?隠れてないで、姿を見せなさいよ! 複数表示用:魔女沙都子発症: くすくす……隠れてなんていませんわ。さっきからずっと、あなたの目の前におりましてよ……ほら……。 沙都子(私服): えっ……ど、どういうことっ?な、なんで私が、もうひとり……?! #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: ……くすくす、やはり以前の「世界」の記憶はあなただけ「引き継がれて」いないようですのね。あのお方の仰ったとおりですわ。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: とはいえ、わざわざ経緯について説明するのも面倒ですし……ちょっと失礼しますわね。 沙都子(私服): ちょ……やめて、頭に触らないで!いったい何をするつもりなのよ?! #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: じっとしてくださいませ、すぐに終わりますわ。……これでいかがでして? 沙都子(私服): はぁ? どうだ、なんて言われても別に変化らしきものは……。 沙都子(私服): っ……あなたは、「私様」……?どうしてこんなところにいるんですの? #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: くす……ようやく元に戻ったようですわね。喋り方も「私」と同じになりましたし。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: それにしても、『因子』が変わっただけであれほど環境が違ったものになるなんて……同じ姿をしているだけに、奇妙な感じですわ。 沙都子(私服): は、はぁ……それであなたは今回、どのような御用で呼び出したんですの? #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: 大したことではありませんわ。あなたがにーにーたちと楽しんでいるようなので、ちょっとお話がしたいと思いまして。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: いかがでして、そちらの「世界」は?最後の#p綿流#sわたなが#rしの日まであと少しとなりましたけど、「御覚悟」の方はもうできましたかしら。 沙都子(私服): 御覚悟……とは、いったいどういうことですの?私、とんと心当たりがございませんけど。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: あら……くすくす。てっきりそれがわかった上で、つかの間の平穏を楽しんでおられると思っておりましたのに。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: だとしたら、実にご愁傷様ですわ。あなたは逃げることも抗うことも叶わないまま、大切な人とともに惨劇に飲み込まれていく……。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: そして再び同じ時を繰り返しても、誰の力も頼れず……相談さえできない……。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: なぜなら、あなたは……「古手梨花」というかけがえのない存在と決して交わらない運命にあるから……! 沙都子(私服): 古手……梨花……、っ? 沙都子(私服): ……そうですわ、思い出しました……!ずっと抱き続けていた、違和感の正体……ッ! 沙都子(私服): あの「世界」には、「あの子」がいない……!なのに私は、どうしてあんなにも笑って、楽しそうに、……あぁっ、あああぁぁぁっっ? #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: ……あら、くすくす。せっかく忘れることで安定していた精神が、また混乱してしまったようですわね。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: では……ご苦労でしたわ、「私」。全てを忘れて、残り僅かな幸せの居場所へとお還りなさいませ……。 沙都子(私服): ま……まって、「私様」っ!梨花はどこに……梨花、梨花、梨花ぁぁあぁぁ!! 悟史(野球服): ……沙都子? 沙都子ってば。 沙都子(私服): っ……あ、……にーにー? 悟史(野球服): どうしたんだい? 急に黙り込んだかと思ったら、遠い目でぼんやりしちゃってさ。 沙都子(私服): い、いえ……ごめんなさいですわ。ちょっと私、白昼夢のようなものを観てしまいましてよ。 一穂(私服): 白昼夢……って、どんな夢? 沙都子(私服): え、えぇっと……。 沙都子(私服): ……。すみません、忘れてしまいましたわ。いったい、私の身に何が起こったのかしら……? 魅音(私服): っていうか沙都子、その喋り方は何?なんか気取ったお嬢様みたいだけど、もしかしてウケ狙いとか? 沙都子(私服): 喋り方? 別に、私は……。 沙都子(私服): …………。 一穂(私服): ……沙都子ちゃん? 沙都子(私服): はぁ……やっぱり私って、寝不足みたいね。今日は帰ってから、早めに休むことにするわ。 悟史(野球服): うん、それがいいと思うよ。夕飯なら僕が用意するから、任せて。 沙都子(私服): にーにーが? それは……ん……。 沙都子(私服): あの……魅音さん。こんなことを頼んで申し訳ないんだけど、その……。 魅音(私服): あー、いいよ。うちに帰ったら適当にぱぱっと作って、何か持っていってあげるね。 悟史(野球服): ……むぅ。沙都子も魅音も、どうして僕のことを信用してくれないんだよー? 魅音(私服): くっくっくっ……そりゃまぁ、人間には得手不得手ってものがあるんだから仕方ないでしょ~? 一穂(私服): …………。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: それにしても……あの「世界」の「私」はずいぶん毒気が抜かれた存在になり果てておりましたわね。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: にーにーがそばにいる……その事実だけで、「私」にとってはこの上ない至福の極みにあるのでしょうけど……。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: やはり「まがいもの」では、役者不足……早々に退場していただきませんと、ドラマが始まらなくて退屈でしてよ。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: (……それに、ほんの少し接触しただけで私に「浸食」して力を奪おうとしてきた……あの存在を放置するのは、危険ですわ) #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: ねぇ、エウアさん。あなたももう少し、刺激があったほうがいいと思いまして? #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: くすくす……ですよね。なのでエウアさん、ちょっと面白い展開を考えてみましたわ。このような介入はいかがかしら? …………。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: くっくっくっ……をーっほっほっほっ!喜んでいただけて、何よりでしてよ。では早速、「あれ」を誘導いたしますわ。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: さぁ、結末はどうなるものかしら……私はただ、波風を立てるのみですし。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: あとは野となれ、山となれ……ご一緒に顛末を見守るといたしましょう。どちらが勝つか、そして……。 #p北条沙都子(魔女)#sほうじょうさとこ        #r: 何が起こり、そしてどんな影響がもたらされるか……実に楽しみですわぁ……をーっほっほっほっ!