リウイは勝利の声をあげ、観客たちを見回した。だが、そのときには、ほとんどの観客が溜息をつきながら、帰り支度をはじめていた。
そのなかで、まばらな拍手が起こった。
拍手をしているのはアイラと〝剣の姫〟ジェニだ。
ミレルとジーニは乾燥肉をしがみながら、白けきった表情をしている。メリッサはと言えば、端正な顔を真っ赤に染めて、感情の爆発を押さえているかのようだ。
「……こんな、こんな戦いなんて」
やがて、メリッサは耐えきれなくなったように口を開いた。ほっそりとした全身をわなわなと震わせている。
「わたしは不本意です!」
いつもの台詞を残して、メリッサはリウイに背中を向けた。
しかし、彼女の心のなかでは、そのときある変化が起こっていた。
リウイが勇者であるはずがないと、これまで思ってきた。勇者になるには、彼が変わる必要があるとも。
だが、それは間違いだったかもしれない。
少なくとも、この決闘をリウイは受ける必要がなかったのだ。コンラッドはともかく、リウイは自分のことを、なんとも思っていなかったのだから。
決して、愛ゆえではない。それなら他に理由があるかと言っても、まったく思いあたらないのだ。メリッサは、お世辞にもリウイに好意を示してはこなかった。むしろその逆だった。リウイとて、そのことに気付いていないはずがない。
それなのに、命懸けの決闘から逃げようとはしなかった。
そして、怪しげな魔剣によるコンラッドの最初の一太刀を、リウイは見事にかわしている。メリッサには見切ることもできない一撃だったというのに、だ。
決闘の結果は、メリッサには不本意であった。しかし、結果以外は……
「本意……かもしれない」
メリッサはその場で立ち止まって、リウイを振り返った。
食人鬼のごとき体格の魔術師は、ジェニ最高司祭と同僚の女性魔術師から祝福を受け、得意そうに笑っていた。
(あの魔術師が、今のままで勇者なのだとしたら……)
メリッサは心のなかで、戦の神に問いかけた。
(いったい、どこがそうなのでしょう?)
リウイたちの背後で、二本の剣はそのときもまだ、踊りつづけていた。