Part 01: ……『四季折々』という言葉がある。4つの季節それぞれが異なる風情を持つ、という意味だ。 古来より日本では、その季節の移り変わりを文化として楽しむ傾向があるらしい。それだけ自然環境が一変するということなのだろう。 圭一(冬服): ……この#p雛見沢#sひなみざわ#rに来てから、それを強く実感するようになったぜ。 レナ(冬服): あははは。東京とかの都市部だと、ここまで雪が降り積もるなんてことは滅多にないもんね。 そう言ってレナは、少し眩しそうに教室の窓から外に目を向ける。 だだっ広いグラウンドは、一面が銀世界……というか、本当に雪しかない。 さらに言うと、積雪によって地面が目の高さにまで迫るほどせり上がっていて、正直ちょっと怖いくらいだ。 美雪(冬服): おぅ……窓から雪が触れるよ……? 美雪ちゃんの言う通り、窓から軽く腕を伸ばすと雪面に手形を残すことさえできる。 本来の地面は、さらに1mほど下にあるはず。……ここは雪国なんだな、と改めて理解した。 圭一(冬服): ここまで雪が積もると、除雪作業だけでも一苦労なんだろうな……。 美雪(冬服): 東京だとせいぜい、路面が凍って滑りやすくなるくらいにしか積もらないからねー。まぁ、それはそれで面倒なんだけどさ。 魅音(冬服): いやいや、地面はまだマシな方だよ。除雪車がガガーッときて、力任せに道を切り開いてくれるからね。 魅音(冬服): 問題は、上……屋根に積もった雪。放っておくとその重みで建物が傷んだり、最悪壊れたりすることもあるんだよ。 詩音(冬服): えぇ。特にこの分校みたいにオンボロな造りだと、一夜でぺしゃんこ、なんてことも珍しくないです。 梨花(冬服): みー……ぐっすりと眠っているといきなり天井が近づいてきて、そのまま押し潰されてペラペラ人間に……。 沙都子(冬服): ひっ……ひぃぃぃいいいっ?やめてくださいまし、梨花!下手な怪談よりも恐ろしさが満載でしてよ?! 詩音(冬服): というわけで、あちこちで屋根に上っての雪下ろし作業が必要になりまして……。皆さんに来てもらったのは、そういうわけなんですよ。 詩音(冬服): 新年早々に働いてもらうのは心苦しいんですが……このままだと分校が雪の中に埋もれて、新学期はかまくらの中で勉強、なんてことになりかねません。 圭一(冬服): それはそれで、風情がありそうだがな……。 美雪(冬服): 冗談っ! 周り一面が氷の壁なんて、さながら天然の冷蔵庫ってやつじゃんか! 美雪(冬服): そんな中で何時間もじっとしてろだなんて、なんのイジメ? 拷問っ?私は断固としてお断りだよッ!! 菜央(冬服): ……あんたの寒がりって、つくづく筋金入りよね。 一穂(冬服): あ、あははは……。 千雨(冬服): まぁこいつ、冬に行われた子ども会のスキー講習でも服を重ね着して、ほとんど外に出ようとしなかったな。 千雨(冬服): おかげであんまり仲の良くない連中から、「服ダルマ」だの「こたつむり」だのと陰口を叩かれてたりしたもんだ。 千雨(冬服): ……まぁ、そういう不届き者どもには頭が冷えるように講習の時に口の利き方ってのをみっちり叩き込んでやったがな……。 一穂(冬服): た、叩き込んだって……いったい何をしたの? 千雨(冬服): ……『犬神家の一族』って知ってるか?犠牲者の1人が湖から足だけを出して沈められてるんだが、あれの雪バージョンで……。 圭一(冬服): いや、もうそれだけの説明でわかったぜ。文字通り頭を冷やしてやったってわけか……千雨ちゃんも容赦ねぇな。 呆れ半分、恐れ半分といった思いで俺はしれっとした表情の千雨ちゃんを見つめ直す。 彼女は武道……いや武術だったか? の実力者でその腕前はすでに全国レベルから将来の日本代表、と目されるほどらしい。 実際、何度か稽古の真似事程度に組み手をしたが隙がなく……本気でやっても敵う気がしなかった。もはや人外に近い凄みを感じるほどだ……。 千雨(冬服): ……おい、誰が人外だ? 圭一(冬服): のわっ?な、なんで俺の心の中で呟いていたことがわかったんだ?! 美雪(冬服): いや、わかったも何も……前原くん。キミ、さっきからずっと考えてたと思しき内容がそのまま独り言になって出てたよ……? 圭一(冬服): し……しまった! 慌てて口を押さえたが、時すでに遅し。千雨ちゃんは眉を1時50分に合わせながら、ゆっくりとこちらに向かって……って、怖ぇぇ!! 圭一(冬服): あ、いやその……千雨ちゃん……?俺がそう思ったのは、それだけ君の実力がすごいと感じたという意味で、悪口では……! 千雨(冬服): ……まぁ、そういうことにしといてやる。ただ、次はないからな? 圭一(冬服): い、イエスマム……っ! 菜央(冬服): ……こうして見ると千雨って、学校をシメてる女番長って感じよね。 一穂(冬服): 菜央ちゃん、しー!本当のことでも言っちゃダメだよ……! Part 02: 途中何度かの休憩を挟みながら、分校校舎の雪下ろしが全て終わったのは昼をかなり過ぎた時刻だった。 美雪(冬服): はぁ……終わった終わった、やっとだよ。でもまさか、冬休みのまっただ中に分校に集まって新年の仕事始めをすることになるなんてね……。 菜央(冬服): あら、あたしは思ってたよりも楽しかったわ。落ちてきた雪の塊を、お姉ちゃんと一緒にせっせと路地の脇に運んだりしてね。 レナ(冬服): はぅ~。菜央の雪中の歩き方、とっても安定していて頼もしかったよ~。 レナ(冬服): 東京ではあまり雪が降らないって言っていたけど、どこで鍛えたのかな……かな? 菜央(冬服): 蔵王とか、湯沢とかのスキー場よ。スキーやそりで遊ぶ前に、まず雪面をしっかり歩けるようになりなさいって、お母――。 菜央(冬服): ……じゃなくて、指導員の人がつきっきりで教えてくれたの。 レナ(冬服): あはははは、そうなんだ。だから菜央の歩き方はしっかりしているんだね。 レナ(冬服): あと……菜央? 気を遣ってくれるのは嬉しいけど、無理に隠さなくてもいいよ。それはそれ、これはこれなんだから。 レナ(冬服): ありのままを聞かせてもらったほうが、レナは……私は嬉しいかな、かな。 菜央(冬服): お姉ちゃん……うんっ……! 一穂(冬服): ……? レナさんと菜央ちゃん、何の話をしてるんだろう? 魅音(冬服): そういや、最近……菜央ちゃんはレナのことを「お姉ちゃん」って呼ぶようになったよね。レナも菜央ちゃんのことを、呼び捨てにしているし。 魅音(冬服): なんでなのか、美雪は何か聞いていたりする……? 美雪(冬服): んー……特には聞いてないよ。けど、以前よりずっと仲がいい感じだし別にいいんじゃない? 美雪(冬服): ……っと、ようやく上から雪下ろし担当の「力自マンズ」が降りてきたみたいだねー。2人とも、お疲れ様! 圭一(冬服): いやー、あれだけ分厚く積もっていて建物がよく持ったもんだぜ。 圭一(冬服): あと……美雪ちゃん?「力自慢」と「マン」をかけているのかもしれねぇが、「マン」の複数形は「メン」だからな? 千雨(冬服): ほぉ……?つまり私は「マン」――男のひとりとして数えられてるという理解でいいんだな、……前原? 圭一(冬服): んおっ……? 振り返ると、またしても般若ならぬ、鬼の形相の千雨ちゃんが俺を凝視しているのが見えた。……もう、また怒りはる。いややわぁ。 圭一(冬服): い、いや今のは英語の使い方としての訂正であって、千雨ちゃんのことをゴリラっ……いや男扱いする気は、毛頭なくてっ……! 千雨(冬服): ……だそうだが、お前ら。前原のこの嫌疑に対する判決はどう下す? 菜央(冬服): 有罪ね。 沙都子(冬服): 有罪ですわ。 梨花(冬服): 地獄に行ってらっしゃいなのですよ、にぱ~☆ 圭一(冬服): ま、待て待て待て待て、ちょっと待ってくれ!さっきも言ったように誤解だ、単なる勘違いだ!!俺を信じてくれ、千雨ちゃんッ!! 千雨(冬服): あぁ……言い間違いってのはあるもんだな。その点については、私も同意だ。 千雨(冬服): だがな……前原?お前はさっき、台詞の中で一瞬「ゴリラ」って言いかけてなかったか……?? 圭一(冬服): ぐはっ……?い、いやあれはその、えっと……ッ……!た……助けてくれ、一穂ちゃん!! 一穂(冬服): えっ……わ、私っ?え、えっと……千雨ちゃん、前原くんもたぶん、悪気があったわけじゃ……! 詩音(冬服): あー、だめですよ一穂さん。ここで仏心を出して下手に圭ちゃんのフォローなんて入れたりしたら、千雨さんのあふれんばかりの闘気の餌食――。 詩音(冬服): もとい、とばっちりをもろに受けて木っ端微塵にされちゃいますよー? 一穂(冬服): こ、木っ端微塵っ……?! 千雨(冬服): ……おいこら。私は世紀末覇王か、なんとか神拳の使い手か?お前もあとで覚えてろよ、詩音。 詩音(冬服): もう忘れちゃいました~♪というわけで圭ちゃん、私と一穂さんのためにも千雨さんの全てを受け止めてあげてくださいねー! 圭一(冬服): ふざけるなっ!千雨ちゃんの制裁をまともに受けたりなんてしたら、粉々どころか無に帰っちまうだろうが?! 千雨(冬服): 安心しろ……前原。私はこれでも、常識と分別というものをちゃんとわきまえてるつもりだ。 美雪(冬服): ……うん、そうだね。「つもり」なだけで、実際はまるで違うけどねー。 圭一(冬服): そんな物騒な補足はやめてくれぇ、美雪ちゃん!ぎゃ、ぎゃぁぁぁぁあぁああっっ?! Part 03: 圭一(正月着物): はぁぁ……死ぬかと思った。頭のてっぺんから雪の中にずっぽり突き刺さると、あんな感じになるんだな……勉強になったぜ。 沙都子(冬服): できれば一生味わいたくない体験ですわね……。私は全力でお断りしましてよ。 梨花(冬服): みー。次は雪ではなく、土の地面にずっぽり突き刺さっているところを見てみたいのですよ~。 羽入(晴れ着): ……圭一が死んでしまうのです、あぅあぅ。 詩音(冬服): まぁまぁ。あれもちょっとした息抜きというか、余興のひとつってことで。……その着物、寸法は合っていますか? 圭一(正月着物): あぁ、ぴったりだ。着替えを用意してくれて、助かったぜ。 千雨(冬服): あー……悪かったな、前原。雪下ろしが結構楽しくて少し浮かれてたから、調子に乗ってやりすぎた。すまん。 美雪(冬服): えっ……実は千雨も、ちょっとテンション上がってたってこと? 千雨(冬服): そりゃ、まぁ……な。都会育ちなんだから、あんな大量の雪を前にすれば気持ちが舞い上がって当然だろうが。 美雪(冬服): いやいや、当然じゃないよ。私も都会育ちだけどその感覚には全然、1ミリも同意したくないねー。 梨花(冬服): みー。千雨は喜び庭駆け回り、美雪はこたつで丸くなる……なのですよ。 沙都子(冬服): ぱっと見のイメージだと、むしろ美雪さんが犬で千雨さんが猫っぽいんですけどね……。 圭一(正月着物): はっはっはっ、まぁどちらも真ってやつだな。それと千雨ちゃん、元はといえば俺の失言が原因なんだから、あんまり気にしないでくれよ。 圭一(正月着物): おかげでこうして、正月らしく着物を着ることができたわけだからなー! 美雪(冬服): ……前原くんって、懐が深いよねー。こういうところは見習わなくちゃって本気で思うよ。 一穂(正月着物): あ、あははは……。 魅音(冬服): それじゃ、いい? 始めるねー。 魅音(冬服): ……みんな、雪下ろし作業お疲れ様っ!ささやかだけど、町会からの特別ボーナスとしてお正月のおせちをここに用意させてもらったよ! 魅音(冬服): 一切遠慮なく、じゃんじゃん食べちゃって!ただし、お餅はつきたてでまだ柔らかいから喉に詰まらせないよう食べる時に注意してねー! 一穂(正月着物): つ……つきたてのお餅っ?食べたい食べたい、絶対食べたい!! 美雪(冬服): お……おぅっ、いつにも増しての勢いだね。一穂ってつきたてのお餅、好きだったの? 一穂(正月着物): ううん、そうじゃなくて……!これまでに食べたお餅はみんな、乾いて固いものばかりだったから……。 一穂(正月着物): つきたてのお餅って、実物は見たことなかった!だから絶対、食べてみたい! 梨花(冬服): みー。ちなみに味付けは砂糖醤油にきなこ、そしてたっぷりの粒あんがあるのですよ。 沙都子(冬服): そのまま食べるのもよし、お雑煮や善#p哉#sかな#rにして召し上がるのもまた格別でしてよ~。 一穂(正月着物): お、おいしそう……!想像してるだけで、もうほっぺたが落ちちゃいそうだよ……! 圭一(正月着物): つきたて餅か……確かにここ数年、食べた記憶がねぇな。んじゃ、俺もいただくとするぜ。 圭一(正月着物): よし……食べ終わった!お代わり、じゃんじゃん頼むぜ! 一穂(正月着物): も、もう食べたの……?ちょっと待って、私もお代わりを……! 菜央(着物): こら、一穂。お餅は慌てて食べると喉を詰まらせるから、ゆっくり噛んで食べなさい。 一穂(正月着物): そ、そんなこと言っても、早く食べないと私の分がなくなっちゃう……! レナ(正月着物): あははは、大丈夫だよ一穂ちゃん。さっき台所を見てきたら、ここにあるのと同じ大きさのお鍋があったから。 美雪(冬服): んー、でもあれってお雑煮でしょ?つまり善哉はここにあるお鍋の分でおしまいってことで……。 一穂(正月着物): っ……じゃあ、あと1杯……!ううん2杯、やっぱり3杯は食べたい……! 菜央(着物): こら、美雪。一穂を煽ってどうするのよ? 美雪(冬服): あっはっはっはっ、ごめんごめん。だって前原くんと一穂が、すごくおいしそうに善哉を食べてるからさー。 千雨(冬服): そうだな。こいつらの食べっぷりを見てると、こっちまで腹が空いてくる気がするよ。 千雨(冬服): というわけで……私もお代わりだ。餅は山盛りにしてくれるとありがたい。 レナ(正月着物): あはははは。ちょっと待ってね、今よそってあげるから。 菜央(着物): あっ……お姉ちゃん、あたしも! 圭一(正月着物): おっ……他のみんなもすげぇ食いっぷりだな!俺も負けていられねぇぜー!