Part 01: 魅音(私服): かまどの準備は、これで完了っと……レナ、菜央ー。そっちはどんな感じ? レナ(私服): あとちょっとで、全員分の薪が揃えられるよ。よい、しょっと……! 菜央(私服): ほわぁ……レナちゃんの鉈さばきって、すごいわぁ。まるで剣豪みたいに薪がどんどん割れていって……! レナ(私服): あははは、そんなことないよ。ちょっとしたコツがあれば誰でもできるよ。 美雪(私服): いや……レナ。アウトドアの経験者として言わせてもらうと、男のベテランでもキミほど見事に薪割りができる人はいないと思うよ。 沙都子(私服): しかも大上段から、ブレることなく振り下ろしてすぱぁぁん、と一撃ですものね……。 梨花(私服): みー。まさに一刀両断という言葉がぴったりはまるくらいの斬撃なのですよ。 美雪(私服): ひょっとしてレナ、例の妖狐を薪に見立ててバッサリ! とやっちゃったりしてるとか?もしそうだったら、力が入るのもわかるけどさー。 レナ(私服): はぅ~、そんなことしないよ。……だってもしあの顔をうっかり思い浮かべたら、勢い余って地面まで真っ二つにしちゃうもの。 美雪(私服): あはははは、ナイスジョーク!そっか、地面まで真っ二つか~。 美雪(私服): ……。ジョーク、だよね? レナ(私服): …………。 レナ(私服): なんちゃって♪ はぅはぅ☆ 一穂(私服): (レナさん……笑顔なのに、目が全っ然笑ってない……) レナ(私服): 今度、鉈の使い方を菜央ちゃんに教えてあげるね。 菜央(私服): えぇ! 楽しみにしてるわ♪ 一穂(私服): (鉈の使い方って……薪割りだよね?他のものに使ったりしないよね……?!) 羽入(私服): あ、あぅあぅ~……レナもすごいですが、魅音と一穂も長柄の斧の扱いが上手なのですよ~。 魅音(私服): だよね。私は昔から色々やらされているけど、一穂は経験ないってわりに結構上手いと思うよ。 一穂(私服): えっ? そ、そうかな……。剣道の竹刀振りの要領でやってるだけなんだけど。 一穂(私服): (あ、ありがとう羽入ちゃん!話題を変えてくれてありがとう……!) 美雪(私服): そういや、一穂って剣道をやってるんだよね。私の幼なじみの千雨は素手で強いけど対戦したらどっちが勝つかな? 魅音(私服): 異種格闘技戦? へぇ、面白そう! 菜央(私服): リーチの差だけで言えば、剣道じゃない? 魅音(私服): あー威力は竹刀だと少し落ちるかもしれないけど、木刀だったら結構なダメージになるだろうね。 美雪(私服): んー、確かにそうかもしれないけど……長物だと初撃を交わして懐に入り込めば、打つ手なしになるからねー。 美雪(私服): となると、同じ武道でも臨機応変という意味でこの場合は柔道かな……の方に分があるんじゃない? 菜央(私服): そのあたりはあんたの友達……千雨さん、だっけ?技量がどれくらいなのかあたしにはわからないから、なんとも言いようがないわね。 美雪(私服): おぅ、それもそっか。んじゃ一穂、今度機会があったら千雨と対戦してみる? 一穂(私服): ええっ? 『ツクヤミ』相手ならともかく美雪ちゃんの友達と戦うのは……。 美雪(私服): 大丈夫だよ。千雨は小柄だけど頑丈だから、多少当たりどころを間違えてもなんとかなるって。 菜央(私服): ……未来からきた戦闘サイボーグじゃあるまいし。その人の扱いがちょっと悪すぎるんじゃない? 美雪(私服): あははは、これも信頼の証ってね。……まぁそれでも、千雨をレナと戦わせることだけはさすがの私も全力で止めるだろうけどさ。 美雪(私服): いやぁ……妖狐相手に立ち回ってるのを目にした時は、頼もしさと同時に恐ろしさを感じたよ。 菜央(私服): あたしはその時、気を失ってたから全然見てないけど……そんなにすごかったの? 沙都子(私服): えぇ……「すごい」という言葉が陳腐に思えるほど、少年漫画でよくある超能力バトルそのものでしたわ。 梨花(私服): みー……あえて言葉で表現するならば、あれこそが『#p神々の黄昏#sラグナロック#r』だったのですよ。 レナ(私服): あははは、みんな大げさすぎだよ~。そんなことなかったよね、一穂ちゃん? 一穂(私服): …………。 レナ(私服): 一穂ちゃん? 一穂(私服): (い、言えない……! レナさんと万が一、いや億が一でも相手にして戦うようなことがあったらその時が私の命日だって思ったことは……!) 魅音(私服): まぁ、神様仏様レナ様のおかげで、無事にこうやって林間学校の受け入れ準備を進められるんだけどね! 沙都子(私服): えぇ……あの場で化け狐に全員負けていたら、それどころではありませんでしたもの。 美雪(私服): それにしても、分校のグラウンドにテントをたくさん設営して臨時のキャンプ場にするなんて思い切った手を打ったもんだね。 美雪(私服): 私はてっきり、村外れの温泉宿を借り切って……そこで生徒さんたちに寝泊まりしてもらうのもありだと思ってたんだけどなー。 魅音(私服): 普通の団体旅行だったら、そうしていると思うよ。けど、とりあえず林間学校って体裁を守るんだったらやっぱ野外活動と宿泊があってこそでしょ? 美雪(私服): んー、確かに。テントの中で何人かが集まって一夜を過ごすのも、なんか楽しそうだよね。 魅音(私服): あと、以前にもグラウンドを使って飯ごう炊さんをしてカレー対決なんてこともやったりしたから、その応用ってやつだよ。 一穂(私服): へぇ、カレー対決か……。それって、どんな感じだったの? 魅音(私服): 班ごとに分かれて、出来の優劣を競うやつだよ。 魅音(私服): そうだ! なんなら、かまどの試運転も兼ねてやってみる? 一穂(私服): えっ、何を? 魅音(私服): カレー対決。 一穂(私服): い、今から……?! Part 02: 魅音(私服): 諸君! 審査員として知恵先生が引き受けてくださっため、本日の部活はカレー対決である! 魅音(私服): ちなみに職員室にいる智恵先生に頼みに行ったところ、ウキウキで白米を炊いていたので今回はカレー部分のみの料理であることを明言しておこう! 梨花(私服): みー……知恵、今日も職員室にいたのですね。 詩音(私服): 施設利用する以上、こちら側も大人の代表が必要ですからね。 沙都子(私服): 知恵先生なら、カレーと聞けばご自宅にいてもすっ飛んきてもおかしくありませんわ。 梨花(私服): みー、光の速さで飛んできそうなのですよ。 魅音(私服): はいはい、静粛に静粛に!……というわけで、まずはチーム分けだね。 魅音(私服): 今日は圭ちゃんがいないから、全部で……9人か。なら、わかりやすく3人の3チームってのはどう? レナ(私服): あははは、楽しそう! 三つ巴ってやつだね。レナはもちろん異議なーし、だよ♪ 詩音(私服): といっても、ある程度均等に戦力が分散しないと意味がありませんので……先にリーダーを決めることにしましょう。 沙都子(私服): となると、料理がお上手な方ですわね。レナさんと魅音さん、あとは……菜央さんかしら? 菜央(私服): 何言ってるのよ、沙都子。あたしは包丁なんて一度も持ったことがない、ただのド素人なんだから。 美雪(私服): あれだけエンジェルモートに出入りして、新メニューの開発にあれこれ口出ししてるド素人がどこにいる?! 菜央(私服): 嫌よ、あたしは! 1/3の確率でチームが分かれるんだったらまだしも、リーダーとしてレナちゃんの敵になるなんて冗談じゃないわ! 梨花(私服): みー。そうは言ってもレナと魅ぃに匹敵するほどの料理上手さんは、菜央の他に思いつかないのですよ。 詩音(私服): おや……梨花ちゃま、それは聞き捨てなりませんねー。つまり私の料理の腕は、お姉に劣っているとでも……? 梨花(私服): そこまでは言っていませんですが……そういう見方もなきにしもあらずと言えなくもないのですよ、みー。 詩音(私服): いや、どっちですかそれは?! 詩音(私服): わかりました……そういうことならいい機会です、皆さんからの低評価をここで覆してあげましょう!3人目のリーダーは私、園崎詩音です! 羽入(私服): あ、あぅあぅ……詩音が珍しく、背中に炎を背負う勢いでやる気を出しているのですよー。 沙都子(私服): ……うまく言いくるめましたわね、梨花。あぁすれば詩音さんが乗ってくると思って、挑発してみせたんですの……? 梨花(私服): みー。そうでなければ菜央はレナを気遣って、手を抜くかもしれないのです。戦うなら全力で雌雄を決したいのですよ。 魅音(私服): とりあえず、これでリーダーが決定だね。んじゃ、次はメンバー分けの抽選であみだくじを用意して……っと。 レナ(私服): 最初は、レナから行くね。えっと、ここをこうたどって行くと……はぅ? 菜央(私服): ほ……ほわぁぁああぁっ? レナちゃんと同じ組ー!ありがとう神様、このご恩は1週間ほど忘れないわ! 魅音(私服): なんで1週間って具体的に区切ったのかは、あとで理由を聞きたいところだけど……うーん、いきなり戦力バランスが崩壊かぁ。 一穂(私服): (というか、レナさん……あみだくじの行く先をしっかり読み切ってから、選んだように見えたんだけど……まさかね?) 魅音(私服): いや、勝負はこれからだ!次は私の番だよ……っと、美雪か。なかなか悪くない選択だね。 美雪(私服): おぅ、任せて!野外でのご飯に限れば菜央にだって負けないよー! 詩音(私服): いきなり1、2を取られてしまいましたね。ちなみに私は、沙都子になりました。で、この組み合わせになったということは……。 沙都子(私服): ……えぇ詩音さん、わかっておりましてよ。私の華麗かつ巧妙な手口、とくとお目にかけて――。 魅音(私服): あー、ちなみに妨害行為を働いたら問答無用で最下位と罰ゲームが確定だよ。そのつもりでいるようにねー、沙都子。 沙都子(私服): んなっ? わ、私がそんな卑怯な手段を用いるなどと最初から決めつけられるなんて、心外の極みですわッ!! 梨花(私服): ……みー。だったら沙都子、その後ろ手に隠したものは何ですか? 羽入(私服): あ、あぅあぅ……瓶のラベルに、ドクロマークだの「危険」の文字だのがばっちりと印刷されているのですよ。 沙都子(私服): を……をーっほっほっほっ!さっき買い出しを行った時に、うっかり間違えて買ってしまったものが混ざっておりましたわ~。 美雪(私服): いや、何と間違えたのさ。ほんと沙都子は油断もスキもないね……詩音もだよ。 詩音(私服): あら、バレちゃっていました?中南米の舶来品を試すいい機会だと思っていたんですけど……てへっ。 一穂(私服): (ラベルの文字はなんて書いてあるのか、全然読めないけど……あの毒々しい色は絶対に危険だ……!) 詩音(私服): まぁ、妙な企みを抜きにしても沙都子の料理の腕は監督していればそんなに悪くありませんからね。 詩音(私服): もちろん、梨花ちゃまと羽入さんはその上ですが。つまり、違いが生じるとすれば……。 梨花(私服): ……みー。 羽入(私服): あぅあぅ……。 一穂(私服): ご、ごめんなさい……。 美雪(私服): ま……まぁ、一穂だって捨てたものじゃないよ。最近はお米研ぎだって、3回に1回……2回かな?それくらいの確率でしか失敗しなくなったしねっ。 沙都子(私服): 美雪さん……それはフォローじゃなく、むしろトドメを刺すような発言でしてよ。 魅音(私服): 心配いらないって、一穂!たかだか1人の違いだけで、戦力が低下することはあり得ないんだからさ。 魅音(私服): と、レナは梨花ちゃんか。じゃあ、私のチームの3人目は……げげっ? 詩音(私服): お姉……ひとつ前の台詞を自分で完全否定してどうるんですか。 一穂(私服): あ、あぅぅ……っ……。 美雪(私服): ……だ、大丈夫だよ一穂っ!私がついてるんだから、任せておきなって! 美雪(私服): とりあえず、一穂は野菜を洗う担当でよろしく!あとは……まぁ、それはおいおいだ! 菜央(私服): ……最初から戦力外扱いじゃないの。 Part 03: 魅音(髑髏鎧): くっくっくっ……やって来たな有象無象ども。 魅音(髑髏鎧): 既にお前たちは地獄の底に足を踏み入れている……気がつかなかったようだがな。 魅音(髑髏鎧): さっそく妾の恨みの下僕として従えてやろう。さぁ、大人しくこちらに来るといい……! 美雪(私服): おっけー、その演技の路線で肝試しテストをいっちゃおっか! 魅音(髑髏鎧): あれっ、今の感じでいい?もうちょっとセリフ変えた方がよくない? 美雪(私服): いやぁ、リアルな妖怪路線が行きすぎると本気で林間学校の生徒を怖がらせちゃうからね。それくらいで十分だよ。 美雪(私服): しかし魅音の衣装も演技もだけどセットのドクロもなかなか迫力あるよね……これ、どうしたの? 魅音(髑髏鎧): 映画撮影のセットに使ったやつを、捨てるって言うから親戚が引き取ったんだって。置き場に困ったからって持って来てもらった。 美雪(私服): 魅音の親戚って顔広いね。 魅音(髑髏鎧): まぁね!……そろそろ肝試し再テストの出発時間か。美雪、そっちの準備はいい? 美雪(私服): おっけー! 一穂はどう? 一穂(私服): うぅ……ごめんなさい。カレー対決、私何にも役に立てなくてごめんなさい……。 美雪(私服): おぅ……まだ言うか、この子は。 魅音(髑髏鎧): いやぁ、アレは負けるわ。レナと菜央のコンビに梨花ちゃんが加わったら……あれは、うん。ダメだね。 美雪(私服): ち~ょっと運が偏り過ぎてたねー。もうあれはカレーという名のお花畑だったし。 一穂(私服): カレーの上に、飾り切りを駆使した野菜のお花が咲き乱れてたね……。 魅音(髑髏鎧): 詩音たちのカレーもなかなかだったけど、あれに勝つにはちょっと難しいよね。 美雪(私服): 味も絶品だったからなぁ……打開策が思いつかなくて申し訳ない。 魅音(髑髏鎧): いやいや、知恵先生も言っていたじゃん。 魅音(髑髏鎧): 私たちのカレーは家庭的で素朴でおいしい、自分は毎日カレーを食べているけどこれは一般の人も毎日食べられるカレーだって。 美雪(私服): ……あれ、さりげなく自分が一般じゃないって言ってるようなもんじゃない? 魅音(髑髏鎧): いや、毎日カレーを食べるのが常識だって強要してこないだけ分別があると言うべきだね。 美雪(私服): うーん、なんか今日は言葉の裏側がチラチラする日だなぁ……まぁ、そういう日もあるか。 美雪(私服): じゃあ私、誘導ライトの最終チェックしてくるから。すぐ戻ってくるから待ってて。 魅音(髑髏鎧): 足元気をつけてね。あと狐に化かされないように! 美雪(私服): あいよー。 魅音(髑髏鎧): うーん……美雪のヤツ、大丈夫かねぇ。 魅音(髑髏鎧): 山歩きが得意なのは知ってるけど山が変われば勝手は変わるし油断は禁物なんだけどなぁ。 一穂(私服): …………。 魅音(髑髏鎧): ちょっと一穂、まだ落ち込んでるの?あんたって結構引きずるタイプだよねぇ……美雪は引きずらなさすぎる気もするけど。 一穂(私服): ごめんなさい……。 魅音(髑髏鎧): やれやれ……あ、そうだ。一穂ってさ、百物語ってどこまで知ってる? 一穂(私服): ど、どこまでって? 魅音(髑髏鎧): 怖い話、百個聞いた事ある? 一穂(私服): えっと、そんなにはない……と、思う。 魅音(髑髏鎧): まぁ、普通に暮らして自然に怪談を百個聞くことってそうそうないよね。 魅音(髑髏鎧): 私もさ、今回のことがあって怪談百話集みたいな本に色々目を通してみたんだけどさ……その最中に、沙都子が面白いことに気づいてね。 一穂(私服): 沙都子ちゃんが? 魅音(髑髏鎧): そう。怪談の本って大体最初から神様だった存在と狐みたいに何かが化けた存在と人間が幽霊に化けた話、その3つに分けられるって。 魅音(髑髏鎧): あ、UFOとかの宇宙系は神様系だって。でね……面白いのは人間が幽霊に化ける話なんだけどさ。 魅音(髑髏鎧): 幽霊になった元の人間は、一穂みたいに気が弱い女の子が多かったんだってさ。 一穂(私服): それは……カレー対決の人選みたいにたまたま偏っちゃったとかじゃなくて? 魅音(髑髏鎧): 多分違うんじゃないかな。沙都子と結構調べたけど、大体の傾向は当てはまったし。 魅音(髑髏鎧): それでさ……例えば、詩音みたいなタイプって恨みを買っても直接的にやり返してきそうじゃない? 一穂(私服): そ、それは……そうかも。 魅音(髑髏鎧): でも、一穂みたいなタイプに恨まれても直接やり返されるかも? とは思わないんだよね。 魅音(髑髏鎧): ただ、死んだ人間が恨みを持って化けて出るかもって思った時……真っ先に怖いなって思うのは一穂みたいなタイプなんじゃないかなって。 魅音(髑髏鎧): 今まで何をやってもやり返されなかった分、一気に復讐されるんじゃないかって思うとその都度恨まれるより怖いんじゃないかって。 一穂(私服): そ、そうなのかな? ……で、でも私負けたのは自分のせいってわかってるし美雪ちゃんも魅音さんも恨んでないよ?! 魅音(髑髏鎧): わかってるって。今のはあくまで例え話だからさ。 魅音(髑髏鎧): ……けど、幽霊の話を書くのって結局は生きている人間だから。 魅音(髑髏鎧): 内心どう思っているかわからない人が実は恨んで死んでやり返されたら怖いって……昔の人は、そう思ってたのかもね。 魅音(髑髏鎧): 私のこの格好も、菜央が参考にした古い絵があるんだけど……滝夜叉姫の話って、一穂は知ってる? 魅音(髑髏鎧): 簡単に言うと、父親や一族を滅ぼされた女の子が妖術を身につけて復讐しようとするって話なんだけど。 魅音(髑髏鎧): 逆に追い詰められてドクロの妖怪? を召喚して戦うんだけどギリギリで負けちゃって。 魅音(髑髏鎧): その後は地獄に落ちたとか尼になったとか色々あるらしいけど……まぁそれはともかく。 一穂(私服): へぇ……そんな人がいたんだね。 魅音(髑髏鎧): いや、これは作り話だよ。モデルになった人はいるけど。 一穂(私服): そ、そうなの? 魅音(髑髏鎧): ただ、モデルになった人はドクロの妖怪を召喚して相手を殺したいくらい相手を恨んでるかも……って話には、なーんか納得できちゃってさ。 一穂(私服): それは……お父さんたちを殺されたなら、そうだと思う。 魅音(髑髏鎧): 私も思うよ。でも、そのモデルになった人が詩音みたいにやられて即やり返しに行くような人だとしたら……。 魅音(髑髏鎧): 滝夜叉姫の話は、生まれなかったんじゃないかって。そんな話を沙都子としたんだよね。 一穂(私服): ……魅音さんと沙都子ちゃんって、いつもすごく難しくて複雑な話をしてるんだね。 魅音(髑髏鎧): いやいや、そんな話を沙都子としたのは初めてだよ。おそらく今回のことが無ければ、一生そんな話はしなかったと思うけどね……だからさ。 魅音(髑髏鎧): 一穂も自分のせいじゃないのに自分のせいだって言い続けてたらさ……。 魅音(髑髏鎧): 実はそんなこと言いながらこっちを恨んでるかもって言われるかもしれないから、ほどほどにね。 魅音(髑髏鎧): 滝夜叉姫みたいに言われたくないでしょ? 一穂(私服): う、うん……わかった。なるべく……気をつける。 魅音(髑髏鎧): なるべくでいいよ、なるべくで。そんなに人間はすぐ変われるもんじゃないし。 一穂(私服): うん、ありがとう……ところで、その……魅音さんはどうなの? 魅音(髑髏鎧): え? 私が……何? 一穂(私服): 魅音さんも、強い恨みを持ったことがあったりするのかな、って……。それこそ人を、呪ってしまうくらい。 魅音(髑髏鎧): あはは、ないない!あいにくとそういうジメッぽいことは今まで考えたことがなかったかな~! 魅音(髑髏鎧): どちらかと言うと……恨まれる方かも。 一穂(私服): え……? 魅音(髑髏鎧): なーんでもない! 魅音(髑髏鎧): さぁ、そろそろテスト隊の梨花ちゃんたちがこっちに来るはずだから心の準備整えないとね! 一穂(私服): う、うん……。 美雪(私服): 戻ったよー……って、うわっ?! 魅音(髑髏鎧): おかえり美雪ー……ってなに? どうしたの? 美雪(私服): いや、暗闇で急にドクロが見えてびっくりした……。ねぇ魅音、このドクロは今回の肝試しが終わったらどうするの? 魅音(髑髏鎧): え、このままここに置いておくつもりだけど……ダメ? 美雪(私服): 正直撤去した方がいいと思うな……知ってる私でも驚いたんだから知らない人が見たらもっと驚くよ。 美雪(私服): このまま置いといたら、妙な逸話が増えそうだしね。怨念が集って生まれた巨大ドクロが森に現れたとか。 魅音(髑髏鎧): ……観光名所にならない? 魅音(髑髏鎧): 詳細を着た看板立てておけばなんとか?これは作り物ですよって強調しとかないと……。 一穂(私服): …………。 一穂(私服): (さっきの魅音さんの言葉、なんだったんだろう。恨まれるかもって……心当たり、あるのかな?) 一穂(私服): (誰に恨まれてるんだろう……詩音さんはすぐ怒るタイプだって言ってたから違うだろうけれど) 魅音(髑髏鎧): 一穂~、そろそろ梨花ちゃんたち来るから準備して! 一穂(私服): う、うん! 一穂(私服): (……もしかして魅音さんの気のせいかも?) 一穂(私服): (魅音さんが誰かに殺したいほど恨まれるなんて……私には想像もつかないや) 魅音(髑髏鎧): それじゃ、本番いくよー!