Part 01: 美雪: というわけで、あの子の引き取り先を本腰入れて探そうと思うんだけど……どうかな、千雨? 千雨(制服): ……おい、何が「というわけ」なんだ。どういう相談なのか、中身がさっぱり見えんぞ。 美雪: あれ? 千雨だったらこう言うだけですぐに伝わると思ったんだけど……。 千雨(制服): 阿吽の呼吸を求めるにしても、省略しすぎだ。「あの子」なんていう代名詞とかじゃなくて、固有名詞を使ってちゃんと順を追って説明しろ。 美雪: はーい……この場合の「あの子」ってのは、あの雨の日に公園で見つけた捨て猫のことだよ。 美雪: 今は社宅の隅で、こっそり匿ってるやつね。心当たりがダメだったのは残念だけど、今のままじゃやっぱりまずいと思うんだ。 千雨(制服): ……別に匿ってるわけじゃない。あんな場所で雨に打たれっぱなしだと風邪を引くから、雨風をしのげる場所に移動させてやっただけだ。 千雨(制服): うっかり顔を覚えた以上、何かあった時に目覚めの悪い気分にはなりたくないし……だから最低限できることをやっただけだ。 美雪: あはは、憎まれ口を叩いちゃってさ。でも、あの子の身体を拭いてあげてたタオルって、おろしたての新品だったよね。 美雪: なのに、使った後もそのまま置いてきちゃったし。この前見に行ったら気に入ったのか、じゃれついてたよ。 千雨(制服): ……手持ちに適当なものがなかったからな。市販の安いタオルだから別に捨てても惜しくない。 美雪: 箱に入ってた空っぽの猫のご飯は? 千雨(制服): ……どっかの誰かが、人間用のツマミと間違えて買ったやつを適当に入れたんだろ。 美雪: 千雨が釣り餌にすると結構釣れる、って買ってたキャットフードと同じ銘柄だったけど? 千雨(制服): …………。 美雪: 千雨? 千雨(制服): うるせぇ。 美雪: 都合が悪くなるとそれ一択なんだからなー。 美雪: 千雨はさ、思ってることをちゃんと言えば、みんなの印象も変わるんじゃないかな?うまくいけば人気者になれるかもしれないよ。 千雨(制服): 別に、人気者にならなくていい。今やってるのもただの対処療法で、ちゃんと対策ができてないことの裏返しだからな。 千雨(制服): それに……。 美雪: それに? 千雨(制服): 美雪がわかってるのなら、それでいい。 美雪: 私のことを買ってくれてるのは嬉しいけど、質より量が必要な時もあると思うけどねー。 千雨(制服): うるせぇ……それより、引き取り先を探すってどうするんだ。心当たりは全部ダメだったし、どこへ頼み込むつもりだ? 美雪: んー、そうだねぇ……私たちの住んでる社宅、はまず無理だね。そもそもペット禁止だからさ。 千雨(制服): 犬ならまだしも、猫だとあっちこっちに動き回ったりして、どうしても目につくからな。隠れて飼うのはちょっと厳しいだろう。 美雪: いや、だからペット禁止って言ったでしょ?ルール破り前提でお願いしたりなんかできないって。 千雨(制服): ……お前、聞いたことがなかったのか? 美雪: えっ……? 千雨(制服): 棟によっては黙認というか知らんぷりで、ペットを飼ってるところもいたりするって話だ。 美雪: あー、あー……えっ、そうなの? 美雪: でもそれって、管理人さんとかに見つかったらすっごくヤバい話じゃない? 千雨(制服): その管理人が、管理人室で飼ってるんだとよ。今のところは噂だけで目撃証言とかがないから、おそらく猫だろうな。犬なら散歩がいるし。 美雪: ほんとに? ルールを守らせる立場の人が、自分から規範を示さなくてどうするのさ……警察関係者の風上にも置けないね。 千雨(制服): いや……どうやら警察OBじゃないとのことだから、そのあたりの遵法意識が薄いんだと思うぞ。 千雨(制服): それに、ご近所の与太話を聞いた限りだと……社宅が建ってる土地を国に提供した地主の縁者だから、同棟の住人たちもさすがに文句が言えないらしい。 美雪: ……しょ、職権乱用の典型だ……! 千雨(制服): そう言ってやるなよ。社宅の狭い管理人室の中でひとりきり特にやることもなく過ごしてるなんて、退屈の極みなんだろうし。 千雨(制服): 特に昼間なんて、共働きの家庭が多いせいで誰とも話どころか、顔を合わせることもない……少しは大目に見てもいいんじゃないか。 美雪: ……千雨ってば、自分や身内が関わらない時だとある程度のルール違反については結構寛容だよね? 千雨(制服): 私に関係の無い話だから、寛容でいられるんだ。責任を取らなくていいからな。 美雪: またそういう憎まれ口を……。 千雨(制服): ……話を戻すぞ。いずれにしても猫を飼うとしたら、社宅よりも一戸建ての方が無難だろう。 千雨(制服): というわけで、数日待て。引き取り先としておあつらえ向きの家庭が近くにいないか、情報を集めてきてやるよ。 美雪: いや、集めるって……どこから、誰の力を借りるつもり? 千雨(制服): さっき言った、ペットを飼ってるって噂の管理人だ。頼めばたぶん、協力してくれるだろう。 美雪: ……まさかと思うけど、ペットを飼ってる秘密をバラさないのと引き換えにその人を脅す、なんて外道な真似はしたりしないよね? 千雨(制服): ……お前は私のことを、何だと思ってるんだ。そんなヤクザまがいをするタマに見えるってのか? 美雪: …………。 千雨(制服): …………。 千雨(制服): 帰る。やりたきゃ、お前ひとりでなんとかしろ。 美雪: じょ、冗談だよ千雨っ! 千雨(制服): ……動物を飼ってると、仲間ができるんだよ。ペットショップに飯を買いに行ったり、動物病院に連れて行ったりしないといけないからな。 千雨(制服): 犬だと散歩させてる時とかに簡単に見つかるが、猫は……まぁ、そっちもそっちできっといるだろ。 千雨(制服): で、その管理人だったら、何かご近所に心当たりがある可能性が高いかもと思ったんだよ。 千雨(制服): 例えば子どもが増えて、大きくなって……手狭とか交通の便とかで団地を引っ越した一家が、今は建てたマイホームに住んでるとかな。どうだ? 美雪: あっ……なるほど!確かに、闇雲に里親を探すよりははるかに効率的だね……! 千雨(制服): そういうことだ。……あとは例の子猫を、見栄えするよう身ぎれいにしてやることだな。いくら可愛くても、薄汚れてたら魅力半減だ。 美雪: ……母さんに相談してみるよ。綺麗にする間だけでもうちに置けないかって。 千雨(制服): 正直、お前の家で飼えたらそれが一番なんだけどな。お前の母さんは人望あるし、他の連中もお前の家ならそう強くは言わないだろうし……。 美雪: いや、それはさすがにダメだよ。近所に猫アレルギーの人がいたら、迷惑がかかる。 千雨(制服): ……そう言うと思った。 Part 02: 3日後の放課後は、その日も雨で……でも、美雪の顔は晴れやかだった。 美雪: いやー、すごいね千雨!何もかもがキミの読み通り、うまくいったね! 美雪: こんなに早く可愛がってくれそうな新しい飼い主が見つかるとは思ってなかったよ! 美雪: しかも最近、病気で亡くした猫と柄がそっくりとか……あはは、ちょっとできすぎな気すらしてきたよね。 美雪: なんだか、あの家の子になることが最初から決まってたみたい。 千雨(制服): だとしたら、ストレートにあの家の玄関に行ってにゃーにゃー鳴いてくれればよかったんだがな。 美雪: ……? なんか浮かない顔してるね、どうしたの。 千雨(制服): いや……逆に私はあまりにも読みが当たりすぎて、途中から不安な気分になってな。 千雨(制服): 途中で何か落とし穴でも隠れてないか、って。 美雪: あはははっ! ほんとキミって豪快に見えて悲観主義者だよねー。自分の読みと勘を信じてあげればいいのに。 千雨(制服): バカ言うな。この世に自分ほど、信じられないものはない。 美雪: そう。じゃあその分、私が千雨のこと信じるよ。 千雨(制服): …………。 美雪は時々、こういう恥ずかしいことを平気かつ真顔で言ってのける。 あっさりと信じると言って、言葉通りにあっさりと信じる。 その後は自分の言ったことを忘れたかのように平然と過ごすので、逆にこちらの居心地が悪い。 別に害があるわけじゃないが、そう言われると尻の座りが悪いというか……妙にソワソワした気分にさせられるのだ。 かと言って言葉の真意を真正面から聞くと今以上に居心地の悪い思いをする予感がして……さりげなく別の話題に切り替えることにする。 千雨(制服): なぁ……美雪。あの猫、なんでお前が飼ってやらなかったんだ? 美雪: なんでって、社宅でペットは禁止されてるからだよ。 千雨(制服): その禁止事項を一番守らなくちゃいけない管理人が、現在進行形で破ってるんだぞ? 美雪: それはそうだけど……別の人が破ってるからって、自分も破っていいとはならないよ。 美雪: それにアレルギーは、自覚がないけどあるパターンが一番怖いって田島さんのママさんも言ってたじゃん。看護婦時代にそういう患者さんをたくさん見てきたって。 美雪: うっかり食べ続けて触れ続けたりして、重篤化すると本当に大変なことになる……でしょ? 千雨(制服): あぁ……そんなこと言ってたな。 美雪: 正直、実は近所の誰かが猫アレルギーありました! って判明しないか、ちょっとヒヤヒヤしてる……。 千雨(制服): それはあるかもしれないが……実際近所にいる可能性は低いだろ。 美雪: 低い高いは、実際に調べてない今の私にはなんとも言えないよ。 美雪: 社宅のみんなは仕事のことがあるから、何かあってもすぐには引っ越せないからね……一応、上下左右の人にないことは確認したけど。 千雨(制服): あ? まさか、上下左右の家のヤツにまでわざわざアレルギーの確認を取ったのか? 美雪: 一時的ならともかく、何日かは家に置けないよ。痛かったりかゆかったり辛い思いをするのは私じゃないんだから……ちゃんとしておかないと。 美雪: 自分の知らないところで原因が発生してるって、嫌でしょ? ううん、と美雪が傘を持ったまま背伸びをする。 美雪: 正直、親が殉職して社宅にいる理由がない私が、現職の家族を追い出すわけにはいかないからね。 千雨(制服): お前たちが社宅に住み続けるのは、法でちゃんと保証された権利だろうが。他人にとやかく言われる筋合いはない……それに。 千雨(制服): 万が一近所のやつが猫アレルギーだったら、どうするつもりだったんだ? 美雪: もちろん、別の手段を探すつもりだった。 千雨(制服): ……お前って、諦めがいいのか悪いのかよくわからんやつだよな。 美雪: アレルギーなんて本人にもどうしようもないからね。でも、あまり長居させるわけにはいかないから千雨が2日で飼い主さんを見つけてくれて、助かったよ。 千雨(制服): まぁ、親戚の法事で明日の放課後から母方の爺ちゃん家に行くからな……。 美雪: 問題と猫と私を一時的にでも置き去りにしたくなかったんでしょ?……ありがとう、千雨。 美雪: いやー、でもよかったよかった!いいことをすると気分がいいね。 千雨(制服): それくらいしか報酬はないけどな。 よかったよかった、と雨にもかかわらず実に嬉しそうに美雪が晴れ晴れとした顔を浮かべるものだから。 私はこの会話の数時間前に起きた、不愉快な出来事を打ち明けるタイミングをすっかり失ってしまっていた……。 Part 03: 女子生徒: ねぇ、黒沢さん。 その日は晴れ模様で、買い物で公園に立ち寄った私の元へ、見覚えのある女子生徒が声をかけてきた。 名前は覚えていないから、社宅のやつじゃないことだけは確かだ。ただ見覚えはあるので同学年ではあるのだろう。 千雨(制服): (えーっと、誰だっけな……) ぼんやりとクラス名簿の上から順に名前を思い出そうとしていると、その女子はにこやかに口を開いていった。 女子生徒: あのさ……捨て猫の飼い主を探してるって聞いたんだけど、本当? 千雨(制服): あぁ、そうだが。 女子生徒: うち飼ってあげてもいいけどさ……あの猫を見つけたのって、赤坂さんなんでしょ? 「赤坂さんなんでしょ」……か。その声の響きに妙に浮ついたものを感じ、すぐさま全身に緊張がみなぎっていく。 千雨(制服): ……だから? 女子生徒: いやー、なんか悪口みたいになるけどさぁ?黒沢さん、いっつもあの子に色々押しつけられてるでしょ?猫の飼い主捜しまでさせられるとか、大変だなーって思って。 にこやかにまくし立てるクラスメイトの言葉に、私はちょっと目を見張って……すぐ目を細めた。 千雨(制服): ……そうか、そう見えるか。 女子生徒: あ、やっぱり? 千雨(制服): あぁ。実はあいつに押しつけられて困ってたんだ……。 千雨(制服): ……って、言うと思ったらお前の目は節穴だな。 女子生徒: え……っ? 千雨(制服): 猫を最初に見つけたのは私だ。アテが外れてあいつを飼い主捜しに付き合わせたのも私だ。 千雨(制服): そもそもあいつに押しつけられたものなんて何もない……で、お前はなんだ? 戦闘態勢に入った私は、手にした鞄をくるりと得物のように回してみせる。 もちろんこれで殴るつもりはない。ただの威嚇だ……今のところは、だが。 千雨(制服): 悪口みたい、と言うからには自覚がなさそうだから親切な私が教えてやるよ……お前のそれは悪口だ。 千雨(制服): しかも前置きして自分はちゃんと悪口みたいだと自覚してるポーズを取ってる分、タチが悪いヤツだ。よかったな、ひとつ勉強になって。 女子生徒: はぁ?! べ、別にそんなつもりじゃ……! 千雨(制服): じゃあどういうつもりだったか説明して……やっぱいい。お前の弁明なんざ価値が無い。じゃあな。 話はすんだとばかりに立ち去ろうとするも、背中に悲鳴のような声をかけられた。 女子生徒: ちょ、ちょっと! 黒沢さんさぁ……そういうの、酷くない? 千雨(制服): 猫ならやらん。お前みたいな節穴に預けても、うっかり逃がして車に引かれて死なせるのが目に見えてる。 千雨(制服): あと……私が猫なら、お前に飼われるのだけはお断りだ。 女子生徒: やってもないこと決めつけないでよ!そういうの態度悪いし、よくないと思うよ? 千雨(制服): はっ……自分の態度を直してから、他人の態度の悪さを指摘しろよ。 千雨(制服): それに、最初から猫なんざ飼う気がないのに希望チラつかせて自分のいいたいこと一方的にまくしたてる方がよくないと思うがな? 女子生徒: ……っ……。 女子生徒が般若のように顔を歪ませた後、不意に唇の端を持ちあげた。 まるで、自分を怒らせたことを後悔するぞと言わんばかりの勝ち誇った顔で。 女子生徒: 黒沢さん……もしかしてあの話、知らないの? 千雨(制服): 主語がないな。何の話だ。 女子生徒: 黒沢さんに彼氏できても、赤坂さんに取られちゃうかもよ、って話。 まるで切り札を表に返したように、その女子生徒の顔は勝算に満ちていて……。 それがあまりにも滑稽で、おかしくてつい笑ってしまった。 千雨(制服): あぁ、そりゃいいな……私より美雪の方がいいって言う男は、ちゃんと女を見る目があるってことだ。 千雨(制服): そんなセンスの良い男がいるなら、是非ともお近づきになりたいもんだな。 背後で引きつったような声が聞こえたが、かまわず私はさっさと立ち去って……。 ……そこで、目が覚めた。 周囲を見渡し、自分が放課後一人下校して自宅から数時間の母の実家へ向け電車を乗り継ぎ移動していることを思い出し……目頭を揉む。 千雨(制服): (……くそっ、ヤなことを思い出した) 夢に見たのは、昨日の出来事だ。 千雨(制服): (美雪は自分のことをもっとアピールしろって言うけど、あいつの方こそアピールが下手過ぎるだろ……くそっ) 学校での出来事を美雪に伝えるかずっと迷っていたせいで妙な夢まで見てしまったらしい。 最悪な気分だ。どうせなら大好きなサメが山ほど出てくる夢が見たかった。 ……そういや、ちょっと前にも変な夢を見た。もしかしたら疲れているのかもしれない。 だが、疲れを取るためには目の前の問題を解決しなければいけないだろう。 千雨(制服): (美雪に言うにしても、どう言うべきかな……?) ありのまま伝えるのも手だが、そんなことで美雪を動揺させたくはない。ただでさえ猫騒動が一段落したばかりだ。 しかも、こんな話をしても美雪を悲しませるだけで何ひとつ身にならないことは目に見えている。 いや、そもそも猫騒動自体が美雪のためになることなど何もなかったが……。 千雨(制服): (あいつは振り回されてばかりなのに、バカはなんで振り回してるように見えるんだ……?いや、バカだから妄想に取り憑かれるのか?) バカの考えはわからない、と結論付けたところでスピーカーが祖父母宅の最寄りバスの名前を読み上げ慌てて停車ボタンを押し込んだ……。 そしてバスを下りて徒歩数分……。 千雨(制服): う、お……おいおい!今日は晴れって言ってただろ?! 晴天は曇天へと変わり、一気に雨が降り始め……私は慌てて田舎のあぜ道を走り始めた。 だがこのままなら、あと数分で祖父母宅に到着できる。その後は先に着いている母に着替えを出してもらって、それで……。 子猫: にゃー。 千雨(制服): は……?! 雨脚に紛れて聞こえる足元からの声に、私は信じられない思いで下を見た。 千雨(制服): 猫……? 子猫: にゃーん。 そうだが、と言わんばかりに走る私に併走する見知らぬ……首輪がないので、おそらく野良猫。 千雨(制服): くっそ……私についてきてもいいことなんて無いぞ……? 子猫: …………。 怒鳴りつけるも、猫は特に気にした風もなくむしろ構わないと言いたげに速度を上げた私に寄り添うように走ってくる。 千雨(制服): あぁくっそ……!お前も飼い主見つけてほしいのか?! 猫は返事をしないが、このままだとこの猫は祖父母の家までついてくるだろう。 千雨(制服): あぁ、くっそ! ……走りながら、既にこの猫の引き取り手のことを考え始めている自分がいることに舌打ちする。 ……いいことをすると気持ちがいいと言った美雪に、私はそれくらいしか報酬はないと返した。 でもこうして猫の引き取り手を考えているというのは、ある意味成し遂げた報酬なのかもしれない。 一度猫を拾って飼い主を見つけ出せたなら……次もまた、見つけ出せる気がするという、自信。 その報酬が私の手の中にあるからには……この猫の次も、見つけてやれる気がした。 千雨(制服): (でもその報酬ってやつは、私ひとりだと猫に適当にエサやって終わらせてたら……手に入らなかったものだよな) だとしたら……。 千雨(制服): 私が美雪に押しつけられてるんじゃなくて、私があいつからもらってるんじゃないか……? 喜び……幸せと感じる、そういったものを。 子猫: にゃーん。