5「悲喜交々」
昨夜の夕食後、西南は翌日の買い物の下調べをするために、疲れているからという理由を付けて、さっさと部屋へ戻ろうとした。案の定、アイリは西南の部屋で、夜通し宴会をしようと企んでいたが、幸いな事に、ここがGPの宿舎であったため、未成年の居る部屋での飲酒は禁止、しかもアイリですら、艦長資格のある西南の部屋には、無断で入る事が出来なかった。
アイリの不満は結局、他の者に向けられ、西南以外全員が、アイリの宴会への強制参加を余儀なくされたのだ。宴会は霧恋の部屋で行われたらしく、西南が夜中に一度トイレに起きた時も、霧恋の部屋の明かりは点いたままだった。
「昨日は危ない所だったな……まあ、結果的には良かったんだけど……」
翌朝、西南は霧恋達と出くわさないよう、少し早めに起き、例の食堂に予約を入れていた弁当を受け取ると、足早にエントランスを通り過ぎようとしていた。だが……、
「どっこ、行くのかなあ?」
「!?」
突如横から声をかけられた西南は、固まるようにその場に止まった。西南の横にあるソファーには雨音や霧恋だけでなく、アイリや珀蓮達も居たのだった。
「は、早いですね? 昨夜は確か……」
「寝てないもん♡」
雨音は意味もなく浮かれた口調になっている。徹夜と宴会でちょっとナチュラルハイ状態らしい。そしてそれは雨音だけではなかった。
「西南ちゃん、お弁当なんか持って、どこへ行くのかな?」
「あの……昨日、急にケネス達から連絡があって」
「西南に給料が出たから、たかろうって事かな?」
霧恋のテンションも、若干おかしかった。
「まあ、そういう事です」
「そんなの放っといてさあ、私とどこか遊びに行かない?」
「ずるいわよ、雨音! 私だって……」
「約束もしましたし……じゃあ失礼します!」
雨音と霧恋がもみ合っている隙に、西南はダッシュして出口に向かった。だが他の者達は、それを引き留めるでも追いかけるでも無く、その後ろ姿を見送った。