Part 01: 一穂(私服): ごちそうさま……!とってもおいしかったよ、美雪ちゃん。 美雪(私服): はい、おそまつ様っ。……どう、一穂? パン以外でも私の料理の腕、なかなか捨てたものじゃないでしょ? 一穂(私服): うん……すごく上手だった。いつものようにサンドイッチだと思ってたから、ちょっと驚いちゃった……かな。 魅音(私服): うんうん、確かに。洋風おにぎりってどうだろ? って最初は身構えたけど、結構いけるものなんだ。 魅音(私服): ご飯をドライカレー、炒飯にして……具材は肉そぼろにとんかつ、それに角煮とはね。冷えてもおいしいってのは意外だったよ。 美雪(私服): そういうこと!炒めたご飯はそのまま握ると崩れやすいんだけど、一工夫を加えたらこの通り! 美雪(私服): 直に持つと手が汚れちゃうって難点も、ラップで包めば問題なーし! 沙都子(私服): 今までにありそうでなかった、まさにコロンブスの卵的な発想の転換ですわ。今度梨花に教えて、試してみましてよ。 羽入(私服): あぅあぅ、梨花が作ると激辛になりそうなのでできれば炒飯だけにしてもらいたいのですよ~。 美雪(私服): まぁ、せっかくみんなで出かけて野外で宴会をするんだからさ、正攻法の王道はレナと菜央に任せるとして……。 美雪(私服): 私はちょっと、変わった料理の方がアクセントが効くんじゃないかって思ったんだよねー。 一穂(私服): 変わった料理なんて、そんなことないよ。もちろんレナさんと菜央ちゃんのおにぎりも、すごくおいしかったけど……。 一穂(私服): こんなにも素敵な味のおにぎりだったら、私は毎日でも食べたいな……♪ 美雪(私服): おぅ……米ソムリエの一穂からそこまで高評価をもらえるとは、なんか嬉しいねー。気が向いたら今度、朝食に作ってあげるよ。 美雪(私服): で……それをパンに挟む、と。 一穂(私服): お、おにぎりサンド……? 贅沢は言わないから、せめてパンかご飯のどちらかにしてよ……! 魅音(私服): あっはっはっはっ!チャレンジ精神は大いに結構だけど、さすがにそれはやり過ぎじゃないかなぁ。 魅音(私服): ……っと、もう飲み物がないや。一穂、そっちのクーラーボックスの中はどう? 一穂(私服): ……もう、あと1本しかないよ。あれだけあったのに、あっという間だね。 美雪(私服): まぁみんな、かなりハイペースで飲み食いしてたからねー。なんか買ってこようか? 魅音(私服): いやいや、あっちの屋台だとお祭り価格だから結構ボラれるよ。缶ジュース1本200円、とかさ。 美雪(私服): おぅ……350mlか500mlだったらまだいいけど、細い250ml缶はなんか損した気分になるんだよねー。 美雪(私服): といっても、自販機はこの近くになかったしスーパーはもっと遠いし……うーん。 魅音(私服): あっはっはっはっ、心配いらないって。きっとこうなるかなって思って、集会所の冷蔵庫に予備の缶ジュースを詰めておいたからさ。 魅音(私服): 今朝方に入れたやつだから、もういい感じに冷えていると思うよ。 美雪(私服): さっすが、気が利いてるねー♪んじゃ私、ちょっくらそれを取りに行ってくるよ。 魅音(私服): えっ……ひとりで?かなりの数だし、さすがにきついでしょ。私も一緒に行こうか? 美雪(私服): 魅音はいいよ。ついさっきまであれこれ忙しく働いてたんだから、少しはゆっくりしてなって。 美雪(私服): とはいえ、ひとりだと何かあった時に対処できるか不安だから……一穂、来てくれる? 一穂(私服): うん、もちろん。菜央ちゃんも、もし良かったら……あれっ? レナ(私服): はぅ……大丈夫、菜央ちゃん?ちょっと疲れちゃったのかな、かな……? 菜央(私服): う、ううん……けど、今朝は早起きして料理の仕込みを手伝ってたから、その反動で眠気が急に来たのかも……かも。 レナ(私服): 菜央ちゃん、とっても頑張ってくれたもんね。じゃあこうして、膝枕をしてあげる♪ 菜央(私服): ほ、ほわぁ……ありがとう、レナちゃん……!柔らかくて、気持ちいい……♪ 菜央(私服): できれば何日でも何年でも、ずっとこうしていたいかも……かもっ……♪ レナ(私服): あははは。そんなに頭を動かしたら、くすぐったいよ~。 美雪(私服): ……一穂。あのヘヴン状態の菜央を連れ出したりしたら、一生恨まれると思うけど……それでも誘う? 一穂(私服): あ、あははは……ちょっと、可哀想だね……。 美雪(私服): いや、むしろ可哀想なのは声をかけた方だと思うよ。絶対酷い目に遭うこと間違いなしだし、あれはもう見えてる地雷そのものだ。 一穂(私服): な、なるほど……さすが美雪ちゃん、普段から地雷を踏み抜いてきただけのことはあるね……。 美雪(私服): ぐはっ?! 魅音(私服): あっはっはっはっ!一穂も、結構言うようになったね……くっくっくっ! 一穂(私服): え、えぇっ……?そんなことはない……と、思うけど……。 その後なんとか復活した美雪ちゃんと一緒に、私は集会所へと向かった。 魅音さんから聞いた通り、台所らしき場所には大きな冷蔵庫。その中に、ぎっしりと缶ジュースが詰められている。 私たちに余計なお金を使わせまいと、彼女が気遣って準備してくれたんだろう。……その気持ちが、とても嬉しい。 美雪(私服): 氷もあれば最高なんだけど……おぅ、あったあった。やっぱり魅音、手抜かりがないねぇ。 美雪(私服): んじゃ、ここのクーラーボックスを使ってあるだけ缶ジュースを運ばせてもらおう。……っと。 そう言って美雪ちゃんは、近くの壁際に立てかけてあった台車を組み立てる。 そしてクーラーボックスを積み込み、中に氷と缶ジュースを一杯に詰めていった。 美雪(私服): いやー、助かった。手で持っていくには数が多いし、何回か往復をしなきゃって思ったからね。 美雪(私服): とりあえず一穂はボックスが傾いて落ちないよう、横から軽く支えてて。……いけそう? 一穂(私服): うん。美雪ちゃんこそ、大丈夫?全部入れたら、結構重くなっちゃったけど。 美雪(私服): んー、まぁ少しの距離だし問題ないと思うよ。ただ地面が結構凸凹だから、一穂も注意してね。 一穂(私服): わかった。 頷き合って私たちは、台車を押しながら集会所を出て行った。 Part 02: 屋台が立ち並んで人の多い場所を避け、私たちは人通りの少ない裏側に回ってみんなのもとへと向かう。 あちこちから聞こえてくる、賑やかな歓声。私たちのように家族や親しい人たちが集まって、桜の下で楽しい時間を過ごしているのだろう。 加えて今日は、朝から気持ちいいほどに快晴。風はあたたかくて、柔らかく……ほんのりと甘い匂いが鼻先をくすぐっていくのが、とても心地よかった。 美雪(私服): ……。あのさ、一穂。 一穂(私服): なぁに、美雪ちゃん……? だから、だろうか。……美雪ちゃんの話しかける声が固く、ぎこちなくなっていたことに一瞬気づくのが遅れてしまった。 美雪(私服): ひょっとして……また、何かあった? 一穂(私服): えっ――? はっ、と息をのみ、私は顔を振り向ける。すると美雪ちゃんは、私に視線を合わせないまま遠くを見つめ……ぽつり、と続けていった。 美雪(私服): ここ数日の一穂、気を張ってるように見えたからね。特に今日なんかは、口数が少ないわりに無理をして話に乗ってくる感じだったしさ。 美雪(私服): 気を悪くしないで聞いてもらいたいんだけど……一穂って強がろうとする時ほど、結構きつい感じに相手へ言葉を返すくせがあったりするんだよ。 一穂(私服): っ……ご、ごめんなさい……さっきは調子に乗って、言い過ぎちゃって……。 美雪(私服): あははは、だから謝らないでってば。私だって言われても仕方のないことをしてるし、返してくれること自体は嬉しいんだからさ。 美雪(私服): でも、もし……気になることがあるんだったら何でも言ってほしい。力になれるかはともかく、気晴らしくらいにはなれるつもりだから……。 一穂(私服): ……ありがとう、美雪ちゃん。そう言ってもらえるだけで、すごく心強いよ。 嘘でも何でもなく、私は正直にそう答える。 この「世界」に来て、生活を送るようになって……美雪ちゃんと菜央ちゃんの存在がどれだけ大きくて頼りになっているか、とても言い尽くせないほどだ。 2人がいるから、自分のままでいられている。そうでなければきっと……私はもっと早い段階で気がおかしくなって、絶望していただろう。 一穂(私服): ……っ……。 だけど……いや、だからこそ私は本当のことを彼女たちに言うべきなのかがわからなくて……口をつぐむ。 どれだけ頑張ってみても、私たちは結局同じことを繰り返すことしかできないかもしれない。なにしろ相手は、記憶を改変できる……「神」だ。 上位の存在に対して……私たちは無力すぎる。それを思うと、辛くて……苦しくてっ……。 一穂(私服): ……ねぇ、美雪ちゃん。変なことを聞いちゃうけど……もしもだよ?もし、今見てるものが昨日とは違ってて……。 一穂(私服): それを他の人たちが当たり前のように受け入れて、変わってないと本気で信じてたら……どうする? およそ質問になっていない漠然とした問いかけに、美雪ちゃんはきょとん、と目を丸くする。 それでも彼女は、真面目に受け止めてくれたのか天を仰ぎながらうーん、と唸ると……彼女なりに出してくれた答えを私に告げていった。 美雪(私服): それだけを聞いても、どう解釈すればいいのか正直言って判断がしづらいけど……。 美雪(私服): もし、一穂がそれに悩んでるんだとしたら……できれば打ち明けてほしいな、って私は思うよ。 一穂(私服): ……。それを伝えたところで、次の日には話したこと自体を忘れてるとしても……? 美雪(私服): ……んー、なるほどなるほど。つまりは私と菜央はもちろん、他のみんなも「また」記憶をいじられてるってわけか。 一穂(私服): ……っ……?! さすがに予想だにしていなかった答えに、私は思わず目を見開いて美雪ちゃんに顔を振り向ける。 すると彼女は苦笑して、肩をすくめながら……台車を押すのを止め、桜並木と屋台の群れに視線を送っていった。 美雪(私服): ……実はさ、朝から違和感があったんだよ。で、神社に来てみて……それはいっそう強くなった。 美雪(私服): 私は……この景色を、見たことが……ある。その時は確か、……お父さんがいたんだ。 一穂(私服): ……ぁ……。 美雪(私服): おかしいよね?だって私が#p雛見沢#sひなみざわ#rに来たのは、今年のはずなのにさ。 美雪(私服): だけど……私はその時、屋台を……手伝ったんだ。何をやったのかは覚えてないけど……ここで……。 一穂(私服): み、美雪ちゃん……っ? 美雪(私服): ……ごめん、一穂。今すぐに思い出せるのは、それくらいだよ。でも、時間をかければもう少し……っ。 一穂(私服): い……いいよ、無理をしなくても!私は別に、思い出してほしくて言ったわけじゃないんだからっ……! そう言って私は、しかめっ面になりながら頭を押さえる美雪ちゃんを慌てて制止する。 すると彼女は、汗がにじんだ額を拭うと「……ごめん」と小さく呟いていった。 美雪(私服): 私たちが記憶の改変に振り回されたことで、キミをずいぶんと苦しめてたみたいだね……それを思うと、本当に申し訳ない。 美雪(私服): けど、私たちは……いや私は、絶対に思い出す。そして、少しずつでも手がかりを……残していけるようにする。 美雪(私服): そうすることで、何かが見えてくるはずなんだ。こんな状況を作り出しやがったやつの#p思惑#sおもわく#r……あるいは事態を打開する、突破口がさ。 美雪(私服): だから、頼りないかもしれないけど……信じてほしい。私は絶対、一穂のことをひとりぼっちにさせやしないから……。 一穂(私服): ……。ありがとう、美雪ちゃん……。 それを聞くことができただけでも、少しは救われた思いになって……私は笑う。 この場だけでも美雪ちゃんの優しさに感謝して、彼女をせめて少しでも安心させたかったから……。 Part 03: 荷物をみんなのところへ届けた後、私は「お手洗いに行く」と言って少しだけ場を離れることにした。 美雪ちゃんはついて行く、と言ってくれたけど首を振って遠慮した。彼女はごまかしていたが、さっきのことで疲労があらわに見えたからだ。 一穂(私服): (でも……心配してくれるのは、嬉しい) 優しい菜央ちゃんに、責任感の強い美雪ちゃん。レナさんたちもそうだけど、私はこの#p雛見沢#sひなみざわ#rに来て以来……素敵な友達に恵まれていると思う。 ただ……同時に、疑念を抱かずにはいられない。私は彼女たちにとって本当に「いい友達」と言えるのだろうか……と。 一穂(私服): あっ……? その時ふと、なにげなく目を向けた先からおいしそうな甘い匂いが漂ってくるのを感じる。 その匂いは、お団子屋さんからのものだった。なんとなく興味がわいた私はちょっとだけ見てみたいと思って、その店に近づく。と、 詩音(私服): おや、一穂さんじゃないですか。 一穂(私服): えっ……し、詩音さん?どうしてここに? 詩音(私服): もちろんバイトです。こういうお祭り時は、いい小遣い稼ぎになりますからね……くっくっくっ。 詩音(私服): よかったら、お団子いかがですか?ちょうど蒸し上がったところなので、味は3割増しに食べ応えがあると思いますよ。 一穂(私服): あ……で、でも私、あまりお金持ってないし。それにみんなから離れて、ひとりだけおいしいものを食べるのは、その……。 詩音(私服): ……そう言いながら一穂さん、お団子に完全ロックオン状態で目が離せないご様子ですが? 一穂(私服): はっ……?! 詩音(私服): くすくす……じゃあ、こうしましょう。これとこれ……あとこれも。作り置きの余りを、ここで「処分」していってください。 一穂(私服): っ、い……いいのっ? 本当に?! 詩音(私服): 私の賄いにしようと思っていたものですから、気にしないでください。多少固いかもですがその辺はまぁ、ご愛敬ってことで。 一穂(私服): あ……ありがとう、詩音さん! 詩音さんの好意に甘えて、私は屋台の前に設けられた縁台に腰を下ろす。そして早速、もらったお団子にかぶりついた。 一穂(私服): っ……お、おいしい……! 作り置きで固い……なんてことは全くなかった。甘くて柔らかくて、とてもおいしいお団子に私は舌鼓を打ち続けていた……。 3本目に手をかけたところで、ふと視線を頭上へと向けて桜の花を仰ぎ見る。 一穂(私服): ……。綺麗、だな……。 満開に咲き誇る、たくさんの桜。花吹雪とはよく言ったもので、風に舞い散る花びらは幻想的な彩りとなって視界いっぱいに広がっている。 一穂(私服): (こんな気持ちで桜を見ることって、今まであった……のかな……?) 聖ルチーア学園には、園内の敷地にたくさんの桜の木が植わっていた……と思う。寮室の窓から見かけたので、間違いない。 ただ……それはあくまでも景色の変化としてとらえただけのもので、見て「楽しむ」気分ではなかった。 詩音さんにお礼を言ってお団子屋を離れてからも、脳裏をよぎるのは過去に対しての記憶だった。 一穂(私服): (そういえば、私は……家族と一緒に、こうしてお花見に行ったことがあった……?) たんに忘れてしまっただけで、実際にはあったのかもしれないが……印象として残る記憶が、ない。 魅音さんは言っていた。雪と寒さに閉ざされた冬から春を迎える儀式のお花見は、雛見沢でも大事なイベントとして行われていた……と。 ある時期までは、現在の#p綿流#sわたなが#rしと同等程度の規模で扱われていたという。さらに、温泉宿などの施設ができるまでは観光名所のひとつでもあったらしい……。 一穂(私服): 私だって、美雪ちゃんたちのことを責められないよね……。 「黒幕」によって記憶を改変させられたのか、あるいは自然に忘れてしまったのかはともかく……覚えていないという事実に変わりはない。 むしろ、断片的でも思い出そうとしてくれる美雪ちゃんの誠実さこそ褒められるべきだろう……。 梨花(巫女服): みー……一穂? 一穂(私服): あっ……。 呼びかけられて振り返ると、そこにいたのは巫女服姿の梨花ちゃんだった。 梨花(巫女服): そこで何をしているのですか?魅ぃたちがいる場所は、あっちなのですよ。 一穂(私服): うん……わかってる。ちょっとだけ、ひとりになりたかったんだ。 梨花(巫女服): ……。何か、あったのですか? そう言って梨花ちゃんは、怪訝そうな顔で私をのぞき込んでくる。 ……気が抜けてうっかり心配させるようなことを言ってしまった。今さらごまかしようがないので、私は強引に話題を変えることにした。 一穂(私服): え、えっと……梨花ちゃんこそ、どうして巫女服を?何か儀式でもあったりしたの? 梨花(巫女服): この神社は古手家の管轄なので、何かと手続きをする必要はあるのです。 梨花(巫女服): 普段なら喜一郎が代わりにやってくれるのですが、今年は頭首が代行になったこともあって、ボクが顔を出さないといけないのですよ。みー。 一穂(私服): そ……そうなんだ。おじいちゃんの代行ってことは……お父さんが? 梨花(巫女服): はいなのです。……一穂は今日、顔を合わせなかったのですか? 一穂(私服): …………。 顔を合わせるどころか、この「世界」に来て以来これまで一度も会おうとすら考えたことがない……そう答えたら、梨花ちゃんはどう思うだろうか。 もちろん、会いたくないわけじゃない。ただ、この「世界」――昭和58年の公由一穂は5歳で……15歳の「私」ではないのだ。 本物でも、本人ではない私が会えるはずもない。そんな理由をまさか正直に言えるはずもなく、言葉を濁して黙り込んでいると……。 梨花(巫女服): ……あぁ、そうだったわね。困らせるようなことを聞いて、ごめんなさい。 そう言って梨花ちゃんはふふ……と笑い、私のもとへ歩み寄ると顔を寄せていった。 梨花(巫女服): ……気が狂いそうになるでしょう?自分だけが同じ時間を繰り返しているのに、そのことを周りの人が覚えていない。 梨花(巫女服): そして自分の記憶さえ、確かじゃない。忘れてしまったのか、あるいは何者かに書き換えられてしまったのか……。 梨花(巫女服): 毎日がまるで、間違い探しみたいで……飽きるよりも先に、終わらせてほしいって願いたくなってしまうのよ……。 一穂(私服): っ……梨花ちゃん、ひょっとして……?! ぎょっ、と思わず目をむいて、私は梨花ちゃんの顔を見つめる。 すると彼女は、妖しげな笑みを一変させ……にぱー、といつもの愛くるしい笑顔に変わっていった。 梨花(巫女服): みんなのところに戻りましょうなのです。まだまだ宴もたけなわなのですよ、にぱー☆ 一穂(私服): あ、……うん。わかった。 曖昧に頷いて、私はとことこと歩き出す梨花ちゃんの後についていく。 私は、彼女ともっと話し合うべきかもしれない。その思いを胸に抱き、ひとり頷いていた……。