Part 01: ラムダデルタ: ヤッホー!! スーパープリチーにしてスーパージーニアース!スーパーパーのラムダデルタちゃん様、けーんざーん!! 魅音: な、……何? 誰?ど、どこから現れたの……ッ?! そこは魅音の部屋だ。本棚には漫画がぎっしり。床にはカードやら何やらの切れ端や工作道具が転がり、とても乙女の部屋には見えない。 尻もちをつく魅音。それを見下ろして宙に浮かんで足を組むラムダデルタ……。 ラムダデルタ: 誰って、失礼しちゃうわね。私は絶対の魔女、ラムダデルタ! ラムダデルタ: 絶対を願い、絶対を約束する者に、絶対の保証を与える超カワイイ魔女ってワケなの! 魅音: な、何だかわかんないけど……、すごいワケだね……。 ラムダデルタ: アンタ、今、絶対を願い、絶対を約束したでしょう? 時間は、ほんの数分ほど前に遡る……。 魅音: これで……、完璧ッ……。絶対……、勝てる……ッ! 魅音の周りには、トランプの切れ端やら、割れたサイコロなどが散らばっている。 これらは全て、……イカサマの仕込み。明日の部活に、絶対に絶対に勝つ為に用意した、イカサマ道具の数々なのだ。 魅音: くっくっく……。おじさんは……、勝つ為ならどこまででもやるよ……。 魅音: フェアプレイなんてクソ食らえだね!勝つ為にしていい努力に限りを設けるのは敗者の言い訳! 魅音: 勝利する者はその為の努力と準備を徹底する!おじさんは勝つよ、絶対に勝つ!! 魅音: 神様仏様!! 明日は絶対に勝ちます!絶対に勝ちますから、絶対に勝たせて下さいッ、お願いしますううぅぅ!! ラムダデルタ: ヤッホー!! スーパープリチーにしてスーパー(以下略) ラムダデルタ: アンタの絶対の願いと約束、聞き届けちゃったわ! ラムダデルタ: その部活とやらに絶対勝つというアンタの信念!大したものだわ、褒めてあげちゃう! 魅音: あ、あぁ、そりゃどうも……。んで、アンタは何者……? ラムダデルタ: スーパープリチーにしてスーパージーニアース! 魅音: のラムダデルタちゃん様だろ?で、アンタは何者なんだよ一体……。 ラムダデルタ: アンタ、願ったでしょ?明日は絶対に勝つ、だから絶対に勝たせて下さいって。 魅音: 勢いで言っちゃったけど、勝つから勝たせてって、日本語ちょっと変だよねぇ、えへへ……。 ラムダデルタ: 言葉の問題じゃないの!絶対の意思の絶対の強さが大事なの! ラムダデルタ: 私はね、絶対を願い、絶対を自ら叶えようとする人のところに現れて応援する、素敵な魔女なの! ラムダデルタ: 私が来たからにはもう大丈夫!アンタの絶対の願いは、絶対に叶うことを保証してあげるわ! 魅音: 保証、だけ……? ラムダデルタちゃん様が、おじさんの願いを叶えてくれるんじゃないの? ラムダデルタ: 何よ。すごいことなのよ? 絶対が叶うことの保証って。 魅音: ん、……言われてみれば、……確かに。 人の世に、絶対と断言できるものなどなかなかない。ましてや、部活の勝負事ともなれば、絶対に勝てると念じてようやく五分といったところだろう。 ラムダデルタ: ところで。アンタが願ってる、部活の勝利ってなぁに?部活って何部よ? 魅音: 我が部はね、神羅万象なんであれ!勝敗がつけられるものならば何でも部活! 魅音: そして楽しく! だけれども絶対絶対ぜーったい、狙うは一位のみー! って部活なの。 ラムダデルタ: なるほど。明日の勝負はトランプやボードゲームで決める訳ね? ラムダデルタ: ふ~ん……。これ、よく出来てるじゃない。イカサマカードってヤツぅ? 2枚の異なるカードを斜めに切断してうまく張り合わせると、上下を逆さまにするだけで、ジョーカーにもスペードのエースにもなるカードの出来上がりだ。 魅音: 強力なカードになるけど、これが思い通りに使える保証はないからね。 ラムダデルタ: 確かに。場に本物のジョーカーやスペードのエースが出ていたら、使えばイカサマだってバレちゃうわねぇ。 魅音: 逆が一番怖いよ。場に出ていないけど、誰かの手札に同じものがあったら?即座にイカサマだってバレちゃう。 部活は何でもアリ。勝つ為ならばイカサマを使うのも自由だ。 ただし、バレることだけは許されない。バレれば当然、そのイカサマは二度と使用できないし、他にもイカサマを仕込んでいるかもしれないと厳重にマークされる。 種目を他のものにチェンジされれば、用意したイカサマの仕掛けも全ては水の泡だ……。 ラムダデルタ: なるほど……。だから、この部屋はこんなにも散らかっている訳ね。 ラムダデルタ: 明日、唐突に、勝負事がどんな種目に変わってしまうかもわからない。 魅音: ……突然、別のゲームに切り替わっても大丈夫なように。あるいは、何らかの突発事態が起こっても対応できるように。 ラムダデルタ: 明日、部活で使われそうなあらゆるゲームのイカサマを、こうして準備していたという訳ね……。 だが、部屋の散らばりようは、ちょっとしたイカサマの準備という域を越えている。 まるで、勝てば賞金10億円、それ以外は全て死のデスゲームに臨むかのような準備だ……。 ラムダデルタ: 負けられない勝負があるみたいね?それも、“絶対”に……。 魅音: いや、……その、まぁ、……んー……。 ラムダデルタ: 絶対に負けられないのよね? ……何がかかってるの? 魅音: 負け、られないんだ……。絶対っ。 この園崎魅音……、負けられない勝負は数あれど……。 ……絶対に絶対に……明日の勝負だけは負けられないんだっ。 詩音: はろろ~ん♪お姉にレナさぁん、元気にやってます~? レナ: あー、詩ぃちゃんだー。お久しぶりかな、かなっ。 魅音: どしたの? 放課後に来るなんて珍しいね。 詩音: 沙都子と梨花ちゃまはどうしたんですか?圭ちゃんもいませんね? 魅音: 沙都子と梨花ちゃんは日直で職員室に行ってるよ。圭ちゃんはお父さんの仕事の手伝いとかで、直帰したよー。 レナ: 詩ぃちゃんも一緒に部活やろうよ。二人もすぐに戻ってくるし。 詩音: うーん、すみません。今日は部活をやりに来たんじゃないんです。表に葛西も待たせてますんで、手短に。 レナ: 何かな、かな?? 詩音: これ。部活の賞品に使えないかと思いまして。 魅音: 何それ。チケット? 詩音: 穀倉で写真館やってる、博叔父さん、覚えてます?何でも新しいサービスを始めるんだそうで。 レナ: 写真館のサービスって、何かな、かな。 詩音: 男女のペアで、結婚式衣装を着て記念撮影をした後、素敵なレストランでのディナーがついてくるんだとか何とか。 魅音: ……そこまで行ったら、普通に結婚式をした方がよくない? レナ: 結婚式って、結構、お金が掛かるっていうし。最近は籍だけ入れて、お式はしないって人もいるんだそうだよ。 魅音: ふーん。なるほどね。二人で写真を撮って食事をするだけなら、ずっとリーズナブルに結婚式気分が味わえる訳だ。 詩音: 結婚式をやり損ねた夫婦とか。コスプレ感覚で衣装を着てみたい若いカップルとか。色々と見込んでるらしいですよ。 魅音: ふーん。それで? 詩音: はー。お姉の鈍感ぶり、双子の妹としては不安になりますよ。 詩音: このチケット2枚を部活に寄付する訳ですが、男女ペアなので、男用チケットはまず圭ちゃんで確定なんですよね。 レナ: あれ? ということは、女の子用チケットを手に入れると……。 魅音: 花嫁衣装で、圭ちゃんと写真が撮れて、一緒にディ、ディナーまで出来ちゃうってこと……?! 花嫁衣装を着て、圭一と2ショットで撮影されたことは以前行われたゲストハウスでのイベントで経験済みだ。 ……ただ、あれは他の子たちも交えた単なるお遊び。甘いムードを楽しむようなものではなかったので、正直言って若干物足りなさがあったことは否めない。 しかし……今回は違うッ!!撮影の間ずっと圭一を独り占めできる上、その後は2人きりで食事タイムを満喫できるのだから……!! 詩音: 私の想い人は悟史くんなんで、圭ちゃんはお姉たちに譲りますね。 それだけを言い残し、詩音は去っていくのだった。 ……絶対に負けられない勝負となる、炎のチケットだけを残して。 ラムダデルタ: なぁるほどね……。負けられない勝負ってワケね!! ラムダデルタ: 気に入ったわ! 絶対に勝つという絶対の意思!このラムダデルタちゃん様が絶対を約束してあげるわ!! Part 02: 突然やってきた詩音が置いていった、結婚式衣装を着て男女ペアで記念撮影にディナーまで付いてくるというペアチケット。 男は圭一しかいないから、争う余地はない。つまり、新郎役は圭一で決定しているということだ。 要は、その圭一の隣に、誰がウェディングドレスを着て寄り添えるか、ということだ……。 魅音: ……ふ、ふ~ん。まぁ、以前にもやったことだし新鮮味は落ちるかもだけど、食事も込みだったら多少は盛り上がる、……かな。 レナ: あれ? 魅ぃちゃんは乗り気じゃないの?レナはウェディングドレスだったら、何度でも着てみたいな~、はうはうはぅ~~♪ 魅音: レナってほんと、そういうのが好きだねぇ。ま、おじさんはウェディングドレスを着るってことにそこまで興味を引かれないけどさ……。 レナ(感染発症): ホントに、……興味ないの? 魅音: ま、まーねー……。おじさんにはウェディングドレスなんて、……似合わないし、憧れとか特にないし……。 レナ: ふーん……。 レナ: じゃあ! その詩ぃちゃんのチケット、レナがお持ち帰りするね~♪ レナ: 可愛い可愛いウェディングドレスぅ~♪圭一くんと記念撮影して、二人きりでのディナーなんだよぅ! はう~♪ 魅音: お、おっと、そう簡単にはお持ち帰りできないよ?詩音は部活の賞品にって置いてったんだからねー……。 レナ: じゃあ、明日の部活で決めようね!!勝ったらウェディングドレスで圭一くんと二人きりのディナ~、はぅ~はぅ~!! レナ(感染発症): 魅ぃちゃんが本当に興味ないなら、レナが勝っちゃうからね? レナ(感染発症): 本当にそれで……、いいのかな? ……かな? 魅音: 勝ちたいですッ!! 絶対、勝ちますッ!!明日は絶対に負けられないんですううぅッ!! ラムダデルタ: 気に入ったわ!!アンタの絶対の意思、絶対の勝利!私が絶対に叶えてあげる!! と来れば、ファンシーな魔女が素敵なステッキでキラキラな魔法をかけてくれるに違いないと誰もが期待する。 しかし、……魅音の部活に備えたイカサマ準備は、ラムダデルタを迎えてもなお続けられていた。 ラムダデルタ: ほらほら、頑張りなさい?雑に作ったら、すぐにイカサマが見破られちゃうわよ?! 魅音: ……ゼェ、ゼェ……。かつてこれほどまでに入念にイカサマを準備したことは一度もないよ……。 普段であれば、とっくに寝床に入っている時刻だ。ラムダデルタが来る前から散らばった部屋だったが、今はさらに散らばっている。 ラムダデルタ: このカード、ダメね! 裏の模様がズレてるじゃない! ラムダデルタ: この偽の説明書も全然ダメぇ!こっちの駒も手触りでバレるわ!アンタ、本気で勝つ気あるのー?! 魅音としては、すでに十分、策も仕掛けも準備したつもりだった。 しかしラムダデルタは、常にわずかな確率の最悪の事態を想定し、厳しくチェックし、容赦なく作り直させる。 魅音: おじさんはてっきり……、絶対の魔女、ラムダデルタちゃん様が、素敵な魔法をシャラリラ~ンってやって願いを叶えてくれるんだと思ってたよ……。 ラムダデルタ: ほら、やってあげるわよ、シャラリラ~ン♪はい、これでカードは元通り!さ、もう1回、作り直して! ラムダデルタは魅音に、明日の部活での絶対の勝利を約束してくれた。 しかしそれは、彼女が勝たせてくれる訳ではない。“魅音が”絶対に勝つ。それをラムダデルタはサポートしてくれるのだ。 確かに、シンデレラに出てくる魔女のように、素敵な魔法一発で、ドレスになったりカボチャが馬車になったりはしない。 しかしラムダデルタの魔法は、工作に失敗したカードなどを元通りに直してくれるので、何度でも作り直すことが出来る。 魅音: 作り直してくれるから、何度失敗しても材料がなくならないのは嬉しいけど……。ゼェ、ゼェ……。 ラムダデルタ: アンタね。絶対の勝利の対価を舐めてんじゃないの? 登場した時は、頭の中が超パーな感じのヘラヘラした魔女だと思っていた。 しかし、意外にも真面目で妥協がない。 ラムダデルタ: 勝っても負けてもいいとか、出来ればほんのちょっぴりだけ勝つ確率を上げたいとか。 ラムダデルタ: その程度の信念でね、辿り着けるほど絶対の勝利は甘くないのよ。 ラムダデルタ: それとも何? 万一、1%の不運を引き当てて負けた時。99%勝てるはずだったのに残念だなァ、仕方ないなァって……、 魅音: そんなの嫌だあああぁああぁぁ!!負けないッ、負けられない!! 魅音: レナに譲るもんかッ!ウェディングドレスで圭ちゃんとツーショットを撮るのは私なんだぁぁぁ!! ラムダデルタ: そうそう、その意気よ! 圭一とアンタ!素敵な婚礼衣装で一緒に写真に写るんだから!その未来を思い描いて!! ラムダデルタ: 絶対の未来を思い描く! 未来は来るものじゃないっ、アンタが思い描いたそれが現実になるのよッ! 魅音: タキシードの圭ちゃんと、ウェディングドレスの私!!絶対ッ、絶対絶対ずえーったいいぃッ!!! と、こんな感じで。ラムダデルタは魅音を一晩中、叱咤激励し続けた。 魅音なりにあらゆる事態を想定して、様々なイカサマの準備をしたつもりだった。 しかし、ラムダデルタは一切の妥協を許さない。魅音の思う完璧の、さらに上の完璧をしてもまだ足りないという。 魅音: これだけ準備しても……。まだ勝てない?まだレナには“絶対に”勝てる訳じゃないっての? ラムダデルタ: ……アンタの言う“絶対”って。そんなにも軽いもんなの……? ラムダデルタ: まぁ、無理もない。アンタの絶対を叶える為の時間は、一晩しかないんだからね。 ラムダデルタ: でも、アンタの気力が尽きない限り、私の力が、時間さえも緩やかにしているのよ。わかる? 魅音: ……言われてみれば、もう空が白み始める頃と思ってたのに、……まだ日付も越えてない……。 これが、絶対の魔女、ラムダデルタの加護だ。絶対にやり遂げる絶対の意思を司り、それを為そうとする人々に加護を与えるのだ。 魅音: 私も部活の部長として……、勝利の為にはどんな労苦も犠牲も厭わない精神を磨き上げてきたつもりだったけど……。 魅音: アンタはすごいよ……。……部活に招いたら、勝てないかもしれないって思ったよ。こんなのはアンタが初めてだよ……。 ラムダデルタ: 私、がむしゃらな努力ってヤツでは、誰にも負けたことないの。 ラムダデルタ: 乗るか反るか、じゃない。……私の願いが絶対の意思によって絶対の運命に昇華される。 ラムダデルタ: その時、それはもう、願いじゃない。……自らの手で、運命を生み出しているのよ。 ラムダデルタ: そこまで至った時。……人は、神にも、魔女にもなれるんだから。 ふと気付けば、……魅音は机に突っ伏して寝息を立てていた。 ラムダデルタが指を弾くと、ふわりと、可愛らしい毛布が現れ、そっと魅音の背中に被さる……。 ラムダデルタ: おやすみ、魅音。大丈夫よ。人の世の並の勝負事なら、今夜のアンタの努力で十分よ。 ラムダデルタは、ふわりと宙に寝転ぶように浮かぶ。カーテンが揺らめき、その隙間から月明りが見える……。 ラムダデルタ: ……叶えたい願いを絶対の運命にする為の努力は、楽しいものよね。 ラムダデルタ: それが楽しい願いであっても、悲しい願いであっても、ね……。 ラムダデルタ: 私もニンゲンだった頃は……、たくさんたくさん、努力したわよ。願いを絶対の運命にする為に。 ラムダデルタ: でも……、もし、もう一度、ニンゲンとしての人生を送る機会があったなら……。 ラムダデルタ: 絶対の運命とかの為に、人生の全てを努力に捧げるような生き方じゃなくて……。 ラムダデルタ: ……愛する人と二人っきりで、ただぼんやりとのんびり過ごすことが出来る、そんな超パーな生き方がしてみたいわぁ……。 ラムダデルタ: 駒がじゃなくて。……私が、ね。 Part 03: ラムダデルタ: いよいよ……、決戦の時ね! 魅音: あ、あぁ……。だが、レナもコンディションは最高のようだよ……。 レナ: はう~、はぅはぅはぅ~~!! レナ: ウェディングドレスのチケットを~、レナがお持ち帰りぃ~♪ 沙都子: をーっほっほっほ!今日の部活はレナさんと魅音さんの一騎打ちですのね! 梨花: たまには観客側もいいのです。負けて罰ゲームになることもありませんのです。 圭一: その上、俺はノーリスクでチケットが確定してるからなぁ! 圭一: さぁ、俺と一緒にディナーに行けるチケットを巡って、存分に争うがいい。ワハハハー!! ラムダデルタ: ふーん。この子が、アンタに絶対の意思を宿らせるお相手なのね? ラムダデルタ: 私のタイプじゃなくてよかったわね!気に入っちゃってたら横取りしちゃってたとこよ。うふふふふ! 魅音: みんなには本当に、ラムダの姿は見えてないんだよな? ラムダデルタ: えー、そーよ。だから私のことは気にしないで、勝負に思い切り集中してちょうだい。 ラムダデルタ: あーそうそう。だからって、私が対戦相手の後ろに回って、アンタに手の内を教える、とかいうのはやんないわよ? 魅音: わかってるよ。勝利は自分の手で掴むものさ。そして私は絶対に勝つッ。 レナ: じゃあ、魅ぃちゃん。勝っても負けても、恨みっこなしだからね?はうはうはぅ~! 魅音: そっちこそ!どういう負け方をしても、恨まないでよね! 沙都子: 今日は私たちがランダムに選んだゲームに次々、挑戦していただきますわ! 圭一: 1回限りの勝負じゃどうしても運が絡むからな!魅音バーサスレナ、百本勝負だッ。 梨花: 酒の肴は多い方がいいのですよ、にぱ~☆ 第一種目はトランプを使ったゲーム。だが、魅音はそのトランプのイカサマカードを昨夜の内に、十分なほど用意している! レナ: はぅー?! またレナの負けぇ! 魅音: 悪いね、レナ。どうやら今日のおじさん、絶好調みたいだよ。 レナ: これなら勝てるかなっ、かなっ! 魅音: おっと、ごめんね。それは通らないんだな、これがぁ! 圭一: ……すげぇな、さすがは魅音。 魅音: 負けられないんだよ、レナぁ!我が部に、私の勝負に、負けていいものなんかひとつもないんだぁ!! 沙都子: 魅音さんの覇気が凄まじいですわ……。今日の魅音さんには、私でも勝ちの目が見えませんでしてよ……。 梨花: まるで、何かに憑かれているかのようなのです。 その後、トランプから別のゲームに移り、さらに別のゲームへと梯子するが、魅音の破竹の勢いは止まらない。 レナ: え~ん、ちっとも勝てないよぉ!レナの調子、悪くないはずなのに、魅ぃちゃんが絶好調過ぎるよぉ……! ラムダデルタ: そうでしょうねぇ。竜宮レナ。アンタの目には、魅音がただ、絶好調で強運なだけに見えるでしょうねぇ。 ラムダデルタ: でもね、アンタがいくら絶好調でも、今日の為にアンタは何を為した? 何を準備した? ラムダデルタ: せいぜい、ぐっすり眠って鋭気を養うのが関の山だったでしょうけれど、魅音は違う! ラムダデルタ: アンタが寝こけている間に眠い目をこすって!今日の為にあらゆる準備をしたわ! ラムダデルタ: ニンゲン相手の勝負なら十分な仕込みも、私が容赦なく蹴って作り直させた!歯を食いしばって作り直した! 何度も何度も! 魅音: ……ラムダ……。あれ? おかしいな、おじさん、涙が……。 ラムダデルタ: アンタは勝つわ!! よく、眠くても疲れても、私に無茶苦茶を言われても耐え忍んだわ!! ラムダデルタ: 私は絶対の魔女、ラムダデルタ!絶対の勝利の為に、絶対の努力を尽くしたアンタを、私は最後まで見捨てない!! 魅音: 勝つッ、勝つ勝つ勝ぁああぁつッ!!私は当然の絶対の結果として、今日は勝利するんだああぁあぁッ!! レナ: 今日の魅ぃちゃん、強過ぎるよぉ。勝てる気がしないよぉ、はぅぅ……。 魅音: どう、レナ? チケットは私に譲って、ここからは楽しく親睦試合にしない? レナ: うぅん。だぁめ。ちゃんと勝負はつけないと。 レナ: でも、レナはちょっと嬉しいかな……。 レナ: 魅ぃちゃんが、自分の気持ちにこんなにも素直になってくれたんだもん。これならレナは、負けても悔しくないかな、かな。 ラムダデルタ: ……魅音、用心して。絶対の力は即ち準備の力だけれど、それに匹敵するような想いの力には、稀に奇跡を許す。 魅音: わかるよ。こういう雰囲気の時のレナはまずい……。風向きが変わるかもしれない。 ラムダデルタ: 勝負を急いだ方がいいわ。時間はレナに味方する、そんな気がするわ。 魅音はレナに、次のゲームに勝てば、それまでの勝敗数に関係なく勝利ということにしないかと提案する。 魅音の方が勝利数は圧倒的に多いのだから、レナには検討の余地がある提案だ。 その上、最終種目はレナに決める権利を与えるというと、レナは熟考の末、わずかに不敵に笑って、了承した……。 圭一: レナ、本当にそれでいいのか?!それってほとんど運のゲームだぞ……!! それは百万長者ゲーム。ルーレットの目で進み、ゴールを目指し、最終的に一番、お金を持っていた人が勝ちという王道のスゴロクだ。 王道。故にシンプル。スゴロクの究極の原点。即ち、最終的に運命を握るのはダイス運となる。 ラムダデルタ: つまりレナは、運に頼ることしか出来ない。 ラムダデルタ: 一方、こっちはこのゲームに対応できる仕掛けの準備も、十分にあるわぁ! まず、昨夜の内に、……つまりあの深夜に!学校に潜入し、百万長者ゲームのルーレットを外し、隠しておいたのだ! となれば、サイコロを使うしかない。部活ロッカーには数種類のサイコロがあるが、ラムダデルタはその全てに、イカサマダイスを作らせている!! 沙都子: 仕方ありませんわね。ではルーレットの代わりに、この10面ダイスを使っていただきますわ! 魅音とラムダデルタは互いを見やる。 魅音: ……イカサマダイスはいくつも用意してある。つまり、出目は全て、私の管理下にあるということ……。 レナ: 魅ぃちゃんが提案してきた勝負だからね~。どんな仕掛けがあるかわからないもんねぇ。はぅ~♪ ラムダデルタ: 用心して。今のレナは信じらんないくらいコンセントレーションを高めているわ。 魅音: わかってる。あの状態のレナじゃ、イカサマダイスを多用すれば見抜いてくることもありえる……。 ラムダデルタ: 十分よ。トラップは、最後の最後にさりげなくのひとつで十分なんだから。 ラムダデルタ: 勝ちなさいっ。アンタは今日の勝利の為に、十分な対価を支払っているわ!だから絶対の保証をあげる! ラムダデルタ: アンタのイカサマダイスは、絶対に一振り目で見破られることはないッ!! 魅音: 問題ない!!使い捨てにしても余るくらいに準備はある! ラムダデルタ: よくそれだけの準備をしたわ!!褒めてあげちゃう! これが勝つということよ!! 魅音: アンタに何度も叩き込まれた、このゲームの必勝法!! 最初の一振りで決着はつく! 魅音が隠し持つ、圧倒的な数のイカサマダイス。それらを駆使すれば、互いの出目は完全にコントロールできる。 つまり、運を完全に度外したスゴロクは、……もはやパズルにさえなる。 魅音は、先攻だろうと後攻だろうと、絶対に自分が勝てるパターンをすでに解析し、完璧に暗記している! レナ: じゃんけん、ポン!……レナが勝った。レナが先行だね。 ラムダデルタ: ……ここで、絶対に10が出ないダイスをレナに! 魅音: わかってる!第1投で先攻がエリートコースにさえ入らなければ、後攻の私の勝ちは確定する……!! 手品師顔負けの技で、1から9は出ても、決して10が出ることはない10面ダイスをレナに渡す。 レナ: はう~……? この10面サイコロ……、大丈夫かな?イカサマとかないかな……? 魅音: …………………。 ラムダデルタ: 大丈夫よ。絶対に第一投で見破られることはない!!絶対の魔女が、絶対に保証するッ!! レナ(感染発症): ……このサイコロ……、 レナ(感染発症): 10の目だけ出ないね……?何でかな? ……かな……? それは小声。……魅音とラムダデルタにだけ聞こえる、眼差しで語る声だった。 魅音: そんな……、 ラムダデルタ: 馬鹿なッ?! この絶対の魔女が、絶対に見破れないって保証したのにッ?!?! レナ: ……第1投目では、見破れないって、あんたは言ったのよ……。 ラムダデルタ: で、でも! 第1投どころか、アンタはサイコロを振ってさえいないのよ?!見破れる訳がないッ、絶対に絶対にッ!! レナ: ……気付きなさいよ、鈍感な子ね。……まぁ、私に出来る一矢は、これが限界なんだけどね。 ラムダデルタ: ベルン?! いつの間に来てたの! ベルンカステル: アンタが面白そうなことをやってたんで、逆張りしてやろうと思ったんだけれど。 ベルンカステル: やっぱり、アンタ相手には不意討ちじゃないと勝ち目がないわね。じっくりと準備されたら、起きる奇跡など何もない。 ベルンカステルは奇跡の魔女。サイコロの出目が、望むものになるまでいくらでも振り直すことが出来る。 しかし、出ない目を出すことは出来ない。サイコロに刻まれた目以上の数字が出ることは、どのような奇跡があったとしても絶対にあり得ない。 奇跡がないことを知るからこそ、奇跡の魔女なのだ。 一方、絶対の魔女のラムダデルタは、サイコロが最高の目を出すように、事前に望む限りの努力や準備を重ねることが出来る。 その結果、最高の目が出る確率を絶対とすることが出来る。だが、それに至る為に求められる努力や準備は絶対的な質と量が必要であり、決して容易いことではない……。 ラムダデルタ: ……で? このサイコロはイカサマだって騒ぎ立ててみる? ベルンカステル: しないわよ。……レナは、イカサマを見抜いた上で、魅音に勝ちを譲る気でいるもの。 魅音: え……? レナ、………どうして……。 レナ: 魅ぃちゃんが、自分に素直になれたからだよ。 レナ: 圭一くんと素敵な写真を撮って、一緒にディナーしたいっていう気持ちに、素直になってくれたのが、レナはとっても嬉しかったから。 魅音: い、いやいや別にっ、おじさんは部長として勝負事には全て……、 レナ: そういうのじゃ駄目なんだよ、魅ぃちゃん。 ラムダデルタ: ……魅音。今日という日が明日も明後日もいつまでも続くなんて信じてるんなら、……今に手痛いしっぺ返しを食らうわよ。 ラムダデルタ: 明日があるなんて思わないで、……今日という日に悔いなく全てを成し遂げなさい。 ラムダデルタ: それが。日々を超絶対ハッピーに生きる秘訣なんだから♪ ベルンカステル: ……最後だけいいこと言って、うまくまとめた気になってるでしょ。 ラムダデルタ: 何よー、いーでしょ!魅音が勝ったんだから文句ないでしょ! ベルンカステル: はいはい。あんたの勝ちよ。ご褒美に梅干し入りの紅茶を淹れてあげるわ。 ラムダデルタ: ホント?! 蜂蜜漬けの梅干しならいいわよ!じゃあね、魅音! 勝ってよかったわね!バイバーイ!! 魅音: な、何だったんだ……、一体……。 レナ: はい、魅ぃちゃん。優勝のチケット。おめでとう! 圭一: な、なんだ? 最初のサイコロも振らないで、決着がついちまったぞ……?! 沙都子: きっと、私たちの与り知らないところで、超高度な心理戦が行われていたに違いありませんわ。 梨花: よくわからないけど、魅ぃの勝ちなのですよ。にぱ~☆ ……ありがとう。ラムダデルタちゃん様。 私もまだまだ、我が部の部長として色々、甘いって、思い知らせてもらったよ……。 ラムダデルタ: ベルンが来てたなんて知らなかったわー!知ってたら、魅音なんか放っといて、ベルンと遊んだのに! ベルンカステル: ……そうなると思って、隠れてたのよ。絶対の魔女が絶対を約束して、それを放り出したらみっともないでしょ。 ラムダデルタ: 私はベルンのことが、宇宙で一番、絶対大好きなだけの魔女だもーん。 ベルンカステル: ……私のことを、絶対に退屈させない絶対の魔女ならば、お茶請けの梅せんべいも出してあげるわ。 ラムダデルタ: じゃあ、出して♪ 私は今日からビッグクランチまで、ベルンを絶対退屈させない魔女になるわ。 ベルンカステル: 今、持ってきてあげるわ。 ラムダデルタ: おめでと、魅音。……ふふ、次はどんな頑張り屋さんを応援してあげちゃおっかなぁ♪