
剣に生きる人間は剣で死ぬ。
筆に生きる人間は筆で死ぬ。
人間は、必ず死ぬ。聖書にも記されている当たり前のこと。
死なない人間は聖者、または魔女と呼ばれる人外のみ。
中世欧州で疫病のように
ならば自分は魔女だろう、と
熱湯に沈んでも。全身を剣で貫かれても。何をされても死なない身体。しかし──どうせ魔女ならば、
自分の周囲では、いつでも死と不幸が広がっていた。
生まれたときの記憶はない。物心ついたときには血の
一緒に旅した
今も──グリコが
そのはずなのに。
──。
不幸になるのは、自分だけで良くて。
死ぬのは自分であるべきだった。
「
一瞬、その声が誰に向けられたものだか理解できず、グリコは無視をした。暗い──
「偽原グリコさん」
呼びかけてくる、若い女性の声。そうか偽原って自分か。
それが何を生むわけでもないけれど。
優しい鈴音がそれを望まないのも理解している。
けれどグリコは化け物に戻る。そう決めた。
考えながら振り返ると、一人の看護師が立っていた。
どこか不気味な雰囲気をまとっている女性。制服は看護師正規のもので、今では珍しいナースキャップまでかぶっている。ただ、風邪でもひいているのか、口元は市販のマスクで覆われていたのだけど。
長い一本の三つ編みを揺らした彼女はにっこりと笑う。
「初めまして」
「はぁ……初めまして」
適当に
首を振り、相手を探るような顔でグリコは言う。
「何か用か? グリコは急いでいるんだが」
「あら。うふ。急いでいるって、どこへ向かっているのかしら? 本当に進んでいるのかしら? 目的地もなく、根拠もなく、ただ迷っているだけじゃないのかしら?」
不思議な抑揚でつぶやくと、彼女は何気なく言う。
「そうして不細工に迷っているうちに、人間は大切なものを失ってしまう。私は、そういう不細工が大嫌い。ねぇどうして、あなたたちは、
「──どういうことだ」
鋭く問う。彼女は笑って、グリコに背を向けると肩越しに振り返って笑う。
「あなたの母、
それは──。
いつか、聞いたことがある。火乃と
グリコを心配させないために、いつでも彼女は苦しみを隠し痛みを誤魔化して笑っていたのだろうか。
「あいつは……」
火乃。母親とは最後まで思えなかった。
けれど嫌いではなかった。彼女らと一緒にいた時間は、決してただ苦しかっただけなのではない。思いだす。樹夫と一緒に
「そんな彼女は樹夫と出会い、彼と一緒に生きていくと決め、
にっこりと笑い、不気味な看護師は歩いていく。
「そんな眼球ならむしろ要らないでしょう? 何も見えない眼球なら。どうしてあなたは生きているのかしら? 生きていても
「おまえは──」
誰だ。何者だ。グリコの何を知っている。
思い、グリコは彼女の後に追いすがる。
しかし追いつけない。
なんだろうこれは──恐怖? これ以上、この看護師に近づくことを恐れている?
「昔。一人の愚かな女がいた」
看護師は振り返らず、低く笑いながら語る。